【実施例】
【0048】
以下、実施例の
液体吸収パッドおよび股下部を有する衣類について、図面を用いて説明する。
(実施例1)
図1〜
図8に、実施例1の
液体吸収パッドを示す。
液体吸収パッド1は、後述する
図9および
図10に示すように、
衣類6における股下部61の肌側に配置される。本例では、具体的には、液体吸収パッド1は、股下部61を有する衣類6における股下部61の肌側に配置されるとともに衣類6に取り付けた状態で用いられる。
より具体的には、
液体吸収パッド1は、生理用ショーツ60における股下部61の肌側面にパッド裏側面を対面させた状態で配置し、その全周縁を股下部61に縫着した状態で用いられる。この際、
液体吸収パッド1は、その前端縁を衣類6の股下部61における前端縁と揃えて縫着される。また、
液体吸収パッド1は、衣類6の着用者の股部から排出される
液体を吸収させるためのものである。本例において吸収させる
液体は、主に生理時における経血やおりものなどである。
【0049】
液体吸収パッド1は、液体が浸透可能な第1の布2と、股下部61の肌側面に配置され、液体が実質的に浸透しない第2の布3と、第1の布2と第2の布3との間に設けられ、側面視で、その前後方向の途中部位から後方に向かって延びる切欠き部410を有する第3の布41とを有している。以下、本例の液体吸収パッド1について詳説する。
【0050】
液体吸収パッド1は、少なくとも1枚以上より構成され、表側面から裏側面に液体を浸透させる第1の布2と、股下部61の肌側面に接して配置され、股下部61への液体の浸入を防止する第2の布3と、第1の布2と第2の布3との間に設けられ、液体を吸収して保持可能な多層構造の積層体4とを有している。
積層体4は、
第1の布2側に配置され、
液体を上部側で吸収する上部吸収層41と、上部吸収層41の裏側面に接して配置され、表側面から裏側面に
液体を浸透させる浸透層42と、浸透層42の裏側面に接して配置され、上部吸収層41より少なくとも後方に大きく形成されるとともに
液体を底部側で吸収して保持する底部吸収層43とを有している。そして、
側面視で、その前後方向の途中部位から後方に向かって延びる切欠き部410を有
する第3の布41が、上部吸収層とされている。なお、切欠き部410の詳細については後述する。
【0051】
第1の布2は、
液体吸収パッド1のパッド表側面を構成する。
第1の布2は、本例の
液体吸収パッド1を適用する衣類6が有する股下部61よりも大きさが小さく形成されている。
第1の布2は、より具体的には、その外周縁が股下部61の外周縁よりも15〜30mm程度内側の位置となるように形成されており、本例では、前側に比べ後ろ側の幅が広く、全体として後方に略末広がり状とされている。
第1の布2の両側縁は、衣類6の股下部61の両側縁から一定距離離間させて内方に配置されるよう湾曲して形成されている。
第1の布2の前端縁は、前方に凸状となるよう湾曲して形成されている。
第1の布2の後端縁は、後方に凸状となるよう湾曲して形成されている。
【0052】
第1の布2は、具体的には、衣類6の着用者の股部に当接させる第1浸透布21と、第1浸透布21の裏側面に接して配置される第2浸透布22との2枚より構成されている。本例では、第1浸透布21は、メッシュ状面を有する布地から構成されている。一方、第2浸透布22は、一方面がメッシュ状面、他方面が非メッシュ状面である布地から構成されている。なお、本例では、第1浸透布21から第2浸透布22への
液体のスムーズな浸透が行われるように、第2浸透布22は、メッシュ状面が表側面、非メッシュ状面が裏側面となるようにして用いる。なお、第2浸透布22の一部を構成する非メッシュ状面は、
液体を若干吸収可能とされている。また、第1浸透布21のメッシュ状面は、第2浸透布22のメッシュ状面よりもメッシュが粗く設定されている。具体的には、第1浸透布21は、横1インチ当たり9目、縦1インチ当たり8目程度であり、第2浸透布22は、横1インチ当たり18目、縦1インチ当たり6.5目程度である。第1浸透布21の材質は、具体的には、ポリプロピレン100%である。第2浸透布22の材質は、具体的には、綿とポリエステルとの混合であり、綿とポリエステルとの混合比は、綿60%程度、ポリエステル40%程度である。このように構成される
