特許第6155385号(P6155385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155385
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】可動家具部分の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/453 20170101AFI20170619BHJP
   A47B 88/40 20170101ALI20170619BHJP
【FI】
   A47B88/00 H
   A47B88/04 E
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-506721(P2016-506721)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公表番号】特表2016-514576(P2016-514576A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】AT2014000060
(87)【国際公開番号】WO2014165878
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年12月1日
(31)【優先権主張番号】A291/2013
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガッサー,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ブルム,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ハンメルレ,ハーマン
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−516649(JP,A)
【文献】 特表2015−525622(JP,A)
【文献】 特表2012−531991(JP,A)
【文献】 特開2012−239738(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00−88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動家具部分(2)の駆動装置(1)であって、本装置は、
前記可動家具部分(2)を閉位置(SS)から開位置(OS)へと移動させるための駆出要素(3)と、
前記駆出要素(3)に作用力を及ぼす駆出作用力保存手段(4)と、
ロック要素(6)を介してロック部分(V)にて前記駆出要素(3)をロックするためのロック装置(5)とを含んでおり、前記可動家具部分(2)を閉方向(SR)にて前記閉位置(SS)から過剰押込位置(US)へと過剰に押し込むことによって、前記ロック装置(5)がロック解除され、前記可動家具部分(2)が開方向にて前記駆出作用力保存手段(4)と前記駆出要素(3)とによって可動となり、
前記ロック装置(5)は、前記ロック要素(6)のための予備ロック部分(VV)を有しており、前記可動家具部分(2)をその閉動作時に、閉方向(SR)において前記閉位置(SS)の後方の通過押込位置(DS)へと押し込むことで、通過押込回避部分(D)を介して、前記ロック要素(6)が前記予備ロック部分(VV)から前記ロック部分(V)へ移動することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ロック部分(V)は、前記予備ロック部分(VV)とは異なっており、前記予備ロック部分(VV)は、閉方向(SR)において前記ロック部分(V)の後方に存在していることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ロック装置(5)は、前記ロック要素(6)のためガイド経路(7)を有しており、前記ロック要素(6)は、前記ガイド経路(7)ラッチ領域(8)にて前記ロック部分(V)に保持できることを特徴とする請求項1または2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ガイド経路(7)は、応力付与部分(S)曲り部分(L)、前記予備ロック部分(VV)ラッチ領域(8)の形態である前記ロック部分(V)、傾斜した湾曲部分またはロック解除部分(E)、および駆出部分(A)を連続して有していることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記傾斜したロック解除または湾曲部分(E)と前記駆出部分(A)との間に、前記ガイド経路(7)は、前記ロック要素(6)のための前記通過押込回避部分(D)とは別な第2の回避部分(W)を有していることを特徴とする請求項4記載の駆動装置。
