(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記第1バスバーの内周縁が載置される第1段部と、前記第1バスバーの内径よりも小さい内径を有する前記第2バスバーの内周縁が載置される第2段部と、を備える階段状部材として構成され、
前記1次セット工程では、前記第1バスバーが前記第1段部に載置された後に、前記第2バスバーが前記第2段部に載置される、
ことを特徴とする請求項2に記載に記載のバスバーユニット製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、3相交流モータを構成するステータ1を示す構成図である。
【0011】
ハウジング2に保持された円環状のステータコア3には、図示しないティースが内側に突出するように複数形成されている。各ティースには銅線が巻き回され、巻き回された導線によってコイル4が構成されている。
【0012】
ステータコア3には、18個のコイル4が、ステータ1の周方向に沿って環状に配設される。コイル4はU相コイル4U、V相コイル4V及びW相コイル4Wから構成され、2つで1組の同一相のコイル4がステータ1の周方向に120度間隔で配置される。したがって、1組のU相コイル4U、1組のV相コイル4V及び1組のW相コイル4Wが、ステータ1の周方向に沿って交互に3セット配設される。
【0013】
隣接する同相のコイル4U、4V、4Wでは、それぞれの巻線端末5同士が結線される。また、U相コイル4U、V相コイル4V及びW相コイル4Wは、もう一方の巻線端末6を介して、バスバーユニット100(
図2参照)に接続される。
【0014】
図2及び
図3を参照して、モータに設けられるバスバーユニット100について説明する。
図2はバスバーユニット100の斜視図であり、
図3は絶縁部50aを省略した状態のバスバーユニット100の斜視図である。
【0015】
バスバーユニット100は、ステータ1(
図1参照)と同心状にステータ1の軸方向端部に取り付けられる。バスバーユニット100は、U相コイル4Uに接続されるU相バスバー10と、V相コイル4Vに接続されるV相バスバー20と、W相コイル4Wに接続されるW相バスバー30と、各相コイル4U、4V、4Wに接続される中性点用バスバーであるN相バスバー40と、これらバスバー10、20、30、40を絶縁状態で保持する絶縁部50aと、から構成される。
【0016】
バスバーユニット100は、上記4つのバスバー10、20、30、40を絶縁性樹脂を用いてインサート成形することで一体形成される。本実施形態によるバスバーユニット100は、U相バスバー10及びV相バスバー20を絶縁性樹脂を用いて1次インサート成形して1次成形部材200(
図13参照)を形成した後に、当該1次成形部材200、W相バスバー30及びN相バスバー40を絶縁性樹脂を用いて2次インサート成形して製造される。
【0017】
図4A及び
図4Bに示すように、U相バスバー10は、U相コイル4Uの巻線端末6に接続されるバスバーである。
【0018】
U相バスバー10は、板状円環部材として形成される本体部11と、本体部11からバスバー径方向外側に延設される延設部12と、延設部12の外側端に設けられるコイル接続部13と、本体部11からバスバー軸方向に延設され、外部配線に接続されるU相端子14と、を有する。U相バスバー10は、導電性の板状素材から打ち抜かれた部材を折り曲げ加工等することによって形成される。
【0019】
延設部12は、本体部11の周方向に等間隔に3つ設けられる。コイル接続部13は、延設部12の先端にフック状に形成される。コイル接続部13は、U相コイル4Uの巻線端末6に接続される。
【0020】
図5A及び
図5Bに示すように、V相バスバー20は、V相コイル4Vの巻線端末6に接続されるバスバーである。
【0021】
V相バスバー20は、板状円環部材として形成される本体部21と、本体部21からバスバー径方向外側に延設される延設部22と、延設部22の外側端に設けられるコイル接続部23と、本体部21からバスバー軸方向に延設され、外部配線に接続されるV相端子24と、を有する。V相バスバー20は、導電性の板状素材から打ち抜かれた部材を折り曲げ加工等することによって形成される。
【0022】
延設部22は、本体部21の周方向に等間隔に3つ設けられる。コイル接続部23は、延設部22の先端にフック状に形成される。コイル接続部23は、V相コイル4Vの巻線端末6に接続される。
【0023】
図6A及び
図6Bに示すように、W相バスバー30は、W相コイル4Wの巻線端末6に接続されるバスバーである。
