特許第6155103号(P6155103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6155103-可溶栓 図000002
  • 特許6155103-可溶栓 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155103
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】可溶栓
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20170619BHJP
   F16K 17/38 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   F25B49/02 540
   F16K17/38 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-123797(P2013-123797)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240731(P2014-240731A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】細川 侯史
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−169759(JP,A)
【文献】 特開2002−286138(JP,A)
【文献】 特開2006−329374(JP,A)
【文献】 特開2009−203501(JP,A)
【文献】 実開昭62−179472(JP,U)
【文献】 米国特許第05076313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F16K 17/38
F16J 12/00
F16J 13/24
F17C 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に備わっているストレート形の貫通穴に、所定温度で溶解する低融点金属が充填されてなる可溶栓であって、
前記貫通穴の壁面に環状溝が形成され、
前記貫通穴の受圧側に、開放端側に向けて尖った尖頭形状をしたプラグ部材が装填されていることを特徴とする可溶栓。
【請求項2】
前記プラグ部材の尖頭形状は、円錐状、切頭円錐状又は砲弾状のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の可溶栓。
【請求項3】
前記プラグ部材は、前記低融点金属よりも高い融点を有する材料にて形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可溶栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置内の高温、高圧となる凝縮器や受液器等に使用される可溶栓に関する。
【背景技術】
【0002】
上記用途に用いられる可溶栓は、本体に穿設された貫通穴とこの貫通穴に充填される低融点金属等で構成され、所定の温度に達すると、貫通穴に充填された低融点金属が溶融して内部の冷媒を外部に放出して冷凍装置の破損を防止する。
【0003】
従来、この可溶栓には主に鉛(Pb)やカドミウム(Cd)等を含む低融点金属(以下「非RoHS品」という。)を用いていたが、EU加盟国で環境や人体に悪影響を及ぼす危険物質の使用を禁止するRoHS指令が採決されたことにより、鉛やカドミウムを使用した製品を同圏内で発売することが全面的に禁止されることになった。そのため、鉛やカドミウム等を含まない物質(以下「RoHS品」という。)の使用が進められている。
【0004】
そこで、特許文献1には、筒体状の本体内の貫通孔に、錫、ビスマス、インジウムからなるはんだ合金を充填し、カドミウム等の有害物質を一切含まずクリープ特性に優れた低融点金属を有する可溶栓が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−203501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1等に記載の可溶栓では、RoHS品が成分偏析や内部のボイド等の欠陥により使用中に局所的な強度低下が生じ易く、また、近年オゾン層の破壊を防止するためにフロンの代わりに二酸化炭素を冷媒として使用することで冷凍装置内が高圧となっていることもあり、所定の温度に達して可溶栓が作動する前、すなわち可溶栓が正常に作動する前に、前記強度低下を生じた部分が起点となって冷凍装置内の圧力により低融点金属が押し出される恐れがあった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みて、RoHS品を使用した場合でも可溶栓が正常に作動する前に低融点金属が押し出されることがなく、安定した作動を実現することのできる可溶栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の可溶栓は、本体に備わっているストレート形の貫通穴に所定温度で溶解する低融点金属が充填されてなる可溶栓であって、前記貫通穴の壁面に環状溝が形成され、前記貫通穴の受圧側に開放端側に向けて尖った尖頭形状をしたプラグ部材が装填されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の可溶栓によれば、尖頭形状をしたプラグ部材を用いて受圧側の圧力を受けることにより、局所的な強度低下の影響を受けることがない。これにより、RoHS品を使用した場合でも、可溶栓の正常な安定した作動を実現することが可能となる。
