【実施例】
【0046】
序論
不安感は、目下の脅威が無い状況で、高まった心配が持続する状態であり、病的な状態では、非常に心身を衰弱させるものとなる
1。不安障害は、精神病のうちで最も一般的なものを代表し(28%の生涯有病率を有する)
2、そして、大うつ病と物質乱用の原因論と関係づけられている
3〜5。感情の処理に重要な脳の領域である扁桃体
9〜17が不安感に役割を担うと長らく仮定されてきたが
18〜23、不安感を制御、仲介する神経メカニズムは未だ特定されていない。本明細書で、我々は、不安感関連行動の根底にある神経回路を特定するために、細胞種特異的光遺伝学的ツールを二光子顕微鏡法、電気生理学および自由に動くマウスでの不安感測定法と組み合わせる。細胞種だけではなく細胞間の特定の結合を制御するために光遺伝学のユニークな能力
24〜26を利用して、我々は、ChR2によるBLAのウイルス性形質導入とそれに続く下流CeAでの限定的な照明により分析されて、扁桃体中心核(CeA)中の基底外側扁桃体(BLA)末端の時間的に正確な光遺伝学的刺激が甚大で即時の、そして、可逆的な抗不安効果を及ぼすことを観察した。逆に、eNpHR3.0
25を用いる同じ限定された投射の選択的光遺伝学的抑制が不安感関連行動を強力に、迅速に、そして、可逆的に増加させた。重要なことに、これらの効果はBLA細胞体そのものの直接的光遺伝学的制御では観察されなかった。まとめると、これらの結果は、回路の要素としての特定のBLA−CeA投射が哺乳類の脳における内在性の不安感制御に必要であると共に充分であることを意味し、そして、細胞種よりもむしろ特定の投射を光遺伝学的に標的とすることの精神疾患に関連の神経回路機能の研究における重要性を示す。
【0047】
不安障害は高い有病率を持ち、そして、深刻
1であるにも関わらず、対応する神経回路基質の理解は不十分であり、安全で効果的な治療の開発を妨げている。利用可能な治療法は効果が一貫しない傾向にあり、または、ベンゾジアゼピン類の場合、常習性になり、認知障害と死を引き起こすこともありうる鎮静状態と呼吸抑制を含む、顕著な副作用に直結する傾向がある
27、28。哺乳類の脳における不安感の制御機構のより深い理解
29、30が、副作用がより少ない、より効果的な治療法を開発するために必要である。特に関心があり、そして、新しいのは、不安緩解の生来の経路をリクルートする可能性である。
【0048】
扁桃体は神経刺激と正のアウトカムまたは負のアウトカムの間の関係を処理することに決定的に関与し、無条件付け情緒状態の処理に関係があるとされてもいる。扁桃体微小回路は恐怖条件付けとの関連で機能的に分析されているが、扁桃体の関与が無条件付け不安感を含む多数の他の機能および情緒状態と関係があるとされている。扁桃体は、複雑な相互接続性を有する機能的および形態的に異質の亜核から構成される。扁桃体の主要な細区画は基底外側扁桃体複合体(BLA)であり、それは外側(LA)、基底外側(BL)および基底内側(BM)扁桃体核(BLAニューロンの約90%がグルタミン酸作動性である)を包含する
33、34。対照的に、扁桃体中心核(CeA)は、外側中心(CeL)核および正中中心(CeM)核から構成されるが、主として(約95%)GABA作動性中型有刺ニューロンからなる
35。BLAは、CeAの局所性インターニューロンおよび中型有刺ニューロンの両方と機能的に異なるGABA作動性介在細胞(ITC)の密集した束の中に覆われている
36、37。扁桃体の主要な出力核はCeMであり
32、35、38〜40、化学的または電気的に興奮させられると、それは、恐怖や不安感に関係した自律的で行動に関する反応を脳幹への投射により仲介すると考えられている
6、12、32、35。CeMは、環境情報と認知情報が集中する主要な扁桃体の部位(LA)によって直接制御されてはいないが
12、38、41、LAとBLAのニューロンがGABA作動性CeLニューロンを興奮させ
42、それがCeM「出力」ニューロンへのフィードフォワード抑制
40、46をもたらし、そして、扁桃体の出力を低減させることが可能である。BLA−CeL−CeMは、恐怖の鎮静化ではなく条件付け抑制、すなわち、緊張とショックの明確な対不形成が原因の、BLA−CeLシナプスの増強が原因の恐怖の発現の抑制に関与すると示唆されている、あまり特徴が明らかではない経路である
47。恐怖は外的手がかりにより引き起こされる一過性の状態であると特徴づけられおり、一方、不安感は外的なきっかけが無い状態で起こり得る持続的状態であるが、我々は、恐怖の条件付け抑制を調節する回路がまた不安感の条件付け抑制の調節にも関与するだろうかと思った。
【0049】
材料と方法
対象:実験法開始エポックで4〜6週齢のオスC57BL/6マウスを反転型12時間明暗サイクル、自由飲食条件で飼育した。
図3、4および5に示される動物(ChR2末端グループ、EYFP末端グループおよびChR2細胞体グループのマウス)は、不安感のベースラインレベルを上昇させるために典型的な高トラフィックマウス飼育施設に全て1匹ずつ飼育された。マウスはそれぞれ1つの処理グループに属した。
図6に示される動物(両側性EYFPグループおよびeNpHR3.0グループ)は、不安感のベースラインレベルを低下させるために特別な低トラフィックマウス飼育施設に集団で飼育された。我々の動物の動物管理と実験操作の全ての態様は米国国立衛生研究所のガイドラインに準拠しており、そして、スタンフォード機関内動物実験委員会のメンバーにより認可されたものである。
【0050】
光強度の測定:手早く殺処理したマウスに由来する脳組織のブロックを用いて光透過測定を行った。その後、その組織をパワーメーター(Thor Labs、ニュートン、ニュージャージー州)の光検出器の上に置き、その組織を通過したレーザーの光強度を測定した。直径300μmの光ファイバーの先端が473nmブルーレーザー(OEM Laser Systems、イーストランシング、ミシガン州)に連結された。斜面の反対側への光透過の特徴を調べるために、斜めに切ったカニューレとパワーメーターの光検出器を並置した。光円錐を視覚化するために、我々は、キュベット中に入れた約5mg/mlのフルオレセインイソチオシアネート−デキストラン(FD150s;Sigma、セントルイス、ミズーリ州)を用い、斜めに切ったカニューレのシールド付きの光ファイバーか斜めに切ったカニューレが無い光ファイバーをフルオレセイン溶液に対して垂直に向けた。光ファイバーから光を円錐状に出力することによる強度のわずかな減少と組織での光散乱による光の減少の両方を考慮して、特定の深度でのパワー密度を計算した (Aravanis et al., J Neural Eng, 4:S143-156, 2007) (Gradinaru et al., J Neurosci, 27:14231-14238, 2007)。出力光の角発散を決めるマルチモード光ファイバーの発散半角θ
divは、
【数1】
であり、n
tisは灰白質の屈折率 (1.36、Vo-Dinh T 2003, Biomedical Photonics Handbook (Boca Raton, FL: CRC Press)) であり、NA
fib(0.37)は光ファイバーの開口数である。ファイバーの末端からの距離(z)での光を円錐状に出力することによる強度のわずかな減少は、rが光ファイバーの半径(100μm)である三角法
【数2】
を用いて計算された。
【0051】
光散乱が原因の減少後の光のわずかな伝達が、経験的な測定値とクベルカ・ムンクのモデルを用いて双曲線関数としてモデル化された
1、2。そして、ファイバーの先端でのパワー密度と円錐状の光の出力および光の散乱が原因のわずかな変化を組み合わせたものにより、ファイバーの下の特定の深度でのパワー密度の数値がもたらされる。
