特許第6155656号(P6155656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155656
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】駐車設備
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   E04H6/18 601Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-9386(P2013-9386)
(22)【出願日】2013年1月22日
(65)【公開番号】特開2014-141792(P2014-141792A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】焼山 誠
(72)【発明者】
【氏名】菅原 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】中村 光利
(72)【発明者】
【氏名】平柳 哲
(72)【発明者】
【氏名】丸若 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克仁
(72)【発明者】
【氏名】菊井 孝次
(72)【発明者】
【氏名】本田 健一
(72)【発明者】
【氏名】石塚 進一
(72)【発明者】
【氏名】大平 基史
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−062919(JP,A)
【文献】 特開2009−019479(JP,A)
【文献】 特開2011−226241(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3103278(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/42
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体内部に複数の駐車スペース及び入出庫部が設けられ、平面視長方形状のパレットに載せられた状態の車両を、入庫時には前記入出庫部から空いている駐車スペースに格納し、出庫時には前記駐車スペースから前記入出庫部へ戻す立体駐車部と、
前記構造体の外部に設けられ、前記パレットを待機させる待機スペースを有する車両待機部と、
前記待機スペースと前記入出庫部との間で前記パレットを移送する車両移送部とを有する駐車設備であって、
前記構造体は、外周を区画すると共に、前記パレットに載せられた状態の前記車両が通過可能な開口が形成された耐力壁を有し、
前記開口の幅、前記パレットの短辺長さに応じて、パレットに載せられた状態の車両が通過可能な必要最低限の長さとして定められ、
前記待機スペースには、長辺が前記開口への車両進退方向に平行になる状態で前記パレットが載置され、
前記車両移送部は、長辺方向と短辺方向とに前記パレットを移送する移送レールを有することを特徴とする駐車設備。
【請求項2】
構造体内部に複数の駐車スペース及び入出庫部が設けられ、平面視長方形状のパレットに載せられた状態の車両を、入庫時には前記入出庫部から空いている駐車スペースに格納し、出庫時には前記駐車スペースから前記入出庫部へ戻す立体駐車部と、
前記構造体の外部に設けられ、前記パレットを待機させる待機スペースを有する車両待機部と、
前記待機スペースと前記入出庫部との間で前記パレットを移送する車両移送部とを有する駐車設備であって、
前記構造体は、外周を区画すると共に、前記パレットに載せられた状態の前記車両が通過可能な開口が形成された耐力壁を有し、
前記開口の幅、前記パレットの短辺長さに応じて、パレットに載せられた状態の車両が通過可能な必要最低限の長さとして定められ、
前記待機スペースには、短辺が前記開口への車両進退方向に平行になる状態で前記パレットが載置され、
前記車両移送部は、長辺方向と短辺方向とに前記パレットを移送する移送レールと、前記開口の手前で前記パレットを、前記長辺が前記開口への車両進退方向に平行になるように水平方向に回転させる回転機構とを有することを特徴とする駐車設備。
【請求項3】
