特許第6155410号(P6155410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6155410
(24)【登録日】2017年6月9日
(45)【発行日】2017年6月28日
(54)【発明の名称】ケーブル支持具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20170619BHJP
   H02G 7/12 20060101ALI20170619BHJP
【FI】
   H02G1/02
   H02G7/12
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-13096(P2017-13096)
(22)【出願日】2017年1月27日
【審査請求日】2017年1月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】石谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】安田 英幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 次郎
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−166859(JP,A)
【文献】 特開2010−233420(JP,A)
【文献】 特開2013−179789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配電線に取り付けられる電線把持部材と、
前記第1配電線より上方に位置する第2配電線から分岐したケーブルに取り付けられるケーブル把持部材と、
前記電線把持部材と前記ケーブル把持部材とを連結する連結部材と、
を備え
前記電線把持部材は、前記連結部材に固定された固定片と、回転軸を中心に回転できるように前記固定片に連結された可動片と、前記回転軸を中心とした周方向に前記可動片を押す弾性部材と、を備え、
前記可動片は、前記第1配電線が前記可動片に押し付けられると第1方向に回転し、且つ前記第1配電線が所定位置に達すると前記第1方向とは反対の第2方向に回転することで前記第1配電線を前記固定片に押し付ける
ケーブル支持具。
【請求項2】
前記可動片は、前記第1配電線に接触させるための第1凹曲面及び第2凹曲面を備え、
前記回転軸に沿う軸方向から見た第1凹曲面は第1円弧を描き、
前記軸方向から見た前記第2凹曲面は、前記第1円弧の曲率半径とは異なる曲率半径を有する第2円弧を描く
請求項に記載のケーブル支持具。
【請求項3】
前記第1円弧の曲率半径は、所定の第1断面積を有する前記第1配電線の半径に等しく、
前記第2円弧の曲率半径は、前記第1断面積とは異なる第2断面積を有する前記第1配電線の半径に等しい
請求項に記載のケーブル支持具。
【請求項4】
前記可動片は、前記固定片の両側に配置され、
前記電線把持部材は、2つの前記可動片にそれぞれ設けられた孔を貫通するロッドを備える
請求項からのいずれか1項に記載のケーブル支持具。
【請求項5】
前記電線把持部材は、2つの前記可動片の外側で前記ロッドに被せられたカバーを備え、
前記孔の内周は、前記ロッドの外周より大きく且つ前記カバーの外周より小さい
請求項に記載のケーブル支持具。
【請求項6】
前記固定片は、前記連結部材に固定されるベースと、前記ベースから突出する第1アームと、前記ベースから突出し且つ前記第1アームより前記ケーブル把持部材側に位置する第2アームと、を備え、
前記第2アームの先端は、前記第1アームの先端より前記ベース側に位置する
請求項からのいずれか1項に記載のケーブル支持具。
【請求項7】
前記第2アームは、前記連結部材の長手方向に貫通する穴である覗き窓を備える
請求項に記載のケーブル支持具。
【請求項8】
第1配電線に取り付けられる電線把持部材と、
前記第1配電線より上方に位置する第2配電線から分岐したケーブルに取り付けられるケーブル把持部材と、
前記電線把持部材と前記ケーブル把持部材とを連結する連結部材と、
を備え、
前記ケーブル把持部材は、前記連結部材に固定されたケースと、前記ケースに対してスライド可能に連結されたロック部材と、を備え、
前記ケースは、前記連結部材に固定される基部と、前記基部から前記連結部材とは反対側に突出する第1フィンと、前記基部から突出し且つ前記第1フィンに対向する第2フィンと、を備え、
前記ロック部材は、前記第1フィンを貫通する第1支持棒と、前記第1フィンを貫通し且つ前記第1支持棒に対して前記基部とは反対側に位置する第2支持棒と、を備え、
前記電線把持部材が前記第1配電線に取り付けられ且つ前記連結部材の長手方向が水平方向に沿っている時、前記第2支持棒は前記第1支持棒より鉛直方向下方に位置す
ーブル支持具。
【請求項9】
前記ケーブル把持部材は、前記連結部材に固定されたケースと、前記ケースに対してスライド可能に連結されたロック部材と、を備え、
前記ケースは、前記連結部材に固定される基部と、前記基部から前記連結部材とは反対側に突出する第1フィンと、前記基部から突出し且つ前記第1フィンに対向する第2フィンと、を備え、
前記ロック部材は、前記第1フィンを貫通する第1支持棒と、前記第1フィンを貫通し且つ前記第1支持棒に対して前記基部とは反対側に位置する第2支持棒と、を備え、
前記電線把持部材が前記第1配電線に取り付けられ且つ前記連結部材の長手方向が水平方向に沿っている時、前記第2支持棒は前記第1支持棒より鉛直方向下方に位置する
請求項1から7のいずれか1項に記載のケーブル支持具。
【請求項10】
前記基部は、前記第1支持棒及び前記第2支持棒に面する傾斜面を備え、
前記第1支持棒の長手方向に対する直交平面で前記ケーブル把持部材を切った断面において、前記傾斜面が描く線分は、前記第1支持棒及び前記第2支持棒の共通外接線に沿う
請求項8又は9に記載のケーブル支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
配電線に対する作業が必要となった時、需要者への送電を停止せずに作業を行う無停電工法が用いられる。無停電工法として、バイパス工法が知られている。例えば特許文献1にはバイパス工法の一例が記載されている。バイパス工法では、作業対象となる部分を迂回するようにバイパスケーブルが配電線に取り付けられる。
【0003】