第1の布2は、全面において表側面から裏側面に
液体を浸透させることが可能である。
【0053】
第2の布3は、本例の
液体吸収パッド1のパッド裏側面を構成する。
第2の布3は、本例の
液体吸収パッド1を適用する衣類6が有する股下部61とほぼ同じ外形、大きさに形成されている。つまり、
第2の布3は、
第1の布2よりも大きさが大きく形成されている。したがって、本例では、
第1の布2と
第2の布3とが適切な位置にて重ね合わされた状態において、
第2の布3の外周縁(前端縁、後端縁、両側縁)は、
第1の布2の外周縁(前端縁、後端縁、両側縁)よりも外側に配置されるように構成されている。
【0054】
第2の布3は、
液体を浸透させない布地から構成されている。上記布地としては、例えば、基布の少なくとも一方面が
液体を浸透させないポリマーによって防液加工されている布地などを用いることができる。なお、基布の一方面だけが防液加工されている場合、防液加工された面は、防液性向上の観点から、表側面であるとよい。本例では、具体的には、ポリエステル100%からなる基布の一方面がポリウレタンによって防液加工されている布地を用いている。なお、本例では、防液性を確実なものとする観点から、防液加工された面を表側面とし、防液加工されていない面を裏側面としている。
【0055】
本例では、
第1の布2の外周縁と
第2の布3の外周縁との間は、撥水性の撥水布5によって繋ぎ合わされている。撥水布5は、具体的には、前端縁撥水布51、後端縁撥水布52、左側縁撥水布53、右側縁撥水布54から構成されている。撥水布5は、ポリエステル100%からなるスムース布地を用いている。
【0056】
本例の
液体吸収パッド1は、大きさの異なる
第1の布2と
第2の布3とが撥水布5によって繋ぎ合わされることにより全体として袋状とされ、この袋内に
積層体4が配置されている。なお、
液体吸収パッド1は、撥水布5を用いることなく、吸収させる
液体の量等を考慮し、
第1の布2と
第2の布3の外周縁をパイピング(不図示)により被包することによって全体として袋状に構成することも可能である。
【0057】
積層体4は、複数の機能層から構成されており、全体として液体を吸収して保持することができる。本例では、積層体4は、
図3に示すように、第1の布2側から下方に向かって順に、立体形成層40と、上部吸収層41と、浸透層42と、底部吸収層43とがこの順に積層されて構成されている。本例では、積層体4が、第1の布2の裏側面と上部吸収層41の表側面との間に、立体形成層40を
有している。なお、立体形成層40は、第1の布2の表側面での液体の広がりを抑え、第1の布2よりも下方で液体を素早く拡散させることを促すために追加的に設けたもので
ある。以下、積層体4について第1の布2側から順に説明する。
【0058】
上述のように、本例では、立体形成層40は、層厚み方向に貫通する貫通穴400を有している。貫通穴400は、具体的には、液体吸収パッド1の着用状態において平均的な着用者の股部における膣口にほぼ対応する位置となるように配置されている。液体吸収パッド1全体でみた場合、貫通穴400の中心は、パッド幅方向を二分する中央線の前後方向の中央よりもやや前方に配置されている。また、本例における貫通穴400の形状は、パッド前後方向の長さが約50mm、パッド幅方向の長さが約30mmである略楕円形状である。なお、貫通穴400は、金型による打ち抜きにより形成したものであるが、これに限定されることなく、各種の方法によって形成することができる。貫通穴400は、貫通穴400の上方に位置する第1の布2に液体がのった際にその液体の重み
により第1の布2が下方にたわむのを促すことが可能となる形状、大きさとなるように形成されている。したがって、本例の貫通穴400は、従来技術に見られる狭小な幅のスリット穴とは異なるものである。なお、第1の布2は、第1の布2内を通過して貫通穴400に液体が落ちた後、乾燥することによってほぼ平坦な状態に戻るように構成することが可能である。
