(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乗算手段により生成された前記第2倍音信号に対して、高域通過フィルタを用いてフィルタ処理を行うことにより、周波数が高まるに従って前記第2倍音信号の前記信号レベル出力を徐々に低減させるフィルタ手段を有し、
前記加算手段は、前記高域信号と前記低域信号と前記フィルタ手段によりフィルタ処理された第2倍音信号とを加算して前記出力信号を生成すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の低域補完装置。
前記レベル変動量検出ステップは、前記レベル変動量検出信号に対して信号レベルがゼロより高い値となるように、ゲイン調整手段がゲイン調整を行うゲイン調整ステップを有し、
前記乗算ステップにおいて前記乗算手段は、前記第1倍音信号に対して、前記レベル検出信号と、前記ゲイン調整ステップにおいてゲイン調整が行われたレベル変動量検出信号とを乗算すること
を特徴とする請求項6に記載の低域補完方法。
前記乗算ステップにおいて生成された前記第2倍音信号に対して、高域通過フィルタを用いてフィルタ処理を行うことにより、フィルタ手段が、周波数が高まるに従って前記第2倍音信号の前記信号レベル出力を徐々に低減させるフィルタ処理ステップを有し、
前記加算ステップにおいて前記加算手段は、前記高域信号と、前記低域信号と、前記フィルタ処理ステップにおいてフィルタ処理された第2倍音信号とを加算して、前記出力信号を生成すること
を特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の低域補完方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、音量に応じて倍音信号に重み付けを行ってから音源信号に加算する場合には、倍音信号により低域補完が行われる一方で、その補完の効果(重み付け量)によっては出力音の音質の劣化を招くという問題があった。
【0007】
具体的には、倍音信号を付加することに伴って中低音が不必要に増強される場合がある。このため、重低音の再生が可能なスピーカで再生された低域音に比べて、倍音信号により低域補完が行われた出力音の低音では、出力音の応答性が劣り、締まりのない音・間延びした音として聴感されてしまう傾向があった。
【0008】
一方で、倍音信号による補完を行わないと、スピーカで再生できない周波数帯域の出力音が再生されないため、上述したように音のメリハリがなくなってしまうおそれがあった。このため、倍音信号による低域補完方法は有効な補完方法の一つとなっていた。従って、倍音信号を用いた補完処理では、倍音信号による低音増強効果を実現しつつ、音質劣化を抑制する方法が求められていた。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みて成されたものであり、スピーカで十分に再生することができない最低共振周波数以下の低音を、倍音信号を用いて補完することが可能な低域補完装置および低域補完方法であって、音源に含まれる低域信号のレベルや変動量に応じて倍音信号の重み付けを行うことによって、中低音域の音質劣化を抑えながら、低音の増強効果を最大限に発揮させることが可能な低域補完装置および低域補完方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る低域補完装置は、入力信号を低域信号と高域信号とに帯域分割する帯域分割手段と、該帯域分割手段により帯域分割された前記低域信号の所定の低域周波数を基準として、当該所定の低域周波数の数倍の周波数において所定の信号レベル出力を備えた第1倍音信号を生成する倍音信号生成手段と、前記帯域分割手段により帯域分割された前記低域信号の信号レベルの絶対値を算出した後にDC成分のカット処理を行うことにより、レベル検出信号を生成するレベル検出信号生成手段と、前記帯域分割手段により帯域分割された前記低域信号の信号レベル変動に基づいて、前記低域信号のレベル変動量を示すレベル変動量検出信号を生成するレベル変動量検出手段と、前記第1倍音信号に対して前記レベル検出信号と前記レベル変動量検出信号とを乗算することにより第2倍音信号を生成する乗算手段と、前記帯域分割手段により帯域分割された前記高域信号および前記低域信号と、前記乗算手段により生成された前記第2倍音信号とを加算して、出力信号を生成する加算手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る低域補完方法は、帯域分割手段が入力信号を低域信号と高域信号とに帯域分割する帯域分割ステップと、該帯域分割ステップにおいて帯域分割された前記低域信号の所定の低域周波数を基準として、倍音信号生成手段が前記所定の低域周波数の数倍の周波数において所定の信号レベル出力を備えた第1倍音信号を生成する倍音信号生成ステップと、前記帯域分割ステップにおいて帯域分割された前記低域信号の信号レベルの絶対値を算出した後にDC成分のカット処理を行うことにより、レベル検出信号生成手段がレベル検出信号を生成するレベル検出信号生成ステップと、前記帯域分割ステップにおいて帯域分割された前記低域信号の信号レベル変動に基づいて、レベル変動量検出手段が、前記低域信号のレベル変動量を示すレベル変動量検出信号を生成するレベル変動量検出ステップと、前記第1倍音信号に対して前記レベル検出信号と前記レベル変動量検出信号とを乗算することにより、乗算手段が第2倍音信号を生成する乗算ステップと、前記帯域分割ステップにおいて帯域分割された前記高域信号および前記低域信号と、前記乗算ステップにおいて生成された前記第2倍音信号とを加算して、加算手段が出力信号を生成する加算ステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る低域補完装置又は低域補完方法では、生成された第1倍音信号に対して、低域信号の信号レベルの絶対値に基づいて生成されたレベル検出信号だけでなく、低域信号の信号レベル変動に基づいて生成されるレベル変動量検出信号をも乗算することにより第2倍音信号を生成することを特徴とする。