(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155071
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20170619BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
H05K13/04 A
H02K41/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-69651(P2013-69651)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-192508(P2014-192508A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】500548884
【氏名又は名称】ハンファテクウィン株式会社
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TECHWIN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 尚人
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/040913(WO,A1)
【文献】
特開2011−233634(JP,A)
【文献】
特開2003−309963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
H02K 9/00−9/28,41/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品保持ヘッドをXYガントリに搭載し、当該XYガントリを、コイルを可動子とするリニアモータにより駆動させる部品実装機において、
前記コイル側に、前記リニアモータの回生電力を蓄電する回生ユニットと、この回生ユニットから供給される電力により駆動するコイル冷却手段とを配置し、前記コイル、前記回生ユニット及び前記コイル冷却手段を一体化し、
前記コイルの移動方向の一端側に前記回生ユニットを配置し、前記コイルの移動方向の他端側に前記コイル冷却手段を配置し、
前記冷却手段は送風ファンからなり、前記コイルに前記送風ファンから送風されるエアを通過させるエア通路を設けたことを特徴とする部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等の部品を基板上に実装する部品実装機に関し、特に、実装のために部品を保持する部品保持ヘッドをXYガントリに搭載し、当該XYガントリをリニアモータにより駆動させる部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装機に使用されるXYガントリは直交するX方向ビームとY方向ビームとを備え、例えば、一対のY方向ビームを定盤上に固定し、この一対のY方向ビームに架け渡すようにX方向ビームを配置し、X方向ビームをY方向ビームに沿って移動としている。この場合、部品保持ヘッドはX方向ビームにX方向に移動可能に搭載される。これによりXYガントリは、部品保持ヘッドを水平面内でXY方向に自在に移動させ、特定のXY位置で停止させて位置決めする。
【0003】
かかる部品実装機のXYガントリの駆動には、高稼動化及び軽量化を目的とし、リニアモータが多く採用されている。また、XYガントリに採用されるリニアモータとしては、コイルを可動子、マグネットを固定子としたものが一般的である。
【0004】
ところでリニアモータにおいては、そのコイルに電流が流れることによる発熱、及びその発熱による性能劣化の問題があることから、従前よりリニアモータの冷却方法が検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、リニアモータの固定子(マグネット)側のY軸テーブルにエア通路を設けるとともに、そのエア通路にエアを流通させる一対のファン(エア送り出し用ファン及びエア吸い出し用ファン)を設けた部品実装機が提案されている。
【0006】
しかし、リニアモータにおいて発熱するのはコイル(可動子)であり、特許文献1のように固定子(マグネット)側を冷却する方法では、十分な冷却効果を得ることができない。部品実装機においてリニアモータのコイルは、部品実装機の構造体に直接取り付けられるため、コイルの冷却が十分でないとその構造体に熱変形が生じ、部品実装精度の低下を招く。また、リニアモータの冷却が十分でないと、発熱による性能劣化を考慮してリニアモータの性能(推力)を大きく設計する必要がある。その結果、リニアモータが大型化し、重量増加や消費電力の増大を招く。リニアモータの重量が大きくなると、XYガントリの駆動時の振動が大きくなる。
【0007】
一方、コイルを直接冷却するために、例えば特許文献1の冷却手段であるファンをコイル側に設けようとすると、ファンに電力を供給するために外部からの配線が必要となり、構造が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−263356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、部品保持ヘッドを搭載するXYガントリの駆動をリニアモータにより行う部品実装機において、リニアモータの可動子であるコイルの冷却効果を簡単な構造で高めることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、部品保持ヘッドをXYガントリに搭載し、当該XYガントリを、コイルを可動子とするリニアモータにより駆動させる部品実装機において、前記コイル側に、前記リニアモータの回生電力を蓄電する回生ユニットと、この回生ユニットから供給される電力により駆動するコイル冷却手段とを配置し、前記コイル、前記回生ユニット及び前記コイル冷却手段を一体化し