【0059】
立体形成層40は、パッド前後方向およびパッド幅方向の長さが
第1の布2よりも小さく形成されている。立体形成層40の両縁側は、具体的には、衣類6の股下部61の両側縁から一定距離離間させて内方に配置されるよう湾曲して形成されている。立体形成層40の前端縁および後端縁は、具体的には、ともにパッド幅方向と略平行に形成されている。立体形成層40は、
液体を吸収して保持可能な布地から構成されている。したがって、立体形成層40は、
第1の布2の下方へのたわみを促すばかりでなく、下方から上方に
液体が逆流するのを抑制し、後述する上部吸収層41の吸収機能を補完することが可能とされている。立体形成層40の材質は、具体的には、キュプラ、ナイロンおよびアクリルの混合である。これらの混合比は、キュプラ46%程度、ナイロン27%程度、アクリル27%程度である。
【0060】
上部吸収層41は、パッド前後方向およびパッド幅方向の長さが
第1の布2よりも小さく形成されている。上部吸収層41の両縁側は、具体的には、衣類6の股下部61の両側縁から一定距離離間させて内方に配置されるよう湾曲して形成されている。上部吸収層41の前端縁および後端縁は、具体的には、ともにパッド幅方向と略平行に形成されている。なお、本例では、上述した立体形成層40は、上部吸収層41とほぼ同じ外形、大きさに形成されている。また、本例では、上部吸収層41は、
液体を吸収可能な布地から構成されている。上部吸収層41の材質は、具体的には、キュプラ、ナイロンおよびアクリルの混合である。これらの混合比は、キュプラ46%程度、ナイロン27%程度、アクリル27%程度である。
【0061】
ここで、上部吸収層41は、
側面視で、その前後方向の途中部位から後方に向かって延びる切欠き部410を有している。本例では、
図3および
図4に示されるように、切欠き部410は、1つであり、上部吸収層41の幅方向の中央線にほぼ沿うように配置されている。また、切欠き部410は、上部吸収層41の前後方向の途中部位から後方に向かって連続的に延びており、上部吸収層41の後方に向かうに従ってその幅が広くなるように形成されている。したがって、切欠き部410は、上部吸収層41の後方に向かうに従って、下方に配置された浸透層42の表側面を徐々に多く露出させることができるようになっている。本例では、
図5に示すように、立体形成層40の貫通穴400と切欠き部410の前端部とは、平面視で、互いに重なるように配置されている。換言すれば、切欠き部410の前端部は、立体形成層40の貫通穴400を上部吸収層41上に投影した投影面と重なるように配置されている。一方、切欠き部410の後端部は、本例では上部吸収層41の後端縁と一致させてある。切欠き部410のパッド前後方向の長さは、約60mmであり、切欠き部410の最後端におけるパッド幅方向の長さは、約8mmである。
【0062】
なお、本例では、上述したように、切欠き部410は、上部吸収層41の後端縁上の一部を底辺とする略二等辺三角形状に形成されているが、他の形状に形成されていてもよい。
図6に、切欠き部410の変形例の一例を示す。
図6(a)の切欠き部410aは、上部吸収層41の後端縁よりも前方にその後端縁が存在している場合を例示したものである。
図6(b)の切欠き部410bは、上部吸収層41の前方から後方に向かってその幅がほぼ一定に形成されている場合を例示したものである。
図6(c)の切欠き部410cは、前後方向に長い略長穴状に形成されている場合を例示したものである。
図6(d)、(e)の切欠き部410d、410eは、連続して後方に延びる複数の切欠き群から構成される場合を例示したものである。
図6(f)の切欠き部410fは、不連続に後方に延びる場合を例示したものである。
【0063】
浸透層42は、パッド前後方向の長さおよびパッド幅方向の長さが
