特許第6155152号(P6155152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155152
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/023 20120101AFI20170619BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20170619BHJP
   F16H 1/20 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   F16H57/023
   F16H57/021
   F16H1/20
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-198626(P2013-198626)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-64062(P2015-64062A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康文
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−001903(JP,U)
【文献】 特開平08−068454(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008694(WO,A1)
【文献】 実公昭47−036238(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
F16H 1/20
F16H 57/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転運動を減速して出力軸に伝達する減速機であって、
前記出力軸に支持されて前記出力軸と一体的に回転する第1ギアと、
該第1ギアとの間に少なくとも1つ以上の中間ギアを設けた状態で配置され、前記第1ギアと同じ方向に回転する第2ギアと、を備え、
前記第1ギア及び前記第2ギアは、前記出力軸の軸方向において互いに重なり、かつ、前記第1ギアの回転中心と前記第2ギアの回転中心とが一致するように配置されており、
前記第1ギアの前記第2ギアと対向する第1対向部及び前記第2ギアの前記第1ギアと対向する第2対向部の双方の間には、当該双方の各々と摺接して前記第1ギア及び前記第2ギアと同じ方向に回転する摺接部材が配置されており、
前記第1対向部は、前記第1ギアのうち、前記軸方向において前記第2ギアと重なっていない部分に形成されており、
前記第2対向部は、前記第2ギアのうち、前記軸方向において前記第1ギアと重なっている部分に形成されており、
前記摺接部材は、前記軸方向において前記双方の間に配置された円環状の薄肉材料からなる汎用的なワッシャであることを特徴とする減速機。
【請求項2】
前記第1対向部は、前記第2ギアに向かって突出した部分であり、
前記第2対向部は、前記第1ギアに向かって突出した部分であることを特徴とする請求項に記載の減速機。
【請求項3】
前記第1ギア、前記第2ギア及び前記中間ギアを収容するケースを更に備え、
該ケースは、前記出力軸を回転自在に支持する軸支持部を有し、
該軸支持部は、前記出力軸に支持された状態の前記第1ギア、及び、前記第2ギアを回転自在に支持することを特徴とする請求項1又は2に記載の減速機。
【請求項4】
前記第1ギアは、外周部分に歯車を有するギア本体と、該ギア本体の内側に設けられた筒型部と、を有し、
前記第2ギアは、該第2ギアの中央部分に形成された貫通孔を有し、
前記筒型部の一部分が前記貫通孔の内側に配置されることで、前記第1ギア及び前記第2ギアは、前記軸方向において互いに重なり、かつ、前記第1ギアの回転中心と前記第2ギアの回転中心とが一致するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の減速機。
【請求項5】
前記第1ギア及び前記第2ギアと隣り合う位置に、前記中間ギアが1つのみ配置されており、
