(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電動アクチュエータは、同軸上で逆方向に延びるように設けられた二重のアクチュエータが必要となる。更に、二重のアクチュエータのそれぞれには、電動モータ及びスクリュー機構が必要となる。このため、この電動アクチュエータは、構造が複雑化するとともに大型化してしまうことになる。また、この電動アクチュエータは、構造の大型化に伴い、重量も増大することになる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、スクリュー機構を有する電動アクチュエータにおいて固着状態が発生しても、出力部を、当該電動アクチュエータの設置箇所から切り離して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る電動アクチュエータは、筒状に形成された筒状ハウジング部、及び該筒状ハウジング部とは別体の部材として設けられた基部側ハウジング部、を有するハウジングと、前記筒状ハウジング部に少なくとも一部が収納される第1スクリュー、及び、該第1スクリューが内側に設置される筒状の部分を有し、前記第1スクリューに対して該第1スクリューの軸心を中心として相対回転可能なように取り付けられるとともに、相対回転することで前記第1スクリューに対して該第1スクリューの軸心方向に相対変位可能な第2スクリュー、を有するスクリュー機構と、前記第1スクリュー及び前記第2スクリューのうちの一方のスクリューとして設けられ、前記筒状ハウジング部に対して回転自在に支持される入力側スクリュー、を回転させる第1電動モータと、前記第1スクリュー及び前記第2スクリューのうちの他方のスクリューとして設けられる出力側スクリューに連結され又は設けられる出力部と、前記筒状ハウジング部及び前記基部側ハウジング部の一方に形成された貫通孔又は凹みとしての第1係合部、及び、前記筒状ハウジング部及び前記基部側ハウジング部の他方に形成された貫通孔としての第2係合部、の両方に跨って挿入されることで、前記基部側ハウジング部に対する前記筒状ハウジング部の相対移動を規制する規制部材、及び、該規制部材を前記第1係合部及び前記第2係合部のうちの少なくとも一方から抜去することにより、前記基部側ハウジング部に対する前記筒状ハウジング部の相対移動を許容する規制部材駆動部、を有するリリーフ機構と、を備えている。
【0009】
この構成において、電動アクチュエータの通常動作時には、規制部材が、2つのハウジング部(筒状ハウジング部及び基部側ハウジング部)のそれぞれに形成された第1係合部及び第2係合部の両方に跨って挿入された状態となっている。これにより、基部側ハウジング部に対する筒状ハウジング部の相対移動が規制されるため、2つのハウジング部が一体化された状態となる。この状態において、入力側スクリューが第1電動モータによって回転駆動させられると、出力側スクリューが入力側スクリューに対して相対回転することにより、軸心方向に相対変位する。これにより、出力部をハウジングに対して直線方向に沿って伸縮するように変位させ、出力部に連結された各種機器を、電動アクチュエータの設置箇所(基部側ハウジング部が取り付けられる箇所)に対して駆動することができる。
【0010】
そして、この構成では、スクリュー機構において固着状態(ジャム状態)が発生し、入力側スクリューと出力側スクリューとが相対的に回転不能となった場合に、出力部に連結された機器が、その状態で固定されてしまうのを防止できる。具体的には、この構成では、固着状態が発生した場合、規制部材駆動部が駆動する。そうすると、第1係合部及び第2係合部の両方に跨って挿入されていた規制部材が、少なくとも一方の係合部から抜去される。そうなると、基部側ハウジング部に対する筒状ハウジング部の相対移動が許容される。すなわち、駆動対象である機器に連結されている側の筒状ハウジング部を、電動アクチュエータの設置箇所に取り付けられた基部側ハウジング部に対して、軸心方向に変位自在な状態にできる。これにより、固着状態により一体化された状態の第1スクリュー及び第2スクリューが、電動アクチュエータの設置箇所に対してスクリューの軸心方向に変位自在となる。
【0011】
よって、この構成では、スクリュー機構において固着状態が発生した場合であっても、出力部を、電動アクチュエータの設置箇所に連結された状態の基部側ハウジング部に対して進退可能な状態にすることができる。更に、上述のように出力部を進退可能にするための構造が、規制部材、及び規制部材駆動部等を備えて構成された比較的小型で簡素な構造によって実現される。このため、電動アクチュエータの構造の簡素化及び小型化が図られることになる。
【0012】
従って、この構成によれば、スクリュー機構を有する電動アクチュエータにおいて固着状態が発生しても、出力部を、当該電動アクチュエータの設置箇所から切り離して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供できる。
【0013】
(2)好ましくは、前記第1電動モータは、略円環状に形成され、前記筒状ハウジング部と同心状となるように該筒状ハウジング部に固定されるステータ部と、前記ステータ部内に収容され、該ステータ部に対して回転する略円環状のロータ部とを有し、前記ロータ部の内側には、前記入力側スクリューとしての前記第2スクリューが固定されている。
【0014】
この構成では、第2スクリューが入力側スクリューとして設けられている構成において、スクリュー機構の固着状態時に、出力部を基部側ハウジング部に対して進退可能な構成を提供できる。
