(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155295
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】眼鏡フレームおよびこの眼鏡フレームのテンプルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 5/14 20060101AFI20170619BHJP
G02C 11/02 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
G02C5/14
G02C11/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-65595(P2015-65595)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-184146(P2016-184146A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2015年12月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第27回メガネ展iOFT2014の開催概要 [刊行物等] 平成26年12月22日〜平成27年1月28日の販売先リスト
(73)【特許権者】
【識別番号】599052521
【氏名又は名称】株式会社グラスパートナー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】楠田 正雄
【審査官】
吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−047119(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0002271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプル部が、テンプル本体部と、このテンプル本体部を被覆するように設けられた可撓性化粧シート材とを備える眼鏡フレームであって、
前記テンプル本体部は、金属、プラスチック、動物の骨格、角のいずれかの剛性材料からなり、そのこめかみに対向する面に沿って長手方向に連続する凹溝が設けられていて、
前記可撓性化粧シート材は、その幅方向の両端が、前記凹溝内に収容されるようにテンプル部本体に巻回状態で接着されており、
かつ、
剛性材料からなる押さえ部材が、その少なくとも一部を、前記可撓性化粧シート材の幅方向の両端部を押さえるように、前記凹溝内に嵌め込まれ、前記凹溝の長手方向両端でテンプル部にねじ固着されていることを特徴とする眼鏡フレーム。
【請求項2】
可撓性化粧シート材が天然皮革シートである請求項1に記載の眼鏡フレーム。
【請求項3】
天然皮革シートの表面が撥水処理されている請求項2に記載の眼鏡フレーム。
【請求項4】
上記押さえ部材が、押さえ部と、前記凹溝に嵌り込む嵌合凸部を有する断面略Tの字形をした押さえ部材本体部と、抑え部材本体部の長手方向両側に設けられたねじ固定部とを備えるとともに、
前記押さえ部材本体部が、無負荷状態で、前記Tの字の縦辺側に凸となるアーチ状となるように形成されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の眼鏡フレーム。
【請求項5】
上記テンプル本体部の凹溝に上記可撓性化粧シートの両端部が入り込むように、可撓性化粧シートをテンプル本体部に巻回して可撓性化粧シートをテンプル本体部に接着したのち、
上記押さえ部材を、前記可撓性化粧シート材の幅方向の両端を押さえつつ前記凹溝内に嵌め込めるとともに、押さえ部材の両端をテンプル本体部にねじ固着する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の眼鏡フレームのテンプル部の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡フレームおよびこの眼鏡フレームのテンプルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームは、メタル、プラスチック、天然素材、あるいは、これらを組み合わせて形成されている。
また、天然素材としての天然皮革シートを金属等のフレーム本体の表面に巻き付けるとともに、端部の重ね合わせ部分を縫製した眼鏡フレーム(たとえば、特許文献1)が提案されるとともに、市販もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3089583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の天然皮革シートを用いた眼鏡フレームは、上記のように金属製のフレーム本体の周囲を天然皮革で囲むとともに、端部を縫製してフレーム本体に一体化するようにしているため、縫製部分が二重に重なった状態で外側に飛び出ている。
