(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るエンジンの動弁装置の一実施の形態を
図1〜
図15によって詳細に説明する。この実施の形態においては、気筒休止が実施される気筒の動弁装置について説明する。
図1に示すエンジンの動弁装置1は、シリンダヘッド2に設けられた吸気カムシャフト3および排気カムシャフト4の回転を吸気弁5毎および排気弁6毎のロッカーアーム7〜10(
図2参照)によって往復運動に変えて吸気弁5と排気弁6とを駆動するものである。ロッカーアーム7〜10は、後述する支持機構11〜14によってそれぞれ支持されている。この支持機構11〜14は、詳細は後述するが、通常運転時の第1の支持形態と、気筒休止時の第2の支持形態とを切り替えることが可能なものである。
【0018】
吸気カムシャフト3と排気カムシャフト4は、図示していないクランクシャフトの回転が伝動機構を介して伝達されることにより回転する。吸気カムシャフト3は、シリンダヘッド2のジャーナル部材15に回転自在に支持された吸気カムシャフト本体16と、この吸気カムシャフト本体16に設けられた吸気弁駆動用カム17とを備えている。排気カムシャフト4は、上述したジャーナル部材15に回転自在に支持された排気カムシャフト本体18と、この排気カムシャフト本体18に設けられた排気弁駆動用カム19とを備えている。
【0019】
吸気弁駆動用カム17は、吸気弁5毎に設けられ、排気弁駆動用カム19は、排気弁6毎に設けられている。これらのカム17,19は、いずれもベース円部17a,19aと頂部17b,19bとを有している。
吸気弁5と排気弁6は、1気筒当たり2本ずつ設けられている。2本の吸気弁5は、吸気カムシャフト3の軸線方向に所定の間隔をおいて並べられている。2本の排気弁6は、排気カムシャフト4の軸線方向に所定の間隔をおいて並べられている。
【0020】
吸気弁5は、シリンダヘッド2の吸気ポート21を開閉する弁体5aと、この弁体5aからシリンダヘッド2の動弁室22内に延びる弁軸5bとによって構成されている。排気弁6は、シリンダヘッド2の排気ポート23を開閉する弁体6aと、この弁体6aからシリンダヘッド2の動弁室22内に延びる弁軸6bとによって構成されている。弁軸5b,6bの先端部とシリンダヘッド2との間には、吸気弁5および排気弁6を閉じる方向に付勢するバルブスプリング24が設けられている。また、弁軸5b,6bの先端部には、キャップ状のシム25がそれぞれ設けられている。
【0021】
吸気ポート21の上流端は、シリンダヘッド2の一側部に開口し、吸気ポート21の下流端は、燃焼室26に開口している。排気ポート23の上流端は、燃焼室26に開口し、排気ポート23の下流端は、シリンダヘッド2の他側部に開口している。燃焼室26の中央部には点火プラグ27が設けられている。
【0022】
ジャーナル部材15は、上述した吸気カムシャフト本体16および排気カムシャフト本体18を支持する機能と、後述するロッカーアーム7〜10を支持する機能とを有している。
吸気カムシャフト本体16と排気カムシャフト本体18とを支持する機能は、
図3に示すように、ジャーナル部材15の両端部に設けられた吸気カムシャフト用ジャーナル部28および排気カムシャフト用ジャーナル部29と、これらのジャーナル部28,29にそれぞれ取付けられたカムキャップ30とによって実現される。吸気カムシャフト用ジャーナル部28は、
図2に示すように、1気筒あたり2本設けられている吸気弁5の間に位置している。排気カムシャフト用ジャーナル部29は、1気筒あたり2本設けられている排気弁6の間に位置している。
【0023】
カムキャップ30は、カムシャフト本体16,18がジャーナル部材15との間に挟まれる状態で、それぞれ第1の固定用ボルト31および第2の固定用ボルト32(
図1参照)によってジャーナル部28,29に固定されている。これらの固定用ボルト31,32のうち、ジャーナル部材15の両端側に位置する第1の固定用ボルト31は、ジャーナル部材15を貫通してシリンダヘッド2にねじ込まれている。
【0024】
ジャーナル部材15における一対のジャーナル部28,29どうしの間には、
図2に示すように、穴33が形成されている。この穴33は、点火プラグ挿通用のパイプ(図示せず)を取付けるためのものである。
【0025】
ロッカーアーム7〜10を支持する機能は、
図3に示すように、ジャーナル部材15の中央部に形成された吸気弁側の第1の支持壁34および排気弁側の第1の支持壁35と、これらの第1の支持壁34,35と対向する支持部材36(
図2、
図4および
図5参照)などを使用して実現される。ロッカーアーム7〜10は、吸気弁側の第1の支持壁34および排気弁側の第1の支持壁35と支持部材36との間に一部が挿入された状態で後述する支持機構11〜14によって支持される。この実施の形態においては、ジャーナル部材15に設けられている第1の支持壁34,35によって、本発明でいう「一方の支持壁」が構成されている。
【0026】
吸気弁側の第1の支持壁34および排気弁側の第1の支持壁35は、ジャーナル部材15と一体に形成されている。また、これらの第1の支持壁34,35は、ジャーナル部材15の両側にそれぞれ設けられている。この両側とは、吸気カムシャフト3あるいは排気カムシャフト4の軸線方向の両側である。このため、支持部材36は、ジャーナル部材15の両側に設けられている。支持部材36は、ジャーナル部材15とは別体に形成されており、取付用ボルト37によってジャーナル部材15に取付けられている。