前記軸方向において、前記中間ギアの両端は、前記第1ギアと前記第2ギアとが配置されている範囲内に位置していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転運動を減速して出力軸に伝達する減速機に係り、少なくとも3つ以上の減速ギアを有する減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転運動を減速して出力軸に伝達する減速機は、既に多くの分野で利用されている。また、減速機の構造については、減速効果を得るのに好適な構造が種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置では、高い減速比を得るために、平歯車からなる減速ギアが出力軸の軸方向に複数個並んで配置されている。また、特許文献1に記載の装置では、出力軸の軸方向に並べられた複数の減速ギアの間に、厚みが比較的大きい樹脂プレートが配置されており、この樹脂プレートによって複数の減速ギアの各々が回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−205755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減速機については小型化が求められており、例えば、複数の減速ギアを出力軸の軸方向において互いに重なり、かつ、各々の回転中心が一致するように配置することで減速機の小型化を図ることが可能となる。一方、複数の減速ギアを軸方向に重ねて配置する場合には、各ギアの間にギア同士を隔てるための仕切部材を設ける必要がある。ここで、仕切部材として前述した厚肉の樹脂プレートを用いると、当該樹脂プレートの厚み分のスペースを確保しなければならず、結果として減速機の小型化を阻むことになる。
【0005】
また、上記の仕切部材をギア間に配置すると、各ギアと仕切部材との接触によるロスが生じる結果、減速機の減速効率が低下してしまう虞がある。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、減速効率を保持しつつより小型化された減速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の減速機によれば、モータの回転運動を減速して出力軸に伝達する減速機であって、前記出力軸に支持されて前記出力軸と一体的に回転する第1ギアと、該第1ギアとの間に少なくとも1つ以上の中間ギアを設けた状態で配置され、前記第1ギアと同じ方向に回転する第2ギアと、を備え、前記第1ギア及び前記第2ギアは、前記出力軸の軸方向において互いに重なり、かつ、前記第1ギアの回転中心と前記第2ギアの回転中心とが一致するように配置されており、前記第1ギアの前記第2ギアと対向する第1対向部及び前記第2ギアの前記第1ギアと対向する第2対向部の双方の間には、当該双方の各々と摺接して前記第1ギア及び前記第2ギアと同じ方向に回転する摺接部材が配置されており、前記第1対向部は、前記第1ギアのうち、前記軸方向において前記第2ギアと重なっていない部分に形成されており、前記第2対向部は、前記第2ギアのうち、前記軸方向において前記第1ギアと重なっている部分に形成されており、前記摺接部材は、前記軸方向において前記双方の間に配置された円環状の薄肉材料からなる汎用的なワッシャであることにより解決される。
【0007】
上記の減速機では、第1ギア及び第2ギアが、出力軸の軸方向において互いに重なり、かつ、両ギアの回転中心が一致するように配置されている。このような構成により、ギアの配置スペースを比較的小さくすることが可能となる。また、第1ギア及び第2ギアの間には、各ギアに摺接する摺接部材が回転自在に配置されている。かかる摺接部材を仕切部材として用いることで、特許文献1に記載の樹脂プレートを用いる構成に比して、出力軸の軸方向において機器サイズをより小型化することが可能となる。さらに、第1ギア及び第2ギアは、それぞれ、互いに対向し合う部分(対向部)を備えており、当該対向部が上記の摺接部材と摺接する位置に配置されているので、より一層の小型化を図ることが可能となる。さらにまた、互いに対向する第1ギア及び第2ギアが同一方向に回転し、第1ギア及び第2ギアが回転すると上記の摺接部材が両ギアと同じ回転方向に連れ回る。これにより、各ギアと摺接部材との接触によるロスを抑え、減速機の効率(減速効率)の低下を抑制することが可能となる。
以上の構成により、減速効率を保持しつつより小型化された減速機が実現可能となる。
【0008】
また、上記の構成によれば、第1対向部と第2対向部との間に摺接部材が挟まれており、第1ギア及び第2ギアの回転により摺接部材が連れ回るようになっている。これにより、各ギアと摺接部材との接触によるロスをより効果的に抑えることが可能となる。
さらに、上記の構成であれば、第1ギアと第2ギアとを隔てるためにギア間に配置される部材として円環状の薄肉材料からなる汎用的なワッシャを用いているので、比較的厚肉な樹脂プレートを用いる構成に比して、出力軸の軸方向において機器サイズをより小型化することが可能となる。
【0009】
また、上記の減速機において、前記第1対向部は、前記第2ギアに向かって突出した部分であり、前記第2対向部は、前記第1ギアに向かって突出した部分であると、より好適である。
