(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベタイン構造を有する界面活性剤(B)及び有機顔料誘導体(D)とともに、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも一つの酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)で被覆した有機顔料(C)が、水性媒体中に分散されている水性インクジェット組成物であって、前記有機顔料(C)100質量部に対して、前記酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)を50質量部以上、前記ベタイン構造を有する界面活性剤(B)を1〜80質量部、前記有機顔料誘導体(D)を1.0〜10.0質量部含み、前記カルボキシル基を有する水不溶性樹脂(A)の酸価(KOH mg/g)が、10〜300であり、更に被覆有機顔料(C)の動的光散乱法によって測定される累積50%(粒子数)での粒子径が100〜1000nmであることを特徴とする水性インクジェット組成物。
請求項1に記載の水性インクジェット組成物の製造方法であって、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)、有機顔料(C)及び有機顔料誘導体(D)の揮発性有機溶剤中における前記有機顔料(C)の分散液に、前記酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)を配合し、次いで、水を添加することにより、転相乳化を行うことを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
本発明の水性インクジェット組成物は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも一つの酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)、有機顔料(C)、及び有機顔料誘導体(D)を必須成分とする。理論に拘束されるものではないが、本発明の水性インクジェット組成物においては、有機顔料(C)の表面に、有機顔料誘導体(D)とベタイン構造を有する界面活性剤(B)とを介して、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも一つの酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)が従来のものよりも、より均一に付着しており、その結果として、水性媒体中に、被覆有機顔料が均一に分散にしているものと考えられる。ここにおける水性媒体は、水のみか、水を主成分として必要に応じて揮発性有機溶剤を含む媒体を言う。
【0012】
本発明の水性インクジェット組成物に含有されるカルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基より選ばれる少なくとも一つの官能基を有する水不溶性樹脂(A)は、有機顔料(C)の表面において被膜を形成し、有機顔料(C)の表面を均一に被覆するために使用される。
カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも一つの酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)は、揮発性有機溶剤中で合成される。このような酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)の製造方法は、当業者には、既に公知である。例えば、カルボン酸基などの酸官能基を有する重合性モノマーと、必要に応じて共重合可能なモノマーとともに、揮発性有機溶剤において、必要に応じて、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)や、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの開始剤等の公知の添加剤の存在下において、重合させることによって、本発明で使用される酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)を調製することができる。
【0013】
本発明において使用される酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂や、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂など好適に列挙することができる。特に、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。このような酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、置換スチレンなどから選ばれる少なくとも一つの重合性ビニルモノマーと、(メタ)アクリル酸又はビニルスルホン酸又はリン酸エステル(メタ)アクリレートモノマーとの共重合により製造される。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルや、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのアルキルエステルや、アルキルエステルの誘導体、例えば、得られるカルボキシル基を有する水不溶性樹脂(A)の親水性を調製するために、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルなどを併用してもよい。また、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基より選ばれる少なくとも一つの酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)は、必要に応じて、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの多価イソシアネートにより変性をしてもよい。
