特許第6155135号(P6155135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155135
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20170619BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20170619BHJP
   B64C 13/50 20060101ALN20170619BHJP
【FI】
   F16H25/20 B
   H02K7/06 A
   F16H25/20 E
   !B64C13/50
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-164919(P2013-164919)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-34575(P2015-34575A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平井 幹了
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−249784(JP,A)
【文献】 特開2013−99175(JP,A)
【文献】 特表平8−512121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
H02K 7/06
B64C 13/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに少なくとも一部が収納される第1スクリュー、及び、該第1スクリューが内側に設置される筒状の部分を有し、前記第1スクリューに対して該第1スクリューの軸心を中心として相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで前記第1スクリューに対して軸心方向に相対変位可能な第2スクリュー、を有するスクリュー機構と、
前記第1スクリュー及び前記第2スクリューのうちの一方のスクリューである入力側スクリューを回転させる第1電動モータと、
前記第1電動モータの回転力を前記入力側スクリューに伝達し、且つ前記第1電動モータに対する前記入力側スクリューの軸心方向へのスライドを許容するスライド支持機構と、
前記第1スクリュー及び前記第2スクリューのうちの他方のスクリューである出力側スクリューに連結され又は設けられる出力部と、
前記入力側スクリューから該入力側スクリューの径方向外方へ延びるフランジ部と、
前記入力側スクリューに沿って延びるように設けられ、前記ハウジングに対して回転自在に取り付けられるシャフト部と、
それぞれが前記フランジ部における前記軸心方向の一方側及び他方側に配置され、前記シャフト部から前記入力側スクリュー側へ延びるように設けられる一対の延出部、及び該一対の延出部のそれぞれの先端側の部分に設けられ前記フランジ部を前記軸心方向において挟んで支持する支持部、を有するスラスト軸受部を含むスラスト軸受機構と、
前記シャフト部を、前記軸心方向に沿った軸心周りに回転させるシャフト回転駆動部と、
を備えていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記入力側スクリューを囲むように設けられた複数の前記シャフト部と、
複数の前記シャフト部のそれぞれに設けられ、前記フランジ部を囲むように設けられた複数の前記スラスト軸受部と
を備えていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記シャフト回転駆動部としての第2電動モータの出力軸と、前記シャフト部の軸心とは、互いに平行となるように設けられ、
前記出力軸の回転力を前記シャフト部に伝達する伝達機構、を更に備えることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記伝達機構は、
前記出力軸と前記シャフト部とを連結するリンク部材と、
前記出力軸の回転中心に対して偏心して設けられ、前記リンク部材に形成された第1貫通孔に対して回転自在な第1偏心部と、
前記シャフト部の回転中心に対して偏心して設けられ、前記リンク部材に形成された第2貫通孔に対して回転自在な第2偏心部と、
を有することを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記フランジ部は、前記入力側スクリューと同心状に配置され、両面が平坦面で構成された円板状に形成されていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記スラスト軸受部は、前記一対の延出部としての一対のスタッド部、及び前記支持部として設けられ前記スタッド部に回転自在に支持される外輪部、を有する一対のカムフォロアとして構成され、
前記外輪部は、該外輪部の外周が前記フランジ部の一方側の面に摺接するように設けられていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動アクチュエータにおいて、
前記第1スクリューは、前記第1電動モータによって回転させられる前記入力側スクリューとして設けられ、