、前記コイルの移動方向の一端側に前記回生ユニットを配置し、前記コイルの移動方向の他端側に前記コイル冷却手段を配置し、前記冷却手段は送風ファンからなり、前記コイルに前記送風ファンから送風されるエアを通過させるエア通路を設けたことを特徴とする部品実装機が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リニアモータのコイル側にコイル冷却手段を配置しているので、コイルを直接冷却することができ、その冷却効果を高めることができる。また、コイル冷却手段の駆動電力にはリニアモータの回生電力を使用し、更にその回生電力を蓄電する回生ユニットをコイル側に配置して一体化しているので、コイル冷却手段を駆動するために可動子(コイル)側のユニット外との間で配線や配管を設けることが不要となり、構造を簡略化できる。
【0012】
また、リニアモータのコイルの冷却効果が高まることで、発熱によるリニアモータの性能劣化を抑えることができ、その分、リニアモータの推力を小さく設計できる。その結果、リニアモータを小型化することができ、重量及び消費電力を削減でき、装置振動も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例による部品実装機の要部を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の部品実装機のリニアモータ部分の構成を概念的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施例による部品実装機の要部を示す概略断面図である。同図を参照すると、水平面内においてY方向に伸びる一対のY方向ビーム10が図示しない定盤に固定され、水平面内においてY方向と直交するX方向に伸びるX方向ビーム20が一対のY方向ビーム10間に架け渡されており、X方向ビーム20はY方向ビーム10に沿ってY方向に移動可能である。また、X方向ビーム20には部品保持ヘッド30がX方向に移動可能に支持されており、部品保持ヘッド30はX方向ビーム20に支持されつつX方向に移動する。部品保持ヘッド30は、部品を保持するために吸着ノズル等からなる部品保持具31を有する。なお、
図1中符号40は、X方向ビーム20をY方向に案内するリニアガイドである。
【0016】
このようにX方向ビーム20及びY方向ビーム10によりXYガントリが構成され、このXYガントリが部品保持ヘッド30を水平面内でXY方向に自在に移動させ、特定のXY位置で停止させて位置決めする。本実施例では、このXYガントリにおいて、X方向ビーム20をY方向ビーム10に沿って移動させる駆動源としてリニアモータを使用している。
【0017】
図2は、このリニアモータ50部分の構成を概念的に示す分解斜視図である。
図1及び
図2を参照すると、リニアモータ50は、コイル51を可動子、マグネット52を固定子とする相殺型のリニアモータであり、コイル51はX方向ビーム20側に配置され、マグネット52はY方向ビーム10に沿ってコイル51を挟むように配置されている。コイル51には、XYガントリ外に配置された駆動アンプ60より駆動電流が供給され、その駆動電流によりリニアモータ50が駆動する。
【0018】
図2に示すように、コイル51の移動方向(Y方向)の一端側に回生ユニット70が配置され、コイル51の移動方向の他端側にコイル冷却手段として送風ファン80が配置されている。すなわち、回生ユニット70及び送風ファン80は、コイル51の移動方向両側にコイル51を挟むように配置され、コイル51、回生ユニット70及び送風ファン80は、一つのユニットとして一体化されている。
【0019】
回生ユニット70は、リニアモータ50が減速するときに生じる回生電力を蓄電し、送風ファン80は、回生ユニット70から供給される電力により駆動する。コイル51には、送風ファン80から送風されるエアを通過させるために移動方向(Y方向)に貫通するエア通路51aが設けられている。
【0020】
このように本実施例では、送風ファン80から送風されるエアによってコイル51自体を直接冷却するので、その冷却効果を高めることができる。また、送風ファン80の駆動電力にはリニアモータ50の回生電力を使用し、更にその回生電力を蓄電する回生ユニット70をコイル51側に配置して一体化しているので、送風ファン80を駆動するために可動子(コイル51)側のユニット外との間で配線や配管を設けることが不要となり、構造を簡略化できる。また、回生ユニット70は、送風ファン80を駆動するに足りる電力を蓄電すれば済むので、大型化することはない。
【0021】
なお、本実施例では、コイル冷却手段として送風ファン80を使用したが、コイル冷却手段はこれに限定されず、例えば熱電素子をコイル冷却手段として使用してもよい。また、本実施例では、XYガントリにおいてX方向ビーム20をY方向ビーム10に沿って移動させるリニアモータを例として説明したが、本発明は、部品保持ヘッド30をX方向ビーム20に沿って移動させるリニアモータにも適用可能である。リニアモータは相殺型でも対向型でもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 Y方向ビーム
20 X方向ビーム
30 部品保持ヘッド
31 部品保持具
40 リニアガイド
50 リニアモータ
51 コイル
51a エア通路
52 マグネット
60 駆動アンプ
70 回生ユニット
80 送風ファン(コイル冷却手段)