【0027】
吸気弁側の第1の支持壁34と排気弁側の第1の支持壁35とにおけるロッカーアーム7〜10と対向する側面には、
図3に示すように、ロッカーアーム7〜10を支持する支持機構11〜14の一部を構成する第1の軸孔41と第1の凹溝42とが形成されている。
第1の軸孔41は、シリンダの軸線方向(
図3においては上下方向)において、吸気弁5または排気弁6の弁軸先端5c,6cとカムシャフト3,4との間に位置付けられている。この第1の軸孔41は、
図6に示すように、ジャーナル部材15をカムシャフト3,4の軸線方向(
図6においては上下方向)に貫通している。また、この第1の軸孔41は、後述する第1の凹溝42の底部に開口している。
【0028】
この実施の形態による第1の軸孔41は、第1の支持壁34,35に形成された貫通孔43と、この貫通孔43の両端の開口部に設けられた第1の円筒体44の中空部とによって構成されている。貫通孔43は、ジャーナル部材15内とシリンダヘッド2内とに形成された第1の作動油通路45(
図1参照)に接続されている。第1の作動油通路45は、油圧式アクチュエータ46に接続されており、後述する第1の支持形態が採られるときに油圧式アクチュエータ46から油圧が供給される。すなわち、第1の軸孔41は、油圧式アクチュエータ46によって油圧が供給される第1の作動油通路45の一部を構成している。
第1の円筒体44は、この貫通孔43の開口部内に嵌合されて保持されている。
【0029】
第1の凹溝42は、
図3に示すように、第1の軸孔41からカムシャフト3,4とは反対側に延びている。この実施の形態による第1の凹溝42の形状は、カムシャフト3,4の軸方向から見て、吸気弁5または排気弁6の弁軸先端5c,6cを中心とする円弧状である。この第1の凹溝42の底面42aと、第1の円筒体44の一端面44aとは、同一平面上に位置している。この実施の形態においては、第1の凹溝42におけるカムシャフト3,4に近接する一端部に相対的に幅が狭い延長部47が形成されている。この延長部47は、後述するロッカーアーム7〜10のピン48(
図1参照)との干渉を避けるためのものである。
【0030】
この第1の凹溝42の溝幅は、第1の円筒体44の外径と同一か、僅かに大きい。この第1の凹溝42における第1の軸孔41が位置する一端の溝壁42bは、カムシャフト3,4の軸線方向から見て第1の軸孔41と同一軸線上に位置する断面円弧状の周面によって形成されている。
この第1の凹溝42は、後述する第2の支持形態が採られたときにロッカーアーム7〜10の移動経路を決める軌道49として機能する。この軌道49は、第1の軸孔41からカムシャフト3,4とは反対側に延びることになる。
【0031】
ジャーナル部材15における吸気弁側の第1の支持壁34と排気弁側の第1の支持壁35との間には、支持部材36を取付けるための取付座50が設けられている。この取付座50は、第1の支持壁34,35の壁面よりカムシャフト3,4の軸線方向に突出している。
この取付座50には、シリンダの軸線方向(
図3において上下方向)に延びる貫通孔51と、カムシャフト3,4の軸線方向に延びる2つのねじ孔52とが形成されているとともに、ノックピン53が設けられている。貫通孔51には、固定用ボルト54(
図1参照)が挿入されている。この固定用ボルト54は、取付座50を貫通してシリンダヘッド2にねじ込まれている。この実施の形態によるジャーナル部材15は、この固定用ボルト54と、上述したカムキャップ固定用の第1の固定用ボルト31とによってシリンダヘッド2に固定されている。
【0032】
取付座50のねじ孔52は、支持部材36を貫通した取付用ボルト37がねじ込まれる。支持部材36は、この取付用ボルト37によって取付座50に取付けられている。支持部材36が取付座50に取付けられることによって、支持部材36と第1の支持壁34,35との間に空間S(
図5参照)が形成される。この空間Sには、後述するロッカーアーム7〜10の一部が挿入される。
取付座50のノックピン53は、ジャーナル部材15に対して支持部材36を位置決めするためのものである。このノックピン53は、支持部材36が取付座50に取付られることにより、支持部材36のピン孔55(
図4参照)に嵌合する。
【0033】
支持部材36は、
図2に示すように、吸気カムシャフト3と排気カムシャフト4とが並ぶ方向に延びる角柱状に形成されている。この支持部材36におけるジャーナル部材15と対向する一側部には、ジャーナル部材側の第1の支持壁34,35と対向する第2の支持壁56,57が形成されている。すなわち、支持部材36におけるジャーナル部材15と対向する一側部であって、長手方向の一端部には、吸気弁側の第2の支持壁56が形成され、他端部には、排気弁側の第2の支持壁57が形成されている。この実施の形態においては、支持部材36に設けられている第2の支持壁56,57によって、本発明でいう「他方の支持壁」が構成されている。
【0034】
この第2の支持壁56,57と上述した第1の支持壁34,35とは、それぞれ別体に形成されているとともに、取付用ボルト37からなる締結部材によって一方が他方に対して分離可能に結合されている。
