(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1種のモノマー(Az)に由来する繰り返し単位、ならびに場合によって、モノマー(Az)と異なる少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[モノマー(F)]に由来する繰り返し単位および/またはエチレン性不飽和非フッ素化モノマー[モノマー(H)]に由来する繰り返し単位を含む、フルオロポリマー[ポリマー(F)]。
前記ポリマー(F)が、少なくとも1種のモノマー(Az)に由来する繰り返し単位、およびフッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を含む、請求項5に記載のポリマー(F)。
前記ポリマー(F)が、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、およびトリフルオロエチレン(TrFE)に由来する10〜50モル%の繰り返し単位を含む、請求項5に記載のポリマー(F)。
請求項5〜7のいずれか一項に記載のポリマー(F)、および前記ポリマー(F)に対して0.5重量%〜10重量%の量の少なくとも1種の硬化剤を含む、架橋性組成物[組成物(CC)]。
請求項5〜7のいずれか一項に記載のポリマー(F)を使用するステップを含む、電気および電子機器の一つを製造する方法であって、前記ポリマー(F)および/または請求項9または10に記載の組成物(CC)を加工するステップ、ならびにそれを架橋させるステップを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願人は今や、フルオロポリマーにおける組込みの改善された反応性を有し、改善された分子量のフルオロポリマーを与えることができ、かつ低いモノマー濃度でさえも、架橋されるのが容易であるスルホニルアジド含有モノマーの新規なクラスを見出した。
【0013】
したがって、本発明は、式:
CF
2=CF−CF
2−O−R
f−SO
2N
3 式(I)
(式中、R
fは、1個または2個以上のエーテル性酸素原子を場合によって含む、二価の(パー)フッ素化基である)
のスルホニルアジドアリル型モノマー[モノマー(Az)]に関する。
【0014】
これらのモノマー(Az)は、ラジカル重合条件下で追加のモノマーと容易に反応し、その結果、高分子量を有し、および卓越した硬化挙動を有するポリマーを与えることがわかった。
【0015】
基R
fは、好ましくは式CF
2−R
f’−(−CF
2−基は、式(I)に示されたエーテル性酸素に結合しており、R
f’基は、式(Ia):
CF
2=CF−CF
2−O−CF
2−R
f’−SO
2N
3 式(Ia)
(式中、R
f’は、場合によって1個または2個以上のエーテル性酸素原子を含む、二価C
1〜C
12(パー)フッ素化基である)
に示されるとおりに、スルホンアジド基に結合している。
【0016】
最も好ましくは、モノマー(Az)は、以下の式(Ib):
CF
2=CF−CF
2−O−CF
2−CF
2−SO
2N
3 式(Ib)
に従う。
【0017】
本発明はさらに、前記モノマー(Az)の製造方法に関する。
【0018】
モノマー(Az)は、式(II):
CF
2=CF−CF
2−O−R
f−SO
2F 式(II)
(式中、R
fは、場合によって1個または2個以上のエーテル性酸素原子を含む、二価(パー)フッ素化基である)
のフルオロスルホン酸前駆体とアジド塩[塩(Az)]との反応によって調製され得る。
【0019】
塩(Az)は、好ましくはアルカリ金属アジド、アルカリ土類金属アジド、および式N(R
H)
4N
3(式中、R
Hのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、かつ出現するごとに、水素、または可能な場合、分岐もしくは環状であり得る、場合によって置換されたC
1〜C
20アルキル基である)のアンモニウムアジドからなる群から選択される。
【0020】
フルオロスルホン酸誘導体と塩(Az)との反応は、一般に0〜60℃、好ましくは10〜50℃、最も好ましくは約15〜約40℃の温度で行われる。
【0021】
典型的には、この反応は、溶媒の存在下で行われる。溶媒の選択は、特に重要ではなく;極性プロトン性または非プロトン性溶媒を用いることができ;さらに、水性媒体を同等に用いることができる。
【0022】
水性媒体が用いられる場合、上に詳述されたとおりの塩(Az)は、水相に可溶性であるが、上に詳述されたとおりの前駆体(II)は、一般に分離された有機相に存在することが、一般に理解される。したがって、水性媒体が用いられる場合、相間移動触媒が一般に反応混合物に添加される。
【0023】
相間移動触媒の選択は、特に重要ではなく;長鎖四級アンモニウム塩を用いることができる。特に有用であることがわかった相間移動触媒は、Aliquatの名称下で商品化されているCH
3−N−[(CH
2)
7CH
3]
3+Cl−である。
【0024】
式(Ia)の好ましい化合物(Az)を得るために、式(IIa):
CF
2=CF−CF
2−O−CF
2−R
f’−SO
2F 式(IIa)
(式中、R
f’は、場合によって1個または2個以上のエーテル性酸素原子を含む、二価C
1〜C
12(パー)フッ素化基である)
のスルホン酸前駆体を、上に詳述されたとおりにアジド塩[塩(Az)]と反応させる。
【0025】
式(IIa)の化合物は、とりわけ、以下のスキーム:
で略図化されるとおりに、フルオロアルキルフルオロスルフェートを式FO
2S−R
f’−COFのフルオロアシル化合物と、フッ素化物塩[塩(F)]の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0026】
この反応性は、とりわけWLASSICS,I.,et al.Perfluoro Allyl Sulfate(FAFS):a Versatile Building Block For New Fluoroallylic Compounds.Molecules,2011,vol.16,p.6512_6540に記載されている。
【0027】
フルオロアリルフルオロスルフェート(FAFS)は、容易に入手できるフッ素化中間体であり、これは、とりわけ、米国特許第4235804号明細書(E.I. DUPONT DE NEMOURS)1980年11月25日およびKRESPAN,G.,et al.Perfluoroallylfluorosulfate,a reactive new perfluoroallylating agent.J.Am.Chem.Soc.,1981,vol.103,p.5598−5599に開示されたとおりに、ホウ素系触媒の存在下でヘキサフルオロプロピレンを三酸化硫黄で処理することによって高収率で調製され得る。
