(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155162
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】ガス用継手
(51)【国際特許分類】
F16L 27/02 20060101AFI20170619BHJP
F16L 37/23 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
F16L27/02 E
F16L37/23
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-220947(P2013-220947)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81664(P2015-81664A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167325
【氏名又は名称】光陽産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 亮一
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−287644(JP,A)
【文献】
特開2000−145802(JP,A)
【文献】
実開昭54−069419(JP,U)
【文献】
実開昭60−031585(JP,U)
【文献】
実開平04−093591(JP,U)
【文献】
米国特許第4486037(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/02
F16L 37/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に両端が開口する接続孔が形成された継手本体と、中間部に屈曲部が形成された接続管とを備え、上記接続管の先部の向きを変えることができるよう、上記接続管の基部がその軸線を中心として上記接続孔の一方の端部に回転可能に挿入され、上記接続孔に挿入された上記接続管の基部の外周面には、周方向へ環状に延びる係合凹部が形成され、上記継手本体には、上記接続孔の内周面から内側に突出して上記係合凹部にその周方向へ相対移動可能に、かつ上記基部の軸線方向へ移動不能に係合する係合部が設けられたガス用継手において、
上記接続管の上記基部の内周面には、上記基部の軸線に沿って延びる突条が設けられており、上記突条は、上記基部の軸線方向における上記係合凹部の幅より長い長さを有し、上記基部の軸線方向には上記係合凹部が上記突条の中間部に位置し、上記基部の周方向には上記基部及び上記先部の両方の軸線を含む仮想平面と上記基部の内周面との交差線上に位置するように配置されていることを特徴とするガス用継手。
【請求項2】
上記突条が、上記仮想平面と上記接続管の内周面との二つの交差線のうちのいずれか一方の交差線上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス用継手
【請求項3】
上記突条が、上記仮想平面と上記接続管の内周面との二つの交差線上にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス用継手。
【請求項4】
上記突条が上記接続管の内部を二分するよう、上記仮想平面と上記接続管の内周面との一方の交差線から他方の交差線まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のガス用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば迅速継手のソケット等として用いられるガス用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、迅速継手のソケット(ガス用継手)は、下記特許文献1に記載されているように、ソケット本体(継手本体)とホースエンド(接続管)とを有している。ソケット本体の内部には、両端が開口した接続孔が形成されている。ホースエンドは、その長手方向の中間部において屈曲されており、基部が接続孔の一方の端部に回転可能に挿入されている。これにより、ホースエンドの先部の向きを適宜の方向へ変えることができるようになっている。
【0003】
