(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0017】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子を例示する断面図である。
図1を参照するに、ピエゾ抵抗素子10は、半導体基板11と、ピエゾ抵抗層12と、バリア層13と、絶縁膜14とを有する。なお、半導体基板11の表面に熱酸化膜が形成されていてもよい。
【0018】
半導体基板11は、ピエゾ抵抗層12やバリア層13が形成される部分であり、第1の不純物を含む第1導電型の半導体基板である。半導体基板11は、例えば、第1の不純物を含むシリコン基板であるが、シリコン基板に代えてSiC基板やポリシリコン膜等を用いてもよい。
【0019】
なお、本願において、第1導電型とはN型又はP型であり、第2導電型とは第1導電型とは逆導電型のP型又はN型である。例えば、半導体基板11に第1の不純物としてリン(P)等の5価の元素を注入すればN型の半導体基板となり、ホウ素(B)等の3価の元素を注入すればP型の半導体基板となる。なお、本実施の形態では、以下、半導体基板11が、第1の不純物としてリン(P)が注入されたN型の半導体基板である場合を例に説明する。
【0020】
ピエゾ抵抗層12は、半導体基板11に埋め込まれている。ピエゾ抵抗層12は、半導体基板11と異なる導電型とされている。半導体基板11に第2の不純物としてリン(P)等の5価の元素を注入すればN型のピエゾ抵抗層12となり、ホウ素(B)等の3価の元素を注入すればP型のピエゾ抵抗層12となる。以下、ピエゾ抵抗層12が、半導体基板11に第2の不純物としてホウ素(B)が注入されたP型の層である場合を例に説明する。
【0021】
バリア層13は、半導体基板11の表面11aとピエゾ抵抗層12との間に形成されている。バリア層13は、半導体基板11と同じ導電型とされている。半導体基板11に第3の不純物としてリン(P)等の5価の元素を注入すればN型のバリア層13となり、ホウ素(B)等の3価の元素を注入すればP型のバリア層13となる。以下、バリア層13が、半導体基板11に第3の不純物としてリン(P)が注入されたN型の層である場合を例に説明する。
【0022】
絶縁膜14は、半導体基板11の表面11a上に形成されている。絶縁膜14は、例えば、ピエゾ抵抗素子10を用いた半導体センサにおいて、半導体基板11とその上に形成される配線等の導電層とを絶縁する層間絶縁膜である。絶縁膜14の材料としては、例えば、SiO
2やSiN等を用いることができる。
【0023】
ここで、ピエゾ抵抗層12及びバリア層13の深さや層幅、最大不純物濃度(不純物の濃度の最大値)について説明する。まず、
図1を参照しながら、ピエゾ抵抗層12及びバリア層13の深さや層幅等について概略を説明し、その後、
図2を参照しながら、ピエゾ抵抗層12及びバリア層13の深さや層幅等について正確に定義する。
【0024】
図1において、D
1はピエゾ抵抗層12の深さ、D
2はバリア層13の深さを示している。又、W
1はピエゾ抵抗層12の層幅、W
2はバリア層13の層幅を示している。又、W
3は、ピエゾ抵抗層12とバリア層13とが半導体基板11の厚さ方向に重なる部分の層幅(以下、重複部層幅とする)を示している。
【0025】
半導体基板11の表面11aを基準とするピエゾ抵抗層12の深さD
1は、0.5μm以上1.1μm以下とすると好適であり、0.6μm以上0.7μm以下とすると最適である。ピエゾ抵抗層12の層幅W
1は1.1μm以上3μm以下とすると好適であり、2μm以上2.4μm以下とすると最適である。
【0026】
又、ピエゾ抵抗層12の最大不純物濃度は1×10
17ions/cm
3以上5×10
18ions/cm
3以下とすると好適であり、4×10
17ions/cm
3以上6×10
17ions/cm
3以下とすると最適である。
【0027】
半導体基板11の表面11aを基準とするバリア層13の深さD
2は、0.01μm以上0.1μm以下とすると好適であり、0.01μm以上0.05μm以下とすると最適である。
【0028】
バリア層13の層幅W
2は0.2μm以上0.7μm以下とすると好適であり、0.3μm以上0.4μm以下とすると最適である。バリア層13の最大不純物濃度は5×10
17ions/cm
3以上1×10
19ions/cm