【0028】
したがって、式(Ia)の化合物を製造する方法は、有利には上に詳述されたとおりに、式(IIa)の化合物を生成させるために、式F−SO
2−O−CF
2−CF=CF
2(FAFS)のフルオロアリルフルオロスルフェートを塩(F)と反応させ、次いで、上に詳述されたとおりに、前記化合物(IIa)を塩(Az)と反応させるステップを含む。
【0029】
塩(F)は、
− 式MF(式中、Mは、アルカリ金属、Ag、およびN(R’
H)
4(ここで、R’
Hのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、かつ出現するごとに、水素、または可能である場合、直鎖、分岐もしくは環状であり得る、場合によって置換されたC
1〜C
20アルキル基である)からなる群から選択される)のフッ化物;および
− 式M’F
2(式中、M’は、アルカリ土類金属である)のフッ化物
からなる群から選択される。
【0030】
好ましい塩(F)は、CsF、KF、RbF、LiF、NaF、CaF
2、BaF
2、MgF
2、SrF
2、AgFである。最も好ましい塩(F)は、CsFおよびKFである。
【0031】
さらに、本発明は、上に定義されたとおりに、少なくとも1種のモノマー(Az)に由来する繰り返し単位、および場合によって、モノマー(Az)とは異なる少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[モノマー(F)]に由来する繰り返し単位、ならびに/またはエチレン性不飽和非フッ素化モノマー[モノマー(H)]に由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマー[ポリマー(F)]に関する。
【0032】
ポリマー(F)は、典型的にはモノマー(Az)に由来する繰り返し単位を、ポリマー(F)の繰り返し単位の全モルに対して少なくとも0.01モル%、好ましくは少なくとも0.05モル%、より好ましくは少なくとも0.1モル%の量で含む。
【0033】
モノマー(Az)が、上に詳述されたとおりに、0.01モル%未満の量でポリマー(F)中に存在する場合、架橋反応性は、より遅いことがあり得ることが一般に理解される。
【0034】
モノマー(Az)の上側量は、良好な硬化挙動を有する硬化性ポリマー(F)を得る目的に対して、特に限定されないが、モノマー(Az)に由来する繰り返し単位の量を、ポリマー(F)の繰り返し単位の全モルに対して、20モル%未満、好ましくは10モル%未満に限定することが一般に好ましい。
【0035】
「フッ素化モノマー」という表現は、その通常の意味に従って、すなわち、少なくとも1個のフッ素原子を含むモノマーを指定するために、本明細書で使用される。
【0036】
同様に、「非フッ素化モノマー」という表現は、その通常の意味に従って、すなわち、フッ素原子(複数可)を含まないモノマーを指定するために、本明細書で使用される。
【0037】
本発明のコポリマー中で用いることができるモノマー(H)には、エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソ−ブチレン、酢酸ビニル(VAc)、およびビニルエーテル(メチルビニルエーテルなど)が含まれる。
【0038】
本発明のポリマー(F)は、ガラス状、熱可塑性またはエラストマー性であってもよい。それらは、非晶質または部分結晶性、溶融加工可能(melt−fabricable)または非溶融加工可能(non−melt−fabricable)であってもよい。当業者は、このようなポリマー特性が、コポリマー中で用いられるモノマーの種類およびそれらの相対レベルによって制御されることを容易に認識する。
【0039】
一般に、ポリマー(F)は、上に詳述されたとおりの、少なくとも1種のモノマー(Az)に由来する繰り返し単位、および少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(F)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0040】
モノマー(F)は、一般に、
− C
2〜C
8パーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロペン;
− C
2〜C
8水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレン;
− 式CH
2=CH−R
f0(式中、R
f0は、C
1〜C
6パーフルオロアルキルである)に従うパーフルオロアルキルエチレン;
− クロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C
2〜C
6フルオロオレフィン(例えば、クロロトリフルオロエチレン);
− 式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1〜C
6フルオロ−またはパーフルオロアルキル、例えば、CF
3、C
2F
5、C
3F
7である)に従う(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
− CF
2=CFOX
0(パー)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル(式中、X
0は、C
1〜C
12アルキル、もしくはC
1〜C
12オキシアルキル、または1個または複数個のエーテル基を有するC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルである);
− 式CF
2=CFOCF
2OR
f2(式中、R
f2は、C
1〜C
6フルオロ−もしくはパーフルオロアルキル(例えば、CF
3、C
2F
5、C
3F
7)、または1個または複数個のエーテル基を有するC
1〜C
6(パー)フルオロオキシアルキル(例えば、−C
2F
5−O−CF
3)である)に従う(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
− 式CF
2=CFOY
0(式中、Y
0は、C
1〜C