【0024】
W相バスバー30は、板状円環部材として形成される本体部31と、本体部31からバスバー径方向外側に延設される延設部32と、延設部32の外側端に設けられるコイル接続部33と、本体部31からバスバー軸方向に延設され、外部配線に接続されるW相端子34と、を有する。W相バスバー30は、導電性の板状素材から打ち抜かれた部材を折り曲げ加工等することによって形成される。
【0025】
延設部32は、本体部31の周方向に等間隔に3つ設けられる。コイル接続部33は、延設部32の先端にフック状に形成される。コイル接続部33は、W相コイル4Wの巻線端末6に接続される。
【0026】
図7A及び
図7Bに示すように、N相バスバー40は、U相コイル4U、V相コイル4V及びW相コイル4Wの巻線端末6に接続されるバスバーである。
【0027】
N相バスバー40は、板状円環部材として形成される本体部41と、本体部41からバスバー径方向外側に延設される延設部42と、延設部42の外側端に設けられるコイル接続部43と、を有する。N相バスバー40は、導電性の板状素材から打ち抜かれた部材を折り曲げ加工等することによって形成される。
【0028】
延設部42は、本体部41の周方向に等間隔に9つ設けられる。コイル接続部43は、延設部42の先端にフック状に形成される。コイル接続部43は、U相コイル4Uの巻線端末6、V相コイル4Vの巻線端末6及びW相コイル4Wの巻線端末6に接続される。
【0029】
図3に示すように、バスバーユニット100は、ステータ1側から順番にN相バスバー40、V相バスバー20、U相バスバー10、W相バスバー30が積層されて構成されている。これらバスバー10、20、30、40のステータ周方向の相対位置は、延設部12、22、32、42及びコイル接続部13、23、33、43がステータ周方向に等間隔にずれるように調整される。バスバーユニット100は、図示しない電源から供給される電流を、外部端子としてのU相端子14、V相端子24及びW相端子34を介して、U相コイル4U、V相コイル4V及びW相コイル4Wに供給する。
【0030】
以下では、バスバーユニット100をインサート成形によって形成する工程について説明する。バスバーユニット100は、1次インサート成形で得られた1次成形部材200(
図13参照)を2次インサート成形することで形成される。
【0031】
まず、
図8〜
図14を参照して、1次インサート成形について説明する。
【0032】
1次インサート成形では、
図8に示す第1金型300を用いて1次成形部材200(
図13参照)を形成する。
図8に示すように、第1金型300は、鉛直方向下方に配置される第1下型310と、第1下型310の上方に配置される第1上型320と、を備える。
【0033】
第1上型320は、当該第1上型320を上下方向に貫通し、第1金型300内に絶縁性樹脂を注入するための注入孔330を有している。
【0034】
第1下型310は、当該第1下型310の底面から上方向に突出するとともに、U相バスバー10及びV相バスバー20を支持する支持部340を有している。支持部340は、円柱状の突起であり、支持部340の下側から上側に向かって外径が段階的に縮径するように形成されている。つまり、支持部340は、U相バスバー10の内周縁が載置される第1段部341と、U相バスバー10の内径よりも小さい内径を有するV相バスバー20の内周縁が載置される第2段部342と、を有する階段状部材として形成されている。
【0035】
第1段部341及び第2段部342は、U相バスバー10及びV相バスバー20を載置可能な環状平面として形成されている。第2段部342は第1段部341よりも上方位置に設けられており、第2段部342の外径は第1段部341の外径よりも小さく形成されている。
【0036】
なお、第1金型300の第1上型320及び第1下型310には、U相バスバー10及びV相バスバー20のコイル接続部13、23やU相端子14、V相端子24等が挿入される図示しない挿入孔が形成される。
【0037】
1次インサート成形では、最初に、U相バスバー10及びV相バスバー20を第1下型310にセットする1次セット工程が行われる。
【0038】
図8及び
図9に示すように、1次セット工程では、U相バスバー10を第1下型310の支持部340に挿通させた状態で、当該U相バスバー10を第1段部341上に載置する。その後、V相バスバー20を第1下型310の支持部340に挿通して、V相バスバー20を第2段部342上に載置する。これにより、U相バスバー10及びV相バスバー20は、バスバー軸方向に所定間隔をあけて離間するように配置される。なお、
