(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単官能モノマー(A)と、多官能モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、着色剤(D)とを含み、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクジェットインク組成物であって、
水酸基価が、1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であり、
筒状の金属材料からなる缶基体の曲率外周面と水系の塗料からなる被覆層との間に設けられるインク層を、インクジェット印刷により形成するための紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
前記単官能モノマー(A)および前記多官能モノマー(B)の少なくとも一方は、水酸基含有モノマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
前記光重合開始剤(C)と前記着色剤(D)の配合量比率が、0.5≦(光重合開始剤/着色剤)≦5.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
前記光重合開始剤(C)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
前記単官能モノマー(A)と前記多官能モノマー(B)との配合量比率が、2≦(単官能モノマー(A)/多官能モノマー(B))≦20であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
前記単官能モノマー(A)と前記多官能モノマー(B)とを含む重合性化合物の平均官能基数が、1.0以上1.4以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
前記単官能モノマー(A)は、ガラス転移点が20℃未満である単官能モノマーを含み、当該単官能モノマー(A)中における当該ガラス転移点が20℃未満である単官能モノマーの含有率が50質量%以上100質量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェットインク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)〜(b)は、本実施の形態が適用される紫外線硬化型インクジェットインク組成物により印刷を施した缶体1を示した図である。
図1(a)は、缶体1の概略を示した図であり、
図1(b)は、
図1(a)の断面の一部を拡大した図である。
図1(a)〜(b)に示すように、缶体1は、有底円筒形状の容器部10と、容器部10の上部に形成された開口を塞ぐ蓋部材20とを備えている。容器部10および蓋部材20は、例えば、アルミニウム等の金属材料により構成される。
【0009】
容器部10は、内容物が充填可能な缶基体12と、缶基体12の曲率を有する外周面である曲率外周面に積層され、後述する紫外線硬化型インクジェットインク組成物をインクジェットプリントで印刷することで形成されるインク層14と、インク層14上に積層されインク層14の表面を被覆する被覆層16とを備えている。なお、缶基体12の外周面とインク層14との間には、例えば缶基体12とインク層14との付着性を向上させる等の目的で、下塗り層をさらに設けてもよい。
【0010】
本実施の形態のインク層14は、紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化型インクジェットインク組成物を、インクジェットプリンタにより缶基体12上に吐出して印刷した後、紫外線を照射することにより形成される。本実施の形態では、インク層14の形成に、紫外線硬化型インクジェットインク組成物を用いることで、例えば溶剤系や水系のインク組成物を用いる場合と比較して、短時間でインク組成物を硬化させることが可能となる。また、インク組成物における有機溶剤の使用量を低減することが可能となり、環境への影響を低減することができる。
なお、インク層14を形成する紫外線硬化型インクジェットインク組成物については、後段にて詳細に説明する。
【0011】
また、本実施の形態の被覆層16は、インク層14を保護し、またはインク層14の表面に光沢を付与する等の目的で設けられる。また、被覆層16を設けることで、紫外線硬化型インクジェットインク組成物を硬化することにより得られるインク層14に残存した未反応の光重合開始剤やモノマー等が、直接人体に触れることを抑制することができる。
本実施の形態の被覆層16は、水系の塗料をインク層14上に塗布し、乾燥させることにより、形成される。なお、被覆層16を形成する水系の塗料については、後段にて詳細に説明する。
【0012】
缶基体12は、本実施の形態では、内容物を充填するために例えば図中上部が開口する有底円筒形状を有する。内容物としては、特に限定されることはないが、例えばビールなどのアルコール類、ジュース等のソフトドリンク類に例示される飲料である。また、缶基体12としては、内容物を充填可能であるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム缶、スチール缶、ブリキ缶等の金属類を使用することができる。なお、缶基体12としては、アルミニウム製、スチール製、ブリキ製等の金属類からなり、円筒形状を有しているものであれば、管状のものを用いてもよい。
【0013】
<紫外線硬化型インクジェットインク組成物>
続いて、本実施の形態が適用される紫外線硬化型インクジェットインク組成物について説明する。
本実施の形態においてインク層14を形成するために用いられるインク組成物は、紫外線照射により硬化する紫外線硬化型インクジェットインク組成物である。なお、以下の説明において、紫外線硬化型インクジェットインク組成物を、単にインク組成物と称する場合がある。
【0014】