前記第2スクリューは、前記出力部が連結され又は設けられる前記出力側スクリューとして設けられていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー機構を有し、電動モータが出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、航空機などの種々の分野において、電動モータ及びスクリュー機構を有する電動アクチュエータが用いられている。このような電動アクチュエータは、スクリュー機構により、電動モータが出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する。そして、この電動アクチュエータは、ハウジングに対して出力部が直線方向に沿って伸縮するように変位することで、各種機器を駆動する。尚、上記の電動アクチュエータは、圧油が供給されることによって作動する油圧アクチュエータに比して、メンテナンスの負担が少ないという利点がある。
【0003】
上記の電動アクチュエータは、スクリュー機構において、こじり或いは焼き付き等の原因によって、固着状態(ジャム状態)が発生することがある。電動アクチュエータにおいて固着状態が発生すると、出力部をハウジングに対して進退させることが困難となる。
【0004】
特許文献1においては、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとが設けられた電動アクチュエータが開示されている。第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータは、同軸線上で逆方向に延びるように設置されている。そして、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータのそれぞれは、電動モータとボールスクリュー機構とを備えている。これにより、この電動アクチュエータは、第1及び第2のアクチュエータのうちの一方におけるスクリュー機構において固着状態が発生した場合であっても、第1及び第2のアクチュエータのうちの他方は作動可能な状態である。このため、この電動アクチュエータにおいては、上記の固着状態が発生した場合であっても、出力部をハウジングに対して収縮させた位置に退避させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5214972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電動アクチュエータは、同軸上で逆方向に延びるように設けられた二重のアクチュエータが必要となる。更に、二重のアクチュエータのそれぞれには、電動モータ及びスクリュー機構が必要となる。このため、この電動アクチュエータは、構造が複雑化するとともに大型化してしまうことになる。また、この電動アクチュエータは、構造の大型化に伴い、重量も増大することになる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、スクリュー機構において固着状態が発生した場合であっても出力部をハウジングに対して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る電動アクチュエータは、ハウジングと、前記ハウジングに少なくとも一部が収納される第1スクリュー、及び、該第1スクリューが内側に設置される筒状の部分を有し、前記第1スクリューに対して該第1スクリューの軸心を中心として相対回転可能に取り付けられるとともに、相対回転することで前記第1スクリューに対して軸心方向に相対変位可能な第2スクリュー、を有するスクリュー機構と、前記第1スクリュー及び前記第2スクリューのうちの一方のスクリューである入力側スクリューを回転させる第1電動モータと、前記第1電動モータの回転力を前記入力側スクリューに伝達し、且つ前記第1電動モータに対する前記入力側スクリューの軸心方向へのスライドを許容するスライド支持機構と、前記第1スクリュー及び前記第2スクリューのうちの他方のスクリューである出力側スクリューに連結され又は設けられる出力部と、前記入力側スクリューから該入力側スクリューの径方向外方へ延びるフランジ部と、前記入力側スクリューに沿って延びるように設けられ、前記ハウジングに対して回転自在に取り付けられるシャフト部と、それぞれが前記フランジ部における前記軸心方向の一方側及び他方側に配置され、前記シャフト部から前記入力側スクリュー側へ延びるように設けられる一対の延出部、及び該一対の延出部のそれぞれの先端側の部分に設けられ前記フランジ部を前記軸心方向において挟んで支持する支持部、を有するスラスト軸受部を含むスラスト軸受機構と、前記シャフト部を、前記軸心方向に沿った軸心周りに回転させるシャフト回転駆動部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、入力側スクリューは、該入力側スクリューに設けられたフランジ部がスラスト軸受部によって軸心方向に挟まれることにより、ハウジングに対して回転自在且つ軸心方向に変位不能に保持されている。この構成において、入力側スクリューが第1電動モータによって回転駆動させられると、出力側スクリューが入力側スクリューに対して相対回転することにより、軸心方向に相対変位する。これにより、出力部をハウジングに対して直線方向に沿って伸縮するように変位させ、出力部に連結された各種機器を駆動することができる。
【0010】