12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル、またはC
1〜C
12オキシアルキル、もしくは1個または複数個のエーテル基を有するC
1〜C
12(パー)フルオロオキシアルキルであり、かつY
0は、カルボン酸基またはスルホン酸基をその酸、酸ハロゲン化物または塩形態で含む)に従う官能性(パー)フルオロ−オキシビニルエーテル;
− 式(I):
(式中、R
f3、R
f4、R
f5、F
r6のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立してフッ素原子、1個または複数個の酸素原子を場合によって含む、C
1〜C
6フルオロ−またはパー(ハロ)フルオロアルキル、例えば、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−OCF
3、−OCF
2CF
2OCF
3である)のフルオロジオキソール
からなる群から選択される。
【0041】
ポリマー(F)は、上に詳述されたとおりに、1種または2種以上のモノマー(F)に由来する繰り返し単位を含み得る。
【0042】
好ましい実施形態によれば、ポリマー(F)は、上に詳述されたとおりの、少なくとも1種のモノマー(Az)に由来する繰り返し単位、およびフッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位を含む。
【0043】
この実施形態によるポリマー(F)は、ポリマー(VDF)と以下で指定される。
【0044】
ポリマー(VDF)は、一般にポリマー(VDF)の繰り返し単位の全モルに対して、VDFに由来する少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも20モル%、より好ましくは少なくとも40モル%の繰り返し単位を含む。
【0045】
ポリマー(VDF)は、一般にポリマー(VDF)の繰り返し単位の全モルに対して、VDFに由来する最大で90モル%、好ましくは最大で80モル%、より好ましくは最大で60モル%の繰り返し単位を含む。
【0046】
好ましくは、この好ましい実施形態によるポリマー(VDF)は、上に詳述されたとおりの、少なくとも1種のモノマー(Az)、およびフッ化ビニリデン(VDF)およびトリフルオロエチレン(TrFE)に由来する繰り返し単位を含む。
【0047】
本出願人は、この実施形態のVDF−TrFEポリマー中のモノマー(Az)の組込みが、卓越した硬化性能とともに高分子量材料をもたらす上述の利点を与えるのみならず、VDF−TrFEコポリマーに典型的な適切な圧電−、強誘電−、集電−電気挙動の維持を可能にすることも見出した。
【0048】
前記好ましいポリマー(VDF)は、一般にTrFEに由来する10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%の繰り返し単位を含む。
【0049】
本発明の好ましいポリマー(VDF)は、VDFおよびTrFE以外の1種または2種以上のモノマー(F)、例えば、とりわけ、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンに由来する繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0050】
それにもかかわらず、モノマー(Az)、VDFおよびTrFEに由来する繰り返し単位から本質的になるポリマー(VDF)が、一般に好ましい。
【0051】
このような最も好ましいポリマー(VDF)は、典型的には、ポリマー(VDF)の繰り返し単位の全モルに対して、
− 上に詳述されたとおりの、モノマー(Az)に由来する0.01モル%〜10モル%、好ましくは0.05モル%〜10モル%の繰り返し単位;
− TrFEに由来する10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%の繰り返し単位;および
− VDFに由来する50〜90モル%、好ましくは60〜85モル%の繰り返し単位
から本質的になる。
【0052】
本発明の別の態様は、上に詳述されたとおりの、「ポリマー(F)」の製造方法に関する。
【0053】
ポリマー(F)は、標準的な技術によって製造され得る。
【0054】
ポリマー(F)を製造する方法は、一般に、上に詳述されたとおりの少なくとも1種のモノマー(Az)、ならびに場合によって、モノマー(Az)とは異なる少なくとも1種のエチレン性不飽和フッ素化モノマー[モノマー(F)]、および/または少なくとも1種のエチレン性不飽和非フッ素化モノマー[モノマー(H)]を、ラジカル開始剤の存在下で重合させるステップを含む。
【0055】
前記方法は、10〜150℃、好ましくは20℃〜120℃の温度で行われてもよい。
【0056】
圧力は、典型的には2〜100バール、特に5〜50バールである。
【0057】
当技術分野で同様に周知であるように、分散法、エマルション法、溶液法または懸濁法が用いられてもよく、これらの方法は、連続、バッチまたは半バッチベースで行われてもよい。
【0058】
この方法は、好ましくは水性媒体または溶媒中で行われる。
【0060】
水性重合媒体の場合、重合は、エマルションまたは懸濁で行うことができるが、水性エマルション重合が好ましい。
【0061】
水性エマルション重合法は、一般に適切な乳化剤の存在を必要とし、これは、フッ素化または非フッ素化界面活性剤、好ましくはフッ素化界面活性剤[界面活性剤(FS)]から選択され得る。
【0062】
界面活性剤(FS)は、有利には式:
R
f§(X
−)
j(M
+)
j
(式中、R
f§は、C
5〜C
16(パー)フルオロアルキル鎖、または1個または複数個の酸素原子で割り込まれた(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキル鎖であり、X
−は、−COO
−、−PO
3−または−SO
3−であり、M
+は、H
+、NH
4+、アルカリ金属イオンから選択され、jは、1または2であり得る)
に従う。
【0063】
重合媒体のpHは、pH2〜11、好ましくは3〜10、最も好ましくは4〜10の範囲であってもよい。
【0064】