また、支持部材36における第2の支持壁56,57どうしの間には、取付用ボルト37が通される貫通孔58と、上述したピン孔55とが形成されている。
【0035】
第2の支持壁56,57には、
図4に示すように、第2の軸孔61と、第2の凹溝62とが形成されている。
第2の軸孔61は、
図6に示すように、支持部材36に形成された非貫通孔63と、この非貫通孔63の開口部に設けられた第2の円筒体64の中空部とによって構成されている。また、この第2の軸孔61は、支持部材36がジャーナル部材15に取付けられた状態で、第1の軸孔41と同一軸線上に位置付けられる。
【0036】
非貫通孔63は、カムシャフト3,4の軸線方向と平行な方向に延びている。
この非貫通孔63における支持部材36内の端部には、支持部材36内とシリンダヘッド2内とに形成された第2の作動油通路65が接続されている。
第2の作動油通路65は、油圧式アクチュエータ46に接続されており、後述する第2の支持形態が採られるときに油圧式アクチュエータ46から油圧が供給される。すなわち、第2の軸孔61は、油圧式アクチュエータ46によって油圧が供給される第2の作動油通路65の一部を構成している。
油圧式アクチュエータ46は、第2の作動油通路65に油圧を加えるときは、上述した第1の作動油通路45内の状態を作動油が自由に移動できる状態に変更する。一方、油圧式アクチュエータ46は、第1の作動油通路45に油圧を加えるときは、第2の作動油通路65内の状態を作動油が自由に移動できる状態に変更する。
【0037】
第2の円筒体64は、非貫通孔63の開口部内に嵌合されて保持されている。第2の円筒体64の内径(第2の支持壁56,57に開口する第2の軸孔61の孔径)と、上述した第1の円筒体44の内径(第1の支持壁34,35に開口する第1の軸孔41の孔径)とは、同一である。
第2の円筒体64の中には、ピストン66が移動自在に嵌合している。このピストン66は、第2の作動油通路65に供給された油圧を受けるものである。このピストン66は、有底円筒状に形成されている。ピストン66は、底部が第2の軸孔61の開口側に位置する状態で第2の円筒体64内に嵌合されている。この有底円筒状を呈するピストン66の開口側端部には、ストッパー片66aが形成されている。
【0038】
このストッパー片66aは、ピストン66が第2の作動油通路65内の油圧で進むときの停止位置を定めるためのものである。この実施の形態によるストッパー片66aは、このピストン66の径方向の外側に突出するフランジ状に形成されている。このストッパー片66aは、有底円筒状を呈するピストン66の外側底面66bが第2の円筒体64の一端(開口端)と同一平面上に位置する状態で、第2の円筒体64の他端面に当接する。以下においては、ピストン66の油圧による進行がストッパー片66aによって規制されるときのピストン66の位置を単に「後退位置」という。
【0039】
第2の支持壁56,57の第2の凹溝62は、
図4に示すように、第1の支持壁34,35の第1の凹溝42と同一の構成が採られている。
すなわち、この第2の凹溝62は、第2の軸孔61からカムシャフト3,4とは反対側に延びている。この実施の形態による第2の凹溝62の形状は、カムシャフト3,4の軸方向から見て、吸気弁5または排気弁6の弁軸先端5c,6cを中心とする円弧状である。この第2の凹溝62の底面62aと、第2の円筒体64の端面64aとは、同一平面上に位置している。また、第2の凹溝62には、後述するロッカーアーム7〜10のピン48との干渉を避けるために延長部67が形成されている。
【0040】
この第2の凹溝62の溝幅は、第2の円筒体64の外径と同一か、僅かに大きい。この溝幅は、第1の凹溝42の溝幅と同一である。
この第2の凹溝62における第2の軸孔61が位置する一端の溝壁62bは、カムシャフトの軸線方向から見て第2の軸孔61と同一軸線上に位置する断面円弧状の周面によって形成されている。
この第2の凹溝62は、後述する第2の支持形態が採られたときに第1の凹溝42と協働してロッカーアーム7〜10の移動経路を決める軌道49として機能する。
【0041】
吸気弁駆動用カム17に接触する吸気弁用ロッカーアーム7,8と、排気弁駆動用カム19に接触する排気弁用ロッカーアーム9,10とは、同一の構造である。これらのロッカーアーム7〜10は、
図7に示すように、吸気弁5または排気弁6のシム25(弁軸)に接触する押圧片71が一端部に形成されたロッカーアーム本体72と、このロッカーアーム本体72の他端部に設けられた筒体73およびピン48と、ロッカーアーム本体72の中間部に設けられたローラ74とを備えている。
【0042】
ロッカーアーム7〜10の押圧片71における吸気弁5または排気弁6のシム25(弁軸)と接触する接触部分71aは、
図8に示すように、カムシャフト3,4の軸方向から見て吸気弁5または排気弁6に向けて突出する断面円弧状に形成されている。この接触部分71aの突出端の形状は、カムシャフト3,4の軸方向から見て半径が異なる複数の円弧76,77を接続した形状である。これらの複数の円弧76,77のうちロッカーアーム7〜10の他端側(
図8においては右側)に位置する第1の円弧76の半径R1は、ロッカーアーム7〜10の一端側に位置する第2の円弧77の半径R2より小さく形成されている。