そして、この構成では、スクリュー機構において固着状態(ジャム状態)が発生し、入力側スクリューと出力側スクリューとが相対的に回転不能となった場合に、出力部に連結された機器が、その状態で固定されてしまうのを防止できる。具体的には、この構成では、固着状態が発生した場合、シャフト回転駆動部が駆動する。そうすると、スラスト軸受部が設けられたシャフト部が回転する。これにより、前記フランジ部を挟んで保持する一対の支持部が該フランジ部から離間するため、スラスト軸受機構による入力側スクリューのハウジングに対する保持が解除される。その結果、固着状態により一体化された状態の第1スクリュー及び第2スクリューが、スライド支持機構を介して第1電動モータに対して軸心方向へスライド自在となる。
【0011】
よって、この構成では、スクリュー機構において固着状態が発生した場合であっても出力部をハウジングに対して進退可能な状態にすることができる。更に、上述のように出力部を進退可能にするための構造が、スラスト軸受機構、フランジ部、及びシャフト回転駆動部等を備えて構成された比較的小型で簡素な構造によって実現される。このため、電動アクチュエータの構造の簡素化及び小型化が図られることになる。
【0012】
従って、この構成によれば、スクリュー機構において固着状態が発生した場合であっても出力部をハウジングに対して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供できる。
【0013】
(2)好ましくは、前記電動アクチュエータは、前記入力側スクリューを囲むように設けられた複数の前記シャフト部と、複数の前記シャフト部のそれぞれに設けられ、前記フランジ部を囲むように設けられた複数の前記スラスト軸受部とを備えている。
【0014】
この構成によると、複数のスラスト軸受部がフランジ部を囲むように設けられているため、フランジ部が設けられた入力側スクリューが該入力側スクリューの軸心方向に傾いて保持されることを抑制できる。
【0015】
(3)好ましくは、前記シャフト回転駆動部としての第2電動モータの出力軸と、前記シャフト部の軸心とは、互いに平行となるように設けられ、前記電動アクチュエータは、前記出力軸の回転力を前記シャフト部に伝達する伝達機構、を更に備える。
【0016】
この構成によると、伝達機構を設けることで、第2電動モータとシャフト部とを、第2電動モータの出力軸と前記シャフト部の軸心とを平行にずらした状態で配置することが可能になる。これにより、電動アクチュエータにおける第2電動モータ及びシャフト部の配置自由度を上げることができる。
【0017】
(4)更に好ましくは、前記伝達機構は、前記出力軸と前記シャフト部とを連結するリンク部材と、前記出力軸の回転中心に対して偏心して設けられ、前記リンク部材に形成された第1貫通孔に対して回転自在な第1偏心部と、前記シャフト部の回転中心に対して偏心して設けられ、前記リンク部材に形成された第2貫通孔に対して回転自在な第2偏心部と、を有する。
【0018】
この構成では、伝達機構として、リンク部材と、第1偏心部及び第2偏心部とを設けることで、第2電動モータの回転力をシャフト部に伝達可能な伝達機構を適切に構成することができる。
【0019】
(5)好ましくは、前記フランジ部は、前記入力側スクリューと同心状に配置され、両面が平坦面で構成された円板状に形成されている。
【0020】
この構成では、フランジ部の両面を平坦面で構成することにより、スラスト軸受部によってフランジ部をスラスト方向に適切に支持することができる。また、この構成では、フランジ部が板状に形成されているため、入力側スクリューを軽量化できる。
【0021】
(6)更に好ましくは、前記スラスト軸受部は、前記一対の延出部としての一対のスタッド部、及び前記支持部として設けられ前記スタッド部に回転自在に支持される外輪部、を有する一対のカムフォロアとして構成され、前記外輪部は、該外輪部の外周が前記フランジ部の一方側の面に摺接するように設けられている。
【0022】
この構成では、スラスト軸受部として、比較的耐荷重が大きいカムフォロアを用いている。これにより、入力側スクリューに比較的大きなスラスト荷重が作用しても、当該スラスト荷重をカムフォロアによって受けることができる。
【0023】
(7)好ましくは、前記第1スクリューは、前記第1電動モータによって回転させられる前記入力側スクリューとして設けられ、前記第2スクリューは、前記出力部が連結され又は設けられる前記出力側スクリューとして設けられている。
【0024】
この構成では、入力側スクリューとして設けられた第1スクリューと、出力側スクリューとして設けられた第2スクリューとを有するスクリュー機構において、固着状態時に該スクリュー機構をハウジングに対して進退可能な構成を提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、スクリュー機構において固着状態が発生した場合であっても出力部をハウジングに対して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る電動アクチュエータが航空機の翼及び動翼に対して取り付けられた状態を示す模式図である。
図2】動翼が、電動アクチュエータによって、図1に示す状態から駆動された状態を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る電動アクチュエータの構成を模式的に示す断面図であって、通常動作時の電動アクチュエータについて示す図である。
図4図3におけるスラスト軸受機構及び軸受保持解除機構付近を拡大して示す図である。
図5図4の矢印V方向から視た矢視図であって、一部の構成部品を省略して示す図である。