このため、単に、低域信号の信号レベルの値に応じて倍音信号の信号レベルが調整されるだけでなく、低域信号の信号レベルの変動量にも応じて、倍音信号の信号レベルが調整されることになる。
【0013】
従って、本発明に係る低域補完装置又は低域補完方法によれば、低域信号のレベル変動量が大きい場合に、重み付けの比重を高めることにより低音域の補完効果を向上させることできる。一方で、低域信号のレベル変動量が小さい場合には、重み付けの比重を弱めることにより、倍音信号の信号出力によって中高域に不要な補完処理が行われてしまうことを防止することができ、音質の劣化を低減することが可能となる。
【0014】
また、上述した低域補完装置において、前記レベル変動量検出手段は、前記帯域分割手段により帯域分割された前記低域信号の最大値を検出する最大値検出手段と、該最大値検出手段により検出された前記最大値を所定時間ホールドすることにより最大値ホールド信号を生成する最大値ホールド手段と、該最大値ホールド手段により生成された前記最大値ホールド信号に対して微分処理を行うことにより、前記低域信号のレベル変動量を示す前記レベル変動量検出信号を生成する微分処理手段とを有するものであってもよい。
【0015】
さらに、上述した低域補完方法は、前記レベル変動量検出ステップにおいて、前記帯域分割ステップにおいて帯域分割された前記低域信号の最大値を、最大値検出手段が検出する最大値検出ステップと、該最大値検出ステップにおいて検出された前記最大値を所定時間ホールドすることにより、最大値ホールド手段が最大値ホールド信号を生成する最大値ホールドステップと、該最大値ホールドステップにおいて生成された前記最大値ホールド信号に対して微分処理を行うことにより、微分処理手段が、前記低域信号のレベル変動量を示す前記レベル変動量検出信号を生成する微分処理ステップとを有するものであってもよい。
【0016】
本発明に係る低域補完装置のレベル変動量検出手段、又は低域補完方法のレベル変動量検出ステップでは、低域信号の最大値を検出し、さらに、最大値をホールドすることにより、信号レベルの最大値の変動状態を検出することが可能となる。このようにして最大値をホールドすることにより、低域信号の信号レベルが振幅値で求められる場合であっても、信号レベルの相対的な変化状態を最大値ホールド信号として求めることができる。
【0017】
さらに、このようにして求められた最大値ホールド信号を微分処理することにより、低域信号のレベル変動量をレベル変動量検出信号として求めることができ、このレベル変動量検出信号を、上述したように、第1倍音信号に対して、レベル検出信号と共に乗算することにより、低域信号の信号レベルの変動量に応じて、第1倍音信号の信号レベルを調整することが可能となる。
【0018】
また、上述した低域補完装置において、前記レベル変動量検出手段は、前記レベル変動量検出信号に対して信号レベルがゼロより高い値となるようにゲイン調整を行うゲイン調整手段を有し、前記乗算手段は、前記第1倍音信号に対して、前記レベル検出信号と、前記ゲイン調整手段によりゲイン調整が行われたレベル変動量検出信号とを乗算するものであってもよい。
【0019】
さらに、上述した低域補完方法において、前記レベル変動量検出ステップは、前記レベル変動量検出信号に対して信号レベルがゼロより高い値となるように、ゲイン調整手段がゲイン調整を行うゲイン調整ステップを有し、前記乗算ステップにおいて前記乗算手段は、前記第1倍音信号に対して、前記レベル検出信号と、前記ゲイン調整ステップにおいてゲイン調整が行われたレベル変動量検出信号とを乗算するものであってもよい。
【0020】
上述した本発明に係る低域補完装置および低域補完方法において生成されるレベル変動量検出信号は、低域信号のレベル変動量を示した信号であるため、信号レベルが変動しない場合にはゼロ(0)の値になってしまう。従って、低域信号の信号レベルが大きい場合であっても小さい場合であっても、信号レベルが変動しない場合には、第2倍音信号による低域補完が行われなくなってしまい、全体的な補完効果の減少を招いてしまう。
【0021】
このため、信号レベルがゼロ(0)より高い値となるように、レベル変動量検出信号に対してゲイン調整を行うことにより、低域信号の信号レベルが変動しない場合であっても、第2倍音信号による低域補完を実現することができ、定常的な最低限の低域補完効果を保つことが可能となる。さらに、低域信号の信号レベルに大きな変化があった場合には、より大きな補完効果を第2倍音信号により実現することが可能となるので、低音増強効果と音質劣化抑制との両方とを実現することが可能となる。