有機ラジカル開始剤を用いることができ、それらには、限定されるものではないが、以下、すなわち、アセチルシクロヘキサンスルホニルパーオキシド;ジアセチルパーオキシジカーボネート;ジアルキルパーオキシジカーボネート、例えば、ジエチルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート;tert−ブチルパーネオデカノエート;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4ジメチルバレロニトリル;tert−ブチルパーピバレート;ジオクタノイルパーオキシド;ジラウロイル−パーオキシド;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);tert−ブチルアゾ−2−シアノブタン;ジベンゾイルパーオキシド;tert−ブチル−パー−2エチルヘキサノエート;tert−ブチルパーマレエート;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート;tert−ブチルパーアセテート;2,2’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン;ジクミルパーオキシド;ジ−tert−アミルパーオキシド;ジ−tert−ブチルパーオキシド;p−メタンヒドロパーオキシド;ピナンヒドロパーオキシド;クメンヒドロパーオキシド;およびtert−ブチルヒドロパーオキシドが含まれる。他の好適な開始剤には、ハロゲン化フリーラジカル開始剤、例えば、クロロカーボンベースおよびフルオロカーボンベースのアシルパーオキシド、例えば、トリクロロアセチルパーオキシド、ビス(パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニル)パーオキシド、[CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO]
2、パーフルオロプロピオニルパーオキシド、(CF
3CF
2CF
2COO)
2、(CF
3CF
2COO)
2、{(CF
3CF
2CF
2)−[CF(CF
3)CF
2O]
m−CF(CF
3)−COO}
2(ここで、m=0〜8である)、[ClCF
2(CF
2)
nCOO]
2、および[HCF
2(CF
2)
nCOO]
2(ここで、n=0〜8である);パーフルオロアルキルアゾ化合物、例えば、パーフルオロアゾイソプロパン、[(CF
3)
2CFN=]
2、R
○N=NR
○(ここで、R
○は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐のパーフルオロカーボン基である);安定またはヒンダードパーフルオロアルカンラジカル、例えば、ヘキサフルオロプロピレントリマーラジカル、[(CF
3)
2CF]
2(CF
2CF
2)C
●ラジカルならびにパーフルオロアルカンが含まれる。
【0065】
レドックス対を形成する少なくとも2種の成分を含むレドックス系、例えば、ジメチルアニリン−ベンゾイルパーオキシド、ジエチルアニリン−ベンゾイルパーオキシドおよびジフェニルアミン−ベンゾイルパーオキシドも、重合を開始させるために用いられ得る。
【0066】
また、無機ラジカル開始剤を用いることができ、それらには、限定されるものではないが、以下、すなわち、加硫酸ナトリウム、加硫酸カリウムまたは加硫酸アンモニウムなどの加硫酸塩、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩が含まれる。
【0067】
上に定義されたとおりの有機ラジカル開始剤が、好ましい。それらのうちで、50℃よりも高い自己加速分解温度(SADT)を有する過酸化物、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド(DTBP)、ジテルブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、テルブチル(2−エチル−ヘキシル)パーオキシカーボネート、テルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートなどが特に好ましい。
【0068】
ラジカル開始剤は、有利には重合媒体の0.001〜20重量パーセントの範囲の濃度で含まれる。
【0069】
重合は、連鎖移動剤の存在下で行うことができる。
【0070】
必要に応じて、連鎖移動剤を用いることができ;この連鎖移動剤は、フッ素化モノマーの重合で知られたもの、例えば、ケトン、エステル、エーテルまたは3〜10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチル−ter−ブチルエーテル、イソプロピルアルコールなど;1〜6個の炭素原子を有し、場合によって水素を含むクロロ(フルオロ)カーボン、例えば、クロロホルム、トリクロロフルオロメタン;ビス(アルキル)カーボネート(ここで、アルキルは、1〜5個の炭素原子を有する)、例えば、ビス(エチル)カーボネート、ビス(イソブチル)カーボネートから選択される。連鎖移動剤は、開始時に、重合中に連続的にまたは個別的な量で(段階的に)重合媒体に供給され得るが、連続的または段階的供給が好ましい。
【0071】
反応器から生じるポリマー(F)は、ポリマーが架橋を引き起こすほど十分に加熱されないことに注意して、任意の公知の技術によって単離および乾燥されてもよい。代替として、反応器から出現する水性分散液は、そのまま直接、例えば、コーティング組成物として使用されてもよいか、またはそれは、ラテックスコーティング組成物の調製のために、最初に界面活性剤の添加によって安定化され、および/または当技術分野で周知の方法によって濃縮されてもよい。
【0072】
本発明のポリマー(F)は、他の成分と混合されてもよく、本発明の別の目的である、得られた架橋性組成物[組成物(CC)]が、架橋下に置かれて、硬化物品を生成することができる。
【0073】
上に詳述されたとおりのポリマー(F)を含む架橋性組成物は、一般に少なくとも1種の硬化剤を含む。ポリマー(F)は自己架橋を行ってもよく、すなわち、いずれの追加の助剤の非存在下でも硬化され得るが、一般には硬化剤を用いることが好ましい。
【0074】
硬化剤は、本発明の架橋工程においてポリマー(F)と組み合わせて用いられる場合、一般にポリマー(F)に対して0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜7重量%の量で用いられる。
【0075】
これらの硬化剤のうちで、以下が一般に用いられる:
−2つ以上のエチレン性不飽和アリル型二重結合を含むポリアリル誘導体(トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N−ジアリルアクリルアミド;N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミドを含む);