【0043】
ロッカーアームの筒体73は、
図9に示すように、円筒によって形成されており、ロッカーアーム本体72の他端部をカムシャフト3,4の軸線方向(
図9においては上下方向)と平行な方向に貫通する状態でロッカーアーム本体72に固着されている。筒体73の両端は、ロッカーアーム本体72の側面から予め定めた長さだけ突出している。
この筒体73の外径は、第1の支持壁34,35の第1の凹溝42と、第2の支持壁56,57の第2の凹溝62とに嵌合する大きさである。
【0044】
また、この筒体73の全長は、
図10および
図11に示すように、ジャーナル部材15の第1の凹溝42と、このジャーナル部材15に取付けられた支持部材36の第2の凹溝62との間に嵌合する長さである。この実施の形態においては、この筒体73におけるロッカーアーム本体72から突出する突出部73a(
図11参照)によって、請求項2記載の発明でいう「突起」が構成されている。
【0045】
ロッカーアーム7〜10のピン48は、円柱によって形成されており、
図7に示すように、筒体73とローラ74との間であって、筒体73よりカムシャフト側に位置付けられている。このピン48もロッカーアーム本体72をカムシャフト3,4の軸線方向と平行な方向に貫通している。筒体73の長さとピン48の長さとは同一である。この実施の形態においては、このピン48によって、請求項6記載の発明でいう「ストッパー」が構成されている。
【0046】
ローラ74は、ロッカーアーム本体72に軸受78を介して回転自在に支持されている。ローラ74の軸線は、カムシャフト3,4の軸線と平行である。
このロッカーアーム7〜10は、
図1に示すように、押圧片71(一端)が吸気弁5または排気弁6に接触し、筒体73(他端)が上述した空間Sに挿入された状態で、後述する支持機構11〜14によって第1の支持壁34,35と第2の支持壁56,57とに支持されている。
【0047】
この動弁装置1に設けられている4個のロッカーアーム7〜10のうち、2個の吸気弁用ロッカーアーム7,8は、
図10に示すように、第1の支持機構11と第2の支持機構12とによって支持されている。その他の2個の排気弁用ロッカーアーム9,10は、第3の支持機構13と第4の支持機構14とによって支持されている。これらの第1〜第4の支持機構11〜14は、同一の構造である。このため、ここでは、吸気弁用ロッカーアーム7を支持する第1の支持機構11について説明し、その他の第2〜第4の支持機構12〜14については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
第1の支持機構11は、
図1に示すように、同図においてロッカーアーム7の筒体73内に位置するロッカーシャフト81と、ロッカーアーム7における筒体73を有する端部を吸気弁用カムシャフト3のカム17に向けて付勢する押圧機構82とを備えている。
ロッカーシャフト81は、
図11に示すように、第1のロッカーシャフト半部83と第2のロッカーシャフト半部84とによって構成されている。
【0049】
これらの第1のロッカーシャフト半部83と第2のロッカーシャフト半部84は、カムシャフト3,4の軸線方向(
図11においては上下方向)に延びている。また、これらの第1のロッカーシャフト半部83および第2のロッカーシャフト半部84は、軸線方向に並ぶとともに互いに接触している。第1のロッカーシャフト半部83の長さは、ロッカーアームの筒体73の長さと等しい長さである。第2のロッカーシャフト半部84は、第1のロッカーシャフト半部83より短く形成されており、第1のロッカーシャフト半部83と先端が接触する状態で軸線方向に並べられている。また、第1のロッカーシャフト半部83の外径と、第2のロッカーシャフト半部84の外径は、同一である。
【0050】
図11に示す第1のロッカーシャフト半部83は、ロッカーアーム7の筒体73の中空部からなる第3の軸孔85と、第2の支持壁56の第2の軸孔61(第2の円筒体64)とに移動自在に嵌合している。ロッカーアーム7〜10の第3の軸孔85は、筒体73と同一軸線上に位置しかつロッカーアーム7〜10を貫通して形成されている。この第3の軸孔85の孔径と、第1および第2の軸孔41,61の孔径とは、同一である。
また、
図11に示す第2のロッカーシャフト半部84は、第1の支持壁34に設けられた第1の軸孔41(第1の円筒体44)と、ロッカーアーム7の第3の軸孔85とに移動自在に嵌合している。
【0051】
この実施の形態による第2のロッカーシャフト半部84は、
図10に示すように、ジャーナル部材15を貫通する第1の軸孔41の両端部にそれぞれ挿入されている。すなわち、第1の支持機構11の第2のロッカーシャフト半部84と、第2の支持機構12の第2のロッカーシャフト半部84とが一つの第1の軸孔41に挿入されている。また、第3の支持機構13の第2のロッカーシャフト半部84と、第4の支持機構14のロッカーシャフト半部84とが一つの第1の軸孔41に挿入されている。
【0052】
また、この第2のロッカーシャフト半部84は、第1の作動油通路45内に供給された油圧を受ける状態で第1の円筒体44の中に移動自在に嵌合されている。すなわち、この第2のロッカーシャフト半部84は、第1の円筒体44内で移動するピストンを構成するものである。この第2のロッカーシャフト半部84における第1のロッカーシャフト半部83とは反対側の端部には、