3以下とすると好適であり、8×10
17ions/cm
3以上1.2×10
18ions/cm
3以下とすると最適である。
【0029】
但し、上記数値範囲内から適切な数値を選択し、ピエゾ抵抗層12の上側とバリア層13の下側とが半導体基板11の厚さ方向に重なるように、ピエゾ抵抗層12及びバリア層13を形成しなければならない。ピエゾ抵抗層12とバリア層13との重複部層幅W
3は、0.1μm以上0.5μm以下とすると好適であり、0.3μm以上0.4μm以下とすると最適である。
【0030】
ここで、上記の好適な範囲は、ピエゾ抵抗素子10が正常に機能すると共に、従来のピエゾ抵抗素子に比べて出力電圧変動を少なくできる範囲である。又、上記の最適な範囲は、ピエゾ抵抗素子10が正常に機能すると共に、従来のピエゾ抵抗素子に比べて出力電圧変動を少なくでき、更にセンサ感度低下率を抑制可能な範囲である。
【0031】
なお、センサ感度低下率とは、ピエゾ抵抗層12が半導体基板11の最表面に存在する場合のセンサ感度を基準とし、それに対してどの程度センサ感度が低下したかを示す数値である。例えば、上記の好適な範囲ではセンサ感度低下率を−25%程度に抑制でき、上記の最適な範囲ではセンサ感度低下率を−10%程度に抑制できる。
【0032】
例えば、上記特許文献1の例では、センサ感度低下率は−40%以上となるため、本実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10では、大型化を招くことなく、上記特許文献1の例に比べてセンサ感度低下率を大幅に抑制できる。
【0033】
なお、ピエゾ抵抗層12の層幅W
1が3μmよりも大きく、かつ、バリア層13の層幅W
2が0.7μmよりも大きくなると、ピエゾ抵抗素子10が正常に機能しなくなる。又、半導体基板11の表面11a近傍のピエゾ抵抗層12の不純物濃度が高くなるため、バリア層13中の空乏層の厚みが薄くなり、十分なバリア効果を得ることができなくなり、ピエゾ抵抗素子10の出力電圧変動が増加する要因となる。又、ピエゾ抵抗層12とバリア層13の不純物濃度の高い領域が厚さ方向に重複すると二重拡散となるため、半導体基板11にリーク電流が発生しやすくなり、この点でもピエゾ抵抗素子10の出力電圧変動が増加する要因となる。
【0034】
ところで、
図1では、ピエゾ抵抗層12及びバリア層13の深さや層幅を模式的に示したが、
図2を参照しながら、ここで正確に定義する。前述のように、本実施の形態では、一例として、N型の半導体基板11(シリコン基板)に、P型のピエゾ抵抗層12及びN型のバリア層13が形成されているものとする。
【0035】
図2において、横軸は、半導体基板11の表面11aを基準とする深さ[μm]である。つまり、横軸の原点(縦軸との交点)は半導体基板11の表面11aである。又、
図2において、縦軸は、半導体基板11の第1の不純物の濃度を基準とした他の層の不純物濃度[ions/cm
3]である。つまり、縦軸の原点(横軸との交点)は半導体基板11の第1の不純物(例えば、N型の不純物であるリン)の濃度である。
【0036】
図2において、Piはピエゾ抵抗層12の第2の不純物(例えば、P型の不純物であるホウ素)の濃度プロファイルであり、Baはバリア層13の第3の不純物(例えば、N型の不純物であるリン)の濃度プロファイルである。
【0037】
本実施の形態では、第2の不純物の濃度が半導体基板11の第1の不純物の濃度以上となる領域をピエゾ抵抗層12と定義している。つまり、半導体基板11の表面11aを基準としてピエゾ抵抗層12の深さを定義した場合に、ピエゾ抵抗層12は、第2の不純物の濃度と第1の不純物の濃度が一致する第1の深さP
1を有する。そして、更に、ピエゾ抵抗層12は、第1の深さP
1よりも深く第2の不純物の濃度が最大になる第2の深さP
2と、第2の深さP
2よりも深く第2の不純物の濃度と第1の不純物の濃度が一致する第3の深さP
3とを有する。
【0038】
そして、半導体基板11の表面11aから第2の深さP
2までの深さD
1が、ピエゾ抵抗層12の深さとなる。又、第1の深さP
1から第3の深さP
3までの層幅W
1がピエゾ抵抗層12の層幅となる。
【0039】
同様に、本実施の形態では、第3の不純物の濃度が半導体基板11の第1の不純物の濃度以上となる領域をバリア層13と定義している。つまり、半導体基板11の表面11aを基準としてバリア層13の深さを定義した場合に、バリア層13は、半導体基板11の表面11aと一致する第4の深さB