ところで、配電線系統においては、3本の配電線が水平方向に並べられる部分と、3本の配電線が鉛直方向に並べられる部分(以下、垂直配列部分)とがある。垂直配列部分においては、上方の配電線に取り付けられたバイパスケーブルが下方の配電線に接することがある。このため従来においては、短絡を防止するために、配電線のうちバイパスケーブルが接触する部分に筒状の絶縁カバーが取り付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、絶縁カバーが配電線に取り付けられていても、雨天の時などには配電線とバイパスケーブルとの間で短絡が生じる可能性があった。このため、垂直配列部分における配電線から分岐したケーブルと他の配電線との間の短絡を防ぐことができる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、垂直配列部分における配電線から分岐したケーブルと他の配電線との間の短絡を防ぐことができるケーブル支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係るケーブル支持具は、第1配電線に取り付けられる電線把持部材と、前記第1配電線より上方に位置する第2配電線から分岐したケーブルに取り付けられるケーブル把持部材と、前記電線把持部材と前記ケーブル把持部材とを連結する連結部材と、を備える。
【0008】
これにより、第1配電線とケーブルとの間の距離が大きくなる。したがって、ケーブル支持具は、垂直配列部分における配電線から分岐したケーブルと他の配電線との間の短絡を防ぐことができる。
【0009】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記電線把持部材は、前記連結部材に固定された固定片と、回転軸を中心に回転できるように前記固定片に連結された可動片と、前記回転軸を中心とした周方向に前記可動片を押す弾性部材と、を備え、前記可動片は、前記第1配電線が前記可動片に押し付けられると第1方向に回転し、且つ前記第1配電線が所定位置に達すると前記第1方向とは反対の第2方向に回転することで前記第1配電線を前記固定片に押し付けることが好ましい。
【0010】
これにより、作業者は、電線把持部材を第1配電線に押し付けるだけで電線把持部材を第1配電線に取り付けることができる。すなわち、電線把持部材を第1配電線に取り付ける作業が容易になる。
【0011】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記可動片は、前記第1配電線に接触させるための第1凹曲面及び第2凹曲面を備え、前記回転軸に沿う軸方向から見た第1凹曲面は第1円弧を描き、前記軸方向から見た前記第2凹曲面は、前記第1円弧の曲率半径とは異なる曲率半径を有する第2円弧を描くことが好ましい。
【0012】
これにより、可動片の第1配電線との接触部分が平面である場合と比較して、可動片の第1配電線との接触面積が大きくなる。このため、第1配電線の振動が抑制される。また、第1凹曲面及び第2凹曲面がそれぞれ異なる円弧を描くので、電線把持部材は、外径が異なる複数種類の第1配電線に対応することができる。
【0013】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記第1円弧の曲率半径は、所定の第1断面積を有する前記第1配電線の半径に等しく、前記第2円弧の曲率半径は、前記第1断面積とは異なる第2断面積を有する前記第1配電線の半径に等しいことが好ましい。
【0014】
これにより、第1凹曲面及び第2凹曲面は、それぞれ異なる断面積を有する第1配電線の外周面に沿う。したがって、固定片と可動片との間で第1配電線が振動しにくい。
【0015】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記可動片は、前記固定片の両側に配置され、前記電線把持部材は、2つの前記可動片にそれぞれ設けられた孔を貫通するロッドを備えることが好ましい。
【0016】
これにより、作業者は、ロッドに力を加えることで2つの可動片を一緒に動かすことができる。このため、第1配電線を電線把持部材から取り外す作業が容易になる。すなわち、把持状態の解除が容易になる。
【0017】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記電線把持部材は、2つの前記可動片の外側で前記ロッドに被せられたカバーを備え、前記孔の内周は、前記ロッドの外周より大きく且つ前記カバーの外周より小さいことが好ましい。
【0018】
これにより、それぞれの可動片は、孔の内周面とロッドとの間の隙間分だけ互いに独立して動くことができる。このため、2つの可動片が同時に動くことが抑制されるので、少なくとも一方の可動片が第1配電線に接触する。したがって、把持状態(可動片が第1配電線を固定片に押し付けている状態)の意図しない解除が防がれる。
【0019】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記固定片は、前記連結部材に固定されるベースと、前記ベースから突出する第1アームと、前記ベースから突出し且つ前記第1アームより前記ケーブル把持部材側に位置する第2アームと、を備え、前記第2アームの先端は、前記第1アームの先端より前記ベース側に位置することが好ましい。
【0020】
これにより、作業者がケーブル把持部材側から電線把持部材を見た場合、第2アームの向こう側に第1アームを視認できる。このため、第1配電線が第1アームと第2アームとの間に位置していることを作業者が認識できる。したがって、電線把持部材を第1配電線に取り付ける時の作業効率が向上する。
【0021】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記第2アームは、前記連結部材の長手方向に貫通する穴である覗き窓を備えることが好ましい。
【0022】
これにより、作業者は、覗き窓を介して第1アームと第2アームとの間の空間を視認できる。第1配電線が第1アームと第2アームとの間の空間に入ると、作業者からは、覗き窓を介して第1配電線及び第1アームが見える。このため、作業者は、第1配電線が第1アームより手前側にあることを覗き窓を介して認識しやすくなる。したがって、電線把持部材を第1配電線に取り付ける時の作業効率が向上する。
【0023】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記ケーブル把持部材は、前記連結部材に固定されたケースと、前記ケースに対してスライド可能に連結されたロック部材と、を備え、前記ケースは、前記連結部材に固定される基部と、前記基部から前記連結部材とは反対側に突出する第1フィンと、前記基部から突出し且つ前記第1フィンに対向する第2フィンと、を備え、前記ロック部材は、前記第1フィンを貫通する第1支持棒と、前記第1フィンを貫通し且つ前記第1支持棒に対して前記基部とは反対側に位置する第2支持棒と、を備え、前記電線把持部材が前記第1配電線に取り付けられ且つ前記連結部材の長手方向が水平方向に沿っている時、前記第2支持棒は前記第1支持棒より鉛直方向下方に位置することが好ましい。