ホースエンドの基部の外周面には、周方向へ環状に延びる係合凹部が形成されている。一方、ソケット本体には、スプリングピンがその一部を接続孔の内周面から内側に突出させた状態で設けられている。接続孔の内部に突出したスプリングピンの一部は、係合凹部に周方向へは相対移動可能に、基部の軸線方向へ移動不能に係合されている。これにより、ホースエンドの基部が接続孔に回転可能に、しかも抜け止めされた状態で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−241585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のソケットにおいては、ホースエンドが金属で構成されている。このため、ホースエンドの製造費が嵩み、ひいてはガス用ソケットの製造費が嵩むという問題があった。
ここで、ホースエンドを樹脂で構成すれば、ホースエンドの製造費を低減することができる。しかし、ホースエンドの基部には、係合凹部が環状に形成されている。このため、ホースエンドを樹脂で構成すると、基部の曲げ強度が低下し、ホースエンドの先部に特定の方向を向く曲げ力が作用すると、基部が係合凹部から破損するおそれがあった。すなわち、曲げ力がホースエンドの基部及び先部の各軸線を含む仮想平面に対して傾斜した方向に作用する場合には、その曲げ力が作用すると、ホースエンドが回転し、曲げ力を受け流すことができる。したがって、基部が破損することはない。しかるに、曲げ力が仮想平面上において作用すると、ホースエンドが回転することができず、ホースエンドの先部に作用した曲げ力が基部に作用する。この結果、基部が係合凹部から破損するおそれがある。このような事情から、実際にはホースエンドを樹脂で構成することがなく、金属で構成されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記事情を考慮してなされたもので、内部に両端が開口する接続孔が形成された継手本体と、中間部に屈曲部が形成された接続管とを備え、上記接続管の先部の向きを変えることができるよう、上記接続管の基部がその軸線を中心として上記接続孔の一方の端部に回転可能に挿入され、上記接続孔に挿入された上記接続管の基部の外周面には、周方向へ環状に延びる係合凹部が形成され、上記継手本体には、上記接続孔の内周面から内側に突出して上記係合凹部にその周方向へ相対移動可能に、かつ上記基部の軸線方向へ移動不能に係合する係合部が設けられたガス用継手において、上記接続管の上記基部の内周面には、上記基部の軸線に沿って延びる突条が設けられており、上記突条は、上記基部の軸線方向における上記係合凹部の幅より長い長さを有し、上記基部の軸線方向には上記係合凹部が上記突条の中間部に位置し、上記基部の周方向には上記基部及び上記先部の両方の軸線を含む仮想平面と上記基部の内周面との交差線上に位置するように配置されていることを特徴としている。
この場合、上記突条は、上記仮想平面と上記接続管の内周面との二つの交差線のうちのいずれか一方の交差線上に設けられていてもよく、上記仮想平面と上記接続管の内周面との二つの交差線上にそれぞれ設けられていてもよい。また、上記突条は、上記接続管の内部を二分するよう、上記仮想平面と上記接続管の内周面との一方の交差線から他方の交差線まで延びていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、接続管の基部の内周面に突条が形成されており、その突条は基部の一端側から係合凹部を越えて他端側へ延び、しかも上記基部及び上記先部の両方の軸線を含む仮想平面と上記接続管の内周面との交差線上に配置されている。したがって、突条は、接続管の先部に作用する仮想平面上の曲げ力に対し、基部の係合凹部が形成された部分を補強する。よって、基部が曲げ力によって破損されることを防止することができ、接続管を樹脂で構成することができる。その結果、ガス用継手の製造費を低減することができる。しかも、突条を形成するだけであり、基部の内径を小径にする場合に比して、ガスの流量を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態を、ホースエンドの先部を前方に向けた状態で示す断面図である。
【
図2】
図2は、同実施の形態を、ホースエンドの先部を横方に向けた状態で示す断面図である。
【
図3】
図3は、ソケット本体にプラグが接続された状態で示す
図1と同様の断面図である。
【
図4】
図4は、同実施の形態において用いられているホースエンドを示す側面図である。
【
図6】
図6は、この発明に係るホースエンドの変形例を示す
図5と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜
図5は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態に係るガス用ソケット(ガス用継手)1は、迅速継手のソケットとして用いられるものである。勿論、この発明に係るガス用継手は、ガス用ソケット1以外の継手にも適用可能である。
【0010】