【請求項6】
前記ロック要素(6)のための保持要素(9)が、前記予備ロック部分(VV)内に配置または提供されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ロック装置(5)は、前記ロック要素(6)のためのガイド経路(7)を有しており、前記ロック要素(6)は、前記ガイド経路(7)のラッチ領域(8)にて前記ロック位置(V)に保持でき、
前記ロック要素(6)のための保持要素(9)が、前記予備ロック部分(VV)内に配置または提供され、
前記予備ロック部分(VV)内で、前記ガイド経路(7)は前記保持要素(9)として、前記ロック要素(6)のために直線状の接触面(F)を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項8】
前記保持要素(9)は可動制動要素(10)であることを特徴とする請求項6記載の駆動装置。
【請求項9】
前記可動制動要素(10)は、制動的に回転可能に取り付けられたギヤ(11)を有しており、該ギヤ(11)の少なくとも一つの歯部(12)が前記ロック要素(6)によって前記予備ロック部分(VV)で接触でき、前記ロック部分(V)の方向に制動的に可動であることを特徴とする請求項8記載の駆動装置。
【請求項10】
前記駆出作用力保存手段(4)は、前記可動家具部分(2)を開方向(OR)および/または閉方向(SR)に移動させることによって荷重できることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項11】
前記駆出要素(3)は、前記駆出作用力保存手段(4)が限界まで荷重された後にのみ、前記ロック要素(6)を介して前記予備ロック部分(VV)にロック可能であることを特徴とする請求項10記載の駆動装置。
【請求項12】
前記可動家具部分(2)を開位置(OS)から前記閉位置(SS)に引き込むための引込装置(13)を有していることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項13】
前記ロック要素(6)が前記予備ロック部分(VV)に到達したとき、前記可動家具部分(2)は開位置(OS)にあり、前記可動家具部分(2)はその開位置(OS)から前記閉位置(SS)へと前記引込装置(13)によって移動可能であることを特徴とする請求項12記載の駆動装置。
【請求項14】
前記ロック要素(6)は、前記引込装置(13)による前記可動家具部分(2)の前記閉位置(SS)への移動時にのみ、前記予備ロック部分(VV)から前記ロック部分(V)へと移動可能であることを特徴とする請求項12または13記載の駆動装置。
【請求項15】
前記ロック要素(6)が、前記引込装置(13)の作用によって、前記予備ロック部分(VV)から前記ロック部分(V)へと移動可能であることを特徴とする請求項14記載の駆動装置。
【請求項16】
家具筐体(15)、該家具筐体(15)に対して可動な家具部分(2)、および該可動家具部分(2)のための請求項1から15のいずれかに記載の駆動装置(1)を含んだ家具(14)。
【請求項17】
前記駆動装置(1)を前記可動家具部分(2)上に配置し、前記駆出要素(3)と係合できる同伴部分(16)を前記家具筐体(15)上に配置したことを特徴とする請求項16記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動家具部分の駆動装置に関し、本装置は、可動家具部分を閉位置から開位置へと移動させるための駆出要素と、駆出要素に作用力を及ぼす駆出作用力保存手段と、ロック要素を介してロック部分にて駆出要素をロックするためのロック装置とを含んでおり、可動家具部分を閉方向にて閉位置から過剰押込位置へと過剰に押し込むことによって、ロック装置がロック解除され、可動家具部分が開方向にて駆出作用力保存手段と駆出要素とによって可動となる。本発明は、家具筐体と、家具筐体に対して可動な可動家具部分と、本発明による可動家具部分の駆動装置とを含んだ家具にも関する。
【背景技術】
【0002】
可動家具部分(例えば引出し)を押し込むことで、可動家具部分の家具筐体からのロック解除が発生し、可動家具部分が開かれる、すなわち駆出されるという駆動装置は、長年にわたって家具装着具業界において既に知られている。そのような駆動装置はいわゆるタッチラッチ機構を有している。この機構では、開位置からの引出しの閉動作と、閉位置からの引出しのロック解除、すなわち開動作が同じ方向、すなわち閉方向となる。通常の(手動または引込装置による)穏やかな閉動作の場合には、引出し、または可動家具部分はロック装置によって閉位置に保たれる。しかしながら、引出しが過剰に強く閉じられた場合、またはエンドアバットメント(端部当接部)まで押し込まれた場合には、駆動装置はもはや全くロックできないか、または直ちに再起動され、その結果、可動家具部分のそのような不正な操作の場合には、引出しを確実に閉じておくことが保証できない。