図9では、U相バスバー10及びV相バスバー20の延設部12、22やコイル接続部13、23等の記載は省略されている。
【0039】
図10に示すように、第1下型310の支持部340には、隣接するように支持部340にセットされたU相バスバー10及びV相バスバー20のバスバー軸方向の間隔を保持する間隔保持部材343と、間隔保持部材343が摺動する摺動孔344とが設けられている。
【0040】
摺動孔344は、水平方向に延設された孔である。間隔保持部材343は、例えば先端が尖った板状部材であって、支持部340に対して径方向に移動可能なように摺動孔344内に設置される。間隔保持部材343及び摺動孔344はそれぞれ、支持部340の周方向に等しい間隔をあけて4つ設けられる。
【0041】
間隔保持部材343は、通常時には摺動孔344内に収容されており、U相バスバー10及びV相バスバー20が第1下型310にセットされた後に摺動孔344から径方向外側に突出し、U相バスバー10とV相バスバー20の間の隙間に挿入される。このようにU相バスバー10及びV相バスバー20の間に間隔保持部材343を挿入することで、インサート成形時に注入される絶縁性樹脂の圧力によってU相バスバー10及びV相バスバー20が軸方向に移動することが規制される。これにより、バスバーユニット100において、U相バスバー10及びV相バスバー20のバスバー軸方向の間隔が狭くなってしまうことを防止できる。つまり、U相バスバー10及びV相バスバー20間の絶縁距離を確保することができる。
【0042】
間隔保持部材343を挿入する挿入工程実行後、
図11に示すように、第1上型320は第1下型310に対して閉じられる。なお、
図11では、U相バスバー10及びV相バスバー20の延設部12、22等の記載は省略されている。
【0043】
図12Aに示すように、第1下型310にはV相バスバー20を下側から支持する支持ピン311が設けられており、第1上型320にはU相バスバー10を上側から支持する支持ピン321が設けられている。第1下型310の支持ピン311は、当該第1下型310の底面から上方向に突出しており、V相バスバー20の外縁に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている。第1上型320の支持ピン321は、当該第1上型320の底面から下方向に突出しており、U相バスバー10の外縁に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0044】
図4A及び
図12Aに示すように、U相バスバー10の本体部11には、1次インサート成形時にV相バスバー20を支持する支持ピン311をバスバー軸方向に挿通させる挿通孔15が形成されている。また、
図5A及び
図12Aに示すように、V相バスバー20の本体部21には、1次インサート成形時にU相バスバー10を支持する支持ピン321をバスバー軸方向に挿通させる挿通孔25が形成されている。
【0045】
図11に示すように第1上型320が閉じられると、
図12Bに示すように第1下型310の支持ピン311の先端部分が、U相バスバー10の挿通孔15を通じて、V相バスバー20の外縁部分を下側から支持する。この時、第1上型320の支持ピン321の先端部分は、V相バスバー20の挿通孔25を通じて、U相バスバー10の外縁部分を上側から支持する。支持ピン311、321の先端部分には、支持するU相バスバー10、V相バスバー20の外周面に対向する突起311a、321aが形成されており、突起311a、321aにより成形時におけるU相バスバー10、V相バスバー20のバスバー径方向の移動が規制される。
【0046】
図11に示すように、第1上型320が第1下型310に対して閉じられると、U相バスバー10及びV相バスバー20は、支持部340及び支持ピン311、321を介して、所定の隙間を有した積層状態で保持される。この状態で、第1上型320の注入孔330から溶融した絶縁性樹脂を、第1上型320と第1下型310との間に画成される空間内に注入する1次成形工程が行われる。この時、絶縁性樹脂の注入圧によってU相バスバー10及びV相バスバー20には上下方向に大きな力が作用するが、U相バスバー10及びV相バスバー20の間には間隔保持部材343(
図10参照)が挿入されているので、U相バスバー10及びV相バスバー20間の間隔は電気絶縁性を確保するために必要な所定間隔に維持される。
【0047】