【0015】
(3)更に好ましくは、前記出力側スクリューとしての前記第1スクリューは、該第1スクリューの軸心方向における前記出力部と反対側の部分に、前記軸心方向に向かって開口する第1スクリュー円筒部を有し、前記基部側ハウジング部は、筒状に形成され、軸心方向の一方側の部分が、前記第1スクリュー円筒部の軸心と同心状となるように該第1スクリュー円筒部に収容され、前記電動アクチュエータは、前記第1スクリュー円筒部と前記基部側ハウジング部との間に、該基部側ハウジング部に対する前記第1スクリューの回転を規制するとともに、前記基部側ハウジング部に対する前記第1スクリューのスライドを許容するスライド支持機構、を更に備えている。
【0016】
この構成によると、スクリュー機構の固着状態時において、出力部を、基部側ハウジング部に対して軸心方向にスライド移動することができる。しかも、上記スライド支持機構は、第1スクリュー円筒部の内側、より具体的には、第1スクリュー円筒部と該第1スクリュー円筒部に一部が収容された基部側ハウジング部との間に形成される。これにより、電動アクチュエータの大型化を抑制できる。
【0017】
(4)更に好ましくは、前記規制部材駆動部として設けられた第2電動モータは、該第2電動モータの出力軸が前記基部側ハウジング部の軸心に沿うように該基部側ハウジング部内に収容された状態で、該基部側ハウジング部に固定され、前記第1係合部は前記筒状ハウジング部に形成される一方、前記第2係合部は前記基部側ハウジング部に形成され、前記規制部材は、前記第1係合部及び前記第2係合部の配列方向に沿って進退する棒状に形成され、一端側が前記基部側ハウジング部内に収容される規制ピンとして構成され、前記リリーフ機構は、前記第2電動モータの前記出力軸の外周に形成された雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成されたナット部材と、一端側が前記ナット部材に対して揺動自在に連結される一方、他方側が前記規制ピンの前記一端側に対して揺動自在に連結されるリンク部材と、を更に備え、前記規制ピンが前記第1係合部及び前記第2係合部の両方に跨って挿入されている状態から、前記出力軸の回転駆動により前記規制ピンが前記第1係合部から抜去された状態とするように構成されている。
【0018】
この構成では、スクリュー機構の固着状態時には、第1係合部及び第2係合部の両方に跨って挿入された状態の規制ピンが第1係合部から抜去された状態となるように、リリーフ機構が作動する。
【0019】
具体的には、リリーフ機構では、第2電動モータの出力軸が所定方向に回転駆動することにより、該出力軸に螺合されたナット部材が、軸心方向における規制ピンと離間する方向に移動する。そうすると、一端側がナット部材に揺動自在に連結されたリンク部材が、該リンク部材の他方側に揺動自在に連結された規制ピンを、基部側ハウジング部の径方向内側へ引っ張り込む。これにより、第1係合部及び第2係合部の両方に跨って挿入された状態の規制ピンを、第1係合部から抜去された状態とすることができる。これにより、スクリュー機構の固着状態時に、基部側ハウジング部に対する筒状ハウジング部の係合を解除し、出力部を、基部側ハウジング部に対して軸心方向に進退させることが可能になる。
【0020】
また、この構成では、リリーフ機構の一部を構成するナット部材及びリンク部材等の構成要素が、基部側ハウジング部の内部に収容されている。これにより、電動アクチュエータの大型化を抑制できる。
【0021】
(5)更に好ましくは、前記リリーフ機構は、前記出力軸の外周面における軸心方向一方側の部分と他方側の部分とに形成され、互いに逆ネジの関係となる一対の前記雄ネジ部と、それぞれに、各前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成された一対の前記ナット部材と、それぞれの一端側が、各前記ナット部材に対して揺動自在に連結される一方、それぞれの他端側が、前記規制ピンの前記一端側に対して揺動自在に連結される一対の前記リンク部材と、を有している。
【0022】
この構成では、第2電動モータの出力軸が所定方向に回転することにより、該出力軸に螺合された一対のナット部材が、それぞれ、軸心方向における規制ピンと離間する方向、すなわち、互いに離間する方向に移動する。そうすると、それぞれの一端側がナット部材に揺動自在に連結された一対のリンク部材が、該一対のリンク部材に共通して連結される規制ピンを、基部側ハウジング部の径方向内側へ引っ張り込む。すなわち、一対のリンク部材によって規制ピンを進退できるため、規制ピンを確実に動作させることができる。
【0023】
(6)更に好ましくは、前記筒状ハウジング部には、2つの前記第1係合部が形成され、前記基部側ハウジング部には、それぞれが、対応する2つの前記第1係合部のそれぞれに対して、前記筒状ハウジング部の径方向において重なるように配置される2つの前記第2係合部が形成され、前記リリーフ機構は、それぞれが、対応する前記第1係合部及び前記第2係合部の両方に跨って挿入される一対の前記規制ピンを有し、前記リリーフ機構には、各前記規制ピンの前記一端側に対して揺動自在に連結される一対の前記リンク部材が2つ、設けられている。
【0024】