【0052】
ウイルスの構築とパッケージング:AAV
5コートタンパク質を用いて組換えAAVベクターの血清型を調べ、そして、ノースカロライナ大学のウイルスベクターコアにより組換えAAVベクターがパッケージされた。ウイルスのタイターはAAV−CaMKIIα−hChR2(H134R)−EYFP、AAV−CaMKIIα−EYFPおよびAAV−CaMKIIα−eNpHR3.0−EYFPについてそれぞれ2x10
12粒子/mL、3x10
12粒子/mL、4x10
12粒子/mLであった。MluIおよびEcoRI制限部位を用いてAAV骨格にCaMKIIα−eNpHR3.0−EYFPをクローニングすることによりpAAV−CaMKIIα−eNpHR3.0−EYFPプラスミドを構築した。同様に、MluIおよびEcoRI制限部位を用いてAAV骨格にCaMKIIα−EYFPをクローニングすることによりpAAV−CaMKIIα−EYFPプラスミドを構築した。マップはオンラインによりwww.optogenetics.orgで入手可能であり、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
定位的注射および 光ファイバーの設置:全ての外科手術は定位ガイダンス下、麻酔条件下で行われた。1.5〜3.0%イソフルランを用いてマウスを麻酔した。座標は全てmm
3単位でブレグマに相対的である。全ての実験、インビボとインビトロの両方で、ウイルスはBLAにのみ送達され、そして、CeAでのどのようなウイルスの発現も全ての実験からの排除ということになった。CeAに照明を限定するためにガイドカニューレが45〜55°の角度になるように斜めに切られた。斜めに切ったガイドカニューレの短い側が前内側に配置され、斜めに切ったカニューレの長い側が光円錐の後外側部分を隠し、ウイルスの注射針と向きが逆であった。BLA−CeLシナプスを優先的に標的とするために、我々はオプシン遺伝子の発現をBLAグルタミン酸作動性投射ニューロンに限定し、そして、光送達をCeAに限定した。CaMKIIαプロモーターの制御下にある光活性化光遺伝学的制御遺伝子を有するアデノ随伴ウイルス(AAV5)ベクターを用いてBLAグルタミン酸作動性投射ニューロンの制御が達成された。BLA内で、CaMKIIαは局所性インターニューロンではなくグルタミン酸作動性錐体ニューロンで発現するのみである
4。ChR2末端グループおよびEYFP末端グループのマウスは光ファイバー用の斜めに切ったカニューレの片側の埋め込みを受けたが(半球についてカウンターバランスがとられた)、eNpHR3.0グループまたはそれぞれのEYFPグループのマウスはCeAへの斜めに切ったカニューレの両側の埋め込みを受けた(前後方向(AP)に−1.06mm;内外方向(ML)に±2.25mm;および背腹方向(DV)に−4.4mm;Plastics One、ロアノーク、バージニア州)
3。ChR2細胞体グループのマウスはBLAの(−1.6mm AP;±3.1mm ML;−4.5mm DV)の位置に長期にわたって埋め込み可能なDoricパッチコードファイバー(NA=0.22;Doriclenses、ケベック、カナダ)の片側埋め込みを受けた
3。全てのマウスについて、ウイルスの注入をBLAに限定するために後外側に面した斜めに切った33ゲージまたは35ゲージの金属製ニードルを用いて、0.5μlの精製したAAV
5をBLAの片側または両側性に注射した(±3.1mm AP、1.6mm ML、−4.9mm DV)
3。マイクロシリンジポンプ(UMP3;WPI、サラソタ、フロリダ州)とその制御器(Micro4;WPI、サラソタ、フロリダ州)を用いて濃縮されたAAV溶液を送達するために、10μl用Hamiltonマイクロシリンジ(nanofil;WPI、サラソタ、フロリダ州)を用いた。そして、1分あたり0.1μlの流速で各部位に0.5μlのウイルス溶液を注入した。注入が完了した後にニードルを0.1mm持ち上げ、そして、さらに10分間とどめ、その後、ゆっくりと引き抜いた。ファイバーガイドシステムを頭蓋骨に固定するために一層の粘着セメント(C&Bメタボンド;Parkell、エッジウッド、ニューヨーク州)と次に頭蓋可塑性セメント(デンタルセメント;Stoelting、ウッドデール、イリノイ州)を用いた。20分後に組織接着剤(Vetbond;Fisher、ピッツバーグ、ペンシルバニア州)を用いて切り口を閉じた。麻酔から回復するまで動物を保温パッド上に保った。ダミーのキャップ(ラット:C312G、マウス:C313G)を挿入してガイドカニューレの開存性を保った。ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間後に行動試験および電気生理学的実験を行った。
【0054】
インビボレコーディング:以前に記述されたように (Gradinaru et al., J Neurosci, 27:14231-14238, 2007)、以前に(4〜6週間前に)AAV−CaMKIIa−ChR2−eYFPウイルスコンストラクトでBLAに形質導入された成獣のオスマウスについての中央扁桃体(CeA)の光刺激と基底外側扁桃体(BLA)の電気的レコーディングが同時に行われた。動物は開頭のまえにイソフルランで深く麻酔され、足指をつまんでも反応しなかった。マウスを定位的に配置し扁桃体に対して背側の頭蓋骨をおよそ3mm
2外科的に除去した後に。マウスが4〜6週齢のとき外科手術を受け、マウスが8〜10週齢のとき実験が行われるので、頭蓋骨と脳の成長を考慮して座標が調節され(−1.5mm AP、±2.75mm MLに中心をとった)
3、1MΩで0.005インチの細胞外タングステン電極(A−M systems)を開頭した脳のBLAの上の領域に定位的に挿入した(−1.65mm AP、±3.35mm ML、−4.9mm DV)
3。これとは別に、0.2N.A.でコア部の直径が200μmのファイバー光ケーブル(Thor Labs)がCeAの背側の脳に定位的に挿入された(−1.1mm AP、±2.25mm ML、−4.2mm DV)
3。光誘起反応の取得の後に、2秒の長さの刺激エポック(20Hz、5ミリ秒のパルス幅)の間に光の強度を変えるため、電圧ランプを用いた。光誘起シグナルの取得の後に、ファイバーの正確な位置が記録され、脳からファイバーが取り除かれ、ファイバーが自作の斜めに切ったカニューレに挿入され、同じ位置に再挿入され、そして、同じプロトコルが繰り返された。ほとんどの試験で、その後、ファイバー/カニューレが脳から抜き取られ、カニューレが外され、そして、そのままのファイバーが再挿入されて誘起されたシグナルを発信するニューロンの集団のフィデリティを確保した。記録されたシグナルが300Hzと20kHzの間のバンドパスフィルターにかけられ、1000倍か10000倍のどちらかのAC増幅にかけられ(A−M Systems 1800)、そして、デジタル化され(Molecular Devices Digidata 1322A)、その後にClampexソフトウェア(Molecular Devices)を用いて記録された。Clampexソフトウェアはフィールドシグナルの記録とオプトロードに連結した473nmの(OEM Laser Systems)ソリッドステートレーザーダイオード源の制御の両方に使用された。ファイバーの先端からの光パワーを1mW未満(約14mW/mm
2)と28mW(約396mW/mm
2)の間で量を決め、そして、標準的光パワーメーター(Thor Labs)を使用して光パワーを測定した。イソフルラン麻酔を1%の定常レベルにまで下げた後にBLAに対しておよそ1mm背側で電気生理学的レコーディングを開始した。約0.1mmずつ腹側にオプトロードを下げて光誘起シグナルの位置を特定した。
