特許第6155068号(P6155068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155068
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20170619BHJP
   H02K 37/24 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   H02K7/06 A
   H02K37/24 Q
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-67767(P2013-67767)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193053(P2014-193053A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−199728(JP,A)
【文献】 特開2009−073461(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/068910(WO,A1)
【文献】 特開2012−053202(JP,A)
【文献】 特開平09−236162(JP,A)
【文献】 実開平5−11115(JP,U)
【文献】 特開平8−340668(JP,A)
【文献】 特開2001−286108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
H02K 37/24
F16H 25/12− 25/24
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体部と、
該モータ本体部から突出した回転軸と、
該回転軸に従動する従動部材と、
前記モータ本体部に固定されたフレームと、
前記回転軸に並列した状態で前記フレームに保持された支持軸と、
を有し、
前記フレームは、前記モータ本体部に固定された第1板部と、該第1板部に対向して前記回転軸の先端部を支持する第2板部と、前記第1板部と前記第2板部とを連結する連結部と、を備え、
前記支持軸の第1端部は前記第1板部に固定され、
前記支持軸の第2端部は前記第2板部に固定され、
前記第1端部と前記第1板部との第1固定部分、および前記第2端部と前記第2板部との第2固定部分のうちの少なくとも一方では、前記支持軸が前記フレームに形成された貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接により固定され
前記溶接により固定された溶接個所は、前記支持軸の端部の先端面と前記フレームの外側の面とからなる平坦面に形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記第1固定部分、および前記第2固定部分の双方において、前記支持軸と前記フレームとが溶接により固定されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1固定部分および前記第2固定部分のうちの双方において、前記支持軸が前記フレームに形成された貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接されていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記第1固定部分および前記第2固定部分のうちの一方では、前記支持軸が前記フレームに形成された前記貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接され
他方では、前記フレームに形成された段付き穴に前記支持軸の段付きの端部が嵌っていることを特徴とする請求項に記載のモータ。
【請求項5】
前記第1固定部分および前記第2固定部分のうちの少なくとも一方では、前記支持軸の周方向の一部のみが溶接されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記第1板部は、前記回転軸の軸線方向からみたときに前記モータ本体部より径方向外側に張り出した第1張り出し部を備え、
前記第2板部は、前記回転軸の軸線方向からみたときに前記モータ本体部より径方向外側に張り出した第2張り出し部を備え、
前記第1端部は前記第1張り出し部に固定され、
前記第2端部は前記第2張り出し部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記回転軸と前記支持軸との間隔は、前記回転軸と前記連結部との間隔より広いことを特徴とする請求項に記載のモータ。
【請求項8】
