(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素系共重合体A及び前記フッ素系共重合体Bの総質量に対して、前記フッ素系共重合体Aを5質量%以上30質量%以下の割合で含む請求項4に記載のコーティング剤。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、二種のフッ素系共重合体(フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体B)をともに含有する一液型のコーティング剤、もしくは、フッ素系共重合体Aを含むコーティング剤およびフッ素系共重合体Bを含むコーティング剤からなる二液型のコーティング剤を用いるコーティング膜の形成方法である。
【0021】
(フッ素系共重合体A)
フッ素系共重合体Aは、下記一般式(1)で表されるフッ素含有モノマーを60質量%以上99質量%以下と、下記一般式(2)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルを1質量%以上40質量%以下と、を重合させてなる。
【0022】
【化4】
(式中、R
1は水素又はメチル基であり、mは0〜4の整数、nは1〜10の整数を示す。)
【0023】
【化5】
(式中、R
1は水素又はメチル基であり、R
2は炭素数1〜4の直鎖アルキル基または分岐アルキル基を示す。)
【0024】
一般式(1)で表わされるフッ素含有モノマー(単に、「フッ素含有モノマー」ともいう)としては、炭素数が1〜10のパーフルオロアルキル基を有するメタクリレートや炭素数が1〜10のパーフルオロアルキル基を有するアクリレートなどがあげられる。以下の記載において、「(メタ)アクリレート」とはメタクリル酸エステル(メタクリレート)とアクリル酸エステル(アクリレート)とを一括して表記したものを意味する。
【0025】
パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロデシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロメチルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
フッ素含有モノマーのうち、環境問題を考慮すると、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)クリレートが好ましく、具体的には、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、およびパーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
一般式(2)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル(「短鎖アルキルモノマー」ともいう)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、secブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tertブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜4のアルキル基含有(メタ)アクリレートなどがあげられる。
一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数が少ない化合物を用いると、汚れ成分と相溶しにくくなり土台となるフッ素系共重合体B成分からなる皮膜の表面近傍に移動しやすくなり(ブリードアウトしやすくなり)撥油性能が向上する。逆に、炭素数が5を超えると、オイル等の汚れ成分と相溶し易くなり、汚れを呼び込む要因となったり、汚れ成分と接触している場合には、経時的にまたは、加熱することに汚れ成分が流動し、撥油性能が低下することがある。
【0028】
フッ素系共重合体Aを作製するモノマーとしては、フッ素含有モノマーおよび短鎖アルキルモノマー以外に、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等の官能基モノマーを用いることができる。
【0029】
フッ素系共重合体Aとしては重量平均分子量(Mw)は30,000以上100,000以下のものが、特に撥油性能に優れたフッ素系共重合体が得られるという点で好ましく、Mwが30,000以上50,000以下のものが特に好ましい。また、フッ素系共重合体Aとしては数平均分子量(Mn)が20,000以上100,000以下のものが、特に撥油性能に優れたフッ素系共重合体が得られるという点で好ましく、Mnが30,000以上40,000以下のものが特に好ましい。
【0030】
次にフッ素系共重合体Aの製造方法について説明する。フッ素含有モノマー、短鎖アルキルモノマー、および必要に応じ官能基モノマー等のモノマーを用いて、これらを重合溶媒に溶解または懸濁させて重合をおこなう。
【0031】
フッ素系共重合体Aを作製する際に、モノマー全体の質量に対して、フッ素含有モノマーを60質量%以上99質量%以下、短鎖アルキルモノマーを1質量%以上40質量%以下の割合で用いる。短鎖アルキルモノマーが1質量%未満であると、均一なコーティング膜が形成できなくなり、40質量%を超えると、コーティング膜の表面に移動(ブリードアウト)し難くなる。また、フッ素成分が少なくなるため、撥油性能が低下する。
【0032】
フッ素系共重合体Aを作製する際には、重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物系重合開始剤、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物等を用いることができる。
【0033】
フッ素系共重合体Aを作製する際に使用する重合溶媒としてはフッ素含有モノマーや短鎖アルキルモノマーを溶解又は懸濁し得るものであればよく、例えば、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、およびイソヘキサン等の有機溶剤、および、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等のフッ素溶剤を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