図11に示すように、ストッパー片84aと凹部84bとが形成されている。ストッパー片84aは、第2のロッカーシャフト半部84が第1の作動油通路45内の油圧で前進するときの第2のロッカーシャフト半部84の停止位置を定めるためのものである。
【0053】
このストッパー片84aは、第2のロッカーシャフト半部84の径方向の外側に向けて突出するフランジ状に形成されている。また、このストッパー片84aは、第2のロッカーシャフト半部84の一端部(前進時の前端部)がロッカーアーム7の第3の軸孔85内に嵌合する状態で第1の円筒体44の他端面44bに当接する。以下においては、第2のロッカーシャフト半部84の前進がストッパー片84aによって規制されるときの第2のロッカーシャフト半部84の位置を単に「前進位置」という。
【0054】
第2のロッカーシャフト半部84の凹部84bの底には、圧縮コイルばね86の一端部が当接している。この圧縮コイルばね86は、貫通孔43の一端側に位置する第2のロッカーシャフト半部84と、貫通孔43の他端側に位置する他の第2のロッカーシャフト半部84どうしを互いに離間する方向へ付勢している。このため、貫通孔43を含む第1の作動油通路45に油圧が供給されるときに何らかの原因で油圧が遮断された場合は、圧縮コイルばね86のばね力によって第2のロッカーシャフト半部84が前進位置に移動する。
【0055】
押圧機構82は、
図1に示すように、シリンダヘッド2に移動自在に支持された有底円筒状の押圧部材91と、この押圧部材91とシリンダヘッド2との間に挿入された圧縮コイルばね92とによって構成されている。押圧部材91は、有底円筒状に形成されており、底部がロッカーアーム7〜10に接触する状態でシリンダヘッド2に支持されている。圧縮コイルばね92は、圧縮された状態で押圧部材91内に収容されている。この実施の形態においては、このように押圧部材91を押す圧縮コイルばね92によって、本発明でいう「ロッカーアームをカムに向けて付勢する復帰用ばね」が構成されている。
【0056】
この支持機構11においては、油圧式アクチュエータ46により第1の作動油通路45に油圧が加えられることによって、第1の支持形態となる。
第1の作動油通路45に油圧が加えられるとともに、第2の作動油通路65内の作動油が自由に移動できる状態になると、ロッカーシャフト81が
図11に示す位置に移動する。すなわち、第1の支持壁34および第2の支持壁56とロッカアーム7とがロッカーシャフト81を介して連結される。詳述すると、第1の支持形態が採られるときは、第2のロッカーシャフト半部84に油圧が加えられて第2のロッカーシャフト半部84が前進位置に移動することにより、この第2のロッカーシャフト半部84が第1の軸孔41とロッカーアーム7の第3の軸孔85とに跨って嵌合する。これとともに、第1のロッカーシャフト半部83が第2のロッカーシャフト半部84によって押されて移動し、ロッカーアーム7の第3の軸孔85と第2の軸孔61とに跨って嵌合する。
【0057】
この第1の支持形態が採られると、
図14に示すように、ロッカーアーム7がロッカーシャフト81を中心にして揺動し、押圧片71が吸気弁5をバルブスプリング24のばね力に抗して押す。このとき、ロッカーアーム7は、
図14に示す最大リフト時の位置と、
図1に示す初期位置との間で揺動する。
このため、第1の支持形態が採られることにより、吸気弁駆動用カム17および排気弁駆動用カム18の回転が全てのロッカーアーム7〜10によって往復運動に変換されて吸気弁5または排気弁6に伝達され、通常の運転状態になる。
【0058】
一方、油圧式アクチュエータ46により第2の作動油通路65に油圧が加えられ、第1の作動油通路45内の作動油が自由に移動できる状態になると、
図12に示す第2の支持形態に移行する。すなわち、ロッカーシャフト81は、第1の支持壁34および第2の支持壁56とロッカーアーム7との連結状態が解消される位置に移動する。詳述すると、第2の支持形態が採られるときは、ピストン66に油圧が加えられることにより、ピストン66が後退位置に移動する。この場合は、第1のロッカーシャフト半部83がピストン66によって押されて第2の軸孔61から出され、ロッカーアーム7の筒体73内に収容される。これとともに、第2のロッカーシャフト半部84が第1のロッカーシャフト半部83によって押されて筒体73内から出され、第1の軸孔41内に収容される。
【0059】
この第2の支持形態が採られると、
図15に示すように、ロッカーアーム7がカム17によって押されることにより押圧片71を揺動中心として軌道49(第1および第2の凹溝42,62)に沿って揺動する。ロッカーアーム7の揺動は、筒体73が第1の凹溝42および第2の凹溝62に嵌合した状態で第1および第2の凹溝42,62に対して摺動することにより行われる。
【0060】
このとき、押圧片71は、吸気弁5または排気弁6との接触部分71aが断面円弧状に形成されているから、ロッカーアーム7の揺動に伴ってシム25の先端面上を転がる。
カム17の頂部17bがローラ74を越えた後は、ロッカーアーム7が押圧機構82によって押され、軌道49に沿って移動して初期の位置に戻る。このとき、ロッカーアーム7は、