【0014】
このようにして合成され酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)の酸価は、10〜300であり、好ましくは、40〜200の範囲であることが好適である。尚、酸価とは、樹脂1gを中和するに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数を言い、mg・KOH/gで表す(以下、単位は略記する。)。
【0015】
水不溶性樹脂(A)に導入される酸官能基は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基又はリン酸基のいずれかであって特に限定されるものではないが、このうちカルボキシル基は一般的であり、好適に使用できる。
【0016】
樹脂(A)の酸価が、10未満の場合には、得られる被覆有機顔料(C)の表面親水性が乏しくなり易く、分散安定性が不充分となる。一方、酸価が300を越える場合には、酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)の親水性が著しく高まり、酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)による有機顔料(C)の被覆が膨潤等により不十分となり、被覆有機顔料(C)同士の凝集やノズル目詰まりを生ずる。
【0017】
後述する転相乳化を行う際に、一部の酸基がアルカリ性の中和剤によって中和されていてもよい。使用される中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン等の塩基性物質の他、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルコールアミンが使用可能である。カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも一つの酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)の酸基に対する中和率は、好ましくは、30モル%相当量〜100モル%相当量としてもよい。
【0018】
使用される酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)のゲル浸透クロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算での質量平均分子量は、好ましくは、5000〜100000であり、更に好ましくは、10000〜60000である。分子量が5000を下回ると転相乳化が起こり難く、一方、100000を上回ると貯蔵時の安定性が低下し易い。
【0019】
酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)は、有機顔料(C)100質量部に対して、好ましくは50質量部以上であり、更に好ましくは100質量部以上であることが好ましい。(C)が100質量部に対して(A)が50質量部を下回ると、有機顔料(C)が水不溶性樹脂(A)によって完全に被覆されないために粒子径がブロードになり、良好な吐出安定性が得られない。更に、水不溶性樹脂(A)が不足することで、膜の造膜性も劣るために、膜物性も大幅に低下する。
【0020】
本発明の水性インクジェット組成物に使用されるベタイン構造を有する界面活性剤(B)は、有機顔料(C)を長期間安定的に分散させるための優れた分散剤となり、更に第四アンモニウム部位と酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)の酸基との間で相互作用が生じるため、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)に覆われた有機顔料(C)の中で酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)が転相乳化を行うと表面が酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)で均一に被覆された顔料粒子の分散体が得られると考えられる。
【0021】
本発明の組成物に使用されるベタイン構造を有する界面活性剤(B)は、ベタイン構造を有する限り、その構造が限定されるものではない。ただし、顔料表面への吸着点が多い方がより分散安定性に優れる水性インクジェット組成物が得られることから、櫛形の重合体であることが好ましく、分子量1000〜10000の櫛型重合体であることがより好ましい。分子量が1000未満では、貯蔵時に界面活性剤が顔料表面からはがれ易くなるために、貯蔵安定性が低下し、逆に分子量が10000を超えると、親水部が大きくなるために使用可能な範囲が制限される。櫛型重合体の構造としては、例えば、第四アンモニウム部位を主鎖に、酸官能基を有する親水性部を側鎖に有する重合体や、側鎖構造として、スチレン及び無水マレイン酸からなる共重合体の誘導体を有するもの等が好適に用いることができる。これら櫛形の重合体は、市販品を使用することもできるが、例えば、特許第4990982号明細書や、特許第5122582号明細書、特表2012−509946号公報などに記載されている従来公知の方法を用いて合成することもできる。
【0022】
