(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155169
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】ろ過器
(51)【国際特許分類】
B01D 29/50 20060101AFI20170619BHJP
【FI】
B01D29/24 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-225492(P2013-225492)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-85260(P2015-85260A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】角田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】平林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 真見
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−145182(JP,A)
【文献】
実開平03−072903(JP,U)
【文献】
特開平07−047213(JP,A)
【文献】
特開平02−273505(JP,A)
【文献】
特表2008−519675(JP,A)
【文献】
実開平02−147208(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0124158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/50−58
B01D 35/02
B01D 63/00
C02F 1/44
G21C 19/30
G21F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が流入する容器と、前記容器内に収納されるチャンバと、前記チャンバに取り付けられるフィルタカートリッジとを備え、
前記容器には、容器内外に開口端を有する容器出口管が設けられており、
前記チャンバは、前記容器出口管にフランジを用いて接続され、前記容器出口管を介して、前記容器に固定されており、
前記容器は、原水を前記容器内に導く容器入口管を備え、
前記容器入口管から前記容器内に流入する原水が、前記チャンバに衝突するように、前記チャンバに対向して前記容器入口管が前記容器に設けられていることを特徴とするろ過器。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過器において、
前記チャンバは、チャンバ出口管を有し、前記チャンバ出口管と前記容器出口管が前記フランジにて接続されていることを特徴とするろ過器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のろ過器において、
前記容器入口管は、前記チャンバの下方に位置するように前記容器に設けられていることを特徴とするろ過器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のろ過器において、
前記チャンバの下面と前記容器の下部内面との間に土台を設置したことを特徴とするろ過器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原水(被処理水)中に浮遊物を含有する場合の水処理では、浮遊物の除去が必要となる。浮遊物を除去するには様々な方法が用いられている。その中の一つとして、フィルタ表面にて浮遊物を補足し、フィルタ内側に設けられた流路に処理水が流れるフィルタカートリッジを備えたろ過器を用いる方法がある。
【0003】
フィルタカートリッジをろ過器の容器に固定する方法としては、容器内にフィルタカートリッジの取り付けが可能な管板を設置することが一般的である。例えば、粉粒体含有気体の処理に関するものであるが、特許文献1には、フィルタハウジングに隔壁を固定し、隔壁にフィルタ本体を取り付けることが開示されている。また、フィルタカートリッジを上向きに設置する場合と下向きに設置する場合があるが、特許文献1では、フィルタ本体を下向きに設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−47213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、管板は溶接により容器に固定されている。一方、処理する原水の性質によって、容器内面にコーティングの施工が必要になる場合がある。このような場合、溶接により管板を容器内面に固定すると、容器内面のコーティング剤が溶接にて剥離してしまい、容器内面全体にコーティングが施工できないという課題が生じる。したがって、溶接により管板を容器に固定する手法は、容器内面にコーティングが必要となる原水を処理する場合には使用できない。
【0006】
本発明の目的は、容器内面全体のコーティングが可能な、フィルタカートリッジを用いたろ過器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器内にチャンバを収納し、チャンバにフィルタカートリッジを取り付けるとともにチャンバ出口管を設け、容器内外に開口端を有する容器出口管とチャンバ出口管とをフランジにて接続
し、チャンバに対向して容器入口管を容器に設け、容器入口管から容器内に流入する原水がチャンバに衝突するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタカートリッジを取り付けるチャンバは溶接を用いることなく容器内に設置することができるので、容器内面全体のコーティングが可能な、フィルタカートリッジを用いたろ過器を提供することが可能となる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の
参考例のろ過器の断面図を示す図であり、容器下方にチャンバを設けた
参考例を説明する図である。
【
図1B】
図1AにおいてA-A線から容器下方を見た図である。
【
図2】本発明の他の
参考例のろ過器の断面図を示す図であり、容器上方にチャンバを設けた
参考例を説明する図である。
【
図3】
図1A,
図1Bに示すろ過器において、容器のチャンバ側に入口管を設けた実施例を説明する図である。
【
図4】
図2に示すろ過器において、容器のチャンバ側に入口管を設けた実施例を説明する図である。
【
図5】
図1A,
図1Bに示すろ過器において、チャンバを支える土台を設けた
参考例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
<参考例1>
【0012】
図1A及び
図1Bに
本発明の前提となる参考例のろ過器を示す。
ろ過器は、容器10と、容器10内に収納されるチャンバ12を備える。
容器10の内面にはコーティングが全面に施工されている。また、図示を省略しているが、容器10の上方には蓋が設けられており、蓋を取り外してチャンバ12等が容器内に搬入され、据え付けられる。また、容器10の下方(下部)には、ろ過器で処理された処理水を外部に排出するための容器出口管(出口ノズル)13Bが設けられている。容器出口管13Bは容器内外に開口端を有する。容器外の開口端は処理水を次工程に移送する管路(図示省略)に接続される。容器内の開口端には、後述のチャンバ出口管13Aと接続するためのフランジ14Bが設けられている。