【0055】
行動試験法:行動試験について使用された全ての動物はBLAニューロンのウイルス性形質導入と片側性(ChR2グループと対照について)または両側性(eNpHR3.0グループと対照について)の光送達を可能にする埋め込みを受けた。行動試験について、光をCeAに限定するために、斜めに切ったカニューレの長片よりも短いが斜めに切ったカニューレの短辺よりも長い最適な長さにマルチモード光ファイバーs(BFL37−300、開口数:0.37、コア部の直径:300μm;ThorLabs、ニュートン、ニュージャージー州)を正確に切断した。光刺激のために、FC/PCアダプターを介してファイバーを473nmまたは594nmのレーザーダイオード(OEM Laser Systems、イーストランシング、ミシガン州)に連結した。473nmの光実験について20Hz、5ミリ秒のパルス幅の光トレイン、そして、594nmの光実験について連続光を送達するために、Master−8パルス刺激機(A.M.P.I.、エルサレム、イスラエル)を用いてレーザー出力を制御した。実験に含まれるすべての動物はBLAに位置するウイルス注射中心を有したが、時には隣接する領域または穿刺経路に沿って漏れがあった。CeA中でウイルスのどんな発現でも検出できたどんな場合でも、その動物は排除された。統計的に有意な光の効果すべてが考察され、考察されなかった比較は検出可能な差異を示さなかったものである。
【0056】
高架式十字迷路法はプラスチック製であり、そして、プラス型に中央部のプラットフォーム(5×5×5cm)から90度の角度で伸びる2本の明灰色のアーム(30×5cm)と2本の黒色の壁があるアーム(30×5×30cm)から構成された。迷路は床から30cm上に設置された。個体ごとにマウスが中央部に置かれた。セッションの開始前、操作からの回復に1〜5分が見込まれた。マウスの位置、速度および頭、身体および尾の動きの観察記録をとるために、ビデオトラッキングソフトウェア(BiObserve、フォート・リー、ニュージャージー州)を使用した。表示される測定値は全てマウスの身体に相対的であった。グループごとに光刺激プロトコルが明記される。ChR2:BLA−CeAマウスと対応する対照グループ(EYFP:BLA−CeAおよびChR2:BLA細胞体)は不安感測定の前、少なくとも1週間、高ストレス環境に1匹ずつ飼育された:473nmの光パルストレイン(20Hzで5ミリ秒のパルス)の7〜8mW(ファイバーの先端で約106mW/mm
2、CeLで約6.3mW/mm
2およびCeMで約2.4mW/mm
2)でのCeA中のBLA末端の片側照明。ChR2細胞体グループについて、7〜8mWの照明は発作活性を誘発するので、BLAニューロンはより低い光パワーで直接照明され、BLAニューロンが473nmの光パルストレイン(20Hzで5ミリ秒のパルス)の3〜5mW(約57mW/mm
2)での片側性照明を受けた。eNpHR3.0と対応するEYFPグループについて、全てのマウスが集団で飼育され、そして、両側性ウイルス注射、および5分のライト・オンエポックを通じて594nmの連続光の照明の4〜6mW(ファイバーの先端で約71mW/mm
2、CeLで約4.7mW/mm
2およびCeMで約1.9mW/mm
2)でのCeA中のBLA末端の両側性照明を受けた。15分のセッションが3回の5分のエポックに分けられ、第1エポックでは光刺激が無く(オフ)、第2エポックでは先に明記されたように光が送達され(オン)、そして、第3エポックでは光刺激が無かった(オフ)。
【0057】
オープンフィールドチャンバー(50×50cm)とオープンフィールドが中央フィールド(中央部、23×23cm)および外側のフィールド(辺縁部)に分けられた。個々のマウスがフィールドの辺縁部に置かれ、そして、ビデオカメラによりその動物のパスが記録された。同じビデオトラッキングソフトウェアであるViewer
2(BiObserve、フォート・リー、ニュージャージー州)を用いることにより総歩行距離が分析された。高架式十字迷路試験の直後にオープンフィールド評価試験が行われた。オープンフィールドテストは3分のエポックが6回ある18分のセッションからなる。エポックはライト・オフエポックで始まり、無光時間と光刺激時間の間で交互に反復した。「オフ」条件および「オン」条件とのみ示される全ての分析およびチャートについて、3回の「オフ」エポックがまとめられ、そして、3回の「オン」エポックがまとめられた。
【0058】
グルタミン酸受容体アンタゴニスト操作について、22.0mMのNBQXと38.0mMのD−APV(Tocris、エリスビル、ミズーリ州)からなるグルタミン酸アンタゴニスト溶液は生理食塩水(0.9%NaCl)に溶けたものである。不安感測定の5〜15分前に、10μlのHamilton注射筒(nanofil;WPI、サラソタ、フロリダ州)に連結された、光ファイバーを介した光送達に用いられるのと同じガイドカニューレに挿入された内部点滴用ニードルにより0.3μlのグルタミン酸アンタゴニスト溶液がCeAに点滴された。シリンジポンプ(Harvard Apparatus、マサチューセッツ州)により流速(0.1μl/分)が制御された。ウイルス注射、ガイドカニューレおよび長期にわたり埋め込まれたファイバーの配置は
図7および10に示されるように組織学的に確認された。
【0059】
二光子光遺伝学的回路マッピングおよび生体外電気生理的レコーディング:マウスは4週齢の時にAAV5−CaMKIIα−ChR2−EYFPで注射され、ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間で急速薄片調製のために殺処理された。BLAとCeAの間の機能的接続性を調べるためにBLAおよびCeAを含む冠状薄片が調製された。(mM単位で)126 NaCl、26 NaHCO
3、2.5 KCl、1.25 NaH
2PO
4、1 MgCl
2、2CaCl
2および10 グルコースを含む人工脳脊髄液(aCSF)の連続灌流下で二光子画像が撮られ、そして、電気生理的レコーディングがなされた。レコーディングは全て32℃でなされた。パッチ電極(4〜6MΩ)が(mM単位で):10 HEPES、4 Mg−ATP、0.5 MgCl
2、0.4 Na
3−GTP、10 NaCl、140 グルコン酸カリウムおよび80 Alexa−Fluor594ヒドラジド(Molecular Probes、ユージーン、オレゴン州)で満たされた。二光子イメージング、全細胞レコーディングと光遺伝学的刺激が同時に行われ得るが、BLA、CeLおよびCeMニューロンで全細胞パッチクランプレコーディングが行われ、およそ30分間、細胞が満つるに任された後に改変型二光子顕微鏡(Prairie Microscopes、マジソン、ウィスコンシン州)で画像が取得された。ピペットの直列抵抗は通常10〜20MΩであった。別途、言及されない限り、約7mW/mm
2で473nmのLED(Thorlabs、ニュートン、ニュージャージー州)を使用して青色光のパルスが引き出された。コヒーレント・チタンサファイアレーザーを用いてChR2−YFP(940nm)とAlexa−Fluor594(800nm)の両方を画像化した。両分子の放射光を分けるためにフィルター630/69とフィルター542/27(Semrock、ロチェスター、ニューヨーク州)と共にFF560ダイクロイックもまた使用した。40X/.8NA LUMPlan FL/IR対物レンズ(Olympus、センター・バレー、ペンシルバニア州)を使用して全ての画像を撮影した。CeLへ投射する線維をBLAから単離し、そして、CeM内での反応を調べるために、先に説明したように、BLAが証明を受けない様にして薄片を調製した。対物レンズからCeLにねらいを定めて照明してCeM中で全細胞レコーディングを行った。BLAからCeLへの末端の活性化が選択的であることをさらに確実にするために、CeLの中心の周り、直径約125μmに照明が限定された。ここで、シャッター(Uniblitz、ロチェスター、ニューヨーク州)に連結されたXCiteハロゲン光源(EXPO、ミシサガ、オンタリオ州)を470/3フィルターと共に6.5mW/mm
