(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6155710
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】エンジンヘッドカバーにおける燃料インジェクタ接続部よりエンジン内部へのほこり侵入防止構造
(51)【国際特許分類】
F02F 7/00 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
F02F7/00 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-47831(P2013-47831)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-173521(P2014-173521A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 裕二
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭54−171027(JP,U)
【文献】
特開平08−086221(JP,A)
【文献】
特開平06−146880(JP,A)
【文献】
特開平03−222827(JP,A)
【文献】
特開2012−207593(JP,A)
【文献】
特開平04−327093(JP,A)
【文献】
特開平09−151788(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3172535(JP,U)
【文献】
特開2004−332673(JP,A)
【文献】
特開2006−043889(JP,A)
【文献】
特開昭63−108800(JP,A)
【文献】
特開2007−205199(JP,A)
【文献】
実開昭63−063556(JP,U)
【文献】
特開平10−026021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヘッドカバーと第2のヘッドカバーとを備え、前記双方によって内部に空間が形成されるエンジンヘッドカバーであって、
前記第2のヘッドカバーには、前記空間に連通し外部から空気を導入する空気導入口と、前記空間に連通し外部に空気を放出するとともに機器が貫通しうる空気放出口とが設けられ、
前記空気導入口と前記空間とにより導風通路が構成され、
前記導風通路には、エアフィルタが設けられ、
前記空気導入口はエンジン冷却用のファンに対向するように配置され、前記ファンによって前記空気導入口を介して前記導風通路に送り込まれた空気は前記空気放出口から前記外部に放出されるエンジンヘッドカバー。
【請求項2】
前記空間には振動吸収部材が設けられ、
前記振動吸収部材によって前記導風通路が形成される請求項1に記載のエンジンヘッドカバー。
【請求項3】
前記振動吸収部材と前記導風通路とを仕切るリブが設けられる請求項2に記載のエンジンヘッドカバー。
【請求項4】
前記空気導入口が外部に向かって末広がりとなっている請求項1〜3のいずれか記載のエンジンヘッドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンヘッドカバーの構成に係り、特にエンジンヘッドカバーに取り付けられた燃料インジェクタの接続部よりエンジン内部へのほこりの浸入を防止するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のシリンダヘッドには、燃料インジェクタやカムシャフト等の様々な機器が取り付けられている。一般的にシリンダヘッドには、これらの機器の保護や騒音防止を目的として、これらの機器を覆うシリンダヘッドカバーが取り付けられている。
【0003】
特許文献1には、燃料インジェクタが取り付けられたエンジンヘッドカバーが開示されている。燃料インジェクタはエンジン本体に固定されており、燃料インジェクタに接続されるインジェクタパイプはエンジンヘッドカバーに設けられた開口を通って外部に延出している。ここで、特許文献1のエンジンヘッドカバーは外側のエンジンカバーと内側のシリンダヘッドカバーとを有する2重構造である。そして、エンジンカバーとシリンダヘッドカバーとの間には、防音を目的として、燃料インジェクタ及びインジェクタパイプを覆うように発泡形成体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−207593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図6(a)、(b)に示すような、外側のカバー1と内側のカバー2とを有する二重構造のエンジンヘッドカバー300において、外側のカバー1に設けられた開口8とその開口8を通って外部に突出する燃料インジェクタ52との間には隙間8aが生じる。この隙間8aから埃等の異物が外側のカバー1の内側に侵入し、内側のカバー2と燃料インジェクタ52との間のシール部7に埃等が付着し、また、付着した埃等の異物がシール部7からエンジン内部に入り込んでしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、エンジンヘッドカバー300への埃の侵入を防止するため、
図6(b)に示されるように、エンジンヘッドカバー300の外側のカバー1において、隙間8aを覆うようにインシュレータ3を取り付ける方法があった。
【0007】
しかしながら、インシュレータ3はエンジンヘッドカバー300とは別の部品であるため、組み付け作業に手間がかかり、コストも高くなる傾向にあった。
また、インシュレータ3は発泡形成のため、形状のばらつきが大きく、隙間8aを塞ぐには限界があった。
【0008】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、部品の組付作業の効率を向上させ、エンジンヘッドカバーやエンジンヘッドカバー内に配置される機器への異物の侵入を確実に防止することができるエンジンヘッドカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明に係るエンジンヘッドカバーは、第1のヘッドカバーと第2のヘッドカバーとを備え、双方によって内部に空間が形成され、第2のヘッドカバーには、空間に連通し外部から空気を導入する空気導入口と、空間に連通し外部に空気を放出するとともに機器が貫通しうる空気放出口とが設けられ、空気導入口と空間とにより導風通路が構成され、導風通路には、エアフィルタが設けられ、
