(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インキ供給ローラに対向するようにインキツボが配置され、該インキツボ内のインキがインキ供給ローラに供給されるように構成されるとともに、インキツボ内のインキを撹拌するインキヘラを備え、該インキヘラがインキ供給ローラの軸線方向に沿って往復移動するように構成されたインキ撹拌装置であって、
インキ供給ローラの軸線方向に対して直交方向に平行に延びる前記インキヘラは、インキ供給ローラとは反対側の基部で前記直交方向の回動軸を中心に回動可能に支持されるとともに、インキヘラの移動時にインキの粘性抵抗によりインキヘラの移動方向の前端側が低く、後端側が高く傾動し、インキヘラの上面にインキが導かれるように構成されているインキ撹拌装置。
前記インキツボは底壁と両側壁とにより構成され、底壁はインキ供給ローラ側が低くなるように傾斜配置されるとともに、インキヘラはインキツボ内のインキ中の下半部においてインキツボの底壁に沿って配置され、かつインキヘラのインキ供給ローラ側の先部とインキツボの底壁との隙間がインキヘラのインキ供給ローラとは反対側の基部とインキツボの底壁との隙間より広くなるように設定されている請求項1に記載のインキ撹拌装置。
前記インキヘラは、そのインキ供給ローラ側の先部が薄くなるように上面及び下面にそれぞれ第1傾斜面及び第2傾斜面が設けられている請求項1又は請求項2に記載のインキ撹拌装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されている従来構成のインキ撹拌装置では、インキ撹拌棒の撹拌ヘラが四角板状に形成されるとともに、インキ撹拌棒がインキツボの底板に対して平行状態で搖動されるようになっている。このため、インキ撹拌棒の搖動時にインキが撹拌ヘラの上面に堆積されやすく、撹拌が不十分になる。
【0006】
加えて、インキ撹拌棒がインキ供給ローラから離れた部位を中心にして搖動されることから、インキ供給ローラから離れた部分におけるインキの流れは弱く、そこにインキが停滞しやすい。その結果、インキ供給ローラから離れた部分のインキがインキ供給ローラへ供給され難く、インキがインキ供給ローラから離れてしまういわゆるツボ上がり現象が生ずるおそれがある。特に、インキの粘性が高く、流動性が悪い場合には、その傾向が一層強くなる。
【0007】
そこで、この発明の目的とするところは、インキを効率良く撹拌でき、インキのツボ上がり現象を抑制することができるインキ撹拌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明のインキ撹拌装置は、インキ供給ローラに対向するようにインキツボが配置され、該インキツボ内のインキがインキ供給ローラに供給されるように構成されるとともに、インキツボ内のインキを撹拌するインキヘラを備え、該インキヘラがインキ供給ローラの軸線方向に沿って往復移動するように構成されたインキ撹拌装置であって、
インキ供給ローラの軸線方向に対して直交方向に平行に延びる前記インキヘラ
は、インキ供給ローラとは反対側の基部で前記直交方向の回動軸を中心に回動可能に支持されるとともに、インキヘラの移動時にインキの粘性抵抗によりインキヘラの移動方向の前端側が低く、後端側が高く傾動し、インキヘラの上面にインキが導かれるように構成されている。
【0009】
請求項2に記載の発明のインキ撹拌装置は、請求項1に係る発明において、前記インキツボは底壁と両側壁とにより構成され、底壁はインキ供給ローラ側が低くなるように傾斜配置されるとともに、インキヘラはインキツボ内のインキ中の下半部においてインキツボの底壁に沿って配置され、かつインキヘラのインキ供給ローラ側の先部とインキツボの底壁との隙間がインキヘラのインキ供給ローラとは反対側の基部とインキツボの底壁との隙間より広くなるように設定されている。
【0010】
請求項3に記載の発明のインキ撹拌装置は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記インキヘラは、そのインキ供給ローラ側の先部が薄くなるように上面及び下面にそれぞれ第1傾斜面及び第2傾斜面が設けられている。
【0011】
請求項4に記載の発明のインキ撹拌装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記インキヘラは、インキ供給ローラ側の先部が先端部ほど幅狭に形成されている。
【0012】
請求項5に記載の発明のインキ撹拌装置は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記インキヘラは、インキ供給ローラ側の先部の両側部が側端ほど低くなる斜面を有している。
【0013】
