特許第6155669号(P6155669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155669
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】レーザリペア装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20170626BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20170626BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20170626BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170626BHJP
   B23K 101/36 20060101ALN20170626BHJP
   B23K 103/16 20060101ALN20170626BHJP
【FI】
   B23K26/00 H
   B23K26/064 N
   G09F9/00 352
   G02F1/13 101
   B23K101:36
   B23K103:16
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-19925(P2013-19925)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-153371(P2014-153371A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】境野 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】戸村 大祐
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−247791(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0243712(US,A1)
【文献】 特開平06−106369(JP,A)
【文献】 特開2008−264854(JP,A)
【文献】 特開2004−199956(JP,A)
【文献】 特開平09−216087(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/119779(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/064
G02F 1/13
G09F 9/00
B23K 101/36
B23K 103/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる種類の多層膜が形成された基板上の特定膜にレーザ光を照射してリペア処理を施すレーザリペア装置において、
所定の発振波長で出力するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光の波長を前記特定膜において最も吸収が高い特定波長に変換する波長変換部と、前記波長変換部から出射されたレーザ光を設定光路で伝送する伝送光学系とを備え、
前記伝送光学系は、前記特定波長のレーザ光を選択的に前記設定光路に伝送させる波長選択光学要素を含み、純度の高い前記特定波長のレーザ光を出射し、
前記波長選択光学要素は、1段で前記特定波長のレーザ光を選択的に反射し、別段で、反射又は透過によって前記特定波長のレーザ光を設定光路上に出射すると共に、前記1段で透過された波長のレーザ光を吸収することを特徴とするレーザリペア装置。
【請求項2】
前記波長選択光学要素は多段に設けられることを特徴とする請求項1記載のレーザリペア装置。
【請求項3】
前記波長選択光学要素は、ダイクロイックミラーを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザリペア装置。
【請求項4】
前記波長選択光学要素は、波長フィルタを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザリペア装置。
【請求項5】
前記特定膜がITO膜であり、前記特定波長が266nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレーザリペア装置。
【請求項6】
前記波長変換部は、前記発振波長を中間波長に変換する第1波長変換素子と中間波長を前記特定波長に変換する第2波長変換素子を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザリペア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物にレーザ光を照射してリペア(修正)処理を行うレーザリペア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置は製造工程における各種不具合によって画素単位の欠陥(画素欠陥)が発生することがある。画素欠陥には、画素の輝点状態が継続する「輝点欠陥」と画素の暗点状態が継続する「暗点欠陥」があるが、製造工程の改善で欠陥を完全に無くすことは不可能に近いので、表示品質への影響が大きい輝点欠陥を暗点化するリペア処理を行って、表示装置の生産歩留まりを高めることがなされている。