上記の構成であれば、互いに向き合う形で突出した対向部同士の間に摺接部材が挟まれているので、摺接部材の位置を規制しつつ、各ギアを摺接部材に対して適切に摺接させることが可能となる。
【0011】
また、上記の減速機において、前記第1ギア、前記第2ギア及び前記中間ギアを収容するケースを更に備え、該ケースは、前記出力軸を回転自在に支持する軸支持部を有し、該軸支持部は、前記出力軸に支持された状態の前記第1ギア、及び、前記第2ギアを回転自在に支持すると、好適である。
上記の構成であれば、ケースに設けられた共通の軸支持部によって第1ギア及び第2ギアの双方が支持されるため、減速機をより小型化させることが可能となる。
【0012】
また、上記の減速機において、前記第1ギアは、外周部分に歯車を有するギア本体と、該ギア本体の内側に設けられた筒型部と、を有し、前記第2ギアは、該第2ギアの中央部分に形成された貫通孔を有し、前記筒型部の一部分が前記貫通孔の内側に配置されることで、前記第1ギア及び前記第2ギアは、前記軸方向において互いに重なり、かつ、前記第1ギアの回転中心と前記第2ギアの回転中心とが一致するように配置されていると、好適である。
上記の構成であれば、第1ギア及び第2ギアが出力軸の軸方向において互いに重なり、かつ、両ギアの回転中心が一致するような機器配置を容易に達成することが可能となる。
【0013】
また、上記の減速機において、前記第1ギア及び前記第2ギアと隣り合う位置に、前記中間ギアが1つのみ配置されており、前記軸方向において、前記中間ギアの両端は、前記第1ギアと前記第2ギアとが配置されている範囲内に位置していると、好適である。
上記の構成であれば、中間ギアが配置されている領域が、出力軸の軸方向において第1ギアと第2ギアとが配置されている範囲内に配置されているため、減速機の更なる小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の減速機によれば、モータの回転運動を減速して出力軸に伝達する際の減速効率が低下するのを抑制しつつ、出力軸の軸方向において機器サイズを小型化することが可能となる。これにより、所定の減速効率を達成した減速機としてよりコンパクトな装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る減速機の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る減速機の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る減速機の分解斜視図である(その1)。
図4】本発明の一実施形態に係る減速機の分解斜視図である(その2)。
図5】本発明の一実施形態に係るケースの側面図である。
図6図1のA−A断面を示す図である。
図7図2のB−B断面を示す図である。
図8図2のC−C断面を示す図である。
図9図1のD−D断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る減速機について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、本実施形態に係る減速機を、本装置1と呼ぶこととする。
【0017】
本装置1は、モータ2の回転運動を減速して出力軸3に伝達するものであり、その外観は、図1及び図2に図示したものとなっている。図1及び図2は、本装置1の外観を示す図であり、図1は、本装置1の正面図を、図2は、本装置1の平面図(モータ2側から見た図)を、それぞれ示している。なお、図1には、矢印にて本装置1の上下方向を表しており、図2には、矢印にて本装置1の厚み方向を表している。
【0018】
本装置1は、樹脂からなるケース4を備えており、例えば図1に示すように、ケース4の上端部にはモータ2を収容するモータ収容部4aが形成されており、下端部には出力軸3がケース4を貫通した状態で設けられている。なお、本実施形態において、モータ2は、その回転軸が本装置1の上下方向に沿った状態でモータ収容部4aに収容されている。また、出力軸3は、本装置1の厚み方向に沿ってケース4を貫通している。
【0019】
次に、本装置1の構成部品について図3乃至5を参照しながら説明する。図3及び4は、本装置1の分解斜視図である。図5は、本実施形態に係るケース4の側面図である。
本装置1の主要な構成部品は、側面視で図5に図示の外形形状を有するケース4、及び、ケース4内に収容された複数の減速ギアである。そして、本実施形態では3つの減速ギアが備えられており、具体的には、初期減速ギア5、中間ギア6及び後期減速ギア7が備えられている。
【0020】