【0003】
この問題を解決するため、先の優先日を有するが、優先公開物ではないオーストリア特許出願A52/2012から、過剰に速い閉動作の場合の過剰押込位置への移動を防止するための阻止要素が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、可動家具部分を押し込み過ぎることによる、不正な操作の場合でも、駆動装置の直接起動またはロック解除を防止する別な可能な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これは、請求項1による駆動装置によって達成される。したがって、ロック装置は、ロック要素のための予備ロック部分(予備的にロック動作を補助する部分)を有しており、可動家具部分をその閉動作時に、閉方向において閉位置の後方の通過押込位置へと押し込むことで、通過押込回避部分を介して、ロック要素が予備ロック部分からロック部分へ移動する。このように、最初のロック時に、ロック要素は直ちにロック部分へ移動せず、それ自体の通過押込回避部分を有する予備ロック部分に保たれ、そこからロック要素は直接駆出されることはできないが、先ず実際のロック部分へと移動する。これを可能にするためには、ロック部分が予備ロック部分とは異なっていなければならない。特にロック部分が、可動家具部分の開方向において、予備ロック部分から離れていなければならない。換言すれば、予備ロック部分は、閉方向においてロック部分の後方に存在している。
【0006】
それ自体ではそのような通過押込保護構造は、例えばボールペン原理に基づく機構のようなタッチラッチ機構の多様な設計形態において適切に利用できる。しかしながら、好適にはロック装置は、好適にはピン形状のロック要素のための、好適にはカージオイド形状のガイド経路を有しており、ロック要素は、好適にはカージオイド形状のガイド経路の、好適には溝形状(トラフ形状)のラッチ領域にてロック位置に保持またはロックできる。好適には、そのようなカージオイド形状のガイド経路を有するロック装置の設計形態では、ガイド経路は好適には直線状の応力付与部分、好適には曲状の曲り部分、予備ロック部分、好適にはトラフ形状のラッチ領域(ラッチ凹部)の形態であるロック部分、傾斜した湾曲部分またはロック解除部分、および駆出部分を連続して有している。通常の駆出またはロック解除も可能にするため、好適には、傾斜したロック解除または湾曲部分と駆出部分との間に、ガイド経路は、ロック要素のための通過押込回避部分とは別な第2の回避部分を有している。
【0007】
本発明の特に好適な実施態様によれば、ロック要素のための保持要素が、予備ロック部分内に配置または提供されている。
【0008】
保持要素の第1の変形例によれば、予備ロック部分内で、ガイド経路は保持要素として、ロック要素のために直線状の接触面を有している。直線状の接触面は、ロック要素に対する駆出作用力保持手段からの作用力が、ロック要素をその直線状の接触面上に保持するように配向されている。好適には、作用力は通常は実質的に垂直にこの接触面に作用する。
【0009】
保持要素の第2の変形例として、保持要素は、好適には回転ダンパの形態である可動制動(緩衝)要素の形態である。当然ながら、回転ダンパの代わりに、並進運動等で可動な制動ピストンを利用することも可能である。この制動要素のために、制動要素は好適には制動的に回転可能に取り付けられたギヤ(歯車)を有しており、そのギヤの少なくとも一つの歯部がロック要素によって予備ロック部分で接触でき、ロック部分の方向に制動的に可動である。したがって、ロック要素はその制動要素で予備ロック部分に静止状態で保持されず、ロック部分の方向にゆっくりと移動する。したがって、ロック要素が制動要素とまだ接触しているときに、可動家具部分が通過押込位置へと押し込まれた場合には、ロック要素は、傾斜した湾曲部分またはロック解除部分を介して、駆出部分へと直接的に移動する代わりに、先ず通過押込回避部分へ逸れる。
【0010】
それ自体は知られているが、駆出作用力保存手段は、可動家具部分を開方向および/または閉方向に移動させることによって荷重(エネルギー付与)できる。好適には本発明では、駆出要素は、駆出作用力保存手段の完全な荷重化後にのみ、ロック要素を介して予備ロック部分にロック可能である。換言すれば、駆出作用力保存手段は、予備ロック部分にロック要素を介してロックした時に十分に応力付与される。