−2つ以上のエチレン性不飽和ビニル型二重結合を含むポリビニル誘導体(トリビニルイソシアヌレート;2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサンを含む);
−一般式:
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、互いに等しいかまたは異なり、HまたはC
1〜C
5アルキルであり;Zは、式−(O)
e1−E−(O)
e2−(式中、e1およびe2は、互いに等しいかまたは異なり、独立して1または0であり、Eは、酸素原子を場合によって有し、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、とりわけ、例えば、欧州特許出願公開第661304A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年7月5日に記載されたとおりの(パー)フルオロポリオキシアルキレン基のような二価C
1〜C
18基である)を有するビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)];
−エチレン性不飽和基で置換されたトリアジン(例えば、とりわけ、欧州特許出願公開第860436A号明細書(AUSIMONT SPA)1998年8月26日および国際公開第97/05122号パンフレット(DU PONT)1997年2月13日に記載されたもの);
−2個以上のアジド基を含むポリアジド化合物(とりわけ、式:
{N
3−[S(O)
qd]
sd}
j−J
d−{[S(O)
qd’]
sd’−N’
3}
j’
(式中、jおよびj’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、0または1〜3の整数であり、但し、j+j’は、少なくとも2であることを条件とし、sdおよびsd’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して0または1であり、qdおよびqd’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して1または2であり、J
dは、酸素原子を場合によって有し、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、(ヒドロ)(フルオロ)カーボン基である)
のジアジド[剤(Cz)]を含む)。
【0076】
ビス−オレフィン(OF)は、好ましくは式(OF−1)、式(OF−2)および式(OF−3):
(OF−1)
(式中、jは、2〜10、好ましくは4〜8の整数であり、R1、R2、R3、R4は、互いに等しいかまたは異なり、H、FまたはC
1〜5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である);
(OF−2)
[式中、Aのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、出現するごとに、F、Cl、およびHから独立して選択され;Bのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、出現するごとに、F、Cl、HおよびOR
B(ここで、R
Bは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ素化または塩素化され得る分岐または直鎖アルキル基である)から独立して選択され;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、場合によってフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくはEは、−(CF
2)
m−基(mは、3〜5の整数である)である];(OF−2)タイプの好ましいビス−オレフィンは、F
2C=CF−O−(CF
2)
5−O−CF=CF
2である。
(OF−3)
(式中、E、AおよびBは、上に定義されたのと同じ意味を有し;R5、R6、R7は、互いに等しいかまたは異なり、H、FまたはC
1〜5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である)
に従うものからなる群から選択される。
【0077】
剤(Cz)は、好ましくは式:
{N
3[S(O)
g1]
s1}
na−(R
H)
nh−R
f−(R’
H)
nh’−{[S(O)
g2]
S2N
3}
na’ 式(A)
(式中、g1およびg2のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、1または2であり、s1およびs2のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、0または1であり、naおよびna’のそれぞれは、独立してゼロか、または1〜3の整数であり、但し、na+na’の合計は少なくとも2であり、R
HおよびR’
Hのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、フッ素原子を含まないC
1〜C
12炭化水素基であり、nhおよびnh’は、互いに等しいかまたは異なり、独立して0または1であり、R
fは、i)1個以上のエーテル性酸素原子を恐らくは含む、C
3〜C
20フルオロカーボン基、ii)フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合単位を含むオリゴマーからなる群から選択される)
のフッ素化ポリアジドである。
【0078】
第1の実施形態によれば、剤(Cz)は、有利には以下の式(B):
N
3−(CH
2)
m−R
Bf−(CH
2)
m’−N
3 式(B)
(式中、mおよびm’のそれぞれは、独立して1〜6の整数であり、R
Bfは、1個以上のエーテル性酸素原子を恐らくは含む、C
3〜C
10フルオロカーボン基である)
に従う。
【0079】
この第1の実施形態の剤(Cz)は好ましくは、以下の式(C):
N
3−(CH
2)
m−(CF
2)
nc−(CH
2)
m’N
3 式(C)
(式中、mおよびm’のそれぞれは、独立して1〜6の整数、好ましくはmおよびm’=2であり、ncは、4〜10、好ましくは4〜8の整数である)