前記従動部材は、前記回転軸の外周面に形成された螺旋溝と係合する係合部と、前記支持軸に摺動するガイド穴とを備えた直動部材であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ本体部に固定されたフレームに回転軸の先端部および支持軸の両端部が支持されたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータ等のモータにおいては、モータ本体部に固定されたフレームに回転軸の先端部および支持軸の両端部が支持された構造が提案されており、支持軸は、回転軸に従動して直動する従動部材のガイド軸等として用いられる。フレームは、モータ本体部に固定された第1板部と、第1板部に対向して回転軸の先端部を支持する第2板部と、第1板部と第2板部とを連結する連結部とを備えている。
【0003】
かかる構成のモータにおいて、支持軸をフレームに固定するにあたっては、第1板部および第2板部に貫通穴からなる取り付け穴を形成した後、取り付け穴に衝撃を加えてバリを発生させ、バリの内側の小径部分を利用して、支持軸端部を固定した構造が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、バリを利用するため、手間がかかる割には、フレームに対する支持軸の固定強度が十分でないという問題点がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、モータ本体部に固定されたフレームに支持軸の端部を効率よく適正に固定することのできるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータは、モータ本体部と、該モータ本体部から突出した回転軸と、該回転軸に従動する従動部材と、前記モータ本体部に固定されたフレームと、前記回転軸に並列した状態で前記フレームに保持された支持軸と、を有し、前記フレームは、前記モータ本体部に固定された第1板部と、該第1板部に対向して前記回転軸の先端部を支持する第2板部と、前記第1板部と前記第2板部とを連結する連結部と、を備え、前記支持軸の第1端部は前記第1板部に固定され、前記支持軸の第2端部は前記第2板部に固定され、前記第1端部と前記第1板部との第1固定部分、および前記第2端部と前記第2板部との第2固定部分のうちの少なくとも一方では、前記支持軸が前記フレームに形成された貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接により固定され、前記溶接により固定された溶接個所は、前記支持軸の端部の先端面と前記フレームの外側の面とからなる平坦面に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、第1端部と第1板部との第1固定部分、および第2端部と第2板部との第2固定部分のうちの少なくとも一方では、支持軸とフレームとが溶接により固定されており、かかる固定構造であれば、支持軸とフレームとを短時間に効率よく固定することができる。また、溶接による固定であれば、十分な強度を安定して得ることができるので、フレームに支持軸を適正に固定することができる。更に、第1固定部分および第2固定部分のうちの少なくとも一方では、支持軸が前記フレームに形成された貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接されているため、レーザスポット等を利用して溶接を行う場合、支持軸やフレームが溶接作業を妨げることがない。
【0009】
本発明において、前記第1固定部分、および前記第2固定部分の双方において、前記支持軸と前記フレームとが溶接により固定されていることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記第1固定部分および前記第2固定部分の双方において、前記支持軸が前記フレームに形成された前記貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接されていることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記第1固定部分および前記第2固定部分のうちの一方では、前記支持軸が前記フレームに形成された前記貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接され、他方では、前記フレームに形成された段付き穴に前記支持軸の段付きの端部が嵌っている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、一方の端部を溶接により固定する際、他方側において、段付き穴に支持軸の段付きの端部を嵌めて支持軸を支持した状態とすることができるので、溶接作業を行いやすい。
【0013】
本発明において、前記第1固定部分および前記第2固定部分のうちの少なくとも一方では、前記支持軸の周方向の一部のみが溶接されていることが好ましい。かかる構成によれば、溶接に要する時間を短縮することができる。
【0014】
本発明において、前記第1板部は、前記回転軸の軸線方向からみたときに前記モータ本体部より径方向外側に張り出した第1張り出し部を備え、前記第2板部は、前記回転軸の軸線方向からみたときに前記モータ本体部より径方向外側に張り出した第2張り出し部を備え、前記第1端部は前記第1張り出し部に固定され、前記第2端部は前記第2張り出し部に固定されていることが好ましい。かかる構成によれば、回転軸と支持軸との間隔を広く設定した場合においても、フレームおよび支持軸の構造体によってフレームの強度を確保することができる。
