(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155488
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】複数パーツを備えた爪部を有するロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/24 20140101AFI20170626BHJP
E05B 77/36 20140101ALI20170626BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20170626BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
E05B85/24
E05B77/36
E05B79/08
B60J5/00 M
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-536352(P2014-536352)
(86)(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公表番号】特表2015-511669(P2015-511669A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】IB2012002827
(87)【国際公開番号】WO2013057590
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】61/549,901
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハント、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン、キース
(72)【発明者】
【氏名】ディードリック、ジョン
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−503723(JP,A)
【文献】
特表2012−503722(JP,A)
【文献】
実開平04−014666(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0012376(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0068479(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0052336(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のロックユニットであって、開錠位置と、主要ラッチ係合位置と、2次的ラッチ係合位置とを有するものであり、
このロックユニットは、
第1の凹部と第2の凹部とを有する把持部であって、把持部回転軸を有するものである、前記把持部と、
爪部回転防止アームを有する爪部であって、爪部枢動軸を有するものである、前記爪部と、
回転防止レバー回転軸を有する回転防止レバーと、
枢動軸を有するロッカーレバーと、
を有し、
前記把持部は、前記把持部回転軸を中心として第1の経路に沿って開錠方向及び閉錠方向に回転するものであり、それにより前記ロックユニットが前記開錠位置、前記主要ラッチ係合位置、又は前記2次的ラッチ係合位置を呈するものであり、
前記把持部は、前記開錠方向に前記把持部回転軸を中心として前記開錠位置に向かって付勢されているものであり、
前記第2の凹部は、前記開錠方向において前記第1の凹部よりも後方に配置されるものであり、
前記爪部は、前記爪部枢動軸を中心として前記把持部の方向に付勢されているものであり、
前記第1の凹部は、開錠位置で前記自動車のストライカーを受容し、前記主要ラッチ係合位置および前記2次的ラッチ係合位置で前記ストライカーを確実に保持するように構成されているものであり、
前記回転防止レバーは、前記回転防止レバー回転軸を中心として第2の経路に沿って回転するものであり、
前記ロッカーレバーは、前記枢動軸を中心として回転し、且つ、前記第1の経路および前記第2の経路と交差するものであり、
前記ロックユニットが前記主要ラッチ係合位置または前記2次的ラッチ係合位置にある場合、前記回転防止レバーが前記爪部回転防止アームを前記把持部に当接させるものであり、