2で用いて青色光のパルスを誘発した。機能マッピングについて、我々はまずChR2を発現するBLAニューロンから記録をとり、同時に電気生理的レコーディングをとり、そして、二光子イメージングを可能にするために細胞をAlexa−Fluor594ヒドラジドダイで満たした。ダイを満たしたBLAニューロンの軸索に沿った複数の位置で二光子Zスタックを収集した。次に、我々はCeL核に投射するBLAニューロンの軸索に注目し、そして、BLA末端フィールド中のCeLニューロンからの記録をとった。次に、我々は同時にCeLニューロンからの記録をとり、ダイで細胞を満たし、そして、二光子ライブイメージングを行った後にCeMへのCeLニューロン性軸索に関心を移した。そして、我々はCeMニューロンでこの手順を繰り返したが、CeL中の末端フィールドへと光を戻し、インビボで行われたのと同じ刺激パラメータでのBLA−CeLシナプスの優先的な照明を模倣した。EPSCを分離するために−70mV、IPSCを分離するために0mVの両方で電位固定レコーディングを行った。それぞれ、EPSCはグルタミン酸受容体アンタゴニストであるNBQX(22μM)とAP5(38μM)のバス適用(n=5)を介してEPSCであると確認され、IPSCはIPSCを消失させるビククリンのバス適用(10μM;n=2)を介してIPSCであると確認された。細胞が約−70mVで静止しているとき、我々はまた電流固定レコーディングを行った。
【0060】
BLA軸索末端での光遺伝学駆動性の逆方向性刺激の特性解析について、4週齢で動物がAAV5−CaMKIIα−ChR2−EYFPで注射され、ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間で急速薄片調製のために殺処理された。薄片の調製は上記と同様であった。我々はaCSFに0.1mMピクロトキシン、10μM CNQXおよび25μM AP5(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)を添加した。全細胞パッチクランプレコーディングがBLAニューロンで行われ、そして、およそ30分間、いっぱいになるにまかされた後に二光子イメージングが行われた。ピペットの直列抵抗は通常10〜20MΩであった。40X/.8NA LUMPlan FL/IR対物レンズ(Olympus、センター・バレー、ペンシルバニア州)を使用して全ての画像を撮影した。シャッター(Uniblitz、ロチェスター、ニューヨーク州)に連結されたXCiteハロゲン光源(EXPO、ミシサガ、オンタリオ州)を470/30フィルターと共に6.5mW/mm
2で用いて青色光のパルスを誘発した。ダイを満たしたBLAニューロンの軸索に沿った複数の位置で二光子Zスタックを収集した。CeL核を向いた約300μmを超える直径にわたってその軸索が可視化可能であったニューロンのみが実験に含まれ、そして、あらゆる方向に向かう突起を持つニューロンはまた排除された。約125μmの直径の青色光点に対して薄片を移動させることにより軸索上/外での刺激がなされた。正確な発現に薄片を較正するために、CeL細胞上で全細胞パッチクランプが行われ、そして、BLA末端からCeLニューロンへのシナプス性放出が信頼できるものであることを確実にするために、約125μmの直径の点青色パルスが用いられた。
【0061】
CeMへの直接投射および間接投射の分解のため、4週齢で動物がAAV
5−CaMKIIα−ChR2−EYFPで注射され、ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間で急速薄片調製のために殺処理された。薄片の調製は上記と同様であった。40X/.8NA LUMPlan FL/IR対物レンズ(Olympus、センター・バレー、ペンシルバニア州)により光が送達された。CeM核での全細胞パッチクランプの前にCeL核の位置が、そこを再訪するために、記録され、光点がこの領域に限定された。CeMニューロンで全細胞パッチクランプレコーディングが行われた。ピペットの直列抵抗は通常10〜20MΩであった。シャッター(Uniblitz、ロチェスター、ニューヨーク州)に連結されたXCiteハロゲン光源(EXPO、ミシサガ、オンタリオ州)を470/30フィルターと共に6.5mW/mm
2で用いて青色光のパルスを誘発した。CeMレコーディング中にCeA中のBLA末端の、そして、20Hzで2秒間の5ミリ秒の光トレインでの広範囲の照明(約425−450μmの直径)が適用された。EPSCとIPSCを分離するために、それぞれ、70mVと0mVで電位固定レコーディングが行われた。電流固定レコーディングもまた行われた。次に、直径が約125μmである限定された光点を用いて照明をCeLへと移動させた。我々はもう一度、−70mVと0mVで電位固定レコーディングを行い、そして、20Hzで2秒間の5ミリ秒の光トレインを用いた。電流固定で行うCeMニューロンスパイキング抑制実験について、我々は、スパイキングの誘発に必要な最小電流ステップ(約60pA)を適用し、そして同時にCeL中のChR2発現BLA末端の20Hzで2秒間の5ミリ秒の光トレイン(細胞あたり平均6スイープ超)での優先的照明を適用した。CeMの中央に位置するBLA末端フィールドの広範囲の照明をBLA−CeL末端の選択的照明と比較する実験について、同じCeM細胞(n=7)でこれらの条件が繰返し交互に行われた。
【0062】
末端抑制が細胞体のスパイキングを変化させないことを確認するために、4週齢で動物がAAV5−CaMKIIα−eNpHR3.0−EYFPで注射され、ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間で急速薄片調製のために殺処理された。薄片の調製は上記と同様であった。全細胞パッチクランプレコーディングがBLAニューロンで行われ、そして、およそ30分間、いっぱいになるにまかされた。40X/.8NA LUMPlan FL/IR対物レンズ(Olympus、センター・バレー、ペンシルバニア州)により光が送達された。BLAニューロンについて全細胞パッチクランプレコーディングが行われた。ピペットの直列抵抗は通常10〜20MΩであった。シャッター(Uniblitz、ロチェスター、ニューヨーク州)に連結されたXCiteハロゲン光源(EXPO、ミシサガ、オンタリオ州)を589/24フィルターと共に6.5mW/mm
2で用いて黄色光のパルスを誘発した。パッチング後、非限定的な光点(約425〜450μmの直径)をBLA細胞体上に配置し、そして、1秒のパルスを適用した。記録された電流が600pAの過分極電流よりも低く、軸索がCeL核に向かって約300μmを超えて伸びていなかったとき、細胞が排除された。その後、約125μmの直径に光点が限定された。軸索上および軸索外電位固定レコーディングを1秒の光パルスを用いて取った。電流固定レコーディングについて、パッチピペットを介して細胞体に250pAの電流を適用することにより活動電位を発生させた。
【0063】