に従う。
【0080】
この変形による剤(Cz)の非限定的な例は、とりわけ、式:N
3−(CH
2)
2−(CF
2)
2−(CH
2)
2−N
3、N
3−(CH
2)
2−(CF
2)
4−(CH
2)
2−N
3、N
3−(CH
2)
2−(CF
2)
6−(CH
2)
2−N
3、N
3−(CH
2)
2−(CF
2)
8−(CH
2)
2−N
3、N
3−(CH
2)
2−(CF
2)
10−(CH
2)
2−N
3のものである。
【0081】
式(C)の化合物は、ヨウ素の存在下でのテトラフルオロエチレンの単鎖重合、続いて、C−I結合へのエチレンの付加/組込み、その後のアジド塩、好ましくはNaN
3によるヨウ素の求核置換によって製造され得る。
【0082】
第2の実施形態によれば、剤(Cz)は、有利には以下の式(D):
N
3[S(O)
g1]−R
Df−[(S(O)
g2]−N
3 式(D)
(式中、g1およびg2のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、1または2であり、R
Dfは、1個以上のエーテル性酸素原子を恐らくは含む、C
3〜C
20フルオロアルキルである)
に従う。
【0083】
好ましくは、この第2の実施形態の剤(Cz)は、以下の式(E):
N
3−SO
2−R
Ef−SO
2−N
3 式(D)
(式中、R
Efは、1個以上のエーテル性酸素原子を恐らくは含む、C
3〜C
20フルオロアルキル基である)
に従う。
【0084】
この変形による剤(Cz)の非限定的な例は、とりわけ式:N
3SO
2−C
4F
8−SO
2N
3、N
3SO
2−(CF
2)
2−O−C
4F
8−O−(CF
2)
2−SO
2N
3、N
3SO
2−(CF
2)
2−O−CF(CF
3)CF
2O−C
4F
8−O−CF
2−CF(CF
3)O−(CF
2)
2−SO
2N
3、N
3SO
2−(CF
2)
2−O−CF
2CF(CF
3)O−C
4F
8−O−CF
2−CF(CF
3)O−(CF
2)
2−SO
2N
3、N
3SO
2−(CF
2)
2−O−CF
2CF(CF
3)O−C
4F
8−O−CF(CF
3)−CF
2O−(CF
2)
2−SO
2N
3のものである。上記のそれぞれにおける式−O−C
4F
8−O−の基は、−O−(CF
2CF
2)
2−O−、−O−CF
2CF
2−CF(CF
3)−O−、−O−CF(CF
3)−CF(CF
3)−O−のいずれであることもできる。
【0085】
式(E)の化合物は、例えば、式CF
2=CF−SO
2F、CF
2=CF−O−CF
2CF
2SO
2F、CF
2=CF−O−CF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2SO
2F、CF
2=CF−O−CF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2SO
2Fのスルホニルモノマーのフッ素補助二量化、続いて、アジド塩との反応によるフルオロスルホニル基での求核置換によって、製造され得る。
【0086】
上述の硬化剤のうちで、上で詳述されたとおりの、ビス−アジド、TAIC、剤(Cz)およびビス−オレフィン(OF)、より具体的には、上で詳述されたとおりの式(OF−1)のものが、特に良好な結果を与えることがわかり;最も好ましくは、剤(Cz)が、特に良好な結果を与えることがわかった。
【0087】
本発明のポリマー(F)は、ゴムおよびプラスチック工業で周知の他の添加剤、加工助剤およびフィラー、例えば、限定されないが、カーボンブラック、無機フィラー(硫酸バリウム、タルクおよびシリカを含む)、モノマー(Az)を含まないフィブリル化または非フィブリル化熱可塑性フルオロポリマー、金属酸化物、金属水酸化物などと組成物(CC)中で混合されてもよい。
【0088】
さらに、硬化物品を生成させるために上に詳述されたとおりのポリマー(F)および/または組成物(CC)を架橋させる方法は、本発明の別の実施形態である。
【0089】
本発明のポリマー(F)および/または組成物(CC)の架橋は、ポリマー(F)をUV線および/または加熱に暴露することを含み得る。
【0090】
好ましくは、架橋は、ポリマー(F)および/または組成物(CC)をUV線に曝露することを含む。
【0091】
UV線という用語は、本発明の目的に対して、可視光のものより短いが、軟X線よりも長い波長を有する電磁放射線を意味することが意図される。それは、近UV(380〜200nm波長;略語:NUV)、遠UVまたは真空UV(200〜10nm;略語:FUVまたはVUV)、および極UV(1〜31nm;略語:EUVまたはXUV)に細分され得る。200〜380nmの波長を有するNUVが、本発明の方法において好ましい。単色または多色光のいずれも用いることができる。
【0092】
UV線は、本発明の架橋方法で任意の適切なUV線源によって与えることができる。本発明の方法のための好ましいUV線源は、水銀照明である。励起水銀蒸気から放射されるエネルギーのかなりの部分は、スペクトルの紫外部分であることが知られている。低圧放電の場合、供給される全エネルギーの半分超が、253.7nmで短波UV領域において放射される。高圧ランプは、365.0nmで長波UV領域においてそれらのエネルギーの約10%を放射するが、かなりの量が、より短い波長でも放射される。
【0093】
本発明の架橋方法は、いずれの種類の硬化物品を製造するためにも使用され得る。電子機器の部品は、より好ましくは、特にポリマー(F)がVDFおよびTrFEに由来する繰り返し単位を含む場合、このような方法によって製造される。
【0094】
硬化物品は、とりわけ、薄膜およびナノ層ならびに/またはそれらのアセンブリを含めて、シートおよびフィルムであり得る。
【0095】
本発明の硬化物品は、とりわけ、変換器、センサ、アクチュエータ、強誘電性メモリ、電気機器を動力源としたキャパシタを含めて、種々の電子機器で有用であり得る。
【0096】
本発明のさらなる目的は、上に詳述されたとおりのポリマー(F)を用いるステップを含む、電気および電子機器の一つを製造する方法である。
【0097】
このような方法は、一般にポリマー(F)および/または組成物(CC)を加工するステップならびにそれらを架橋するステップを含む。
【0098】
加工は、任意の公知の技術によって行われ得る;それにもかかわらず、インク印刷、キャスティング、リソグラフィ法などを含む、溶液加工技術が好ましい。
【0099】
