(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周に形成された表層と、を備え、前記表層が、下記の(a)〜(c)を含有することを特徴とする電子写真機器用帯電ロール。
(a)バインダー
(b)平均粒子径10〜120μmの粒子
(c)ポリフェノール
前記(c)が、タンニン、没食子酸、エラグ酸、ピロガロール、カテキン、クロロゲン酸の1種または2種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの断面図である。
図2は、
図1に示す帯電ロールの表面付近を拡大して示した図である。
【0012】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周に形成された表層16と、を備える。表層16は、帯電ロール10の表面に現れる層である。
【0013】
表層16は、下記の(a)〜(c)を含有する。
(a)バインダー
(b)平均粒子径10〜120μmの粒子
(c)ポリフェノール
【0014】
(a)バインダーは、表層16の主材料であり、ポリアミド(ナイロン)系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、変性されたものであっても良い。変性基としては、例えば、N−メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。
【0015】
(a)バインダーは、水溶性、水分散性、あるいは、水/アルコール混合溶媒可溶性であることが好ましい。水溶性、水分散性、あるいは、水/アルコール混合溶媒可溶性である、とは、水系塗料のポリマー成分として使用できるポリマーであり、水系塗料において10質量%以上の濃度で使用できるポリマーである。水系塗料は、塗料の助要素の主成分が水である塗料の総称である。水系塗料は、水溶性樹脂系、エマルジョン系に分けられる。水に溶けている樹脂および水にコロイド状に分散している塗料とエマルジョン塗料を含めて水性塗料という。水溶性ポリマーは、固形分濃度10質量%以上で水に溶解するポリマーである。水分散性ポリマーは、固形分濃度10質量%以上で乳化剤を用いて水に分散するポリマーである。水/アルコール混合溶媒可溶性ポリマーは、固形分濃度10質量%以上で水/アルコール混合溶媒に溶解するポリマーである。水/アルコール混合溶媒のアルコールは、低炭素数(低級)の親水性アルコールであり、メタノール、エタノール、プロパノールが挙げられる。水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、水/アルコール混合溶媒可溶性ポリマーの固形分濃度の上限は、30質量%程度とされる。
【0016】
(b)の粒子18は、表層16の表面に凹凸を付与するための粒子であり、粗さ形成用の粒子である。表面凹凸は、感光体と帯電ロール10との間における放電空間を増加させ、放電を促す。これにより、帯電性を向上させ、横スジやムラなどの画像不具合を抑えることができる。粒子18の平均粒子径が10μm未満であると、表層16の表面粗さを十分に確保することができず、電源電圧が低いと、感光体と帯電ロール10の間での放電量が不足し、不要なトナーが印字されて横スジやムラなどの画像不具合が発生する。したがって、(b)の粒子18の平均粒子径は、10μm以上とする。しかし、粒子18の平均粒子径が10μm以上であると、耐久時に表層16から粒子が脱落しやすい。表層16から粒子18が脱落すると、放電空間の縮小や抵抗のばらつきが発生し、均一な帯電ができなくなる。
【0017】
粒子18の脱落は、感光体と帯電ロール10の摺擦、感光体と帯電ロール10の間の放電による電気的負荷から生じるバインダーや粒子18の分解、感光体と帯電ロール10の間の放電によって発生するオゾンによる劣化から生じるバインダーや粒子18の分解などによって発生すると推察される。本発明においては、(c)ポリフェノールを表層16に含有させることにより、平均粒子径10μm以上の粒子を含有する場合において、耐久時に表層16から粒子18が脱落するのを抑えることができるようにしている。これは、第一に、ポリフェノールの水素基や水酸基などにより、粒子18の表面と水素結合で作用することができ、バインダー/粒子18/ポリフェノールの三者が互いに水素結合の作用によって強固に密着しているためと推察される。また、第二に、ポリフェノールの老化防止作用により、放電による電気的負荷あるいはオゾンから生じるバインダーや粒子18の分解を抑制するためと推察される。バインダーが水溶性、水分散性、あるいは、水/アルコール混合溶媒可溶性であると、水素結合の作用がより大きくなるため、上記第一の観点から、耐久時に表層16から粒子18が脱落するのを抑える効果が向上する。
【0018】
なお、本発明においても、粒子18の平均粒子径が120μm超であると、耐久時に表層16から粒子18が脱落することが抑えられない。したがって、(b)の粒子18の平均粒子径は、120μm以下とする。(b)の粒子18の平均粒子径は、より好ましくは15〜50μmである。平均粒子径が15〜50μmであると、画像不具合を抑える効果と耐久時に表層16から粒子18が脱落するのを抑える効果のバランスに優れる。粒子18の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定される。
【0019】
(b)の粒子18は、中実粒子、多孔質粒子のいずれであってもよい。好ましくは、耐摩耗性の観点から、中実粒子である。材質は、ポリアミド(ナイロン)、アクリル、ウレタン、シリコーン、フッ素系の各ポリマーや、シリカなどが挙げられる。これらのうちでは、表面に水素基や水酸基などの水素結合性の官能基が多いことから、ポリアミド(ナイロン)、アクリル、ウレタン、シリカなどが好ましい。また、弾性の面から、ポリアミド(ナイロン)、ウレタンの各ポリマーがより好ましい。
