(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数本の光ファイバ心線の各先端部から離れた第一保持位置において、前記複数本の光ファイバ心線の軸方向と交差する所定方向に整列した状態で前記複数本の光ファイバ心線を保持する第1のファイバ保持工程と、
前記複数本の光ファイバ心線の軸方向および前記所定方向の双方と交差する方向に並ぶ2つの面の間に隙間を有する心線挿入ガイドを筒状の保護スリーブ内に挿通するガイド挿通工程と、
前記ガイド挿通工程の前又は後に、前記複数本の光ファイバ心線の各先端部を前記心線挿入ガイドの前記隙間に挿入することにより、前記複数本の光ファイバ心線の各先端部を前記所定方向に整列させるファイバ挿入工程と、
前記複数本の光ファイバ心線の各先端部と前記第一保持位置との間に前記保護スリーブを移動させる第1のスリーブ移動工程と、
前記複数本の光ファイバ心線から前記心線挿入ガイドを取り外す抜出工程と、
前記複数本の光ファイバ心線の各先端部と、別の複数本の光ファイバ心線若しくは光ファイバテープ心線の各先端部との一括融着接続を行う融着工程と、
前記融着工程による融着接続部分を覆うように前記保護スリーブを移動させる第2のスリーブ移動工程と
を含むことを特徴とする、光ファイバの一括融着接続方法。
前記第1のスリーブ移動工程と前記融着工程との間に、前記複数本の光ファイバ心線の各先端部と前記第一保持位置との間に位置する第二保持位置において前記複数本の光ファイバ心線を前記所定方向に整列した状態で保持する第2のファイバ保持工程を更に含み、
前記第1及び第2のファイバ保持工程において、ヒンジを介して開閉可能に連結されており閉状態において互いに対向する一対の当接部を有するクリップ部材を用い、前記一対の当接部間に前記複数本の光ファイバ心線を挟み込むことにより前記複数本の光ファイバ心線を把持することを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバの一括融着接続方法。
前記クリップ部材の前記一対の当接部において少なくとも前記複数本の光ファイバ心線と接する部分が発泡樹脂から成ることを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバの一括融着接続方法。
前記心線挿入ガイドは、前記複数本の光ファイバ心線の軸方向および前記所定方向の双方と交差する方向を厚み方向とする2枚の樹脂製の板状部材が互いに貼り合わされて成り、
前記2枚の板状部材の間に前記隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ファイバの一括融着接続方法。
前記複数本の光ファイバ心線の軸方向における前記心線挿入ガイドの両端のうち前記複数本の光ファイバ心線が挿入される一端側において、前記隙間が該一端に向けて次第に拡幅されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバの一括融着接続方法。
前記心線挿入ガイドが、前記保護スリーブからの脱落を防ぐための屈曲部を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバの一括融着接続方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数本の単心光ファイバ心線と、光ファイバテープ心線若しくは別の複数本の単心光ファイバ心線とを融着接続する際には、上記の特許文献1に記載されているように、複数本の単心光ファイバ心線を所定方向に整列させた状態で融着を行う。