本実施の形態のインク組成物は、重合性化合物として、単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)を含む。さらに、本実施の形態の紫外線硬化型インクジェットインク組成物は、光重合開始剤(C)、および着色剤(D)を含む。
また、本実施の形態のインク組成物は、水酸基価が、1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲となっている。
【0015】
[インク組成物の水酸基価]
本実施の形態において、インク組成物の水酸基価とは、インク組成物1gに含まれる水酸基を無水酢酸でアセチル化し、アセチル化によって生じた酢酸を中和させるために必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
インク組成物の水酸基価は、JIS K 0070に記載される方法に準ずる計算により得ることができる。また、インク組成物の水酸基価は、インク組成物1g中における水酸基含有化合物(水酸基含有モノマー)の配合組成から計算によりその理論値を得ることができる。
【0016】
インク組成物1g中における水酸基含有化合物の配合組成から水酸基価を求める方法としては、具体的には、下記式(1)が挙げられる。
水酸基価[mgKOH/g]=(M
A×α
A+M
B×α
B+・・・)×56000…(1)
ここで、式(1)においてM
Xは、インク組成物1g中における水酸基含有化合物(X)の物質量、α
Xは、水酸基含有化合物(X)1分子が有する水酸基数を表す。
【0017】
本実施の形態のインク組成物の水酸基価は、上述したように、1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であり、1mgKOH/g以上60mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましい。
【0018】
インク組成物の水酸基価が1mgKOH/g未満である場合、缶基体12に対するインク層14の付着性が不十分になるおそれがある。また、インク組成物の水酸基価が1mgKOH/g未満である場合、缶基体12にインク層14を形成した後、インク層14に被覆層16を形成するための塗料を塗布した場合に塗料のはじきを生じたり、インク層14と被覆層16との付着性が不十分になったりするおそれがある。
一方、インク組成物の水酸基価が100mgKOH/gを超える場合、インク層14の耐水性が低下するおそれがある。
【0019】
ここで、一般に紫外線硬化型のインク組成物は、溶剤系または水系のインク組成物と比較して、硬化時の体積収縮率が大きい。このため、紫外線硬化型のインク組成物の特性等によっては、缶基体12に対する付着性が不十分になるおそれがある。特に、缶基体12は、円筒形状を有しており、インク層14を形成する外周面が曲率を有している。したがって、インク層14を形成する面が平面である場合と比較して、インク組成物の体積収縮による影響が大きくなりやすい。
これに対し、本実施の形態では、インク組成物の水酸基価を1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲とすることで、缶基体12の曲率を有する外周面に対するインク層14の付着性を向上させることが可能となる。
【0020】
さらに、本実施の形態では、インク組成物の水酸基価を1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲とすることで、水酸基価が本範囲を外れる場合と比較して、インク層14に対する水系の塗料の濡れ性を向上させることができる。これにより、インク層14に水系の塗料を塗布した場合の塗料のはじきが抑制され、インク層14と被覆層16との付着性を向上させることが可能となる。
【0021】
[重合性化合物]
本実施の形態のインク組成物は、上述したように、重合性化合物として、単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)を含む。ここで、重合性化合物とは、紫外線照射時に反応性を示すラジカル重合性官能基を有する化合物を意味する。詳細については後述するが、本実施の形態のインク組成物は、重合性化合物として、単官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)の他、アクリレートオリゴマーを含んでいてもよい。なお、本実施の形態の説明において、紫外線照射時に反応性を示すラジカル重合性官能基を、単に官能基と称する場合がある。
【0022】
本実施の形態のインク組成物において、重合性化合物の含有量は、インク組成物の全質量中、20質量%以上95質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
(単官能モノマー)
本実施の形態のインク組成物は、上述したように、重合性化合物として、単官能モノマー(A)を含む。ここで、単官能モノマー(A)とは、官能基数が1であるモノマーである。
【0024】
本実施の形態のインク組成物において、単官能モノマー(A)の含有量は、インク組成物の粘度調整、インク層14の硬化性または強度等の観点から、インク組成物の全質量中、40質量%以上80質量%以下の範囲であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下の範囲であることがより好ましい。
インク組成物において単官能モノマー(A)の含有量が40質量%未満である場合、インク組成物の粘度を所望の範囲に調整することが困難になる。一方、インク組成物において単官能モノマー(A)の含有量が80質量%を超える場合、インク層14の硬化性または強度が不十分になるおそれがある。
【0025】