【0020】
(b)の粒子18の含有量は、特に限定されるものではないが、感光体と帯電ロール10との間における放電空間を十分に形成しやすいなどの観点から、(a)バインダー100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、表面の凹部にトナーやトナー外添剤が堆積することによる局所的な帯電ムラを抑えやすいなどの観点から、(a)バインダー100質量部に対し、90質量部以下であることが好ましい。より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下である。
【0021】
(c)ポリフェノールとしては、タンニン、没食子酸、エラグ酸、ピロガロール、カテキン、クロロゲン酸などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。タンニンは、化学構造の違いから、加水分解型タンニンと縮合型タンニンに大別される。縮合型タンニンは、複数分子のカテキンが炭素−炭素結合で縮合したものである。加水分解型タンニンは、多価フェノール酸と多価アルコールにより形成されたものであり、加水分解されて多価フェノール酸と多価アルコールを生じるものである。加水分解型タンニンにおいて、多価フェノール酸としては、没食子酸、没食子酸の二量体、エラグ酸などが挙げられる。多価フェノール酸が没食子酸からなるタンニンは、ガロタンニンであり、多価フェノール酸が没食子酸の二量体あるいはエラグ酸からなるタンニンは、エラジタンニンである。多価アルコールとしては、糖(グルコース)や糖以外の環状ポリアルコールなどが挙げられる。加水分解型タンニンにおいて、タンニン酸は、五倍子または没食子から得られるタンニンであり、グルコースのすべての水酸基に五倍子酸または没食子酸がエステル結合し、フェノール性水酸基にさらにエステル結合した化合物である。
【0022】
タンニンとしては、溶剤(水系)への溶解性あるいは分散性に優れ、表層形成材料が塗工性に優れる、耐久時に表層16から粒子が脱落するのを抑える効果がさらに向上するなどの観点から、加水分解型タンニンがより好ましい。加水分解型タンニンは、水、酸素等で分解するが、その分解生成物には多価フェノール酸が含まれる。つまり、分解生成物もポリフェノールであり、酸化性を有する物質を還元する機能を有する。
【0023】
(c)ポリフェノールの含有量は、特に限定されるものではないが、水素結合の量を確保して耐久時に表層16から粒子が脱落するのを抑える効果に優れるなどの観点から、(a)バインダー100質量部に対し、0.3質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。また、表層16の靱性を確保して耐久時における表層16の割れを抑えやすいなどの観点から、(a)バインダー100質量部に対し、5.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは4.5質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下である。
【0024】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0025】
表層16の表面粗さ(Rz)は、特に限定されるものではないが、感光体と帯電ロールとの間における放電空間を十分に形成しやすいなどの観点から、10μm以上であることが好ましい。より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは25μm以上である。また、耐久時に表層16から粒子が脱落するのを抑えやすいなどの観点から、90μm以下であることが好ましい。より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。表層16の表面粗さ(Rz)は、十点平均粗さであり、JIS B0601(1994)に準拠して測定される。表層16の表面粗さ(Rz)は、粒子18の粒子径、配合量、バインダー量などにより調整することができる。
【0026】
表層16の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは3.0〜20μmの範囲内、より好ましくは5.0〜15μmの範囲内である。表層16の厚みは、
図2に示すように、粒子が存在していない部分における厚みtである。表層16の体積抵抗率は、好ましくは、10
4〜10
9Ω・cm、より好ましくは、10
5〜10
8Ω・cm、さらに好ましくは、10
6〜10
7Ω・cmの範囲内である。
【0027】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0028】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。導電性に優れるなどの観点から、未架橋ゴムは極性ゴムが好ましい。
【0029】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)が好ましい。
【0030】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0031】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0032】