このとき、融着接続部を保護スリーブにより保護するためには融着前に複数本の単心光ファイバ心線を保護スリーブに通しておく必要があるが、整列された複数本の単心光ファイバ心線を保護スリーブに挿入する際に、単心光ファイバ心線の整列順序が入れ替わってしまう場合がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、単心光ファイバ心線を保護スリーブに挿入する際の整列順序の入れ替わりを防ぐことができる、光ファイバの一括融着接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明による光ファイバの一括融着接続方法は、複数本の光ファイバ心線の各先端部から離れた第一保持位置において、複数本の光ファイバ心線の軸方向と交差する所定方向に整列した状態で複数本の光ファイバ心線を保持する第1のファイバ保持工程と、複数本の光ファイバ心線の軸方向及び所定方向に沿って拡がる隙間を有する心線挿入ガイドを筒状の保護スリーブ内に挿通するガイド挿通工程と、ガイド挿通工程の前又は後に、複数本の光ファイバ心線の各先端部を心線挿入ガイドの隙間に挿入することにより、複数本の光ファイバ心線の各先端部を所定方向に整列させるファイバ挿入工程と、複数本の光ファイバ心線の各先端部と第一保持位置との間に保護スリーブを移動させる第1のスリーブ移動工程と、複数本の光ファイバ心線から心線挿入ガイドを取り外す抜出工程と、複数本の光ファイバ心線の各先端部と、別の複数本の光ファイバ心線若しくは光ファイバテープ心線の各先端部との一括融着接続を行う融着工程と、融着工程による融着接続部分を覆うように保護スリーブを移動させる第2のスリーブ移動工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
上記の方法では、第1のファイバ保持工程において、複数本の光ファイバ心線を整列状態で保持する。これにより、複数本の単心光ファイバ心線を整列させた後、融着を行うまでの間に、複数本の単心光ファイバ心線の整列状態が乱れてしまうことを効果的に防止できる。更に、上記の方法では、ガイド挿通工程において心線挿入ガイドを保護スリーブ内に挿通し、その前又は後に、ファイバ挿入工程において複数本の光ファイバ心線の各先端部を心線挿入ガイドの隙間に挿入している。心線挿入ガイドの隙間は複数本の光ファイバ心線の軸方向及び所定方向(すなわち光ファイバ心線の並び方向)に沿って拡がっているので、このような隙間に光ファイバ心線の先端部を挿入することにより、単心光ファイバ心線の整列順序が好適に維持される。その後、第1のスリーブ移動工程において複数本の光ファイバ心線の中間部分に保護スリーブを移動させることにより、単心光ファイバ心線の整列順序を維持しつつ保護スリーブに光ファイバ心線を通すことができる。このように、上記の方法によれば、単心光ファイバ心線を保護スリーブに挿入する際における整列順序の入れ替わりを簡易に且つ効果的に防ぐことができる。
【0008】
また、光ファイバの一括融着接続方法は、第1のスリーブ移動工程と融着工程との間に、複数本の光ファイバ心線の各先端部と第一保持位置との間に位置する第二保持位置において複数本の光ファイバ心線を所定方向に整列した状態で保持する第2のファイバ保持工程を更に含み、第1及び第2のファイバ保持工程において、ヒンジを介して開閉可能に連結されており閉状態において互いに対向する一対の当接部を有するクリップ部材を用い、一対の当接部間に複数本の光ファイバ心線を挟み込むことにより複数本の光ファイバ心線を把持することを特徴としてもよい。このようなクリップ部材を用いて複数本の光ファイバ心線の第一保持位置及び第二保持位置を把持することにより、クリップ部材が保護スリーブの移動を妨げるので、融着作業中に保護スリーブが移動してしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0009】
また、光ファイバの一括融着接続方法は、クリップ部材の一対の当接部において少なくとも複数本の光ファイバ心線と接する部分が発泡樹脂から成ることを特徴としてもよい。このように、光ファイバ心線と接するクリップ部材の部分が発泡樹脂(例えばスポンジやウレタン等)から成ることによって、光ファイバ心線を適度な強さで把持しつつ、クリップ部材の位置を光ファイバ心線の軸方向に容易に移動させることができる。したがって、融着工程における光ファイバ心線の先端部分に、十分な長さの作業スペースを容易に確保することができる。
【0010】
また、光ファイバの一括融着接続方法は、クリップ部材が、一対の当接部のうち一方の当接部に設けられて他方の当接部を係止することにより閉状態を維持する係止部を更に有し、閉状態において一対の当接部が開方向へ付勢されていることを特徴としてもよい。これにより、光ファイバ心線にクリップ部材を取り付ける際、および光ファイバ心線からクリップ部材を取り外す際の作業性を向上させることができる。