eNpHR3.0発現BLA末端の選択的照明が自発的シナプス小胞放出の確率を低減させることを示すために、4週齢で動物がAAV5−CaMKIIα−eNpHR3.0−EYFPで注射され、ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間で急速薄片調製のために殺処理された。薄片の調製は上記と同様であった。外側中心ニューロンで全細胞パッチクランプレコーディングが行われた。40X/.8NA LUMPlan FL/IR対物レンズ(Olympus、センター・バレー、ペンシルバニア州)により光が送達された。ピペットの直列抵抗は通常10〜20MΩであった。シャッター(Uniblitz、ロチェスター、ニューヨーク州)に連結されたXCiteハロゲン光源(EXPO、ミシサガ、オンタリオ州)を589/24フィルターと共に6.5mW/mm
2で用いて黄色光のパルスを誘発した。約125μmの直径に光点が限定された。カルバコールを20μMの濃度でバスに添加した。CeLニューロンでsEPSC活性が上昇した後に5秒から30秒の時間範囲で光パルスが適用された。
【0064】
eNpHR3.0発現BLA末端の選択的照明が電気的刺激によるシナプス小胞放出の確率を低減させ得ることを示すために、4週齢で動物がAAV5−CaMKIIα−eNpHR3.0−EYFPで注射され、ウイルスの発現を考慮に入れて、4〜6週間で急速薄片調製のために殺処理された。薄片の調製は上記と同様であった。二極性同心刺激プローブ(FHC、ボードイン、メイン州)をBLAに設置した。CeLニューロンで全細胞パッチクランプレコーディングが行われた。40X/.8NA LUMPlan FL/IR対物レンズ(Olympus、センター・バレー、ペンシルバニア州)により光が送達された。ピペットの直列抵抗は通常10〜20MΩであった。シャッター(Uniblitz、ロチェスター、ニューヨーク州)に連結されたXCiteハロゲン光源(EXPO、ミシサガ、オンタリオ州)を589/24フィルターと共に6.5mW/mm
2で用いてコハク色光のパルスを誘発した。約125μmの直径に光点が限定された。40秒間、電気パルスが送達され、そして、光の送達は10秒で開始され、そして、中ごろの30秒で終了した。
【0065】
解剖学的追跡実験について、追跡した軸索が切断されていると観察されたとき、そのニューロンが排除される。そして、解剖的測定に含まれる全てのBLAニューロン(
図5a〜i)が電流ステップでBLA錐体ニューロンに典型的なスパイキング
18を示した。
【0066】
薄片の免疫組織化学:インビボ光刺激の終了後100〜110分後に氷冷したPBS(pH7.4)中の4%パラフォルムアルデヒド(PFA)を用い、麻酔したマウスを経心的に灌流した。脳を4%PFA中に一晩固定し、その後、PBS中の30%ショ糖で平衡化した。凍結ミクロトームで40μm厚の冠状切片を切り出し、そして、凍結保護剤中に4℃で免疫組織化学に進むまで保存した。PBSで自由浮遊切片を洗浄し、その後、0.3%Tx100および3%正常ロバ血清(NDS)中で30分間保温した。一次抗体とのインキュベーションを3%NDS/PBS(ウサギ抗c‐fos抗体(1:500)、Calbiochem、ラホーヤ、カリフォルニア州;マウス抗CaMKII抗体(1:500)、Abcam、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)中で4℃一晩行った。その後、切片を洗浄し、そして、Cy3またはCy5と複合体化した二次抗体(1:1000)(Jackson Laboratories、ウエストグローブ、ペンシルバニア州)と室温で3時間インキュベートした。DAPI(1:50,000)との20分間のインキュベーションの後、切片を洗浄し、PVD−DABCOを用いて顕微鏡用スライドグラスに切片を貼りつけた。
【0067】
共焦点顕微鏡法および分析:20X/0.70NA対物レンズまたは40X/1.25NA油浸対物レンズを用いるLeica TCS SP5走査レーザー顕微鏡で共焦点蛍光画像を取得した。同等の環境を用い、複数の切片を通して10μmの深度にわたる連続スタック画像が取得された。バックグランドレベルより上のc‐fos免疫反応性に閾値をとり、そして、核の輪郭を描くためにDAPI染色を用いることにより、Volocity画像解析ソフトウェア(Improvision/Perkin Elmer、ワルトハム、マサチューセッツ州)が視野あたりのc‐fos陽性細胞の数を計算した。実験条件に盲目的に全てのイメージングと分析が行われた。
【0068】
統計学:行動試験と生体外電気生理学のデータについて、ノンパラメトリック・ブートストラップt検定(対合または適切な場合非対合)を用いて一対比較が検定されたが
5、線形対比を用いて2つよりも多くのグループの平均値が係わる仮説が検定された(それぞれ、R
6の「ブート」パッケージおよび「lme4」パッケージを用いる)。後者は線形混合効果モデル(「二元反復測定ANOVA」)の係数間の対比として公式化され、固定効果は遺伝学的または薬理学的操作および光処理(オンまたはオフ)であった。全ての仮説の検定は演繹的に定められた。対象はランダム効果としてモデル化された。c‐fosの定量比較について、我々は、一元配置ANOVAと続いてテューキーの多重比較検定を使用した。
【0069】
データのプロットは観察値の平均と観察値の分散の間の関係を明確に示す(すなわち、それらは不均一分散性である、例えば
図3eおよび
図5jを参照のこと)。標準平方根変換がこのこととよく相関していることを我々は見出した。さらに、eNpHR3.0の高架式十字迷路法(EPM)データは、時間の経過に伴う探索行動の減少を説明するために、時間経過に対する線形適合によるトレンド除去を必要とした。二元線形混合効果モデル(二元反復測定ANOVAとしても知られる)に標準的なことではあるが、我々はij番目の細胞でのk番目の観察値(y
ijk)(の平方根値)を
【数3】
とモデル化し、式中、
μは全ての細胞での総平均であり(観察値の収集におけるij番目の「細胞」とはi番目の条件、j番目の処理に対応する)
c
iは(複数の)処理でのi番目の動物条件に起因する固定効果(例えば、遺伝学的操作)であり、
t
jは(複数の)条件でのj番目の処理に起因する固定効果(例えば、ライト・オンまたはライト・オフ)であり、
(c:t)
ijはij番目の細胞でのi番目の条件とj番目の処理の相互作用に起因する固定効果であり、
b
jは(複数の)処理で用いられる動物に対応するランダム効果であり、そして、
e
ijkは、平均値が0で分散がσ
2であり、全てのjについてb
jに独立した、独立同分布(i.i.d.)ランダム正規外乱である。
【0070】
固定効果を二元配置分散分析(ANOVA)計画行列X∈R
nxpに集め、疎マトリックスZ∈R
nxq中のランダム効果をダミーコードし、そして、
【数4】
とし、行列形式を
【数5】
と表現することができ、y∈R
n、b∈R
qおよびe∈R
nはそれぞれ変数Y、Βおよびeの観察値であり、我々のモデルは
【数6】
と仮定し、式中、N(μ,Σ)は平均ベクトルがμであり分散共分散行列がΣであるときの多変量ガウス分布であり、そして、⊥は2つの変数が独立であることを示す。係数ベクトルβ∈R
p、b∈R
q、および分散パラメータσおよび低密度(ブロック対角化)相対的分散共分散行列Σ∈R
qxqを推定するために、我々は、Douglas BatesおよびMartin Maechlerにより書かれたRのlme4パッケージを用い、それはまず、ランダム効果を「球面」にする座標の線形変化を見つけ出し、次に、ペナルティ付き反復加重最小二乗法を用いてβ、σおよびΣの最尤推定値を見つけ出し、計算速度を増すためにランダム効果行列の稀薄性を利用する。さらなる詳細については、http://www.r-project.org/のアドレスのlme4リポジトリ中のパッケージに付随する文書を参照のこと。