図15に示す最大リフト時の位置と、
図1に示す初期位置との間で揺動する。
【0061】
ロッカーアーム7が軌道49に沿って揺動するときは、
図13に示すように、ロッカーアーム7のピン48の一端が第2のロッカーシャフト半部84と対向し、このピン48の他端がピストン66に対向する。言い換えれば、このピン48は、第2の支持形態が採られてロッカーアーム7が揺動した状態において、第2のロッカーシャフト半部84およびピストン66と対向する位置に配置されている。ピン48は、これらの部材と対向することにより、これらの第2のロッカーシャフト半部84とピストン66とが第1の支持壁34と第2の支持壁56とからロッカーアーム7の移動領域内(空間S)に突出することを阻止する。
【0062】
このため、第2の支持形態が採られることにより、全てのロッカーアーム7〜10から吸気弁5または排気弁6に駆動力が伝達されることがなくなり、吸気弁5または排気弁6が閉じた状態に保たれるから、気筒が休止する状態になる。
この気筒休止状態から通常運転状態に戻るときは、第1の作動油通路45に油圧が加えられるだけで実施可能である。この理由は、ロッカーアーム7の移動経路が軌道49によって規制されているからである。第2の支持形態において、ロッカーアーム7は、カム17のベース円部17aがローラ74に接触することにより、上述した初期位置に位置決めされる。
【0063】
この初期位置とは、筒体73の移動が軌道49の一端によって規制される位置である。このようにロッカーアーム7が初期位置に位置している状態においては、ロッカーアーム7の第3の軸孔85と第1および第2の軸孔41,61とが同一軸線上に位置付けられる。すなわち、第1の作動油通路45に油圧が加えられることにより、ロッカーアーム7が初期位置に位置しているときに第2のロッカーシャフト半部84が油圧によって容易に前進位置に移動する。
このため、第2の支持形態から第1の支持形態に正しく移行することができる。
【0064】
この実施の形態によるエンジンの動弁装置1において、通常運転状態と気筒休止状態との切替えは、ロッカーシャフト81が軸線方向に移動することにより実施される。すなわち、この実施の形態によるエンジンの動弁装置1は、ロッカーアーム7〜10の支持構造11〜14として単純な構造を採っている。このため、このエンジンの動弁装置1は、特許文献1に記載されている従来の動弁装置と比べると、ロッカーアームの支持形態を切替える切替動作の信頼性が高くなる。
【0065】
この実施の形態による軌道49は、第1および第2の支持壁34,35,56,57におけるロッカーアーム7〜10と対向する側面に形成された第1および第2の凹溝42,62によって構成されている。ロッカーアーム7〜10における第1および第2の支持壁34,35,56,57と対向する側面には、第1および第2の凹溝42,62に嵌合する形状に形成されてこの側面から突出する筒体73の突出部73aが設けられている。
【0066】
この実施の形態によれば、軌道49は、専用の部材を使用することなく、第1および第2の支持壁34,35,56,57の一部を利用して形成される。このため、ロッカーアーム7〜10が軌道49に沿って揺動可能に支持される第2の支持形態を実現するにあたって、構成部品の数を増やす必要がないから、製造コストが低く抑えられる。
【0067】
この実施の形態による第1および第2の軸孔41,61は、第1および第2の凹溝42,62の底部に開口している。ロッカーアーム7〜10の第3の軸孔85は、筒体73(突起)と同一軸線上に位置しかつロッカーアーム7〜10を貫通して形成されている。第1および第2の軸孔41,61の孔径と、第3の軸孔85の孔径とは、同一である。
この実施の形態によれば、筒体73が第1および第2の凹溝42,62に沿って移動し、第1および第2の軸孔41,61と対向する位置に位置付けられることにより、ロッカーシャフト81が第1および第2の軸孔41,61と第3の軸孔85とに跨って嵌合可能な状態になる。このため、第3の軸孔85を第1および第2の軸孔41,61に対して位置決めするにあたって、筒体73と第1および第2の凹溝42,62との嵌合を利用して正確にかつ早く行うことができる。
したがって、この実施の形態によれば、第2の支持形態から第1の支持形態に移行する動作が円滑に行われる動弁装置を提供することができる。
【0068】
この実施の形態による第1および第2の凹溝42,62は、カムシャフト3,4の軸方向から見て、吸気弁5または排気弁6の弁軸先端5c,6cを中心とする円弧状に形成されている。また、この第1および第2の凹溝42,62は、第2の支持形態が採られるときのロッカーアーム7〜10の揺動方向に沿う形状に形成されている。このため、この実施の形態によれば、第2の支持形態が採られている状態でロッカーアーム7〜10が円滑に揺動するから、気筒休止時にカムシャフト3,4の回転に伴ってロッカーアーム7〜10が揺動することに起因する出力の損失量が少なくなる。また、ロッカーアーム7〜10の筒体73と第1および第2の凹溝42,62との摺動部分の摩耗が低減されるから、長期間にわたって初期の性能を維持することが可能になる。
【0069】