ガス用ソケット1は、後述するように、ホースエンド3の内周面に突条3e,3fが形成されている点を除き、従来のガス用ソケットと同様に構成されている。そこで、まず従来のガス用ソケットと同様な構成について簡単に説明する。
【0011】
ガス用ソケット1は、ソケット本体(継手本体)2とホースエンド(接続管)3とを有している。ソケット本体2の内部には、接続孔2aが形成されている。接続孔2aの一端部2bは、ソケット本体2の一端面(
図1において下端面)に開口しており、当該一端面からソケット本体2の軸線上を他端側(
図1において上側)へ向かって延びている。接続孔2aの他端部(一方の端部)2cは、一端部2bに対して所定の角度、例えば45°だけ傾斜しており、ソケット本体2の他端面と外周面との交差部に開口している。
【0012】
接続孔2aの一端部2bには、後述するようにしてプラグPが接続される(
図3参照)。そして、プラグPから接続孔2a内にガスが流入する。接続孔2a内に流入したガスは、接続孔2aの他端部2cに嵌合されたホースエンド3及びこれに接続されたゴム管等のガス管(図示せず)を介してガス器具(図示せず)に供給される。なお、ホースエンド3から接続孔3aにガスが流入し、プラグPからガス機器にガスが供給されることもある。
【0013】
接続孔2aの一端部2bには、プラグPが次のようにして接続される。すなわち、
図3に示すように、接続孔2aの一端部2bにプラグPが挿入される。すると、可動筒4がばね5の付勢力に抗して接続孔2aの他端側へ移動させられる。可動筒4が所定の位置まで移動させられると、球体6が接続孔2aの径方向内側へ移動可能になる。球体6は、ばね7によって付勢された操作筒8により接続孔2aの径方向内側へ移動させられる。内側へ移動した球体6は、プラグPの外周面に形成された環状の係合溝Paに係合する。これによって、プラグPが接続孔2aの一端部2bに脱出不能に接続される。
【0014】
プラグPをソケット1から取り外す場合には、操作筒8をばね7の付勢力に抗して接続孔2aの他端側へ移動させる。操作筒8が他端側へ向かって
図1に示す元の位置まで移動させられると、球体6が接続孔2aの径方向外側へ移動可能になり、プラグPの係合溝Paから脱出可能になる。その結果、プラグPが接続孔2aから抜き出し可能になる。プラグPを接続孔2aから抜き出すと、それに伴って可動筒4がばね5によって接続孔2aの一端側へ移動させられる。そして、元の位置まで移動して停止する。この結果、ガス用ソケット1全体が
図1に示す元の状態に戻る。
【0015】
ホースエンド3は、ガラス繊維で強化されたナイロン等の比較的硬質の樹脂を管状に成形してなるものであり、基部3a、先部3b及びそれらの間の屈曲部3cを有している。
【0016】
基部3aは、接続孔2aの他端部2cに回転可能に挿入されている。接続孔2aの他端部2cの内周面と基部3aの外周面との間は、Oリング等のシール部材10によってシールされている。基部3aの長手方向の中間部の外周面には、周方向へ環状に延びる係合凹部3dが形成されている。一方、ソケット本体2の他端部には、接続孔2aの軸線と直交する方向に延びるスプリングピン(係合部)9が設けられている。このスプリングピン9の長手方向の中間部の一部は、他端部2c内に突出しており、その突出した部分が係合凹部3dに基部3aの周方向へは相対移動可能に、基部3aの軸線方向へはほとんど移動不能に挿入されている。これにより、基部3aが接続孔2aの他端部2cに回転が可能に、かつ抜け止め状態で嵌合されている。なお、スプリングピン9に代えて、ソケット本体2の他端部に軸線方向を他端部2cの径方向に向けた棒材を設け、この棒材の内側の端部を係合凹部3dに係合させてもよい。
【0017】
先部3bは、基部3aに対して屈曲部3cの屈曲角度だけ傾斜させられている。屈曲部3cの屈曲角度は、接続孔2aの一端部2bと他端部2cとの間の傾斜角度と同一に設定されている。したがって、ホースエンド3の基部3aを回転させると、先部3bの向きが、
図1に示す前向き位置と
図2に示す横向き位置との間において変化する。前向き位置では、先部3bが接続孔2aの一端部2bと平行になる。横向き位置では、先部3bが接続孔2aの一端部2bと直交する方向を向く。屈曲部3cの屈曲角度は、接続孔2aの一端部2bと他端部2cとの間の傾斜角度と若干異なる角度にしてもよい。
【0018】
次に、この発明の要部について説明する。基部3aの内周面には、第1及び第2突条(突条)3e,3fが設けられている。第1及び第2突条3e,3fは、基部3aの軸線(接続孔2aの他端部の軸線)と平行に延びており、その長さは、係合凹部3dの幅(基部3aの軸線方向における係合凹部3dの幅)より長くなっている。しかも、第1及び第2突条3e,3fは、それらの長手方向の各中間部が基部3aの軸線方向において係合凹部3dと同一位置に位置するように配置されている。したがって、第1及び第2突条3e,3fの一端部(