【0011】
また、光ファイバの一括融着接続方法は、心線挿入ガイドは、複数本の光ファイバ心線の軸方向および所定方向の双方と交差する方向を厚み方向とする2枚の樹脂製の板状部材が互いに貼り合わされて成り、2枚の板状部材の間に上記の隙間が形成されていることを特徴としてもよい。心線挿入ガイドをこのような構成とすることによって、前述した隙間を有する心線挿入ガイドを簡易に作製することができる。
【0012】
また、光ファイバの一括融着接続方法は、複数本の光ファイバ心線の軸方向における心線挿入ガイドの両端のうち複数本の光ファイバ心線が挿入される一端側において、隙間が該一端に向けて次第に拡幅されていることを特徴としてもよい。これにより、ファイバ挿入工程において、複数本の光ファイバ心線の各先端部を心線挿入ガイドの隙間に容易に挿入することができる。
【0013】
また、光ファイバの一括融着接続方法は、心線挿入ガイドが保護スリーブからの脱落を防ぐための屈曲部を有することを特徴としてもよい。これにより、ファイバ挿入工程において、心線挿入ガイドが保護スリーブに挿通された状態を好適に維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による光ファイバの一括融着接続方法によれば、単心光ファイバ心線を保護スリーブに挿入する際の整列順序の入れ替わりを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光ファイバの一括融着接続方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る光ファイバの一括融着接続方法を示すフローチャートである。また、
図2〜
図12は、この方法に含まれる各工程を説明するための図である。本実施形態の一括融着接続方法は、複数本の光ファイバ心線の各先端部と、別の複数本の光ファイバ心線若しくは光ファイバテープ心線の各先端部とを一括して融着接続を行うための方法である。
【0018】
まず、
図2に示されるように、融着対象である複数本の単心光ファイバ心線11を、その軸方向と交差する所定方向に整列させる。そして、複数本の光ファイバ心線11の各先端部から所定距離だけ離れた第一保持位置において、クリップ部材30を用いて複数本の光ファイバ心線11を把持することにより、その整列状態を保持する(第1のファイバ保持工程、
図1に示される工程S1)。
【0019】
ここで、クリップ部材30について詳細に説明する。
図3は、本実施形態において好適に使用されるクリップ部材30の外観を示す斜視図である。クリップ部材30は、整列された複数本の光ファイバ心線11を把持するための部材である。
図3(a)はクリップ部材30が開いた状態を示しており、
図3(b)はクリップ部材30が閉じた状態を示している。
【0020】
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、クリップ部材30は、一対の当接部31,32を有する。一対の当接部31,32は、
図3(b)に示されるようにクリップ部材30の閉状態において互いに対向している。この工程では、当接部31と当接部32との間に、
図2に示された複数本の光ファイバ心線11を挟み込むことにより、複数本の光ファイバ心線11を把持する。
【0021】
当接部31及び32は、緩衝部材33と、緩衝部材33を支持する枠体34とを有する。緩衝部材33は、略直方体状に成形されており、そのうち一つの面が当接面31a(又は32a)となっている。当接面31a,32aは、閉状態において複数本の光ファイバ心線11に接触する部分である。緩衝部材33は、光ファイバ心線11に対して過度の負荷を与えない材質、例えばスポンジやウレタン等の発泡樹脂から成ることが好ましく、或いはゴム等の弾性材から成ってもよい。また、枠体34は、例えばポリプロピレン等の樹脂から成り、緩衝部材33の当接面31a(又は32a)とは反対側の面に貼着されている。
【0022】