絶縁性樹脂の硬化後、間隔保持部材343を支持部340の摺動孔344内に収容してから第1上型320及び第1下型310を取り外すことで、
図13に示すような1次成形部材200が得られる。
【0048】
図13及び
図14に示すように、1次成形部材200は、U相バスバー10、V相バスバー20及び絶縁部50bからなる円環状の一体成形部材である。1次成形部材200の絶縁部50bは、1次成形工程で注入された絶縁性樹脂が硬化したものである。1次成形部材200の絶縁部50bには、間隔保持部材343に対応する孔51や支持ピン311、321に対応する孔52が形成されている。
【0049】
図14に示すように、1次成形部材200の絶縁部50bの軸方向の一端には2次インサート成形時に使用されるN相バスバー40を収容可能な第1収容凹部53が形成され、絶縁部50bの軸方向の他端には2次インサート成形時に使用されるW相バスバー30を収容可能な第2収容凹部54が形成される。また、絶縁部50bの一端寄りの内周面55は、U相バスバー10及びV相バスバー20の内周面よりも内径が小さくなるように形成されている。つまり、1次成形部材200は、絶縁部50bの一端側の内周面55が最も内側に位置するように構成されている。
【0050】
1次成形部材200における絶縁部50bの第1収容凹部53、第2収容凹部54及び内周面55は、1次インサート成形の1次成形工程にて形成される。
【0051】
次に、
図15〜
図19を参照して、2次インサート成形について説明する。
【0052】
2次インサート成形では、
図15に示す第2金型400を用いてバスバーユニット100を形成する。
図15に示すように、第2金型400は、鉛直方向下方に配置される第2下型410と、第2下型410の上方に配置される第2上型420と、を備える。
【0053】
第2上型420は、当該第2上型420を上下方向に貫通し、第2金型400内に絶縁性樹脂を注入するための注入孔430を有している。
【0054】
第2下型410は、W相バスバー30を下側から支持する支持ピン440と、1次成形部材200の径方向位置を位置決めする軸部450と、を有している。
【0055】
支持ピン440は、第2下型410の底面から上方向に突出しており、W相バスバー30の外縁に沿うように所定の間隔をあけて複数設けられる。軸部450は、第2下型410の底面から上方向に突出する円柱状部材として形成されている。
【0056】
なお、第2上型420及び第2下型410には、U〜N相バスバー10、20、30、40のコイル接続部13、23、33、43や各端子14、24、34等が挿入される図示しない挿入孔が形成される。
【0057】
2次インサート成形では、
図16A及び
図16Bに示すように、W相バスバー30、N相バスバー40及び1次成形部材200を第2下型410にセットする2次セット工程が行われる。なお、
図16A及び
図16Bでは、U〜N相バスバー10、20、30、40のコイル接続部13、23、33、43等の記載は省略されている。
【0058】
図16Aに示すように、2次セット工程では、W相バスバー30を第2下型410の軸部450に挿通させた状態で、W相バスバー30を支持ピン440上に載置する。その後、環状の1次成形部材200を第2下型410の軸部450に挿通させ、1次成形部材200をW相バスバー30上に載置する。
【0059】
1次成形部材200の絶縁部50bの内周面55(
図14参照)は第2下型410の軸部450に対して摺接可能に形成されているので、2次セット工程において絶縁部50bの内周面55が軸部450の外周面に接した状態で1次成形部材200が軸部450に配設されることで、第2金型400内での1次成形部材200の径方向位置が規定される。
【0060】
図16Bに示すように、1次成形部材200が第2下型410にセットされた状態では、W相バスバー30は、1次成形部材200の絶縁部50bの第2収容凹部54内に収容される。この時、W相バスバー30の外周面は、当該W相バスバー30の外側に位置する第2収容凹部54の内周面54a(
図14参照)に当接している。W相バスバー30が第2収容凹部54内に収容されるように配置されることで、インサート成形時におけるW相バスバー30の径方向への移動が規制される。
【0061】
1次成形部材200のセット後、N相バスバー40が1次成形部材200上に載置される。N相バスバー40が1次成形部材200上に載置された状態では、