この構成では、筒状ハウジング部と基部側ハウジング部との係合を、複数の規制ピンによって行うことができるため、2つのハウジング部を確実に係合することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、スクリュー機構を有する電動アクチュエータにおいて固着状態が発生しても、出力部を、当該電動アクチュエータの設置箇所から切り離して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、航空機の動翼を駆動するための動翼駆動機構において電動アクチュエータが設けられた形態を例にとって説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態で例示した形態に限らず、広く適用することができる。具体的には、本発明は、スクリュー機構を有し、電動モータが出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する電動アクチュエータに関して、広く適用することができる。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータ1が、航空機の翼101及び動翼102に対して取り付けられた状態を例示する模式図である。
図1においては、航空機の主要部の図示は省略されている。
図1では、翼101の一部、動翼102、及び動翼103が、模式的に図示されている。本実施形態では、翼101は、航空機の主翼として構成されている。動翼102は、スポイラーとして構成されている。本実施形態では、動翼102が、電動アクチュエータ1によって駆動される機器として構成されている。動翼103は、フラップとして構成されている。尚、
図1では、翼101の後端側の部分を航空機の左右方向から見た状態が模式的に図示されている。また、
図1では、翼101及び動翼102,103の輪郭のみが模式的に図示されている。
【0029】
[動翼駆動機構]
電動アクチュエータ1の説明にあたり、まず、電動アクチュエータ1が適用される例である航空機用の動翼駆動機構100について説明する。
図1に示す動翼駆動機構100は、航空機の翼101に設置される。動翼駆動機構100は、航空機の動翼102を駆動するために用いられる。そして、動翼駆動機構100は、電動アクチュエータ1、回転軸(図示省略)、及び揺動軸105、を含んで構成されている。
【0030】
回転軸は、翼101に設置される。そして、回転軸には、電動アクチュエータ1のハウジング2、具体的には、詳しくは後述する第2ハウジング部、が回転自在に連結される。これにより、電動アクチュエータ1は、翼101に対して、回転軸を中心として、揺動自在に支持されている。
【0031】
揺動軸105は、動翼102に設置される。そして、動翼102には、電動アクチュエータ1の出力部11bの端部が回転自在に連結される。尚、動翼102は、支点軸106に対して、回転自在に支持されている。支点軸106は、翼101に設置されている。これにより、動翼102は、翼101に対して、支点軸106を中心として、揺動自在に支持されている。
【0032】
電動アクチュエータ1においては、出力部11bが、ハウジング2に対して突出して相対変位可能に設けられている。即ち、出力部11bは、ハウジング2から突出することでハウジング2から伸張する動作が可能に構成されている。更に、出力部11bは、ハウジング2に対して収縮する動作も可能に構成されている。
【0033】
図2は、動翼102が、動翼駆動機構100の電動アクチュエータ1によって、
図1に示す状態から駆動された状態を示す模式図である。
図1は、出力部11bがハウジング2に対して最も収縮した位置に退避した状態を示している。一方、
図2は、出力部11bがハウジング2から突出して伸張した状態を示している。
図1及び
図2に示すように、電動アクチュエータ1が作動することで、動翼102が駆動される。動翼102は、翼101に対して、支点軸106を中心として、揺動するように駆動される。
【0034】
尚、
図1に示す動翼駆動機構100において、リアクションリンクが更に設けられていてもよい。リアクションリンクは、電動アクチュエータ1からの出力が動翼102に出力された際に、この出力による動翼102からの反力を支持する部材として設けられる。リアクションリンクは、一方の端部が回転軸に連結され、他方の端部が支点軸106に連結される。リアクションリンクが設けられることにより、可動側の動翼102が受ける負荷が固定側の翼101に対して直接に影響することが、抑制される。
【0035】
[構成]
図3は、電動アクチュエータ1を模式的に示す図であって、電動アクチュエータ1の一部断面を含む図である。前述のように、電動アクチュエータ1は、動翼102を駆動するアクチュエータとして構成されている。そして、
図3に示すように、電動アクチュエータ1は、ハウジング2、スクリュー機構10、第1電動モータ5、リリーフ機構20、等を備えて構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、各図面において、前と記載された矢印が指示する方向を前側又は前方、後と記載された矢印が指示する方向を後側又は後方、と称する。
【0036】
ハウジング2は、内部空間を有する構造体として設けられている。本実施形態では、ハウジング2は、2つの部材によって構成されている。具体的には、ハウジング2は、第1ハウジング部3(筒状ハウジング部)及び第2ハウジング部4(基部側ハウジング部)を有し、これらが互いに組み合わされることにより構成されている。2つのハウジング部3,4は、詳しくは後述する一対の規制ピン25,26により、互いに対して変位不能になっている。
【0037】