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0033】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0034】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0035】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0036】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部の範囲内、より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
【0037】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2−メルカプトベンゾチアゾール塩、2−メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0038】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1〜2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜1.5質量部の範囲内である。
【0039】
弾性体層14には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0040】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて10
2〜10
10Ω・cm、10
3〜10
9Ω・cm、10
4〜10
8Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0041】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1〜10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0042】
導電性ロール10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。次いで、形成した弾性体層14の外周に表層形成用組成物を塗工し、必要に応じて紫外線照射や熱処理などの架橋処理を行うことにより、表層16を形成する。これにより、導電性ロール10を製造できる。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。表層16を塗工により形成できると、表層16を薄く均一に形成できるため、均一な表面抵抗が得られやすい。
【0043】
以上の構成の帯電ロール10によれば、表層16に含まれる粒子18の平均粒子径が10〜120μmの範囲内であり、粒子18とともにバインダーおよびポリフェノールが表層16に含まれていることから、横スジやムラなどの画像不具合が抑えられるとともに、耐久時にも表層16から粒子18が脱落するのが抑えられる。
【0044】
本発明に係る導電性ロールの構成としては、
図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、
図1に示す導電性ロール10において、軸体12と弾性体層14との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。この場合、他の弾性体層は、導電性ロールのベースとなる層であり、弾性体層14が導電性ロールの抵抗調整を行う抵抗調整層などとして機能する。他の弾性体層は、例えば、弾性体層14を構成する材料として挙げられた材料のいずれかにより構成することができる。
【0045】
また、
図1に示す導電性ロール10において、弾性体層14と表層16との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。この場合、弾性体層14は、導電性ロールのベースとなる層であり、他の弾性体層が導電性ロールの抵抗調整を行う抵抗調整層などとして機能する。他の弾性体層は、例えば、弾性体層14を構成する材料として挙げられた材料のいずれかにより構成することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0047】
(実施例1)
<導電性ゴム組成物の調製>
ヒドリンゴム(ECO、日本ゼオン社製、「HydrinT3106」)100質量部に対し、イオン導電剤(テトラn−ブチルアンモニウムパークロレート、n−Bu
4N・ClO
4)を3質量部、架橋剤として硫黄(鶴見化学社製、「イオウ−PTC」)を2質量部添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して導電性ゴム組成物を調製した。
【0048】
<表層形成用組成物の調製>
ナイロン塗料(固形分として)100質量部と、タンニン酸(試薬、関東化学社製)0.3質量部と、アクリル粒子(平均粒子径120μm)5質量部と、カーボンブラック分散液30質量部と、を混合して、表層形成用組成物を調製した。
【0049】
<帯電ロールの作製>
成形金型に芯金(軸体、直径8mm)をセットし、上記の導電性ゴム組成物を注入し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に厚み1.5mmの弾性体層を形成した。次いで、上記の表層形成用組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、120℃で50分加熱して、弾性体層の外周に表層(厚みt=10μm、表面粗さRz=25μm)を形成した。以上により、帯電ロールを作製した。
【0050】
(実施例2)
表層形成用組成物において、アクリル粒子の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして帯電ロールを作製した。
【0051】
(実施例3〜4)