【0024】
これにより、上方から垂れたケーブルがケースの基部及びロック部材に挟まれると、ケーブル支持具は、連結部材の長手方向が鉛直方向に対して角度をなすように傾く。このため、第1配電線とケーブルとの間の距離が大きくなるので、第1配電線とケーブルとの間の短絡がより防止されやすい。
【0025】
ケーブル支持具の望ましい態様として、前記基部は、前記第1支持棒及び前記第2支持棒に面する傾斜面を備え、前記第1支持棒の長手方向に対する直交平面で前記ケーブル把持部材を切った断面において、前記傾斜面が描く線分は、前記第1支持棒及び前記第2支持棒の共通外接線に沿うことが好ましい。
【0026】
これにより、ケーブルとケースの基部との間の接触面積が大きくなる。したがって、ケーブルにおいて応力が生じる位置が一箇所に集中しないので、ケーブルの破損が防止される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、垂直配列部分における配電線から分岐したケーブルと他の配電線との間の短絡を防ぐことができるケーブル支持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、使用状態における本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。
図2図2は、配電線系統の垂直配列部分を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す正面図である。
図4図4は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す右側面図である。
図5図5は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す左側面図である。
図6図6は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す平面図である。
図7図7は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す底面図である。
図8図8は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。
図9図9は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。
図10図10は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。
図11図11は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。
図12図12は、本実施形態に係る電線把持部材を拡大して示す正面図である。
図13図13は、図6におけるA−A断面図である。
図14図14は、図6におけるB−B断面図である。
図15図15は、図6におけるC−C断面図である。
図16図16は、間接活線作業に用いられる操作棒を示す正面図である。
図17図17は、小径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図18図18は、小径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図19図19は、小径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図20図20は、小径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図21図21は、中径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図22図22は、中径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図23図23は、大径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図24図24は、大径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図25図25は、大径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
図26図26は、本実施形態に係るケーブル支持具の取り付け方法を示す模式図である。
図27図27は、本実施形態に係るケーブル支持具の取り付け方法を示す模式図である。
図28図28は、本実施形態に係るケーブル支持具の取り付け方法を示す模式図である。
図29図29は、電線把持部材を備える挟持具の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0030】
(実施形態)
図1は、使用状態における本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。図2は、配電線系統の垂直配列部分を示す模式図である。図2に示すように、配電線系統においては、3本の配電線が鉛直方向に並べられる部分(以下、垂直配列部分)がある。すなわち、垂直配列部分においては、鉛直方向下方から上方に向かって配電線101、配電線102、配電線103の順に並んでいる。配電線101、配電線102、配電線103は、碍子及び腕金等を介して電柱100に支持されている。例えば、本実施形態に係るケーブル支持具1は、このような垂直配列部分に適用される。
【0031】
例えば、需要者への送電を停止せずに工事を行うためにバイパス工法が用いられる。バイパス工法においては、図1に示すように、配電線103にケーブル16が連結される。配電線103のケーブル16との連結部分には絶縁カバー15が取り付けられる。ケーブル16は、配電線103から下方に垂れ下がることになる。垂直配列部分においては、配電線103の下方に配電線102及び配電線101があるので、ケーブル16が配電線102又は配電線101に接しやすい。本実施形態に係るケーブル支持具1は、ケーブル16と配電線102との間の短絡、又はケーブル16と配電線101との間の短絡を防止するための装置である。以下において、一例として配電線102及びケーブル16にケーブル支持具1が取り付けられる場合について説明されるが、ケーブル支持具1は、配電線103とケーブル16に取り付けられてもよい。
【0032】