第1ハウジング部3は、略円筒状に形成された筒状ハウジング部として設けられている。第1ハウジング部3の内周における前側の部分には、第1電動モータ5のステータ6が配置される凹部3aが形成されている。一方、第1ハウジング部3の後側には、該第1ハウジング部3を厚み方向(径方向)に貫通する2つの第1孔部H
1A,H
1B(第1係合部)が形成されている。2つの第1孔部H
1A,H
1Bは、第1ハウジング部3の周方向において180度異なる位置に形成されている。
【0038】
第2ハウジング部4は、第1ハウジング部3とは別体の部材である基部側ハウジング部として設けられている。第2ハウジング部4は、上述のように、電動アクチュエータ1の設置箇所である翼101に対して回転軸を介して連結されている。
【0039】
第2ハウジング部4は、前側の部分が第1ハウジング部3に収容される円筒状に形成された第2ハウジング円筒部4aと、第2ハウジング円筒部4aにおける後端部に設けられた底部4bとを有し、これらが一体に形成されている。第2ハウジング円筒部4aの後側には、該第2ハウジング円筒部4aを厚み方向(径方向)に貫通する2つの第2孔部H
2A,H
2B(第2係合部)が形成されている。各第2孔部H
2A,H
2Bは、第2ハウジング部4の軸心方向及び周方向において、対応する各第1孔部H
1A,H
1Bと同じ位置に形成されている。すなわち、各第2孔部H
2A,H
2Bは、第2ハウジング部4の径方向外方から視て、対応する各第1孔部H
1A,H
1Bと重なる位置に形成されている。これにより、第1孔部H
1A及び第2孔部H
2A、及び第1孔部H
1B及び第2孔部H
2Bは、それぞれ、各ハウジング部3,4の径方向に沿って配列される。
【0040】
第1電動モータ5は、比較的重量が重い機器である動翼102を駆動させるための駆動源として用いられる。従って、第1電動モータ5としては、定格電圧が比較的高いモータ(例えば一例として、定格電圧が270Vのモータ)が用いられる。
【0041】
第1電動モータ5は、略円環状に形成されたステータに対して、該ステータの内側に配置されたロータが回転するように構成された、いわゆるインナーロータ型の電動モータで構成されている。第1電動モータ5は、ステータ6とロータ7とを有している。ステータ6は、略円環状に形成されている。ステータ6は、外周側の部分が、第1ハウジング部3に形成された凹部3aに対して嵌合している。ロータ7は、ステータ6の内径よりも外径が小さい略円環状に形成され、ステータ6に対して径方向に間隔をあけた状態で、該ステータ6内に収容されている。第1電動モータ5は、ステータ6に巻回された巻線(図示省略)を流れる電流によって該ステータ6の内部に発生する回転磁界によって、ロータ7が回転するように構成されている。
【0042】
スクリュー機構10は、第1電動モータ5が出力する回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して出力する機構として設けられている。
図3に示すように、スクリュー機構10は、第1スクリュー11、第2スクリュー12、複数のボール13、等を備えて構成されている。本実施形態では、第2スクリュー12は、第1電動モータ5からの回転力が入力される入力側スクリューとして設けられている。また、第1スクリュー11は、出力部11bが設けられ、第2スクリュー12の回転力によって軸心方向に進退する出力側スクリューとして設けられている。
【0043】
第2スクリュー12は、略円筒状に形成されている。第2スクリュー12は、第1電動モータ5のロータ7の内周に挿通し、該ロータ7と一体化されている。また、第2スクリュー12は、該第2スクリュー12の軸心方向における両端部に取り付けられた軸受8aを介して、第1ハウジング部3によって回転自在に保持されている。すなわち、第2スクリューは、第1電動モータ5が駆動してロータ7が回転すると、該ロータ7とともに、第1ハウジング部3に対して軸受8aを介して回転する。第2スクリュー12の内周面には、螺旋状のネジ溝12aが形成されている。
【0044】
第1スクリュー11は、第1ハウジング部3の軸心方向に沿って延びる軸状の部材として設けられている。第1スクリュー11は、後側の部分に設けられる円筒状の部分である第1スクリュー円筒部11aと、該円筒部11aから前方へ突出する突出部とを有し、これらが一体に形成されている。この突出部は、電動アクチュエータ1によって生成された駆動力を外部に対して出力する出力部11bとして設けられている。第1スクリュー円筒部11aの外周面には、螺旋状のネジ溝11cが形成されている。
【0045】
第1スクリュー円筒部11aの内側には、第1スクリュー11の軸心と同心となるように、第2ハウジング円筒部4aの前側の部分が収容されている。そして、第1スクリュー円筒部11aの内側と第2ハウジング円筒部4aの外側との間には、第1スクリュー11を第2ハウジング部4に対して回転不能且つ前後方向(第1スクリュー11の軸心方向)に変位可能に支持するスライド支持機構としてのボールスプライン機構15が設けられている。なお、上記スライド支持機構は、第1スクリューを第2ハウジング部4に対して回転不能且つ前後方向に変位可能に支持する機構であれば、ボールスプライン機構15以外の機構で構成されていてもよい。例えば一例として、スライド支持機構を、スプライン機構で構成してもよい。また、他の一例として、スライド支持機構を、第1スクリューが第2ハウジングに対して回転するのを防止する回り止めと、第1スクリューが軸心方向に変位可能に支持するすべり軸受と、で構成してもよい。