前記車両移送部は、前記長辺方向の移送レールによって前記パレットが移送される状態では、前記短辺方向の移送レールを前記長辺方向の移送レールよりも下方に位置し、前記短辺方向の移送レールによって前記パレットが移送される状態では、前記長辺方向の移送レールを前記短辺方向の移送レールよりも下方に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の駐車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を立体的に駐車する立体駐車部を備えた駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
入出庫部と駐車スペースとの間で車両をパレットごと移送する立体駐車部と、パレットを待機させる待機スペースを有する車両待機部と、入出庫部と待機スペースとの間で車両をパレットごと移送する車両移送部とを有する駐車設備が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、内部にボイド空間を有する外側建物とボイド空間に構築された内側建物とを制震ダンパーで接続すると共に、内側建物を立体駐車場として利用した制震建物も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−226241号公報
【特許文献2】特開2009−19479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の駐車設備では、立体駐車部の開口を通じてパレットを移送するに際し、パレットの長辺(車長側)を開口に向けていた。ここで、特許文献2に記載された壁構造の内側建物において、幅の大きな開口を耐力壁に設けることは、構造強度の確保から困難であった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐力壁を有する構造体の内部に駐車スペース及び入出庫部が設けられた立体駐車部を有する駐車設備において、必要な構造強度を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の駐車設備は、構造体内部に複数の駐車スペース及び入出庫部が設けられ、平面視長方形状のパレットに載せられた状態の車両を、入庫時には前記入出庫部から空いている駐車スペースに格納し、出庫時には前記駐車スペースから前記入出庫部へ戻す立体駐車部と、前記構造体の外部に設けられ、前記パレットを待機させる待機スペースを有する車両待機部と、前記待機スペースと前記入出庫部との間で前記パレットを移送する車両移送部とを有する駐車設備であって、前記構造体は、外周を区画すると共に、前記パレットに載せられた状態の前記車両が通過可能な開口が形成された耐力壁を有し、前記開口の幅、前記パレットの短辺長さに応じて、パレットに載せられた状態の車両が通過可能な必要最低限の長さとして定められ、前記待機スペースには、長辺が前記開口への車両進退方向に平行になる状態で前記パレットが載置され、前記車両移送部は、長辺方向と短辺方向とに前記パレットを移送する移送レールを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の駐車設備によれば、内部に複数の駐車スペース及び入出庫部が設けられた構造体に関し、耐力壁に設けられる開口の幅がパレットの短辺長さに応じて定められているので、開口を最小限の幅にすることができ、必要な構造強度を得ることができる。
【0010】
また、本発明の駐車設備において、前記待機スペースには、前記開口への車両進退方向に長辺を向けた状態で前記パレットが載置され、前記車両移送部は、長辺方向と短辺方向とに前記パレットを移送する移送レールを有するので、待機スペースと入出庫部との間で、パレットを水平方向へ回転させることなく移送できるため、移送時間の短縮化が図れる。
【0011】
また、本発明の駐車設備は、構造体内部に複数の駐車スペース及び入出庫部が設けられ、平面視長方形状のパレットに載せられた状態の車両を、入庫時には前記入出庫部から空いている駐車スペースに格納し、出庫時には前記駐車スペースから前記入出庫部へ戻す立体駐車部と、前記構造体の外部に設けられ、前記パレットを待機させる待機スペースを有する車両待機部と、前記待機スペースと前記入出庫部との間で前記パレットを移送する車両移送部とを有する駐車設備であって、前記構造体は、外周を区画すると共に、前記パレットに載せられた状態の前記車両が通過可能な開口が形成された耐力壁を有し、前記開口の幅は、前記パレットの短辺長さに応じて、パレットに載せられた状態の車両が通過可能な必要最低限の長さとして定められ、前記待機スペースには、短辺が前記開口への車両進退方向に平行になる状態で前記パレットが載置され、前記車両移送部は、長辺方向と短辺方向とに前記パレットを移送する移送レールと、前記開口の手前で前記パレットを、前記長辺が前記開口への車両進退方向に平行になるように水平方向に回転させる回転機構とを有することを特徴とする