本実施の形態のインク組成物に用いる単官能モノマー(A)の具体例としては、ステアリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、デシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、EO(エチレンオキシド)変性2−エチルヘキシルアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−(2’−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、2−ヒドロキシエトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシ(カプロラクトン変性)2−エチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、ラウリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシ(カプロラクトン変性)2−エチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び2−(2’−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートが好ましい。なお、これらの単官能モノマー(A)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本実施の形態のインク組成物において、単官能モノマー(A)は、インク層14に可撓性を付与する観点から、ガラス転移点が20℃未満(Tg<20℃)の単官能モノマーを含むことが好ましい。
また、ガラス転移点が20℃未満の単官能モノマーの含有量は、前記単官能モノマー(A)の全質量中、50質量%以上100質量%以下の範囲であることが好ましい。単官能モノマー(A)の全質量中、ガラス転移点が20℃未満の単官能モノマーの含有量が50質量%未満である場合、インク層14と被覆層16との付着性が低下するおそれがある。
【0027】
ガラス転移点が20℃未満の単官能モノマーの具体例としては、ステアリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及びヒドロキシ(カプロラクトン変性)2−エチルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及びヒドロキシ(カプロラクトン変性)2−エチルアクリレートが好ましい。なお、これらのガラス転移点が20℃未満の単官能モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(多官能モノマー)
本実施の形態のインク組成物は、上述したように、重合性化合物として、多官能モノマー(B)を含む。ここで、多官能モノマー(B)とは、官能基数が2以上であるモノマーである。
【0029】
本実施の形態のインク組成物において、多官能モノマー(B)の含有量は、インク層14の強度、またはインク組成物を硬化させる際の体積収縮等の観点から、インク組成物の全質量中、5質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。
インク組成物において多官能モノマー(B)の含有量が5質量%未満である場合、インク層14の強度が不十分になるおそれがある。一方、インク組成物において多官能モノマー(B)の含有量が50質量%を超える場合、インク組成物を硬化させる際の体積収縮率が大きくなり、缶基体12または被覆層16との付着性が低下するおそれがある。
【0030】
本実施の形態のインク組成物に用いる多官能モノマー(B)の具体例としては、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートが好ましい。なお、これらの多官能モノマー(B)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本実施の形態のインク組成物では、水酸基価を付与するという観点から、単官能モノマー(A)または多官能モノマー(B)の少なくとも一方は、水酸基含有モノマーを含むことが好ましい。具体的には、単官能モノマー(A)または多官能モノマー(B)の少なくとも一方は、
CH
2CR
1COO(R
2O)
nH
[R
1は水素又はメチル基、R
2は炭素数2〜6のアルキレン基、nは1〜4の整数である]
で表される化合物、および/または、
CH
2CR
1COOC
2H
5O(CO(CH
2)
5O)
nH
[R
1は水素又はメチル基、nは1〜3の整数である]
で表される化合物を含むことが好ましい。なお、これらの水酸基含有モノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本実施の形態のインク組成物は、インク層14の付着性および可撓性の観点から、前記単官能モノマー(A)と前記多官能モノマー(B)との配合量比率(単官能モノマー(A)/多官能モノマー(B))が、2≦(単官能モノマー(A)/多官能モノマー(B))≦20の関係を満たすことが好ましい。
単官能モノマー(A)と多官能モノマー(B)との配合量比率が2未満である場合、インク層14の架橋密度が上昇し、インク層14の付着性が低下する傾向がある。一方、単官能モノマー(A)と多官能モノマー(B)との配合量比率が20を超える場合、インク層14の強度が不十分になるおそれがある。
【0033】
(アクリレートオリゴマー)
本実施の形態のインク組成物は、インク層14の強度を向上させる観点で、重合性化合物として、アクリレートオリゴマーを含んでもよい。ここで、アクリレートオリゴマーとは、アクリロイルオキシ基を1つ以上有するオリゴマーであり、官能基数は2〜6であることが好ましい。
インク組成物が重合性化合物としてアクリレートオリゴマーを含む場合、アクリレートオリゴマーの含有量は、例えば、重合性化合物の全質量中、1質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0034】
アクリレートオリゴマーの具体例としては、アミノアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、シリコーンアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー、及びブタジエンアクリレートオリゴマー等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0035】