【0046】
第2スクリュー12の内周のネジ溝12aと第1スクリュー11のネジ溝11cとの間には、複数のボール13が循環するように構成されている。すなわち、スクリュー機構10は、ボールスクリュー機構として構成されている。
【0047】
スクリュー機構10では、第1電動モータ5が駆動すると、ロータ7とともに第2スクリュー12が回転する。これにより、複数のボール13が第1スクリュー11のネジ溝11cと第2スクリュー12のネジ溝12aとの間で転動する。これにより、第1スクリュー11が、第2スクリュー12の軸心方向に変位する。
【0048】
[リリーフ機構]
図4は、
図3におけるリリーフ機構20付近を拡大して示す図である。リリーフ機構20は、スクリュー機構10が、こじり或いは焼き付き等が要因で固着状態(ジャム状態)となったときに、出力部11bを翼101から切り離して進退させることを可能とする機構である。リリーフ機構20は、
図4に示すように、第2電動モータ21(規制部材駆動部)と、出力軸22と、一対のナット部材23,24と、リンク機構30と、一対の規制ピン25,26(規制部材)と、有している。
【0049】
第2電動モータ21は、リンク機構30を動作させるためのものである。第2電動モータ21は、第2ハウジング部4の底部4bに取り付けられている。なお、第2電動モータ21は、第1電動モータ5の駆動対象である動翼102ほど重量が重い機器を駆動させるためのものではないため、それほど大きなパワーを必要とされない。第2電動モータ21としては、例えば一例として、定格電圧が24V程度のモータが用いられる。
【0050】
出力軸22は、第2電動モータ21の回転力を伝達するための出力軸として設けられている。出力軸22は、第2ハウジング部4の軸心と同心状になるように、該第2ハウジング部4の内部に設けられている。
【0051】
出力軸22の外周面には、雄ネジ部が形成されている。具体的には、出力軸22には、該出力軸22の一方側(
図4の後側)の部分に第1雄ネジ部22aが形成され、該出力軸22の他方側(
図4の前側)の部分に第2雄ネジ部22bが形成されている。
【0052】
第1雄ネジ部22a及び第2雄ネジ部22bは、互いに逆ネジの関係にある。すなわち、一方の雄ネジ部22a,22bが右ネジで構成されている場合、他方の雄ネジ部22b,22aは左ネジで構成されている。
【0053】
一対のナット部材23,24は、第1ナット部材23及び第2ナット部材24で構成されている。第1ナット部材23には第1雌ネジ部23aが、第2ナット部材24には第2雌ネジ部24aが、それぞれ形成されている。
【0054】
第1ナット部材23は、出力軸22の第1雄ネジ部22aに螺合し、第2ナット部材24は、出力軸22の第2雄ネジ部22bに螺合している。すなわち、第1ナット部材23の第1雌ネジ部23aと、第2ナット部材24の第2雌ネジ部24aとは、互いに逆ネジの関係にある。
【0055】
リンク機構30は、複数の(本実施形態では、4つの)リンク部材31,32,33,34を有し、これらが互いに対して揺動可能に設けられている。やや詳しくは、リンク機構30は、4つのリンク部材31,32,33,34の各端部が互いに重ねられて四角形状に配置され、それぞれの端部が連結ピンによって揺動可能なように互いに対して連結されている。
【0056】
詳しくは、リンク機構30は、第1リンク部材31、第2リンク部材32、第3リンク部材33、第4リンク部材34、を有している。各リンク部材31〜34は、細長いプレート状に形成されている。
【0057】
第1リンク部材31は、一端側が連結ピン35によって第1ナット部材23に揺動自在に連結される一方、他端側が連結ピン36によって、詳しくは後述する第1規制ピン25に揺動自在に連結される。第2リンク部材32は、一端側が連結ピン37によって第2ナット部材24に揺動自在に連結される一方、他端側が連結ピン36によって、第1リンク部材31とともに第1規制ピン25に揺動自在に連結される。第3リンク部材33は、一端側が連結ピン35によって、第1リンク部材31とともに第1ナット部材23に揺動自在に連結される一方、他端側が連結ピン38によって、詳しくは後述する第2規制ピン26に揺動自在に連結される。第4リンク部材34は、一端側が連結ピン37によって第2リンク部材32とともに第2ナット部材24に揺動自在に連結される一方、他端側が連結ピン38によって、第3リンク部材33とともに第2規制ピン26に揺動自在に連結される。
【0058】
第1リンク部材31及び第2リンク部材は、第1規制ピン25の一端側に対して揺動自在に連結される一対のリンク部材として設けられている。また、第3リンク部材33及び第4リンク部材34は、第2規制ピン26の一端側に対して揺動自在に連結される一対のリンク部材として設けられている。すなわち、リンク機構30は、一対のリンク部材を2つ、有している。
【0059】
一対の規制ピン25,26は、第1規制ピン25及び第2規制ピン26を有している。各規制ピン25,26は、所定の長さを有する棒状に形成されている。
【0060】
第1規制ピン25は、対応する2つの孔部(第1孔部H
1A及び第2孔部H
2A)の配列方向(各ハウジング部3,4の径方向)に沿って延びるように設けられている。第1規制ピン25は、一端側の部分が第2ハウジング部4内に収容され、該一端側の部分に、第1リンク部材31の他端側及び第2リンク部材32の他端側が連結ピン36によって揺動自在に連結されている。
【0061】
第2規制ピン26は、対応する2つの孔部(第1孔部H