前記ロックユニットが前記2次的ラッチ係合位置にある場合、前記爪部回転防止アームが前記第2の凹部内へ進入するものであり、
前記ロックユニットが前記2次的ラッチ係合位置と前記主要ラッチ係合位置の間の点から前記閉錠方向に動く時、前記把持部が前記ロッカーレバーを作動させるものである、
ロックユニット。
【請求項2】
請求項1記載のロックユニットにおいて、前記爪部は、前記回転防止レバーと前記把持部との間に配置されるものであるロックユニット。
【請求項3】
請求項2記載のロックユニットにおいて、
前記爪部は、さらに、爪係止部を有するものであり、
前記把持部は、さらに、把持部用主要係止部を有するものであり、
前記ロックユニットが前記主要ラッチ係合位置にある場合、前記回転防止レバーが前記爪係止部に当接し、且つ、前記爪部回転防止アームが前記把持部用主要係止部に当接するものである、
ロックユニット。
【請求項4】
請求項2記載のロックユニットにおいて、前記爪部は、さらに、凹状部を有するものであり、前記ロックユニットが前記開錠位置にある場合、前記回転防止レバーは少なくとも部分的に前記凹状部内に配置されるものであるロックユニット。
【請求項5】
請求項3記載のロックユニットにおいて、前記回転防止レバーは、さらに、解除端を有するものであり、前記回転防止レバーは、少なくとも前記爪係止部から凹状空間部を通過する位置へ回転するものであるロックユニット。
【請求項6】
請求項3記載のロックユニットにおいて、前記把持部用主要係止部および前記爪部回転防止アームは、さらに、接触面を有し、当該接触面は互いに相補的に湾曲しているものであるロックユニット。
【請求項7】
請求項1記載のロックユニットにおいて、前記把持部は、さらに、ロッカー作動体を有するものであり、当該ロッカー作動体は突出部であり、前記ロッカーレバーは、さらに、接触面を有するものであり、前記ロッカー作動体は前記接触面と相互作用するものであるロックユニット。
【請求項8】
請求項3記載のロックユニットにおいて、前記ロッカーレバーの位置のずれは、前記回転防止レバーを前記爪係止部と接触している状態から移動させるものであるロックユニット。
【請求項9】
請求項3記載のロックユニットにおいて、前記第2の凹部は、当該第2の凹部の向かい合う側部に出口端と2次的係止部とを有するものであるロックユニット。
【請求項10】
請求項9記載のロックユニットにおいて、前記出口端は当該出口端と前記把持部用主要係止部との間の遷移領域の方向に湾曲しているものであり、前記2次的係止部は前記把持部のスライド面の方向に湾曲しているものであるロックユニット。
【請求項11】
請求項10のロックユニットにおいて、前記出口端は、前記爪部回転防止アームを押圧し、それにより前記爪部を前記2次的ラッチ係合位置から前記主要ラッチ係合位置へ回転させるものであるロックユニット。
【請求項12】
請求項3記載のロックユニットにおいて、前記回転防止レバーは前記爪係止部の方向に付勢されているものであり、且つ、前記回転防止レバーは前記自動車の操作リンクに連結されているものであり、これにより前記爪係止部から離れる方向に回転して前記ロックユニットを前記主要ラッチ係合位置から解除するものであるロックユニット。
【請求項13】
請求項12記載のロックユニットにおいて、前記ロックユニットは、前記主要ラッチ係合位置にある場合、前記回転防止レバーが前記爪係止部に当接し、前記爪部回転防止アームが前記把持部用主要係止部に当接するものであるロックユニット。
【請求項14】
請求項12記載のロックユニットにおいて、前記把持部は、さらに、把持部用2次的係止部を有するものであり、前記ロックユニットが2次的ラッチ係合位置にある場合、前記回転防止レバーが前記爪係止部に当接し、前記爪部回転防止アームが前記把持部用2次的係止部に当接するものであるロックユニット。
【請求項15】
請求項11記載のロックユニットにおいて、前記把持部用主要係止部および前記爪部回転防止アームは接触面を有し、当該接触面は互いに相補的に湾曲しているものであるロックユニット。
【請求項16】
請求項12記載のロックユニットにおいて、前記第2の凹部は、さらに、当該第2の凹部の向かい合う側部に出口端と2次的係止部とを有するものであり、前記ロックユニットが前記2次的ラッチ係合位置にある場合、前記第2の凹部が前記爪部回転防止アームを保持するように構成されているものであるロックユニット。
【請求項17】