ケース4は、上記3つの減速ギアを内部に収容するものであり、図3及び4に示すように、開口を有する有底箱状のケース本体11と、当該開口を塞ぐケース蓋12と、を組み合わせることで構成されている。ケース本体11及びケース蓋12の各々の下端部には、出力軸3を通すための軸穴11a、12aが形成されている。また、図3に示すように、ケース本体11の内壁のうち、軸穴11aの縁部に相当する部分は、出力軸3の軸方向に沿って円筒状に突出して軸支持部13を形成している。この軸支持部13は、出力軸3を回転自在に支持する部分であるとともに、後述するように、初期減速ギア5及び後期減速ギア7を回転自在に支持する。
【0021】
初期減速ギア5、中間ギア6及び後期減速ギア7は、それぞれ歯車部を有しており、モータ2の回転運動を出力軸3に伝達させるために所定方向に回転する。なお、後期減速ギア7は、本発明の第1ギアに相当し、初期減速ギア5は、本発明の第2ギアに相当する。
【0022】
以下、図6乃至9を参照しながら、各減速ギアについて個別に説明する。図6は、図1のA−A断面を示す図であり、図7は、図2のB−B断面を示す図であり、図8は、図2のC−C断面を示す図であり、図9は、図1のD−D断面を示す図である。なお、図6及び9の各々には、矢印にて、対応する方向を表している。
【0023】
初期減速ギア5は、図6に示すように、モータ2の回転軸の先端部に設けられたウォーム8と噛み合い、モータ2の回転運転を直接受ける減速ギアである。この初期減速ギア5は、樹脂材料又は金属からなり、互いに異径となった2つの歯車部5a、5bを有する。当該2つの歯車部5a、5bのうち、より大径な歯車部5aは、図6に示すように上記のウォーム8と噛み合い、より小径な歯車部5bは、図7に示すように中間ギア6と噛み合っている。
【0024】
また、初期減速ギア5の径方向中央部(中央部分)には円形開口の貫通孔5cが形成されている。この貫通孔5cの径は、ケース本体11の軸支持部13の外径よりも僅かに大きくなっている。そして、初期減速ギア5は、図6に示すように、貫通孔5c内に軸支持部13が挿入されることで、同軸支持部13cに回転可能に支持されている。なお、図6に示すように、初期減速ギア5が軸支持部13に支持された状態では、より大径な歯車部5aが出力軸3の軸方向において、より小径な歯車部5bよりも内側(ケース蓋12とは反対側)に位置している。
【0025】
中間ギア6は、初期減速ギア5と後期減速ギア7との間に介在し、初期減速ギア5の回転運動を後期減速ギア7に伝達する減速ギアである。換言すると、初期減速ギア5は、後期減速ギア7との間に中間ギア6を設けた状態でケース4内に設けられていることになる。ちなみに、本実施形態では中間ギア6を1つのみ用いており、中間ギア6を複数用いる構成と比較して装置の小型化を達成している。
【0026】
中間ギア6は、樹脂材料又は金属からなり、互いに異径となった2つの歯車部6a、6bを有する。当該2つの歯車部6a、6bのうち、より大径な歯車部6aは、図6に示すように、初期減速ギア5が有するより小径な歯車部5bと噛み合っており、より小径な歯車部6bは、図8に示すように後期減速ギア7と噛み合っている。
【0027】
また、中間ギア6の径方向中央部には円形開口の貫通孔6cが形成されている。この貫通孔6cには図6図7に図示の支持ピン9が挿入され、これにより、中間ギア6は、当該支持ピン9に回転自在に支持されている。支持ピン9は、図6に示すように、出力軸3と平行となるようにケース本体11及びケース蓋12の各々に取り付けられている。なお、図6に示すように、中間ギア6が支持ピン9に支持された状態では、より大径な歯車部6aが出力軸3の軸方向において、より小径な歯車部6bよりも外側(ケース蓋12が位置する側)に位置している。
【0028】
さらにまた、本実施形態に係る中間ギア6は、図3及び図4に示すように、より大径な歯車部6aを構成するパーツと、より小径な歯車部6bを構成するパーツと、に分割可能となっている。このように中間ギア6を複数のパーツに分割可能とする構成は、装置重量を低減する上で好適な構成である。
【0029】
後期減速ギア7は、図6に示すように、出力軸3に支持され、出力軸3と一体的に回転する減速ギアである。すなわち、後期減速ギア7は、本装置1が備える複数の減速ギアのうち、最終段の減速ギアに該当し、初期減速ギア5や中間ギア6を介して伝達されるモータ2の回転運動を利用して回転する。後期減速ギア7は、樹脂材料又は金属からなり、その径方向中央部に円筒状の嵌合部7aを備えている。この嵌合部7aは、本発明の筒型部に相当するものである。
【0030】
また、後期減速ギア7は、嵌合部7aの外周面から鍔状に張り出た鍔状部7bと、当該鍔状部7bの外縁部を取り囲むように設けられたリング型の歯車部7cと、を有する。この歯車部7cは、本発明のギア本体に相当するものであり、外周部分に歯車を有し、図8に示すように中間ギア6が備えるより小径な歯車部6bと噛み合っている。
【0031】