第1の布2よりも小さく形成されている。衣類6の股下部61の両側縁から一定距離離間させて内方に配置されるよう湾曲して形成されている。浸透層42の前端縁および後端縁は、具体的には、ともにパッド幅方向と略平行に形成されている。なお、本例では、浸透層42は、立体形成層40および上部吸収層41とほぼ同じ外形、大きさに形成されている。浸透層42は、表側面から裏側面に
液体を浸透させることが可能な布地から構成されている。具体的には、浸透層42は、
第1の布2における第2浸透布22と同材質の布地から構成されている。但し、本例では、下方への
液体の引き込みを促す観点から、上記布地の非メッシュ状面を表側面、メッシュ状面を裏側面として用いている。
【0064】
底部吸収層43は、1層から構成することもできるが、本例では、底部吸収層43が複数層から構成されている例を示している。具体的には、底部吸収層43は、浸透層42の裏側面に接して配置された浸透層側吸収層433と、
第2の布3の表側面に接して配置された
第2の布側吸収層434とを有している。
【0065】
浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434は、上部吸収層41よりも前後方向に大きく形成されている。浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434は、より具体的には、前側に比べ後ろ側の幅が広く、全体として後方に略末広がり状とされている。浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434の両側縁は、
第1の布2の両側縁よりも5mm程度内側の位置となるように形成されており、衣類6の股下部61の両側縁から一定距離離間させて内方に配置されるよう湾曲して形成されている。なお、浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434は、立体形成層40、上部吸収層41、浸透層42と重ねられた際に、これらの各両側縁がほぼ一致するように形成されている。また、浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434の前端縁は、いずれも前方に凸状となるよう湾曲して形成されている。浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434の後端縁は、いずれも後方に凸状となるよう湾曲して形成されている。但し、浸透層側吸収層433は、その後端縁が、
第2の布側吸収層434の後端縁よりも約16mm程度前方に入った位置に配置されるように、
第2の布側吸収層434よりも小さく形成されている。なお、浸透層側吸収層433および
第2の布側吸収層434の前端縁は、
第1の布2と重ねられた際に、
第1の布2の前端縁とほぼ一致するように形成されている。また、
第2の布側吸収層434の後端縁は、
第1の布2と重ねられた際に、
第1の布2の後端縁とほぼ一致するように形成されている。
【0066】
底部吸収層43は、
液体を吸収して保持可能な布地から構成されている。本例では、底部吸収層43は、上部吸収層41よりも大きく形成されていることや、複数層から構成されていることなどから分かるように、上部吸収層41よりも
液体の吸収容量が大きく設定されている。そのため、着用者が長時間着用することによって流入した
液体の多くは、主にこの底部吸収層43に吸収されて保持される。なお、本例では、底部吸収層43は、上部吸収層41と同じ材質の布地を用いている。
【0067】
以上の構成を有する
積層体4は、本例では、その両側縁が、
第1の布2および
第2の布3の両側縁よりも内側に配置されている。また、
積層体4は、
第1の布2の裏側面に縫着されている。また、本例では、
液体吸収パッド1は、貫通穴400の外周に沿って
第1の布2と
積層体4とを縫着する縫着糸L1を有している。なお、縫着糸L1は、貫通穴400の縁部よりも約3mm程度外方の位置に配置されており、
第1の布2の表側面に露出する部位を含んでいる。したがって、本例の
液体吸収パッド1は、
図1に示すように、
第1の布2の肌面側に、貫通穴400の外周形状に対応して略楕円形状に形成された縫着糸L1による環状部が視認可能になっている。