請求項16記載のロックユニットにおいて、前記出口端は当該出口端と前記把持部用主要係止部との間の遷移領域の方向に湾曲しているものであり、前記2次的係止部は前記把持部のスライド面の方向に湾曲しているものであるロックユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にドアラッチに関し、より具体的には、単一の爪部と回転防止レバーとを用いて複数位置において把持部を保持する自動車ドアのロックユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車サイドドアに使用されるロックユニットには、通例、ラッチ機構が用いられる。前記ラッチ機構は、把持部(catch)として知られており、一般に自動車ドアフレームの窓柱(pillar)に配置される把持用ボルト又はストライカーを受容する。前記ラッチハウジングのスロットが前記把持部の凹部と一直線に合わさる場合、前記把持部は開錠位置へ付勢により移動する。前記ドアが閉じられる時、前記ストライカーはスロットを介して凹部に進入し、前記把持部を閉錠位置へ回転させる。この閉錠位置において前記ストライカーは爪部によって前記凹部内に保持されるものであり、前記爪部は前記把持部が開錠位置の方向に回転するのを妨げるようになっている。一般に爪部は把持部の方向に強く付勢されているものであり、これら2つの接触面は、強い加速力に抗するために当該加速力に反発する方向に付勢され所定の角度で配置されている。前記ラッチハウジングは、一般にプラスチック製であり、前記スロットの領域以外の部分をカバーにより密封することができる。このようなロックユニットは、一般に少なくとも1つの解除レバー(例えば内側または外側ドアハンドル)と、位置をずらすことができるロック機構(例えば、前記外側ドアハンドルの所又は外側ハンドル内に備えられるロックシリンダー、又は、前記ドアの窓ガラス領域内に配置されるスライドボタン)とを含む。このような場合、ロック機構の開錠において、前記内側または外側ドアハンドルが前記機構を介して連動し、その動きが爪部の付勢力に抗して前記爪部と前記把持部の連結を分離し、それにより前記バネ仕掛けの把持部が開錠位置へ移動可能となる。
【0003】
一般に、自動車のドア、ハッチ又はテールゲートに設けられるロックユニットには、前記主要ラッチ係合位置に加えて、2次的ラッチ係合位置も提供される。この2次的ラッチ係合位置は、前記主要ラッチ係合位置と前記開錠位置との間に当たる位置であり、これにより前記把持部が前記主要ラッチ係合位置に到達できない場合でも前記ドアが前記2次的ラッチ係合位置で閉扉保持されるようにして、明らかに搭乗者が危険に晒されることになる前記開錠位置まで前記ドアを移行しないようにする。移動中に前記自動車ドアが開くことを防止するのに加えて、前記2次的ラッチ係合位置は、また、使用者が前記自動車ドアを十分な力で閉じない場合に知覚できる。通常、前記自動車ドアを閉じる力が弱すぎる場合、当該ドアが確実にラッチ係合されていないことを気づかせるために、当該ドアは前記2次的ラッチ係合位置で視覚的に半開きの状態に保たれる。付加的な力を与えること(例えば、自動車ドアに寄りかかること)により、前記ラッチ機構を前記主要ラッチ係合位置へ押し込み、前記ドアを完全に閉じることができる。
【0004】
前記解除レバーの作動により、前記主要ラッチ係合位置から前記爪部が解除されると、前記爪部は急動し対応する前記把持部のロック面から離脱し、前記バネ仕掛けの把持部が高速で前記開錠位置へ移動する。前記ロック面の互いに対する急動作は、かなり大きい開錠音(opening clack)をもたらし、この大きな開錠音に続いて2回目の大きな音が直ちにもたらされる。この2回目の大きいな音は、前記把持部が前記開錠位置に到達する際に当該把持部が制限係止部で衝撃を与えることにより生じる。前記強い力が前記爪部および把持部の互いのロック面を付勢するために(また、前記強い力が前記把持部を前記制限係止部の方向に付勢するために)、前記自動車ドアの開錠により生じるノイズは非常に大きい。さらに、前記爪部及び把持部への強い衝撃は、特に当該衝撃の多くが前記ロック面に沿って発生するため、前記ロックユニットに損傷を与え、その有用寿命を顕著に制限しうる。
【0005】