ポリマー(F)および/または組成物(CC)の架橋は、上に具体化されたとおりに行われ得る。
【0100】
本発明の架橋ポリマー(F)は、一般にフィルム(薄膜、およびナノ層を含む)およびシートなどの二次元部品、またはそれらの3次元アセンブリの形態下で前記機器に含まれる。
【0101】
上に詳述されたとおりの架橋ポリマー(F)から作られた部品は、一般に前記電気および電子機器に強誘電性、圧電性、集電性または誘電性材料として含まれる。
【0102】
参照により本明細書に組み込まれるいずれかの特許、特許出願、および刊行物の開示が、本出願の記載と、それが用語を不明瞭にさせ得る程度に矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0103】
本発明は、これから以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、その目的は、単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0104】
調製比較実施例1−CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2N
3[モノマー(Az1)]の合成
米国特許第6365693号明細書(DUPONT DOW ELASTOMERS LLC)2002年4月2日に開示された手順と同様な、および以下に詳述されるとおりに変更した手順によって、上に言及した化合物を合成した。三つ口丸底ガラス製フラスコに、1.375g=21.15ミリモルのNaN
3を13mlのCH
3CN(これは、P
2O
5上での蒸留、および3Aモレキュラーシーブ上への貯蔵によって前もって乾燥させておいた)に懸濁させた。この混合物を500rpmにて20℃で約20分間撹拌し;次いで、5.05g=18.03ミリモルのCF
2=CFOCF
2CF
2SO
2F(VEFS)を19分間滴下した。したがって、混合物中のVEFS([CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2F])のモル濃度は、1.38Mに等しかった。発熱反応は、約2℃の温度上昇を生じさせた。添加の最後において、反応混合物は、ミルク様であることがわかり、透明になった。混合物を不活性N
2雰囲気下に20℃で48時間撹拌下に保った。混合物を40℃で3時間加熱することによって、反応を終了させた。次いで、混合物を20℃で冷却し、次いで、この温度をさらに3時間維持した。未加工反応混合物は、目に見える沈殿物を含まない乳白色溶液であるように見えた。この混合物を70mlの蒸留水に注ぎ入れ;それから、刺激臭(acre smelling)を有する、清澄で透明な油が直ちに分離した。定量
19F−NMR測定から、そのように沈殿した油が、目標生成物に相当することがわかった。水相を分離し、反応副生成物としてNaFを含有することがわかった。
収率=VEFSの出発量に対して57%。
a,bCF
2=
cCFO
dCF
2eCF
2SO
2N
3に対する選択性=78モル%。
残存する22モル%は、N
3fCF
2gCFHO
hCF
2iCF
2SO
2N
3に相当することがわかった。
・
19F−NMR;(CDCl
3;ppm):a:−110;b:−118;c:−133:d:−80.2;e:−110.4;f:−90;g:−142(J
1H,F=47hz);h:−78→−83;i:−110.4。
・FT−IR(KBr;cm
−1):1839(
CF2=CFO−st.);2156(−N
3st.);1421+1463(−SO
2−N
3st.);1200〜1100(CFst.)。
【0105】
調製実施例2−CF
2=CFCF
2OCF
2CF
2SO
2N
3(モノマー(Az2))の合成
前駆体FSO
2CF
2CF
2OCF
2CF=CF
2を、文献(WLASSICS,I.,et al.Perfluoro Allyl Sulfate(FAFS):a Versatile Building Block For New Fluoroallic Compounds.Molecules.2011,vol.16,p.6512_6540)に記載された方法に従って調製した。比較アジド化合物(1)のための上に記載した合成手順を、アリルエーテルとNaF(これは、反応の副生成物である)との間の接触の最小化を確実にするように修正し、これは、パーフルオロプロピレンおよびFO
2S−CF
2−COFへのビニルエーテル前駆体の分解を触媒することができた。3つの注入口を有するガラス製円筒形ジャケット付き反応器に、15.15ミリモル=5.00gのFSO
2CF
2CF
2OCF
2CF=CF
2を、1%v/vに相当する、Aliquat(CH
3−N−[(CH
2)
7CH
3]
3+Cl
−)として市販されている90μlの相間移動剤と組み合わせて導入した。そのように得た溶液を反応器ジャケットに接続された低温保持装置を用いて15℃で冷却した。7.5mlの蒸留H
2Oおよび2.395g=36.85ミリモルのNaN
3から作られた溶液が入っている自動分注シリンジを用いて、前記溶液を0.1当量NaN
3/時間の流量で滴下した;反応器温度を添加時間全体(約24時間)の間15℃で保った。次いで、温度を20℃にさらに8時間上昇させた。反応の最後に、反応混合物は2相からなった。H
2O、NaFおよび残留NaN
3からなる上側相を廃棄した。下側相を回収し、固体粒状物残渣をなくするために15℃および4000rpmで20分間遠心分離機にかけた。特徴的な刺激臭を有する無色で清澄な油を得た。
収率(精製および分離後)=65モル%。
選択性=55/45A/B−A=
a,bCF
2=
cCF
dCF
2O
eCF
2fCF
2SO
2N
3;B=N
3gCF
2hCFH
iCF
2O
lCF
2mCF
2SO
2N
3
19F−NMR;(CDCl
3;;ppm);a:−89;b:−102;c:−185.4;d:−72.3;e:−79.3(AB);f:−109.3;g:−78→−82(m);h:−206(J
1H,F=48hz);i:−74.5;→−83;l:−79.3(AB);m:−109.3。
FT−IR(KBr;cm
−1):1792(
CF2=CF−CF
2st.);2163(−N
3st.);1464+1384(−SO
2−N
3st.);1200〜1100(CFst.)。
【0106】
重合実験
重合実施例3−モノマー(Az2)(5モル%)の存在下でのVDF/TrFEの重合