(フッ素系共重合体B)
フッ素系共重合体Bは、一般式(1)で表されるフッ素含有モノマー(フッ素含有モノマー)を20質量%以上50質量%以下と、一般式(2)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル(短鎖アルキルモノマー)および下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる(メタ)アクリル酸エステルモノマーを50質量%以上80質量%以下と、を重合させてなる。
【0035】
【化6】
(式中、R
1は水素又はメチル基であり、R
3は炭素および水素からなる環状部分を有する官能基を示す。)
フッ素含有モノマーおよび短鎖アルキルモノマーとしては、フッ素系共重合体Aの材料として説明したモノマーと同様のものを用いることができる。
【0036】
一般式(3)で表わされる(メタ)アクリル酸エステル(「環状モノマー」ともいう)としては、例えば、スチレン(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、およびイソボルニル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの環状モノマーのうち、ベンジル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート等が好ましい。
炭素数4以下の短鎖アルキルモノマーや、環状モノマーを用いて得られるフッ素系共重合体Bは、油などの汚れ成分と相溶し難いため、汚れ成分(特にオイル成分)を外に追い出す効果がある。
【0037】
フッ素系共重合体Bとしては、重量平均分子量(Mw)は40,000以上400,000以下のものが、特に撥油性能に優れたフッ素系共重合体が得られるという点で好ましく、Mwが50,000以上300,000以下のものが特に好ましい。また、フッ素系共重合体Bとしては数平均分子量(Mn)が20,000以上80,000以下のものが、特に撥油性能に優れたフッ素系共重合体が得られるという点で好ましく、Mnが23,000以上70,000以下のものが特に好ましい。
【0038】
次にフッ素系共重合体Bの製造方法について説明する。短鎖アルキルモノマーおよび環状モノマーから選ばれる(メタ)アクリル酸エステルモノマー、フッ素系モノマー、および必要に応じ官能基モノマー等のモノマーを用いて、これらを重合溶媒に溶解または懸濁させて重合をおこなう。
【0039】
フッ素系共重合体Bを作製する際に、モノマー全体の質量に対して、フッ素含有モノマーを20質量%以上50質量%以下と、短鎖アルキルモノマーおよび環状モノマーから選ばれる(メタ)アクリル酸エステルモノマーを50質量%以上80質量%以下の割合で用いる。
フッ素含有モノマーの量を20質量%未満とした場合には、一旦退かされた汚れ成分がオーバーフローしてフッ素系共重合体Aとフッ素系共重合体Bとの間に流れ込む。フッ素含有モノマーの量が50質量%を超えると、汚れ成分に弾かれてしまい、均一な土台を形成することができなくなる。
【0040】
フッ素系共重合体Bを作製する際に用いる重合開始剤としては、フッ素系共重合体Aを作製する際に用いるものと同様のものを用いることができる。また、フッ素系共重合体Bを製する際に使用する重合溶媒としては、フッ素系共重合体Aを作製する際に用いる物と同様のものを用いることができる。
【0041】
(コーティング剤)
フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bは、別々に、溶媒に溶解あるいは溶媒中に分散させてコーティング剤を調製して使用することができる。フッ素系共重合体Aを溶媒に溶解または分散させて得られるものがコーティング剤Aであり、フッ素系共重合体Bを溶媒に溶解または分散させて得られるものをコーティング剤Bである。コーティング剤Aは、フッ素系共重合体Aを含むコーティング剤の一例であり、コーティング剤Bはフッ素系共重合体Bを含むコーティング剤の一例である。コーティング剤Aおよびコーティング剤Bからなるコーティング剤は二液型のコーティング剤の一例である。
【0042】
また、フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bは、混合して混合物として溶媒に溶解あるいは溶媒中に分散させることによりコーティング剤Cとして使用することができる。コーティング剤Cはフッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bをともに含む一液型のコーティング剤の一例である。
【0043】
本発明においては、フッ素系共重合体Aとフッ素系共重合体Bとの混合物を溶剤に溶解して得られるコーティング剤Cを用いると、コーティング工程が1工程で済むので作業効率に優れる。
【0044】
フッ素系共重合体A、フッ素系共重合体B、およびフッ素系共重合体Aとフッ素系共重合体Bとの混合物を溶解あるいは分散させる溶媒としては、有機溶剤、フッ素系溶剤などから選ばれる溶媒を用いることができる。
【0045】
有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが挙げられる。フッ素系溶剤としては、特に限定されず、例えば、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどを使用することができる。これらの溶剤は単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0046】
これらのうち、エステル系溶剤、芳香族系溶剤やフッ素系溶剤が好ましく、特にトルエンと、フッ素系溶剤とを併用するのが好ましい。フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bの溶解性に優れるからである。
【0047】
フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bは、別々に溶媒に溶解される場合においては、固形分濃度が0.1〜10質量%となるように溶媒に溶解される。
【0048】
フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bは、混合して溶媒に溶解される場合においては、フッ素系共重合体Aとフッ素系共重合体Bとの混合物の固形分濃度が0.1〜10質量%となるように溶媒に溶解される。