4を有する。そして、更に、バリア層13は、第4の深さB
4よりも深く第3の不純物の濃度が最大になる第5の深さB
5と、第5の深さB
5よりも深く第3の不純物の濃度と第1の不純物の濃度が一致する第6の深さB
6とを有する。
【0040】
そして、半導体基板11の表面11aから第5の深さB
5までの深さD
2が、バリア層13の深さとなる。又、第4の深さB
4(=半導体基板11の表面11a)から第6の深さB
6までの層幅W
2がバリア層13の層幅となる。又、ピエゾ抵抗層12の第1の深さP
1からバリア層13の第6の深さB
6までの層幅W
3が重複部層幅となる。
【0041】
なお、
図2の例では、ピエゾ抵抗層12の第1の深さP
1が半導体基板11の表面11aよりも深い位置とされているが、半導体基板11の表面11a側において第2の不純物の濃度が第1の不純物の濃度より高い場合がある。その場合には、バリア層13の第4の深さB
4と同様に、ピエゾ抵抗層12の第1の深さP
1は半導体基板11の表面11aと一致し、重複部層幅W
3はバリア層13の層幅W
2と一致する。
【0044】
上記の好適な範囲を表1に、上記の最適な範囲を表2にまとめた。このように、本実施の形態では、ピエゾ抵抗層12とバリア層13とは、半導体基板11の厚さ方向に重複部層幅W
3の重なりを必ず有する。つまり、本実施の形態において、重複部層幅W
3がゼロとなることはない。
【0045】
次に、
図3を参照しながら、ピエゾ抵抗素子10の製造方法について簡単に説明する。一例として、N型の半導体基板11に、P型のピエゾ抵抗層12及びN型のバリア層13を形成する例を示す。
【0046】
まず、ステップS100において、半導体基板11となるN型のシリコンウェハを準備する。次に、ステップS101において、シリコンウェハの表面を熱酸化し、熱酸化膜(SiO
2)を成膜する。
【0047】
次に、ステップS102において、熱酸化膜に開口部を形成し、開口部からシリコンウェハに例えば不純物としてホウ素をイオン注入し、P型のピエゾ抵抗層12をシリコンウェハに埋め込む。この際、ピエゾ抵抗層12の深さ、層幅、及び最大不純物濃度が表1又は表2の範囲に入るように、イオン注入加速電圧やドーズ量を制御する。なお、ピエゾ抵抗層12の深さ、層幅、及び最大不純物濃度とイオン注入加速電圧やドーズ量との関係は、実験や計算等により予め求めておくことができる。
【0048】
次に、ステップS103において、開口部からシリコンウェハに例えば不純物としてリンをイオン注入し、半導体基板11の表面11aとピエゾ抵抗層12との間にN型のバリア層13を形成する。この際、バリア層13の深さ、層幅、及び最大不純物濃度が表1又は表2の範囲に入るように、イオン注入加速電圧やドーズ量を制御する。なお、バリア層13の深さ、層幅、及び最大不純物濃度とイオン注入加速電圧やドーズ量との関係は、実験や計算等により予め求めておくことができる。
【0049】
次に、ステップS104において、所定条件によりアニールを行った後、ステップS105において、シリコンウェハの表面に層間絶縁膜である絶縁膜14を成膜することにより、ピエゾ抵抗素子10が完成する。なお、ピエゾ抵抗素子10を用いた半導体センサを作製する場合には、更に、コンタクトホールや電極、ダイヤフラム等の形成を行う工程が必要となる。ピエゾ抵抗素子10を用いた半導体センサの例については、後述する。
【0050】
ここで、比較例を参照しながら、本実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10の奏する効果について説明する。
図4は、比較例1に係るピエゾ抵抗素子を例示する断面図である。
図4を参照するに、比較例1に係るピエゾ抵抗素子10Aは、ピエゾ抵抗層12が半導体基板11の表面11aの近傍に形成されている点、バリア層を有しない点が、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10(
図1参照)と相違する。
【0051】
ピエゾ抵抗素子10Aは、ピエゾ抵抗層12が半導体基板11の表面11aの近傍に形成されている。そのため、高いセンサ感度を得られる点では好適であるが、バリア層が形成されていないため、例えば、湿度雰囲気等において不純物イオンやチャージの影響を受けやすく、出力電圧が変動する問題を生じる。