本発明によれば、回転機構によってパレットの向き変更できるため、待機スペースにおけるレイアウトの自由度を拡げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐力壁を有する構造体の内部に駐車スペース及び入出庫部が設けられた立体駐車部を有する駐車設備において、必要な構造強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】駐車設備を備えた制震建物の鉛直方向断面図である。
図2】制震建物の水平方向断面図である。
図3】第1実施形態の立体駐車部、車両待機部、及び車両移送部を示す平面図である。
図4】耐力壁の開口とパレットの幅及び長さの関係を模式的に示す図である。
図5】車両待機部(待機スペース)から立体駐車部(入出庫部)への車両の移送経路を説明する図である。
図6】車両移送時における移送レールの動作例を模式的に示す図である。
図7】第2実施形態の立体駐車部、車両待機部、及び車両移送部を示す平面図である。
図8】車両移送時における移送レールの動作例を模式的に示す図である。
図9】第3実施形態の立体駐車部、車両待機部、及び車両移送部を示す平面図である。
図10】第4実施形態の立体駐車部、車両待機部、及び車両移送部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、駐車設備が設けられる制震建物について説明する。図1及び図2に示すように、制震建物1は、外部建物2と、内部建物3と、制震ダンパー4とを有している。
【0015】
外部建物2は、平面視矩形状の外形を有するタワー型をしており、その内側には平面視矩形状のボイド空間5が上下方向を貫く状態で形成されている。本実施形態の外部建物2は、ラーメン架構式構造を有しているが、柱や梁の寸法を小さくしたり、柱同士の間隔を広くしたり、柱や梁の数を少なくすることで、開放的な空間を形成している。また、外部建物2の外形とボイド空間5の外形は相似形をしており、それぞれの中心点が一致している。このボイド空間5は、内部建物3が構築される空間であり、自然換気を利用した換気や排気のスペースとしても利用される。なお、外部建物2の屋上には、ボイド空間5を上方から覆うように屋根6が設けられている。この屋根6は、ボイド空間5に雨が入り込むことを防いでいる。
【0016】
内部建物3はボイド空間5に構築された中空柱状の構造体であり、その内部には複数の駐車スペース11及び入出庫部12が設けられている。すなわち、内部建物3、駐車スペース11、入出庫部12、リフト13等により、立体駐車部10が構成されている。
【0017】
この内部建物3は、外周が耐力壁で構成された鉄筋コンクリート造とされ、外部建物2の内壁面から所定の隙間を空けて設けられている。そして、内部建物3の剛性は、外部建物2の剛性よりも高くなっている。また、内部建物3の高さは、外部建物2の高さよりも低くなっている。本実施形態では、内部建物3の高さは、外部建物2の高さの2/3程度である。このように、内部建物3は、外部建物2よりも剛性が高く、高さが低いことから、その固有振動周期が外部建物2よりも短くなる。このため、地震などによる外力が制震建物1に作用すると、外部建物2と内部建物3とは異なる振動モードで振動する。
【0018】
制震ダンパー4は、外部建物2と内部建物3との隙間に配置され、外部建物2と内部建物3とを接合する部材である。この制震ダンパー4は、平面視略く字状に屈曲されており、内部建物3の四隅に設けられている。また、制震ダンパー4は、建物の高さ方向に関し、外力が作用した際に外部建物2と内部建物3の変形差が大きくなるような階層に配設されている。そして、各制震ダンパー4は、外部建物2と内部建物3との間で生じる振動エネルギーを吸収するように作用する。
【0019】
このように、本実施形態の制震建物1では、異なる振動モードで振動する外部建物2と内部建物3とを制震ダンパー4を介して接合し、外部建物2と内部建物3との間で生じる振動エネルギーを制震ダンパー4で吸収しているので、高い制振効果を得ることができる。
【0020】