空気導入口はエンジン冷却用のファンに対向するように配置され、ファンによって空気導入口を介して導風通路に送り込まれた空気は空気放出口から外部に放出される。
これによって、空気導入口から取り込まれた空気はエアフィルタを通ってエンジンフィルターの内部空間に流入した後、空気放出口から吹き出すように流出する。
【0010】
また、この発明に係るエンジンヘッドカバーの内部の空間には振動吸収部材が設けられ、振動吸収部材によって導風通路が形成されてもよい。
また、この発明に係るエンジンヘッドカバーは、振動吸収部材と導風通路とを仕切るリブが設けられてもよい
。
またさらに、空気導入口が外部に向かって末広がりとなっていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るエンジンヘッドカバーによれば、部品の組付作業の効率を向上させ、コストを抑えることができるとともに、エンジンヘッドカバーやエンジンヘッドカバー内に配置される機器への異物の侵入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエンジンヘッドカバーの模式的な一部側面図である。
【
図2】
図1に記載のエンジンヘッドカバーをII−IIに沿って切った断面図である。
【
図3】
図1に記載のエンジンヘッドカバーをIII−IIIに沿って切った断面図である。
【
図4】この発明の実施の形態2に係るエンジンヘッドカバーの模式的な一部側面図である。
【
図5】
図4に記載のエンジンヘッドカバーをV−Vに沿って切った断面図である。
【
図6】従来の例に係るエンジンヘッドカバーを示す図である。
図6(a)は従来のエンジンヘッドカバーの模式的な一部側面図であり、
図6(b)はこのエンジンヘッドカバーをB−Bに沿って切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
本実施の形態1に係るエンジンヘッドカバー100について、
図1〜3を参照して説明する。
図2に示すように、エンジン本体(図示せず)の上に設けられる略凸形状のエンジンヘッドカバー100は外側カバー11及び外側カバー11の内側に配置される内側カバー12から構成される二重構造となっている。従って、外側カバー11と内側カバー12とに囲まれて形成された空間はエンジンヘッドカバー100の内部空間100aを構成する。また、
図3に示すように、外側カバー11及び内側カバー12には、エンジン本体に固定されている複数の燃料インジェクタ22を貫通させるための開口が設けられている。内側カバー12の開口には円環状のシール部材17が取り付けられ、開口内に配置される燃料インジェクタ22とのシールがなされている。そして、
図1及び3に示すように、燃料インジェクタ22には燃料パイプ22aが各々接続され、燃料パイプ22aは、外側カバー11に設けられた開口である空気放出口18を貫通して外部に延出する。空気放出口18の径は、燃料インジェクタ22の径より大きく設定され、燃料インジェクタ22及び燃料パイプ22aを配置した状態でエンジンヘッドカバー100の内部空間100aと外側カバー11の外部とが隙間18aを介して連通している。また、燃料インジェクタ22は、燃料パイプ22aを介して燃料が供給されるように構成されている。
ここで、内側カバー12は第1のヘッドカバーを構成し、外側カバー11は第2のヘッドカバーを構成する。また、それぞれの燃料インジェクタ22及び燃料パイプ22aは、本実施の形態における機器に相当する。
【0014】
外側カバー11の前方部分には、外部から空気を導入する空気導入口14が外部に向かって末広がりとなって突出して設けられている。空気導入口14はエンジンヘッドカバー100の内部空間100aに連通するとともに空気放出口18に連通している。なお、空気導入口14及び空気放出口18は、エンジンヘッドカバー100を前方から見た時に右側に位置するように配置されている。また、空気導入口14にはエアフィルタ15が設けられている。
ここで、前方とは車両の進行方向と同じ向きをいい、車両走行時の走行風W1の上流側であり、以下の説明に置いてFと表す。また、前方の反対方向、すなわち走行風W1の下流側を後方とし、以下の説明においてRと表す。
【0015】
図2及び3に示すように、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aには、ウレタン19が充填されている。このウレタン19は外側カバー11と一体的に成形されている。ここで、外側カバー11の内側において、2本のリブ11a,11bが板状に突出して形成されている。
図1における点線部で示すように、リブ11a,11bは空気導入口14を挟んでリブ11aが上に、リブ11bが下に位置するように配置されるとともに、前方Fから後方Rに向かって互いに平行に延びている。但し、リブ11bの一部は、空気放出口18の各々に対応する位置で、空気放出口18の周囲を囲む円柱状の空間を画定しつつ曲線状に延びる円環部11b’を形成する。そして、ウレタン19を外側カバー11の内側に成形する際、リブ11aとリブ11bとで囲まれた部分及び円環部11b’に囲まれた部分にはウレタン19が充填されないようにして、それ以外の部分に充填する。その結果、ウレタン19が充填されなかった部分には導風通路16が形成される。導風通路16は、空気導入口14と、内部空間100aのうちウレタン19が充填されてない部分から構成される。すなわち、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aにおいて、リブ11a,11bはウレタン19と導風通路16とを仕切っている。
なお、ウレタン19は振動吸収部材を構成する。
【0016】
エンジンヘッドカバー100の内部空間100aを通過する空気の流れについて、
図1を参照して説明する。