本実施の形態のインク組成物は、上述した重合性化合物の平均官能基数が1.0以上1.4以下の範囲であることが好ましい。ここで、重合性化合物の平均官能基数とは、(インク組成物中の重合性化合物の総官能基数/インク組成物中の重合性化合物の総物質量)で算出することができ、重合性化合物1分子あたりの官能基の数を表す。
インク組成物において重合性化合物の平均官能基数が1.4を超える場合、インク層14の架橋密度が高くなるため、インク層14の付着性が低下するおそれがある。
【0036】
[光重合開始剤]
本実施の形態のインク組成物に用いる光重合開始剤(C)としては、例えば、α−アミノケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらの中でも、インク組成物の硬化性の観点から、インク組成物を硬化させる際に照射する紫外線の波長と吸収波長ができるだけ重複する光重合開始剤(C)を用いることが好ましい。例えば主波長が360nm〜425nmの紫外線を用いる場合、光重合開始剤(C)として、アシルフォスフィンオキサイド系化合物を用いることが好ましい。
【0037】
光重合開始剤(C)の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが、インク組成物の硬化性の観点から好ましい。なお、これら光重合開始剤(C)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
[着色剤]
本実施の形態のインク組成物に用いる着色剤(D)としては、例えば染料や顔料等が挙げられるが、インク層14の耐候性の観点から、顔料を用いることが好ましい。
インク組成物において、着色剤(D)の含有量は、例えば、インク組成物の全質量中、1質量%以上10質量%以下とすることができる。なお、着色剤(D)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
前記着色剤(D)の具体例としては、
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、7、9、10、12、13、14、15、16、17、24、32、34、35、36、37、41、42、43、49、53、55、60、61、62、63、65、73、74、75、77、81、83、87、93、94、95、97、98、99、100、101、104、105、106、108、109、110、111、113、114、116、117、119、120、123、124、126、127、128、129、130、133、138、139、150、151、152、153、154、155、165、167、168、169、170、172、173、174、175、176、179、180、181、182、183、184、185、191、193、194、199、205、206、209、212、213、214、215、219、
C.I.Pigment Orange 1、2、3、4、5、13、15、16、17、19、20、21、24、31、34、36、38、40、43、46、48、49、51、60、61、62、64、65、66、67、68、69、71、72、73、74、81、
C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、38、41、48、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49、52、52:1、52:2、53:1、54、57:1、58、60:1、63、64:1、68、81:1、83、88、89、95、101、104、105、108、112、114、119、122、123、136、144、146、147、149、150、164、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、211、213、214、216、220、221、224、226、237、238、239、242、245、247、248、251、253、254、255、256、257、258、260、262、263、264、266、268、269、270、271、272、279、282、
C.I.Pigment Violet 1、2、3、3:1、3:3、5:1、13、15、16、17、19、23、25、27、29、31、32、36、37、38、42、50、
C.I.Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16、17:1、24、24:1、25、26、27、28、29、36、56、60、61、62、63、75、79、80、
C.I.Pigment Green 1、4、7、8、10、15、17、26、36、50、
C.I.Pigment Brown 5、6、23、24、25、32、41、42、
C.I.Pigment Black 1、6、7、9、10、11、20、31、32、34、
C.I.Pigment White 1、2、4、5、6、7、11、12、18、19、21、22、23、26、27、28、
アルミニウムフレーク、ガラスフレーク、および中空粒子等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、インク層14における耐候性や色再現性の観点から、着色剤(D)として
C.I.Pigment Black 7、
C.I.Pigment Blue 15:3、15:4、28、
C.I.Pigment Red 101、122、202、254、282、
C.I.Pigment Violet 19、
C.I.Pigment White 6、
C.I.Pigment Yellow 42、120、138、139、150、151、155、180、213を用いることが好ましい。
【0041】