【0049】
フッ素系共重合体Aとフッ素系共重合体Bとの混合物において、各フッ素系共重合体の混合割合は、混合物の全質量に対してフッ素系共重合体Aを5質量%以上30質量%以下、フッ素系共重合体Bを70質量%以上95質量%以下とするのが好ましい。このような割合で混合した混合物を用いたコーティング剤Cを用いてコーティングを行うと、高温状態におかれた後の撥油性に優れるコーティング膜を形成することができるからである。フッ素共重合体Aが5質量%未満であると撥油性能が低下することがあり、フッ素共重合体Aが30質量%を超えると汚れ成分に弾かれてしまい、均一な土台を形成することができなくなることがある。
【0050】
コーティング剤A、コーティング剤B、およびコーティング剤Cには、それぞれ、実用性を向上させるために、酸化防止剤、紫外線安定剤、フィラー、シリコーンオイル、パラフィン系溶剤、可塑剤等各種添加剤を添加することができる。
【0051】
(コーティング剤の用途)
コーティング剤A,コーティング剤B、およびコーティング剤Cは、マイクロモーターの軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤、HDDモーターの流体軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤のほか、幅広い用途、電子基板の防湿コーティング剤などに用いて表面にフッ素を配向させ撥水性を向上させる用途や、塩水・電解液・腐食性ガス等から基材を保護する耐薬品保護コーティング剤、サインペン・ボールペン等のインクの漏れを防止する漏れ防止剤、コネクタ・電子部品等の汚れ防止剤、絶縁樹脂の這い上がり防止剤、MFコンデンサのリード封止樹脂の付着防止剤、繊維などの撥水・撥油剤、防水スプレー原液に使用することができる。
【0052】
(コーティング方法)
コーティング剤(コーティング剤A、コーティング剤B、コーティング剤C)を用いたコーティング方法としては、浸漬法、ハケ塗り法、スプレー法、ロールコート法など公知の方法が採用可能であり、コーティング剤を使用する基材の性質や形態などを考慮して適宜選択することができる。本発明のコーティング剤およびコーティング膜の形成方法は、コーティング処理を行う前に、予め汚れ成分等を洗浄除去した基材に適用することもできるが、コーティング処理前の汚れ成分等の洗浄除去処理を行っていない基材に適用することもできる。本発明(コーティング剤、コーティング膜の形成方法)により、汚れ成分等の洗浄除去を行わない基材のコーティング処理を行うと、洗浄処理を省略しつつ、十分な撥油性を基材に付与することができるので、作業効率に優れるという利点がある。
【0053】
本発明において、コーティング剤Aおよびコーティング剤B(二液型のコーティング剤)を用いる方法およびコーティング剤C(一液型のコーティング剤)を用いる方法のいずれでも、おおむね同等の性能を有するコーティング膜を形成することができる。
コーティング剤Cを用いると、基材へのコーティング作業が1工程で済むので作業効率に優れる。コーティング剤Aおよびコーティング剤Bを用いる場合、基材の表面を、コーティング剤Bによりコーティングした後、コーティングBをコーティングした面を、コーティング剤Aによりコーティングすると、撥油性に優れるフッ素系共重合体Aがコーティング膜の表面側に配される。
【0054】
<実施例>
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
(1)フッ素系ポリマーの作製
重合例A1〜重合例A5によりフッ素系ポリマーAを作製し、重合例B1〜B6によりフッ素系ポリマーBを作製し、重合例A6〜A8および重合例B6〜B8により比較のフッ素系ポリマーを作製した。各フッ素系ポリマーを作製する際に用いたモノマーとその量、および、各フッ素系ポリマーの分子量(Mw、Mn)を表1に示した。表1中、「長鎖アルキルモノマー」とは、ラウリルメタクリレートおよびステアリルメタクリレートのことをいう。
【0055】
(重合例A1)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート69g、メチルメタクリレート30g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れた。その後、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2g加えた。
温度計、攪拌翼、冷却管、N
2配管をセットして回転数100rpmで丸底フラスコ内の内容物を撹拌した。常温で丸底フラスコの空間部をN
2で30分置換した後、熱湯を加え、ヒーターを80℃にセットし重合を開始した。N
2は重合終了まで流し続けた。反応を5時間継続し、その後室温まで冷却することにより、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度(質量基準、以下同様)を測定したところ24.0%であった。
生成物のGPC(ゲルパーミレーションクロマトグラフ)を測定したところポリメチルメタクリレート(PMMA)換算でMnが35,000、Mwが60,000であった。
【0056】
(重合例A2)
丸底フラスコに、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレートを98g、メチルメタクリレートを2g、n−ヘプタン100gを入れたこと、およびAIBNを0.5g加えたこと以外は、重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、水あめ状の沈降物を含む生成物を得た。
生成物を真空乾燥して溶剤を取り除いた後、生成物10gを90gの旭硝子社製AE3000に溶解し10%溶液を作製した。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが28,000、Mwが50,000であった。
【0057】
(重合例A3)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロブチルエチルメタクリレート80g、メチルメタクリレート19g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ23.8%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが22,000、Mwが38,000であった。