請求項6に記載の発明のインキ撹拌装置は、請求項5に係る発明において、前記斜面は、インキヘラの先部における第1斜面と、インキヘラの基部における第2斜面とで構成されるとともに、前記
インキヘラは、そのインキ供給ローラ側の先部が薄くなるように上面及び下面にそれぞれ第1傾斜面及び第2傾斜面が設けられ、それらの第1傾斜面及び第2傾斜面はそれぞれ先部においてはインキ供給ローラの軸線方向に対して平行方向に延びる線と直交方向に延びる線とで囲まれた平面矩形状面で構成され、基部においては基端側ほど幅狭に形成された平面三角形状面で構成されている。
【発明の効果】
【0014】
この発明のインキ撹拌装置によれば、インキを効率良く撹拌でき、インキのツボ上がり現象を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明を具体化したインキ撹拌装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)、(b)及び
図2に示すように、オフセット印刷機11の印刷機本体12に設けられた左右一対の支持体13にはインキ供給ローラ14の回転軸15が支持され、インキ供給ローラ14が
図2の矢印に示す反時計方向に回転可能に構成されている。インキ供給ローラ14の手前側の対向する位置には、底壁161及び左右両側壁162により形成されたインキツボ16が配置され、そのインキツボ16内にインキ17が貯溜されてインキ供給ローラ14にインキ17が連続的に供給される。前記インキツボ16の底壁161はインキ供給ローラ14側が低くなるように傾斜配置され、インキ17をインキ供給ローラ14に供給しやすくしている。インキツボ16内には、インキ供給ローラ14の軸線方向に対して直交方向に平行に延びる一対のインキヘラ18が一定間隔をおいて配置されている。
【0017】
図3及び
図4(a)、(b)に示すように、これら一対のインキヘラ18のインキ供給ローラ14とは反対側の基部181がそれぞれ連結部材19に片持ち支持されている。
図1及び
図2に示すように、この連結部材19がインキ供給ローラ14と平行に延びる円筒体20内に設けられたボールねじ機構21に連結され、図示しないモータの駆動力により、両インキヘラ18が一体となってインキ供給ローラ14の軸線方向に沿って往復移動可能に構成されている。前記円筒体20の両端部には図示しないリミットスイッチが設けられ、インキヘラ18の移動範囲が
図1(a)の二点鎖線に示す左端部と右端部との間の範囲に規制されている。
【0018】
図3及び
図4(a)に示すように、前記連結部材19の両端部には各々軸穴22が開口されるとともにインキヘラ18の基部181には軸支孔23が貫通形成され、回動軸24がインキヘラ18の軸支孔23を通って連結部材19の軸穴22に挿入され、抜け止めピン25で抜け止めされている。このため、
図6(b)の実線及び二点鎖線に示すように、インキヘラ18は回動軸24を中心にして反時計方向及び時計方向に回動可能になっている。そして、インキヘラ18は
図6(a)に示す水平状態から、
図8(a)、(b)に示すように、インキヘラ18がインキ供給ローラ14の軸線方向に移動するとき、インキヘラ18はインキ17の粘性抵抗により移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるように傾動し、インキ17を撹拌するようになっている。
【0019】
図5に示すように、前記インキヘラ18は、そのインキ供給ローラ14側の先部182が薄くなるように上面及び下面にそれぞれ第1傾斜面26及び第2傾斜面27が設けられ、インキ17をインキ供給ローラ14側へ誘導するように構成されている。
図4(a)に示すように、これら第1傾斜面26と第2傾斜面27との間のなす傾斜角度αは、8〜12°程度に設定される。
【0020】
図2に示すように、インキヘラ18がインキツボ16の底壁161の近傍で底壁161に沿って配置され、インキヘラ18の先部182とインキツボ16の底壁161との隙間d1が、インキヘラ18の基部181とインキツボ16の底壁161との隙間d2より広くなるように設定されている。そして、
図8(a)、(b)に示すように、インキヘラ18の先部182においてはインキヘラ18の下方にもインキ17を流動させてインキ17の撹拌効率を高めている。また、インキヘラ18の先部182は、インキツボ16内に貯溜されたインキ17内の下半部に位置するように配置されることが好ましい。インキヘラ18の配置をこのように設定することにより、インキヘラ18の移動時にインキヘラ18の移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるように傾動させることができる。
【0021】
図3及び