【0071】
最尤推定値を求めるために、等式2の中の計画行列Xは全列ランクでなくてはならない。これは(等式1におけるように)切片を有する全因子計画行列には当てはまらないことは周知であり、したがって、固定効果係数が推定可能であるためには、Xの列を定義するために線形結合(「比較」)を用いなくてはならない。我々の計画は釣り合いが取れている(ほぼ釣り合いが取れている)ので、我々は、主原文で報告されているように、ライト・オフ条件と比較したライト・オンに関連の係数、対照条件と比較した末端刺激などの間で直交(またはほぼ直交)ヘルマー対比を用いた。そのような対比により我々はまとめたデータを反復測度デザイン内で互いに対して比較することができ、改善されたパラメータ推定とテストパワーがもたらされ、一方、動物内の相関が説明される。
【0072】
結果
BLA細胞は、分界条床核(BNST)、側坐核、海馬および皮質への投射を含む、脳全体に渡って乱雑な投射を有する
38、43。BLA−CeLシナプスが必然的に不安感に関与し得るかどうか試験するために、したがって、他のBLA投射を直接影響することなくCeL中のBLA末端を選択的に制御する方法を開発することが必要であった。BLA−CeLシナプスを優先的に標的とするために、我々はオプシン遺伝子の発現をBLAグルタミン酸作動性投射ニューロンに限定し、そして、光送達をCeAに限定した。CaMKIIαプロモーターの制御下にある光活性化光遺伝学的制御遺伝子を有するアデノ随伴ウイルス(AAV5)ベクターを用いてBLAグルタミン酸作動性投射ニューロンの制御が達成された。BLA内では、CaMKIIαはグルタミン酸作動性錐体ニューロンだけで発現し、局所性インターニューロンまたは介在細胞では発現しない
48。CeA投射へ光を優先的に送達するために、BLAへの光送達を防ぎ、そして、CeAの選択的照明を可能にするためにCeL上に斜めに切ったガイドカニューレを埋め込むと共に、定位ガイダンスの下、BLAにウイルスを片側的に送達した(
図7および8)。その結果の光の分布についての幾何的および機能的特質は、BLA細胞体ではなくBLA末端の選択的制御についての光パワーパラメータを判定するために、インビトロとインビボの両方で、インビボ電気生理学的レコーディングを用いて定量され得る(
図9)。
【0073】
BLA−CeA経路は不安緩解のための内在性機構を実施することができるという仮説を検討するために、我々は、2つの異なる、そして、よく検証された不安感測定法である高架式十字迷路法およびオープンフィールドテストで投射特異的光遺伝学的制御下にある自由に動くマウスを厳密に調査した(
図3a〜f)。壁が無いまたは丸見えの空間にさらされるとマウスは不安感関連行動を示し、したがって、高架式十字迷路法の壁が無いアームまたはオープンフィールドチャンバーの中央で過ごした時間の増加が不安感の減少を示す
49、50。関連の行動の誘導と反転の両方を試験するため、我々はまず3回の5分のエポックの間、マウスに高架式十字迷路法を受けさせ、第2エポックのみに光が送達された。
【0074】
我々が観察した抗不安効果はCeA中のBLA末端の活性化に特異的であり、一般のBLA細胞に特異的ではないことを判定するために、我々は、投射特異的制御を受けた(ChR2:BLA−CeAグループの;
図3a)マウスを対照ウイルスでの形質導入を受け、同じパターンの照明を受けた陰性対照グループ(EYFP:BLA−CeA)およびBLAにAAV−CaMKIIα−ChR2−EYFPウイルスを形質導入され、BLA上に直接ファイバーを埋め込まれた陽性対照グループ(ChR2:BLA細胞体)と比較した。このグループ(ChR2:BLA細胞体)について、ChR2:BLA−CeAグループ(
図3bおよびc)で観察された不安緩解を光刺激が誘発することはなかった。実際、ChR2:BLA−CeAグループは、対照(EYFP:BLA−CeAグループおよびChR2:BLA細胞体グループ)と比較して、CeA中のBLA末端の光誘導性活性化中に、壁がないアームで有意により長い時間を過ごした(t(42)=8.312;p<0.00001;
図3b、c)。ChR2:BLA−CeAマウスはまた、迷路の中央の選択点から、壁があるアームよりはむしろ壁がないアームへ入っていく確率の上昇を示した(
図3c差込図)。これは、通常不安を惹起する環境を選択する確率の上昇を意味する。
【0075】
我々は、オープンフィールドアレーナ上で6回の3分のエポックの間、マウスを厳密に調べ、無光条件(オフ)と光刺激条件(オン)の間を交互に繰り返すことにより可逆性を再度試験した。オープンフィールドチャンバーの中央にいる時間で評価したように、試験(ChR2:BLA−CeA)マウスは中程度で強固であり、可逆的な光誘導性抗不安反応を示したが(
図3dおよびe)、EYFP:BLA−CeAグループおよびChR2:BLA細胞体グループのマウスは示さなかった(
図3e)。光刺激が自発運動活性(
図3f)を著しく変えることはなかった。オフ条件ではグループ間に検出可能な差異はなかったが、オン条件の間、EYFP:BLA−CeAグループまたはChR2:BLA細胞体グループと比較してChR2:BLA−CeAグループのマウスがオープンフィールドの中央で過ごす時間の有意な増加があった(t(105)=4.96178;各対照についてp<0.0001)。BLA細胞体ではなくCeAへのBLA投射の選択的刺激が急性で急速に反転しうる抗不安効果をもたらし、BLA−CeL−CeM経路が不安感制御の天然の微小回路であり得るという仮説を裏付けると我々は結論した。
【0076】
我々は次にこの光誘導性抗不安効果の生理的基礎を研究した。BLA中のグルタミン酸作動性ニューロンは強固な興奮性投射をCeLニューロンならびにCeMニューロンに送り込む
38。しかしながら、光源から離れたCeMシナプス(
図8)ばかりかこれらのCeMニューロンの任意の残存性直接刺激も、抗不安効果というよりもむしろ不安惹起効果を引き起こすと期待される
12。しかし、CeLニューロンはこれらの脳幹投射CeM出力ニューロンに対して強い抑制をもたらし
32、35、
40、それ故、我々は、CeA中のBLA末端の照明がBLA−CeLニューロンを活性化することができ、それによって、CeMニューロンへのフィードフォワード抑制を誘発し、観察された抗不安減少を実施することができると仮説を立てた。
【0077】
この光遺伝学的に限定された投射の活動を確認するために、我々は、行動試験で送達されたものに光送達プロトコルを合わせたインビボ実験を行い、そして、ニューロンの活性化のパターンを確認するためのリードアウトとして活性依存性最初期遺伝子(c‐fos)の発現解析(
図3g〜k)を行った。我々は盲検条件下で、ChR2:BLA−CeAグループ、EYFP:BLA−CeAグループおよびChR2:BLA細胞体グループについて、EYFPを発現する、またはc‐fos免疫反応性を示すBLA、CeLおよびCeM中のニューロンの割合を定量した(
図3i〜k)。BLAでのCaMKIIαプロモーター制御下のウイルスの発現はグルタミン酸作動性ニューロンを標的とし
47、我々は局所性インターニューロンと介在細胞の両方でEYFPの発現を観察しなかった(
図10)。各領域内のEYFP陽性細胞の割合にグループ間で有意な差は認められなかったが(
図3g〜k)、ChR2:BLA−CeAグループまたはEYFP:BLA−CeAグループと比較してChR2:BLA細胞体グループでc‐fos陽性BLA細胞の有意に高い割合を我々は見出した(