【0022】
また、上述した低域補完装置は、前記乗算手段により生成された前記第2倍音信号に対して、高域通過フィルタを用いてフィルタ処理を行うことにより、周波数が高まるに従って前記第2倍音信号の前記信号レベル出力を徐々に低減させるフィルタ手段を有し、前記加算手段は、前記高域信号と前記低域信号と前記フィルタ手段によりフィルタ処理された第2倍音信号とを加算して前記出力信号を生成するものであってもよい。
【0023】
さらに、上述した低域補完方法は、前記乗算ステップにおいて生成された前記第2倍音信号に対して、高域通過フィルタを用いてフィルタ処理を行うことにより、フィルタ手段が、周波数が高まるに従って前記第2倍音信号の前記信号レベル出力を徐々に低減させるフィルタ処理ステップを有し、前記加算ステップにおいて前記加算手段は、前記高域信号と、前記低域信号と、前記フィルタ処理ステップにおいてフィルタ処理された第2倍音信号とを加算して、前記出力信号を生成するものであってもよい。
【0024】
本発明に係る低域補完装置および低域補完方法において生成される倍音信号は、低域信号の所定の低域周波数を基準として数倍の周波数で所定の信号レベル出力を備えている。このため、倍数が大きくなる高域周波数において第2倍音信号による補完効果が強くなりすぎてしまい、聴取者に対して聴感上で違和感を与えてしまうおそれがある。
【0025】
従って、周波数が高まるに従って第2倍音信号の信号レベル出力を徐々に低減させるようにフィルタ処理を行うことによって、聴取者に対して聴感上の違和感を与えてしまうことを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る低域補完装置又は低域補完方法では、生成された第1倍音信号に対して、低域信号の信号レベルの絶対値に基づいて生成されたレベル検出信号だけでなく、低域信号の信号レベル変動に基づいて生成されるレベル変動量検出信号をも乗算することにより第2倍音信号を生成することを特徴とする。このため、単に、低域信号の信号レベルの値に応じて倍音信号の信号レベルが調整されるだけでなく、低域信号の信号レベルの変動量にも応じて、倍音信号の信号レベルが調整されることになる。
【0027】
従って、本発明に係る低域補完装置又は低域補完方法によれば、低域信号のレベル変動量が大きい場合に、重み付けの比重を高めることにより低音域の補完効果を向上させることできる。一方で、低域信号のレベル変動量が小さい場合には、重み付けの比重を弱めることにより、倍音信号の信号出力によって中高域に不要な補完処理が行われてしまうことを防止することができ、音質の劣化を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る低域補完装置の一例を示し、図面を用いて詳細に説明を行う。
図1は、本実施の形態に係る低域補完装置の概略構成を示したブロック図である。また、
図2は、低域補完装置1における処理内容の概略を示したフローチャートである。フローチャートの処理手順に従って、低域補完装置1の処理内容を説明する。
【0030】
低域補完装置1は、
図1に示すように、第1HPF部(帯域分割手段)2と、第1LPF部(帯域分割手段)3と、エッジ検出部(倍音信号生成手段)4、レベル検出部(レベル検出信号生成手段)5と、レベル変動量検出部(レベル変動量検出手段)6と、乗算部(乗算手段)7と、位相反転部8と、第1増幅部9と、第2LPF部(フィルタ手段)10と、第2HPF部11と、第2増幅部12と、加算部(加算手段)13とを有している。
【0031】
まず、音源より低域補完装置1へ入力された入力信号は、第1HPF部2と第1LPF部3とに入力される。第1HPF部2は、高域通過フィルタを備えており、第1LPF部3は、低域通過フィルタを備えている。第1HPF部2に入力された入力信号は、高域通過フィルタを通過することにより、高帯域だけが抽出されて高域信号が生成される。また、第1LPF部3に入力された入力信号は、低域通過フィルタを通過することにより、低帯域だけが抽出されて低域信号が生成される。
【0032】
図3(a)は、第1HPF部2の高域通過フィルタと、第1LPF部3の低域通過フィルタとのフィルタ特性を示した図である。
図3(a)に示す高域通過フィルタおよび低域通過フィルタは、一例として、3次のバタワースフィルタであって、カットオフ周波数が60Hzである場合を示している。第1HPF部2と第1LPF部3とによって、入力された音源信号が、高域信号と低域信号とに分割されることになる(
図2のステップS.1)。
【0033】
第1HPF部2より出力された高域信号は、加算部13へ出力される。第1LPF部3より出力された低域信号は、第2増幅部12と、エッジ検出部4と、レベル検出部5と、レベル変動量検出部6とにそれぞれ出力される。
【0034】
次に、低域補完装置1では、エッジ検出部4において倍音信号を生成し、レベル検出部5においてレベル検出信号を生成し、レベル変動量検出部6においてレベル変動量検出信号を生成する処理を行う(
図2のステップS.2)。より詳細な処理内容を、次に説明する。
【0035】