【0011】
好適には、駆動装置は、可動家具部分を開位置から閉位置に引き込むための引込装置を有しており、この場合には、ロック要素が予備ロック部分に到達したとき、可動家具部分は開位置にあり、可動家具部分はその開位置から閉位置へと引込装置によって移動可能である。
【0012】
特に、保持要素が直線状の接触面の形態である場合、好適にはロック要素のロック位置への移動のため、ロック要素は、引込装置による可動家具部分の閉位置への移動時にのみ、予備ロック部分からロック部分へと移動可能である。この点において、ロック要素が、引込装置の作用によって、予備ロック部分からロック部分へと移動可能であるなら特に有利である。
【0013】
特許保護は、請求項16記載の特徴を有する家具にも請求される。原則的に、この場合には駆動装置を家具筐体上に配置でき、駆出要素を介して可動家具部分を駆出できる。しかしながら、駆動装置を可動家具部分上に配置し、駆出要素と係合できる同伴部分を家具筐体上に配置することが好適である。このようにして、引出しがそれ自体を駆動装置によって家具筐体からいわば押し離す。
【0014】
本発明のさらなる詳細と利点は、図面で解説される実施例に関する詳細な説明によって以降でさらに詳説される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】家具筐体内の可動家具部分の多様な位置を概略的に示している。
図2】駆動装置の第1実施例の分解図である。
図3】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図4】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図5】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図5a】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図5b】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図6】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図6a】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図6b】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図7】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図7a】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図8】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図9】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図10】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図11】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図12】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図13】ガイド経路の多様な位置にあるロック要素を備えた駆動装置を示している。
図14】予備ロック部分内の制動要素を備えた駆動装置の第2の実施例を示している。
図14a】予備ロック部分内の制動要素を備えた駆動装置の第2の実施例を示している。
図15】予備ロック部分内の制動要素を備えた駆動装置の第2の実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、家具筐体15と、全部で4体の可動家具部分2とを含んだ家具14を概略的に示している。それぞれの可動家具部分2は、少なくとも一つの引出し収容体17と前方パネル18とを含んでいる。可動家具部分2は、引出しレール19、筐体レール20およびオプションで中央レール(図示せず)を含んだ延出ガイド手段21を介して家具筐体15に取り付けられている。最上の引出しに関して、駆動装置1は、駆出要素3、ガイド経路7内で可動なロック要素6、および駆出作用力保存手段4と共に、可動家具部分2、またはその引出しレール19上に固定または配置されている。ロック装置5は、ガイド経路7とロック要素6とによって形成されている。筐体レール20または家具筐体15自体の上には、駆出要素3が少なくとも部分的に係合する同伴部分16が配置されている。