1B及び第2孔部H
2B)の配列方向(各ハウジング部3,4の径方向)に沿って延びるように設けられている。第2規制ピン26は、一端側の部分が第2ハウジング部4内に収容され、該一端側の部分に、第3リンク部材33の他端側及び第4リンク部材34の他端側が連結ピン38によって揺動自在に連結されている。
【0062】
第1規制ピン25及び第2規制ピン26は、電動アクチュエータ1の通常動作時には、他端側の部分が、対応する第1孔部H
1A,H
1B及び第2孔部H
2A,H
2Bの両方に挿通した状態となっている。一方、第1規制ピン25及び第2規制ピン26は、詳しくは後述するが、スクリュー機構10が固着状態となってリリーフ機構20が作動した時には、対応する第2孔部H
2A,H
2Bのみに挿通した状態となる。すなわち、電動アクチュエータ1では、一対の規制ピン25,26は、少なくとも第2ハウジング部4に形成された第2孔部H
2A,H
2Bに挿通した状態となっている。これにより、該一対の規制ピン25,26に揺動自在に連結されたリンク機構30、及び該リンク機構30に揺動自在に連結された一対のナット部材23,24は、一対の規制ピン25,26を介して第2ハウジング部4に対して回転不能となっている。
【0063】
電動アクチュエータ1では、通常動作時(基本動作時)において、一対のナット部材23,24が、互いに近づいた状態となっている(
図3及び
図4参照)。この時、一対の規制ピン25,26は、リンク機構30によって、各ハウジング部3,4の径方向外方へ押し出された状態となる。この状態では、第1規制ピン25の他端側の部分が、第1孔部H
1A及び第2孔部H
2Aに貫通した状態となっており、第2規制ピン26の他端側の部分が、第1孔部H
1B及び第2孔部H
2Bに貫通した状態となっている。これにより、電動アクチュエータ1の通常動作時には、第1ハウジング部3及び第2ハウジング部4が互いに対して相対変位不能なように連結されている。
【0064】
[電動アクチュエータの基本動作]
次に、本実施形態に係る電動アクチュエータ1の基本動作について説明する。電動アクチュエータ1の基本動作時には、第1ハウジング部3及び第2ハウジング部4は、一対の規制ピン25,26によって、互いに対して相対変位不能な状態となっている。(
図3及び
図4参照)。
【0065】
電動アクチュエータ1を作動する場合、第1電動モータ5が回転駆動される。すると、ロータ7の内周に固定された第2スクリュー12が回転する。そうすると、第2スクリュー12の回転力が、ボールスクリュー機構によって連結された第1スクリュー11に伝達されるため、第1スクリュー11(すなわち出力部11b)が軸心方向に沿って変位する。これにより、動翼102を翼101に対して駆動できる。
【0066】
[固着状態時における軸受保持解除機構の動作]
次に、スクリュー機構10における固着状態が発生した場合の電動アクチュエータ1の動作、特に、リリーフ機構20の動作について説明する。例えば、ハウジング2に対して第1スクリュー11が突出又は収縮する動作の途中において、スクリュー機構10における固着状態が発生すると、第2スクリュー12に対して第1スクリュー11が軸心方向に変位する動作が、不能となる。この場合、動翼制御用コントローラ(図示省略)において、スクリュー機構10の固着状態の発生が検知され、第1電動モータ5の運転が停止されるとともに、リリーフ機構20が動作する。
【0067】
なお、上記のように、ハウジング2に対して第2スクリュー12が突出又は収縮する動作の途中において、スクリュー機構10における固着状態が発生した場合には、動翼102は、翼101に対して、ある程度起立した状態となっている。そして、第2スクリュー12に対する第1スクリュー11の軸心方向の変位動作が不能なため、電動アクチュエータ1の通常の作動によっては、出力部11bをハウジング2に対して進退させることができない。
【0068】
しかし、上記のように、スクリュー機構10の固着状態の発生が検知されると、動翼制御用コントローラからの指令に基づいて、リリーフ機構20が動作する。具体的には、固着状態の発生が検知されると、第2電動モータ21が駆動される。このとき、第2電動モータ21は、第1ナット部材23が後方へ移動する所定方向に回転する。具体的には、例えば出力軸22の第1雄ネジ部22a及び第1ナット部材23の雌ネジ部23aが右ネジで構成されている場合、出力軸22は、右回り(時計回り)方向に回転する。
【0069】
上述のように出力軸22が回転すると、第1ナット部材23が後方へ移動する。これにより、第1規制ピン25が第1リンク部材31に引っ張られることにより第2ハウジング部4の径方向内側に移動し、且つ第2規制ピン26が第3リンク部材33に引っ張られることにより第2ハウジング部4の径方向内側に移動する。そうなると、第1孔部H
1A,H
1B及び第2孔部H
2A,H
2Bの両方を貫通していた各規制ピン25,26は、ともに第1孔部H
1A,H
1Bから抜去され、第2孔部H
2A,H
2Bのみを貫通した状態になる。
【0070】
一方、上述のように出力軸22が所定方向に回転すると、第1ナット部材23とは逆ネジの関係の第2ナット部材24は、第1ナット部材23と反対方向(前方)へ移動する。これにより、第1規制ピン25が第2リンク部材32に引っ張られることにより第2ハウジング部4の径方向内側に移動し、且つ第2規制ピン26が第4リンク部材34に引っ張られることにより第2ハウジング部4の径方向内側に移動する。
【0071】