【0015】
本発明において、前記回転軸と前記支持軸との間隔は、前記回転軸と前記連結部との間隔より広いことが好ましい。かかる構成によれば、フレームおよび支持軸の構造体によってフレームを補強した構造とすることができる。
【0016】
本発明において、前記従動部材は、前記回転軸の外周面に形成された螺旋溝と係合する係合部と、前記支持軸に摺動するガイド穴とを備えた直動部材である構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、第1端部と第1板部との第1固定部分、および第2端部と第2板部との第2固定部分のうちの少なくとも一方では、支持軸とフレームとが溶接により固定されており、かかる固定構造であれば、支持軸とフレームとを短時間に効率よく固定することができる。また、溶接による固定であれば、十分な強度を安定して得ることができるので、フレームに支持軸を適正に固定することができる。更に、第1固定部分および第2固定部分のうちの少なくとも一方では、支持軸が前記フレームに形成された貫通穴に嵌った状態で当該支持軸が延在している側とは反対側から溶接されているため、レーザスポット等を利用して溶接を行う場合、支持軸やフレームが溶接作業を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係るモータの説明図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るモータの製造工程のうち、フレームに支持軸を固定する工程を示す説明図である。
図3】本発明の実施の形態2に係るモータの製造工程のうち、フレームに支持軸を固定する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用したモータの一例を説明する。なお、以下の説明において、モータ軸線方向Lのうち、回転軸50がステータ40から突出している側を出力側L1とし、回転軸50がステータ40から突出している側とは反対側を反出力側L2として説明する。
【0020】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るモータの説明図である。図1に示すモータ1は、デジタルカメラのレンズ駆動等に用いられるステッピングモータであり、円筒状のステータ40を有している。ステータ40では、A相用のステータとB相用のステータとがモータ軸線方向Lに重ねて配置された構造を有している。このため、ステータ40では、コイル線46が巻回された環状の2つのコイルボビン42(第1コイルボビン42Aと第2コイルボビン42B)がモータ軸線方向Lに重ねて配置されており、かかるコイルボビン42には各々、内ステータコア43および外ステータコア44が重ねて配置されている。より具体的には、第1コイルボビン42Aにおいてモータ軸線方向Lの両側には、環状の内ステータコア43A、および断面U字形状の外ステータコア44Aが重ねて配置され、第2コイルボビン42Bにおいてモータ軸線方向Lの両側には、環状の内ステータコア43B、および断面U字形状の外ステータコア44Bが重ねて配置されている。第1コイルボビン42Aおよび第2コイルボビン42Bの内周面では、内ステータコア43A、43Bおよび外ステータコア44A、44Bの複数の極歯45が周方向に並んだ構成となっている。このようにして、ロータ配置穴41を備えた円筒状のステータ40が構成されており、ステータ40の径方向内側にはロータ5が同軸状に配置されている。本形態では、外ステータコア44A、44Bが各々、第1コイルボビン42Aおよび第2コイルボビン42Bの径方向外側まで延在してモータケースを構成している。
【0021】
従って、本形態では、ステータ40によってモータ本体部10が構成されている。このため、モータ本体部10の出力側L1の端面11は、外ステータコア44Aの環状部分47からなり、モータ本体部10の反出力側L2の端面12は、外ステータコア44Bの環状部分48からなり、モータ本体部10の外周面13は、外ステータコア44A、44Bの外側に形成された円筒部分49からなる。
【0022】
ロータ5では回転軸50がモータ軸線方向Lに延在し、回転軸50は、モータ本体部10の出力側L1の端面11から突出している。回転軸50の反出力側L2寄りの位置には円筒状の永久磁石59が接着剤56によって固着されている。永久磁石59は、ステータ40の内側(ロータ配置穴41)において、外周面が径方向の内側でステータ40の極歯45と所定の間隔を介して対向している。回転軸50は、ステンレス、真鍮、アルミニウム等の金属材料からなり、回転軸50の外周面のうち、モータ本体部10から突出する側(出力側L1)の外周面57には螺旋溝58が形成されている。回転軸50において、螺旋溝58が形成されている部分は、永久磁石59が固着されている部分より大径である。
【0023】
(フレーム3の構成)