図6】軸受保持解除機構によって軸受の保持が解除された状態を示す図であって、図4に対応させて示す図である。
図7図6の矢印VII方向から視た矢視図であって、一部の構成部品を省略して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、航空機の動翼を駆動するための動翼駆動機構において電動アクチュエータが設けられた形態を例にとって説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態で例示した形態に限らず、広く適用することができる。具体的には、本発明は、スクリュー機構を有し、電動モータが出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する電動アクチュエータに関して、広く適用することができる。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータ1が、航空機の翼101及び動翼102に対して取り付けられた状態を例示する模式図である。図1においては、航空機の主要部の図示は省略されている。図1では、翼101の一部、動翼102、及び動翼103が、模式的に図示されている。本実施形態では、翼101は、航空機の主翼として構成されている。動翼102は、スポイラーとして構成されている。本実施形態では、動翼102が、電動アクチュエータ1によって駆動される機器として構成されている。動翼103は、フラップとして構成されている。尚、図1では、翼101の後端側の部分を航空機の左右方向から見た状態が模式的に図示されている。また、図1では、翼101及び動翼102,103の輪郭のみが模式的に図示されている。
【0029】
[動翼駆動機構]
電動アクチュエータ1の説明にあたり、まず、電動アクチュエータ1が適用される例である航空機用の動翼駆動機構100について説明する。図1に示す動翼駆動機構100は、航空機の翼101に設置される。動翼駆動機構100は、航空機の動翼102を駆動するために用いられる。そして、動翼駆動機構100は、電動アクチュエータ1、回転軸(図示省略)、及び揺動軸105、を含んで構成されている。
【0030】
回転軸は、翼101に設置される。そして、回転軸には、電動アクチュエータ1のハウジング2の端部が回転自在に連結される。これにより、電動アクチュエータ1は、翼101に対して、回転軸を中心として、揺動自在に支持されている。
【0031】
揺動軸105は、動翼102に設置される。そして、動翼102には、電動アクチュエータ1の出力部12bの端部が回転自在に連結される。尚、動翼102は、支点軸106に対して、回転自在に支持されている。支点軸106は、翼101に設置されている。これにより、動翼102は、翼101に対して、支点軸106を中心として、揺動自在に支持されている。
【0032】
電動アクチュエータ1においては、出力部12bが、ハウジング2に対して突出して相対変位可能に設けられている。即ち、出力部12bは、ハウジング2から突出することでハウジング2から伸張する動作が可能に構成されている。更に、出力部12bは、ハウジング2に対して収縮する動作も可能に構成されている。
【0033】
図2は、動翼102が、動翼駆動機構100の電動アクチュエータ1によって、図1に示す状態から駆動された状態を示す模式図である。図1は、出力部12bがハウジング2に対して最も収縮した位置に退避した状態を示している。一方、図2は、出力部12bがハウジング2から突出して伸張した状態を示している。図1及び図2に示すように、電動アクチュエータ1が作動することで、動翼102が駆動される。動翼102は、翼101に対して、支点軸106を中心として、揺動するように駆動される。
【0034】
尚、図1に示す動翼駆動機構100において、リアクションリンクが更に設けられていてもよい。リアクションリンクは、電動アクチュエータ1からの出力が動翼102に出力された際に、この出力による動翼102からの反力を支持する部材として設けられる。リアクションリンクは、一方の端部が回転軸に連結され、他方の端部が支点軸106に連結される。リアクションリンクが設けられることにより、可動側の動翼102が受ける負荷が固定側の翼101に対して直接に影響することが、抑制される。
【0035】
[構成]
図3は、電動アクチュエータ1を模式的に示す図であって、電動アクチュエータ1の一部断面を含む図である。前述のように、電動アクチュエータ1は、動翼102を駆動するアクチュエータとして構成されている。そして、図3に示すように、電動アクチュエータ1は、ハウジング2、スクリュー機構10、第1電動モータ5、シャフト部21、スラスト軸受機構6、軸受保持解除機構20、等を備えて構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、各図面において、前と記載された矢印が指示する方向を前側又は前方、後と記載された矢印が指示する方向を後側又は後方、上と記載された矢印が指示する方向を上側又は上方、下と記載された矢印が指示する方向を下側又は下方、と称する。
【0036】
ハウジング2は、内部空間を有する構造体として設けられている。ハウジング2は、前後方向に延びる略円筒状に形成された第1ハウジング部3と、第1ハウジング部3における後端部分から該第1ハウジング部3の径方向外側に突出する第2ハウジング部4とを有し、これらが一体に形成されている。第1ハウジング部3には、スクリュー機構10及びスラスト軸受機構6等が収容されている。第2ハウジング部4には、軸受保持解除機構20の第2電動モータ24の出力軸24a等が収容されている。