独国特許出願公開第10 2007 003 948A1号には複数の爪部を備えるラッチ機構が開示されており、当該ラッチ機構が開錠中の前記ラッチノイズと前記ラッチ機構を作動するために必要な力とを共に低減させることが記載されている。前記把持部の前記ロック面および第1の爪部はそれらに対応して面取りされ傾斜がつけられて、前記ロック面が互いの面から解除される際に滑らかで段階的なスライドを実現する。前記ロック面は前記把持部が解除される間に互いの面を押圧することで発生する合成的なせん断力を低減するように設計されたため、前記ロック機構の作動に必要な力もまたそれに対応して減少する。さらに、前記ラッチ機構に作用する力が減少する結果、開錠中にもたらされる前記ノイズが有意に低減される。
【0006】
しかしながら、前記ロック面は互いに関して比較的容易にスライドするように設計されているので、前記ラッチ機構は自動ラッチ係合式ではなく(即ち、前記ロック面は、それら自身で所定の位置に把持部を保持するわけではなく)、前記把持部に対して前記主要ラッチ係合位置で前記第1の爪部を保持する爪部回転防止レバーを必要する。さらに、2次的ラッチ係合位置を実現するために、第2の爪部も必要である。閉錠中に前記爪部回転防止レバーが前記2次的ラッチ係合位置で係合することを防止するため、前記第2の爪部は前記把持部、前記第1の爪部、及び前記回転防止レバーから分離された平面内に配置されている。前記主要ラッチ係合位置となることができない場合(例えば、第1の爪部が前記把持部からスライドして離れてしまう場合)、ボルトが前記把持部から前記第2の爪部の平面に延出することによって、当該ボルトが前記把持部の開錠経路内で前記第2の爪部の回転防止アームに当接し、2次的ラッチ係合位置が達成される。しかしながら、前記第2
の爪部を異なる平面上に設けて前記ボルトを前記把持部内へ誘導することは、製造の観点でコストがかかる。従って、前記複数の爪部を備える設計は開錠ノイズやラッチ作動力を効率的に低減するものであるが、一方でそれは前記ラッチ機構の複数平面で複数の異なる構成部品を必要とするものであり、それにより前記装置の製造が複雑で費用のかかるものとなる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 独国特許出願公開第102007003948号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2011/012376号明細書
(特許文献3) 国際公開第2010/142280号
(特許文献4) 国際公開第2010/142261号
【発明の概要】
【0007】
上述した課題を鑑みて、本発明は一実施形態において爪部を有するロックユニットであって、前記爪部が把持部と回転防止レバーとの間に配置されるロックユニットを提供する。前記把持部は、把持部回転軸を中心に回転可能であり、また、前記ロックユニットの開錠位置に向かって開錠方向に付勢されている。このロックユニットでは前記把持部の第1の凹部が前記自動車のストライカーを受容するように構成されている。さらに、前記把持部は第2の凹部を含み、この第2の凹部は前記開錠方向において前記第1の凹部の前に配置される。前記爪部は、回転可能であり、また前記把持部の方向に付勢されている。さらに、前記爪部は回転防止アームを含み、この回転防止アームは前記ロックユニットが2次的ラッチ係合位置にある場合に前記把持部の前記第2の凹部内に進入する。前記回転防止レバーは、前記ロックユニットの主要ラッチ係合位置において前記爪部の前記回転防止アームを前記把持部に当接させる。ロッカーレバー(rocker lever)が前記把持部および回転防止レバーの両方の移動経路と交差するように配置される。前記ロックユニットが前記2次的ラッチ係合位置から前記第1のラッチ係合位置へ押し込まれる場合、前記把持部が前記ロッカーをずらすことで、前記回転防止レバーが前記爪部から離れる方向に相互移動する。
【0008】
この実施形態の類形態では、前記主要ラッチ係合位置および前記2次的ラッチ係合位置は、前記把持部と同一平面上に備えられている。
【0009】
この実施形態の類形態では、本発明は、単一の爪部に単一の回転防止アームを提供して前記主要および2次的ラッチ係合位置を実現する。これは、さらに前記設計を簡易化し、また確実に一貫した操作を行うのに役立つ。
【0010】
この実施形態の類形態では、前記ロックユニットは、前記ロック面での滑らかな解除を利用してノイズ及び作動力を最小化する。
【0011】
この実施形態の類形態では、2次的爪部は除去され、従来型の2次元的な把持部を主要および2次的負荷のために掘削して利用可能とする。
【0012】