図3は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す正面図である。図4は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す右側面図である。図5は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す左側面図である。図6は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す平面図である。図7は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す底面図である。図8から図11は、本実施形態に係るケーブル支持具を示す斜視図である。図12は、本実施形態に係る電線把持部材を拡大して示す正面図である。図13は、図6におけるA−A断面図である。図14は、図6におけるB−B断面図である。図15は、図6におけるC−C断面図である。
【0033】
図3から図11に示すように、ケーブル支持具1は、電線把持部材11と、ケーブル把持部材12と、連結部材13と、を備える。電線把持部材11は、例えば配電線102に取り付けられる部材である。ケーブル把持部材12は、配電線103から分岐したケーブル16に取り付けられる部材である。連結部材13は、電線把持部材11とケーブル把持部材12とを連結している。すなわち、連結部材13の一端に電線把持部材11が設けられ、連結部材13の他端にケーブル把持部材12が設けられる。
【0034】
連結部材13は、例えば図8に示すように棒状の部材である。連結部材13は、先端軸131と、中間軸133と、基端軸135と、第1水切り鍔132と、第2水切り鍔134と、を備える。先端軸131、中間軸133及び基端軸135は、例えばそれぞれ円筒状の部材である。先端軸131及び基端軸135は、例えば繊維強化プラスチック(FRP(Fiber Reinforced Plastics))で形成される。中間軸133は、例えばフッ素樹脂で形成される。第1水切り鍔132は、先端軸131と中間軸133との間に配置される。第1水切り鍔132は、例えば円錐台状の部材である。第1水切り鍔132の外径は、中間軸132に近付くにつれて大きくなっている。第2水切り鍔134は、基端軸135と中間軸133との間に配置される。第2水切り鍔134は、例えば円錐台状の部材である。第2水切り鍔134の外径は、中間軸132に近付くにつれて大きくなっている。第1水切り鍔132及び第2水切り鍔134により雨天時等においても中間軸133が濡れにくいので、連結部材13の絶縁性が向上する。第1水切り鍔132及び第2水切り鍔134は、例えば合成ゴムで形成される。
【0035】
以下の説明において、連結部材13の長手方向に沿うZ軸、連結部材13の長手方向に対して直交する回転軸A(図4等参照)に沿うX軸、Z軸及びX軸の両方に対して直交するY軸からなるXYZ直交座標系が用いられる。X軸に沿う方向はX方向と記載され、Y軸に沿う方向はY方向と記載され、Z軸に沿う方向はZ方向と記載される。
【0036】
図11に示すように、電線把持部材11は、固定片2と、可動片3と、固定ピン39と、弾性部材38と、把持解除レバー4と、を備える。
【0037】
固定片2は、連結部材13に固定された部材である。固定片2は、例えばアルミニウム合金で形成される。固定片2は、図11に示すように、ベース20と、第1アーム21と、第2アーム22と、を備える。
【0038】
ベース20は、連結部材13の先端軸131に固定されている。第1アーム21は、ベース20から突出した板状部材である。第1アーム21は、ベース20から突出した板状部材である。電線把持部材11が配電線102に取り付けられた時、第1アーム21は配電線102に接する。例えば、第1アーム21は、軽量化のための穴を備える。第2アーム22は、ベース20から突出した板状部材であって、第1アーム21よりケーブル把持部材12側に位置する。第2アーム22は、第1アーム21に対してZ方向に対向している。第2アーム22の先端は、第1アーム21の先端よりベース部20側に位置する。具体的には、図3に示すように、第2アーム22の先端は、第1アーム21の先端に対して距離D21だけずれている。第2アーム22は、図4に示すように覗き窓22aを備える。覗き窓22aは、第2アーム22をZ方向に貫通する穴であって、例えばY方向を長手方向とする長円形状を有する。このため、作業者は、ケーブル把持部材12側から電線把持部材11を見た時、覗き窓22aを介して、第1アーム21と第2アーム22との間の空間を視認することができる。例えば覗き窓22aは、第1アーム21の軽量化のための穴の位置に対して、X方向にずれた位置に配置されている。また、第2アーム22は、図11に示すように先端からX方向に突出する2つの顎部223を備える。
【0039】
可動片3は、回転軸Aを中心に回転できるように固定片2の第2アーム22に連結された部材である。例えば図11に示すように、可動片3は固定片2のX方向の両側に配置される。すなわち、電線把持部材11は、2つの可動片3を備える。可動片3はX軸に対して直交する板状部材である。2つの可動片3は平行に配置される。2つの可動片3は、固定ピン39を介して第2アーム22に連結される。固定ピン39は、2つの可動片3及び第2アーム22を貫通しており、ナット391によって位置決めされている。また、可動片3は、軽量化のための穴を備える。
【0040】
図12に示すように、可動片3は、端部曲面30と、第1凸曲面31aと、第1凹曲面31bと、第2凸曲面32aと、第2凹曲面32bと、第3凸曲面33aと、第3凹曲面33bと、を備える。回転軸Aに近い方から、端部曲面30、第1凸曲面31a、第1凹曲面31b、第2凸曲面32a、第2凹曲面32b、第3凸曲面33a、第3凹曲面33bの順に配置されている。
【0041】
X方向から見た第1凸曲面31aは、回転軸Aを中心とした円C1aの一部である円弧A1aを描く。X方向から見た第1凹曲面31bは、円C1bの一部である円弧A1bを描く。円C1bは、回転軸Aが外側に位置する円である。
【0042】
X方向から見た第2凸曲面32aは、回転軸Aを中心とした円C2aの一部である円弧A2aを描く。円弧A2aの曲率半径R2aは、円弧A1aの曲率半径R1aより大きい。X方向から見た第2凹曲面32bは、円C2bの一部である円弧A2bを描く。円C2bは、回転軸Aが外側に位置する円である。円弧A2bの曲率半径R2bは、円弧A1bの曲率半径R1bより小さい。
【0043】
X方向から見た第3凸曲面33aは、回転軸Aを中心とした円C3aの一部である円弧A3aを描く。円弧A3aの曲率半径R3aは、円弧A2aの曲率半径R2aより大きい。X方向から見た第3凹曲面33bは、円C3bの一部である円弧A3bを描く。円C3bは、回転軸Aが外側に位置する円である。円弧A3bの曲率半径R3bは、円弧A2bの曲率半径R2bより小さい。
【0044】