【0013】
チャンバ12は容器10の下方(下部)に設置されている。チャンバ12の内外面は、必要に応じて容器10と同様にコーティングが施工されている。チャンバ12には、上向きとなるように複数のフィルタカートリッジ11が固定されている。容器10内の原水はフィルタカートリッジ11により浮遊物が除去されてチャンバ12内に処理水として流入する。チャンバ12にはチャンバ出口管13Aが設けられている。チャンバ出口管13Aを介して処理水が外部に排出される。チャンバ出口管13Aの端部にはフランジ14Aが設けられている。チャンバ出口管13Aのフランジ14Aと容器出口管13Bのフランジ14Bを接続することにより、チャンバ12内の処理水がチャンバ出口管13A及び容器出口管13Bを介して容器10外へ排出される。また、本
参考例では、チャンバ12は、チャンバ出口管13A、フランジ14A、フランジ14B、容器出口管13Bを介して容器10に支持されている。なお、本
参考例では、チャンバ12にチャンバ出口管13Aを設けているが、チャンバ出口管13Aを省略して、容器出口管13Bのフランジ14Bと接続するフランジ面(フランジ14A)をチャンバ12の外面に形成するようにしても良い。
【0014】
本
参考例によれば、フランジ接続により溶接を用いることなく容器10への設置が可能なチャンバ12を用い、チャンバ12にフィルタカートリッジ11を取り付けているので、容器内面への溶接が必要な管板を用いることなくフィルタカートリッジを容器内に設置することができる。したがって、容器内面全体にコーティングを施工することができる。
【0015】
なお、
図1A,
図1Bでは容器10への原水の入口部の図示を省略している。容器10の何れかの箇所に設けられていれば良い。すなわち、本
参考例では、容器10内が原水側、チャンバ12内が処理水側となるため、容器10の内部は分離されていない状態となる。したがって、チャンバ12を容器10内に設置することにより、容器10への原水の入口部を容器10のどの位置(容器上部や下部)にも設置することが可能となる。
従来は、管板により容器内部が原水側と処理水側に分離され、管板の位置により原水の入口部の位置が限定される。例えば、
図6に示すように、管板を用いたろ過器の場合、フィルタカートリッジ2を固定するための管板3によって容器1の内部が原水側4と処理水側5に分かれる。この場合、入口ノズル6は原水側4に接続されるように設置されなければならず、出口ノズル7は処理水側5に接続されるように設置されなければならない。
図6に示すようなろ過器の場合、原水側が容器上部、処理水側が容器下部に位置することとなる。従って、入口ノズルを容器上部に設ける必要があり、入口ノズルを下部に設置することができない。また、上部に管板を設けた場合は、入口ノズルを上部に設置することができなくなり、入口ノズルの位置は管板の位置、つまりフィルタカートリッジ2の向きに左右されてしまい、ろ過器を設置する際の自由度が低い。
本
参考例では上述したように原水の入口部を容器10のどの位置にも設置することができ、ろ過器設置自由度が向上する。
<参考例2>
【0016】
図2に本発明の他の
参考例のろ過器を示す。本
参考例の説明において、
参考例1と同様な部分についての説明は省略する。
本
参考例は、基本的には、
参考例1と同様な構成を有しており、
参考例1と異なるのは、フィルタカートリッジ11の取り付け向きと、チャンバ12の容器10内における位置と、容器出口管13Bの容器10への取り付け位置である。すなわち、本
参考例では、チャンバ12は容器10の上方(上部)に設置されている。そして、チャンバ12には、下向きとなるように複数のフィルタカートリッジ11が固定されている。また、容器出口管(出口ノズル)13Bが容器10の下方(下部)に設けられている。
本
参考例においても
参考例1と同様の効果が得られる。
【実施例1】
【0017】
図3に本発明の
一実施例のろ過器を示す。本実施例の説明において、
参考例1と同様な部分についての説明は省略する。
本実施例は、基本的には、
参考例1と同様な構成を有しており、
参考例1と異なるのは、容器10のチャンバ側(チャンバ12の底部側)に容器入口管(入口ノズル)15を設けた点である。
本実施例においても
参考例1と同様の効果を得ることができる。そして、本実施例では、チャンバ自体が整流板の役割を果たし、整流板を改めて設置することが不要である。すなわち、管板を用いたろ過器の場合、
図6に示すように、ろ過器内のフィルタエレメントに均一に原水が行き届くように、入口ノズル6に対向して整流板8が設置される。本実施例では、この整流板8を削減することができる。
【0018】
この効果は、
図4に示すろ過器においても同様に得ることができる。
図4に示すろ過器は、基本的には、
参考例2と同様な構成を有しており、
参考例2と異なるのは、容器10のチャンバ側(チャンバ12の上部側)に容器入口管(入口ノズル)15を設けた点である。チャンバ12の上部側が、
図6に示す整流板8の役割を果たし、整流板を改めて設置することを要しない。
【0019】
また、
図3に示すろ過器においては、容器入口管15が容器下部に設置されていることにより、容器入口管15からの廃液も可能になり、ドレン管(ドレンノズル)の設置が不要となる。すなわち、フィルタカートリッジを用いるろ過器では、交換やメンテナンスのため原水の排水が必要となり、管板を用いたろ過器の場合、
図6に示すように、ろ過器の原水側にドレンノズル9が設置されている。本実施例では、このドレンノズル9の設置が不要となる。
<参考例>
【0020】
図5に本発明の他の
参考例のろ過器を示す。本
参考例の説明において、
参考例1と同様な部分についての説明は省略する。
本
参考例は、基本的には、
参考例1と同様な構成を有しており、
参考例1と異なるのは、チャンバ12を支える土台16を、チャンバ12の底部と容器10の下部内面との間に設けた点である。チャンバ12と土台16は固定され、容器10内の原水の流れによって土台16が移動することはない。
本
参考例においても
参考例1と同様の効果を得ることができる。そして、本
参考例では、チャンバ12が土台16にも支持されているので、チャンバ出口管13A、フランジ14A、フランジ14B、容器出口管13Bにかかる荷重7を低減することができ、これらの健全性を維持することができる。
【0021】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例
や参考例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例
や参考例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加,削除,置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0022】
10…容器、11…フィルタカートリッジ、12…チャンバ、13(13B)…容器出口管、13A…チャンバ出口管、14(14A,14B)…フランジ、15…容器入口管、16…土台。