この実施形態の類形態では、前記スチール製の2次的爪部、バネ、及び把持用ピンが除去されるので、本発明は、安価で、より小さく、より軽量なロックユニットを提供する。
【0013】
さらに、前記設計では、小さな次元の変更がロックユニットの性能に悪影響を及ぼさないように製造公差を考慮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【
図1】
図1は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットが主要ラッチ係合位置にある場合の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットの正面図であって、主要ラッチ係合位置から把持部が解除された状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットが開錠位置(回転防止レバーの完全移動位置)にある場合の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットが把持部延長移動位置にある場合の正面図である。
【
図5】
図5は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットが2次的ラッチ係合位置にある場合の正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットの正面図であって、2次的ラッチ係合位置を超えた把持部によってロッカーがずらされた後の状態を示す。
【
図7】
図7は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットの正面図であって、爪部が把持部によって回転防止レバーの抵抗なく移動する間の状態を示す。
【
図8】
図8は、本発明の代表的な実施形態に従うロックユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図3を参照すると、本発明の実施形態に従うロックユニット10が主要ラッチ係合位置及び開錠位置にある場合においてそれぞれ示されている。ロックユニット10には、自動車のドア、ハッチ、又はテールゲートに当該ロックユニット10を取り付けるためのベースプレート12が含まれており、このベースプレート12内に設けられたスロット14は自動車本体に取り付けられたストライカー16と対向している。一般に、ストライカー16(また把持用ボルトとして参照される)はピン又はU字形状の受部(bracket)であり、当該受部は自動車ドアフレームの後部側でパーティションに取り付けられ開扉平面内に延出している。ドアユニット10は自動車ドアヒンジの向かい側に取り付けられ、ベースプレート12のリーディングエッジ13がストライカー16に対向しており、また、ロックユニット10の構成部品が自動車ドア内に配置されている。このような構成により、自動車ドアが閉じられると、ストライカー16はベースプレート12のスロット14内、そして把持部20の第1の凹部22内に進入して、開錠位置(
図3に示す)から主要ラッチ係合位置(
図1に示す)へ把持部20を回転させる。
【0016】
ストライカー16が自動車ドアに設置される場合では、ロックユニット10は自動車本体に取り付けられ、また、その設置位置に係らずハウジング又はカバーをベースプレート12に加えて又はその代わりに提供してロックユニット10の構成部品をさらに保護することができることに気づくであろう。
【0017】
一実施形態では、把持部20、爪部40、及び回転防止レバー60は、金属製またはプラスチック製の比較的平坦な部品である。また、ベースプレート12、及びロックユニット10を覆う任意のハウジングは、プラスチック射出成形(injection molding)によって成形することができる。別の実施形態では、ロックユニット10は、金属から、又は、金属部品とプラスチック部品の組み合わせから構成される。
【0018】