【0003】
また、表示装置の基板上画素の表示領域を塞ぐ異物(スペーサ突起や配向制御用の突起など)が存在する場合には、その異物を除去することで正常な表示領域を確保するリペア処理が行われる。
【0004】
このようなリペア処理としては、欠陥箇所にレーザ光を照射するレーザリペア処理が一般に行われている。これは、欠陥箇所に局所的にレーザ光を照射し、画素電極の加工や配線の遮断、配向膜の加工や除去、異物の除去などを行うものである(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−64969号公報
【特許文献2】特開2008−180907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したリペア処理を行うに際して、表示装置の基板上には透明導電膜(ITO膜など),絶縁膜,配向膜などの各種の層が積層されている。このような層の中で例えば透明導電膜を選択的にリペア処理しようとしても、レーザ光照射時に下層にある絶縁膜などに悪影響が及び、最悪の場合は絶縁膜の破壊などによって正常な画素の表示性能に不具合が生じることがある。
【0007】
これに対しては、レーザ光のパルス照射における光強度(エネルギー密度)を適宜調整して、下層の膜への影響を少なくすることが行われているが、光強度の調整だけでは下層への悪影響を十分に排除できない問題があった。また、従来はレーザ光源の出力調整によって照射エネルギーの調整を行っており、レーザ光源の出力を下げることでnJオーダーの低エネルギー照射を行っている。しかしながら、この手法では、レーザ光源の出力が不安定になり易く、安定したレーザ光照射が得られず精度の高いリペア処理を行うことができない問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、処理対象の基板にレーザ光を照射するレーザリペア処理において、基板上に異種膜が積層された処理対象に対して下層への悪影響を抑制して選択的に特定の膜のみにリペア処理を行うことができること、このような特定膜の選択的なリペア処理によって表示性能を良好に確保した表示装置を得ることができ、高い歩留まりで表示装置を生産することができること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明によるレーザリペア装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
異なる種類の多層膜が形成された基板上の特定膜にレーザ光を照射してリペア処理を施すレーザリペア装置において、所定の発振波長で出力するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光の波長を前記特定膜において最も吸収が高い特定波長に変換する波長変換部と、前記波長変換部から出射されたレーザ光を設定光路で伝送する伝送光学系とを備え、前記伝送光学系は、前記特定波長のレーザ光を選択的に前記設定光路に伝送させる波長選択光学要素を含み、純度の高い前記特定波長のレーザ光を出射し、前記波長選択光学要素は、1段で前記特定波長のレーザ光を選択的に反射し、別段で、反射又は透過によって前記特定波長のレーザ光を設定光路上に出射すると共に、前記1段で透過された波長のレーザ光を吸収することを特徴とするレーザリペア装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明は、処理対象の基板にレーザ光を照射するレーザリペア処理において、基板上に異種膜が積層された処理対象に対して下層への悪影響を抑制して選択的に特定の膜のみにリペア処理を行うことができる。このような特定膜の選択的なリペア処理によって表示性能を良好に確保した表示装置を得ることができると共に、高い歩留まりで表示装置を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザリペア装置の全体構成を示した説明図である。
図2】処理対象となる基板の構成例を示した説明図である。
図3】本発明の実施形態に係るレーザリペア装置におけるレーザ発振部の構成例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るレーザリペア装置の全体構成を示した説明図である。レーザリペア装置1は、例えば、レーザ発振部10、レーザマスク11、鏡筒部12、顕微鏡部13、接眼光学系14、撮像部15、対物光学系16、操作部17などを備えている。このレーザリペア装置1は、レーザ発振部10から出射したレーザ光をレーザマスク11,鏡筒部12,顕微鏡部13及び対物光学系16を介して処理対象の基板2上に照射して支持台2A上に支持された基板2上の特定膜にリペア処理を施すものである。レーザ光によるレーザマスク11の像を顕微鏡部13で被照射面に投影照射することで対象物の加工を行う。
【0013】
