(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155173
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】交換可能な容器を有する離型剤塗布システムおよび固体インクプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20170619BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 101
B41J2/01 111
B05C1/02 102
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-233106(P2013-233106)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2014-104757(P2014-104757A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2016年11月10日
(31)【優先権主張番号】13/688,637
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイザック・エス・フレーザー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シー・パーク
【審査官】
村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−141710(JP,A)
【文献】
特開2007−008165(JP,A)
【文献】
特開2006−341607(JP,A)
【文献】
特開2012−096546(JP,A)
【文献】
特開2011−031618(JP,A)
【文献】
特開昭62−189467(JP,A)
【文献】
特開2002−304078(JP,A)
【文献】
特開2003−208056(JP,A)
【文献】
特開2009−83320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
B05C1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体インクプリンタ内で使用する離型剤塗布システムであって、
画像受取り部と、
容積を保持するよう設定される底部及び側壁を有する受容部と、
前記受容部の前記容積内で前記受容部の前記底部上に配置され、離型剤の供給源を格納するよう設定されるパッドと、
前記受容部内に配置され、前記パッドと接触すると、前記パッドから離型剤を吸収するよう設定されるローラと、
前記ローラに動作可能に接続し、前記パッドと前記ローラが接触する第1の位置であって、前記受容部の前記底部から第1の距離にある第1の位置と、前記受容部の前記底部から前記第1の距離よりも大きい第2の距離にある第2の位置であって、前記ローラが前記画像受取り部と接触し前記パッドと接触しない第2の位置との間で前記ローラを移動させるよう設定されるアクチュエータと、を含む離型剤塗布システム。
【請求項2】
前記画像受取り部および前記ローラに隣接して配置され、前記画像受取り部と接触しない第1の位置と、前記画像受取り部と接触して余剰離型剤を取り除く第2の位置との間を移動するよう設定される調量ブレードをさらに含む請求項1に記載の離型剤塗布システム。
【請求項3】
前記受容部が、前記調量ブレードにより前記画像受取り部から取り除かれた離型剤が前記受容部の前記容積内に入ることを可能にするよう配置されている、請求項2に記載の離型剤塗布システム。
【請求項4】
前記受容部の中に配置され、前記離型剤が前記パッドにより吸収される前に、前記調量ブレードにより前記画像受取り部から取り除かれた離型剤から微粒子を取り除くよう設定されるフィルタをさらに含む請求項3に記載の離型剤塗布システム。
【請求項5】
前記ローラが、発泡樹脂の材料から作られた円筒体である請求項1に記載の離型剤塗布システム。
【請求項6】
前記ローラが、体積空間を囲む多孔質の材料から作られた円筒形チューブである請求項1に記載の離型剤塗布システム。
【請求項7】