X方向から見た端部曲面30は、円C0の一部である円弧A0を描く。円弧A0の曲率半径R0は、円弧A1aの曲率半径R1aより小さい。また、円C0は、円C1aに内接する。
【0045】
弾性部材38は、回転軸Aを中心とした周方向(以下、単に周方向という)に可動片3を押す部材である。弾性部材38は、例えばねじりコイルバネである。弾性部材38は、可動片3と第2アームとの間の位置で、固定ピン39の外周面に取り付けられている。弾性部材38の一端は顎部223に接している。弾性部材38の他端は可動片3に接している。可動片3が周方向の第1方向に回転すると、弾性部材38で生じる弾性力によって可動片3が第1方向とは反対方向の第2方向に回転する。第1方向は図3において時計回り方向であり、第2方向は図3において反時計回り方向である。電線把持部材11が配電線102を把持している時、弾性部材38の弾性力により可動片3が配電線102を固定片2に押し付ける。以下の説明において、可動片3が配電線102を固定片2に押し付けている状態を把持状態という。
【0046】
把持解除レバー4は、把持状態を解除するための部材である。図11に示すように、把持解除レバー4は、ロッド41と、カバー42と、キャップ43と、を備える。
【0047】
ロッド41は、円柱状の部材であって2つの可動片3を貫通する。具体的には図13に示すように、ロッド41は、可動片3に設けられた孔35を貫通する。カバー42は、例えば円筒状の部材であって、2つの可動片3の外側でロッド41の外周面に被せられる。カバー42は、可動片3の両側に配置される。キャップ43は、ロッド41の両端に配置され、ロッド41及びカバー42を連結する。例えば、キャップ43は、X方向から見てロッド41の中心とカバー42の中心とが一致するようにロッド41及びカバー42を連結する。また、図13に示すように、孔35の内径D35は、ロッド41の外径D41より大きく且つカバー42の外径D42より小さい。このため、孔35の内周面とロッド41との間には隙間が生じている。また、カバー42が孔35に入らないので、把持解除レバー4が電線把持部材11から脱落しない。
【0048】
把持状態で把持解除レバー4がケーブル把持部材12側に引っ張られると、2つの可動片3が第1方向に回転する。これにより把持状態が解除される。また、上述したように孔35の内周面とロッド41との間には隙間が生じている。このため、把持状態において、配電線102の振動等によって一方の可動片3に第1方向の力が作用したとしても、この力は他方の可動片3に伝達されにくい。すなわち、それぞれの可動片3は、孔35の内周面とロッド41との間の隙間分だけ互いに独立して動くことができる。このため、2つの可動片3が同時に動くことが抑制されるので、少なくとも一方の可動片3が配電線102に接触する。したがって、把持状態の意図しない解除が防がれる。
【0049】
また、電線把持部材11が配電線102を把持していない時、ロッド41は第2アーム22に接する。このため、可動片3の回転が規制される。すなわち、把持解除レバー4は、把持状態を解除するための部材であると共に、可動片3を回転止めする部材でもある。
【0050】
図10に示すように、ケーブル把持部材12は、ケース6と、コネクタ68と、ハンドル69と、ロック部材7と、を備える。
【0051】
ケース6は、連結部材13に固定された部材である。ケース6は、例えばポリアセタール樹脂で形成される。図10に示すように、ケース6は、基部60と、第1フィン61と、第2フィン62と、を備える。
【0052】
基部60は、図10に示すように、円筒状のコネクタ68を介して連結部材13の基端部135に固定されている。すなわち、コネクタ68が基端部135に固定されており、基部60がコネクタ68に固定されている。第1フィン61は、基部60から連結部材13とは反対側に突出する板状部材である。第2フィン62は、第1フィン61と同じ方向に基部60から突出する板状部材であって、第1フィン61に対向する。ハンドル69は、ケーブル支持具1の持ち手である。ハンドル69は、第2フィン62から第1フィン61とは反対側に突出する部材である。例えば、X方向から見たハンドル69は楕円を描いている。また、基部60は、図10に示すように第1フィン61と第2フィン62との間に傾斜面601を備える。
【0053】
ロック部材7は、ケース6に対してスライド可能に連結された部材である。ロック部材7は、例えばステンレス鋼で形成される。図10に示すように、ロック部材7は、第1支持棒71と、第2支持棒72と、連結棒73と、連結プレート75と、を備える。
【0054】
第1支持棒71は、第1フィン61を貫通している。第2支持棒72は、第1フィン61を貫通しており、且つ第1支持棒71に平行である。第2支持棒72は、第1支持棒71に対して基部60とは反対側に位置する。また、図3に示すように、可動片3が連結部材13に対して鉛直方向下方に位置し且つZ方向が水平方向に沿っている時、第2支持棒72は第1支持棒71より鉛直方向下方に位置する。言い換えると、電線把持部材1が配電線102に取り付けられ且つ連結部材13の長手方向が水平方向に沿っている時、第2支持棒72は第1支持棒71より鉛直方向下方に位置する。また、第2支持棒72は、第2フィン62に近い端部にストッパー721を備える。ストッパー721は、ロック部材7がケース6から抜けることを防止する。
【0055】
連結棒73は、第1支持棒71の端部と第2支持棒72の端部を連結する。すなわち、第1支持棒71、第2支持棒72及び連結棒73は、略U字を描くように配置されている。連結プレート75は、第1フィン61に対して第2フィン62とは反対側に配置された板状部材である。第1支持棒71及び第2支持棒72は、連結プレート75を貫通しており且つ連結プレート75に固定されている。連結プレート75は、ロック部材7がスライドできる範囲を規制する。ロック部材7は、連結プレート75が第1フィン61に接するまでスライドすることができる。
【0056】
図14に示すように、X軸に対する直交平面でケーブル把持部材12を切った断面において、傾斜面601が描く線分は直線L1に沿っている。直線L1は、第1支持棒71及び第2支持棒72の共通外接線である。すなわち、直線L1は第1支持棒71が描く円及び第2支持棒72が描く円の両方に接する直線であり、且つ第1支持棒71及び第2支持棒72が直線L1に対して同じ側にある。
【0057】