エッジ検出部4は、入力された低域信号からインパルス列を求めて、倍音信号(第1倍音信号)を生成する役割を有している。エッジ検出部4に低域信号が入力されると、エッジ検出部4は、低域信号の振幅変化に基づいて、低域信号が負側から正側へと変わる位置(タイミング)を検出し、その検出位置(検出タイミング)に基づいてインパルス列の信号を生成する。本実施の形態に係るエッジ検出部4では、振幅を1とするインパルス列を生成する。このようにしてエッジ検出部4によって生成されたインパルス列は、倍音信号(第1倍音信号)として乗算部7へ出力される。
【0036】
図4(a)は、レベル検出部5の概略構成を示したブロック図である。レベル検出部5は、
図4(a)に示すように、絶対値検出部21とDCカット部22とを有している。レベル検出部5では、絶対値検出部21で入力された低域信号の絶対値を算出し、その後に、DCカット部22でDCカット成分のカット処理を行う。DCカット部22でカット処理が行われた信号は、レベル検出信号として、乗算部7へ出力される。
【0037】
図4(b)は、レベル変動量検出部6の概略構成を示したブロック図である。また、
図5は、レベル変動量検出部6における各機能部の処理を示したフローチャートである。さらに、
図6〜
図8は、レベル変動量検出部6で低域信号のレベル変動量を検出する動作例を、機能部毎に示した図である。
【0038】
レベル変動量検出部6は、モノラル変換部31と、最大値検出部(最大値検出手段)32と、最大値ホールド部(最大値ホールド手段)33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、第1レベル制限部36と、微分処理部(微分処理手段)37と、第2レベル制限部38と、リニア変換部39と、変動量抽出部40と、ゲイン処理部(ゲイン調整手段)41とを有している。
【0039】
モノラル変換部31は、第1LPF部3より入力された低域信号が複数のチャンネルである場合に、各チャンネルの信号をチャンネル数で割った後に加算することにより、入力信号のモノラル化(モノラル変換)を行う役割を有している(
図5のステップS.11)。
図6(a)は、モノラル変換部31においてモノラル化された低域信号の一例を示している。例えば、入力される信号が2チャンネルのステレオ信号(LチャンネルとRチャンネルとからなる信号)である場合には、それぞれのチャンネルの信号の振幅を2で割った後に加算することにより、ステレオ信号をモノラル化する処理を行う。モノラル変換部31においてモノラル化された低域信号は、最大値検出部32へ出力される。
【0040】
最大値検出部32は、振幅の絶対値を求めた後に、所定のサンプル毎に最大値を求める処理を行う(
図5のステップS.12)。
図6(b)は、最大値検出部32において最大値検出が行われた低域信号の一例を示している。本実施の形態に係る最大値検出部32では、32サンプル毎に最大値(1フレーム内の最大値)を求める。本実施の形態に係る最大値検出部32では、オーバーラップ処理を行わないため、サンプリング周波数は1/32となる。最大値検出部32において最大値処理された低域信号は、最大値ホールド部33へ出力される。
【0041】
最大値ホールド部33は、入力された低域信号の最大値を所定サンプル(所定フレーム数)分だけホールド(保持)する役割を有している(
図5のステップS.13)。
図6(c)は、最大値ホールド部33において最大値ホールド処理が行われた低域信号の一例を示している。上述したように、最大値検出部32では、32サンプル分(所定サンプルを32サンプルに設定)の最大値を求めている。最大値ホールド部33では、オーバーラップ処理を行うため、最大値検出部32から入力された低域信号のサンプリング周波数は変化しない。最大値ホールド部33において、所定サンプル分だけ最大値をホールドすることにより、最大値の細かい変動を除去することが可能となる。最大値ホールド部33において最大値のホールド処理が行われた低域信号は、スムージング部34へ出力される。
【0042】
スムージング部34は、入力された低域信号に対してスムージング処理を行う役割を有している(
図5のステップS.14)。
図6(d)は、スムージング部34においてスムージング処理が行われた低域信号の一例を示している。具体的に、スムージング部34では、入力された低域信号に対してローパスフィルタ処理を行うことにより、より一層細かい振動を除去することが可能となる。このように、入力信号に対してよりスムージング処理を行うことにより、スムージング部34において包絡線が求められることになる。スムージング部34において求められた包絡線は、デシベル変換部35へ出力される。
【0043】
デシベル変換部35は、入力される包絡線を対数に変換することにより、信号の出力レベルを振幅値からデシベル値に変換する役割を有している(
図5のステップS.15)。
図7(a)は、デシベル変換部35においデシベル変換が行われた低域信号の一例を示している。人間は、音量の変化を対数的に感じ取ることが知られていることから、デシベル変換部35では、包絡線を対数に変換することにより信号レベルをデシベル値に変換する。
【0044】
具体的に、デシベル変換部35では、inputを入力される包絡線とし、outputを出力される信号のデシベル信号[dB]とすることにより、次の式1に基づいて、デシベルに変換された低域信号を求めることができる。
【0045】
output[dB]=20*log
10(input) ・・・式1
デシベル変換部35によって求められた低域信号は、第1レベル制限部36へ出力される。