前記パッドが前記ローラの径と相補的な湾曲部分を有する、請求項1に記載の離型剤塗布システム。
【請求項8】
画像受取り部と、
画像受取り部の表面に離型剤を塗布するよう設定される離型剤塗布システムであって、
容積を保持するよう設定される底部及び側壁を有する受容部と、
前記受容部の前記容積内で前記受容部の前記底部上に配置され、離型剤の供給源を格納するよう設定されるパッドと、
前記受容部内に配置され、前記パッドと接触すると、前記パッドから離型剤を吸収するよう設定されるローラと、
前記ローラに動作可能に接続し、前記パッドと前記ローラが接触する第1の位置であって、前記受容部の前記底部から第1の距離にある第1の位置と、前記受容部の前記底部から前記第1の距離よりも大きい第2の距離にある第2の位置であって、前記ローラが前記画像受取り部と接触し前記パッドと接触しない第2の位置との間で前記ローラを移動させるよう設定されるアクチュエータと、を含む離型剤塗布システムと、
画像受取り部の表面上の前記離型剤の上にインクを塗布するよう設定される記録ヘッドと、を含む固体インクプリンタ。
【請求項9】
前記画像受取り部および前記ローラに隣接して配置され、前記画像受取り部と接触しない第1の位置と、前記画像受取り部と接触して余剰離型剤を取り除く第2の位置との間を移動するよう設定される調量ブレードをさらに含む請求項8に記載の固体インクプリンタ。
【請求項10】
前記受容部が、前記調量ブレードにより前記画像受取り部から取り除かれた離型剤が前記受容部の前記容積内に入ることを可能にするよう配置されている、請求項9に記載の固体インクプリンタ。
【請求項11】
前記受容部の中に配置され、前記離型剤が前記パッドにより吸収される前に、前記調量ブレードにより前記画像受取り部から取り除かれた離型剤から微粒子を取り除くよう設定されるフィルタをさらに含む請求項10に記載の固体インクプリンタ。
【請求項12】
前記ローラが、発泡樹脂の材料から作られた円筒体である請求項8に記載の固体インクプリンタ。
【請求項13】
前記ローラが、体積空間を囲む多孔質の材料から作られた円筒形チューブである請求項8に記載の固体インクプリンタ。
【請求項14】
前記パッドが前記ローラの径と相補的な湾曲部分を有する、請求項8に記載の固体インクプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されるシステムはオフセット印刷すなわち間接印刷に関し、より具体的には、オフセット・インクジェット・プリンタ内で画像受取り部の表面上に離型剤を塗布する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用される用語「プリンタ」は、例えば、デジタル複写機、製本機、ファクシミリ、多機能装置などのあらゆる目的で記録媒体上にカラー画像を形成する全ての装置を包含する。画像受取り部の表面上に画像を形成し、次いで、画像を記録媒体に転写するプリンタを本明細書では間接プリンタと呼ぶ。一般に、間接プリンタでは、中間転写部材、転写定着部材、または定着部材を用いて、画像受取り部から記録媒体への画像の転写および定着を容易にしている。一般に、そのような印刷システムは通常、記録ヘッドなどのカラー塗布器を含み、このカラー塗布器により画像受取り部上にカラー画像が形成される。画像受取り部の表面と転写定着ローラとの間に形成されるニップ内に記録媒体を通して印刷媒体上に画像を転写・定着させることができ、次いで、画像受取り部を別の画像を形成するために使用することができる。
【0003】
中間画像受取り部を有する固体インク画像形成システムでは、インクは固体の形態(ペレットまたはインクスティックのどちらか)でシステムに充填され、供給機構により供給シュートを通ってヒータ組立体に搬送される。固体インクがヒータ組立体内のヒータプレートにぶつかると、そのヒータプレートにより溶解されて液体インクになり、この液体インクが記録ヘッドに供給され、この記録ヘッドにより画像受取り部の表面に噴射される。記録ヘッドでは、通常、画像受取り部の表面にインクが付着するために十分な厚さを保持しながら、記録ヘッド内のインクジェット吐出器がそのインクを吐出できる温度に、液体インクは維持される。しかし、場合によっては、液体インクが厚いため、画像が媒体シートに転写された後も、インクの一部が画像受取り部の表面に残されてしまう。このように噴射された画像が残されてしまうことにより、その後、画像受取り部の表面上に形成される他の画像に悪影響を及ぼす。