【0058】
(重合例A4)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート69g、ブチルメタクリレート30g、メタクリル酸1gを入れ、次に、トルエン70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出してトルエンを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.2%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが38,000、Mwが200,000であった。
【0059】
(重合例A5)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート60g、ブチルメタクリレート39g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ23.9%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが35,000、Mwが86,000であった。
【0060】
(重合例A6)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート50g、メチルメタクリレート49g、メタクリル酸1gを入れ、次に、トルエン70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出してトルエンを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.0%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが23,000、Mwが53,000であった。
【0061】
(重合例A7)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート69g、ラウリルメタクリレート30g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ23.8%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが30,000、Mwが88,000であった。
【0062】
(重合例A8)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート79g、ステアリルメタクリレート20g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.9%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが32,000、Mwが93,000であった。
【0063】
(重合例B1)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート39g、イソボルニルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.5%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが50,000、Mwが300,000であった。
【0064】
(重合例B2)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロブチルエチルメタクリレート39g、イソボルニルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.0%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが46,000、Mwが214,000であった。
【0065】
(重合例B3)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート39g、メチルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、トルエン70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.3%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが23,000、Mwが50,000であった。
【0066】
(重合例B4)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート39g、ブチルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.6%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが44,000、Mwが103,000であった。
【0067】
(重合例B5)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート39g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.1%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが23,000、Mwが60,000であった。
【0068】
(重合例B6)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート39g、ラウリルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.1%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが57,000、Mwが230,000であった。
【0069】
(重合例B7)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート39g、ステアリルメタクリレート60g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.2%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが70,000、Mwが140,000であった。