【0046】
第1レベル制限部36は、所定の下限値を用いてレベル制限(信号レベル制限)を行うことにより、極端な信号レベル変化を防止する役割を有している(
図5のステップS.16)。
図7(b)は、第1レベル制限部36においてレベル制限処理が行われた低域信号の一例を示している。入力される低域信号の信号レベルの変化が極端に大きい場合、例えば、無音状態(信号レベルがゼロ(0)に近い状態)からフルスケール付近まで信号レベルが大きく急激に変化する場合には、レベル変動量検出部6において生成されるレベル変動量検出信号も大きく急激に変動することになる。このため、このような大きく急激な変動により極端な信号レベル変化が生ずることを抑制するために、所定の下限値でレベル制限を行う。所定の下限値以下の信号レベルを下限値に制限することにより、極端な信号レベル変化を防止することが可能となる。本実施の形態に係る第1レベル制限部36では、一例として、−20[dB]を下限値に設定する。この制限により、−20[dB]以下の信号レベルが−20[dB]となる。第1レベル制限部36によりレベル制限された低域信号は、微分処理部37へ出力される。
【0047】
微分処理部37は、低域信号の信号レベルにおける変動量を求める役割を有している(
図5のステップS.17)。
図7(c)は、微分処理部37において求められた低域信号の変動量の一例を示している。具体的には、入力される低域信号に対してハイパスフィルタ処理を行うことによって、入力される低域信号の信号レベル[dB]の変動量を求めることが可能となる。従って、求められた変動量の値が大きい場合には、信号レベルの変動が大きいと判断することができ、変動量の値が小さい場合には、信号レベルの変動が小さいと判断することができる。微分処理部37において求められた低域信号の変動量は、第2レベル制限部38へ出力される。
【0048】
第2レベル制限部38は、入力された変動量の下限値をゼロ(0)に設定することにより、プラス側の変動量のみを抽出する役割を有している(
図5のステップS.18)。
図8(a)は、第2レベル制限部38においてプラス側の抽出が行われた変動量の一例を示している。第2レベル制限部38においてプラス側の変動量のみが抽出された信号は、リニア変換部39へ出力される。
【0049】
リニア変換部39は、入力された変動量の信号をリニア値に変換する役割を有している(
図5のステップS.19)。
図8(b)は、リニア変換部39においてリニア値に変換された低域信号の一例を示している。第2レベル制限部38において求められた変動量はデシベル単位であるため、リニア変換部39において、変動量を振幅に変換する。デシベルから振幅への変換は、デシベル変換部35で行われた式1を用いた処理の逆処理を行うことによって実現することができる。リニア変換部39においてリニア値に変換(振幅変換)された低域信号は、変動量抽出部40へ出力される。
【0050】
変動量抽出部40は、リニア変換部39においてリニア値に変換された振幅の値を1だけ減算する役割を有している(
図5のステップS.20)。
図8(c)は、変動量抽出部40において振幅の値が1だけ減算された信号の一例を示している。リニア変換部39におけるリニア値の変換は、上述したように式1の変形により行われる。具体的には、以下のように、式1を変形することにより式2を求めることができる。なお、式1および式2において、inputは振幅(リニア値)を示し、outputはデシベル信号[dB]を示すものとする。
output[dB]=20*log
10(input) ・・・式1
=log
10(input)
20
【0051】
この式1より
(input)
20=10
(output) ・・・式2 が求められる
この式2において、outputがゼロ(0)[dB]の場合、つまり変動量がゼロ(0)の場合には、式2の右辺の「10のゼロ(0)乗」の値が「1」となる。つまり、変動量がゼロ(0)の場合には、振幅(inputの値)が1となってしまう。このため、変動量抽出部40では、求められた振幅の値(リニア値)から1を減算することにより、変動量がゼロ(0)の場合に振幅がゼロ(0)となるように調整を行う。変動量抽出部40において1の減算が行われた信号は、ゲイン処理部41へ出力される。
【0052】
ゲイン処理部41は、振幅における下限値の設定を行う役割を有している(
図5のステップS.21)。
図8(d)は、ゲイン処理部41において振幅における下限値の設定が行われた信号の一例を示している。
【0053】
変動量抽出部40において1の減算が行われたことにより、低域信号の変動量がゼロ(0)の場合に振幅がゼロ(0)となる。このため、ゲイン処理部41に入力された信号においても、低域信号の変動量がゼロ(0)の場合に、振幅値がゼロ(0)となってしまう。しかしながら、そのままでは、低域信号の変動量がゼロ(0)の場合に倍音信号の変動量調整を行うことができなくなり、最低限の低域補完効果を定常的に奏することが難しくなってしまう。このため、ゲイン処理部41では、振幅の下限値をゼロ(0)〜1の間に設定することにより、定常的な最低限の低域補完効果を保持し、低音増強効果と音質劣化抑制との両立の実現を図っている。
【0054】