図17に示すように、N相バスバー40は1次成形部材200の絶縁部50bの第1収容凹部53内に収容される。この時、N相バスバー40の外周面は、当該N相バスバー40の外側に位置する第1収容凹部53の内周面53aに当接している。N相バスバー40が第1収容凹部53内に収容されるように配置されることで、インサート成形時におけるN相バスバー40の径方向への移動が規制される。
【0062】
上記した2次セット工程実行後、
図18に示すように、第2上型420は第2下型410に対して閉じられる。その後、第2上型420の注入孔430から溶融した絶縁性樹脂を、第2上型420と第2下型410との間に画成される空間内に注入する第2次成形工程が行われる。なお、
図18では、U〜N相バスバー10、20、30、40のコイル接続部13、23、33、43等の記載は省略されている。
【0063】
2次成形工程において第2金型400内に注入された絶縁性樹脂の硬化後、第2上型420及び第2下型410を取り外すことで、
図2に示すような円環状のバスバーユニット100が得られる。バスバーユニット100の絶縁部50aは、2次成形工程で注入された絶縁性樹脂が硬化したものである。
【0064】
上記の通り、本実施形態では、1次成形部材200を2次インサート成形することで、バスバーユニット100を一体形成している。1次成形部材200の絶縁部50bには間隔保持部材343に対応する孔51や支持ピン311、321に対応する孔52が形成されているが、これら孔51、52には2次インサート成形時の絶縁性樹脂が流れ込み、孔51、52は絶縁性樹脂によって埋められる。
【0065】
1次成形部材200において、支持ピン311、321に対応する孔52は、第1収容凹部53及び第2収容凹部54が設けられる絶縁部50bの端面に開口している。そのため、2次インサート成形時に第1収容凹部53及び第2収容凹部54にN相バスバー40及びW相バスバー30が配設されると、N相バスバー40の本体部41及びW相バスバー30の本体部31によって孔52の開口が塞がれる。孔52が塞がれた状態で2次インサート成形すると、絶縁性樹脂が孔52内に流入せず、孔52は空気溜まりとしてバスバーユニット100の内部に残ってしまう。このようにバスバーユニット100内に空気溜まりが形成されると、絶縁性樹脂の電気絶縁性よりも空気の電気絶縁性の方が低いため、バスバー間の電気絶縁性が低下してしまう。
【0066】
そこで、
図6B及び
図19に示すように、W相バスバー30の本体部31には、U相バスバー10の挿通孔15と対向する位置、つまり支持ピン311(
図12A参照)による絶縁部50bの孔52と対応する位置に、2次インサート成形時における絶縁性樹脂の通過を可能とする貫通孔35が形成されている。W相バスバー30には、U相バスバー10の挿通孔15の数と同数の貫通孔35が設けられる。
【0067】
また、
図7B及び
図19に示すように、N相バスバー40の本体部41には、V相バスバー20の挿通孔25と対向する位置、つまり支持ピン321(
図12A参照)による絶縁部50bの孔52と対応する位置に、2次インサート成形時における絶縁性樹脂の通過を可能とする貫通孔45が形成されている。N相バスバー40には、V相バスバー20の挿通孔25の数と同数の貫通孔45が設けられる。
【0068】
2次インサート成形時の2次セット工程において、1次成形部材200の孔52とW相バスバー30の貫通孔35及びN相バスバー40の貫通孔45とが一致するように、W相バスバー30及びN相バスバー40をセットすることで、2次成形工程時に貫通孔35、45を通じて1次成形部材200の孔52に絶縁性樹脂を流入させることが可能となる。これにより、2次インサート成形によって得られるバスバーユニット100の内部に、空気溜まりが形成されることを防止できる。
【0069】
なお、1次インサート成形では、V相バスバー20の挿通孔25を通過した支持ピン321によってU相バスバー10を支持し、U相バスバー10の挿通孔15を通過した支持ピン311によってV相バスバー20を支持するので、U相バスバー10及びV相バスバー20は挿通孔15、25の位置をバスバー周方向にずらして配置される。2次インサート成形では、W相バスバー30は貫通孔35がU相バスバー10の挿通孔15と一致するように配置され、N相バスバー40は貫通孔45がV相バスバー20の挿通孔25と一致するように配置される。そのため、U相バスバー10の挿通孔15及びW相バスバー30の貫通孔35と、V相バスバー20の挿通孔25及びN相バスバー40の貫通孔45とは、
図19に示すようにバスバー周方向にずれた状態となる。
【0070】