この実施の形態によるエンジンの動弁装置1においては、第1の作動油通路45に油圧が供給されることにより第1の支持形態が採られ、第2の作動油通路65に油圧が供給されることにより第2の支持形態が採られる。
このため、第1の支持形態と第2の支持形態との切替えが行われるときにロッカーシャフト81が油圧によって強制的に移動させられる。したがって、この実施の形態によれば、第1の支持形態と第2の支持形態とを切替える動作の信頼性が高い動弁装置を提供することができる。
【0070】
この実施の形態によるロッカーアーム7〜10は、第2の支持形態が採られて揺動した状態において、第2のロッカーシャフト半部84およびピストン66と対向するピン48(ストッパー)を備えている。
このため、この実施の形態によれば、第2の支持形態が採られているときにロッカーアーム7〜10の揺動が第2のロッカーシャフト半部84およびピストン66によって妨げられることがない。したがって、気筒休止時にロッカーアーム7〜10が常に正しく揺動するから、動作の信頼性がより一層高くなるエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0071】
この実施の形態による第1の支持壁34,35と第2の支持壁56,57は、それぞれ別体に形成されているとともに、取付用ボルト37(締結部材)によって一方が他方に対して分離可能に結合されている。
このため、この実施の形態によれば、第1および第2の凹溝42,62を第1の支持壁34,35と第2の支持壁56,57とにそれぞれ機械加工によって形成することができる。したがって、ロッカーアーム7〜10の揺動を規制するにあたって凹溝からなる軌道49を備えているにもかかわらず、製造が容易なエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0072】
この実施の形態による第1の支持壁34,35は、シリンダヘッド2のカムシャフト用ジャーナル部材15と一体に形成されている。
このため、この実施の形態によれば、第1の支持壁34,35をカムシャフト用ジャーナル部材15に取付けるための取付部を備える必要がないから、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0073】
この実施の形態によるロッカーアーム7〜10における吸気弁5または排気弁6の弁軸と接触する接触部分71aは、ロッカーアーム7〜10の一端部にカムシャフト3,4の軸方向から見て断面円弧状に形成されている。この接触部分71aの突出端の形状は、第1の円弧76と第2の円弧77とを接続した形状である。ロッカーアーム7〜10の他端側に位置する第1の円弧76の半径R1は、ロッカーアーム7〜10の一端側に位置する第2の円弧77の半径R2より小さく形成されている。
【0074】
この実施の形態によるロッカーアーム7〜10の接触部分71aは、断面円弧状に形成されているから、第2の支持形態が採られているときにロッカーアーム7〜10の揺動に伴ってシム25(弁軸)に対して転がることができる。この接触部分71aの突出端を形成する複数の円弧のうち、半径が小さい第1の円弧76は、ロッカーアーム7〜10の揺動角度が大きくなるときにシム25に接触する。ロッカーアーム7〜10の揺動角度が大きくなるときとは、ロッカーアーム7〜10の筒体73がカムシャフト3,4から離間する方向に揺動するときである。
【0075】
すなわち、ロッカーアーム7〜10の揺動角度が最大になるまで、ロッカーアーム7〜10の押圧片71がシム25の先端面から脱落することなくこの先端面に沿って転がる。
したがって、この実施の形態によれば、バルブリフト量が多いカムシャフト3,4を使用して通常運転状態と気筒休止状態とを切替え可能なエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0076】
(第2の実施の形態)
支持機構は
図16〜
図19に示すように構成することができる。これらの図において、前記
図1〜
図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
第2の実施の形態によるエンジンの動弁装置101は、
図1〜
図15によって説明したエンジンの動弁装置1とは一部が異なるだけで、その他の部分は同等に形成されたものである。異なる一部とは、ロッカーアーム102〜105と、第1および第2の凹溝106,107と、ロッカーシャフト108と、ロッカーシャフト108を駆動する油圧系の構成である。
【0077】
この実施の形態によるロッカーアーム102〜105は、
図16に示すように、第1の実施の形態を採るときに用いられていたピン48を備えていない。この理由は、詳しくは後述するが、ロッカーシャフト108が第2の支持形態を採るときにロッカーアーム102〜105の移動領域内(空間S)に出ることがないからである。
また、この実施の形態による第1および第2の凹溝106,107は、第1の実施の形態を採るときに設けられていた延長部47,67を有していない。
【0078】
この実施の形態によるロッカーシャフト108は、
図17および