図5に示すように、前記インキヘラ18の先部182には、先端部ほど幅狭に形成されたテーパ部28が設けられ、そのテーパ部28でインキ17の流動抵抗を低減するとともに、インキ17をインキ供給ローラ14へ導くように構成されている。また、インキヘラ18の先部182の両側部には側端ほど低くなる第1斜面29が形成され、インキヘラ18の移動時にインキヘラ18の移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるようにインキヘラ18を傾動させるとともに、インキ17をインキヘラ18の上面に導き、インキ供給ローラ14へ供給しやすくしている。インキヘラ18の基部181の両側部には側端ほど低くなる第2斜面30が形成され、インキヘラ18の移動時にインキヘラ18の移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるように傾動させるとともに、インキ17をインキヘラ18の上面に導くようになっている。
【0022】
前記第1傾斜面26及び第2傾斜面27は、それぞれ先部182においてはインキ供給ローラ14の軸線方向に対して平行方向に延びる線と直交方向に延びる線とで囲まれた平面矩形状面31で構成され、基部181においては基端側ほど幅狭に形成された平面三角形状面32で構成されている。この構成により、インキヘラ18の移動時にインキ17を前記第2斜面30から平面三角形状面32を経て平面矩形状面31へ導き、インキ供給ローラ14に供給できるようになっている。
図4(b)に示すように、インキヘラ18の基部181は断面略菱形状に形成されている。
【0023】
図1(a)及び
図2に示すように、前記円筒体20の両端部にはそれぞれ側板33の先端部が取付けられるとともに、その側板33の基端部が印刷機本体12の回転支軸34に取付けられ、
図2の実線の位置から二点鎖線の位置まで約120°の範囲で回転可能に構成されている。
図2の二点鎖線の位置に回転させた状態では、円筒体20とともにインキヘラ18も回転することから、インキツボ16の上方が開放され、インキツボ16内にインキ17を投入しやすくなっている。
【0024】
次に、前記のように構成された印刷機のインキ撹拌装置について作用を説明する。
さて、インキツボ16内のインキ17を撹拌する場合には、
図8(a)及び
図9(a)の二点鎖線の矢印に示すように、インキヘラ18が図中の左方向へ移動するときには、インキ17の粘性抵抗に基づいてインキヘラ18はその移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるように傾動する。このため、インキ17の多くがインキヘラ18の上面側へ流れ、インキ17は大きく波打ち、撹拌される。
【0025】
同様に、
図8(b)及び
図9(b)の二点鎖線の矢印に示すように、インキヘラ18が図中の右方向へ移動するときにも、インキ17の粘性抵抗によりインキヘラ18はその移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるように傾動する。そのため、インキ17の多くがインキヘラ18の上面側へ流れ、インキ17は波打って撹拌される。
【0026】
このとき、
図7(a)、(b)に示すように、インキヘラ18の上面において、インキヘラ18の先部182には第1斜面29及び第1傾斜面26の平面矩形状面31が設けられている。このため、インキ17はその一部が
図7(a)、(b)の二点鎖線の矢印に示すように、第1斜面29に案内されてインキ供給ローラ14側に向い、さらに平面矩形状面31に沿ってインキ供給ローラ14へ誘導される。
【0027】
加えて、インキヘラ18の基部181には第2斜面30及び第1傾斜面26の平面三角形状面32が設けられている。そのため、インキ17は
図7(a)、(b)の二点鎖線の矢印に示すように、第2斜面30に案内されてインキ供給ローラ14側へ向って流れ、さらにその一部が平面三角形状面32に案内されて平面矩形状面31へ向い、平面矩形状面31を経てインキ供給ローラ14に供給される。
【0028】
従って、インキツボ16内のインキ17は撹拌されながらインキ供給ローラ14側へ誘導され、インキ供給ローラ14へ円滑に供給される。
ここで、紫外線硬化型インキ(UVインキ)を使用し、前記インキ撹拌装置を使用する前のUVインキと、インキ撹拌装置を20分間使用した後のUVインキについて、常法に従い、粘度(mPa・s)を測定して粘性特性を評価するとともに、指度(%)を測定して流動特性を評価した。使用前のUVインキの粘性特性を
図10(a)、流動特性を
図10(b)に示した。また、使用後のUVインキの粘性特性を
図11(a)、流動特性を
図11(b)に示した。
【0029】
その結果、インキ撹拌装置を使用することにより、使用前に比べてUVインキの粘性特性及び流動特性を十分に改善することができ、UVインキの粘性を低く、流動性を高めることができた。