第1支持棒71は、例えば図15に示すように、外周面に突起711を備える。突起711は、第1支持棒71の内部に引っ込むことができる。また、第1フィン61は、第1支持棒71が貫通する孔611と、孔611の内周面に設けられた凹部611aと、を備える。突起711が第1フィン61の内部にある状態(図15に示す状態)からロック部材7にX方向の力が加えられると、突起711が引っ込み、ロック部材7がX方向にスライドする。また、突起711が第1フィン61の外部にある状態からロック部材7にX方向の力が加えられると、突起711が孔611の縁に押されて引っ込み、ロック部材7がX方向にスライドする。そして、突起711が凹部611aに達すると、突起711が突出し凹部611aに嵌まる。これにより、ロック部材7が位置決めされる。この時、Y方向から見て第1支持棒71及び第2支持棒72が第2フィン62と重なっている。
【0058】
以下の説明において、突起711が凹部611aに嵌まっている状態は、ロック状態と記載される。ロック状態は、ロック部材7と第2フィン62との間の隙間をケーブル16が通過できない状態ともいえる。Y方向から見てストッパー721が第1フィン61に接している状態は、アンロック状態と記載される。アンロック状態は、ロック部材7と第2フィン62との間の隙間をケーブル16が通過できる状態ともいえる。
【0059】
図16は、間接活線作業に用いられる操作棒を示す正面図である。操作棒9は、間接活線工具である。作業者は、ケーブル支持具1を掴む時、図16に示す操作棒9を使用する。図16に示すように、操作棒9は、グリップ部91と、第1軸部92と、第1把持部94と、第2軸部93と、第2把持部95と、レバー部99と、を備える。グリップ部91は、作業者が把持する部材である。第1軸部92は、グリップ部91に固定されている。第1把持部94は、第1軸部92の先端に固定されている。第2軸部93は、レバー部99を介してグリップ部91に連結されており、且つ第1軸部92に平行である。第2把持部95は、第2軸部93の先端に固定されており、且つ第1把持部94に対して回転可能に連結されている。レバー部99が操作されると、第2軸部93が移動することにより、第2把持部95が第1把持部94に近付くように回転する。操作棒9は、第1把持部94及び第2把持部95により、ケーブル把持部材12のハンドル69を把持することができる。
【0060】
操作棒9は、ロック部材7のロック状態及びアンロック状態の切替にも用いられる。アンロック状態からロック状態にする時、作業者は、第1把持部94及び第2把持部95の一方を連結プレート75に当て、他方を第1フィン61又は第2フィン62に当てる。レバー部99が操作されると、連結プレート75が第1フィン61に当たるまでスライドするのでロック状態となる。
【0061】
ロック状態からアンロック状態にする時、作業者は、第1把持部94及び第2把持部95の一方を第1フィン61の端部619(図10参照)に当て、他方をストッパー721に当てる。レバー部99が操作されると、ストッパー721が第1フィン61に当たるまでスライドするのでアンロック状態となる。
【0062】
図17から図20は、小径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。図21及び図22は、中径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。図23から図25は、大径配電線が電線把持部材に把持される時の様子を示す正面図である。
【0063】
例えば、配電線系統には3種類の配電線が用いられている。ケーブル支持具1は、3種類の配電線に適用することができる。以下の説明において、3種類の配電線をそれぞれ小径配電線102a、中径配電線102b、大径配電線102cと記載する。小径配電線102a、中径配電線102b及び大径配電線102cは、互いに異なる断面積(直径)を有する。例えば、小径配電線102aの公称断面積は25mmである。中径配電線102bの公称断面積は58mmである。大径配電線102cの公称断面積は200mmである。
【0064】
作業者は、ケーブル支持具1を配電線102に取り付ける時、電線把持部材11が下方に位置するようにハンドル69を操作棒9で把持する。そして、作業者は、配電線102の上方から電線把持部材11を近付け、配電線102を固定片2と可動片3との間に押し込む。
【0065】
図17に示すように、小径配電線102aは、まず第1凹曲面31bに接する。これにより、可動片3が第1方向(図17において時計回り方向)に回転する。その後、図18に示すように、小径配電線102aが円C2aの外側に達すると(第1凹曲面31bを通過すると)、弾性部材38の弾性力により可動片3が第2方向(図18において反時計回り方向)に回転する。次に、小径配電線102aは、第2凹曲面32bに接する。これにより、可動片3が第1方向に回転する。その後、図20に示すように、小径配電線102aが円C3aの外側に達すると(第2凹曲面32bを通過すると)、弾性部材38の弾性力により可動片3が第2方向に回転する。このため、小径配電線102aは、第3凹曲面33bと固定片2とに挟まれる。小径配電線102aは、固定片2と可動片3との間から抜けなくなる。例えば、図12に示した第3凹曲面33bの曲率半径R3bは、小径配電線102aの半径に等しい。このため、第3凹曲面33bが小径配電線102aの外周面に沿うので、固定片2と可動片3との間で小径配電線102aが振動しにくい。
【0066】
図21に示すように、中径配電線102bは、まず第1凹曲面31bに接する。これにより、可動片3が第1方向に回転する。その後、図22に示すように、中径配電線102bが円C2aの外側に達すると(第1凹曲面31bを通過すると)、弾性部材38の弾性力により可動片3が第2方向に回転する。このため、中径配電線102bは、第2凹曲面32bと固定片2とに挟まれる。中径配電線102bは、固定片2と可動片3との間から抜けなくなる。例えば、図12に示した第2凹曲面32bの曲率半径R2bは、中径配電線102bの半径に等しい。このため、第2凹曲面32bが中径配電線102bの外周面に沿うので、固定片2と可動片3との間で中径配電線102bが振動しにくい。
【0067】
図23に示すように、大径配電線102cは、まず第1凸曲面31a又は端部曲面30に接する。これにより、可動片3が第1方向に回転する。大径配電線102cがさらに押し込まれると、図24に示すように大径配電線102cが端部曲面30を押すことで可動片3がさらに第1方向に回転する。その後、図25に示すように、大径配電線102cが円C1aの外側に達すると(端部曲面30を通過すると)、弾性部材38の弾性力により可動片3が第2方向に回転する。このため、大径配電線102cは、第1凹曲面31bと固定片2とに挟まれる。大径配電線102cは、固定片2と可動片3との間から抜けなくなる。例えば、図12に示した第1凹曲面31bの曲率半径R1bは、大径配電線102cの半径に等しい。このため、第1凹曲面31bが大径配電線102cの外周面に沿うので、固定片2と可動片3との間で大径配電線102cが振動しにくい。
【0068】