図18に示すように、軸線方向に並ぶ有底円筒状の第1のロッカーシャフト半部111と、有底円筒状の第2のロッカーシャフト半部112とによって構成されている。これらのロッカーシャフト半部111,112の外径は同一である。また、第1のロッカーシャフト半部111の長さと、第2のロッカーシャフト半部112の長さは、これらのロッカーシャフト半部111,112どうしを接触させてなるロッカーシャフト108の全長がロッカーアーム102〜105の第3の軸孔85の長さと一致する長さである。
【0079】
これらの第1のロッカーシャフト半部111および第2のロッカーシャフト半部112は、開口部が互いに対向する状態で第1〜第3の軸孔41,61,85に移動自在に嵌合している。
図18に示す第1のロッカーシャフト半部111は、第1の軸孔41と第3の軸孔85とに移動自在に嵌合している。
図18に示す第2のロッカーシャフト半部112は、第3の軸孔85と第2の軸孔61とに移動自在に嵌合している。
また、第1のロッカーシャフト半部111および第2のロッカーシャフト半部112の内部には、圧縮コイルばね113が収容されている。この圧縮コイルばね113は、これらのロッカーシャフト半部111,112どうしを互いに離間する方向へ付勢している。この実施の形態においては、この圧縮コイルばね113によって、請求項7記載の発明でいう「ばね部材」が構成されている。
【0080】
この実施の形態による第1の軸孔41(第1の円筒体44)には、有底円筒状に形成されたピストン114が移動自在に嵌合している。このピストン114は、第1の作動油通路45に供給された油圧を受けるためのものである。ピストン114は、底部が第1のロッカーシャフト半部111に接触する状態で第1の円筒体44の中に移動自在に嵌合している。ピストン114の開口側端部には、径方向の外側に向けて突出するフランジ状のストッパー片114aが設けられている。
【0081】
このストッパー片114aは、第1の円筒体44の端面44bに当接することによりピストン114aの移動を規制する。ピストン114の底面114b(第1のロッカーシャフト半部111と接触する面)は、
図19に示すように、ストッパー片114aが第1の円筒体44に当接した状態で第1の凹溝106の底面106aと同一平面上に位置付けられる。この実施の形態においては、第1の軸孔41に挿入されたピストン114と、第2の軸孔61に挿入されたピストン66とによって、請求項7記載の発明でいう「ピストン」が構成されている。
【0082】
この実施の形態による油圧式アクチュエータ46は、第1の支持形態が採られるときに第1の作動油通路45と第2の作動油通路65との両方を作動油が自由に移動できる状態にする。また、油圧式アクチュエータ46は、第2の支持形態が採られるときに第1の作動油通路45と第2の作動油通路65との両方に油圧を加える。
【0083】
この実施の形態に示すエンジンの動弁装置101においては、第1の支持形態が採られて第1の作動油通路45と第2の作動油通路65とにおいて油圧が消失すると、第1のロッカーシャフト半部111と第2のロッカーシャフト半部112とが圧縮コイルばね113のばね力によって押される。そして、第1のロッカーシャフト半部111は、
図18に示すように、第1の軸孔41と第3の軸孔85とに跨って嵌合する。一方、第2のロッカーシャフト半部112は、第2の軸孔61と第3の軸孔85とに跨って嵌合する。このため、第1の支持形態が採られることにより、ロッカーアーム102〜105が第1および第2のロッカーシャフト半部111,112を中心にして揺動し、通常運転状態となる。
【0084】
一方、第2の支持形態が採られると、第1の作動油通路45と第2の作動油通路65とに油圧が加えられる。この場合は、第1の軸孔41内のピストン114が第1のロッカーシャフト半部111をロッカーアーム102〜105側に押すとともに、第2の軸孔61内のピストン66が第2のロッカーシャフト半部112をロッカーアーム102〜105側に押す。そして、第1のロッカーシャフト半部111と第2のロッカーシャフト半部112は、
図19に示すように、それぞれ第3の軸孔85内に収容される。この第2の支持形態が採られることにより、ロッカーアーム102〜105が第1および第2の凹溝42,62に沿って揺動し、気筒休止状態となる。
【0085】
このため、この実施の形態によれば、第1の作動油通路45と第2の作動油通路65との両方に油圧を供給する状態と、これらの両作動油通路45,65から油圧が消失する状態とを切り替えるだけで第1の支持形態と第2の支持形態との切替えが行われる。すなわち、この実施の形態を採ることにより、これらの2つの作動油通路45,65において油圧の供給と停止とを個別に切り替える場合と比べて、油圧回路が単純になり、簡素化される。したがって、この実施の形態によれば、油圧式アクチュエータ46および油圧回路の製造コストを低く抑えることが可能なエンジンの動弁装置を提供することができる。
【0086】
上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態においては、第1の凹溝42および第2の凹溝62が円弧状に形成されている例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。第1の凹溝42および第2の凹溝62は、
図20に示すように、吸気弁5または排気弁6の弁軸に沿って延びる直線状に形成することができる。
この実施の形態を採る場合であっても上述した各実施の形態を採るときと同等の効果が得られる。