次に、内部建物3を利用して構成された駐車設備について説明する。図3に示すように、駐車設備は、立体駐車部10、入庫移送部20、入庫待機部30、出庫移送部40、出庫待機部50、及び、管理装置(図示せず)を有している。この駐車設備では、パレットPT(図4参照)に載せられた車両を、車両移送部(入庫移送部20及び出庫移送部40)によって立体駐車部10(入出庫部12)と車両待機部(入庫待機部30及び出庫待機部50)との間で移送している。
【0021】
ここで、パレットPTは、車両が個別に載せられる板状部材であり、車両の幅方向を短辺、全長方向を長辺とする矩形状をしている。便宜上、以下の説明では、車両が載せられた状態のパレットPTを実車パレットPT1といい、車両が載せられていない状態のパレットPTを空パレットPT2という。さらに、実車パレットPT1と空パレットPT2を区別しない場合には、単にパレットPTという。
【0022】
立体駐車部10は、内部建物3を構造体として用いている。そして、内部建物3の内側には、実車パレットPT1が駐車される駐車スペース11が、複数階に亘って設けられている。この立体駐車部10において、実車パレットPT1の受渡しが行われる入出庫部12は、制震建物1の所定階(例えば地上階や地下1階)に設けられており、入出庫部12の上方は吹き抜け空間となっている。そして、駐車スペース11は、吹き抜け空間の左右に隣接して設けられている。
【0023】
内部建物3の内側には、吹き抜け空間を昇降するリフト13が設けられている。このリフト13は、パレットPTを上面に載せた状態で昇降される矩形板状の搬送台13aと、搬送台13aの四隅を摺動可能な状態で支持し、鉛直方向に立設された4本の棒状ガイド部材13bを有している。搬送台13aは、図示しないワイヤーロープやウインチによって昇降され、内部建物3における所望階で停止される。なお、本実施形態では、2機のリフト13,13がパレットPTの長辺方向に並設されている。そして、内部建物3における入出庫部12と入庫移送部20の境界、及び、入出庫部12と出庫移送部40の境界には、パレットPTを通過させるための開口3a,3aが設けられている。これらの開口3aについては、後で説明する。
【0024】
搬送台13aには、スライド機構(図示せず)が設けられている。このスライド機構は、入庫移送部20から移送されたパレットPTを搬送台13aへ受け入れたり、搬送台13aに載置されたパレットPTを出庫移送部40へ向けて排出したりする。本実施形態では、2機のリフト13,13がパレットPTの長辺方向に並設されている。このため、入出庫部12(上),12(下)においては、搬送台13a(上),13a(下)でパレットPTの受け渡しができるように構成されている。
【0025】
また、各駐車スペース11にもスライド機構(図示せず)が設けられており、搬送台13aと駐車スペース11との間でパレットPTの受渡しが行われる。すなわち、搬送台13aが所望の階層に停止されるとスライド機構が作動し、駐車スペース11から搬送台13aへのパレットPTの受け入れ、或いは、搬送台13aから駐車スペース11へのパレットPTの排出が行われる。
【0026】
入庫移送部20は、入庫待機部30と入出庫部12の直前(便宜上、第1受け渡し部20aという)との間でパレットPTを移送する部分であり、入出庫部12と同じ階に設けられている。入庫移送部20は、パレットPTを短辺(車幅)方向に移送させる動力付きの第1入庫移送レール21と、パレットPTを長辺(車長)方向に移送させる動力付きの第2入庫移送レール22とを有している。すなわち、入庫移送部20は、短辺方向と長辺方向とにパレットPTを移送する移送レール21,22を有している。そして、第2入庫移送レール22は、上下方向に移動可能に構成されており、パレットPTを長辺方向へ移動させる際には第1入庫移送レール21よりも上方まで上昇される。また、第2入庫移送レール22は、パレットPTを短辺方向へ移動させる際において、第1入庫移送レール21よりも下方まで下降される。
【0027】
入庫待機部30は入庫車両を空パレットPT2に載せる場所であり、本実施形態では3つの入庫待機スペース31を有している。これらの入庫待機スペース31は、入庫車両を載せるべく空パレットPT2を待機させるスペースである。図3の例では、第1受け渡し部20aの左側に第1入庫待機スペース31aが、第1受け渡し部20aにおける開口3aとは反対側に第2入庫待機スペース31bが、第1受け渡し部20aの右側に第3入庫待機スペース31cが設けられている。このため、入庫移送部20は、第1受け渡し部20aを中心にして、左右両側、及び、開口3aとは反対側に形成されている。