AISI316スチール製の持ち上げて水平にして開くオートクレーブに、46.2mlの脱塩水を導入した。室温で、米国特許第7122608号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)2006年10月17日の実施例1に記載されたとおりに得た3.38gのナトリウムベースマイクロエマルション、次いで、0.55gの式CF
2=CFCF
2OCF
2CF
2SO
2N
3のモノマー(Az2)、続いて、シリンダから計量した2.36絶対バールのTrFE、9.07絶対バールのVDFを添加した。次いで、ポンプを用いて、重量で0.1%の濃度で水中に希釈したアンモニウムパーオキシジスルフェート(APS)の270mlの溶液を供給して、重合を開始させた。次いで、温度を70℃の定値温度にさせ、ここで、オートクレーブ中の圧力値は、23.1絶対バールであることがわかった。反応温度を一定に保って、圧力を14.2絶対バールまで降下させた。次いで、反応器を室温で冷却させ、ラテックスを回収し、48時間凍結させ、そのように共凝固させたポリマーを解凍後、脱塩水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させた。6.2グラムのポリマーを得、その公称組成は以下のとおりであった:VDF:71.5モル%;TrFE:23.5モル%;モノマー(Az2):5モル%。
【0107】
重合比較実施例4−モノマー(Az1)(10モル%)の存在下でのVDF/TrFEの重合
モノマー(Az2)に代えて1.1gの式CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2N
3のモノマー(Az1)を用いることによる以外は、重合実施例3に詳述したのと同じ手順に従った。最終圧力はほぼゼロであった。9.1グラムのポリマーを得、その公称組成は以下のとおりであった:VDF:67.5モル%;TrFE:21.5モル%;モノマー(Az1):10モル%。
【0108】
重合比較実施例5−モノマー(Az1)(5モル%)の存在下でのVDF/TrFEの重合
モノマー(Az2)に代えて0.55gの式CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2N
3のモノマー(Az1)を用い、定値重合温度を105℃に整定し、圧力が4.2絶対バールに降下するまで重合を続けることによる以外は、重合実施例3におけるのと同様の手順に従った。9.6gのポリマーを得、その公称組成は、以下のとおりであった:VDF:71.5モル%;TrFE:23.5モル%;モノマー(Az1):5モル%。
【0109】
実施例3〜実施例5Cのポリマーの特徴付け
実施例3ならびに実施例4Cおよび実施例5Cから得たポリマーを、ASTM D3418に従ってDSC分析に、および分子量決定のためにゲル透過クロマトグラフィーにかけた。結果を以下の表に詳述する。
【0110】
【0111】
上の表で、Tgは、ガラス転移温度であり、Txxは、1番目の結晶化の温度であり、T2mは、2番目の融点であり、T2Curieは、2番目の加熱サイクルで測定したキュリー温度であり;Mpは、GPCにより決定した、配列分子量である。
【0112】
上の表でわかるように、厳格に類似の条件で重合させる一方で、本発明方法によるアリルスルホンアジドモノマー(Az2)を用いて得たVDF−TrFEポリマーは、対応するビニルスルホンアジドモノマー(Az1)を用いて得られるものに対して非常により高い分子量を有する。
【0113】
実施例3〜実施例5Cのポリマーを用いるフィルムの製造およびその架橋
A)スピンコーティング
実施例3〜実施例5Cに詳述したとおりに得たポリマーの試験片をシクロペンタノンに溶解させ、その結果、40℃の温度で3時間撹拌後、重量で8%の濃度を有する清澄溶液を得た。前記溶液をLaurell WS−650LITE SEEIESスピンコータ中に充填し、ガラス基材上に2000rpmの速度でスピンコーティングして、基材としてのガラス上に非常に薄いポリマー層を得た。そのように得たポリマー層を85℃で2分間乾燥させた。それぞれの実施例について、ガラス上の2つのポリマーフィルムを調製した。スピンコーティング法により得たすべての試料は、すべて均一であり、完全に透明であり、Filmetrics F20単位で測定して、150〜180nmの厚さ範囲であった。
【0114】
B)架橋:
上に詳述したとおりに得たポリマーフィルムを、熱処理またはUV処理のいずれかによって、架橋手順にかけた。熱処理は、フィルムの試料を通風オーブン中約120〜135℃の温度で維持することにあった。UV処理の場合、UVランプに基づき、試料を搬送する移動ベルトを備えた半自動クロスリンカー装置に、フィルム試料を通した。手順を繰り返して、UV曝露下で以下に詳述する滞留時間を得た。試料が架橋したかどうかを証明するために、純アセトンを上で処理後のフィルム上に注いだ;このような条件における不溶性を、適切な架橋の明らかな証拠であるとみなした。結果を以下の表に要約する。
【0115】
【0116】
上記の表は、本発明のスルホニルアジドアリル型モノマー(Az2)の能力を、それが受け入れられたままであるポリマーマトリックスの架橋を適切な条件下で与える際に十分に実証し;同程度の量のビニル型モノマー(Az1)を含む、実施例5Cとの比較も、後者の場合、何らの架橋も達成されず、有効な架橋を得るためにより大量のビニルモノマーが必要とされることも示す(実施例4C参照)。
【0117】
P−Eヒステリシスループによる強誘電特性の決定
4cm×4cmの寸法を有する試験片を、実施例3および実施例5Cのポリマーから上に詳述したとおりに得たスピンコーティングしたフィルムから切断した。銀層を、7cm
2の総電極面積を有するように前記試験片上に堆積させ、良好な導電率を得た。試験前に、それぞれの試料を硬化させ、次いで、130℃の温度で2時間アニールして、ポリマー結晶化度を増加させた。P−Eヒステリシス曲線は、±3.5%の精度で、二極ドライブによる150v/ミクロンの印加実効電圧を用いて、Ferroelectric Radiant Equipment(Precision II)によって記録した。記録したヒステリシス曲線のプロットは
図1で与えるとともに、以下の表3は、いくつかの重要データを要約する。
【0118】
【0119】
上記の表は、本発明のスルホニルアジドアリル型モノマー(Az2)の能力を、同程度の量のビニル型モノマー(Az1)を含む実施例5Cのポリマーで得られるものと実質的に類似の強誘電特性を与える際に十分に実証する。