モータ本体部10に対して出力側L1にはフレーム3が設けられている。フレーム3は、モータ本体部10の出力側L1の端面11(外ステータコア44Aの環状部分47)に溶接等の方法で固定された第1板部31と、第1板部31に出力側L1で対向して回転軸50の出力側L1の端部51を支持する第2板部32と、モータ軸線方向Lに延在して第1板部31と第2板部32とを連結する連結部33とを備えている。第1板部31には、回転軸50を貫通させる穴30が形成されている。また、第1板部31は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に張り出した第1張り出し部313を備えている。また、第2板部32は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に張り出した第2張り出し部323を備えている。
【0024】
ここで、第1板部31と第2板部32との間には、金属製の支持軸9が配置されており、支持軸9は、金属製のフレーム3に両端が保持されている。より具体的には、支持軸9の反出力側L2の第1端部91は、フレーム3の第1板部31に固定され、支持軸9の出力側L1の第2端部92は、フレーム3の第2板部32に固定されている。かかる支持軸9のフレーム3への固定構造は、図2を参照して後述する。
【0025】
(出力側L1の軸受構造)
フレーム3において第2板部32には、回転軸50の出力側L1の端部51をモータ軸線方向Lおよび径方向で回転可能に支持する出力側L1の軸受機構6が構成されている。かかる軸受機構6では、フレーム3の第2板部32に出力側L1の軸受部材60が固定されており、回転軸50の出力側L1の端部51は、軸受部材60の反出力側L2の端面で出力側L1に向けて凹む凹部61の内側に嵌って支持されている。軸受部材60は、フレーム3の第2板部32に形成された穴329を貫通した状態で第2板部32の反出力側L2の面に当接する大径部64を有しており、軸受部材60は、大径部64によって出力側L1への移動が規制されている。回転軸50において、出力側L1の端部51は、螺旋溝58が形成されている部分より小径であり、かつ、半球状に加工されている。
【0026】
(反出力側L2の軸受機構7の概略構成)
本形態のモータ1において、回転軸50の反出力側L2の端部52には、回転軸50の反出力側L2の端部52をモータ軸線方向Lおよび径方向で回転可能に支持する反出力側L2の軸受機構7が構成されている。本形態において、永久磁石59の反出力側L2の端面には、出力側L1に向けて凹む凹部595が形成されており、軸受機構7は、永久磁石59から反出力側L2に向けて突出する回転軸50の反出力側L2の端部52を凹部595の内側で回転可能に支持している。回転軸50において、反出力側L2の端部52は半球状に加工されている。
【0027】
反出力側L2の軸受機構7では、回転軸50の反出力側L2の端部52の周りに円盤状の軸受部材70が配置されており、回転軸50の端部52は、軸受部材70の円筒部71の内側に嵌って回転可能に支持されている。軸受部材70に対して反出力側L2には、端板8が配置されており、軸受部材70は、端板8とステータ40との間に保持されている。ここで、端板8は、回転軸50を出力側L1に向けて付勢する付勢部材として構成されている。より具体的には、端板8は、ステータ40の反出力側L2の環状部分48に溶接等により固定された円板部81と、円板部81の中央部分で切り起こされた板バネ部85とを備えており、円板部81は、ステータ40との間に軸受部材70の端部を保持し、板バネ部85は、回転軸50を出力側L1に向けて付勢している。ここで、回転軸50の出力側L1には、回転軸50の出力側L1の端部51をモータ軸線方向Lおよび径方向で回転可能に支持する出力側L1の軸受機構6が構成されている。従って、回転軸50は、出力側L1の端部51が軸受機構6に当接するように付勢された状態にあるため、回転軸50が回転した際、回転軸50のモータ軸線方向Lでのがたつきが防止されている。
【0028】
(支持軸9の固定構造)
本形態のモータ1では、フレーム3の第1板部31と第2板部32との間に支持軸9が回転軸50と並列するように固定されており、支持軸9は長さ方向の全体にわたって外形寸法が一定の丸棒である。かかる支持軸9は、従動部材2のガイド軸等として機能する。例えば、本形態のモータ1において、従動部材2は、回転軸50の外周面57に形成された螺旋溝58と係合する係合部21と、支持軸9に摺動するガイド穴22とを備えた直動部材である。従って、支持軸9は、従動部材2の供回りを阻止しながら、従動部材2を回転軸50のモータ軸線方向Lに沿ってガイドする。
【0029】