例えば、本発明で使用されるベタイン構造を有する界面活性剤(B)は、好ましくは、スチレン無水マレイン酸樹脂(SMA)1000(Tg=155、酸価=465−495、Mw=5500)を、溶剤として、例えば、メトキシプロピルアセテートなどのアルコキシアルキル酢酸エステルに溶解し、アミン、例えば、JEFFAMINE M−2005(アミン末端EO/POポリエーテル)を混合した溶液を、撹拌機、還流コンデンサーを装備され、温度制御された反応容器に充填し、得られた混合液を20〜200℃、好ましくは、30〜170℃で、2〜10時間反応させ、その後、メトキシプロピルアセテートを蒸留して除去することにより製造することができる。
ここで使用されるアミンは、活性水素を少なくとも一つ有するアミノ基を含有することを特徴としており、例えば、ポリアルキレンオキシドモノアミン又はN,N−二置換ジアミン又はアルカノールアミンが好ましい。
【0023】
ベタイン構造を有する界面活性剤(B)としては、具体的には、市販品として、花王株式会社製のアンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、アンヒトール20YB;BSFS社製のEFKA4520、EFKA5063、EFKA6225;ビックケミジャパン株式会社製のDISPERBYK−106、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−2001、BYK−9076:第一工業製薬株式会社製のアモーゲンS、アモーゲンS-H、アモーゲンK、アモーゲンLB−C、アモーゲンCH−H、アモーゲンHB−Cなどが挙げられる。
【0024】
本発明の水性インクジェット組成物において、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)は、有機顔料(C)100質量部に対して、1〜80質量部、好ましくは、5〜60質量部であることが好ましい。有機顔料(C)100質量部に対して、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)の量が1質量部を下回ると、媒体中での有機顔料顔料(C)の分散安定性が不良になり易い。一方、80質量部を超えると、膜の耐水性及び耐アルコール性が悪化するため実用性に劣る。
【0025】
本発明の水性インクジェット組成物に使用される有機顔料(C)として、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,22,30,64,80ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,123,149,168,177,180,192,202,206,215,216,217,220,223,224,240,254、ピグメントイエロー12,17,20,31,55,83,93,125,154,181、ピグメントバイオレット19,29,32,40などを好適に列挙することができる。
【0026】
本発明の水性インクジェット組成物に使用される有機顔料誘導体(D)は、例えば、特開2002−294134号公報や、特開平6−345997号公報に記載されているように、一般に知られている有機顔料に酸性又は塩基性官能基を導入することで得られる。ここでいう有機顔料とは、例えば、アゾ系や、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサン系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系などが挙げられる。導入される酸性基としては、例えば、スルホン酸基や、カルボン酸基、リン酸基などが挙げられ、塩基性基としては、例えば、アミンなどが挙げられる。
【0027】
本発明において、有機顔料誘導体(D)は、有機顔料(C)の電荷を高め、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)の有機顔料(C)への吸着を助ける効果があると考えられる。
本発明の水性インクジェット組成物に使用される有機顔料誘導体(D)としては、具体的には、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE5000や、SOLSPERSE12000、SOLSPERSE22000、ビックケミジャパン株式会社製のBYK−2100などが好適に挙げられる。
有機顔料誘導体(D)の使用量は、例えば、有機顔料(C)100質量部に対して、1.0〜10.0質量部であり、好ましくは、3.0〜7.0質量部である。
有機顔料(C)100質量部に対して、有機顔料誘導体(D)の使用量が1質量部を下回ると、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)と有機顔料(C)との間の吸着力が低下して、有機顔料(C)を長期間安定的に媒体中に分散することが不可能となり易い。一方、有機顔料誘導体(D)の量が10質量部を超えると、有機顔料(C)に吸着できない有機顔料誘導体(D)が生じ易く、保管時に沈殿するという問題が起こり易い。
なお、必要に応じて、ベタイン構造を有しない界面活性剤を併用することができる。
【0028】
以下において、水性インクジェット組成物の調製について説明する。ただし、水性インクジェット組成物の調製方法は、以下で説明する態様に限定されるものではない。
水性インクジェット組成物の製造に際しては、まず、酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)と、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)、有機顔料(C)及び有機顔料誘導体(D)を揮発性の有機溶剤中で混合撹拌した後、分散機にて顔料を微粒子状に分散させた分散液を得る。