【0004】
固体インクジェット画像形成システムでは、一般に電子画像データを用いて発射信号を生成し、この発射信号により、溶解インクが吐出されてインク画像が生成される。
図5に示すプリンタ300と同様の間接固体インクジェット画像形成システムでは、電子画像データを用いて、中間画像受取り部304の表面上にインクを吐出する。次いで、画像受取り部304と転写ローラ316との間に形成されたニップ312内で媒体シート308と画像受取り部304が接触する。次いで、このニップ312内で熱と圧力がかけられ、画像受取り部304から媒体シート308にインク画像が容易に転写される。
【0005】
画像受取り部304から媒体シート308にインク画像が転写することから生じる問題の1つは、画像受取り部304上にインクが溜まってしまうことである。画像受取り部304上にインクが溜まることで、前サイクルの印刷から画像受取り部304に残ったままのインクが、誤って次のサイクルの印刷で媒体シート308に転写されてしまうことにより、様々な画像の不具合が発生する。したがって、画像受取り部304上に溜まるインクを少なくすることで、プリンタの有効性と印刷の品質を向上させることができる。
【0006】
画像受取り部304上に溜まるインクに対処するために、インクを画像受取り部304に塗布する前に、画像受取り部304に離型剤の薄い層が塗布される。離型剤はインクが直接画像受取り部304に付着することを防止する物質であり、これにより、媒体シート308がニップ312を通過する際、適切な量のインクが画像受取り部304から媒体シート308に移り易くなる。離型剤は通常10mg/シートより多いレベルで画像受取り部304に塗布され、画像受取り部304に正確な量の離型剤を適切に塗布するために、様々な種類の離型剤塗布器320が設計されてきている。
【0007】
上記に示す量で離型剤を画像受取り部に塗布する方法には、
図6に示す離型剤ローラを用いるものがある。この実施形態では、プリンタ2は、プリンタ2内に恒久的に取り付けられる旋回軸4と、この旋回軸4に恒久的に取り付けられる旋回アーム8とを含み、旋回アーム8は旋回軸4の周りを回転する。この実施形態では、離型剤ローラ12は吸収材料から形成される発泡樹脂のローラであり、この発泡樹脂のローラが離型剤で飽和される。この離型剤ローラ12は、その離型剤ローラ12の耐用期間中ずっと離型剤の供給源により飽和されて使用される。この離型剤ローラ12はトレイ20内に設けられる。このトレイ20が旋回アーム8と連結し、旋回軸4の周りを回転して、離型剤ローラ12を移動させて、画像受取り部28と接触させる、または分離させる。離型剤ローラ12とトレイ20は共に単一のユニットとして連結されている。この離型剤ローラ12とトレイ20は、一緒にプリンタから取り外され、新しい離型剤ローラ12を有する新しいトレイ20と交換され、これらは離型剤により完全に飽和されて離型剤の供給源を補充する。このトレイ20は、取外しおよび交換のときに、旋回軸4と揃った方向にスライドし旋回アーム8と接続・分離するよう設定されているが、通常は旋回軸4に沿ってスライドはしない。
【0008】
拭き取りブレード32も旋回軸4に取り付けられ旋回軸4の周りを回転する。この実施形態では、拭き取りブレード32は、プリンタ2内に恒久的に取り付けられトレイ20内に配置される。したがって、この拭き取りブレード32を、トレイ20および離型剤ローラ12とは一緒に交換しない。この拭き取りブレード32は、画像受取り部28に接触・分離するよう回転し、画像受取り部28の表面36から余剰離型剤を拭き取る。余剰離型剤はトレイ20の底面に集められて薄い発泡樹脂のパッド16により吸収される。余剰離型剤が離型剤ローラ12に戻されるのに十分な圧力で、発泡樹脂のパッド16は離型剤ローラ12に接して押し付けられるが、その圧力は離型剤ローラ12が画像受取り部と接触して回転することを妨げる程ではない。発泡樹脂のパッド16と離型剤ローラ12の間には、フィルタ40が配置され、離型剤が離型剤ローラ12に再吸収される前の余剰離型剤からの微粒子を取り除く。
【0009】