ここで、第1板部31は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に張り出した第1張り出し部313を備え、かかる第1張り出し部313に支持軸9の第1端部91が固定されている。また、第2板部32は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に張り出した第2張り出し部323を備え、かかる第2張り出し部323に支持軸9の第2端部92が固定されている。このため、支持軸9は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に配置されている。また、フレーム3の連結部33は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向内側に配置されている。従って、回転軸50と支持軸9との間隔は、回転軸50と連結部33との間隔より広い。
【0030】
このような構成のモータ1を構成するにあたって、本形態では、支持軸9の第1端部91とフレーム3の第1板部31との第1固定部分9a、および支持軸9の第2端部92とフレーム3の第2板部32との第2固定部分9bのうちの少なくとも一方では、支持軸9とフレーム3とが溶接により固定されている。本形態では、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bの双方において、支持軸9とフレーム3とが溶接により固定されている。
【0031】
より具体的には、第1固定部分9aでは、支持軸9の第1端部91がフレーム3の第1板部31の第1張り出し部313に形成された貫通穴からなる取り付け穴310に嵌った状態で第1端部91と第1張り出し部313とが溶接されている。その際、溶接は、支持軸9が延在している側とは反対側(反出力側L2)から行われている。また、第2固定部分9bでは、支持軸9の第2端部92がフレーム3の第2板部32の第2張り出し部323に形成された貫通穴からなる取り付け穴320に嵌った状態で第2端部92と第2張り出し部323とが溶接されている。その際、溶接は、支持軸9が延在している側とは反対側(出力側L1)から行われている。
【0032】
また、本形態では、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bでは、支持軸9の周方向の一部のみが溶接されている。このため、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bでは、支持軸9の周方向のうち、回転軸50が位置する側とは反対側にのみ、溶接個所Lr、Lsが存在する。また、支持軸9は、第1板部31と第2板部32との間の寸法と同一である。このため、支持軸9の第1端部91は、第1板部31から反出力側L2に突出せず、支持軸9の第1端部91は、第1板部31の反出力側L2の面と同一の位置にある。また、支持軸9の第2端部92は、第2板部32から出力側L1に突出せず、支持軸9の第2端部92は、第2板部32の出力側L1の面と同一の位置にある。従って、溶接個所Lrは、支持軸9の第1端部91の先端面915と第1板部31の反出力側L2の面とからなる平坦面に形成され、溶接個所Lsは、支持軸9の第2端部92の先端面925と第2板部32の出力側L1の面とからなる平坦面に形成されている。
【0033】
(支持軸9の固定工程)
図2は、本発明の実施の形態1に係るモータ1の製造工程のうち、フレーム3に支持軸9を固定する工程を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、第2固定部分9bを構成する工程の説明図、図2(a)において円Leで囲った領域を拡大して示す説明図、図2(a)において円Leで囲った領域を拡大して示す断面図、および第1固定部分9aを構成する工程の説明図である。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、回転軸50に従動部材2を結合させた状態とする。この状態で、第1板部31には貫通穴からなる取り付け穴310が形成され、第2板部32には貫通穴からなる取り付け穴320が形成されている。ここで、取り付け穴310および取り付け穴320の内径寸法は、支持軸9の外径寸法よりわずかに大である。従って、取り付け穴310から支持軸9を通して、支持軸9を従動部材2に貫通させ、取り付け穴320に嵌めることができる。その際、支持軸9が下方に抜け落ちないように、支持軸9の第1端部91を受け部材98で受ける。なお、本形態では、取り付け穴310、320の内径寸法が支持軸9の外径寸法よりも大きいので、組み付け時に第1板部31、第2板部32および支持軸9に負荷が加わりにくい。それ故、第1板部31、第2板部32および支持軸9に変形や傾きが発生しにくい。
【0035】
この状態で、矢印Lbで示すように、支持軸9の第2端部92の外周面と取り付け穴320の内周面との境界部分のうち、回転軸50が位置する側とは反対側の境界部分に向けてレーザスポットを出力側L1から照射し、第2端部92と第2板部32とを溶接する。その結果、図2(a)、(b)、(c)に示すように、第2端部92と第2板部32との第2固定部分9bが構成され、かかる第2固定部分9bでは、回転軸50が位置する側とは反対側にのみ溶接個所Lsが形成される。
【0036】