【0037】
スクリュー機構10は、第1電動モータ5が出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する機構として設けられている。図3に示すように、スクリュー機構10は、第1スクリュー11、第2スクリュー12、複数のボール13、等を備えて構成されている。
【0038】
第1スクリュー11は、第1ハウジング部3の軸心方向に沿って延びる軸状の部材として設けられ、第1ハウジング部3内に収容されている。第1スクリュー11の外周面における前側の部分には、螺旋状のネジ溝11aが形成されている。また、第1スクリュー11には、該第1スクリュー11の軸心部分を軸心方向に貫通する貫通孔11bが形成されている。
【0039】
第1スクリュー11は、詳しくは後述するスラスト軸受機構6によって、通常の動作時においては、ハウジング2に対して前後方向に変位不能、且つハウジング2に対して回転可能に支持されている。
【0040】
また、第1スクリュー11には、フランジ部11cが一体に形成されている。フランジ部11cは、第1スクリュー11の外周面から該第1スクリュー11の径方向外方に延びる円環状に形成された部分である。フランジ部11cは、その中心軸が、第1スクリュー11の軸心と同心状となるように設けられている。フランジ部11cにおける中心軸の一方側及び他方側の端面は、それぞれ、平坦面として構成されている。
【0041】
第2スクリュー12は、その一部、具体的には該第2スクリュー12における後側の部分が、第1ハウジング部3の前側の部分に収容されている。第2スクリュー12は、第1スクリュー11が内側に設置される筒状の部分である筒部12aと、該筒部12aから前方へ突出する突出部とを有し、これらが一体に形成されている。この突出部は、電動アクチュエータ1によって生成された駆動力を外部に対して出力する出力部12bとして設けられている。筒部12aの内周には、ネジ溝が形成されている。
【0042】
また、第2スクリュー12とハウジング2との間には、該第2スクリュー12をハウジング2に対して回転不能且つ前後方向(第2スクリュー12の軸心方向)に変位可能に支持する第2スクリュー支持機構としてのボールスプライン機構15が設けられている。なお、上記第2スクリュー支持機構は、第2スクリュー12をハウジング2に対して回転不能且つ前後方向に変位可能に支持する機構であれば、ボールスプライン機構15以外の機構で構成されていてもよい。例えば一例として、第2スクリュー支持機構を、スプライン機構で構成してもよい。また、他の一例として、第2スクリュー支持機構を、第2スクリューがハウジングに対して回転するのを防止する回り止めと、第2スクリューが軸心方向に変位可能に支持するすべり軸受と、で構成してもよい。
【0043】
第2スクリュー12の内周のネジ溝と第1スクリュー11のネジ溝11aとの間には、複数のボール13が循環するように構成されている。すなわち、スクリュー機構10は、ボールスクリュー機構として構成されている。
【0044】
第1電動モータ5は、比較的重量が重い機器である動翼102を駆動させるための駆動源として用いられる。従って、第1電動モータ5としては、定格電圧が比較的高いモータ(例えば一例として、定格電圧が270Vのモータ)が用いられる。
【0045】
第1電動モータ5は、ハウジング2における後端部分に固定されている。具体的には、第1電動モータ5は、該第1電動モータ5の出力軸5aが第1スクリュー11の貫通孔11bに挿通された状態で、ハウジング2に固定されている。第1電動モータ5の出力軸5aと第1スクリュー11とは、ボールスプライン機構17によって互いに連結されている。このボールスプライン機構17は、第1電動モータ5の回転力を第1スクリュー11に伝達し、且つ第1電動モータ5に対する第1スクリュー11の軸心方向へのスライドを許容するスライド支持機構として設けられている。なお、第1電動モータ5の出力軸5aと第1スクリュー11とを、スプライン結合によって互いに連結してもよい。
【0046】
スクリュー機構10では、第1電動モータ5が駆動すると、該第1電動モータ5の出力軸5aの回転力が第1スクリュー11に伝達される。これにより、複数のボール13が第1スクリュー11のネジ溝11aと第2スクリュー12のネジ溝との間で転動する。これにより、第2スクリュー12が、第1スクリュー11の軸方向に変位する。
【0047】
[スラスト軸受機構]
図4は、図3におけるスラスト軸受機構6及び軸受保持解除機構20付近を拡大して示す図である。また、図5は、図4における矢印V方向から視た矢視図であって、一部の構成部品(シャフト軸受22)を省略して示す図である。
【0048】
スラスト軸受機構6は、本実施形態では、2つのカムフォロア8,8で構成された一対のカムフォロア7(スラスト軸受部)、を4つ、有している。すなわち、スラスト軸受機構6は、8つのカムフォロア8を有している。各一対のカムフォロア7は、複数の(本実施形態では、4つの)シャフト部21のそれぞれに設けられている。
【0049】
4つのシャフト部21は、図5に示すように、第1スクリュー11の外周を囲むように、互いに対して同じ角度間隔(本実施形態では、90度間隔)となるように配置されている。各シャフト部21は、図4に示すように、第1スクリュー11の外側において該第1スクリュー11の軸心と平行となるように配置されている。各シャフト部21は、その両端部が、シャフト軸受22,22によってハウジング2に対して回転自在に支持されている。