【0052】
図5は、比較例1に係るピエゾ抵抗素子の出力電圧変動の測定結果を例示する図である。なお、
図5の測定結果は、比較例1に係るピエゾ抵抗素子を搭載した半導体センサ100(第2の実施の形態で後述)を複数個作製し、各半導体センサ100を高温高湿状態に所定時間放置後、常温に戻して個々に通電し、出力電圧を測定してプロットしたものである。つまり、測定した出力電圧は、半導体センサ100のホイートストーンブリッジ回路の出力電圧である。
【0053】
図5に示すように、試験後のピエゾ抵抗素子10Aでは、出力電圧は±0.1〜±1.3mV程度の範囲でばらついており、時間による出力電圧変動も大きい。これは、ピエゾ抵抗素子10Aでは、ピエゾ抵抗層12が半導体基板11の表面11aの近傍に形成されているため、高温高湿状態において不純物イオンやチャージの影響を受け易いためと考えられる。
【0054】
図6は、比較例2に係るピエゾ抵抗素子を例示する断面図である。
図6を参照するに、比較例2に係るピエゾ抵抗素子10Bは、ピエゾ抵抗層12とバリア層13が離間しており重なりを全く有しない点が、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10(
図1参照)と相違する。
【0055】
ピエゾ抵抗素子10Bは、ピエゾ抵抗層12が半導体基板11の表面11aから所定の深さに形成されており、更にバリア層13が形成されている。そのため、高温高湿状態における不純物イオンやチャージの影響は比較例1に係るピエゾ抵抗素子10Aの場合よりも軽減されると考えられる。
【0056】
しかし、バリア層13の濃度が低く、十分な空乏層が存在しないため、バリア効果が弱く、例えば、湿度雰囲気等における不純物イオンやチャージの影響による出力電圧変動を完全には抑制できない。
【0057】
図7は、比較例2に係るピエゾ抵抗素子の出力電圧変動の測定結果を例示する図である。なお、
図7の測定結果は、比較例2に係るピエゾ抵抗素子を搭載した半導体センサ100(第2の実施の形態で後述)を複数個作製し、各半導体センサ100を高温高湿状態に所定時間放置後、常温に戻して個々に通電し、出力電圧を測定してプロットしたものである。つまり、測定した出力電圧は、半導体センサ100のホイートストーンブリッジ回路の出力電圧である。
【0058】
図7に示すように、試験後のピエゾ抵抗素子10Bでは、出力電圧は0〜+0.3mV程度の範囲でばらついており、時間による出力電圧変動も生じている。出力電圧変動は、ピエゾ抵抗素子10Aよりも低減されてはいるが、完全には抑制できていないことが確認できる。
【0059】
一方、
図8は、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子の出力電圧変動の測定結果を例示する図である。なお、
図8の測定結果は、ピエゾ抵抗素子10を搭載した半導体センサ100(第2の実施の形態で後述)を複数個作製し、各半導体センサ100を高温高湿状態に所定時間放置後、常温に戻して個々に通電し、出力電圧を測定してプロットしたものである。つまり、測定した出力電圧は、半導体センサ100のホイートストーンブリッジ回路の出力電圧である。
【0060】
図8に示すように、試験後のピエゾ抵抗素子10では、出力電圧変動は0〜+0.01mV程度の範囲に収まっており、出力電圧変動はほとんど生じていない。ピエゾ抵抗素子10の出力電圧変動は、比較例2に係るピエゾ抵抗素子10Bに比べると10分の1以下に抑制されている。
【0061】
これは、ピエゾ抵抗素子10では、ピエゾ抵抗層12とバリア層13とが半導体基板11の厚さ方向に所定の層幅の重なりを有するためである。つまり、ピエゾ抵抗素子10では、ピエゾ抵抗層12とバリア層13の層幅の重なり部分に厚い空乏層が形成され、形成された厚い空乏層により不純物イオンやチャージの影響を抑制する効果が向上したためである。
【0062】
なお、表1に示した好適な条件で作製したピエゾ抵抗素子10と、表2に示した最適な条件で作製したピエゾ抵抗素子10の何れについても、
図8に示すような結果が得られることを発明者らは確認している。
【0063】
但し、
図9に示すように、イオン注入加速電圧が高くなると圧力センサ感度低下率が大きくなる。表1に示した好適な条件で作製する場合には、表2に示した最適な条件で作製する場合に比べて、イオン注入加速電圧を高くする必要があるため、その分、圧力センサ感度低下率が大きくなる。