次に、図2(d)に矢印Laで示すように、支持軸9の第1端部91の外周面と取り付け穴310の内周面との境界部分のうち、回転軸50が位置する側とは反対側の境界部分に向けてレーザスポットを反出力側L2から照射し、第1端部91と第1板部31とを溶接する。その結果、第1端部91と第1板部31との第1固定部分9aが構成され、かかる第1固定部分9aでは、回転軸50が位置する側とは反対側にのみ溶接個所Lrが形成される。その結果、フレーム3に支持軸9が固定された状態となる。
【0037】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ1では、支持軸9の第1端部91とフレーム3の第1板部31との第1固定部分9a、および支持軸9の第2端部92とフレーム3の第2板部32との第2固定部分9bでは、支持軸9とフレーム3とが溶接により固定されている。かかる固定構造であれば、バリ等を利用する形態や接着剤を用いた形態と違って、支持軸9とフレーム3とを短時間に効率よく固定することができる。また、溶接による固定であれば、バリ等を利用する形態や接着剤を用いた形態と違って、十分な強度を安定して得ることができるとともに、接着剤が余計な箇所に付着する等の問題が発生しない等、フレーム3に支持軸9を適正に固定することができる。
【0038】
また、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bでは、支持軸9が延在している側とは反対側(矢印La、Lbで示す側)から溶接が行われている。このため、レーザスポットを照射して溶接を行う場合、支持軸9やフレーム3が溶接作業を妨げることがない。また、支持軸9が延在している側とは反対側から溶接が行われているため、支持軸9において第1板部31と第2板部32とに挟まれた部分が溶接時の熱で変形するという事態が発生しにくい。それ故、従動部材2がスムーズに移動することになる、また、溶接痕が突出するように生成されても、かかる溶接痕は、第1板部31より反出力側L2または第2板部32より出力側L1に生成されることになる。従って、従動部材2の可動範囲が狭まることがない。
【0039】
また、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bでは、支持軸9の周方向の一部のみが溶接されている。このため、溶接に要する時間を短縮することができる。さらに、溶接位置は、回転軸50が位置する側とは反対側のため、溶接による熱などがモータ本体部10側に伝わりにくい。
【0040】
さらに、第1板部31は、回転軸50の軸線方向(モータ軸線方向L)からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に張り出した第1張り出し部313を備え、かかる第1張り出し部313に支持軸9の第1端部91が固定されている。また、第2板部32は、回転軸50の軸線方向からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に張り出した第2張り出し部323を備え、かかる第2張り出し部323に支持軸9の第2端部92が固定されている。このため、支持軸9は、回転軸50の軸線方向からみたときにモータ本体部10の外周面13より径方向外側に配置されている。また、回転軸50と支持軸9との間隔は、回転軸50と連結部33との間隔より広い。それ故、フレーム3をフレーム3および支持軸9からなる構造体によって効果的に補強することができる。特に本形態では、フレーム3が支持軸9と一体の構造体を構成しているとともに、連結部33から十分に離間した位置で第1板部31と第2板部32が支持軸9を介して連結されている。従って、第1板部31と連結部33との角部分や、第2板部32と連結部33との角部分が変形しようとする力が加わったときでも、かかる変形が発生しにくい。
【0041】
[実施の形態2]
図3は、本発明の実施の形態2に係るモータ1の製造工程のうち、フレーム3に支持軸9を固定する工程を示す説明図であり、図3(a)、(b)、(c)は、第2固定部分9bを構成する工程の説明図、図3(a)において円Lfで囲った領域を拡大して示す断面図、および第1固定部分9aを構成する工程の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0042】
本形態のモータ1でも、実施の形態1と同様、フレーム3の第1板部31と第2板部32との間に支持軸9が回転軸50と並列するように固定されており、かかる支持軸9は、従動部材2のガイド軸として機能する。
【0043】
このような構成のモータ1を製造するにあたって、本形態では、まず、図2(a)に示すように、回転軸50に従動部材2を結合させた状態とする。この状態で、第1板部31には貫通穴からなる取り付け穴310が形成され、第2板部32には貫通穴からなる取り付け穴320が形成されている。ここで、取り付け穴320の内径寸法は、支持軸9の外径寸法よりわずかに大である。
【0044】