【0028】
そして、各入庫待機スペース31a〜31cにおいて空パレットPT2は、短辺が第1入庫移送レール21と平行になり、長辺が第2入庫移送レール22と平行になるように配置される。言い換えれば、空パレットPT2は、各入庫待機スペース31a〜31cにおいて、開口3aへの車両進入方向に長辺を向けた状態で配置されている。
【0029】
出庫移送部40は、入出庫部12の直前(便宜上、第2受け渡し部40aという)と出庫待機部50との間でパレットPTを移送する部分であり、入出庫部12と同じ階に設けられている。出庫移送部40は、入庫移送部20と同様に構成されている。すなわち、パレットPTを短辺方向に移送させる動力付きの第1出庫移送レール41と、パレットPTを長辺方向に移送させる動力付きの第2出庫移送レール42とを有している。すなわち、出庫移送部40もまた、短辺方向と長辺方向とにパレットPTを移送する移送レール41,42を有している。そして、第2出庫移送レール42は、上下方向に移動可能に構成されており、パレットPTを長辺方向へ移動させる際には第1出庫移送レール41よりも上方まで上昇される。また、第2出庫移送レール42は、パレットPTを短辺方向へ移動させる際において、第1出庫移送レール41よりも下方まで下降される。
【0030】
出庫待機部50は、利用者に引き渡すべく出庫車両を待機させる場所であり、本実施形態では3つの出庫待機スペース51を有している。この出庫待機スペース51は、実車パレットPT1を待機させるスペースである。図3の例では、第2受け渡し部40aの左側に第1出庫待機スペース51aが、第2受け渡し部40aにおける開口3aとは反対側に第2出庫待機スペース51bが、第2受け渡し部40aの右側に第3出庫待機スペース51cが設けられている。このため、出庫移送部40は、第2受け渡し部40aを中心にして、左右両側、及び、開口3aとは反対側に形成されている。
【0031】
そして、各出庫待機スペース51a〜51cにおいて実車パレットPT1は、短辺が第1出庫移送レール41と平行になり、長辺が第2出庫移送レール42と平行になるように配置される。言い換えれば、実車パレットPT1は、各出庫待機スペース51a〜51cにおいて、開口3aからの車両出庫方向に長辺を向けた状態で配置される。
【0032】
次に、内部建物3(構造体)に形成された開口3aについて説明する。前述したように、内部建物3の外周は耐力壁で構成されていることから、開口3aを過度に大きくすることはできない。そこで、本実施形態では、耐力壁に形成される一対の開口3a,3aについて、その幅をパレットPTの短辺長さに応じて定めている。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、パレットPTの幅WPが2.2m、パレットPTの長さLPが5.7mとなっている。これに伴い、開口3aの幅W1を2.6mに定めている。このため、パレットPTと開口3aの間には、両端に0.2mのクリアランスが設けられる。また、内部建物3が有する耐力壁の幅W2は10mであり、開口3aの高さHは3mである。このように、開口3aの幅W1は、パレットPTの幅WPに必要なクリアランスを加えた大きさに定められている。また、開口3aの高さHは、入出庫される車両の最大高さに必要なクリアランスを加えた大きさに定められている。
【0034】
なお、以上の数値はあくまで一例であり、この数値に限定されるものではない。開口3aの幅W1に関しては、パレットPTの幅WPの1.1倍〜1.3倍程度あればよく、耐力壁の幅W2に対して1/3〜1/4程度であればよい。
【0035】
次に、駐車設備における車両の移動について説明する。
【0036】
車両の入庫時において、図5に矢印で示すように、各入庫待機スペース31a〜31cで空パレットPT1に載せられた車両は、第1受け渡し部20aを通った後、開口3aを通過して入出庫部12へと移送される。例えば、第1入庫待機スペース31aで空パレットPT1に載せられた車両は、実車パレットPT1ごと右側へ移送された後、第1受け渡し部20aで前方へと向きを変え、開口3aを通過した後に入出庫部12へ載せられる。そして、第2入庫待機スペース31bで空パレットPT2に載せられた車両は、実車パレットPT1ごと前方へ移送され、第1受け渡し部20a及び開口3aを通過した後に入出庫部12へ載せられる。また、第3入庫待機スペース31cで空パレットPT2に載せられた車両は、実車パレットPT1ごと左側へ移送された後、第1受け渡し部20aで前方へと向きを変え、開口3aを通過した後に入出庫部12へ載せられる。