【0064】
しかし、表1に示した好適な条件で作製する場合でも、前述の特許文献2ほど高エネルギー(例えば1MeV)でイオン注入する必要はないため、表1に示した好適な条件で作製しても従来のピエゾ抵抗素子に比べて圧力センサ感度低下率を小さくできる。なお、表1に示した好適な条件で作製する場合のイオン注入加速電圧は、最大でも500[keV]程度である。
【0065】
このように、第1の実施の形態では、第1の不純物を含む第1導電型の半導体基板11に、第2の不純物を含む第2導電型のピエゾ抵抗層12を埋め込み、半導体基板11の表面11aとピエゾ抵抗層12との間に第3の不純物を含む第1導電型のバリア層13を形成する。その際、ピエゾ抵抗層12とバリア層13とが半導体基板11の厚さ方向に所定の層幅の重なりを有するようにする。
【0066】
その結果、層幅の重なり部分に従来は存在しなかった厚い空乏層が形成され、形成された厚い空乏層により不純物イオンやチャージの影響を抑制する効果が向上するため、従来よりも出力電圧変動を抑制できる。
【0067】
又、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10では、以下のような効果も得られる。すなわち、高エネルギー(例えば1MeV)でイオン注入する従来のピエゾ抵抗素子と比べて、圧力センサ感度低下率を小さくできる。これにより、ピエゾ抵抗素子10を用いた半導体センサの小型化が可能となり、半導体センサの設計自由度を向上できる。
【0068】
又、ピエゾ抵抗層の深さを0.5μm〜1.1μmとすることにより、後述する半導体センサのダイヤフラムにおいて結晶欠陥が発生する領域を減少させることが可能となり、半導体センサの機械的耐圧や耐衝撃性の悪化を防止できる。
【0069】
又、互いに導電型が異なるピエゾ抵抗層12とバリア層13によりPN接合ダイオードが形成され、逆方向耐圧が低下する。そのため、ESD(electro-static discharge;静電気放電)印加時にピエゾ抵抗層12から半導体基板11に電流が流れ、半導体センサの配線に流れる電流の密度が減少するため、半導体センサのESD耐圧を向上できる。
【0070】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10を備えた半導体センサの例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する。
【0071】
図10は、第2の実施の形態に係る半導体センサを例示する断面図である。
図10を参照するに、第2の実施の形態に係る半導体センサ100は、センサ素子200と、接着樹脂300と、制御IC(Integrated Circuit、集積回路)400と、接着樹脂500と、基板600と、ボンディングワイヤ700と、リッド800を有する。
【0072】
ここで、センサ素子200は、ダイヤフラム部210と、台座220とを有する。又、ダイヤフラム部210は、ダイヤフラム面250と、ダイヤフラム支持部260とを有する。更に、台座220の中央部には溝230が形成されており、リッド800は、貫通穴810を有する。
【0073】
より詳しくは、半導体センサ100は、以下のような構成を有する。すなわち、3段の面を有する基板600の下段面上に、接着樹脂500により制御IC400が接着されており、更に制御IC400上に接着樹脂300によりセンサ素子200の台座220が接着されている。
【0074】
接着樹脂500は、制御IC400の下面全体に存在するが、台座220は、中央部に溝230が形成されており、溝が形成されていない領域にのみ接着樹脂300が存在する。センサ素子200のダイヤフラム面250上及び制御IC400上には配線用の端子としてパッドがあり(図示せず)、パッド同士がボンディングワイヤ700により電気的に接続されている。
【0075】
又、基板600の中段の表面にも配線用の端子としてパッドが設けられており(図示せず)、制御IC400と基板600のパッド同士もボンディングワイヤ700で電気的に接続されている。基板600の上段には、リッド800が設置され、センサ素子200を覆っている。又、リッド800の中央には、貫通穴810が設けられ、ダイヤフラム面250が外部の圧力を感知できるように構成されている。
【0076】