【0050】
スラスト軸受機構6では、各一対のカムフォロア7が、対応する各シャフト部21に設けられることにより、第1スクリュー11の外周を囲むように互いに対して同じ角度間隔(本実施形態では、90度間隔)となるように配置される。各一対のカムフォロア7は、フランジ部11cの前後方向(第1スクリュー11の軸心方向)における両端面のそれぞれに当接することにより、第1スクリュー11をスラスト方向に支持している。
【0051】
各カムフォロア8は、スタッド部8a(延出部)と、外輪部8b(支持部)とを有している。
【0052】
スタッド部8aは、棒状に形成された部材であって、シャフト部21に対して固定されている。スタッド部8aは、シャフト部21に対して垂直となるように且つ第1スクリュー11に向かって延びるように設けられ、先端部分が該第1スクリュー11の外周面付近に位置している。
【0053】
外輪部8bは、各スタッド部8aにおける先端側の部分(第1スクリュー11側の部分)に設けられている。外輪部8bは、スタッド部8aの軸心を中心軸として該スタッド部8aに対して回転自在に設けられている。外輪部8bは、外周面がフランジ部11cの一方側の面と当接可能なように設けられている。
【0054】
[軸受保持解除機構]
軸受保持解除機構20は、スクリュー機構10が、こじり或いは焼き付き等が要因で固着状態(ジャム状態)となったときに、ハウジング2に対する第1スクリュー11の保持を解除するためのものである。軸受保持解除機構20は、図4及び図5に示すように、第2電動モータ24(シャフト回転駆動部)、上述した4つのシャフト部21、及び第2電動モータ24の回転力を各シャフト部21に伝達するための伝達機構25、等を備えている。
【0055】
第2電動モータ24は、4本のシャフト部21を回転させるためのものである。第2電動モータ24は、該第2電動モータ24の出力軸24aが第2ハウジング部4内に収容された状態で、該第2ハウジング部4に固定されている。第2電動モータ24の出力軸24aの先端には、第1偏心部27が取り付けられている。
【0056】
なお、第2電動モータ24は、第1電動モータ5の駆動対象である動翼102ほど重量が重い機器を駆動させるためのものではないため、それほど大きなパワーを必要とされない。第2電動モータ24としては、例えば一例として、定格電圧が24V程度のモータが用いられる。
【0057】
伝達機構25は、リンク部材26、第1偏心部27及び第2偏心部28、を備えている。
【0058】
第1偏心部27は、略円柱状に形成された部分である。第1偏心部27は、その中心軸が、第2電動モータ24の出力軸24aの回転軸と偏心した状態で、出力軸24aに固定されている。第1偏心部27は、詳しくは後述するリンク部材26の第1貫通孔26aに対して摺動しながら回転可能である。
【0059】
第2偏心部28は、略円柱状に形成された部分である。第2偏心部28は、その中心軸が、各シャフト部21の回転軸と偏心した状態で、各シャフト部21における一端側(図4の後端側)に固定されている。すなわち、本実施形態では、4つの第2偏心部28が設けられている。第2偏心部28は、詳しくは後述するリンク部材26の第2貫通孔26bに対して摺動しながら回転可能である。第2偏心部28は、前後方向において、第1偏心部27と同じ位置に設けられている。第2偏心部28のシャフト部21に対する偏心方向及び偏心量は、第1偏心部27の出力軸24aに対する偏心方向及び偏心量と同じである。
【0060】
リンク部材26は、第2電動モータ24の出力軸24aと4本のシャフト部21とを連結する部材として設けられている。リンク部材26は、図5に示すように、第1偏心部27側から第2偏心部28側へ向かって上下方向に延びるように形成され、前後方向に所定の厚みを有する略板状に形成されている。リンク部材26における上側の部分には、第1偏心部27が挿通する第1貫通孔26aが形成されている。一方、リンク部材の下側の部分には、4つの第2偏心部28のそれぞれが挿通する4つの第2貫通孔26bが形成されている。また、リンク部材26における4つの第2貫通孔26bで囲まれた部分には、第1スクリュー11の外径よりも内径が大きい第3貫通孔26cが形成されている。第3貫通孔26cには、第1スクリュー11が挿通している。
【0061】
[電動アクチュエータの基本動作]
次に、本実施形態に係る電動アクチュエータ1の基本動作について説明する。電動アクチュエータ1の基本動作時には、第1スクリュー11は、スラスト軸受機構6によって、ハウジング2に対して前後方向に位置決めされ、且つハウジング2に対して回転自在な状態となっている(図3及び図4参照)。
【0062】
電動アクチュエータ1を作動する場合、第1電動モータ5が回転駆動される。すると、出力軸5aとボールスプライン結合した第1スクリュー11も回転する。そうすると、第1スクリュー11の回転力が、ボールスクリュー機構によって連結された第2スクリュー12に伝達されるため、第2スクリュー12(すなわち出力部12b)が軸心方向に沿って変位する。これにより、動翼102を翼101に対して駆動できる。
【0063】
[固着状態時における軸受保持解除機構の動作]