画像受取り部28の表面36に離型剤を塗布するために、離型剤ローラ12が画像受取り部28の表面36と接触するまで、トレイ20全体を回転させて離型剤ローラ12を画像受取り部28に向けて移動させる。次いで、離型剤ローラ12が、画像受取り部28の表面36に離型剤を塗布し、調量ブレード32が、余剰離型剤を画像受取り部28の表面36から取り除き、取り除かれた隔離剤をトレイ20内に集める。画像受取り部28の表面36に離型剤が塗布された後、トレイ20は画像受取り部28から離れる方向で移動して、離型剤ローラ12を画像受取り部の表面36から分離させて、画像形成処理への障害、および画像受取り部28上の離型剤の層の上で生じる画像の乱れを防止する。
【0010】
この離型剤ローラシステムは、離型剤を画像受取り部28に効率的な量で供給するが、それにはいくつかの制限がある。これらの制限のうちの1つは、離型剤の供給源がシステム内に含まれていることにより起こる。離型剤の供給源を使い切ると、プリンタの保守を行わなければならず、離型剤ローラ12またはトレイ20全体を取り外し交換する。さらに、離型剤ローラシステム内で使用される全ての離型剤がトレイ20または離型剤ローラ12に含まれ、かつ、この離型剤ローラ12もまたトレイ20内に設けられているためトレイ20が重たくなる。したがって、離型剤ローラ12と一緒にトレイ20を画像受取り部28に向けて、または離して動かすことは、大きくて重たい離型剤の供給源を動かすことになり、より強力なアクチュエータとより多くのエネルギーを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に記載する通り、離型剤塗布器を用いて画像受取り部の表面に離型剤を塗布することは、画像受取り部上に不要なインクが残ることを防止するために効果的である。さらに、離型剤を用いることで、メンテナンスを行わなければならない回数を減らすことができる。また、効率的な方法で離型剤を画像受取り部に供給することで、プリンタが必要とするエネルギーを削減することができる。したがって、本発明の目的は、離型剤を効率的に使用することができ、離型剤を画像受取り部に塗布するためのエネルギーをほとんど必要とせずに、画像受取り部の上に適切な量で離型剤を塗布することができる離型剤塗布システムを提供することである。画像受取り部に離型剤を塗布するために必要なエネルギーの量を減らすことにより、今度は、離型剤の塗布に関連する装置のサイズを小さくし、コストを抑え、音を小さくすることができる。また、プリンタが、耐用期間に亘って離型剤を塗布するために、排出されてしまう廃棄物の量を減らすことも所望される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
固体インクプリンタ内で使用する離型剤塗布システムが開発された。この離型剤塗布システムは、画像受取り部、パッド、ローラ、およびアクチュエータを含む。このパッドは離型剤の供給源を格納する。このローラがパッドと接触すると、それに応じてパッドから離型剤を吸収する。アクチュエータはローラと接続し、第1の位置と第2の位置の間でローラを移動させる。ローラは第1の位置でパッドと接触し、第2の位置で画像受取り部と接触する。
【0013】
離型剤塗布システムを含む固体インクプリンタが開発された。このプリンタは、画像受取り部および離型剤塗布システムを含み、この離型剤塗布システムが、画像受取り部の表面に離型剤を塗布する。離型剤塗布システムはパッド、ローラ、アクチュエータ、および記録ヘッドを含む。パッドが離型剤の供給源を格納し、ローラがパッドと接触すると、それに応じてパッドから離型剤を吸収する。アクチュエータはローラに接続し、第1の位置と第2の位置の間でローラを移動させる。ローラは第1の位置でパッドと接触し、第2の位置で画像受取り部と接触する。記録ヘッドは、画像受取り部の表面上の離型剤の上にインクを塗布する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、間接プリンタ内で使用される、画像受取り部、離型剤パッド、および静止位置にある離型剤塗布ローラを有する離型剤塗布システムを示す図である。
【
図2】
図2は、離型剤塗布ローラが塗布位置にある状態の
図1の離型剤塗布システムの図である。
【
図3】
図3は、空洞の芯を有する離型剤塗布ローラを含む別の離型剤塗布システムを示す図である。