上記した実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0071】
本実施形態では、第1金型300の支持部340にセットされたU相バスバー10及びV相バスバー20の間に間隔保持部材343を挿入した状態で1次インサート成形が行われるので、成形時に注入される絶縁性樹脂の圧力によってU相バスバー10及びV相バスバー20がバスバー軸方向に移動することが規制される。したがって、U相バスバー10及びV相バスバー20のバスバー軸方向の間隔を一定間隔に維持でき、バスバー間における電気絶縁性を確保することが可能となる。
【0072】
U相バスバー10及びV相バスバー20を1次インサート成形して1次成形部材200を形成した後に、1次成形部材200、W相バスバー30及びN相バスバー40を2次インサート成形するので、成形精度を高めることができ、U相バスバー10とW相バスバー30の間隔及びV相バスバー20とN相バスバー40の間隔を一定間隔に維持することができる。
【0073】
1次インサート成形では、U相バスバー10を支持部340の第1段部341に載置し、その後U相バスバー10よりも内径の小さいV相バスバー20を支持部340の第2段部342に載置するので、第1金型300内においてU相バスバー10及びV相バスバー20をバスバー軸方向に離間した状態で配置することが容易となる。
【0074】
1次成形部材200の絶縁部50bの内周面55は第2金型400の第2下型410の軸部450に対して摺接可能に形成されるので、2次インサート成形において軸部450が1次成形部材200に挿入されることで、第2金型400内での1次成形部材200の径方向位置を規定することができる。これにより、バスバーユニット100の成形精度を高めることができる。
【0075】
第2金型400内にセットされた状態では、N相バスバー40及びW相バスバー30は1次成形部材200の第1収容凹部53及び第2収容凹部54に収容されるので、成形時に注入される絶縁性樹脂の圧力によって、N相バスバー40及びW相バスバー30がバスバー径方向に移動することが規制される。これにより、バスバーユニット100の成形精度を高めることができる。
【0076】
1次インサート成形用のU相バスバー10は支持ピン311を挿通させる挿通孔15を備え、V相バスバー20は支持ピン321を挿通させる挿通孔25を備える。そして、2次インサート成形用のW相バスバー30はU相バスバー10の挿通孔15と対向する位置に絶縁性樹脂を通過可能とする貫通孔35を備え、N相バスバー40はV相バスバー20の挿通孔25と対向する位置に絶縁性樹脂を通過可能とする貫通孔45を備える。これにより、支持ピン311、321に対応する孔52を有する1次成形部材200を2次インサート成形する際に、W相バスバー30及びN相バスバー40の貫通孔35、45を通じて孔52に絶縁性樹脂を流入させることが可能となる。したがって、2次インサート成形によって得られるバスバーユニット100の内部に、空気溜まりが形成されることを防止できる。これにより、空気溜まりに起因するバスバー間での電気絶縁性の低下を防ぐことが可能となる。
【0077】
U相バスバー10の挿通孔15及びW相バスバー30の貫通孔35と、V相バスバー20の挿通孔25及びN相バスバー40の貫通孔45とはバスバー周方向にずらして配置するので、1次インサート成形においてU相バスバー10及びV相バスバー20を支持する際に支持ピン311、321同士が干渉することを防止することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0079】
本実施形態では、バスバーユニット100は、モータに適用されるものとしたが、発電機に適用されるものであってもよい。
【0080】
本実施形態では、U相バスバー10、V相バスバー20、W相バスバー30及びN相バスバー40は円環形状であるが、円弧状であってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、18個のコイル4を有する3相交流モータを例示したが、コイルの個数はこれに限定されない。
【0082】
さらに、本実施形態のバスバーユニット100では、ステータ側からN相バスバー40、V相バスバー20、U相バスバー10、W相バスバー30の順に配設されているが、その他の並び順であってもよい。この場合、バスバー軸方向の中央側に配設される2つのバスバーが1次インサート成形されて1次成形部材を構成し、この1次成形部材と残りの2つのバスバーが2次インサート成形されてバスバーユニットを構成する。