次に、スクリュー機構10における固着状態が発生した場合の電動アクチュエータ1の動作、特に、軸受保持解除機構20の動作について説明する。例えば、ハウジング2に対して第1スクリュー11が突出又は収縮する動作の途中において、スクリュー機構10における固着状態が発生すると、第1スクリュー11に対して第2スクリュー12が軸方向に変位する動作が、不能となる。この場合、動翼制御用コントローラ(図示省略)において、スクリュー機構10の固着状態の発生が検知される。
【0064】
なお、上記のように、ハウジング2に対して第2スクリュー12が突出又は収縮する動作の途中において、スクリュー機構10における固着状態が発生した場合には、動翼102は、翼101に対して、ある程度起立した状態となっている。そして、第1スクリュー11に対する第2スクリュー12の軸方向の変位動作が不能なため、電動アクチュエータ1の通常の作動によっては、出力部12bをハウジング2に対して進退させることができない。
【0065】
しかし、上記のように、スクリュー機構10の固着状態の発生が検知されると、動翼制御用コントローラからの指令に基づいて、軸受保持解除機構20が動作する。具体的には、固着状態の発生が検知されると、第2電動モータ24が駆動される。これにより、出力軸24aが所定方向に、例えば図5における反時計回り方向に90度、回転する。そうすると、出力軸24aに固定された第1偏心部27の偏心回転に伴ってリンク部材26が揺動する。このリンク部材26の揺動により、各第2偏心部28が偏心回転するため、各第2偏心部28が固定された各シャフト部21がハウジング2に対して90度、回転する。これにより、各シャフト部21に固定されたカムフォロア8のスタッド部8aが、各シャフト部21の軸心周りに90度回転する。その結果、各カムフォロア8の外輪部8bの外周面がフランジ部11cから離間するため(図6及び図7参照)、スラスト軸受機構6による第1スクリュー11のハウジング2に対する保持が解除される。従って、固着した状態の第1スクリュー11及び第2スクリュー12が、ハウジング2に対して軸心方向にスライド自在な状態となるため、出力部12bもハウジング2に対して軸心方向にスライド自在な状態となる。なお、スクリュー機構10の固着状態の発生が検知されると、第1電動モータ5の運転が停止される。
【0066】
[オーバーロード時における軸受保持解除機構の動作]
また、電動アクチュエータ1において、出力部12bに過剰な負荷がかかった場合(出力部12bがオーバーロードとなった場合)にも、軸受保持解除機構20は、上述の場合と同様の動作を行う。具体的には、出力部12bのオーバーロードが検出されると、第1電動モータ5の運転が停止されるとともに、上述の場合と同様に第2電動モータ24が駆動される。第2電動モータ24が駆動されると、上述のように、スラスト軸受機構6による第1スクリュー11のハウジング2に対する保持が解除される。これにより、出力部12bに作用する過剰な負荷に起因して、電動アクチュエータ1においてスクリュー機構10等が破損してしまうのを防止できる。
【0067】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1では、第1スクリュー11が第1電動モータ5によって回転駆動させられると、第2スクリュー12が第1スクリュー11に対して相対回転することにより、軸心方向に相対変位する。これにより、出力部12bをハウジング2に対して直線方向(軸心方向)に沿って伸縮するように変位させ、出力部12bに連結された動翼102を駆動することができる。
【0068】
そして、電動アクチュエータ1では、スクリュー機構10において固着状態(ジャム状態)が発生し、第1スクリュー11と第2スクリュー12とが相対的に回転不能となった場合に、出力部12bに連結された動翼102が、その状態で固定されてしまうのを防止できる。具体的には、この構成では、固着状態が発生した場合、第2電動モータ24が駆動する。そうすると、一対のカムフォロア7が設けられた各シャフト部21が回転する。これにより、フランジ部11cを挟んで保持する一対のカムフォロア7の各外輪部8bが該フランジ部11cから離間するため、スラスト軸受機構6による第1スクリュー11のハウジング2に対する保持が解除される。その結果、固着状態により一体化された状態の第1スクリュー11及び第2スクリュー12が、ボールスプライン機構17を介して第1電動モータ5に対して軸心方向へスライド自在となる。
【0069】
よって、電動アクチュエータ1では、スクリュー機構10において固着状態が発生した場合であっても出力部12bをハウジング2に対して進退可能な状態にすることができる。よって、例えば一例として、動翼102に、上記電動アクチュエータ1とは別のアクチュエータを取付け、該アクチュエータによって動翼102を動作させることが可能になる。更に、上述のように出力部12bを進退可能にするための構造が、スラスト軸受機構6、フランジ部11c、及び第2電動モータ24等を備えて構成された比較的小型で簡素な構造によって実現される。このため、電動アクチュエータ1の構造の簡素化及び小型化が図られることになる。
【0070】
従って、電動アクチュエータ1によれば、スクリュー機構10において固着状態が発生した場合であっても出力部12bをハウジング2に対して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供できる。
【0071】
また、電動アクチュエータ1では、該電動アクチュエータ1においてオーバーロードが発生した場合であっても、上述の場合と同様にして軸受保持解除機構20を作動させることができる。これにより、出力部12bに作用する過剰な負荷に起因して、電動アクチュエータ1においてスクリュー機構10等が破損してしまうのを防止できる。