したがって、デザイン性に問題があるとともに、使用感にも問題がある。また、汗などで縫製糸が劣化して切れやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、可撓性化粧シート材の端部が外部に飛び出さず、また、可撓性化粧シート材をしっかりと取り付けることができる眼鏡フレームおよびこの眼鏡フレームのテンプル部の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる眼鏡フレームは、テンプル部が、テンプル本体部と、このテンプル本体部を被覆するように設けられた可撓性化粧シート材とを備える眼鏡フレームであって、前記テンプル本体部は、金属、プラスチック、動物の骨格、角
のいずれかの剛性材料からなり、そのこめかみに対向する面に沿って長手方向に連続する凹溝が設けられていて、前記可撓性化粧シート材は、その幅方向の両端が、前記凹溝内に収容されるようにテ
ンプル部本体に巻回状態で接着されており、かつ、剛性材料からなる押さえ部材が、その少なくとも一部を、前記可撓性化粧シート材の幅方向の両端部を押さえるように、前記凹溝内に嵌め込まれ、前記凹溝の長手方向両端でテンプル部にねじ固着されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の眼鏡フレームにおいて、可撓性化粧シート材としては、化粧性を備えていれば、特に限定されないが、鰐皮、オーストリッチ、牛、蛇、馬などの天然皮革シート、桜皮のような樹皮等が挙げられ、天然皮革シートが好ましい。
また、天然皮革シートは、汚れや、汗しみを抑えるために、表面を撥水処理しておくことが好ましい。
【0008】
テンプル本体部は、金属、プラスチック、動物の骨格、角等の剛性材料から形成されていれば、特に限定されないが、軽量で強度的に優れていることから、チタンおよびその合金が好適である。
押さえ部材は、金属、プラスチック、動物の骨格、角等の剛性材料から形成されていれば、特に限定されないが、軽量で強度的に優れていることから、チタンおよびその合金が好適である。
【0009】
本発明の眼鏡フレームにおいて、上記押さえ部材は、特に限定されないが、押さえ部と、前記凹溝に嵌り込む嵌合凸部を有する断面略Tの字形をした押さえ部材本体部と、抑え部材本体部の長手方向両側に設けられたねじ固定部とを備えるとともに、前記押さえ部材本体部が、無負荷状態で、前記Tの字の縦辺側に凸となるアーチ状となるように形成することが好ましい。
すなわち、アーチによって、ねじ固定部をテンプル本体部にねじ固定した時、押さえ部がアーチ状に戻ろうとする反力によって、押さえ部が、化粧シートにしっかりと圧接される。すなわち、化粧シート材の両端部をテンプル本体部との間でしっかりと挟みつけることができる。
【0010】
本発明にかかるテンプル部の製造方法は、上記テンプル本体部の凹溝に上記可撓性化粧シートの両端部が入り込むように、可撓性化粧シートをテンプル本体部に巻回して可撓性化粧シートをテンプル本体部に接着したのち、上記押さえ部材を、前記可撓性化粧シート材の幅方向の両端を押さえつつ前記凹溝内に嵌め込めるとともに、押さえ部材の両端をテンプル本体部にねじ固着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる眼鏡フレームは、以上のように、テンプル部が、テンプル本体部と、このテンプル本体部を被覆するように設けられた可撓性化粧シート材とを備える眼鏡フレームであって、前記テンプル本体部は、金属、プラスチック、動物の骨格、角
のいずれかの剛性材料からなり、そのこめかみに対向する面に沿って長手方向に連続する凹溝が設けられていて、前記可撓性化粧シート材は、その幅方向の両端が、前記凹溝内に収容されるようにテ
ンプル部本体に巻回状態で接着されており、かつ、剛性材料からなる押さえ部材が、その少なくとも一部を、前記可撓性化粧シート材の幅方向の両端部を押さえるように、前記凹溝内に嵌め込まれ、前記凹溝の長手方向両端でテンプル部にねじ固着されているので、可撓性化粧シート材が外部に飛び出さず、見栄えが良いとともに、可撓性化粧シート材の取り付けに熟練を要さず、可撓性化粧シート材を容易かつしっかりと取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にかかる眼鏡フレームの1つの実施の形態の平面図である。
【
図4】
図1の眼鏡フレームのテンプル部材の分解平面図である。
【
図5】
図1の眼鏡フレームのテンプル部材の分解側面図である。
【
図7】
図6の端面図で、可撓性化粧シート材の取り付け方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜
図3は、本発明にかかる眼鏡フレームの1つの実施の形態を用いた眼鏡をあらわしている。
【0014】
図1〜
図3に示すように、この眼鏡フレームAは、テンプル部1の合口部24側の表面部分が可撓性化粧シート材としての天然皮革シート5で形成されている。
すなわち、テンプル部1は、
図4,5に示すように、本体部材2と、天然皮革シート5、押さえ部材4、固定ビス6と、モダン部材3とから形成されている。
【0015】