【
図4】
図4は、その上面に窪み部を有する離型剤パッドを含む、さらに別の離型剤塗布システムを示す図である。
【
図5】
図5は、
図1、
図2、
図3または
図4に示す離型剤塗布システムのうちの1つを使用することができる一般的な間接プリンタを示す図である。
【
図6】
図6は、間接プリンタ内でトレイを有する離型剤塗布ローラを使用する一般的な離型剤塗布システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および
図2に示される離型剤塗布システム200は、画像受取り部204、離型剤塗布ローラ208、調量ブレード212、離型剤パッド216、離型剤トレイ220、およびアクチュエータ224を含む。アクチュエータ224は離型剤塗布ローラ208に動作可能に接続して、この離型剤塗布ローラ208を静止位置(
図1に示す)と、塗布位置(
図2に示す)の間で移動させる。離型剤塗布ローラ208は、静止位置では離型剤パッド216上に静止し、この離型剤パッド216から離型剤を吸収し、塗布位置では画像受取り部204の表面228と係合して離型剤を塗布する。
【0016】
画像受取り部204の全長に沿って離型剤を塗布することができるよう、離型剤塗布ローラ208の大きさは設定される。例えば、画像受取り部204の長さが約11インチの場合、離型剤塗布ローラ208の長さも約11インチにする。離型剤塗布ローラ208は画像受取り部の直径236より小さい離型剤塗布ローラの直径232を有する。離型剤塗布ローラ208はその位置を固定され、画像受取り部204の表面228がこの離型剤塗布ローラ208を通過して回転すると、この離型剤塗布ローラ208が回転して離型剤の均一な膜を塗布するため、離型剤塗布ローラの直径232は比較的に小さくてよい。離型剤塗布ローラの直径232は、例えば、画像受取り部の直径236の約5分の1でよい。
【0017】
離型剤塗布ローラ208は円筒形状で、発泡樹脂の材料から作られ、それにより、離型剤塗布ローラ208の全容積に離型剤を飽和させることができる。さらに、この発泡樹脂の特性により、離型剤塗布ローラ208の指向性とは関係なく、毛管作用を通して、離型剤をほぼ均一な状態で離型剤塗布ローラ208に飽和させることができる。この離型剤塗布ローラ208は、例えば、ポリウレタンの発泡樹脂、またはこれと同様の特性を有するその他の材料から構成される。
【0018】
調量ブレード212は、画像受取り部204と係合・分離するよう設定される、可撓性を有する拭き取りブレードである。調量ブレード212は、画像受取り部204と係合するとき、離型剤塗布ローラ208に近接しその下流で、画像受取り部204の表面228に接して配置させる。つまり、画像受取り部204が回転すると、その表面228は、調量ブレード212と係合する前に離型剤塗布ローラ208と係合する。
【0019】
アクチュエータ224は調量ブレード212に動作可能に接続して、離型剤塗布ローラ208と連動して、別々のカムを介して、調量ブレード212を移動させる。すなわち、同じモータで調量ブレード212と離型剤塗布ローラ208を移動させることができるように、調量ブレード212と離型剤塗布ローラ208は同じ軸に取り付けられ、同じ軸上の別々のカムにより動かされる。この実施形態では、調量ブレード212を動かすカムと、離型剤塗布ローラ208を動かすカムとは、調量ブレード212と離型剤塗布ローラ208が連続して作動するよう軸上で配置される。しかし、別の実施形態では、調量ブレード212と離型剤ローラ塗布器208が同時に、非連続的に、または単独で作動するようカムを配置することができる。さらに別の実施形態では、アクチュエータ224を2つの別々のアクチュエータに交換して、離型剤塗布ローラ208と調量ブレード212を独立させて動作させることができる。
【0020】