【0030】
よって、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)この実施形態のインキ撹拌装置では、インキヘラ18はインキ供給ローラ14の軸線方向に対して直交配置され、その基部181で回動軸24を中心に回動可能に支持されている。そして、インキヘラ18の移動時にその移動方向の前端側が低く、後端側が高く傾動し、インキヘラ18の上面にインキ17が導かれるように構成されている。
【0031】
このため、インキ17がインキヘラ18により持ち上げられるようにして強く撹拌され、インキ供給ローラ14から離れた部分のインキ17がインキヘラ18の上面でインキ供給ローラ14側へ誘導され、インキ17は連続的にインキ供給ローラ14に供給される。従って、インキ17の粘性が高く、流動性が悪い場合でも、インキ17の撹拌を良好にでき、インキ17の粘性を低下させてインキ供給ローラ14へ誘導することができる。
【0032】
よって、この実施形態のインキ撹拌装置によれば、インキ17を効率良く撹拌でき、インキ17のツボ上がり現象を抑制することができる。
(2)前記インキツボ16は底壁161と両側壁162とにより構成され、底壁161はインキ供給ローラ14側が低くなるように傾斜配置されるとともに、インキヘラ18はインキツボ16内のインキ17中の下半部においてインキツボ16の底壁161に沿って配置される。しかも、インキヘラ18の先部182とインキツボ16の底壁161との隙間d1がインキヘラ18の基部181とインキツボ16の底壁161との隙間d2より広くなるように設定されている。
【0033】
このため、インキヘラ18の移動時にインキヘラ18の移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるようにインキヘラ18を傾動させてインキ17をインキヘラ18の上面に導くとともに、インキヘラ18の先部182ではインキ17をインキヘラ18の下方へも誘導できてインキ17の撹拌効率を高めることができる。
【0034】
(3)前記インキヘラ18は、その先部182が薄くなるように上面及び下面にそれぞれ第1傾斜面26及び第2傾斜面27が設けられている。そのため、インキヘラ18の移動に伴ってインキ17をインキヘラ18の上面へ導きやすくできるとともに、インキヘラ18の上面に到ったインキ17を第1傾斜面26でインキ供給ローラ14側へ案内することができる。
【0035】
(4)前記インキヘラ18は、その先部182が先端部ほど幅狭に形成されている。従って、インキ17に対するインキヘラ18の先部182の移動抵抗を抑制できるとともに、インキ供給ローラ14側へのインキ17の誘導に寄与することができる。
【0036】
(5)前記インキヘラ18は、その先部182の両側部が側端ほど低くなる斜面を有している。このため、インキヘラ18の移動時にインキヘラ18の移動方向の前端側が低く、後端側が高くなるように容易に傾動させることができ、インキ17をインキヘラ18の上面に案内することができる。
【0037】
(6)前記斜面は、インキヘラ18の先部182における第1斜面29と、インキヘラ18の基部181における第2斜面30とで構成されている。その上、第1傾斜面26は先部182においては平面矩形状面31で構成され、基部181においては平面三角形状面32で構成されている。
【0038】
そのため、インキヘラ18の移動時には、インキヘラ18の先部182ではインキ17を第1斜面29から平面矩形状面31に案内してインキ供給ローラ14へ供給できる。一方、インキヘラ18の基部181ではインキ17を第2斜面30から平面三角形状面32へ案内でき、さらにその平面三角形状面32から平面矩形状面31を経てインキ供給ローラ14に供給できる。従って、インキツボ16内のインキ17を全体的に良好に撹拌できるとともに、インキ供給ローラ14へ効率良く導くことができる。
【0039】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記
インキヘラ18を1つのみで構成してもよい。その場合、インキヘラ18の幅を広くしたり、第1傾斜面26及び第2傾斜面27の傾斜角度αを変更したり、第1斜面29又は第2斜面30の傾斜角度を変更したりしてもよい。或いは、インキヘラ18を3つ以上使用し、それらのインキヘラ18を連結部材19で連結して使用してもよい。
【0040】
・前記インキヘラ18の上面と下面における第1傾斜面26、第2傾斜面27、第1斜面29、第2斜面30等が各々非対称になるように構成してもよい。
・前記インキヘラ18の平面矩形状面31と第1斜面29との境界線、平面三角形状面32と第2斜面30との境界線等を面取りして曲面で構成してもよい。