図2は、処理対象となる基板の構成例を示した説明図である。本発明の実施形態に係るレーザリペア装置1は、異なる種類の多層膜が形成された基板上の特定膜にレーザ光を照射してリペア処理を施すものである。図2は多結晶シリコンを用いたTFT基板の断面図を模式的に示したものである。このような基板2は、ガラス基板20上に下地絶縁膜21が形成され、その上に多結晶シリコンTFTが形成されている。多結晶シリコン層22は不純物が高濃度にドープされたソース領域22S及びドレイン領域22Dと、それらの間のチャネル領域22Cで構成される。多結晶シリコン層22の上にゲート絶縁膜23、さらにその上にゲート電極24及びゲート線(図示せず)が形成される。層間絶縁膜25及びその下のゲート絶縁膜23に形成された開口部を介して、透明導電膜(ITO膜)26がドレイン領域22Dに接続され、ソース線27がソース領域22Sに接続される。最上層は保護膜28であるがこれは省略されることもある。
【0014】
このような基板2において、例えば、処理対象の特定膜を透明導電膜(ITO膜)26にして、これにレーザ光を照射してリペア処理を行う場合には、その下層の絶縁膜(層間絶縁膜25や下地絶縁膜21)に悪影響が及ばない処理が必要になる。本発明の実施形態に係るレーザリペア装置1は、異なる種類の多層膜が積層されている場合に、処理対象の特定膜と他の膜とではレーザ光の吸収波長に違いがあることに着目し、処理対象の特定膜において最も吸収が高い特定波長のレーザ光を照射することで、特定膜のみを選択的リペア処理することを可能にしたものである。この際、レーザ光の特定波長を高い純度にすることで、特定膜のみの選択的なリペア処理を精度良く行うことができる。
【0015】
図3は、本発明の実施形態に係るレーザリペア装置におけるレーザ発振部の構成例を示した説明図である。ここに、レーザリペア装置1が前述した特定膜のみの選択的なリペア処理を行うための具体的な構成を示す。
【0016】
本発明の実施形態に係るレーザリペア装置1は、レーザ光源3と波長変換部4と伝送光学系5を備えている。レーザ光源3は、所定の発振波長λsのレーザ光を出力する。波長変換部4は、レーザ光源から出射したレーザ光の波長λsを処理対象の特定膜において最も吸収が高い特定波長λtに変換するものである。波長変換部4は、例えば複数の波長変換素子(第1波長変換素子(第1非線形結晶)4A,第2波長変換素子(第2非線形結晶)4B)によって構成することができる。この場合は、一つの波長変換素子(第1波長変換素子4A)で発振波長λsを中間波長λmに変換し、他の波長変換素子(第2波長変換素子4B)で中間波長λmを特定波長λtに変換する。
【0017】
伝送光学系5は、波長変換部4から出射されたレーザ光を設定光路で伝送するものであり、特定波長λtのレーザ光を選択的に設定光路に伝送させる波長選択光学要素5A,5B,5Dなどを含み、純度の高い特定波長λtのレーザ光を出射するものである。波長変換部4から出射されるレーザ光は、変換された特定波長λtのレーザ光に変換前の波長(λsやλm)のレーザ光が混在して出射される。伝送光学系5における波長選択光学要素5A,5B,5Dなどは、波長変換部4から出射されるレーザ光の中から特定波長λt以外の波長(λsやλm)のレーザ光を取り除き、純度の高い特定波長λtのレーザ光を得る機能を有する。
【0018】
図示の例では、伝送光学系5は複数の反射光学要素50,51,53,54,55,56を備えている。この中で、反射光学要素51,53,54は特定波長λtを選択的に反射し他の波長のレーザ光は透過する機能を有する波長選択光学要素であり、例えばダイクロイックミラーによって構成することができる。このように波長選択性を有する反射光学要素51,53,54(波長選択光学要素)を多段に設けることで、反射を繰り返す度に特定波長λtの純度を高めることができる。
【0019】
波長選択光学要素5Bは、反射又は透過によって特定波長λtのレーザ光を設定光路上に出射し、波長選択性を有する反射光学要素51によって透過された波長(λs,λm)のレーザ光を吸収する機能を有する。反射光学要素51を透過した波長(λs,λm)のレーザ光は反射光学要素52によって反射され波長選択光学要素5B内に出射される。
【0020】
波長選択光学要素5Dは、特定波長λtの純度を更に高めて出射するものであり、波長フィルタなどによって構成することができる。また、波長選択光学要素5Dは、特定波長λtの純度を高めると同時にその透過率を調整することによって、複雑な構成を採用すること無く、所望の照射エネルギーを得ることができる。波長選択光学要素5Dの透過率によって照射エネルギーを低く調整することで、レーザ光源自体の出力を下げること無く高純度の特定波長λtの照射エネルギーを低く調整することができる。例えば、波長選択光学要素5Dとして、特定波長λt(226nm)の透過率が10%のダイクロイックミラーを用いることで、nJオーダーの低エネルギー照射を高純度の特定波長λtで安定的に行うことができる。
【0021】
伝送光学系5の中には、その他に、出力調整を行う光学要素5C(例えば、アッテネータ)やビーム径を調整する光学要素5E(ビームエキスパンダ)などが設けられる。
【0022】
このように、波長選択光学要素を多段に備えるレーザ発振部10は、極めて高い純度の特定波長λtのレーザ光を出射することができる。前述した基板2において透明導電膜(ITO膜)26を選択的にリペア処理するための特定波長λtは例えば266nmであり、これは発振波長λs:1064nm,中間波長λm:532nmから得ることができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1:レーザリペア装置,2:基板,3:レーザ光源,4:波長変換部,
5:伝送光学系,5A,5B,5D:波長選択光学要素,
50〜56:反射光学要素
図1
図2
図3