この実施形態では、アクチュエータ224は、まず調量ブレード212を移動させて画像受取り部204と係合させ、次いで、離型剤塗布ローラ208を移動させて画像受取り部204と係合させる。調量ブレード212と離型剤塗布ローラ208が画像受取り部204と係合するとき、それらは画像受取り部に離型剤を塗布するための位置にある。離型剤塗布ローラ208が画像受取り部204に離型剤を塗布した後、アクチュエータは、画像受取り部204の回転を維持しながら、まず離型剤塗布ローラ208を移動させて画像受取り部204から分離させる。調量ブレード212が画像受取り部204の外周全体と係合して全ての余剰離型剤取り除いた後、アクチュエータ224が調量ブレード212を移動さ、画像受取り部204から分離させる。調量ブレード212と離型剤塗布ローラ208が画像受取り部204から分離したとき、それらは静止位置にある。
【0021】
調量ブレード212は画像受取り部204と係合すると、画像受取り部204の表面228に過不足のない圧力をかけて、離型剤塗布ローラ208により画像受取り部204上に塗布された余剰離型剤を取り除く。調量ブレード212の長さを、画像受取り部204の長さとほぼ同じ長さにして、その全長に沿って確実に余剰離型剤を取り除く。調量ブレード212は、自分で取り除いた余剰離型剤が離型剤トレイ220内に落ちるよう配置される。不必要な廃棄物を抑えながら、画像受取り部204に離型剤を正確な量で塗布し易くするためこの構成が有利である。離型剤塗布ローラ208は、画像受取り部204上にインク画像を形成するために必要な量よりも多い量の離型剤を塗布して、表面228が十分に被覆されることを確実にする。次いで、調量ブレード212が、必要な量だけ残して余剰分を取り除き、この余剰離型剤を離型剤トレイ220に戻すことによりこれらの隔離剤を再使用する。
【0022】
離型剤トレイ220は溝の形態をとり、離型剤を回収し保持するよう設定され、画像受取り部204の表面228から、調量ブレード212により取り除かれた余剰離型剤を含む。離型剤トレイ220は離型剤パッド216を含み、この離型剤パッド216が離型剤トレイ220の底面240に配置され、これにより、離型剤パッド216が、回収済みの離型剤を確実に吸収することができる。離型剤パッド216は、離型剤塗布ローラ208の下にさらに配置され、静止位置にある離型剤塗布ローラ208を支持するための平坦な静止面を提供する。
【0023】
一実施形態では、離型剤パッド216の形状は実質的に長方形であり、離型剤塗布ローラ208の全長に接触するよう大きさを合わせる。その離型剤パッド216が格納することができ、ローラの接触を通して離型剤塗布ローラ208に容易に移すことができる離型剤の量は、離型剤パッド216のサイズにより制限される。離型剤は表面との接触を介して移るため、離型剤パッド216に格納された離型剤のうちの一部分は、離型剤塗布ローラ208に移ることはできない。離型剤パッド216のサイズは、そのプリンタの要求事項に依存することは理解されよう。一実施形態では、離型剤パッド216は、静止位置にある離型剤塗布ローラ208の底面をカバーするのに十分な大きさを有する。別の大きな実施形態では、離型剤パッド216は、離型剤トレイ220の底面240全体をカバーする。一実施形態では、離型剤パッド216は、約220gの離型剤を保持するよう設定される。別の実施形態では、離型剤パッド216は、約440gの離型剤を保持するよう設定される。
【0024】
今記載している実施形態では、離型剤パッド216は離型剤塗布ローラ208と同じ発泡樹脂の材料から作られ、それにより、毛管作用による離型剤パッド216から離型剤塗布ローラ208への離型剤の吸収を容易にする。さらに、この発泡樹脂の特性により、毛管作用を通して、ほぼ均一な状態で離型剤パッド216に離型剤を飽和させることができ、この離型剤パッド216により、離型剤トレイ220の底面240から離型剤が吸収され、その隔離剤が離型剤パッド216の上面252を通して離型剤塗布ローラ208に供給され得る。
【0025】
さらに、発泡樹脂の特性により、離型剤塗布ローラ208に供給される離型剤に対するフィルタとして離型剤パッド216を機能させることができる。調量ブレード212により画像受取り部204から取り除かれ、離型剤トレイ220に戻された離型剤には不純物が混入している可能性がある。例えば、隔離剤が画像受取り部204から取り除かれる前に、前のサイクルの印刷で画像受取り部204から完全に転写されないまま残ったインク画素の一部が離型剤に含まれている可能性がある。離型剤パッド216は、取り除かれた離型剤を離型剤塗布ローラ208に供給する前に、これらの不純物を取り除くために十分なサイズの細孔を用いて構成される。一実施形態では、これらの細孔は約20ミクロン〜70ミクロンの直径を有する。