また、着色剤(D)として顔料を用いる場合、インクジェットヘッドにおけるインク組成部の吐出安定性の観点から、インク組成物中に存在する顔料粒子の体積平均粒子径が0.05μm以上0.4μm以下の範囲であり、且つ体積最大粒子径が0.2μm以上1μm以下の範囲であることが好ましい。顔料粒子の体積平均粒子径が0.4μmより大きいか、または体積最大粒子径が1μmよりも大きい場合、インク組成物を安定して吐出することが困難となる傾向がある。なお、顔料粒子の体積平均粒子径および体積最大粒子径は、動的光散乱法を用いた測定機器によって測定できる。
【0042】
本実施の形態のインク組成物において、インク組成物の全質量中の光重合開始剤(C)と着色剤(D)との配合量比率は、0.5≦(光重合開始剤/着色剤)≦5.0の関係を満たすことが好ましい。インク組成物の全質量中の光重合開始剤(C)と着色剤(D)との配合量比率が0.5未満である場合、顔料により紫外線が吸収されやすく、インク組成物の十分な硬化性が得られない場合がある。一方、インク組成物の全質量中の光重合開始剤(C)と着色剤(D)との配合量比率が5.0を超えると、紫外線照射によって生じるラジカル数が過剰となるため、反応生成物の分子量が低下しインク層14の強度が低下する場合がある。
【0043】
[その他の添加物]
本実施の形態のインク組成物には、その他の成分として、光安定剤、重合禁止剤、分散剤、酸化防止剤、表面調整剤、密着性付与剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、非反応性ポリマー、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、光輝材、磁性材、蛍光体等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。
【0044】
[インク組成物の特性]
本実施の形態のインク組成物は、その40℃における粘度が、5mPa・s以上30mPa・s以下の範囲であることが好ましく、5mPa・s以上20mPa・s以下の範囲であることがより好ましい。インク組成物の40℃における粘度をこのような範囲とすることで、インクジェットヘッドによりインク組成物を吐出する際に、良好な吐出安定性を実現することができる。なお、インク組成物の粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0045】
また、本実施の形態のインク組成物は、その25℃における表面張力が、22mN/m以上36mN/m以下の範囲であることが好ましい。インク組成物の25℃における表面張力をこのような範囲とすることで、インクジェットヘッドによりインク組成物を吐出する際に、良好な吐出安定性を実現することができる。なお、インク組成物の表面張力は、白金プレート法により測定することができる。
【0046】
本実施の形態のインク組成物を作製するためには、単官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)、光重合開始剤(C)、着色剤(D)と、必要に応じて適宜選択される各種成分とを混合する。その後、得られた混合物を、必要に応じて、インク層14の形成に使用するインクジェットプリントヘッドのノズル径の約1/10以下の孔径を持つフィルターを用いて濾過する。これにより、本実施の形態のインク組成物が得られる。
【0047】
なお、本実施の形態では、インク組成物における単官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)、および光重合開始剤(C)の配合比を調整することにより、インク組成物の粘度および表面張力を所望の範囲とすることができる。
【0048】
<水系塗料>
続いて、本実施の形態において、紫外線硬化型インクジェットインク組成物により形成されたインク層14上に塗布して被覆層16を形成する水系の塗料について説明する。
本実施の形態では、環境への影響を抑制する観点から、被覆層16を形成するために水系の塗料を用いている。ここで、水系の塗料とは、溶媒として水を用いた塗料をいう。
本実施の形態にて用いる水系の塗料としては、常温乾燥型水系塗料、焼付硬化型水系塗料、紫外線硬化型水系塗料等が挙げられる。これらの中でも、塗料の安定性や安全性、生産性の観点から、焼付硬化型水系塗料を用いることが好ましい。
【0049】
被覆層16の形成に用いられる焼付硬化型水系塗料としては、アルキッド樹脂系、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、アミノ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系の塗料が挙げられる。これらの中でも、塗膜硬度および耐水性の観点から、アミノ樹脂系の塗料を用いることが最も好ましい。
【0050】
<缶基体へのインク層および被覆層の形成方法>
続いて、缶基体12に対してインク層14および被覆層16を形成し、缶体1を得る方法について説明する。
本実施の形態では、缶体1の缶基体12に対して、インクジェットプリンタを用いたインクジェット印刷によりインク層14を形成する。インクジェット印刷は、インク層14の形成に版を必要としないため、オフセット印刷によりインク層14を形成する場合と比較して、コストを低減することができる。また、オフセット印刷によりインク層14を形成する場合と比較して、インク層14のデザインを短期間に変更することができる。
【0051】
以下、缶基体12に対してインク層14および被覆層16を形成する方法について、具体的に説明する。
本実施の形態では、まず、円筒形状の金属材料からなる缶基体12の外周面に、必要に応じて下塗り層を形成する。下塗り層の形成に用いる塗料としては、特に限定されず、例えば、水系、溶剤系、紫外線硬化系塗料を用いることができる。
【0052】
続いて、缶基体12の外周面上に形成した下塗り層上、または缶基体12の外周面上に直接、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドを用いて上述した紫外線硬化型インクジェットインク組成物を吐出させ、画像等の印刷を行う。具体的には、紫外線硬化型インクジェットインク組成物を吐出させながらインクジェットヘッドの下で缶基体12をその缶軸を中心として周方向に自転させることで、缶基体12の外周面に形成した下塗り層上、または缶基体12の外周面上に印刷を行う。