一方、嵌合部7aに形成された内側穴には、図6に示すように出力軸3が挿入されている。このように嵌合部7aの内側穴に出力軸3が挿入されることで、後期減速ギア7は、出力軸3に支持されている。さらに、嵌合部7aのうちの一部分は、図6に示すように、ケース本体11の軸支持部13の内側穴に挿入されている。これにより、後期減速ギア7及び出力軸3は、軸支持部13によって回転自在に支持されている。なお、嵌合部7a中、軸支持部13の内側穴に挿入されている部分は、嵌合部7aにおいて鍔状部7bを挟んで互いに反対側に位置する2つの部分のうち、出力軸3の軸方向における長さがより大きくなっている方の部分である。
【0032】
さらにまた、本実施形態に係る後期減速ギア7では、図3及び図4に示すように、歯車部7cを構成する部分が、それ以外の部分(すなわち、嵌合部7a及び鍔状部7b)と分離可能となっている。すなわち、本実施形態に係る後期減速ギア7は、中間ギア6と同様、複数のパーツに分割可能となっており、これにより装置重量の低減が図られている。
【0033】
次に、装置の小型化を図るために本装置1が採用している構成について説明する。
本装置1では、装置小型化のために、初期減速ギア5及び後期減速ギア7が出力軸3の軸方向において互いに重なり、かつ、両ギアの回転中心同士が一致するように配置されている。図6及び図9を参照しながら具体的に説明すると、初期減速ギア5は、前述したように、ケース本体11の軸支持部13が初期減速ギア5の貫通孔5cに挿入された状態で配置されている。つまり、本実施形態において、初期減速ギア5は、図6や9に示すように軸支持部13の径方向外側で当該軸支持部13を取り囲むように配置されている。
【0034】
一方、後期減速ギア7については、嵌合部7aの内側穴に出力軸3が嵌装されることで出力軸3に支持されており、かかる状態で嵌合部7aの一部分が軸支持部13の内側穴に挿入されている。つまり、本実施形態において、後期減速ギア7のうち、嵌合部7aの一部分は、図6や9に示すように軸支持部13の内側に入り込んでいる。換言すると、後期減速ギア7が備える嵌合部7aの一部分は、初期減速ギア5の貫通孔5cの内側に配置されていることになる。
【0035】
以上で説明した位置関係により、本装置1では、初期減速ギア5及び後期減速ギア7が出力軸3の軸方向において互いに重なり、かつ、両ギアの回転中心同士が一致するようになっている。この結果、出力軸3の径方向において、初期減速ギア5及び後期減速ギア7の配置スペースを比較的小さくすることが可能となり、本装置1全体のサイズの小型化が達成されている。
【0036】
なお、本実施形態では、初期減速ギア5と、出力軸3に支持された状態の後期減速ギア7と、がいずれもケース本体11の軸支持部13によって回転自在に支持されている。このように共通の軸支持部13によって初期減速ギア5及び後期減速ギア7の双方が支持されることで、本装置1は、より小型化されたものとなっている。
【0037】
さらに、本実施形態では、図6に示すように、初期減速ギア5及び後期減速ギア7と隣り合う位置に中間ギア6が1つのみ配置されている。そして、同図に示すように、出力軸3の軸方向において、中間ギア6の両端は、初期減速ギア5と後期減速ギア7とが配置されている範囲内に位置している。このように中間ギア6の設置スペースが、出力軸の軸方向において初期減速ギア5及び後期減速ギア7の設置スペース内に収まっていることで、本装置1の更なる小型化が実現されている。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように出力軸3の軸方向において互いに重なった状態で配置された初期減速ギア5及び後期減速ギア7が、出力軸3から見て同一方向に回転するようになっている。
【0039】
一方、本実施形態のように出力軸3の軸方向において初期減速ギア5及び後期減速ギア7が互いに重なった構成では、両ギア同士を隔てるために仕切部材をギア間に設ける必要がある。そこで、本実施形態では、後期減速ギア7の初期減速ギア5と対向する部分、及び、初期減速ギア5の後期減速ギア7と対向する部分の双方の間に、当該双方の各々と摺接する摺接部材が仕切部材として配置されている。
【0040】
ここで、後期減速ギア7の初期減速ギア5と対向する部分は、本発明の第1対向部に相当し、具体的には、後期減速ギア7のうち、出力軸3の軸方向において初期減速ギア5と重なっていない部分に形成されている。より詳細に説明すると、後期減速ギア7が備える鍔状部7bのうち、初期減速ギア5と対向する面には、図4図6に示すように、初期減速ギア5に向かって突出した後期減速ギア側突出部7dが形成されている。この後期減速ギア側突出部7dは、円環状に形成されており、その内径は嵌合部7aの外径よりも幾分大径となっている。