図3i;それぞれp<0.01およびp<0.05)。ChR2:BLA−CeAグループとEYFP:BLA−CeAグループの間にはc‐fosについて検出可能な差は無く、斜めに切ったカニューレの遮蔽がBLA細胞体への直接照明を効果的に防いでいることを示した。ChR2:BLA細胞体グループではなく、EYFP:BLA−CeAグループ(p<0.05)と比較してChR2:BLA−CeAグループで有意に高い割合のCeLニューロンがc‐fosを発現した(
図3j)。したがって、CeA中のChR2を発現するBLA末端の選択的照明によりBLA細胞体を活性化することなくCeLニューロンを活性化することになった。CeMについて、我々はChR2:BLA−CeAグループよりもChR2:BLA細胞体グループで2倍多い(総ニューロンに対する)c‐fos陽性のニューロンを見出したが(
図3k)、LAニューロンはCeLニューロンを選択的に神経支配し、扁桃体のBL核およびBM核のニューロンはCeLとCeMの両方に単シナプス性投射を有するので
38、43、51、この発見は解剖学的投射とあう。まとめると、これらのデータは、急性抗不安行動表現型を引き起こすインビボ照明がBLA細胞体を活性化することがないBLA−CeLシナプスの選択的照明を満たすことを示している。
【0078】
CeL中のBLA末端の選択的照明がCeM出力ニューロンのフィードフォワード抑制を誘導するという仮説を検定するために、我々は全細胞パッチクランプレコーディングをライブ二光子イメージングと組み合わせて、微小回路を可視化すると同時に投射特異的光遺伝学的制御中のこれらの細胞間での機能的相互関係を厳密に調査した(
図4a〜f)。インビボで用いられる光刺激パラメータは光ファイバーを介して送達され、我々の生体外実験で用いられるパラメータは急速薄片に送達されるが、我々は我々の標的位置での光パワー密度を約6mW/mm
2に合わせた。BLA−CeL−CeM回路の二光子画像は
図4aに示されるが、3細胞全てが同じ薄片から画像化された(
図4a)。ChR2−EYFPを発現するBLAニューロンは473nmの光の20Hz、5ミリ秒のパルスでの直接照明に対して強固で高フィデリティのスパイキングを示した(
図4b)。ChR2−EYFPを発現するBLAニューロンの末端フィールドの照明中に記録されたCeLニューロンからの代表的なトレースはCeLで見られる典型的な興奮性反応を示し(
図4c)、集団要約は、スパイキングフィデリティが40パルス光トレインを通じて安定していたこと、および、反応している細胞には弱く興奮したCeL細胞および強く興奮したCeL細胞が含まれること(n=16;
図4c)を明らかにしている。BLA−CeLシナプスの照明がCeLニューロンからの強固なフィードフォワード抑制によりCeM細胞でスパイキングを妨げる程機能的に充分であるかどうか検討するために、我々はBLA−CeLシナプスを選択的に照明している間にCeMニューロンからの記録をとった(
図4d)。実際に、我々はCeL中のBLA末端の光刺激によるCeMでの強力なスパイキング抑制(F
2、11=15.35、p=0.0044)を観察した(
図4d;1秒当たりのスパイク:照明前(49±9.0)、照明中(1.5±0.87)および照明後(33±8.4);平均値±SEM)。次に、
図4eはChR2−EYFPを発現するCeMでのBLAニューロンの末端フィールドの照明中に記録されたCeMの反応、および興奮性入力と抑制性入力を組み合わせたものを示す。予想されたように、EPSCの潜時は2シナプス性IPSCの潜時よりも短く、そして、平均IPSC振幅は平均EPSC振幅よりも大きい(それぞれ、0mVおよび−70mVで記録された;
図4e)ことが電位固定レコーディングの集団要約により示された。重要なことに、まさに同じCeMニューロン(n=7)が、部位間で交互に反復可能な様式で、CeMへのBLA入力の広範囲の照明により正味の興奮を引き起こしたが(
図4e)、CeLへのBLA入力の選択的照明により正味の抑制を示した(
図4f)。このことは、BLAからCeMへの直接入力および間接入力のバランスがCeM出力を調節することができることを示している。まとめると、それによりCeA中のBLA末端の選択的照明がBLA−CeLシナプスを活性化し、そうしてCeLニューロンから脳幹投射CeMニューロンへのフィードフォワード抑制を上昇させる、構造的および機能的に特定された生理的微小回路をこれらのデータは明らかにしている。
【0079】
この抗不安効果の基礎をなす扁桃体性微小回路をさらに説明するために、我々はこの現象を支配する解剖学的および機能的特質を注意深く分析した。ラットでCeA中のBLA側枝の投射をマップする努力がいくつかなされてきたが、我々は、重複する集団または別個の集団のBLAニューロンがCeLおよびCeMに投射するのか先験的な方法で検討した(
図5a、b)。注目に値する警告を述べると、我々は約350μm厚の冠状切片中のこれらのニューロンを可視化しており、軸索が切断されたニューロンを排除するようにいろいろと試みたが、我々はこれが起きている可能性を排除できないし、これがCeAにより近いBLAニューロンへの標本抽出バイアスをいくらか誘導したことを否定することができない。
図5aは、標本抽出されたBLAニューロン(n=18)の解剖学的投射を要約し、そして、ニューロンの44%がCeLだけに投射し、17%がCeMだけに投射していたことを示す。しかしながら、少数のBLA細胞(n=1;6%)はCeLとCeMの両方に投射し、CeLおよびCeMに別々の側枝を送るものもあり、および、分枝をCeLおよびCeMに送る側枝を送るものもあった。
図5bは標本抽出された細胞試料の2光子画像を示し、それらの全てが電流ステップでBLA錐体ニューロンに典型的なスパイキングパターンを示した。
【0080】
次に、我々のc‐fos測定が、CeL中のBLA末端の照明はBLAニューロンそのものではなくCeLニューロンを興奮させるのに充分であることを示唆したので、我々はこの仮説を全細胞レコーディングにより確認しようとした。電気的刺激によって、軸索末端の脱分極が細胞体での逆方向性スパイキングを引き起こす。しかしながら、光遺伝学的に誘導された脱分極は異なる機構を介して機能する証拠が存在している。この扁桃体性微小回路での光遺伝学的に誘導された末端刺激の特性を評価するために、我々はChR2を発現するBLA錐体ニューロンから記録をとり、そして、光点を(約120μmの直径)細胞体から視認された軸索側枝への方向と軸索が無い方向の両方向に100μmずつ移動させた(
図5c)。細胞体からそれぞれの距離で20Hzの光トレインを受けたBLAニューロンのスパイクフィデリティが
図5dに要約され、脱分極性電流が
図5eに要約される。全ての調製物について、我々は、BLA細胞体での高フィデリティスパイキング(
図5f)およびシナプス後CeLニューロンのレコーディングにより示されるようなBLA末端での確実なシナプス小胞放出(
図5g;
図15)を誘発するのに、使用された光刺激パラメータは充分であることを確認した。対照的に、細胞体から300μm離れた光点を用いて同じBLAニューロンをレコーディングしたとき、我々が軸索(
図5h)に注目しているか、していないか(
図5i)に関わらず、我々は確実な活動電位の誘導を観察しなかった。この逆方向性スパイキングの欠如はGABA受容体アンタゴニストおよびAMPA受容体アンタゴニストのバス適用(n=7)を受けても観察されたが、したがって、局所的な抑制性制約の寄与の可能性を排除する。BLA錐体ニューロンで逆方向性刺激が無いときに光遺伝学的に誘導されたシナプス小胞放出が起こり得ることを我々は示しているが、我々がここで使用した光パワー密度(約6mW/mm