【0037】
ここで、実車パレットPT1の移送方向の変更は、第1入庫移送レール21及び第2入庫移送レール22によって行われる。すなわち、実車パレットPT1を車幅方向に移送させる場合には、第1入庫移送レール21を動作させると共に、第2入庫移送レール22を停止させて第1入庫移送レール21よりも下方に位置させる。一方、実車パレットPT1を車長方向に移送させる場合には、第1入庫移送レール21を停止させると共に、第2入庫移送レール22を動作させて第1入庫移送レール21よりも上方に位置させ、移送する。
【0038】
図6を参照し、各入庫移送レール21,22の動作について説明する。ここでは、第3入庫待機スペース31cの実車パレットPT1を移送する場合を例に挙げている。第3入庫待機スペース31cのパレットPTに車両Xが載せられると、図6(a)に示すように、第3入庫待機スペース31cに設けられた第1入庫移送レール21が動作し、実車パレットPT1を第2入庫移送レール22側(図中右側)へ移動させる。その後、図6(b)に示すように、実車パレットPT1が第1受け渡し部20aに位置すると、第1入庫移送レール21は動作を停止する。次に、図6(c)〜(e)に示すように、第2入庫移送レール22が第1入庫移送レール21よりも上方へ上昇して実車パレットPT1を前方へ移動させ、開口3aを通過させて入出庫部12まで移送する。
【0039】
なお、車両の出庫も同様に行われる。例えば、図5に矢印で示すように、リフト13によって、駐車スペース11から入出庫部12まで移送された実車パレットPT1は、開口3aを通過して第2受け渡し部40aまで移送される。その後、目的とする出庫待機スペース51に向けて移送される。例えば、第1出庫待機スペース51aに待機させる場合には、第2受け渡し部40aから左側に移送される。また、第2出庫待機スペース51bに待機させる場合には、第2受け渡し部40aを直進で通過し、第3出庫待機スペース51cに待機させる場合には、第2受け渡し部40aから右側に移送される。
【0040】
このように、本実施形態の駐車設備では、内部に複数の駐車スペース11及び入出庫部12が設けられた内部建物3(構造体)に関し、耐力壁に設けられる開口3aの幅がパレットPTの短辺長さに応じて定められているので、開口3aを必要最低限の幅にすることができ、必要な構造強度を得ることができる。
【0041】
また、各出庫待機スペース51には、開口3aへの車両進退方向に長辺を向けた状態でパレットPTが載置され、車両移送部(入庫移送部20,出庫移送部40)は、短辺方向と長辺方向とにパレットPTを移送する移送レール21,22,41,42を有しているので、出庫待機スペース51と入出庫部12との間で、パレットPTを水平方向へ回転させることなく移送でき、移送時間の短縮化が図れる。
【0042】
次に、パレット移送経路の途中にターンテーブル(回転機構)を設けた他の実施形態について説明する。
【0043】
図7に示す第2実施形態の駐車設備は、先に説明した第1実施形態の駐車設備に対して次の相違点がある。すなわち、内部建物3に設けられた開口3aが1つであること、開口3aの手前にターンテーブル60が設けられていること、開口3aの右側に入庫待機部30及び入庫待機スペース31が設けられ、開口3aの左側に出庫待機部50及び出庫待機スペース51が設けられていること、車両移送部70が入庫と出庫を兼ねていることが相違している。
【0044】
以下、相違点を中心に第2実施形態の駐車設備について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付して示し、説明を省略する。
【0045】
ターンテーブル60は、パレットPTを水平方向に回転させるための回転機構であり、本実施形態では、パレットPTを長辺方向と短辺方向に移動させるスライダ61が設けられている。
【0046】
車両移送部70は、共用移送部71と個別移送部72とを有している。共用移送部71は、ターンテーブル60の直前から直線状の共用移送経路に沿ってパレットPTを移送する共用移送レール71aによって構成されている。本実施形態において共用移送部71は、パレットPTを短辺方向に移動させている。個別移送部72は、複数の入庫待機スペース31(31a〜31c)と複数の出庫待機スペース51(51a〜51c)のそれぞれに対応して設けられ、対応する待機スペース31,51と共用移送部71との間で車両を移送する。この個別移送部72もまた、パレットPTごと車両を移送する個別移送レール72aによって構成されており、共用移送経路と直交する個別移送経路に沿って車両を移送する。本実施形態において個別移送部72は、パレットPTを長辺方向に移動させている。