当接部31及び32は、ヒンジ35を介して開閉可能に連結されている。ヒンジ35は、例えば枠体34と同じ材料(ポリプロピレン等の樹脂)から成る。この場合、ヒンジ35は、当接部31及び32の各枠体34と一体成型されることができる。なお、ヒンジ35の構成材料は枠体34と異なってもよく、可撓性を有する材料であれば様々な材料を適用可能である。或いは、ヒンジ35に代えて回転軸が設けられてもよい。
【0023】
当接部31,32は、閉状態において、開方向へ付勢されていると尚良い。例えば、上述したようにヒンジ35がポリプロピレン等の樹脂から成る場合、ヒンジ35が有する弾性によって当接部31,32が開方向へ付勢される。なお、当接部31,32に開方向への付勢力を与えるための構成はこれに限られず、例えば弾性部材を別途設けてもよい。
【0024】
また、クリップ部材30は、鈎状の係止部36を更に有する。係止部36は、一対の当接部31,32のうち一方の当接部(本実施形態では当接部31)に設けられており、他方の当接部32の枠体34を係止することによりクリップ部材30の閉状態を維持する。一例では、係止部36は当接部31の枠体34と同じ材料から成り、当該枠体34と一体に成型されている。
【0025】
なお、当接面31a,32aに垂直な方向における当接部31,32の厚さは例えば各5mmであり、ヒンジ35に沿った方向における当接部31,32の幅は例えば10mmであり、当接部31,32の長さは例えば各15mmである。
【0026】
続いて、
図4に示されるように、心線挿入ガイド50を保護スリーブ40内に挿通する(ガイド挿通工程、
図1に示される工程S2)。保護スリーブ40は、複数本の光ファイバ心線11の融着接続部分を覆って保護するための部材である。また、心線挿入ガイド50は、融着作業の前に複数本の光ファイバ心線11を予め保護スリーブ40に挿通させる際に用いられる治具である。
【0027】
ここで、
図5は、本実施形態において好適に使用される保護スリーブ40の外観を示す斜視図である。また、
図6は、
図5に示されたVI−VI線に沿った保護スリーブ40の断面を示す図である。
図5及び
図6に示されるように、本実施形態の保護スリーブ40は、熱収縮チューブ41と、熱収縮チューブ41の内側に収容された抗張力体42および熱溶融性接着チューブ43(
図6を参照)とを有する。熱収縮チューブ41は、温度上昇によって収縮する材料から成る円筒状の部材であり、光ファイバ心線11の軸方向を長手方向として配設されている。熱収縮チューブ41の長手方向の長さは例えば40mmであり、内径は例えば4.5mmである。抗張力体42は、熱収縮チューブ41の長手方向に沿って延びる細長形状を有しており、その延伸方向に直交する断面の形状は例えば半円形状である。抗張力体42は、例えばガラスセラミックスから成る。熱溶融性接着チューブ43は、温度上昇によって溶融する接着材料から成る円筒状の部材であり、抗張力体42と並んで熱収縮チューブ41内に配設されている。複数本の光ファイバ心線11および心線挿入ガイド50は、この熱溶融性接着チューブ43内に挿通される。
【0028】
図7は、心線挿入ガイド50の外観を示す斜視図である。心線挿入ガイド50は、複数本の光ファイバ心線11の軸方向及び整列方向に沿って拡がる隙間51を有する。この隙間51には、心線挿入ガイド50の長手方向における一端側から、複数本の光ファイバ心線11の各先端部が挿入可能となっている。一例では、心線挿入ガイド50は、複数本の光ファイバ心線11の軸方向および整列方向の双方と交差する方向を厚み方向とする2枚の板状部材52,53から成り、心線挿入ガイド50の長手方向における板状部材52,53の他端部が互いに貼り合わされて(例えば溶着されて)構成されている。隙間51は、これら2枚の板状部材52,53の間に形成されている。なお、板状部材52,53は、例えばポリプロピレンといった樹脂から成る。板状部材52,53の厚さは例えば各0.2mmである。
【0029】
また、本実施形態の心線挿入ガイド50では、その長手方向における両端部のうち複数本の光ファイバ心線11が挿入される一端側において、板状部材52,53の相対角度が大きくなっており、厚み方向における隙間51の幅が該一端に向けて次第に拡幅されている(図中の部分A)。更に、本実施形態の心線挿入ガイド50は、厚み方向に僅かに屈曲した屈曲部54を更に有する。屈曲部54は、保護スリーブ40からの心線挿入ガイド50の脱落を防ぐための形状部分である。このような屈曲部54は、例えば板状部材52,53が互いに溶着される際に形成されるとよい。