【0068】
次に、本例の
液体吸収パッド1の製造方法の一例について説明する。ここでは、本例の
液体吸収パッド1を構成する各部材を縫製によって順次積層する方法について説明する。なお、縫製箇所、縫製手順、縫製方法などは、以下の説明によって限定されるものではなく、生産性等を考慮して適宜最適化することが可能である。
【0069】
先ず、本例の
液体吸収パッド1を構成する各部材を準備する。次いで、上部吸収層41の裏側面と浸透層42の表側面とを重ねて縫製し、積層体Aを構成する。本例では、具体的には、上部吸収層41の裏側面と浸透層42の表側面とを重ねて配置し、切欠き部410の周囲をレジロン糸等の縫着糸L2を用いて本縫いにより縫製し(但し、略二等辺三角形状の切欠き部410の斜辺周囲であって、切欠き部410の後端縁は除く)、積層体Aを構成する。
【0070】
次いで、得られた積層体Aにおける上部吸収層41の表側面に立体形成層40の裏側面を重ね合わせるとともに、積層体Aにおける浸透層42の裏側面に底部吸収層43の一部を構成する浸透層側吸収層433の表側面を重ね合わせる。なお、積層体Aおよび浸透層側吸収層433は、両者を重ね合わせた状態において、積層体Aの前方および後方から浸透層側吸収層433が突出した状態となるように重ねられる。そして、本例では、積層体Aの前端縁をレジロン糸等の縫着糸L3を用いて本縫いにより縫製し、積層体Bを構成する。
【0071】
次いで、得られた積層体Bにおける浸透層側吸収層433の裏側面に底部吸収層43の残りを構成する
第2の布側吸収層434の表側面を重ね合わせる。なお、積層体Bおよび
第2の布側吸収層434は、両者を重ね合わせた状態において、積層体Bの後方から
第2の布側吸収層434が突出した状態となるように重ねられる。そして、本例では、積層体Bの後端縁をレジロン糸等の縫着糸L4を用いて本縫いにより縫製し、積層体Cを構成する。
【0072】
次いで、得られた積層体Cにおける立体形成層40の表側面上に
第1の布2を構成する第2浸透布22、第1浸透布21をこの順に積層する。そして、本例では、積層体Cの両側縁からそれぞれ8mm程度内側をレジロン糸等の縫着糸L5を用いて本縫いにより縫製し、積層体Dを構成する。
【0073】
次いで、得られた積層体Dにおける立体形成層40の貫通穴400の外周に沿ってレジロン糸等の縫着糸L1を用いて本縫いにより縫製し、積層体Eを構成する。なお、この際の縫製位置は、貫通穴400の周縁部よりも約3mm程度外方である。
【0074】
次いで、得られた積層体Eにおける左側縁に左側縁撥水布53を、右側縁に右側縁撥水布54をレジロン糸等の縫着糸L6、L7を用いて本縫いにより縫製し、積層体Fを構成する。なお、この際の縫製は、
図8に示されるように、左側縁撥水布53および右側縁撥水布54の内側の縁部をそれぞれ下側に折り曲げ、各折り曲げ片と
第1の布2とを縫着糸
L6、L7を用いて繋ぎ合わせることによって行うことができる。このような繋ぎ合わせを行った場合は、作製された
液体吸収パッド1の肌側に縫着糸L6、L7が露出しないように構成することができる。
【0075】
次いで、得られた積層体Fにおける前端縁に前端縁撥水布51を、後端縁に後端縁撥水布52をレジロン糸等の縫着糸L8、L9を用いて本縫いにより縫製し、積層体Gを構成する。なお、この際の縫製は、
図7に示されるように、前端縁撥水布51の内側の縁部を下側に折り曲げ、この折り曲げ片と
第1の布2および底部吸収層43とを縫着糸L8を用いて繋ぎ合わせることによって行うことができる。また、後端縁撥水布52の内側の縁部を下側に折り曲げ、この折り曲げ片と
第1の布2および
第2の布側吸収層434とを縫着糸L9を用いて繋ぎ合わせることによって行うことができる。このような繋ぎ合わせを行った場合は、作製された
液体吸収パッド1の肌側に縫着糸L8、L9が露出しないように構成することができる。
【0076】
次いで、得られた積層体Gの裏側面に