2)よりも大きい光パワー密度で逆方向性刺激が達成され得る可能性がある。これまで、我々は、CeLとCeMに投射するBLAニューロンの集団は大部分が別個のものであり、そして、BLA−CeLシナプスの照明がBLA細胞体それ自体を強く活性化することなくシナプス小胞放出とCeLの興奮を引き起こすことを示してきた。
【0081】
最後に、我々は、投射特異的光遺伝学的制御の環境でインビボ薬理学的分析を用いて機構をさらに探究した。我々が観察した抗不安効果はBLA−CeLシナプスのみの選択的活性化によるものであり得、CeAを通過するBLA線維によるものでも、その後、あらゆるBLA投射標的領域を神経支配するBLA細胞体への活動電位の逆行性伝播にもるものでもないことを判定するために、我々は、局所的なグルタミン酸受容体拮抗作用が光誘導性抗不安効果を減退させるかどうか検討した。不安感を変化させるCeAでの傷害が、CeAを通過するBNSTへのBLA投射
6の切除の可能性によって混乱させられるので、この問題は十分に興味深い。我々は、前述のようにCeA中のBLA末端の選択的照明を実施するために、AAV−CaMKIIα−ChR2−EYFPでBLAニューロンを片側的に形質導入し、そして、斜めに切ったカニューレを埋め込み(n=8;
図8)、そして、高架式十字迷路法およびオープンフィールドテストでマウスを試験した。しかしながら、この場合では、我々は同じ動物の異なる試験で光ファイバーガイドカニューレを用いてグルタミン酸アンタゴニストであるNBQXおよびAP5が生理食塩水対照のどちらかを注入し、試験は順番についてカウンターバランスをとった。通過する線維の制御よりもむしろ局所的シナプス性機構を確認すると、同じマウスと光刺激パラメータについて、CeAでの局所的グルタミン酸受容体拮抗作用が高架式十字迷路法(
図5k)とオープンフィールドテスト(
図5j)の両方での不安感の光誘導性減少を消失させた。重要なことに、対照実験では、薬品処理によって自発運動活性は損なわれず(
図11)、そして、急速切片においてNBQXおよびAP5のバス適用を受けて時間的に同期した光誘起興奮性反応が消失した(
図12)。まとめると、これらのデータは、我々が観察した光誘導性抗不安効果はBLA−CeLシナプスの活性化が引き起こしたものであり、CeAを通過する遠位標的へのBLA投射に起因するものではないことを示している。
【0082】
最終シリーズの実験において、選択的にこの経路を抑制することにより内在性の不安感軽減プロセスが妨害され得るか判定するために、我々は、これらの光遺伝学的に限定されたシナプスが可逆的に不安感を増大させ得るか検討した。我々は、両方ともBLAでCaMKIIαプロモーターの下にある、コハク色の光での照明を受けてニューロンの膜を過分極する光活性化塩素ポンプであるeNpHR3.0
25、またはEYFPのみのどちらかの両側的ウイルス性形質導入を行い、そして、CeA中のBLA末端の選択的照明を可能にするために斜めに切ったガイドカニューレを両側的に埋め込んだ(
図6a;
図13)。eNpHR3.0の発現はBLA中のグルタミン酸作動性CaMKIIα陽性ニューロンに限定された(
図6b)。eNpHR3.0:BLA−CeAグループのみが、EYFP:BLA−CeA bilグループおよびeNpHR3.0:細胞体グループと比較して、CeMでのc‐fos発現レベルの著しい上昇(p<0.05;
図6c〜e)を示したが、これは、CeA中のBLA末端の選択的抑制がCeLニューロンからCeMニューロンへのフィードフォワード抑制を抑制し、そうしてCeM興奮性を増大させ、そして、下流のプロセスが不安感表現型を増大させることになることと一致する。重要なことに、BLA細胞体の抑制が不安惹起反応を誘導しなかったが、直接的BLA−CeM興奮性入力の同時的減少が原因のようである。我々はまた、eNpHR3.0:BLA−CeAグループは、EYFPグループおよび細胞体グループと比較して、高架式十字迷路法でライト・オフエポックではなくライト・オンエポック中に壁がないアームで過ごす時間および壁がないアームに入っていく確率の著しい減少を示したが(
図6f、g)、自発運動活性は変化しなかった(
図16)。eNpHR3.0:BLA−CeAグループはまた、EYFPグループおよび細胞体グループと比較して、594nmの光での照明を受けて中央にいる時間の著しい減少を示した(統計、p=0.002;
図6h、i)。最後に、我々はまた、eNpHR3.0発現軸索末端の選択的照明が、細胞体でのスパイキングを妨げることなく(
図14)、自発生起的シナプス小胞放出(
図6j〜l)および誘起的シナプス小胞放出(
図6m〜p)の確率を減少させ得ることを示す。CeA中のBLA末端の選択的抑制が不安感様行動の急性の増加を誘導することをこれらのデータは示す。
【0083】
結論:これらの実験において、我々は不安感の無条件付け発現を両方向に調節するための内在性の神経基質としてBLA−CeL経路を特定した。我々はCeLを通過するBLA線維よりもむしろBLA−CeL経路を重要な基質として特定しているが、BNSTへのCeA投射などの他の下流回路が不安感の発現または不安感関連行動に重要な役割を果たす可能性が有る
4、6、13。実際、我々の発見は、CeLがBNSTへのCRHの主要な放出源であるので
53、BNST中のコルチコトロフィン放出ホルモン(CRH)ネットワークが不安感関連行動の調節に決定的に関与し得る
6、52という考えを裏付け得る。
【0084】
セロトニン
54、55、ドーパミン
56、アセチルコリン
57、グリシン
58、GABA
13およびCRH
59を含む、他の神経伝達物質および神経調節物質が分散型神経回路への効果を調節またはゲート開閉することができる。BLA−CeLシナプスの並列回路または下流回路が不安感表現型の発現を調節するために役に立つようなので
6、56、この経路に合流し、そして、この経路から分出する神経回路網が多くの機会を調節的制御に提供する。さらに、扁桃体の上流では、BLAおよびCeLへの強固な神経支配をもたらす前辺縁皮質、下辺縁皮質および島皮質を含む、恐怖と不安感を処理するのに重要な領域からのトップダウン皮質制御によってリクルートされるのに、この微小回路は良い位置につけている
4、13、23、60。
【0085】
我々のBLA解剖学の検討により、CeLニューロンおよびCeMニューロンに投射するBLAニューロンの集団は大部分が重複していないことが示唆される。自然状態では、CeL投射BLAニューロンは微小回路ホメオスタシス機構においてCeM投射BLAニューロンを興奮させることができる。これはまた、回路のバランスを歪めて無抑制のCeM活性化を可能にするシナプスの変化が存在するとき、不安障害の基礎をなす潜在的な機構を表す可能性もある。
【0086】
まとめると、本明細書で提示されたデータは、哺乳類の脳での内在性の不安緩解の発現に必須であると共に充分である重要な回路要素としてのBLA−CeLシナプスの特定を裏付け、不安感への見識の新しい源ならびに新しい種類の治療標的を提供し、そして、精神疾患に関連する神経回路機能の研究において特定の投射の解明の重要性を示す。
【0087】
明確な理解を目的として、前述の発明が例証と例示をもって幾分詳細に説明されてきたが、説明と例示は本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0088】
本明細書において開示される全ての参考文献、刊行物および特許出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
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