本体部材2は、チタンあるいはチタン合金から形成されていて、テンプル本体部21、合口部24、小口部23、モダン芯部22を備えている。
テンプル本体部21は、テンプル部1のこめかみと対面する面に、断面矩形の凹溝21aが形成されている。
凹溝21aは、後述する天然皮革シート5の幅方向の両端部が入り込むようになっている。
【0016】
合口部24には、凹溝21aに連通するように、後述する押さえ部材4のねじ固定部43が嵌り込む第1固定部嵌合凹部24aが穿設されている。
第1固定部嵌合凹部24aには、後述する固定ビス6のねじ穴25が穿設されている。
【0017】
小口部23には、凹溝21aに連通するように、後述する押さえ部材4のねじ固定部43が嵌り込む第1固定部嵌合凹部24aと同じ大きさの第2固定部嵌合凹部23aが穿設されている。
第2固定部嵌合凹部23aには、後述する固定ビス6のねじ穴25が穿設されている。
【0018】
天然皮革シート5は、表面が撥水処理されていて、
図7に示すように、粘着剤を裏面に塗布した状態で、粘着剤側がテンプル本体部21側を向くようにテンプル本体部21に巻回され、幅方向の両端部が凹溝21a内でほぼ表面側が向き合うように凹溝21a内に嵌り込んでいる。
押さえ部材4は、チタンあるいはチタン合金で形成されていて、押さえ本体部41と、嵌合突条42と、ねじ固定部43を備えている。
【0019】
押さえ本体部41は、凹溝21aより少し幅広の板状をしていて、板の一方の面に嵌合突条42が突設され、嵌合突条42側が凸となる円弧状のアーチを形成するように成形されている。
ねじ固定部43は、押さえ本体部41の長手方向両側に設けられていて、中央部に固定ビス6の挿通孔43aが穿設されるとともに、第1固定部嵌合凹部24aおよび第2固定部嵌合凹部23aにほぼ隙間(ほぼとは、製造公差程度の隙間を含むことを意味する)なく嵌り込む。
【0020】
嵌合突条42は、
図6に示すように、上記のようにして粘着剤によって接着固定された天然皮革シート5の両端部に凹溝の内部方向への押圧力を加えた状態となるように凹溝21a内に嵌り込むようになっている。
ねじ固定部43は、ねじ挿通孔43aを介してねじ穴25にねじ込まれた固定ビス6の頭部と第1固定部嵌合凹部24aあるいは第2固定部嵌合凹部23aの底面との間で挟まれてしっかりと固定されている。
【0021】
また、押さえ本体部41および嵌合突条42がアーチ状になっているので、このねじ固定部43のねじ固定によって、天然皮革シート5は、押さえ本体部41の弾性力によって、押さえ本体部41と凹溝21aの縁との間でしっかりと挟み込まれる。
モダン部材3は、一般の眼鏡フレームに用いられているプラスチック材料で形成されていて、予め成形したものをモダン芯部22に嵌合接着する方法、モダン芯部22がインサートされるようにモダン部材3を射出成形する方法などを用いて本体部材2に一体化されている。
【0022】
この眼鏡フレームAは、上記のように、テンプル部1の合口部24と小口部23との間の部分の表面が天然皮革シート5で形成されていて、意匠性に富んで高級感に溢れている。
そして、天然皮革シート5は、その幅方向の両端部がテンプル本体部21の凹溝21a内に入り込むとともに、上方から押さえ部材4で押さえられているので、従来の縫製によって固定したものに比べ、見栄えがよく使用感に優れている。
【0023】
また、天然皮革シート5のテンプル本体部21への接着が、粘着剤によるため、押さえ部材4を取り外せば、天然皮革シート5を容易に交換することができる。
さらに、この眼鏡フレームAは、天然皮革シート5の表面が撥水処理されているので、耐水性に優れ、汗染みを防止することができるとともに、汗や皮脂などの表面汚れを容易に拭きとることができる。
【0024】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、嵌合突条42が断面矩形をしていたが、断面三角形や断面半円形をしていても構わない。
また、上記の実施の形態では、モダン部材が、プラスチックであったが、羊の角などの天然素材を用いても構わない。
【0025】
上記の実施の形態では、天然皮革シートを粘着剤によってテンプル本体部に接着していたが、天然皮革シートの弾性などの手触りや風合いを損なわなければ、熱硬化性樹脂接着剤を用いて接着固定しても構わない。
上記の実施の形態では、第1固定部嵌合凹部と第2固定部嵌合凹部が同じ大きさであったが、押さえ部材の取り付け方向を一定にすることができるように、押さえ部材の2つのねじ固定部の大きさや形を変更し、異なる大きさや形状にしても構わない。
【0026】
上記の実施の形態では、凹溝が断面矩形であったが、断面Tの字形や断面三角形でも構わない。
【符号の説明】
【0027】
A 眼鏡フレームA
1 テンプル部
2 本体部材
21 テンプル本体部
21a 凹溝
22 モダン芯部
23 小口部
23a 第2固定部嵌合凹部
24 合口部
24a 第1固定部嵌合凹部
25 ねじ穴
3 モダン部材
4 押さえ部材
41 押さえ本体部
42 嵌合突条
43 ねじ固定部
43a 挿通孔
5 天然皮革シート(可撓性化粧シート)
6 固定ビス