第2の布3の表側面を重ね合わせ、積層体Gの前端縁および後端縁から5〜7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸L10を用いてオーバーロック等の縫製方法などによって縫製する。また、積層体Gの両側縁から5〜7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸L11を用いて平二本等の縫製方法などによって縫製する。これにより、
第1の布2の外周縁と
第2の布3の外周縁との間が撥水布5によって繋ぎ合わされて袋状に構成される。また、図示はしないが、撥水布の外側縁と
第2の布の外周縁とをパイピングにて
さらに被包してもよい。以上により、本例の
液体吸収パッド1を得ることができる。なお、後述の
図10に示すように、上記縫製は、衣類60の股下部61の肌側面上に、
第2の布3、積層体Gをこの順に積層し、積層体Gの前端縁および後端縁から5〜7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸L12を用いてオーバーロック等の縫製方法などによって縫製するとともに、積層体Gの両側縁から5〜7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸L13を用いて平二本等の縫製方法などによって縫製することもできる。つまり、
液体吸収パッド1の構成と衣類60の股下部61への取り付けとを同時に行うことも可能である。
【0077】
なお、本例の
液体吸収パッド1は、
図1に示すように、パッド表側面に、貫通穴400の外周囲を縫製した際の縫着糸L1と、
積層体4の両側縁と
第1の布2とを縫着した際の縫着糸L5とが少なくとも露出した状態とされている。
【0078】
次に、本例の
液体吸収パッドの作用効果について説明する。本例の
液体吸収パッド1は、
第1の布2の表側面から裏側面に速やかに
液体が浸透し、パッド表側面で
液体が拡がり難い。そのため、
液体吸収パッド1は、着用者がドライ感を感じやすい。また、
液体吸収パッド1は、上記のような特定構造の
積層体4を有している。そのため、パッド内に浸透した
液体は、上部吸収層41に吸収されつつ、上部吸収層41の下方に流れていく。ここで、上部吸収層41は、その前後方向の途中部位から後方に向かって延びる切欠き部410を有している。また、その上部吸収層41の裏側面に接して、表側面から裏側面に
液体を浸透させる浸透層42が配置されている。そのため、切欠き部410に沿って浸透層42の表側面を露出させることができる。この切欠き部410により露出した浸透層42の表側面と、切欠き部410における上部吸収層41の厚み方向の端面とによって区画された部分とは、
液体をパッドの後ろ側に導くための流路として機能する。つまり、浸透層42に
液体が浸透する速度は上部吸収層41に
液体が吸収される速度よりも速いため、
液体は、切欠き部410によって後方に引き込まれながら下方に配置された底部吸収層43に吸収され保持されていく。したがって、
液体吸収パッド1は、パッドの前側に
液体が溜まり難い。
【0079】
さらに、本例の
液体吸収パッド1は、
積層体4が立体形成層40を有している。そのため、貫通穴400に対応する位置における
第1の布2に
液体が接すると、その
液体の重みにより
第1の布2が下方にたわみ、
第1の布2を通過して
液体が貫通穴400に落ちる。それ故、本例の
液体吸収パッド1は、立体形成層40がない場合に比べ、
第1の布2の表側面で
液体が広がり難く、
第1の布2よりも下方で
液体を拡散させやすい。したがって、本例の
液体吸収パッド1は、
第1の布2の表側面が
液体で濡れ難く、パッド表側面のドライ感を向上させることができる。また、立体形成層40が上部吸収層41と同じ吸収機能を有している。そのため、本例の
液体吸収パッド1は、下方から上方に
液体が逆流するのを抑制しやすい上、立体形成層40も
液体を吸収することができるので、パッド上部側における吸収容量の増加に寄与することができる。
【0080】
(実施例2)
図9、
図10に、実施例2の股下部を有する衣類を示す。本例の股下部61を有する衣類6は、実施例1の