最上の引出しは開位置OSにある。引出しがこの開位置OSから閉方向SRにさらに移動すると、ロック要素6がガイド経路7の予備ロック部分VVに移動する(以降で解説する図5で詳説する)。この位置で(上から2番目の引出し)、駆出作用力保存手段が完全に応力付与され、可動家具部分2が延出ガイド手段21に一体化された引込装置13(概略的にのみ図示)によって閉位置SS(上から3番目の引出し)に移動できる。通常のロック解除および開プロセスにおいては、この閉位置SSから開始して、可動家具部分2は過剰押し込み位置US(図1では最下の引出し)へと移動する。この過剰押し込み位置は、可動家具部分2に対して通過押込位置DSにも正確に対応している。しかしながらこの構造では、ロック要素6は異なる部分(通過押込回避部分Dまたは第2の回避部分W)で駆動装置1に配置されている。閉方向SRにて実行される通常の過剰押し込み作用の後、可動家具部分2が駆動装置1によって開方向ORに駆出される。
【0017】
図2は、駆動装置1の第1の実施例の必須部材を示す分解図である。駆動装置1は、基部プレート23を介して可動家具部分2または引出しレール19に固定される。一方、カバー22は基部プレート23に取り付けられる。基部プレート23内には、応力付与部分S、曲り部分L、予備ロック部分VV、通過押込回避部分D、ロック部分V、傾斜した湾曲部分およびロック解除部分E、第2の回避部分W、および駆出部分Aを備えたガイド経路7が提供されている。家具筐体15に対する閉位置SSでの基部プレート23の位置は、深さ調節ホイール24によって調節できる。駆出要素3はカバー22と基部プレート23それぞれに対して可動に取り付けられる。駆出作用力保存手段4は、片側でバネ基部25を介して基部プレート23に、また別側でバネ基部26を介して駆出要素3に保持される。駆出作用力保存手段4は引張バネの形態である。駆出要素3には、そこでロックレバー28が回転軸Xを介して回転可能に支持される回転ベアリング27が配置される。ロックレバー28の前端には、ピン形状であり、ガイド経路7に係合するロック要素6が配置される。引込スライダ30は駆出要素3に部分的に接続され、捕捉アーム29がスライダ30に回転可能に取り付けられる。さらに引込スライダ30は、ラッチ係合アバットメント35とアバットメント32とを有しており、一方、突起部34と旋回アバットメント33はロックレバー28に提供される。
【0018】
図3は、可動家具部分2が開位置OSにあるときの駆動装置1を示している。この場合には、捕捉アーム29はその解除位置に旋回される。駆出作用力保存手段4は応力から解放されている。ロック要素6は、ガイド経路7の応力付与部分Sの始まり部分で、その当初位置にある。
【0019】
図4に示すように、駆動装置1を備えた可動家具部分2が閉方向SRに移動すると、筐体に対して固定されている同伴部分16が引込要素30に突き当たって、カバー23に対して、引込スライダ30に連結されている駆出要素3を移動させ、この場合には、ロック要素6が応力付与部分Sに沿って移動し、同時に駆出要素3に固定されている駆出作用力保存手段4が応力付与される。この閉動作において、同伴部分16が、捕捉位置にある捕捉アーム29と引込装置との間の捕捉領域31に保持または捕捉される。
【0020】
通常の場合には手動であるこの閉動作は、図5に示す位置(まだ開位置OS)に到達するまで継続される。ロック要素6が曲り部分Lの曲形状のおかげで予備ロック部分VVの方向に移動するという事実によって、ロックレバー28全体も回転軸X周囲で反時計回り方向に旋回し、引込スライダ30のアバットメント32がロックレバー28上で突起部34との係合が外れるが、これは、駆出要素3が引込スライダ30から脱連結されて、手動による作用力の適用から外れることを意味する。そのような脱連結が発生するとすぐに、完全に応力付与状態である駆出作用力保存手段4の作用力がロック要素6に直接作用する。この瞬間に、ロック要素6は予備ロック部分VVに正確に存在するので、駆出作用力保存手段4の作用力が、ガイド経路7の保持要素9を形成する直線状の接触面Fにほぼ垂直に作用する。このように、図5に示すこの位置において、駆出要素3が予備ロック部分VVでロックされる(詳細は図5a参照)。図5bの詳細図は、旋回アバットメント33が角度αだけまだ突出している状態をさらに示している。
【0021】
続いて、図4では概略的にのみ示されている引込装置13が、可動家具部分2を駆動装置1と共に閉方向SRにさらに移動させることができる。その動作中に引込スライダ30上のラッチ係合アバットメント35がロックレバー28の旋回アバットメント33と突き当たると(図6b参照)、ロックレバー28が回転軸X周囲で反時計回り方向にさらに旋回し、ロック要素6が予備ロック部分VVから外れ、ロック部分Vを形成しているトラフ形状のラッチ領域8の方向に移動する(図6a参照)。