図1において下端部)は、係合凹部3dから接続孔2aの一端部3b側に離間しており、第1及び第2突条3e,3fの他端部は、係合凹部3dから屈曲部3c側に離間している。換言すれば、第1及び第2突条3e,3fは、基部3aの一端側から基部3aの軸線方向において係合凹部3dを越えて基部3aの他端側まで延びているのである。なお、この実施の形態では、第1及び第2突条3e,3fの一端部が、基部3aの端面から屈曲部3c側に離間しているが、基部3aの端面まで延ばしてもよい。また、第1及び第2突条3e,3fの他端部は、基部3aと屈曲部3cとの交差部まで延びているが、屈曲部3cの手前の位置において止めてもよい。
【0019】
第1及び第2突条3e,3fの一端部の高さは、接続孔2aの一端部側へ向かうにしたがって漸次低くなっている。これをガスの流通方向に基づいて換言すれば、第1及び第2突条3e,3fの一端部の高さは、ガスの流通方向の上流側から下流側へ向かって、つまりガスの流通方向前方に向かって漸次高くなっている。これにより、第1及び第2突条3e,3fが形成されたことに起因するガスの流通抵抗の増大を極力抑えるようになっている。この点は、第1及び第2突条3e,3fの他端部についても採用することが望ましい。ただし、第1及び第2突条3e,3fの他端部については、ガスの流通方向前方に向かって漸次低くなるようにする。第1及び第2突条3e,3fの一端部及び他端部の幅についても同様であり、第1及び第2突条3e,3fの一端部の幅は、ガスの流通方向前方に向かって漸次広くし、第1及び第2突条3e,3fの他端部の幅は、ガスの流通方向前方に向かって漸次狭くするのが望ましい。
【0020】
第1及び第2突条3e,3fは、基部3aの軸線及び先部3bの軸線を含む仮想平面と基部3aの内周面との二つの交差線上にそれぞれ配置されている。したがって、第1及び第2突条3e,3fは、基部3aの周方向へ互いに180°離れている。
【0021】
なお、スプリングピン9の中間部は、先部3bが前向き位置に位置しているとき、仮想平面上において係合凹部3dと係合している。したがって、先部3bが前向き位置に位置しているときには、第1突条3eの中間部が、基部3aの軸線方向においてスプリングピン9と係合凹部3dとの係合箇所と同一位置に位置している。また、先部3bが横向き位置に位置しているときには、第2突条3fの中間部が、基部3aの軸線方向においてスプリングピン9と係合凹部3dとの係合箇所と同一位置に位置している。
【0022】
上記構成のガス用ソケット1においては、仮想平面と基部3aの内周面との交差部に第1及び第2突条3e,3fが設けられている。しかも、第1及び第2突条3e,3fは、基部3aの軸線方向において係合凹部3dを横切るように配置されている。したがって、仮想平面上において先部3bに曲げ力が作用したときには、基部3aの係合凹部3dが形成された部分を第1及び第2突条3e,3fが補強する。よって、基部3aが係合凹部3dから破損することがなく、ホースエンド3を樹脂で成形することができる。その結果、ホースエンド3の製造費を低減することができ、ひいてはガス用ソケット1の製造費を低減することができる。
【0023】
また、基部3aの内周面に二つの突条3e,3fが形成されているだけであり、基部3aの内周面の大部分は元の内径を有している。つまり、基部3aの強度を向上させるためには、基部3aの内径を小さくすればよいが、そのようにするとガスの流通抵抗が増大し、ガスの流量を十分には確保することができなくなってしまう。この点、このガス用ソケット1においては、二つの突条3e,3fが形成されているだけであるから、ガスの流通抵抗が増大することがほとんどない。よって、ガス流量を十分に確保することができる。
【0024】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、仮想平面と基部3aの内周面との二つの交差部に第1及び第2突条3e,3fをそれぞれ設けているが、いずれか一方の突条だけを設けてよい。ただし、その場合には、基部3aの内周面を外周面に対し仮想平面上において偏心させ、基部3aの肉厚が薄い方に突条を形成する。
また、上記の実施の形態においては、二つの突条3e,3fを形成しているが、それらを基部3aの径方向に延ばして連続させ、
図6に示すように、一つの突条3gとしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 ガス用ソケット(ガス用継手)
2 ソケット本体(継手本体)
2a 接続孔
2c 接続孔の他端部(一方の端部)
3 ホースエンド(接続管)
3a 基部
3b 先部
3c 屈曲部
3d 係合凹部
3e 第1突条(突条)
3f 第2突条(突条)
3g 突条
9 スプリングピン(係合部)