センサ素子200は、所定の物理量を検出するための素子であり、半導体センサ100においては、絶対圧力を検出する。ここで、絶対圧力とは、完全真空(又は絶対真空)を基準とした圧力であり、それ故、センサ素子200は、真空状態に保たれた真空基準室240を有する。なお、本実施の形態においては、センサ素子200は、圧力センサ素子である例を挙げて説明するが、本発明は、基板600からの応力の影響を排除する必要がある種々のセンサ素子200に用いることができる。
【0077】
センサ素子200は、ダイヤフラム部210と、台座220とを備える。ダイヤフラム部210は、センサ素子200のセンサ面を構成する部品であり、圧力により発生した応力を、電気信号に変換して検出する。ダイヤフラム部210は、ダイヤフラム面250と、ダイヤフラム支持部260とを有する。
【0078】
ダイヤフラム面250は圧力を検出する面であり、薄膜状に形成される。ダイヤフラム面250は、圧力が加わると撓みが生じ、その撓みにより、ダイヤフラム面250に印加された絶対圧力が検出できるように構成されている。また、ダイヤフラム支持部260は、ダイヤフラム面250を支持する支持部である。
【0079】
ダイヤフラム部210は、半導体により構成されてよく、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いることにより、シリコン活性層でダイヤフラム面250を形成し、埋め込み酸化膜及び裏面のシリコン基板でダイヤフラム支持部260を形成できる。
【0080】
台座220は、ダイヤフラム部210を支持する支持部材であり、例えば、台座220の外周に沿った端部の表面上にダイヤフラム部210のダイヤフラム支持部260の裏面が接着固定される。台座220は、例えば、ガラス基板や、シリコン基板から構成されてもよい。ガラス基板の場合には、多層化されたガラス基板が用いられてもよい。
【0081】
台座220の裏面は、センサ素子200の実装面を構成し、被実装面である制御IC400の上面に、接着樹脂300を用いて接着されて固定される。
【0082】
図11は、センサ素子のダイヤフラム面を例示する平面図である。
図11を参照するに、ダイヤフラム面250は、ピエゾ抵抗素子10と、不純物抵抗配線252と、金属配線253と、パッド254とを備える。ピエゾ抵抗素子10及び不純物抵抗配線252は、ホイートストーンブリッジ回路を構成し、出力電圧を検出できるように構成されている。
【0083】
ピエゾ抵抗素子10は、圧電素子の一種であり、印加される圧力に応じて抵抗値が変化する。よって、ピエゾ抵抗素子10を用いたホイートストーンブリッジ回路は、出力電圧の変化により、ダイヤフラム面250に印加された圧力が検出できるように構成されている。つまり、ダイヤフラム面250に印加された圧力をピエゾ抵抗素子10の抵抗値変化に対応する出力電圧変化により検出できる。
【0084】
又、金属配線253は、ホイートストーンブリッジ回路を形成するための配線であり、パッド254は、外部との電気的接続を行うための端子又は電極である。外部からパッド254に電源を供給してホイートストーンブリッジ回路に電圧を印加し、圧力の印加によるピエゾ抵抗素子10の抵抗値の変化から、ホイートストーンブリッジ回路の出力電圧の変化を検出する。これにより、ダイヤフラム面250に印加された絶対圧力を検出できる。例えば、ダイヤフラム面250を
図11に示したように構成することにより、センサ素子200は、絶対圧力を検出できる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0086】
例えば、第1の実施の形態では、N型の半導体基板11にP型のピエゾ抵抗層12及びN型のバリア層13を形成する例を示したが、P型の半導体基板11にN型のピエゾ抵抗層12及びP型のバリア層13を形成してもよい。
【0087】
又、半導体基板11の不純物とバリア層13の不純物が異なっていてもよい。例えば、半導体基板11の不純物がリン(P)で、バリア層13の不純物が砒素(As)等でもよい。
【0088】
又、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に係るピエゾ抵抗素子10を搭載する半導体センサ100として圧力センサを例示した。しかし、ピエゾ抵抗素子10は、圧力センサ以外に、加速度センサやジャイロセンサ等の半導体センサにも搭載可能である。