表層形成用組成物において、タンニン酸の配合量を変えた以外は実施例1〜2と同様にして帯電ロールを作製した。
【0052】
(実施例5〜7、13、14)
表層形成用組成物において、タンニン酸の配合量を変え、粒子の種類および配合量を変えた以外は実施例1と同様にして帯電ロールを作製した。
【0053】
(実施例8)
表層形成用組成物において、ナイロン塗料からウレタン塗料に変えた以外は実施例6と同様にして帯電ロールを作製した。
【0054】
(実施例9〜10)
表層形成用組成物において、タンニン酸の配合量を変えた以外は実施例6と同様にして帯電ロールを作製した。
【0055】
(実施例11)
表層形成用組成物において、タンニン酸から没食子酸に変えた以外は実施例6と同様にして帯電ロールを作製した。
【0056】
(実施例12)
表層形成用組成物において、アクリル粒子の種類を変えた以外は実施例6と同様にして帯電ロールを作製した。
【0057】
(比較例1)
表層形成用組成物において、タンニン酸を配合しなかった以外は実施例6と同様にして帯電ロールを作製した。
【0058】
(比較例2〜3)
表層形成用組成物において、粒子の種類を変えた以外は実施例6と同様にして帯電ロールを作製した。
【0059】
使用した各成分は、以下の通りである。
・ナイロン塗料:固形分:N−メトキシメチル化6−ナイロン、固形分濃度20質量%、溶媒:メタノール、ナガセケムテックス社製、「トレジンF−30K」、SP値:10.91
・ウレタン塗料:ウレタン樹脂水系エマルジョン、固形分濃度40質量%、溶媒:水、日華化学社製、「エバファノールHA107C」
・アクリル粒子(平均粒子径6μm):根上工業製「アートパールGR−800」
・アクリル粒子(平均粒子径10μm):根上工業製「アートパールGR−600」
・アクリル粒子(平均粒子径60μm):東洋紡製「タフチックAR650MZ」
・アクリル粒子(平均粒子径120μm):根上工業製「アートパールGR−50W」
・アクリル粒子(平均粒子径150μm):東洋紡製「タフチックAR650LL」
・ウレタン粒子(平均粒子径50μm):根上工業製「アートパールC−100」
・シリカ粒子(平均粒子径30μm):信越シリコーン製「QSG−30」
・ポリアミド粒子(平均粒子径40μm):アルケマ製「オルガソール2002ES4NAT3」
・カーボンブラック分散液:東海カーボン製「AQUA−BLACK001」、固形分濃度19質量%、溶媒:水
【0060】
作製した各帯電ロールについて、画像不具合、粒子脱落、表層割れの評価をした。評価方法および評価基準は以下の通りである。評価結果および表層形成用組成物の配合組成(質量部)を表に示す。
【0061】
(画像不具合)
各帯電ロールを市販のフルカラーMFP(キヤノン製「iR−ADV C9280PRO」)に組み込み、25℃×50%RHの環境下において、ハーフトーンにて200k枚画像出しを行った。200k枚目の画像に横スジ、トナーカブリ、ムラが無く良好な画像が得られたものを「◎」、横スジ、トナーカブリ、ムラが無いものを「○」、横スジ、トナーカブリ、ムラの少なくとも1つが確認されたものを「×」とした。
【0062】
(粒子脱落)
各帯電ロールを市販のフルカラーMFP(キヤノン製「iR−ADV C9280PRO」)に組み込み、25℃×50%RHの環境下において、ハーフトーンにて200k枚画像出しを行った。その後、市販のレーザー顕微鏡で倍率×400にてロール表面を無作為に10点観察したときに、粒子の脱落が観察されず、粒子周辺が良好な表面を維持している場合を「◎」、粒子の脱落が観察されなかった場合を「○」、粒子の脱落が観察された場合を「×」とした。
【0063】
(表層割れ)
各帯電ロールを市販のフルカラーMFP(キヤノン製「iR−ADV C9280PRO」)に組み込み、25℃×50%RHの環境下において、ハーフトーンにて200k枚画像出しを行った。その後、市販のレーザー顕微鏡で倍率×400にてロール表面を無作為に10点観察したときに、クラックが観察されず、良好な表面を維持している場合を「◎」、クラックが観察されなかった場合を「○」、クラックが観察された場合を「×」とした。
【0064】
【表1】
【0065】
比較例1では、表層にポリフェノールが配合されておらず、粒子の脱落が起こり、これにより画像不具合が生じた。比較例2では、表層に配合している粒子の粒子径が小さすぎ、これにより画像不具合が生じた。比較例3では、表層に配合している粒子の粒子径が大きすぎ、粒子の脱落が起こり、これにより画像不具合が生じた。これに対し、実施例では、表層が、バインダー、平均粒子径10〜120μmの粒子、ポリフェノールを含有しており、横スジやムラなどの画像不具合が抑えられ、耐久時にも表層から粒子が脱落するのが抑えられている。したがって、表層が、バインダー、平均粒子径10〜120μmの粒子、ポリフェノールを含有することにより、横スジやムラなどの画像不具合が抑えられ、耐久時にも表層から粒子が脱落するのが抑えられることがわかる。
【0066】
そして、実施例どうしの比較から、ポリフェノールの配合量がバインダー100質量部に対し0.3〜5.0質量部であると、画像不具合を抑える効果と耐久時に表層から粒子が脱落するのを抑える効果のバランスに優れる。
【0067】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
表層に粒子を添加することによって横スジやムラなどの画像不具合を抑えるとともに、耐久時にも表層から粒子が脱落するのを抑えた電子写真機器用帯電ロールを提供する。
軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周に形成された表層16と、を備え、表層が、下記の(a)〜(c)を含有する帯電ロール10とする。