なお、低域信号の変動量が大きい(レベル変動が大きい)箇所における補完効果を効果的に増減させるために、ゲイン処理部41においてまず、変動量抽出部40より入力された信号にゲイン加算を行って全体のゲイン調整を行った後に、上述した下限値の設定を行う方法を用いることも可能である。ゲイン処理部41により下限値の設定が行われた信号は、レベル変動量検出信号として、乗算部7へ出力される。
【0055】
上述したように乗算部7には、エッジ検出部4において生成された倍音信号(第1倍音信号)と、レベル検出部5において生成されたレベル検出信号と、レベル変動量検出部6において生成されたレベル変動量検出信号とが入力される。乗算部7は、倍音信号に対して、レベル検出信号と、レベル変動量検出信号とを乗算する役割を有している(
図2のステップS.3)。乗算部7において、倍音信号にレベル検出信号を乗算することにより、倍音信号(第1倍音信号)に対して低域信号の信号レベルに応じた重み付けを行うことが可能となる。さらに、倍音信号にレベル変動量検出信号を乗算することにより、低域信号のレベル変動量に応じた重み付けを行うことが可能となる。このようにして、乗算部7において重み付けが行われた倍音信号は、「重み付け倍音信号(第2倍音信号)」として位相反転部8へ出力される。
【0056】
位相反転部8では、乗算部7より入力された重み付け倍音信号の位相反転を行う(
図2のステップS.4)。位相反転部8において位相反転された重み付け倍音信号は、第1増幅部9へ出力される。第1増幅部9は、位相反転された重み付け倍音信号に対し増幅処理を行う。この増幅処理よって、重み付け倍音信号に対し最終的なゲイン調整が行われることになる(
図2のステップS.4)。第1増幅部9において増幅処理が行われた重み付け倍音信号は、第2LPF部10へ出力される。
【0057】
第2LPF部10に入力された重み付け倍音信号(第2倍音信号)は、第2LPF部10において低域の周波数調整が行われ、その後に、第2HPF部11において高域の周波数調整が行われる(
図2のステップS.5)。第2LPF部10は低域通過フィルタを備えており、第2HPF部11は高域通過フィルタを備えている。
図3(b)は、低域通過フィルタと高域通過フィルタとのフィルタ特性の一例を示した図である。本実施の形態に係る低域通過フィルタは、4次のバタワースフィルタであり、カットオフ周波数として60Hzが設定されている。一方で、高域通過フィルタは、2次のバタワースフィルタであり、カットオフ周波数として60Hzが設定されている。
【0058】
低域通過フィルタのカットオフ周波数およびフィルタ特性は、スピーカの再生能力を考慮して決定される。第2LPF部10において、低域通過フィルタを用いて重み付け倍音信号にフィルタ処理を行うことにより、スピーカの再生能力以下の周波数における信号レベルが制限されることになる。また、高域通過フィルタのカットオフ周波数およびフィルタ特性は、聴取者の聴感時を考慮し、倍音信号による補完処理によって中高域に違和感が生じない値に決定される。第2HPF部11において、高域通過フィルタを用いて重み付け倍音信号にフィルタ処理を行うことにより、聴感上で違和感のない倍音信号を生成することが可能となる。第2LPF部10および第2HPF部11においてフィルタ処理された倍音信号は、重み付けおよび帯域制限された倍音信号(フィルタ処理された第2倍音信号)として加算部13へ出力される。
【0059】
一方で、第1LPF部3においてフィルタ処理された低域信号であって、エッジ検出部4、レベル検出部5およびレベル変動量検出部6へは入力されず、第2増幅部12へ入力された低域信号は、第2増幅部12においてゲイン調整が行われる。第2増幅部12において調整されるゲインは、第1HPF部2より加算部13へと出力される高域信号と、第2HPF部11から加算部13へと出力される重み付けおよび帯域制限された倍音信号(フィルタ処理された第2倍音信号)とのゲインを考慮して設定される。第2増幅部12においてゲイン調整された低域信号は、加算部13へ出力される。
【0060】
加算部13は、第1HPF部2より入力された高域信号と、第2増幅部12より入力された低域信号と、第2HPF部11より入力された重み付けおよび帯域制限された倍音信号(フィルタ処理された第2倍音信号)とを加算することにより、出力信号を生成する役割を有している(
図2のステップS.6)。加算部13の加算処理により生成された出力信号は、図示を省略したスピーカ等へと出力される。
【0061】
従来より用いられている低域補完装置の低域補完処理では、倍音信号に対して信号レベル(振幅の絶対値や二乗した値等)に応じて倍音信号に重み付け処理を行うことを特徴としていた。しかしながら、本実施の形態に係る低域補完装置1では、倍音信号の信号レベルだけではく、低域信号の信号レベルにおけるレベル変動量をレベル変動量検出部6で検出し、検出されたレベル変動量に応じて、レベル変動量検出部6で倍音信号に重み付け処理を行うことを特徴としている。このため、レベル変動量検出部6より出力されるレベル変動量検出信号の増減や下限値の設定などにより、低域信号の信号レベルおよび信号レベルの変動量に応じて効果的な重み付けを行うことが可能となる。
【0062】
次に、具体的な動作例として、レベル変動量検出部6においてレベル変動量に基づく重み付けを行わない場合の出力信号の信号状態と、レベル変動量検出部6においてレベル変動量に基づく重み付けが行われた場合の出力信号の信号状態とを示して、それぞれの動作例を説明する。なお、どちらの場合であっても、入力される入力信号(オーディオ信号)は、50Hzの正弦波を用いるものとする。