【0070】
(重合例B8)
500mlの丸底フラスコにパーフルオロヘキシルエチルメタクリレート10g、イソボルニルメタクリレート89g、メタクリル酸1gを入れ、次に、酢酸ブチル70gを秤量して入れたこと以外は重合例A1と同様にして、重合反応をおこない、粘性のある液体状の生成物を得た。
丸底フラスコ内の生成物を取り出して酢酸ブチルを233g加えて希釈し、乾燥法にて濃度を測定したところ24.9%であった。
生成物のGPCを測定したところPMMA換算でMnが50,000、Mwが463,000であった。
【0072】
(2)コーティング剤の作製
(コーティング剤1)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A2で作製した生成物の10%溶液を5g、酢酸ブチル52.5g、旭硝子社製AE3000を24.1g秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0073】
(コーティング剤2)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、酢酸ブチル81.6gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度4.5質量%のコーティング剤を得た。
【0074】
(コーティング剤3)
重合例A2で作製した生成物の10.0%溶液を5g、旭硝子社製AE3000を95g秤量し十分に攪拌し、固形分濃度0.5質量%のコーティング剤を得た。
【0075】
(コーティング剤4)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル79.5gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0076】
(コーティング剤5)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を14.3g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液6.2g、トルエン32g、旭硝子社製AE3000を47.5g秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0077】
(コーティング剤6)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A3で作製した生成物の23.8%溶液2.1g、酢酸ブチル79.5gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0078】
(コーティング剤7)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A4で作製した生成物の24.2%溶液2.1g、トルエン34.5、バートレルXF(三井デュポンフロロケミカル社製)45.0gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0079】
(コーティング剤8)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A5で作製した生成物の23.9%溶液2.1g、酢酸ブチル79.5gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0080】
(コーティング剤9)
重合例B2で作製した生成物の24.0%溶液を18.8g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、トルエン79.1gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0081】
(コーティング剤10)
重合例B3で作製した生成物の24.3%溶液を18.5g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、トルエン79.5gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0082】
(コーティング剤11)
重合例B4で作製した生成物の24.6%溶液を18.3g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル79.6gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0083】
(コーティング剤12)
重合例B5で作製した生成物の24.1%溶液を19.1g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル78.8gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0084】
(コーティング剤13)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を4.1g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液16.7g、トルエン79.2gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0085】
(コーティング剤14)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A6で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル29.5g、旭硝子社製AE3000を50.0g秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0086】
(コーティング剤15)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A7で作製した生成物の23.8%溶液2.1g、酢酸ブチル79.5gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0087】
(コーティング剤16)
重合例B1で作製した生成物の24.5%溶液を18.4g、重合例A8で作製した生成物の24.9%溶液2.1g、酢酸ブチル79.5gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0088】