【0026】
別の実施形態では、離型剤パッド216は、離型剤塗布ローラ208と同じ発泡樹脂の材料から作られる必要はないが、このような構造では、毛管作用により離型剤パッド216から離型剤塗布ローラ208に離型剤を吸収し易くする。離型剤パッド216は、離型剤を効率的に吸収し、濾過し、格納し、かつローラとの接触を通して、離型剤を離型剤塗布ローラ208に効率的に移す全ての材料から作ることができる。離型剤パッド216、および/または離型剤塗布ローラ208に対する代替的な材料には、非ポリウレタンの発泡樹脂(ポリマーに代わる材料から作られた発泡樹脂)、編んだりまたは押し付けたりすることにより結合された繊維を有する不織繊維材料、および織繊維材料の積層が含まれるがこれらには限定されない。
【0027】
軽い質量を有する離型剤塗布ローラ208用いて画像受取り部204に離型剤を塗布し、画像受取り部204に溜まるインクの量を減らし、それに伴い、続く印刷物の画像の不具合を抑えるために上記の離型剤塗布システム200が有利である。プリンタの動作寿命の間、十分な量の離型剤の供給をローラに維持させる必要がなく、そのローラが画像受取り部を十分にカバーするために十分な離型剤を発泡樹脂の円筒ローラ内に格納できるならば、離型剤塗布ローラ208は小さくてもよい。その代わり、動作中の離型剤の供給源は静止した離型剤パッド216内に維持される、これによりローラ208は必要に応じて補充される。
【0028】
上記に記載する通り、従来のシステムは離型剤の供給源がローラ内に含まれ、アクチュエータがローラとトレイの両方を移動させて、これらを画像受取り部に係合・分離させるよう構成されている。プリンタの耐用期間中ずっと十分な離型剤を含むようシステムが設定された場合、システムは大きくなり重量が増え、生産およびプリンタの動作に対して不具合が生じる。したがって、これらのシステムは、消耗可能なローラおよびトレイを含み、これらのローラおよびトレイはプリンタの耐用期間中に何度も交換される意図で作られ、約150gの使用可能な離型剤を含む。
【0029】
しかし、システム200では、離型剤塗布ローラ208だけが移動し、静止した離型剤パッド216内に格納される離型剤の量は、約800gの使用可能な離型剤の量と同等であり得る。システム200の離型剤パッド216は、プリンタの耐用期間中十分にもつ離型剤を含むことができ、この離型剤パッド216交換する必要がなく、あるいは必要に応じて交換可能なため、これらの特徴は有利である。さらに、離型剤塗布ローラ208は質量が軽いため、アクチュエータ224が、少ないエネルギーを用いて離型剤塗布ローラ208を移動させ、画像受取り部204と係合・分離させることができ、プリンタのエネルギー消費を抑えることができる。したがって、システム200では、より小さくて、安価なアクチュエータ224を使用することができ、同様にアクチュエータの構成部品をより小さく、安価にすることができる。さらに、アクチュエータ224が軽い質量の、より少ない構成部品しか移動させないため、システム200は従来知られているシステムよりも小さな音しか出さない。
【0030】
離型剤塗布システム200のその他の長所は、離型剤の供給源の補充が容易であり、交換が必要な部品を少ないことである。離型剤トレイ220内の離型剤パッド216内に離型剤が格納されているため、離型剤塗布システム200が離型剤の供給源を使い切ったとき、離型剤パッド216だけを交換すればよい。離型剤塗布ローラ208は交換する必要がなく、プリンタ内に残したままである。離型剤パッド216の交換は、アクチュエータ224を操作して離型剤塗布ローラ208を静止位置から移動させ、離型剤パッド216に手が届くようにすることにより実行可能である。次に、離型剤トレイ220をプリンタから取り外し、使い切った離型剤パッド216を離型剤トレイ220から取り外し、新しい離型剤の供給源を有する新しいパッドを離型剤トレイ220内に挿入する。もう1つの離型剤塗布システム200の長所は、プリンタの耐用期間に亘って離型剤の供給源を補充しなくても済む可能性があることである。離型剤は離型剤パッド216内に格納されているため、大きな離型剤パッド216を用いることで、プリンタの動作寿命の間十分にもつ離型剤を含むことができる。