図11で示したように、第2アーム22が覗き窓22aを備えている。配電線102が第1アーム21と第2アーム22との間の空間に入ると、作業者からは、覗き窓22aを介して配電線102及び第1アーム21が見える。このため、作業者は、配電線102が第1アーム21より手前側にあることを覗き窓22aを介して認識できる。覗き窓22aは、配電線102及び第1アーム21の相対的位置を見えるようにするための穴であるといえる。覗き窓22aがあることで、電線把持部材11を配電線102に取り付ける時の作業効率が向上する。
【0069】
図26から図28は、本実施形態に係るケーブル支持具の取り付け方法を示す模式図である。図26に示すように、まず作業者は、配電線102のケーブル16との交差することになる部分、及び配電線101のケーブル16との交差することになる部分に仮絶縁カバー18を取り付ける。その後、ケーブル16が配電線103に取り付けられる。仮絶縁カバー18により、ケーブル16と配電線102との接触及びケーブル16と配電線101との接触が防止される。
【0070】
次に、作業者は、図26に示すように配電線102のうち仮絶縁カバー18が取り付けられていない部分に電線把持部材11を取り付ける。図17から図25に示したように、配電線102が固定片2及び可動片3で把持される。作業者は、ロック部材7をアンロック状態にしてから電線把持部材11を配電線102に取り付ける。
【0071】
次に、作業者は、図27に示すようにケーブル支持具1をケーブル16に近付く方向にスライドさせる。電線把持部材11が仮絶縁カバー18を押すので、仮絶縁カバー18もケーブル支持具1と共にスライドする。作業者は、ケーブル支持具1をケーブル16に重なる位置までスライドさせる。
【0072】
次に、作業者は、図28に示すようにケーブル16をケース6の内側に入れる。そして、作業者は、ロック部材7をロック状態にする。これにより、ケーブル16が第1支持棒71及び第2支持棒72に接する。第1支持棒71及び第2支持棒72の相対的な位置関係により、ケーブル把持部材12には、作業者から見て手前に向かう方向の力が作用する。このため、ケーブル支持具1は、図1に示すように、連結部材13の長手方向が鉛直方向に対して角度をなすように傾く。その結果、配電線102及びケーブル16が互いに離れた状態が保たれる。
【0073】
次に、作業者は、配電線102と同様に、配電線101に対してケーブル支持具1を取り付ける。これにより、配電線101とケーブル16との間の短絡が防止される。なお、配電線101に対する作業が、配電線102に対する作業の前に行われてもよい。
【0074】
なお、電線把持部材11は、必ずしもケーブル支持具1の一部として用いられなくてもよい。電線把持部材11は、電線等を挟むための挟持具にも用いることができる。このような挟持具は、例えば電線把持部材11と、電線把持部材11に固定されたグリップ部材と、を備える。グリップ部材の形状は特に限定されない。例えば、グリップ部材は、上述した連結部材13と同様の形状を有する部材であってもよいし、単なる棒状の部材であってもよい。
【0075】
例えば、電線把持部材11を備える挟持具は、配電線系統に事故が生じた際の事故点を探査するための装置であるCT受信器として用いられてもよい。すなわち、配電線等に引っ掛けるためにCT受信器に設けられる引っ掛け部として、電線把持部材11が用いられてもよい。
【0076】
例えば、電線把持部材11を備える挟持具は、高圧発電機車の負荷側並列運転において商用側と発電機側の同期を検出するための装置である同期検出器として用いられてもよい。すなわち、配電線等に引っ掛けるために同期検出器に設けられる引っ掛け部として、電線把持部材11が用いられてもよい。
【0077】
例えば、電線把持部材11を備える挟持具は、配電線等の無充電状態を検出して警報を発する無充電警報器として用いられてもよい。すなわち、配電線等を挟むために無充電警報器に設けられる挟持部として、電線把持部材11が用いられてもよい。
【0078】
図29は、電線把持部材を備える挟持具の一例を示す正面図である。停電作業において、配電線から分岐したケーブルを切断することがある。例えば、電線把持部材11を備える挟持具は、停電作業において切断したケーブルを仮固定するための器具として用いられてもよい。すなわち、電線把持部材11は、図29に示すケーブル仮固定具10に用いられてもよい。ケーブル仮固定具10においては、連結部材13の両端に電線把持部材11が設けられている。例えば、一方の電線把持部材11が配電線に取り付けられた状態で、切断されたケーブルが他方の電線把持部材11に預けられる。ケーブル仮固定具10によれば、切断されたケーブルが容易に位置決めされるので、ケーブル同士の錯綜が防止される。
【0079】
以上で説明したように、ケーブル支持具1は、第1配電線(配電線102)に取り付けられる電線把持部材11と、第1配電線より上方に位置する第2配電線(配電線103)から分岐したケーブル16に取り付けられるケーブル把持部材12と、電線把持部材11とケーブル把持部材12とを連結する連結部材13と、を備える。
【0080】
これにより、第1配電線とケーブル16との間の距離が大きくなる。したがって、ケーブル支持具1は、垂直配列部分における配電線から分岐したケーブル16と他の配電線との間の短絡を防ぐことができる。
【0081】
また、ケーブル支持具1において、電線把持部材11は、連結部材13に固定された固定片2と、回転軸Aを中心に回転できるように固定片2に連結された可動片3と、回転軸Aを中心とした周方向に可動片3を押す弾性部材38と、を備える。可動片3は、第1配電線が可動片3に押し付けられると第1方向に回転し、且つ第1配電線が所定位置に達すると第1方向とは反対の第2方向に回転することで第1配電線を固定片2に押し付ける。
【0082】
これにより、作業者は、電線把持部材11を第1配電線に押し付けるだけで電線把持部材11を第1配電線に取り付けることができる。すなわち、電線把持部材11を第1配電線に取り付ける作業が容易になる。
【0083】
また、ケーブル支持具1において、可動片3は、第1配電線に接触させるための第1凹曲面31b及び第2凹曲面32bを備える。回転軸Aに沿う軸方向から見た第1凹曲面31bは第1円弧(円弧A1b)を描く。軸方向から見た第2凹曲面32bは、第1円弧の曲率半径R1bと異なる曲率半径R2bを有する第2円弧(円弧A2b)を描く。
【0084】
これにより、可動片3の第1配電線との接触部分が平面である場合と比較して、可動片3の第1配電線との接触面積が大きくなる。このため、第1配電線の振動が抑制される。また、第1凹曲面31b及び第2凹曲面32bがそれぞれ異なる円弧を描くので、電線把持部材11は、断面積が異なる複数種類の第1配電線に対応することができる。
【0085】