すなわち、出力軸22が前記所定方向に回転することで、各規制ピン25,26は、一端側の部分が、対応する一対のリンク部材31,32,33,34によって前後方向へ引っ張られることにより、第2ハウジング部4の径方向内側へ移動する。これにより、第2ハウジング部4に対する第1ハウジング部3の係合が解除される。その結果、互いに固着して一体化された状態の第1スクリュー11及び第2スクリュー12が、第1ハウジング部3とともに第2ハウジング部4に対して軸心方向にスライド自在な状態となる。すなわち、出力部11bが、翼101に連結された第2ハウジング部4に対して軸心方向にスライド自在な状態となる。
【0072】
[オーバーロード時における軸受保持解除機構の動作]
また、電動アクチュエータ1において、出力部11bに過剰な負荷がかかった場合(出力部11bがオーバーロードとなった場合)にも、リリーフ機構20は、上述の場合と同様の動作を行う。具体的には、出力部11bのオーバーロードが検出されると、第1電動モータ5の運転が停止されるとともに、上述の場合と同様に第2電動モータ21が駆動される。第2電動モータ21が駆動されると、上述のように、一対の規制ピン25,26が径方向内側へ移動することにより、第2ハウジング部4に対する第1ハウジング部3の係合が解除される。その結果、出力部11bが第2ハウジング部4に対して軸心方向にスライド自在な状態となる。これにより、出力部11bに作用する過剰な負荷に起因して、電動アクチュエータ1においてスクリュー機構10等が破損してしまうのを防止できる。
【0073】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1では、第2スクリュー12が第1電動モータ5によって回転駆動させられると、第1スクリュー11が第2スクリュー12に対して相対回転することにより、軸心方向に相対変位する。これにより、出力部11bをハウジング2に対して直線方向(軸心方向)に沿って伸縮するように変位させ、出力部11bに連結された動翼102を駆動することができる。
【0074】
そして、電動アクチュエータ1では、スクリュー機構10において固着状態(ジャム状態)が発生し、第1スクリュー11と第2スクリュー12とが相対的に回転不能となった場合に、出力部11bに連結された動翼102が、その状態で固定されてしまうのを防止できる。具体的には、この構成では、固着状態が発生した場合、第2電動モータ21が駆動する。そうすると、対応する第1孔部H
1A,H
1B及び第2孔部H
2A,H
2Bの両方に跨って挿入されていた一対の規制ピン25,26が、第1孔部H
1A,H
1Bから抜去される。そうなると、第2ハウジング部4に対する第1ハウジング部3の相対移動が許容される。すなわち、駆動対象である動翼102に連結されている側の第1ハウジング部3を、電動アクチュエータ1の設置箇所である翼101に取り付けられた第2ハウジング部4に対して、軸心方向に変位自在な状態にできる。これにより、固着状態により一体化された状態の第1スクリュー11及び第2スクリュー12が、翼101に対してスクリューの軸心方向に変位自在となる。
【0075】
よって、電動アクチュエータ1では、スクリュー機構10において固着状態が発生した場合であっても出力部11bを翼101に対して進退可能な状態にすることができる。よって、例えば一例として、動翼102に、上記電動アクチュエータ1とは別のアクチュエータを取付け、該アクチュエータによって動翼102を動作させることが可能になる。更に、上述のように出力部11bを進退可能にするための構造が、規制ピン25,26、及び第2電動モータ21等を備えて構成された比較的小型で簡素な構造によって実現される。このため、電動アクチュエータ1の構造の簡素化及び小型化が図られることになる。
【0076】
従って、電動アクチュエータ1によれば、スクリュー機構10において固着状態が発生した場合であっても、出力部11bを、翼101に連結された第2ハウジング部4に対して進退させることが可能であるとともに、構造の簡素化及び小型化を図ることができる電動アクチュエータを提供できる。
【0077】
また、電動アクチュエータ1では、該電動アクチュエータ1においてオーバーロードが発生した場合であっても、上述の場合と同様にしてリリーフ機構20を作動させることができる。これにより、出力部11bに作用する過剰な負荷に起因して、電動アクチュエータ1においてスクリュー機構10等が破損してしまうのを防止できる。
【0078】
また、電動アクチュエータ1では、第2スクリュー12が入力側スクリューとして設けられている構成において、スクリュー機構10の固着状態時に、出力部11bを第2ハウジング部4に対して進退可能な構成を提供できる。
【0079】
また、電動アクチュエータ1では、スクリュー機構10の固着状態時において、出力部11bを、ボールスプライン機構15によって第2ハウジング部4に対して軸心方向にスライド移動することができる。しかも、ボールスプライン機構15は、第1スクリュー円筒部11aの内側、より具体的には、第1スクリュー円筒部11aと該第1スクリュー円筒部11aに一部が収容された第2ハウジング部4との間に形成される。これにより、電動アクチュエータ1の大型化を抑制できる。
【0080】
また、電動アクチュエータ1では、スクリュー機構10の固着状態時には、対応する第1孔部H
1A,H
1B及び第2孔部H
2A,H
2Bの両方に跨って挿入された状態の各規制ピン25,26が第1孔部H
1A,H
1Bから抜去された状態となるように、リリーフ機構20が作動する。