これに対して、取り付け穴310は、図3(b)に示すように、支持軸9の外径寸法より内径寸法がわずかに大の大径部310aと、大径部310aより反出力側L2で支持軸9の外径寸法より内径寸法が小の小径部310cとを備えた段付き穴になっており、大径部310aと小径部310cとの間に段部310bが形成されている。かかる構成に対応して、支持軸9の第1端部91は、第2端部92側から同一の外径寸法で延在してきた大径部91aと、大径部91aより反出力側L2で大径部91aより外径寸法が小の小径部91bとを備えた段付きの軸端部になっており、大径部91aと小径部91bとの間に段部91cが形成されている。このため、取り付け穴320の側からに支持軸9を通した際、支持軸9の第1端部91は段付穴からなる取り付け穴310で支持されることになる。
【0045】
この状態で、図3(a)に矢印Lbで示すように、支持軸9の第2端部92の外周面と取り付け穴320の内周面との境界のうち、回転軸50が位置する側とは反対側に向けてレーザスポットを出力側L1から照射し、第2端部92と第2板部32とを溶接する。その結果、第2端部92と第2板部32との第2固定部分9bが構成され、かかる第2固定部分9bでは、回転軸50が位置する側とは反対側にのみ溶接個所Lsが形成される。
【0046】
次に、図3(c)に矢印Laで示すように、支持軸9の第1端部91の外周面と取り付け穴310の内周面との境界のうち、回転軸50が位置する側とは反対側に向けてレーザスポットを反出力側L2から照射し、第1端部91と第1板部31とを溶接する。その結果、第1端部91と第1板部31との第1固定部分9aが構成され、かかる第1固定部分9aでは、回転軸50が位置する側とは反対側にのみ溶接個所Lrが形成される。その結果、フレーム3に支持軸9が固定された状態となる。
【0047】
このように、本形態でも、実施の形態1と同様、支持軸9の第1端部91とフレーム3の第1板部31との第1固定部分9a、および支持軸9の第2端部92とフレーム3の第2板部32との第2固定部分9bでは、支持軸9とフレーム3とが溶接により固定されている。従って、支持軸9とフレーム3とを短時間に効率よく固定することができるとともに、フレーム3に支持軸9を適正に固定することができる等、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0048】
また、本形態では、フレーム3の第1板部31に形成された段付き穴(取り付け穴310)に支持軸9の段付きの第1端部91が嵌っている構成になっている。このため、第2端部92を溶接により固定する際、第1端部91において、段付き穴(取り付け穴310)に支持軸9の段付きの第1端部91を嵌めて支持軸9を支持した状態とすることができるので、溶接作業を行いやすい。
【0049】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、従動部材2が、回転軸50の外周面57に形成された螺旋溝58と係合する係合部21と、支持軸9に摺動するガイド穴22とを備えた直動部材であるため、支持軸9がガイド軸として機能していたが、回転軸50に駆動用の歯車を設け、かかる駆動用の歯車と噛合する歯車が従動部材2として、支持軸9に回転支持された構造であってもよい。
【0050】
上記実施の形態では、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bの双方で溶接による固定が採用されている形態であったが、第1固定部分9aおよび第2固定部分9bの一方のみで溶接による固定が採用されている形態であってもよい。例えば、実施の形態2では、第2固定部分9bのみで溶接による固定が採用され、第1固定部分9aでは、フレーム3の第1板部31に形成された段付き穴(取り付け穴310)に支持軸9の段付きの第1端部91が嵌って固定されている構成になっていてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、フレーム3および支持軸9の双方が金属製であったが、溶接を利用できる材料であれば、フレーム3および支持軸9の双方が樹脂製であってもよい。
【0052】
上記実施の形態では、第1板部31および第2板部32の双方が平板状であったが、第1板部31および第2板部32の少なくとも一方が、モータ本体部10から径方向外側に張り出す途中で屈曲している構成であってもよい。また、フレーム3に張り出し部が形成されておらず、支持軸9の固定位置がモータ軸線方向Lでモータ本体部10と重なっている構成でも良い。また、支持軸9に対する溶接は全周でもよい。また、支持軸9に対する溶接は、周方向においてモータ本体部10が位置する側であってもよい。
【0053】
さらに、本発明は、ステッピングモータに限らず、ブラシ付きモータ等、他のモータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 モータ
2 従動部材
3 フレーム
9 支持軸
9a 第1固定部分
9b 第2固定部分
10 モータ本体部
31 第1板部
32 第2板部
40 ステータ
50 回転軸
91 第1端部
92 第2端部
313 第1張り出し部
323 第2張り出し部
La、Lb レーザスポットの照射方向
Lr、Ls 溶接個所
図1
図2
図3