また、ケーブル支持具1において、第1円弧(円弧A1b)の曲率半径R1bは、所定の第1断面積を有する第1配電線(大径配電線102c)の半径に等しい。第2円弧(円弧A2b)の曲率半径R2bは、第1断面積とは異なる第2断面積を有する第1配電線(中径配電線102b)の半径に等しい。
【0086】
これにより、第1凹曲面31b及び第2凹曲面32bは、それぞれ異なる断面積を有する第1配電線の外周面に沿う。したがって、固定片2と可動片3との間で第1配電線が振動しにくい。
【0087】
また、ケーブル支持具1において、可動片3は、固定片2の両側に配置される。電線把持部材11は、2つの可動片3にそれぞれ設けられた孔35を貫通するロッド41を備える。
【0088】
これにより、作業者は、ロッド41に力を加えることで2つの可動片3を一緒に動かすことができる。このため、第1配電線を電線把持部材11から取り外す作業が容易になる。すなわち、把持状態の解除が容易になる。
【0089】
また、ケーブル支持具1において、電線把持部材11は、2つの可動片3の外側でロッド41に被せられたカバー42を備える。孔35の内周は、ロッド41の外周より大きく且つカバー42の外周より小さい。より具体的には、孔35の内径D35は、ロッド41の外径D41より大きく且つカバー42の外径D42より小さい。
【0090】
これにより、それぞれの可動片3は、孔35の内周面とロッド41との間の隙間分だけ互いに独立して動くことができる。このため、2つの可動片3が同時に動くことが抑制されるので、少なくとも一方の可動片3が第1配電線に接触する。したがって、把持状態(可動片3が第1配電線を固定片2に押し付けている状態)の意図しない解除が防がれる。
【0091】
また、ケーブル支持具1において、固定片2は、連結部材13に固定されるベース20と、ベース20から突出する第1アーム21と、ベース20から突出し且つ第1アーム21よりケーブル把持部材12側に位置する第2アーム22と、を備える。第2アーム22の先端は、第1アーム21の先端よりベース20側に位置する。
【0092】
仮に第2アーム22の先端の位置が第1アーム21の先端よりベース20とは反対側である場合、又は第1アーム21の先端の位置と同じである場合、以下のような問題が生じる。すなわち、作業者から見て第1配電線の背後が空であるため、作業者は第1配電線までの距離を把握しにくい。このため、作業者が電線把持部材11を第1配電線に取り付けようとしても、第1配電線が第1アーム21と第2アーム22との間になかなか入らないことがある。これに対して、ケーブル支持具1によれば、作業者がケーブル把持部材12側から電線把持部材11を見た場合、第2アーム22の向こう側に第1アーム21を視認できる。このため、第1配電線が第1アーム21と第2アーム22との間に位置していることを作業者が認識できる。したがって、電線把持部材11を第1配電線に取り付ける時の作業効率が向上する。
【0093】
また、ケーブル支持具1において、第2アーム22は、Z方向に貫通する穴である覗き窓22aを備える。
【0094】
これにより、作業者は、覗き窓22aを介して第1アーム21と第2アーム22との間の空間を視認できる。第1配電線が第1アーム21と第2アーム22との間の空間に入ると、作業者からは、覗き窓22aを介して第1配電線及び第1アーム21が見える。このため、作業者は、第1配電線が第1アーム21より手前側にあることを覗き窓22aを介して認識しやすくなる。したがって、電線把持部材11を第1配電線に取り付ける時の作業効率が向上する。
【0095】
また、ケーブル支持具1において、ケーブル把持部材12は、連結部材13に固定されたケース6と、ケース6に対してスライド可能に連結されたロック部材7と、を備える。ケース6は、連結部材13に固定される基部60と、基部60から連結部材13とは反対側に突出する第1フィン61と、基部60から突出し且つ第1フィン61に対向する第2フィン62と、を備える。ロック部材7は、第1フィン61を貫通する第1支持棒71と、第1フィン61を貫通し且つ第1支持棒71に対して基部60とは反対側に位置する第2支持棒72と、を備える。電線把持部材11が第1配電線に取り付けられ且つ連結部材13の長手方向が水平方向に沿っている時、第2支持棒72は第1支持棒71より鉛直方向下方に位置する。
【0096】
これにより、上方から垂れたケーブル16がケース6の基部60及びロック部材7に挟まれると、ケーブル支持具1は、連結部材13の長手方向が鉛直方向に対して角度をなすように傾く。このため、第1配電線とケーブル16との間の距離が大きくなるので、第1配電線とケーブル16との間の短絡がより防止されやすい。
【0097】
また、ケーブル支持具1において、基部60は、第1支持棒71及び第2支持棒72に面する傾斜面601を備える。第1支持棒71の長手方向に対する直交平面でケーブル把持部材12を切った断面において、傾斜面601が描く線分は、第1支持棒71及び第2支持棒72の共通外接線(直線L1)に沿う。
【0098】
これにより、ケーブル16とケース6の基部60との間の接触面積が大きくなる。したがって、ケーブル16において応力が生じる位置が一箇所に集中しないので、ケーブル16の破損が防止される。
【符号の説明】
【0099】
1 ケーブル支持具
11 電線把持部材
12 ケーブル把持部材
13 連結部材
101、102、103 配電線
102a 小径配電線
102b 中径配電線
102c 大径配電線
15 絶縁カバー
16 ケーブル
18 仮絶縁カバー
2 固定片
20 ベース
21 第1アーム
22 第2アーム
22a 覗き窓
3 可動片
30 端部曲面
31a 第1凸曲面
31b 第1凹曲面
32a 第2凸曲面
32b 第2凹曲面
33a 第3凸曲面
33b 第3凹曲面
35 孔
38 弾性部材
39 固定ピン
4 把持解除レバー
41 ロッド
42 カバー
43 キャップ
6 ケース
60 基部
61 第1フィン
62 第2フィン
68 コネクタ
69 ハンドル
7 ロック部材
71 第1支持棒
72 第2支持棒
721 ストッパー
73 連結棒
75 連結プレート
9 操作棒
【要約】      (修正有)
【課題】垂直配列部分における配電線から分岐したケーブルと他の配電線との間の短絡を防ぐことができるケーブル支持具を提供する。
【解決手段】ケーブル支持具1は、第1配電線102に取り付けられる電線把持部材11と、配電線102より上方に位置する配電線103から分岐したケーブル16に取り付けられるケーブル把持部材12と、電線把持部材11とケーブル把持部材12とを連結する連結部材13と、を備える。
【選択図】図1
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