【0072】
また、電動アクチュエータ1では、各一対のカムフォロア7がフランジ部11cを囲むように設けられているため、フランジ部11cが設けられた第1スクリュー11が該第1スクリューの軸心方向に傾いて保持されることを抑制できる。
【0073】
また、電動アクチュエータ1では、伝達機構25を設けることで、第2電動モータ24と各シャフト部21とを、第2電動モータ24の出力軸24aとシャフト部21の軸心とを平行にずらした状態で配置することが可能になる。これにより、電動アクチュエータ1における第2電動モータ24及び各シャフト部21の配置自由度を上げることができる。
【0074】
また、電動アクチュエータ1において用いられる第2電動モータ24は、比較的小さなパワーで駆動可能なモータで構成することができる。よって、例えば、第2電動モータの電力は、バッテリー等の補助電源から供給することもできるため、電源の使用環境が限られた状況においても比較的容易に駆動することができる。
【0075】
また、電動アクチュエータ1では、伝達機構25として、リンク部材26と、第1偏心部27及び第2偏心部28とを設けることで、第2電動モータ24の回転力を各シャフト部21に伝達可能な伝達機構25を適切に構成することができる。
【0076】
また、電動アクチュエータ1では、フランジ部11cの両面を平坦面で構成することにより、一対のカムフォロア7によってフランジ部11cをスラスト方向に適切に支持することができる。また、この構成では、フランジ部11cが板状に形成されているため、第1スクリュー11を軽量化できる。
【0077】
また、電動アクチュエータ1では、スラスト軸受部として、比較的耐荷重が大きいカムフォロア8を用いている。これにより、第1スクリュー11に比較的大きなスラスト荷重が作用しても、当該スラスト荷重をカムフォロア8によって受けることができる。
【0078】
また、電動アクチュエータ1では、入力側スクリューとして設けられた第1スクリュー11と、出力側スクリューとして設けられた第2スクリュー12とを有するスクリュー機構10において、固着状態時に該スクリュー機構10をハウジング2に対して進退可能な構成を提供できる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のような変形例を実施してもよい。
【0080】
(1)上記実施形態では、入力側スクリューを第1スクリュー11で構成し、出力側スクリューを第2スクリュー12で構成したが、この限りでなく、入力側スクリューを第2スクリューで構成し、出力側スクリューを第1スクリューで構成してもよい。
【0081】
(2)上記実施形態では、リンク部材26、第1偏心部27及び第2偏心部28等を用いて伝達機構25を構成したが、これに限らない。例えば、伝達機構を、平歯車等のギヤを適宜組み合わせることにより構成してもよい。こうしても、第2電動モータ24の回転力を各シャフト部21に対して伝達可能な伝達機構を構成することができる。
【0082】
(3)上記実施形態では、スラスト軸受部を一対のカムフォロア7で構成したが、これに限らず、フランジ部11cを両側から挟み込んで第1スクリュー11のスラスト荷重を受けることができるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0083】
(4)上記実施形態では、第1及び第2のスクリュー11,12を有するスクリュー機構10が、ボールスクリュー機構として構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、第1及び第2スクリューを有するスクリュー機構が、ボールスクリュー機構以外の構成を備えた形態として実施されてもよい。例えば、第1スクリュー及び第2スクリューが螺合する構成のスクリュー機構が実施されてもよい。或いは、第1及び第2スクリューを有するスクリュー機構が、ローラスクリュー機構の構成を備えた形態として実施されてもよい。ローラスクリュー機構の場合、第1スクリューと第2スクリューとの間に、外周に螺旋溝が設けられた複数のスクリュー状のローラ軸が回転自在に設置されることになる。第1スクリュー又は第2スクリューの回転に伴って、各ローラ軸は、第1スクリューと第2スクリューとに対して、螺旋溝で噛み合って各軸心を中心として回転することになる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、本発明は、スクリュー機構を有し、電動モータが出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する電動アクチュエータに関して広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 電動アクチュエータ
2 ハウジング
5 第1電動モータ
6 スラスト軸受機構
7 一対のカムフォロア(スラスト軸受部)
8a スタッド部(延出部)
8b 外輪部(支持部)
10 スクリュー機構
11 第1スクリュー
11c フランジ部
12 第2スクリュー
12b 出力部
17 ボールスプライン機構(スライド支持機構)
21 シャフト部
24 第2電動モータ(シャフト回転駆動部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7