【0031】
図3に示す別の実施形態では、離型剤塗布システム200’が、離型剤塗布ローラ208’を含む。この離型剤塗布システム200’は、上記に
図1および
図2に示す離型剤塗布システム200とほとんど同じように配置され動作する。離型剤塗布システム200’は、離型剤塗布ローラ208’が空間244’を囲んだ実質的に空洞の円筒チューブとして構成されている点で離型剤塗布システム200とは異なる。この離型剤塗布ローラ208’の構成により、離型剤塗布ローラ208’の質量を増加させることなしに、離型剤塗布ローラ208’の直径を離型剤塗布ローラ208の直径よりも大きくすることができる。
【0032】
この離型剤塗布ローラ208’により、上記に記載する利点と同じ利点のうちの多くが離型剤塗布システム200’にもたらされる。離型剤塗布ローラ208’の中は空洞のため、離型剤塗布ローラ208より大きい直径を有すにもかかわらず、このローラは軽い質量を維持する。別の実施形態では、離型剤塗布ローラ208’の中は実質的に空洞である必要はなく、より大きな直径に対応して質量が重たくてもよい。離型剤塗布ローラ208’の直径を大きくすることにより、離型剤の塗布中、画像受取り部204’の表面228’のより広い部分と接触させることができ、これにより、ローラ208が1回転でカバーする領域より、広い部材204’の領域をローラ208’の1回転中にカバーすることができる。直径が大きくなることの長所の1つとして、離型剤塗布ローラ208’と画像受取り部204’の表面228’の間の接触が大きくなることで、画像受取り部204’の所与の回転速度に対してローラ208’をゆっくり回転させることができる。
【0033】
一実施形態では、離型剤塗布システム200’のための離型剤パッド216’をより大きくして、より大きな離型剤塗布ローラ208’に対応する。離型剤パッド216’が大きくなると、プリンタ内で空間をより必要とするが、たとえそうだとしても、この大きいパッドでは交換の頻度が、離型剤パッド216よりも少なくなる。別の実施形態では、離型剤パッド216’は大きくなる必要はないが、それでも離型剤塗布ローラ208’に対応するよう設定される。
【0034】
図4に示すさらに別の実施形態では、離型剤塗布システム200’’が、離型剤パッド216’’を含む。この離型剤塗布システム200’’は、上記に
図3に示す離型剤塗布システム200’とほとんど同じように配置され動作する。この離型剤塗布システム200’’は、離型剤パッド216’’が、上面252’’に形成された窪み部248’’を含む点で、離型剤塗布システム200’とは異なる。
【0035】
この窪み部248’’は、離型剤塗布ローラ208’’と相補的に湾曲した形状を有し、これによりこの上面252’’は離型剤塗布ローラ208’’をうけることができる。一実施形態では、この窪み部248’’は、離型剤塗布ローラ208’’の直径232’’よりの若干大きい幅256’’を有する。そのためこの離型剤パッド216’’は、離型剤塗布ローラ208’’のほぼ半分を受けることができる。別の実施形態では、窪み部248’’の幅256’’は、離型剤塗布ローラ208’’のほぼ半分を受けるための大きさである必要はないが、離型剤塗布ローラ208’’と相補的に湾曲した形状を有し、これにより上面252’’が、離型剤塗布ローラ208’’を受けることができる。離型剤パッド216’’は、窪み部248’’を含むため、このパッドは離型剤塗布ローラ208’’の円筒形チューブに対応し、離型剤パッド216’’と離型剤塗布ローラ208’’の間の表面領域をより広く接触させることができる。接触する表面領域が大きくなることにより、離型剤パッド216’’から離型剤塗布ローラ208’’に離型剤がより速く移動可能である。
【0036】
一実施形態では、離型剤塗布ローラ208’’が、離型剤パッド216’’内に収納されるよう構成され、これにより、これらの要素をより近づけて配置させることができるため、プリンタ内で離型剤塗布システム200’’が必要とする空き空間を小さくすることができる。別の実施形態では、離型剤塗布システム200’’が必要とする空き空間は維持され、より大きな離型剤パッド216’’をその空間内に収納する。この実施形態では、同じ大きさのシステム内に、より大量の離型剤を格納することができる。