図1において、自動車ドアは完全に閉じており、ロックユニット10は主要ラッチ係合位置にある。把持部20は、把持部取付穴26を介して把持部回転軸24に取りつけられ、第1の凹部22内にストライカー16を保持する。把持部20は、把持部回転軸24を中心として当該把持部20を開錠方向S1に回転させるバネによって付勢されているが、この把持部20は爪部40の回転防止アーム48によって主要ラッチ係合位置において保持されている。そして、この爪部40は、回転防止レバー60の回転防止アーム62によって所定位置に保持されている。回転防止レバー60は、回転防止レバー取付穴69を介してレバー回転軸68に取り付けられ、爪部40に隣接している。把持部用主要係止部32は、第1の凹部22の底部、又は第1の凹部22と第2の凹部30との間の把持部20外縁上に位置してよく、爪部40の回転防止アーム48と接触する。把持部用主要係止部32の接触面33及び爪部回転防止アーム48の接触面50が、(例えば、正の角度勾配を有する表面であって段階的に傾きが小さくなる表面を組み込むことにより)滑らかにスライドして離れるように設計されているので、回転防止レバーアーム62が爪部40の係止部54に当接するように提供される。
【0019】
回転防止レバーアーム62と爪係止部54の相対位置によらず、回転防止レバー60は、レバー回転軸68を貫通する爪係止部54からの垂直力によって回転が防止される。しかしながら、レバー回転軸68を中心としてS2の方向に前記回転防止レバー60の回転を付勢することは好ましく、その場合、一端をベースプレート12に連結し、他端を回転防止レバー60に連結したねじりバネ(torsion spring)を用いてよい。従って、爪係止部54からの前記力により回転防止レバー60に作用するモーメントが生じたとしても(即ち、垂直力が回転防止レバーの回転軸68を貫通しないとしても)、S2方向の前記付勢により回転は阻止され、回転防止レバーアーム62と爪係止部54との間の接触が維持されることになり、それにより爪部40の位置を維持し、把持部用主要係止部32が爪部回転防止アーム48から自由自在になるのを防止する。
【0020】
また、係止制限部(例えば、ベースプレート12から延出する突出部)を用いて、回転防止レバー60の、並びに、把持部20及び爪部40の回転を予め設定された動作範囲に制限することもできるであろう。本発明の一実施形態では、回転防止レバー60の前記回転は、前記主要ラッチ係合位置にある時に時計回り方向に限界であり、前記レバーバネによってその位置へS2方向に付勢されている。
【0021】
自動車ドアを開けるために、ロックユニット10は、回転防止レバーアーム62を爪係止部54から離れる方向に回転防止レバー解除端64を通り越したところへ動かすことによって、
図1に示す主要ラッチ係合位置から解除される。好ましくは、回転防止レバー60はS5方向に引張する操作リンクに連結されており、それゆえに、
図2に示すように回転防止レバーアーム62は爪係止部54から離れる方向へ反時計回りに回転可能となる。前記操作リンクはロックユニット10の外側で内側および/または外側ドアハンドル(例えば、ロッドアセンブリ又はボーデンケーブル(Bowden cable)として設計される)に連結されているものであり、当該ドアハンドルは使用者が自動車ドアを開けることにより作動する。代替案として、回転防止レバー60の前記回転は、サーボモーターによって制御され、またスイッチ又はセンサーによって操作される。
【0022】
図2を参照すると、主要ラッチ係合位置から把持部20が解除された直後のロックユニット10が示されている。1レバーのみを作動させれば把持部20が解除されるので、前記解除がかなり迅速なものであることに気づくであろう。一旦、回転防止レバーアーム62が爪係止部54を開放すると、把持部20のバネ力により当該把持部20が回転し、把持部用主要係止部32が爪部回転防止アーム48に沿って滑らかにスライドするものであり、それにより、爪部40が爪部枢動軸42を中心として時計方向に回転防止レバー60に向かって移動する。ここで、回転防止レバーアーム62は、爪係止部54に隣接する爪部40の凹状部52に収容される。
【0023】
一旦、把持部用主要係止部32が爪部回転防止アーム48を
図2に示す位置で開放すると、把持部20は開錠方向S1に自由自在に回転することができる。把持部20の回転速度、並びに、爪部回転防止アーム48及び把持部用2次的係止部34の移行的な曲面の結果、把持部20の第2の凹部30及び2次的係止部34がスライドして爪部回転防止アーム48を通過するので、ロックユニット10は
図5に示すように2次的ラッチ係合位置を飛び越える。把持部20は、スロット14を介してバネプレート12によって、バネの完全引張によって、または、異なる係止限界部によって、