液体吸収パッド1が、股下部61の肌側に配置されるとともに衣類6に取り付けられている。本例では、具体的には、股下部61を有する衣類6は生理用ショーツ60である。以下、これについて詳説する。
【0081】
生理用ショーツ60は、前身頃部62と、後身頃部63と、前身頃部62と後身頃部63との間に縫製により連結された股下部61とを有している。前身頃部62と後身頃部63とは、ショーツ両側面において互いに縫製により連結され、ショーツ本体部を構成している。なお、ショーツ両側面の連結部分は省略している。生理用ショーツ60は、前身頃部62のできるだけ下端縁に近い位置に股下部61の前端部を配置することにより、股下部61が全体的に後方に寄せてある。そのため、生理用ショーツ60は、前方から見た際に、股下部61の前端部が比較的目立たないように配慮されている。
【0082】
生理用ショーツ60の股下部61における肌側面には、実施例1の
液体吸収パッド1が配置されるとともに当該ショーツに縫製によって取り付けられている。本例では、具体的には、股下部61の肌側面に、
液体吸収パッド1の
第2の布3の裏側面が接するようにして
液体吸収パッド1が配置されている。
液体吸収パッド1は、その前端縁および後端縁が股下部61にスパン糸、ウーリー糸などの縫着糸L12を用いて縫着されている。また、
液体吸収パッド1は、両側縁が股下部61にスパン糸、ウーリー糸などの縫着糸L13を用いて縫着されている。本例の生理用ショーツ60は、具体的には、衣類60の股下部61の肌側面上に、
第2の布3、上述した積層体Gをこの順に重ね合わせ、積層体Gの前端縁および後端縁から5〜7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸L12を用いてオーバーロック等の縫製方法などによって縫製するとともに、積層体Gの両側縁から5〜7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸L13を用いて平二本等の縫製方法などによって縫製することにより、
液体吸収パッド1の構成と衣類60の股下部61への取り付けとが同時に行われて構成されている。なお、本例では、
液体吸収パッド1は、着用状態で、その前端縁がその後端縁よりも下方に配置されるように生理用ショーツ60に取り付けられている。
【0083】
次に、本例の生理用ショーツ60の作用効果について説明する。本例の生理用ショーツ60は、上記
液体吸収パッド1を用いている。そのため、本例の生理用ショーツ60は、比較的長時間使用した場合でも、パッドの前側に
液体が溜まり難い。それ故、本例の生理用ショーツ60の着用者は、比較的長時間にわたって生理ショーツを着用しても股部に濡れを感じ難く、長時間にわたってドライ感を得ることができる。また、本例の生理用ショーツ60は、
液体吸収パッド1の布地による柔らかな肌触り、優れたドライ感により、着用者の肌にやさしい。また、本例の生理用ショーツ60は、使い捨て紙ナプキンを用いなくても直履きすることができるので、使い捨て紙ナプキンの使用量を削減することができる。その結果、ゴミが減り、地球環境にも優しい。
【0084】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、上記実施例2では、
液体吸収パッド1が生理用ショーツ60に縫製によって取り付けられた例を示したが、
液体吸収パッド1は、両面ファスナー等を用いて生理用ショーツ60に取り外し可能に取り付けることもできる。この場合は、
液体吸収パッド1が
液体によって汚れた場合に、股下部61から
液体吸収パッド1を容易に取り外して洗濯することができる。また、この場合は、
液体吸収パッド1が古くなった場合等に新品に交換しやすくなる。
【0086】
また、上記実施例では、吸収させる
液体が経血やおりものの場合を用いて説明したが、これに限定されることなく、尿等であってもよい。
【0087】
また、
積層体を構成する各層の形態は、上述した実施例に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。