【0063】
[レベル変動量に基づく重み付けを行わない場合]
レベル変動量に基づく重み付けを行わない場合には、レベル変動量検出部6においてレベル変動量検出信号を乗算部7へと出力する処理を行わない。従って、第1HPF部2と第1LPF部3とにおいて、入力信号が高域信号と低域信号とに分割された後に、エッジ検出部4で生成された倍音信号に、レベル検出部5で生成されたレベル検出信号が乗算されて、乗算処理された倍音信号と、高域信号と、低域信号とが加算部13で加算されて、出力信号として出力されることになる。
【0064】
図9(a)は、第1LPF部3を通過した後の低域信号(第1LPF部出力)と、レベル検出部5により生成されたレベル検出信号とを示しており、
図9(b)は、エッジ検出部4により生成された倍音信号(エッジ検出部出力)と、レベル検出部5により生成されたレベル検出信号とを示している。ここで、レベル検出部5のDCカット部22におけるDC成分のカット処理は、1次のバタワースフィルタを用いて行われ、カットオフ周波数が20Hzに設定されている。
【0065】
図9(b)に示すように、エッジ検出部より出力される倍音信号は、振幅1のインパルス列であり、このインパルス列の出力は、第1LPF部3より出力される低域信号の正弦波(
図9(a)参照)において、負側から正側に変わる位置に生成される。また、
図9(b)に示すレベル検出信号は、DCカット部22におけるDC成分のカット処理によって、インパルス列の出力位置を基準として信号レベルが負側にオフセットされている。
【0066】
図10(a)は、
図9(b)に示す倍音信号(インパルス列)に対して、乗算部7において
図9(b)に示すレベル検出信号を乗算することにより重み付けされた、重み付け倍音信号を示している。重み付け倍音信号は、
図9(b)におけるインパルス列の信号レベル(振幅)が1であることから、インパルス列の出力位置の信号レベル(振幅値)が、レベル検出信号の信号レベル(振幅値)に等しくなるようにして重み付けされる。
【0067】
図10(b)は、低域信号の周波数特性を示し、
図11(a)は、
図10(a)に示す重み付け倍音信号の周波数特性を示している。既に説明したように、入力信号は、50Hzの正弦波であることから、低域信号の周波数出力も、
図10(b)に示すように、50Hzのみである。しかしながら、
図11(a)に示す重み付け倍音信号は、50Hzを基準とする整数倍の周波数において信号レベル検出が行われることになる。具体的には、
図11(a)に示すように、50Hzの正弦波を基準として、100Hz、150Hz、200Hz、250Hz・・・の周波数において、50Hzの信号レベルと同じレベルの信号出力(倍音)が生成される。
【0068】
また、
図11(a)に示したように、倍音信号にレベル検出信号を乗算した信号は、50Hzの整数倍の周波数の全てにおいて同じ信号レベルを生ずるが、このままでは高域の信号レベルが強調されすぎてしまい、聴取者に対して聴感上の違和感を与えてしまうおそれがある。このため、既に説明したように、第2LPF部10および第2HPF部11によって低域および高域の帯域制限調整が行われる。
【0069】
図11(b)は、第2LPF部10および第2HPF部11によって、低域および高域の帯域制限が行われた倍音信号(重み付けおよび帯域制限された倍音信号)の周波数特性を示した図である。
図11(b)に示すように、帯域制限された倍音信号は、高域になるに従って倍音の信号レベルが小さくなっている。このように高域の信号レベルを徐々に小さくすることによって、聴感上の違和感を生じない倍音信号にすることができる。また、
図10(b),
図11(a)(b)に示すように、50Hzの信号レベルは、説明の便宜上、0[dB]になるように正規化して表現している。
【0070】
[レベル変動量に基づく重み付けを行う場合]
レベル変動量に基づく重み付けを行う場合には、レベル変動量検出部6において生成されたレベル変動量検出信号が乗算部7へと出力されることになる。従って、第1HPF部2と第1LPF部3とにおいて、入力信号が高域信号と低域信号とに分割された後に、エッジ検出部4で生成された倍音信号に、レベル検出部5で生成されたレベル検出信号と、レベル変動量検出部6で生成されたレベル変動量検出信号とが乗算されて、乗算処理された倍音信号と、高域信号と、低域信号とが加算部13で加算されて、出力信号として出力されることになる。
【0071】
図12(a)は、入力信号を示し、
図12(b)は、第1LPF部3より出力される低域信号を示している。入力信号は、第1LPF部3の低域通過フィルタにより帯域制限が行われることにより、
図12(b)のような状態になる。次に、
図12(c)は、エッジ検出部4において生成される倍音信号sを示している。エッジ検出部4は、低域信号に基づいて、振幅1のインパルス列からなる倍音信号sを生成する。
【0072】
図13(a)は、レベル検出部5において生成されるレベル検出信号w
1を示している。レベル検出部5では、絶対値検出部21において入力信号の絶対値検出が行われ、さらにDCカット部22においてDCカット処理が行われる。
図13(b)および
図13(c)は、レベル変動量検出部6において生成されるレベル変動量検出信号が示されている。ただし、