【0010】
前記可溶栓において、前記プラグ部材の尖頭形状は、円錐状、切頭円錐状又は砲弾状のいずれかとすることが好適であり、前記プラグ部材は、前記低融点金属よりも高い融点を有する材料にて形成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、RoHS品を使用した場合でも可溶栓の安定した作動を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る可溶栓の第1の実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る可溶栓の第2の実施形態を示す断面図である。
図3】本発明に係る可溶栓の第3の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る可溶栓の第1の実施形態を示し、この可溶栓1は筒体状に形成された本体2に備わっているストレート形の貫通穴2eに、所定温度で溶解する低融点金属3が充填され、貫通穴2eの受圧側に開放端側に向けて尖った円錐状プラグ部材4が装填されている。
【0015】
本体2は配管等に接続するためのレンチ等の工具(図示せず。)を係合可能な係合部2aと、可溶栓1の受圧側に存在する凝縮器や受液器等に設けられた雌ねじ部に接続するための第1雄ねじ部2bと、開放端側に存在する配管等の雌ねじ部に接続するための第2雄ねじ部2cと、本体2の内壁面に形成される環状溝2dと、貫通穴2eとを備える。
【0016】
環状溝2dは本体2の内壁面に形成され、本体2と低融点金属3との接着面積を大きくすることで両者間の接着強度を強化し、低融点金属3の剥離を防止すると共に、受圧側の圧力が急激に上昇した場合に低融点金属3が勢いよく飛び出すことを防止する。
【0017】
低融点金属3は、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)等からなり、鉛やカドミウム等を含まないRoHS品を使用する。
【0018】
円錐状プラグ部材4は低融点金属3よりも高い融点を有する材料によって形成され、円筒状の基部4aと基部4aから開放端側に向けて尖った円錐状の尖頭部4bとを有する。円筒状の基部4aの外周面と本体2の貫通穴2eの内周面との嵌め合いは、円錐状プラグ部材4が貫通穴2eの内部を円滑に移動できる程度に設定する。
【0019】
円錐状プラグ部材4の材質としては、低融点金属3よりも高い融点を有する材料であれば、金属材料又は樹脂材料のいずれでも使用可能である。金属材料であれば、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銅合金(真鍮)等が使用可能である。樹脂材料であれば、テフロン(登録商標)やナイロン等が使用可能である。
【0020】
この円錐状プラグ部材4を本体2の貫通穴2eの受圧側に装填する際には、貫通穴2eに充填された低融点金属3が凝固しないうちにプラグ部材4を貫通穴2eの受圧側から押し込んで低融点金属3と隙間無く密着させ、低融点金属3の内部に局所的な強度低下・ボイドが発生した場合でも影響を少なくできる。
【0021】
上記構成を有する可溶栓1は、本体2の貫通穴2eの受圧側に装填された円錐状プラグ部材4によって受圧側の圧力を受けることができ、低融点金属3に成分偏析や内部ボイド等の欠陥の影響を受けることなく安定的に低融点金属3を押し出すことができる。これにより、可溶栓1の安定した正常作動を実現することができる。
【0022】
図2は本発明に係る可溶栓の第2の実施形態を示す。この可溶栓5は、上記第1の実施形態における円錐状プラグ部材4に代えて切頭円錐状プラグ部材6を用いており、その他の構成は可溶栓1と同様である。
【0023】
切頭円錐状プラグ部材6は第1の実施形態と同様の材料で形成され、円筒状の基部6aと、基部6aから開放端側に向けて尖った切頭円錐状の尖頭部6bを有し、基部6aの外周面と本体2の貫通穴2eの内周面との嵌め合いや本体2の貫通穴2eへの装填方法は第1の実施形態の場合と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0024】
図3は本発明に係る可溶栓の第3の実施形態を示す。この可溶栓7は、砲弾状プラグ部材8を用いており、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0025】
砲弾状プラグ部材8は第1の実施形態のプラグ部材4と同様の材料で形成され、円筒状の基部8aと基部8aから開放端側に向けて尖った砲弾状の尖頭部8bを有し、基部8aの外周面と本体2の貫通穴2eの内周面との嵌め合いや本体2の貫通穴2eへの装填方法は円錐状プラグ部材4の場合と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0026】
なお、プラグ部材の形状は円錐状、切頭円錐状、砲弾状に限定されることなく、その他の尖頭形状とすることができる。また、プラグ部材は中空形状に代えて中実形状とすることも勿論可能である。かかる中実形状の場合は棒材からの切削加工品となる。なお、中空のプラグ部材4、6、8はプレス加工品若しくは型成形品である。
【符号の説明】
【0027】
1、5、7 可溶栓
2 本体
2a レンチ係合部
2b 第1雄ねじ部
2c 第2雄ねじ部
2d 環状溝
2e 貫通穴
3 低融点金属
4 円錐状プラグ部材
6 切頭円錐状プラグ部材
8 砲弾状プラグ部材
図1
図2
図3