【0041】
一方、初期減速ギア5の後期減速ギア7と対向する部分は、本発明の第2対向部に相当し、具体的には、初期減速ギア5のうち、出力軸3の軸方向において後期減速ギア7と重なっている部分に形成されている。より詳細に説明すると、初期減速ギア5が備えるより大径な歯車部5aのうち、後期減速ギア7と対向する面には、図3図6に示すように、後期減速ギア7に向かって突出した初期減速ギア側突出部5dが形成されている。この初期減速ギア側突出部5dは、初期減速ギア5の回転方向に沿って一定間隔毎に形成された弧状の凸部となっている。
【0042】
そして、図6に示すように、出力軸3の軸方向において後期減速ギア側突出部7dと初期減速ギア側突出部5dとの間に挟まれる位置に、摺接部材に相当するワッシャ10が配置されている。このワッシャ10は、金属又は樹脂材料からなる比較的薄肉の円環状体であり、その中央部に形成された穴には出力軸3が挿通されている。そして、初期減速ギア5及び後期減速ギア7が回転すると、ワッシャ10が両ギア5、7の各々と摺接して両ギア5、7と同じ方向に回転する。
【0043】
以上のように本装置1では、初期減速ギア5及び後期減速ギア7の間に、両ギア5、7の各々に摺接するワッシャ10が回転自在に配置されている。このワッシャ10を仕切部材として用いることで、比較的厚肉の樹脂プレートを用いる構成に比して、出力軸3の軸方向において機器サイズをより小型化することが可能となる。さらに、上記2つの減速ギア5、7は、それぞれ、互いに対向し合う部分としての突出部5d、7dを備えており、当該突出部5d、7dがワッシャ10と摺接する位置に配置されているので、より一層の小型化を図ることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態のように、後期減速ギア側突出部7dと初期減速ギア側突出部5dとの間に挟まれる位置にワッシャ10を配置することにより、当該ワッシャ10の位置を規制しつつ、各減速ギア5、7をワッシャ10に対して適切に摺接させることが可能となる。
【0045】
一方で、本装置1では、ワッシャ10を介して互いに対向する2つの減速ギア5、7が同一方向に回転し、各減速ギア5、7の回転に伴ってワッシャ10が各減速ギア5、7と同じ回転方向に回転する。これにより、各減速ギア5、7とワッシャ10との接触によるロスが抑えられ、結果として、本装置1における減速効率の低下が抑制される。
さらに、前述したように、本装置1では、後期減速ギア側突出部7dと初期減速ギア側突出部5dとの間にワッシャ10が挟まれた状態で配置されている。そして、ワッシャ10は、上記2つの減速ギア5、7が回転した際に自在に連れ回るように支持されている。このような構成により、各減速ギア5、7とワッシャ10との回転速度差をより小さく抑えることが可能となり、結果として、各減速ギア5、7とワッシャ10とが接触することで生じるロス(摺動ロス)を効果的に抑えることが可能となる。
【0046】
以上のような構成により、本装置1は、減速効率を保持しつつより小型化された減速機となっている。さらに、本装置1では、初期減速ギア5と後期減速ギア7とを隔てるための仕切部材として汎用的なワッシャ10を用いており、これにより本装置1の製造コストを抑制することが可能となる。
【0047】
以上までの説明において本発明の減速機の一実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0048】
また、上記の実施形態では、減速機の一例として減速ギアを3個備える形式、すなわち、3段減速形式の減速機を例に挙げて説明した。しかし、これに限定されるものではなく、初期減速ギア5と後期減速ギア7との間に少なくとも1個以上の中間ギア6を備えていればよい。つまり、減速の段階が3段以上である減速機に対して本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 本装置(減速機)
2 モータ、3 出力軸
4 ケース、4a モータ収容部
5 初期減速ギア(第2ギア)
5a,5b 歯車部、5c 貫通孔
5d 初期減速ギア側突出部(第2対向部)
6 中間ギア
6a,6b 歯車部、6c 貫通孔
7 後期減速ギア(第1ギア)
7a 嵌合部(筒型部)、7b 鍔状部、7c 歯車部(ギア本体)
7d 後期減速ギア側突出部(第1対向部)
8 ウォーム、9 支持ピン
10 ワッシャ(摺接部材)
11 ケース本体、11a 軸穴
12 ケース蓋、12a 軸穴
13 軸支持部
図1
図2
図3
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図5
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図9