図13(b)では、ゲイン処理部41におけるゲイン調整が行われない場合のレベル変動量検出信号w
2aを示し、
図13(c)では、ゲイン処理部41において振幅0.3のゲイン調整が行われた場合のレベル変動量検出信号w
2bを示している。
【0073】
次に、乗算部7において生成される重み付け倍音信号について、上述した、
図12(c)の倍音信号sと、
図13(a)のレベル検出信号w
1と、
図13(b)(c)のレベル変動量検出信号w
2a,w
2bとに基づいて説明する。
【0074】
図14(a)〜(c)は、重み付け倍音信号を示している。より詳細に説明すると、
図14(a)は、乗算部7において、倍音信号sとレベル検出信号w
1との乗算により生成された重み付け倍音信号を示している。また、
図14(b)は、乗算部7において、倍音信号sとレベル検出信号w
1とレベル変動量検出信号w
2aとの乗算により生成された重み付け倍音信号を示している。さらに、
図14(c)は、乗算部7において、倍音信号sとレベル検出信号w
1とレベル変動量検出信号w
2bとの乗算により生成された重み付け倍音信号を示している。
【0075】
また、
図15(a)〜(c)は、
図14(a)〜(c)に示した重み付け倍音信号に対して、第2LPF部10および第2HPF部11によりフィルタ処理を行った倍音信号(重み付けおよび帯域制限された倍音信号)を示している。
【0076】
図14(a)に示す重み付け倍音信号、および、
図15(a)に示す重み付けおよび帯域制限された倍音信号は、レベル変動量検出信号による重み付けがされておらず、低域信号のレベル(振幅の絶対値や二乗など)のみに応じて重み付けを行った信号に相当する。
図14(a)に示す重み付け倍音信号、および、
図15(a)に示す重み付けおよび帯域制限された倍音信号では、レベル検出信号のみによって重み付けされているため、低域信号の変動量に拘わらず比較的大きなレベル(振幅)の倍音信号が出力される。このため、出力信号の低音域に対して音響効果・音響補正を十分に付加することができるが、その一方で、中低音域で過剰な補正が行われてしまうおそれもあるため、中低音域の音質劣化を招くおそれがある。実際の低域補完による効果量は、最終的なゲイン調整次第となるが、低音増強効果と音質劣化抑制の両立を実現することが難しかった。
【0077】
一方で、
図14(b)に示す重み付け倍音信号、および、
図15(b)に示す重み付けおよび帯域制限された倍音信号は、レベル変動量検出信号による重み付けはされているが、ゲイン処理部41において、レベル変動量検出信号に対するゲイン調整が行われていない信号を示している。
【0078】
図14(b)に示す重み付け倍音信号、および、
図15(b)に示す重み付けおよび帯域制限された倍音信号は、レベル変動量検出信号により重み付けが行われているため、例えば、バスドラム等のような大きな低域音に反応し、低域のレベルに大きな変化があった箇所にのみ、倍音信号が出力されることになる。このため、重み付けおよび帯域制限された倍音信号ではメリハリのある信号出力が得られる一方で、倍音信号が定常的に出力されないことから、信号全体の補完効果は減少する傾向がある。
【0079】
また、
図14(c)に示す重み付け倍音信号、および、
図15(c)に示す重み付けおよび帯域制限された倍音信号は、レベル変動量検出信号による重み付けがされており、さらに、ゲイン処理部41において、レベル変動量検出信号に対するゲイン調整が行われた信号を示している。
【0080】
図14(c)に示す重み付け倍音信号、および、
図15(c)に示す重み付けおよび帯域制限された倍音信号では、ゲイン調整されたレベル変動量検出信号により倍音信号の重み付けが行われているため、低域のレベルに大きな変化があった箇所で特に大きな補完信号が得られるほか、それ以外の箇所でもレベル検出信号に応じた倍音信号が得られる。そのため、定常的に最低限の補完効果を保ちながら、低域のレベルに大きな変化があった場合に最大限の補完効果を生じさせることができ、低音増強効果と音質劣化抑制の両立を図ることが可能となる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態に係る低域補完装置1では、スピーカにおいて十分に再生できない最低共振周波数以下の低音を、倍音信号を用いることにより補完することができる。
【0082】
さらに、低域補完装置1では、音源に含まれる低域信号の信号レベルやレベル変動量に合わせて倍音信号に重み付けを行うので、中低音域の音質劣化を抑えながら、低音増強の効果を最大限に発揮することが可能となる。例えば、低域信号のレベルに応じて低域補完の効果量を、定常的に最低限に保つ一方で、音源に含まれるバスドラム等の低域音に反応して低域の変動量が大きくなった場合に、瞬間的に効果量を増幅させることによって、メリハリのある低音をスピーカより再生することが可能となる。
【0083】
以上、添付図面を参照しつつ、低域補完装置1を一例として示しながら本発明に係る低域補完装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことはいうまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到しうることは明らかであり、本発明の技術的範囲に属するものと了解される。