インクジェットプリンタとしては、例えば、荷電制御方式またはピエゾ方式によりインク組成物を噴出させるインクジェットプリンタ等を用いることができる。
【0053】
次いで、下塗り層上または缶基体12の外周面上に積層されたインク組成物に対して、紫外線を照射することで、インク組成物を硬化させ、インク層14を形成する。インク組成物の硬化に用いる紫外線の波長は、インク組成物に含まれる光重合開始剤(C)の吸収波長と重複していることが好ましい。また、インク層の形成に用いる紫外線の波長は、インク組成物に含まれる着色剤(D)の吸収波長との重複が少ないことが好ましい。
本実施の形態の紫外線硬化型インクジェットインク組成物に対しては、主波長が360nm〜425nmの紫外線を用いることが好ましい。また、紫外線の照射には、紫外線を出射するLEDやメタルハライドランプ等を用いることができる。
【0054】
続いて、インク層14上に、上述した水系の塗料を塗布する。塗料の塗布方法としては、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、およびカーテンフローコーター等を用いた方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。
その後、塗料の種類に応じて塗料を乾燥、硬化させ、被覆層16を形成する。例えば塗料として焼付硬化型水系塗料を用いる場合には、塗料をオーブン等で焼き付けることにより、被覆層16を形成する。焼付硬化型水系塗料を用いる場合の焼付条件は、焼付温度を100℃〜250℃とし、且つ焼付時間を10秒〜30分とすることが好ましい。
【0055】
以上より、缶基体12の外周面に、直接または下塗り層を介して積層されるインク層14と、インク層14上に積層される被覆層16とを備える缶体1が得られる。
ここで、本実施の形態では、インク層14の形成に、水酸基価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲の紫外線硬化型インクジェットインク組成物を用いている。これにより、被覆層16を形成するために水系の塗料をインク層14上に塗布した際に、十分な濡れ性が得られる。この結果、インク組成物の水酸基価が本範囲を外れる場合と比較して、インク層14と被覆層16との間で十分な付着性が得られ、被覆層16の剥がれが抑制される。
【実施例】
【0056】
続いて、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(1)インク組成物の調整
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のそれぞれについて、表1〜表4に示す配合比にて各原料を混合し、得られた混合物をビーズミルで練合し、インク組成物を調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
1)エトキシエトキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社)
2)ラウリルアクリレート(共栄社化学株式会社)
3)ジプロピレングリコールモノメチルアクリレート(共栄社化学株式会社)
4)イソボルニルアクリレート(株式会社日本触媒)
5)フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社)
6)2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社)
7)4−ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社)
8)不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン(株式会社ダイセル)
9)テトラエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社)
10)1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学株式会社)
11)ジプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社)
12)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社)
13)トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学株式会社)
14)ウレタンオリゴマー(ダイセル・オルネクス株式会社)
15)光重合開始剤(BASFジャパン株式会社)
16)Raven 450(コロンビアンカーボンジャパン)
17)Sico Yellow FR1252HD(BASF)
18)Heliogen Blue L7080(BASF)
19)SicoFast Red 3855(BASF)
20)顔料分散剤(ビックケミージャパン株式会社)
【0062】
(2)水酸基価
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のそれぞれのインク組成物について、上述した水酸基含有化合物の配合組成を用いた計算により、水酸基価を算出した。
【0063】
(3)インク層14および被覆層16の形成
直径66mmの円筒形状のアルミニウム缶の外周面上に、インクジェットプリンタにより、5.6g/m
2の塗布量で実施の形態1〜実施例20および比較例1〜比較例5の各インク組成物を印刷した。続いて、アルミニウム缶の外周面上に積層されたインク組成物に対して、LED(主波長385nm)を用いて紫外線を照射してインク組成物を硬化させ、インク層14を形成した。
次いで、インク層14上に、ロールコーターを用いて、水系メラミン塗料を乾燥後59mg/dm