次いで、このようにして得られた分散液に、必要に応じて、アルカリ性の中和剤を混合した後、撹拌しながら分散体に水を加えることにより、転相乳化を起こし、有機顔料(C)の表面を、ベタイン構造を有する界面活性剤(B)と有機顔料誘導体(D)とにより、酸官能基を有する水不溶性樹脂(A)を均一に被覆させる。転相乳化後、分散体に含まれる揮発性有機溶剤を留去してもよい。
【0029】
分散機による分散は、被覆有機顔料(C)の動的光散乱法によって測定される累積50%(粒子数)での粒子径が100〜1000nmとなるようにするために行うものである。この粒子径の範囲内において、得られる水性インクジェット組成物における被覆有機顔料は、分散液において、安定して均一な状態で保持される。
分散液には、表面張力及び乾燥性及び各種機能の調整を目的として、上記揮発性有機溶剤以外の有機溶剤や、防かび剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、沈降防止剤、増粘剤、消泡剤等を配合してもよい。
【0030】
本発明に使用される揮発性有機溶剤として、例えば、トルエンや、キシレン、n-ヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素系溶剤、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトンや、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸メチルや、酢酸エチル、酢酸プロピルなどの酢酸エステル系溶剤、3−メトキシ−3−メチルブタノール、1−メトキシー2−プロパノール、3−メトキシブチルアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤などを好適に列挙することができる。
【0031】
有機顔料(C)を分散する際に用いる分散機としては、例えば、ペイントシェーカーや、ボールミル、サンドミル、ナノミルを好適に列挙することができる。
本発明の水性インクジェット組成物は、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。本発明の水性インクジェット組成物は、特にラージフォーマットを用いた大型インクジェットプリンタにより印刷すること、例えばサインディスプレイ等の屋外用印刷物品に印刷することを目的としたインクジェットプリンタによる印刷に好適に使用することできる。
【0032】
インクジェット印刷した後の印刷面(インク組成物)は、常温〜数十℃で乾燥することによって乾燥被膜を形成する。なお、本発明の水性インクジェット組成物を用いて印刷し得る基材については、印刷面(インク組成物)を乾燥する条件で変形もしくは変質しないものであれば特に制限されることはない。そのような基材として、例えば、金属や、ガラス、プラスチック等の基材表面、表面を樹脂でコーティングした紙、オーバーヘッドプロジェクト用の透明シート、サインディスプレイ等の屋外物品等を好適に列挙することができる。
【実施例】
【0033】
以下において、更に実施例や比較例により、本発明について更に詳細に説明する。
バインダーとしてのカルボキシル基を有する水不溶性樹脂(A)の製造:
(バインダー 製造例1)
メタクリル酸メチル37.5質量部、アクリル酸ブチル4.25質量部、アクリル酸1.75質量部、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.30質量部のプレミックスを製造し、揮発性有機溶剤(メチルエチルケトン)を、撹拌機、還流コンデンサー、窒素導入口及びプレミックスフィード口が装備されかつ温度制御された反応容器に充填した。反応容器を加熱し、80℃に保し、窒素雰囲気下で3時間30分に渡って一定の速度でプレミックスを充填した。更に30分後、ブースト開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.30質量部とキシレン1.60部の混合液を2時間にわたって一定の速度で充填した。更に2時間30分温度を一定に保った後、メチルエチルケトンを25.5部反応容器内に充填して冷却した。これにより、バインダー1を得た。
【0034】
(バインダー 製造例2〜4)
以下の表1に記載の原料を成分とした以外には、製造例1と同様の手順で以下の表1に示す各種バインダーを調製した。
【0035】
(バインダー 製造例5)
以下の表1に記載の原料を成分とした以外には、製造例1と同様の手順で以下の表1、ブースト開始剤を充填し終わるまでは同様の手順で合成を行い、その後、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デスモジュールH:住化バイエルウレタン株式会社製)0.34質量部を添加し、更に2時間30分温度を一定に保ったたことを除いて製造例1を繰り返し、製造例5のバインダーを得た。
【0036】
製造したバインダーについて、酸価及び分子量をそれぞれ下記の方法で測定し、下記の基準で評価した。結果を同表1に示す。
【0037】
<酸価>
JIS K 6901 4.3法に準拠した。
【0038】
<分子量>
バインダーポリマーの特性を、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定する。2個のTSKゲルスーパーマルチポアHZ−Mカラムを備えた機械HLC−8220(Tosoh社)、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して、40℃、一定流量0.350mL/分で、屈折率(RI)検出装置を使用して求めた。カラムを、ポリスチレン標準液を使用して較正した。サンプルを、40mgの乾燥ポリマーに相当する量のポリマー溶液を10mLのTHFに溶解することによって調製した。
【0039】
ベタイン構造を有する界面活性剤(B)の製造:
(ベタイン界面活性剤1 製造例)
SMA1000(スチレン無水マレイン酸レジン Tg=155、酸価=465−495 Mw=5500)60.0質量部、メトキシプロピルアセテート90g、JEFFAMINE M-2005(アミン末端EO/POポリエーテル)188質量部を、撹拌機及び還流コンデンサーを装備しかつ温度制御された反応容器に充填した。この混合液を180℃で5時間反応させた。その後、メトキシプロピルアセテートを蒸留して除去した。これにより、ベタイン界面活性剤1を得た。
【0040】
表1.バインダーの製造例
【0041】
実施例1
シアン顔料(商品名:ブルーNo.4:大日精化工業株式会社製)4.60部、ベタイン構造を有する界面活性剤1、2.76部、有機顔料誘導体(商品名:BYK−2100:BYK社製)、0.15部、メチルエチルケトン75.30部を混合して混合物を得、この混合物に、0.5mm径ジルコニアビーズを50部充填した後にペイントシェーカーで6時間顔料解砕を行い、非水性顔料分散体を得た。この非水性顔料分散体にバインダー1を24.30部及びジメチルエタノールアミンを0.63部溶解させて、イオン交換水120.00部加えることにより樹脂の転相乳化を行った。得られた混合液中のメチルエチルケトンを、エバポレーターを用いて留去し、バインダーに被覆された有機顔料の水分散液を得た。次いでジエチレングリコールモノイソブチルエーテルを24.00部加えて水性インクジェット組成物を得た。
【0042】
実施例2〜20、比較例1〜11
以下の表2記載の原料を成分として使用した以外は、実施例1と同様にして、水性インクジェット組成物を調製した。ただし、実施例11に関してはペイントシェーカーによる顔料の解砕時間を2時間、比較例8に関してはペイントシェーカーによる顔料の解砕時間を30分とした。
【0043】
表2の材料
有機顔料:
シアン顔料(商品名:ブルーNo.4:大日精化工業株式会社製)
マゼンタ顔料(商品名:Fastogen Super Magenta RGT:DIC社製)
界面活性剤:
ベタイン界面活性剤2(商品名:DISPERBYK−2001:ビックケミー・ジャパン社製:有効成分46%)
ベタイン界面活性剤3(商品名:アモーゲンK:第一工業製薬株式会社製:有効成分100%)
カチオン界面活性剤(商品名:カチオーゲンSPA:第一工業製薬株式会社製:有効成分100%)
【0044】
有機顔料誘導体
酸性型有機顔料誘導体1(商品名:BYK−2100:BYK社製)
酸性型有機顔料誘導体2(商品名:Solsperse22000:ルーブリゾール社製)
【0045】
実施例1〜20及び比較例1〜11の分散体について、粒子径、粒度分布、吐出安定性、印字性、耐水性、耐アルコール性、貯蔵安定性をそれぞれ下記の方法で測定し、下記の基準で評価した。
【0046】
<粒子径>
インク化後の分散液の粒子数換算での累積50%及び累積95%の粒径をマイクロトラックUPA(日機装製)を用いて測定した。この累積%の値によって、インクジェットでの吐出の可否を評価することができる。
【0047】
<粒度分布>
インク化後の分散液の粒径を、マイクロトラックUPA(日機装製)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
◎:累積50%での粒子径と累積90%での粒子径の差が2倍以内
○:累積50%での粒子径と累積90%での粒子径の差が2倍超3倍以内
×:累積50%での粒子径と累積90%での粒子径の差が3倍超
評価結果が良くなるに従って、粒子表面の均一性を評価することができる。
【0048】
<吐出安定性>
ラージフォーマット用インクジェットプリンタで1m×5mのベタ印字を行い、飛行曲り及び抜けの本数に基づいて下記基準で評価した。
◎:飛行曲り及び抜けなし
○:飛行曲り及び抜けの合計本数が1〜3本
△:飛行曲り及び抜けの合計本数が4〜6本
×:飛行曲り及び抜けの合計本数が7本以上
【0049】
<印字性>
ラージフォーマット用インクジェットプリンタで画像を印刷し、目視で評価した。
◎:印字ムラなく鮮明な印字物
○:僅かに印字ムラがあるが実用上問題ないレベル
×:印字ムラが目立ち不鮮明印字物
【0050】
<耐水性>
ラージフォーマット用インクジェットプリンタで画像を印刷し、水を染み込ませた綿棒で膜を擦り、目視で評価した。
◎:400gの荷重で200回こすっても全く変化なし
○:400gの荷重で200回こすると一部インクが剥離する
×:400gの荷重で200回こするとインクが剥離し、素地が見える
【0051】
<耐アルコール性>
ラージフォーマット用インクジェットプリンタで画像を印刷し、50質量%エタノール水を染み込ませた綿棒で膜を擦り、目視で評価した。
◎:400gの荷重で20回こすっても全く変化なし
○:400gの荷重で20回こすると一部インクが剥離する
×:400gの荷重で20回こするとインクが剥離し、素地が見える
【0052】
<貯蔵安定性>
インクを60℃で1か月間保管した後の粘度及び粒径を測定し、下記の基準で評価した。
◎:60℃で1か月間保管後の粘度及び粒子径の変化がそれぞれ±5%以内
○:60℃で1か月間保管後の粘度及び粒子径の変化がそれぞれ5%超10%以下
×:60℃で1か月間保管後の粘度及び粒子径の変化がそれぞれ10%超
【0053】
それらの評価結果は表2に示す通りであった。
【0054】
表2.水系ジェットインク組成物評価結果
【0055】
表3.水系ジェットインク組成物評価結果
【0056】
表4.水系ジェットインク組成物評価結果
【0057】
表5.水系ジェットインク組成物評価結果
【0058】
表6.水系ジェットインク組成物評価結果
【0059】
表7.水系ジェットインク組成物評価結果
【0060】
表2に示す評価結果から明らかなように、実施例1〜20のインクは、各試験項目について良い結果が得られ、良好なインクが得られた。