図3に示す完全移動位置で停止されるまで回転し続ける。把持部20が回転する一方で、その開錠方向S1のバネ力がストライカー16をスロット14を介してベースプレート12のリーディングエッジ13の方向に押動するものであり、それにより、自動車ドアが車体から離れる。このような方法では、ロックユニット10は、把持部20の解除後、外部からの作動力を必要としないため自動開錠式である。
【0024】
使用者が自動車ドアを閉めると、ストライカー16は、スロット14内に挿入され、把持部20の第1の凹部22の打撃端38に衝撃を与える。ドアを閉める際の力により、ストライカー16は、第1の凹部22の打撃端38を押圧し、それにより把持部20がバネ力に抗して開錠方向S1と逆方向の閉錠方向S4に回転する。初期回転中、爪部40の回転防止アーム48は、把持部20のスライド面36に沿ってスライドする。ドアを開ける際の把持部20の解除と同様に、第2の凹部30と主要係止部32は、スライドして爪部回転防止アーム48を通過するものであり、これにより十分な力で前記ドアが閉じられる限り、
図5に示す2次的ラッチ係合位置は素通りされる。このような場合、把持部20は、
図4に示す延長移動位置に到達する。把持部20の主要係止部32が爪部40の回転防止アーム48を開放すると、S3方向のバネが爪部40を回転防止レバー60から離れる方向に十分に回転させ、これにより回転防止レバーアーム62が爪部40の凹状部52を出るものであり、この時点で、S2方向のバネは回転防止レバーアーム62を爪係止部54の下の位置に戻す方向に回転させる。
【0025】
一実施形態では、回転防止レバー60は湾曲した先端部を有し、この先端部は爪凹状部壁52に沿った滑らかなスライドを容易する。前記爪凹状部壁52もまた傾斜がつけられてよく、好ましくは爪係止部54から把持部20の方向へ伸びる。
【0026】
しかしながら、自動車ドアが十分な力で閉じられていない場合(即ち、閉じるのが遅すぎる場合)、ロックユニット10は、
図5に示す2次的ラッチ係合位置に入る。2次的ラッチ係合位置は、主要ラッチ係合位置と開錠位置との間に当たる位置であり、これにより前記主要ラッチ係合位置とならない場合でも、移動中、自動車ドアを開放し自動車の搭乗者がかなりの危険に晒されるであろう開錠位置へロックユニット10が係合解除されないようにするものである。ラッチ機構は、自動車ドア圧縮シールや自動車の振動、自動車への衝撃等によって与えられる外力のために、主要ラッチ係合位置から解除することが可能である。即ち、これが生じる際、前記ラッチ機構は2次的ラッチ係合位置となり、ドアが開くのを回避する必要がある。
【0027】
図5を参照すると、本発明の一実施形態に従う2次的ラッチ係合位置が示されている。使用者が自動車ドアを閉めるのが遅すぎる場合、把持部20の第2の凹部30は爪部40の回転防止アーム48をスライドで通過しない。より正確には、スライド面36がスライドして爪部回転防止アーム48を通過した後、爪部回転防止アーム48が把持部20の第2の凹部30内に押圧されるものであり、それにより前記2次的ラッチ係合位置を呈する。自動車ドアの継続した閉扉動作に応答して、または、使用者やサーボモーターにより与えられた付加的な外力に応答して、把持部20は開錠方向S1と逆の方向に回転し続ける。把持部用2次的係止部34が爪部回転防止アーム48から離れる方向に回転すると、S3方向のバネは爪部回転防止アーム48を把持部20の第2の凹部30内へ回転させる。これにより爪係止部54と回転防止レバーアーム62との間の間隔が開く。摩擦および負の傾斜角度がないことで、回転防止レバー60を移動させるために必要なロッカーレバー70の労力はさらに減少する。
【0028】
図6を参照すると、2次的ラッチ係合位置から主要ラッチ係合位置の方向へ移動するロックユニット10が示されている。把持部20は、局所的ロッカー作動体37を有し、この局所的ロッカー作動体37は、ロッカーレバー70のロッカーアーム71をロッカーレバーの接触面74でずらすものである。この作動体37は、好ましくは、把持部20の現在のプラスチック外側被覆(overmold)において製造される。また、この作動体は、スチール変形、プラスチック変形、ダイカスト変形、又は掘削変形したピンから製作されてもよい。この実施形態において、ロッカーレバー70は固定の枢動軸位置73を有し、回転防止レバー作動部72でS2方向のバネ力に抗する相反矯正力を供給する。ロッカーレバー70の枢動軸73は、固定式枢動軸またはスライド式枢動軸とすることができる。
【0029】