【0047】
入庫待機部30は、3つの入庫待機スペース31a〜31cを有しており、1つがターンテーブル60に隣接して設けられ、残りの2つが共用移送部71に隣接して設けられている。そして、各入庫待機スペース31a〜31cは、開口3aへの車両進退方向に短辺を向けた状態でパレットPTを載置させている。出庫待機部50もまた、3つの出庫待機スペース51a〜51cを有している。そして、3つの出庫待機スペース51a〜51cの内の1つがターンテーブル60に隣接して設けられ、残りの2つが共用移送部71に隣接して設けられている。各出庫待機スペース51a〜51cでも、開口3aへの車両進退方向に短辺を向けた状態でパレットPTを載置させている。
【0048】
本実施形態では、開口3aの手前に設けられたターンテーブル60でパレットPTを水平方向に回転させることで、パレットPTを縦長の状態にして開口3aを通過させている。入庫時の動作で説明すると、まず図8(a),(b)に示すように、開口3aから最も遠い入庫待機スペース31aの実車パレットPT1は、個別移送部72によって共用移送部71へと移送される。次に、図8(c)に示すように、実車パレットPT1は、共用移送部71によって開口3aへ向けて移送される。ターンテーブル60に到達すると、図8(d)に示すように、実車パレットPT1はターンテーブル60によって90度水平方向に回転される。これにより、実車パレットPT1の短辺が開口3aに臨み、長辺が車両進行方向と平行になる。そして、図8(e)に示すように、実車パレットPT1が入出庫部12へと移動される。
【0049】
このように本実施形態では、ターンテーブル60によってパレットPTの向きが変更できるため、各待機スペース31,51に関して、レイアウトの自由度を拡げることができる。
【0050】
図9に示す第3実施形態は、第2実施形態と比べて入庫待機スペース31や出庫待機スペース51のレイアウトが変更されている。すなわち、第2実施形態では各待機スペース31a〜31c,51a〜51cのうちの1組(31c,51c)がターンテーブル60に隣接していたが、第3実施形態では各待機スペース31a〜31c,51a〜51cが共用移送部71に隣接して設けられている。また、図10に示す第4実施形態では、第3実施形態と比べ、立体駐車部10,10やターンテーブル60,60が2つ横並びに設けられている点で相違している。これらの実施形態でも、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0051】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0052】
例えば、出庫待機スペース51の数やレイアウトは、前述の各実施形態で説明したものに限られず、任意に設定することができる。
【0053】
また、外部建物2と内部建物3とを有する制震建物1に駐車設備を構築した例を示したが、この構成に限定されるものではない。立体駐車部10の構造体に関し、耐力壁を用いているものであれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…制震建物,2…外部建物,3…内部建物,3a…開口,4…制震ダンパー,5…ボイド空間,6…屋根,10…立体駐車部,11…駐車スペース,12…入出庫部,13…リフト,13a…搬送台,13b…棒状ガイド部材,20…入庫移送部,20a…第1受け渡し部,21…第1入庫移送レール,22…第2入庫移送レール,30…入庫待機部,31…入庫待機スペース,31a…第1入庫待機スペース,31b…第2入庫待機スペース,31c…第3入庫待機スペース,40…出庫移送部,40a…第2受け渡し部,41…第1出庫移送レール,42…第2出庫移送レール,50…出庫待機部,51…出庫待機スペース,51a…第1出庫待機スペース,51b…第2出庫待機スペース,51c…第3出庫待機スペース,60…ターンテーブル,61…スライダ,70…車両移送部,71…共用移送部,71a…共用移送レール,72…個別移送部,72a…個別移送レール,PT…パレット,PT1…実車パレット,PT2…空パレット
図1
図2
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図6
図7
図8
図9
図10