まず、空気導入口14の前方Fにはエンジン冷却用のファン30が設けられているが、このファン30の回転によって風W2が生成される。ファン30が空気導入口14の前方Fに設けられていることにより、ファン30は風W2を空気導入口14に送り込むことができる。この風W2は、エアフィルタ15によって埃等の異物を除去されるとともに、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aに形成された導風通路16に流れ込む。すなわち、ファン30はエンジンヘッドカバー100の内部空間100aに空気を送り込む。次に、導風通路16を前方から後方に向かって流通する空気W3は空気放出口18に向かって流れていく。そして、空気W3は、空気放出口18と燃料パイプ22aとの隙間18aから風W4となってエンジンヘッドカバー100の外部へ吹き出す(
図3参照)。すなわち、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aは外部に対して正圧状態となる。ここで、正圧状態とは、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aの気圧が空気放出口18の外部の気圧よりも大きく、内部空間100aの空気が空気放出口18を介して外部に放出される状態をいう。
なお、車両の走行時の走行風W1が空気導入口14に吹き付けた場合も同様に、走行風W1は空気導入口14から導風通路16に流入して、空気放出口18と燃料パイプ22aとの隙間18aから外部に吹き出す。
【0017】
以上より、空気導入口14から空気放出口18へ向かって空気が流通し、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aが正圧状態であることにより、空気放出口18と燃料インジェクタ22との隙間18aから空気が風W4となって吹き出す。そのため、空気放出口18と燃料インジェクタ22との隙間18aから埃等の異物が内部空間100aに侵入するという事態は防止される。その結果、シール部材17に埃が付着したり、シール部材17と内側カバー12との間、または、燃料インジェクタ22との間からエンジン内部へ異物が侵入したりすることが防止される。また、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aへの異物の侵入防止のために、インシュレータ等の別部品を取り付ける必要がないため、部品の組み付け作業の効率が向上し、製造コストも抑えることができる。
また、空気導入口14にエアフィルタ15が設けられることにより、内部空間100aに流入する空気(風W1,W2)からはあらかじめ異物が除去され、より確実に燃料インジェクタへの埃等の異物の侵入を防止することができる。
【0018】
また、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aにウレタン19が充填されることにより、燃料インジェクタ22の作動音等によるエンジン放射音を低減することができる。さらに、ウレタン19に導風通路16を形成することにより、空気W3をより効率よく空気導入口14から空気放出口18まで流通させることができる。
【0019】
また、空気導入口14の前方Fに、空気導入口14に空気を送りこむファン30が配置されることにより、走行風がない場合であっても、ファン30の回転によってエンジンヘッドカバー100の内部空間100aに空気を送り込むことができる。
【0020】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るエンジンヘッドカバー200について、
図4及び5を用いて説明する。
図4に示すように、エンジンヘッドカバー200の外側カバー41の前方には空気導入口44が設けられている。空気導入口44は、実施の形態1の空気導入口14のように突出して取り付けられてはおらず、外側カバー11に直接、開口として設けられている。また、
図5に示すように、外側カバー41には実施の形態1のようなリブは設けられていない状態で、ウレタン19に導風通路16が形成されている。このエンジンヘッドカバー200においても、
図4及び5に示すように、外部から空気導入口44に吹き付けた風W1,W2は、エンジンヘッドカバー100の内部空間100aの導風通路16を通過し(空気W3)、空気放出口18と燃料インジェクタ22との隙間18aから風W4として外部に吹き出す。
また、エンジンヘッドカバー200のその他の構成については、
図1〜3に示されるエンジンヘッドカバー100と同様であるので、以下詳細な説明は省略する。
【0021】
以上のように、エンジンヘッドカバー200の外側カバー41に空気導入口44を開口として設け、外側カバー41の内側にリブが形成されていないことにより、より外側カバー41の構造を簡易にすることができる。また、その上で実施の形態1と同様に、燃料インジェクタ22と内側カバー12との間からエンジン内部への埃等の異物の侵入を確実に防止することができる。
【0022】
なお、実施の形態1及び2において、空気放出口18は外側カバー11又は41に複数ではなく、ひとつ設けられてもよい。
また、エアフィルタ15の設けられる位置は空気導入口14又は44に限定されず、機器のある位置よりも空気導入口14又は44側であれば、導風通路16の途中すなわち内部空間100aに設けられてもよい。
また、導風通路16は、エンジンヘッドカバー100又は200に取り付けられる機器の数や空気放出口18の数に応じて、複数形成されてもよい。
またさらに、振動吸収部材はウレタン19に限定されず、他の材料であってもよい。
さらに、外側カバー11又は41を貫通してエンジンヘッドカバー100又は200に取り付けられる機器は燃料インジェクタ22に限定されず、他の機器であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
11,41 外側カバー(第2のカバー)、12 内側カバー(第1のカバー)、14,44 空気導入口、15 エアフィルタ、16 導風通路、18 空気放出口、19 ウレタン(振動吸収部材)、22 燃料インジェクタ(機器)、22a 燃料パイプ(機器)、30 ファン、100,200 エンジンヘッドカバー、100a 内部空間(空間)。