利用可能な実装空間を最適に用いて、さらに把持部20及び回転防止レバー60が伴う平面にロッカーレバー70を取り付けてよい。ロッカー枢動軸と作動体は、爪部回転防止アーム48が把持部出口端31に接触する前に、回転防止レバーアーム62が爪係止部54の経路から移動させられるような関係にある。把持部出口端31は、段階的に湾曲しており、爪部回転防止アーム48の湾曲端に対して滑らかなスライドを実現する。しかしながら、出口端31及び爪部回転防止アーム48で複数の異なる相補的な表面を使用可能であり、このような相補的な表面としては、平坦な表面が湾曲されたもの、面取りされ傾斜がつけられたものなどが挙げられる。
【0030】
図7に示すように、ロックユニット10が、2次的ラッチ係合位置から主要ラッチ係合位置の方向へ移動し続けることで、把持部20が作動部37を用いてロッカーレバー70を作動させ、同時に、出口端31が爪部回転防止アーム48をS3方向と逆の方向に移動させる。
【0031】
爪部回転防止アーム48が把持部出口端31を滑り上がっていくにつれ、回転防止レバーアーム62は爪凹状部52の背後に拘束されるようになる。その先、把持部20のロッカー作動体37は、
図2に示されるロッカーレバー70のロッカーアーム71との係合位置以上に移動する。把持部20からの作動力がロッカーレバー70から緩和されると、S2方向のバネ力により回転防止レバーアーム62の爪係止部54への前記付勢が再蓄積される。把持部20の主要係止部32が主要位置に近づくにつれ、爪部40の回転防止アーム48は、把持部20の出口端31から遷移領域39を通過して主要係止部32へ滑らかにスライドする。爪部回転防止アーム48と把持部用主要係止部32との間の前記正の傾斜は、把持部20のわずかな延長移動の回転のみで、爪部40が把持部20内へ回転し且つ回転防止レバーアーム62を開放する上で十分である。ここで、把持部用主要係止部32は爪部回転防止アーム48に沿って滑らかに滑り降り始る。そして、回転防止レバーアーム62が解除されて爪係止部54の下で静止しロックユニット10を
図1の主要ラッチ係合位置に戻すまで、回転防止レバーアーム62の先端部が爪凹状部壁52に沿って滑らかに滑り降りる。
【0032】
本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限られるものではなく、様々な応用及び他の実施形態のための変更が添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本発明は、当該本発明の特定の実施例に関連して説明されているが、当業者であれば図面、明細書、及び、以下の請求の範囲の検討により他の実施形態が明らになるであろうから、真の特許請求の範囲はそのように限られるべきではない。
【0033】
本明細書で言及される全ての刊行物および特許出願は、本発明が対象とする当業者の技術水準を示すものである。本明細書で言及される全ての刊行物および特許出願は、本明細書で言及される個々の刊行物および特許出願のそれぞれを特定的に且つ個々に参考文献として組み込むことが示される程度に、本明細書に参考文献として組み込まれる。
【符号の説明】
【0034】
10 ロックユニット
12 ベースプレート
13 ベースプレートのリーディングエッジ
14 スロット
16 ストライカー(把持用ボルト)
20 把持部
22 把持部の第1の凹部
24 把持部回転軸
26 把持部取付穴
30 把持部の第2の凹部
31 把持部の出口端(把持部出口端)
32 把持部の主要係止部(把持部用主要係止部)
33 把持部の主要係止部の接触面
34 把持部の2次的係止部(把持部用2次的係止部)
36 把持部のスライド面
37 ロッカー作動体
38 把持部の第1の凹部の打撃端
39 把持部の出口端と把持部の主要係止部との間の遷移領域
40 爪部
42 爪部枢動軸
48 爪部の回転防止アーム(爪部回転防止アーム)
50 爪部の回転防止アームの接触面
52 爪部の凹状部(爪凹状部、爪凹状部壁、凹状部、凹状空間部)
54 爪部の係止部(爪係止部)
60 回転防止レバー
62 回転防止レバーの回転防止アーム(回転防止レバーアーム)
64 回転防止レバーの解除端(回転防止レバー解除端)
68 回転防止レバー回転軸(レバー回転軸)
69 回転防止レバー取付穴
70 ロッカーレバー
71 ロッカーレバーのロッカーアーム
72 回転防止レバー作動部
73 ロッカーレバーの枢動軸
74 ロッカーレバーの接触面
S1 開錠方向
S2 回転防止レバー付勢方向
S3 爪部付勢方向
S4 閉錠方向
S5 操作方向