【0022】
ロック要素6を予備ロック部分VVから解除すると、引込装置13がいわばその最終“作用”を実行し、それによって、図7に示すようにロック要素6が駆出作用力保存手段4の僅かな応力解放によってロック位置Vへと移動する。このようにして、可動家具部分2は閉位置SSに存在する。図7aに示すように、旋回アバットメント33もまた、駆出作用力保存手段4の僅かな応力解放動作のおかげで、ラッチ係合アバットメント35から再び少々持ち上げられる。
【0023】
図3から図7では、不正な操作が発生しない通常の閉動作のプロセスを解説している。しかしながら、駆出作用力保存手段4が応力付与されてもすぐには手動の閉動作は停止せず、可動家具部分2が閉位置SSに押し込まれ、さらに、それを越えて図8に示す通過押込位置DSに押し込まれ、ロック要素6は予備ロック部分VVから通過押込回避部分Dに、引込スライダ30がカバー23内のガイド経路36の端部37に当接するまで、または前方パネル18が家具筐体15に衝突するまで移動される。
【0024】
最終的に、不正な操作に気付かれたら、または可動家具部分2が誤って完全に手動で実行された閉手順のおかげで解放されたなら、駆出作用力保存手段4の応力解放によって、ロック要素6が通過押込回避部分Dからロック部分Vに通過し、そして図9に示す閉位置SSに到達する。図9に示すこの位置は、図7に示す位置に再び対応する。
【0025】
閉位置SSから開始して、ロック装置5は何時でもユーザによって可動家具部分2を閉方向SRに過剰に押し込むことでロック解除できる。この場合には、それ自体知られているが、ロック要素6が湾曲したロック解除部分Eによって第2の回避部分W(図10参照)に移動されることで、図10に示す過剰押し込み部分USに到達する。
【0026】
その後、手動によるロック解除動作が終了するとすぐ、駆出作用力保存手段4が駆出要素3をカバー23または基部プレート23に対して引っ張ることで、可動家具部分2が駆出されるか、または可動家具部分2に固定された駆動装置1がそれ自体を筐体に対して固定された同伴部分16から押し離す。この場合には、ロック要素6がガイド経路7の駆出部分Aに沿って移動し、可動家具部分2が図11の開位置OSに移動する。
【0027】
さらなる開動作で、引込スライダ30が駆出要素3に再び連結され、この場合には、ロックレバー28が旋回し、ロック要素6がその当初位置の方向に再び移動する。
【0028】
同時に図12に示すように、同伴部分16が捕捉アーム29の旋回運動によって再び解放される。
【0029】
図13で、ロック要素6はその当初位置に再び存在し、捕捉アーム29は再び完全に開かれ、開位置OSにある可動家具部分2は、同伴部分16とは無関係に自由に移動できる。
【0030】
直線状の接触面Fの形態である保持要素9の代わりに、図13では保持要素9は制動要素10、さらに特定すれば、ギヤ11の形態である。ギヤ11はその歯部で、ガイド経路7の予備ロック部分VV内に突き出ている。ロック要素6が図14aの位置に到達するとすぐに、駆出作用力保存手段4によって、または対応する曲り部分によってロック部分Vの方向に移動される。ロック要素6が予備ロック部分VVに突き出る歯部12に当接すると、粘着性の材料内で回転可能に取り付けられているギヤ11が反時計回り方向に非常にゆっくりと移動する範囲において、駆出作用力保存手段4によって起動されるロック要素6は制動される。ギヤ11が約30°移動すると、ロック要素6はもはや歯部12と接触せず、図15に示すロック部分Vへと移動することで、可動家具部分2はその閉位置SSに存在する。ロック要素6が比較的に長く予備ロック部分VVに存在するため、制動要素10の回転運動のそれぞれの持続時間に応じて、可動家具部分2が閉位置を越えて押し込まれると(不正な操作)、ロック要素が通過押込回避部分Dへと移動でき、そこから不正な操作の終了後に実際のロック位置Vに移動できる。
【0031】
このようにして、本発明は、可動家具部分が通過押込位置に押し込まれた時に、通過押込回避部分Dをロック要素6のために利用できるよう、ロック要素6がロック部分Vにて直ちにロックされず、可動家具部分2の閉位置SSに到達する前に、予備ロック部分VVでまだロックされている範囲において、通過押込位置への移動に対する改良された保護を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図5a
図5b
図6
図6a
図6b
図7
図7a
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図14a
図15