【0030】
続いて、
図8に示されるように、複数本の光ファイバ心線11の各先端部を心線挿入ガイド50の隙間51に一端側から挿入することにより、複数本の光ファイバ心線11の各先端部を所定方向に整列させる(ファイバ挿入工程、
図1に示される工程S3)。このとき、光ファイバ心線11を例えば一本ずつ順に挿入するとよい。この工程では、心線挿入ガイド50の隙間51の下面(すなわち板状部材52の板面)と、隙間51の上面(すなわち板状部材53の板面)との間に複数本の光ファイバ心線11が挟まれることにより、光ファイバ心線11の整列状態が維持される。
【0031】
また、前述したように、心線挿入ガイド50では、一端側において隙間51の幅が該一端に向けて拡幅されている(
図7の部分A)。心線挿入ガイド50がこのような形状を有することにより、ファイバ挿入工程S3において、複数本の光ファイバ心線11の各先端部を心線挿入ガイド50の隙間51に容易に挿入することができる。また、上述したように、心線挿入ガイド50は屈曲部54を有している。これにより、ファイバ挿入工程S3において、心線挿入ガイド50が保護スリーブ40に挿通された状態を好適に維持することができる。なお上述した例以外にも、心線挿入ガイド50の一端側からに先にファイバを挿入し(工程S3)、その後、心線挿入ガイド50に光ファイバ心線11を挟んだ状態で心線挿入ガイド50の他端側から保護スリーブ40内に挿通(工程S2)するようにしても良い。
【0032】
続いて、
図9に示されるように、複数本の光ファイバ心線11の各先端部と第一保持位置(すなわちクリップ部材30によって把持されている位置)との間に、保護スリーブ40をスライドさせる(第1のスリーブ移動工程、
図1に示される工程S4)。
【0033】
続いて、
図10に示されるように、複数本の光ファイバ心線11から心線挿入ガイド50を取り外す(抜出工程、
図1に示されるS5)。
【0034】
続いて、
図11に示されるように、複数本の光ファイバ心線11の各先端部と第一保持位置(すなわちクリップ部材30によって把持されている位置)との間に位置する第二保持位置において、複数本の光ファイバ心線11を保持する(第2のファイバ保持工程、
図1に示されるS6)。本実施形態では、当該第二保持位置において、別のクリップ部材30の当接部31と当接部32(共に
図3(a)を参照)との間に複数本の光ファイバ心線11を挟み込むことにより複数本の光ファイバ心線11を把持し、これによって複数本の光ファイバ心線11の整列状態を保持する。なお、このとき使用されるクリップ部材30の構造は、第1のファイバ保持工程S1において使用されたものと同様である。この工程ののち、
図12に示されるように、2つのクリップ部材30及び保護スリーブ40を光ファイバ心線11の先端部から遠ざかる方向にスライドさせ、次の融着工程における光ファイバ心線11の先端部分の作業スペース(図中の領域B)を確保するとよい。
【0035】
続いて、複数本の光ファイバ心線11の各先端部と、別の複数本の光ファイバ心線若しくは光ファイバテープ心線の各先端部との一括融着接続を行う(融着工程、
図1に示されるS7)。具体的には、まず、光ファイバ心線11の先端部分の被覆を被覆除去具を用いて除去し、ガラスファイバを露出させる。その後、露出したガラスファイバの先端部分をカットして、複数のガラスファイバの端面を揃える。次に、複数の光ファイバ心線11を融着接続機にセットし、別の複数本の光ファイバ心線若しくは光ファイバテープ心線のファイバ端面と複数の光ファイバ心線11のファイバ端面とを互いに突き合わせ、一括して融着させる。なお、接続相手が複数本の光ファイバ心線である場合には、その複数本の光ファイバ心線に対しても、本実施形態の工程S1〜S6を行うとよい。
【0036】
続いて、上述した融着工程S7により形成された複数の融着接続部分を覆うように、保護スリーブ40を移動させる(第2のスリーブ移動工程、