2の膜となるように塗布した後、加熱乾燥により硬化させ、被覆層16を形成した。
【0064】
(4)評価試験
<塗装性評価>
被覆層16を形成するために水系メラミン塗料をインク層14上に塗布したときのインク層14の外観を観察し、インク層14における塗料の塗装性を評価した。なお、評価は、以下の基準にて行った。
A:塗料を塗布したときに、インク層14ににじみやめくれが見られない。
B:塗料を塗布したときに、インク層14ににじみが観察される。
C:塗料を塗布したときに、インク層14が剥がれアルミニウム缶の素地が観察される。
【0065】
<鉛筆硬度評価>
インク層14および被覆層16を形成したアルミニウム缶に対して、JIS K 5600−5−4に記載される引っ掻き硬度の試験を行い、鉛筆硬度を評価した。なお、評価は、以下の基準にて行った。
A:鉛筆硬度がH以上。
B:鉛筆硬度がF。
C:鉛筆硬度がHB以下。
【0066】
<付着性評価>
インク層14および被覆層16を形成したアルミニウム缶に対して、JIS K 5600−5−6に記載されるクロスカット法による試験を行い、付着性を評価した。なお、評価は、以下の基準にて行った。
A:JIS K 5600−5−6における分類0に該当。
B:JIS K 5600−5−6における分類1、2に該当。
C:JIS K 5600−5−6における分類3、4に該当。
D:JIS K 5600−5−6における分類5に該当。
【0067】
<耐レトルト性評価>
インク層14および被覆層16を形成したアルミニウム缶に対して、125℃の水蒸気を30分間当てた後、室温に戻した。その後、JIS K 5600−5−6に記載されるクロスカット法による試験を行い、耐レトルト性(耐熱性、耐水性)を評価した。なお、評価は、以下の基準にて行った。
A:JIS K 5600−5−6における分類0に該当。
B:JIS K 5600−5−6における分類1、2に該当。
C:JIS K 5600−5−6における分類3、4に該当。
D:JIS K 5600−5−6における分類5に該当。
【0068】
(5)評価結果
表5〜表8に、実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のそれぞれのインク組成物の特性、および各評価試験の結果を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
表5〜表8に示すように、単官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)、光重合開始剤(C)、および着色剤(D)を含み、水酸基価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であるインク組成物を用いた実施例1〜実施例20では、塗装性、鉛筆硬度、付着性および耐レトルト性の評価試験において、良好な結果が得られることが確認された。言い換えると、実施例1〜実施例20では、インク層14の硬化性、インク層14のアルミニウム缶の外周面への付着性が良好であることが確認された。
【0074】
これに対し、水酸基価が1mgKOH/g未満のインク組成物を用いた比較例1、比較例3〜比較例5では、付着性および耐レトルト性に劣ることが確認された。
また、水酸基価が100mgKOH/gを超えるインク組成物を用いた比較例2では、付着性は良好であるものの、耐レトルト性に劣ることが確認された。
【0075】
なお、本発明は、缶体として捉えることもできる。
すなわち、本発明が適用される缶体は、筒状の金属材料からなる缶基体と、前記缶基体の曲率外周面上に設けられ、単官能モノマー(A)と、多官能モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、着色剤(D)とを含み、水酸基価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であり、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドにより吐出することで形成されたインク層と、水系の塗料からなり、前記インク層上に積層されて当該インク層を被覆する被覆層とを備える。
【0076】
また、本発明は、缶体の製造方法として捉えることもできる。
すなわち、本発明が適用される缶体の製造方法は、単官能モノマー(A)と、多官能モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、着色剤(D)とを含み、水酸基価が1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であり、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクジェットインク組成物を、筒状の金属材料からなる缶基体の曲率外周面に対してインクジェットヘッドにより吐出し、前記缶基体に紫外線を照射することで、前記紫外線硬化型インクジェットインク組成物を硬化させてインク層を形成し、前記インク層上に、水系の塗料を塗布することで当該インク層を被覆する被覆層を形成する。
ここで、前記水系の塗料として、焼付硬化型水系塗料を塗布することで前記被覆層を形成することを特徴とすることができる。
また、前記水系の塗料として、アミノ樹脂系水系塗料を塗布することで前記被覆層を形成することを特徴とすることができる。
単官能モノマー(A)と、多官能モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、着色剤(D)とを含み、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクジェットインク組成物であって、水酸基価が、1mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の範囲であり、筒状の金属材料からなる缶基体12の曲率外周面と水系の塗料からなる被覆層16との間に設けられるインク層14を、インクジェット印刷により形成するための紫外線硬化型インクジェットインク組成物である。