(コーティング剤17)
重合例B6で作製した生成物の24.1%溶液を18.7g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル79.2gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0089】
(コーティング剤18)
重合例B7で作製した生成物の24.2%溶液を18.7g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル79.2gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0090】
(コーティング剤19)
重合例B8で作製した生成物の24.9%溶液を18.1g、重合例A1で作製した生成物の24.0%溶液2.1g、酢酸ブチル29.8g、バートレルXF50gを秤量し十分に攪拌し、固形分濃度5質量%のコーティング剤を得た。
【0091】
(3)コーティング方法
20mm×20mmのSUS430板を、n−ヘキサンとイソペンチルアルコール(IPA)で洗浄し十分に乾燥した後、その表面にプレスオイル(汎用品)20μlを塗布し、試験片Sとした。
【0092】
(実施例1)
試験片Sのプレスオイル塗布面にコーティング剤1を200μl塗布したものを試験片1とした。
(実施例2)
試験片Sのプレスオイル塗布面にコーティング剤2を200μl塗布して30分間風乾した後、コーティング剤3を200μl塗布したものを試験片2とした。
(実施例3〜12)
10枚の試験片Sのプレスオイル塗布面に、それぞれコーティング剤4〜13を200μl塗布したものを試験片3〜12とした。
【0093】
(比較例1〜6)
6枚の試験片Sのプレスオイル塗布面に、それぞれコーティング剤14〜19を、200μl塗布したものを試験片13〜18とした。
(比較例7)従来法
重合例A1で作成したポリマー2質量部をフッ素系溶媒(Novec7100、住友3M社製)98質量部で溶解してポリマー量が2質量%のコーティング剤を作成した。このコーティング剤を200μl、試験片Sのプレスオイル塗布面に、塗布したものを試験片19とした。
(比較例8)
コーティング剤3を塗布しなかったこと以外は実施例2と同様にして、得られたものを試験片20とした。
【0094】
(比較例9)
市販のエポキシ樹脂3質量部、トルエン37質量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)35質量部を主剤とし、ポリアミド2質量部、トルエン14質量部、イソブタノール9質量部を硬化剤とし、主剤と硬化剤を使用直前に混合して混合液を作製した。
混合液200μlを試験片Sのプレスオイル塗布面に塗布し、30分間風乾した後、150℃×60分硬化させた。硬化物に比較例7で作製したコーティング剤を200μl塗布し試験片21とした。
【0095】
(4)評価試験
(接触角の測定)
上記、実施例1〜12及び比較例1〜9で作成した試験片1〜21について、協和界面科学(株)製自動接触角形DM500により、以下の接触角測定を行い結果を表に示した。撥油性がなく接触角が測定不能だったものについては表中に「N.D」と示した
1)接触角(初期):試験片1〜21について静的接触角を測定した。
2)接触角(耐熱撥油性1:表中「耐熱1」)
各試験片を、含浸油をのせた状態で80℃に加熱した恒温槽で保管し、10分後に取り出し、静的接触角を測定した。
3)接触角(耐熱撥油性2:表中「耐熱2」)
各試験片を、含浸油をのせた状態で80℃に加熱した恒温槽で保管し、24時間後に取り出し、静的接触角を測定した。
【0098】
(5)結果
表2および表3に示すように、フッ素系共重合体Aおよびフッ素系共重合体Bを混合した混合物を溶剤に溶解してなるコーティング剤を用いてコーティングすると(実施例1、実施例3〜12)、コーティング前に基材表面に存在するプレスオイルの洗浄除去を行わなくても、基材表面に撥油性を付与することができるということがわかった。
また、フッ素系共重合体A及びフッ素系共重合体Bを別々に溶剤に溶解してなる2種のコーティング剤を用いて基材のコーティングを行う場合(実施例2)でも、コーティング前に基材表面に存在するプレスオイルの洗浄除去を行わずに、基材表面に十分な撥油性を付与することができるということがわかった。
以上より、本発明のコーティング方法により基材のコーティングを行うと、基材の表面にプレスオイルが存在している状態(基材の洗浄処理なし)でも、基材の表面に十分な撥油性を付与することができるということがわかった。
【0099】
特に、フッ素系共重合体Aとフッ素系共重合体Bとの合計量(総質量)に対して、フッ素系共重合体Aを5質量%以上30質量%以下、フッ素系共重合体Bを70質量%以上95質量%以下で用いた実施例1〜11では、高温状態に長時間放置後であっても優れた撥油性を発揮できるということがわかった。
【0100】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、一般式(1)で表わされるフッ素含有モノマーとして、パーフルオロへキシルエチルメタクリレートおよびパーフルオロブチルエチルメタクリレートを用いた例を示したが、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルエチル(メタ)アクリレートを用いてもよい。
(2)上記実施例では、一般式(2)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルとして、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとを用いた例を示したが、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレートを用いてもよい。
(3)上記実施例では、一般式(3)で表わされる(メタ)アクリル酸エステルとしてベンジルメタクリレートやイソボルニルメタクリレートを用いた例を示したが、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、スチレン(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート等を用いてもよい。