図1に示されるS8)。その後、保護スリーブ40を加熱することによって、熱収縮チューブ41を収縮させるとともに、熱溶融性接着チューブ43を溶融させて複数の融着接続部分を互いに接着し、これらを一体化することにより、融着接続部分を保護する。
【0037】
以上に説明した、本実施形態による光ファイバの一括融着接続方法では、第1のファイバ保持工程S1において、複数本の光ファイバ心線11を整列状態で保持する。これにより、複数本の単心光ファイバ心線11を整列させた後、融着を行うまでの間に、複数本の単心光ファイバ心線11の整列状態が乱れてしまうことを効果的に防止できる。
【0038】
更に、本実施形態による一括融着接続方法では、ガイド挿通工程S2において心線挿入ガイド50を保護スリーブ40内に挿通し、その前又は後に、ファイバ挿入工程S3において複数本の光ファイバ心線11の各先端部を心線挿入ガイド50の隙間51に挿入している。心線挿入ガイド50の隙間51は複数本の光ファイバ心線11の軸方向及び所定方向(すなわち光ファイバ心線11の並び方向)に沿って拡がっているので、このような隙間51に光ファイバ心線11の先端部を挿入することにより、単心光ファイバ心線11の整列順序が好適に維持される。その後、第1のスリーブ移動工程S4において複数本の光ファイバ心線11の中間部分に保護スリーブ40を移動させることにより、単心光ファイバ心線11の整列順序を維持しつつ保護スリーブ40に光ファイバ心線11を通すことができる。このように、本実施形態の一括融着接続方法によれば、単心光ファイバ心線11を保護スリーブ40に挿入する際における整列順序の入れ替わりを簡易に且つ効果的に防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態のように、第二保持位置において複数本の光ファイバ心線11を整列状態で保持する第2のファイバ保持工程S6を、第1のスリーブ移動工程S4と融着工程S7との間に行うことが好ましい。そして、この場合、ファイバ保持工程S1,S6において、クリップ部材30を用いて複数本の光ファイバ心線11を挟み込んで把持することが好ましい。このようなクリップ部材30を用いて複数本の光ファイバ心線11を把持することにより、クリップ部材30が保護スリーブ40の移動を妨げるので、融着作業中に保護スリーブ40が移動してしまうことを効果的に防ぐことができる。
【0040】
また、本実施形態のように、クリップ部材30の当接部31,32において少なくとも複数本の光ファイバ心線11と接する部分が発泡樹脂(例えばスポンジやウレタン等)から成ることが好ましい。これにより、光ファイバ心線11を適度な強さで把持しつつ、クリップ部材30を光ファイバ心線11の軸方向に滑らせて容易に移動させることができる。したがって、光ファイバ心線11の整列順序を維持したまま、クリップ部材30の把持位置を容易に調整することができる。また、これにより、
図12に示された工程において、融着工程S7の際の光ファイバ心線11の先端部分に、十分な長さの作業スペース(
図12の領域B)を容易に確保することができる。
【0041】
また、本実施形態のように、クリップ部材30が係止部36を有するとともに、閉状態において当接部31,32が開方向へ付勢されていることが好ましい。これにより、光ファイバ心線11にクリップ部材30を取り付ける際、および光ファイバ心線11からクリップ部材30を取り外す際に、例えば作業者が片手でクリップ部材30を脱着することが可能になる等、作業性を格段に向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態のように、心線挿入ガイド50は、2枚の樹脂製の板状部材52,53が互いに貼り合わされて成り、2枚の板状部材52,53の間に隙間51が形成されていることが好ましい。心線挿入ガイド50をこのような構成とすることによって、隙間51を有する心線挿入ガイド50を簡易に作製することができる。
【0043】
本発明による光ファイバの一括融着接続方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、第1及び第2のファイバ保持工程S1,S6において、クリップ部材30を用いて複数本の光ファイバ心線11を把持しているが、光ファイバ心線11の保持方法はこれに限らず、例えば粘着テープ等を用いてもよい。