【0081】
具体的には、リリーフ機構20では、第2電動モータ21の出力軸22が所定方向に回転駆動することにより、該出力軸22に螺合された各ナット部材23,24が、軸心方向における規制ピン25,26と離間する方向に移動する。そうすると、一端側がナット部材23,24に揺動自在に連結されたリンク部材31,32,33,34が、該リンク部材31,32,33,34の他方側に揺動自在に連結された規制ピン25,26を、第2ハウジング部4の径方向内側へ引っ張り込む。これにより、第1孔部H
1A,H
1B及び第2孔部H
2A,H
2Bの両方に跨って挿入された状態の規制ピン25,26を、第1孔部H
1A,H
1Bから抜去された状態とすることができる。これにより、スクリュー機構10の固着状態時に、第2ハウジング部4に対する第1ハウジング部3の係合を解除し、出力部11bを、第2ハウジング部4に対して軸心方向に進退させることが可能になる。
【0082】
また、電動アクチュエータ1では、リリーフ機構20の一部を構成するナット部材23,24及びリンク部材31,32,33,34等の構成要素が、第2ハウジング部4の内部に収容されている。これにより、電動アクチュエータ1の大型化を抑制できる。
【0083】
また、電動アクチュエータ1では、第2電動モータ21の出力軸22が所定方向に回転することにより、該出力軸22に螺合された一対のナット部材23,24が、それぞれ、軸心方向における規制ピン25,26と離間する方向、すなわち、互いに離間する方向に移動する。そうすると、それぞれの一端側がナット部材23,24に揺動自在に連結された一対のリンク部材31,32,33,34が、該一対のリンク部材31,32,33,34に共通して連結される規制ピン25,26を、第2ハウジング部4の径方向内側へ引っ張り込む。すなわち、一対のリンク部材31,32,33,34によって規制ピン25,26を進退できるため、規制ピン25,26を確実に動作させることができる。
【0084】
また、電動アクチュエータ1では、第1ハウジング部3と第2ハウジング部4との係合を、複数の規制ピン25,26によって行うことができるため、2つのハウジング部3,4を確実に係合することができる。
【0085】
また、リリーフ機構20に設けられる第2電動モータ21は、比較的小さなパワーで駆動可能なモータで構成することができる。よって、例えば、第2電動モータ21の電力は、バッテリー等の補助電源から供給することもできるため、電源の使用環境が限られた状況においても比較的容易に駆動することができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のような変形例を実施してもよい。
【0087】
(1)
図6は、変形例に係る電動アクチュエータにおけるリリーフ機構20付近の拡大図である。上記実施形態では、第1係合部を、貫通孔である第1孔部H
1A,H
1Bで構成したが、これに限らず、
図6に示すように、第1係合部を、凹み部H
1C,H
1Dで構成してもよい。
【0088】
(2)
図7は、変形例に係る電動アクチュエータにおけるリリーフ機構20a付近の拡大図である。上記実施形態では、一対の規制ピン25,26によって、2つのハウジング部3,4を互いに係合していたが、これに限らず、
図7に示すように、1つの規制ピン25によって2つのハウジング部3,4を互いに係合してもよい。これにより、上記実施形態の場合と比べて、構造を簡素化できる。
【0089】
(3)
図8は、変形例に係る電動アクチュエータにおけるリリーフ機構20b付近の拡大図である。上記実施形態では、一対のリンク部材31,32,33,34によって規制ピン25,26を進退させていたが、これに限らず、
図8に示すように、1つのリンク部材31によって規制ピン25を進退させてもよい。これにより、上記実施形態の場合と比べて、構造を簡素化できる。
【0090】
(4)上記実施形態では、規制部材を、棒状の規制ピンで構成したが、これに限らず、規制部材を、板状又はブロック状に形成してもよい。
【0091】
(5)上記実施形態では、リンク機構30を用いて規制ピン25を進退させたが、これに限らない。例えば、ギア、カム等を適宜選択し、又はこれらを適宜組み合わせることにより、規制ピンを進退させる機構を構成してもよい。
【0092】
(6)上記実施形態では、2つのスクリュー11,12を有するスクリュー機構10が、ボールスクリュー機構として構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、第1及び第2スクリューを有するスクリュー機構が、ボールスクリュー機構以外の構成を備えた形態として実施されてもよい。例えば、第1スクリュー及び第2スクリューが螺合する構成のスクリュー機構が実施されてもよい。或いは、第1及び第2スクリューを有するスクリュー機構が、ローラスクリュー機構の構成を備えた形態として実施されてもよい。ローラスクリュー機構の場合、第1スクリューと第2スクリューとの間に、外周に螺旋溝が設けられた複数のスクリュー状のローラ軸が回転自在に設置されることになる。第1スクリュー又は第2スクリューの回転に伴って、各ローラ軸は、第1スクリューと第2スクリューとに対して、螺旋溝で噛み合って各軸心を中心として回転することになる。
【0093】
(7)上記実施形態では、入力側スクリューを第2スクリュー12で構成し、出力側スクリューを第1スクリュー11で構成したが、この限りでなく、入力側スクリューを第1スクリューで構成し、出力側スクリューを第2スクリューで構成してもよい。