(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、電源投入後、実際に電解コンデンサの電解液が凍結しているか否かに係らず、画一的に所定時間だけ50%調光させるものである。このため、電解コンデンサの電解液が凍結していない通常環境下においても、不可避的に100%点灯になるまでに長時間がかかるという問題があった。
【0005】
この発明は、電解コンデンサの電解液が実際に凍結状況にあるか否かに応じて適切に点灯制御をすることができる点灯装置
および照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる点灯装置は、
電解コンデンサを有し、電源からの入力電圧で前記電解コンデンサを充電するチョッパ回路と、
前記電解コンデンサの充電電荷から生成した電流を発光素子に供給する点灯回路と、
前記電解コンデンサの温度に応じた出力を発する温度検出回路と、
前記発光素子に供給する電流を調節する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、起動開始後に前記発光素子への電流が目標電流値に至るように前記発光素子への電流を増加させ
、起動開始
後に前記発光素子への電流が予め定めた初期値から前記目標電流値に至るまでの時間である起動時間を前記温度検出回路
で検出された前記電解コンデンサの温度が低いほど長くなるように調整
し、かつ前記温度検出回路で検出された前記電解コンデンサの温度が低いほど前記起動時間内における前記発光素子への電流の増加率を低くすることを特徴とする。
【0007】
第2の発明にかかる点灯装置は、
電源と接続するチョッパ回路と、
電解コンデンサを備え、前記チョッパ回路の出力電流を前記電解コンデンサで平滑して発光素子に供給する点灯回路と、
前記電解コンデンサの温度に応じた出力を発する温度検出回路と、
前記発光素子に供給する電流を調節する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、起動開始後に前記発光素子への電流が目標電流値に至るように前記発光素子への電流を増加さ
せ、起動開始
後に前記発光素子への電流が予め定めた初期値から前記目標電流値に至るまでの時間である起動時間を前記温度検出回路
で検出された前記電解コンデンサの温度が低いほど長くなるように調整
し、かつ前記温度検出回路で検出された前記電解コンデンサの温度が低いほど前記起動時間内における前記発光素子への電流の増加率を低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電解コンデンサの電解液が実際に凍結状況にあるか否かに応じて適切に点灯制御をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態にかかる点灯装置100の構成の一部を示す模式的な側面図である。点灯装置100は、その構成部品が実装されるプリント基板PWBを備えている。
図1では、点灯装置100の構成部品のうち下記に述べる一部の構成を示しており、便宜上、他の構成を省略している。
【0011】
プリント基板PWBには、電解コンデンサC1が実装されている。電解コンデンサC1は、その内部に電解液を有しており、温度に応じて静電容量が変化するものである。
【0012】
プリント基板PWBの裏面側には、電解コンデンサC1と対向する位置に、温度センサSEN(サーミスタRm)が配置されている。温度センサSENの隣には温度センサSENの出力信号を受けるマイコンである制御回路50(CPU)が設けられており、これらは配線W1で接続している。制御回路50は、配線W2を介して、点灯回路40の点灯制御回路41と接続している。制御回路50は、温度センサSENが検出した温度に応じて、点灯制御回路41の制御内容を調整することができる。
【0013】
図2は、本発明の実施の形態にかかる点灯装置100の回路図である。
図1に記載の無い回路要素も詳細に図示している。点灯装置100は、光源モジュール200と接続し、光源モジュール200に直流電流を供給する。光源モジュール200は、直列接続された複数のLEDからなる。この実施の形態では、直列接続されるLEDの個数が5個の場合について説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されず、任意のLEDを直列にしてもよく、或いは、LEDを並列接続しても構わない。
【0014】
点灯装置100は、交流電源を整流するダイオードブリッジDBと、このダイオードブリッジDBに接続された昇圧チョッパ回路10とを備えている。昇圧チョッパ回路10は、ダイオードブリッジDBからの入力電圧を、より高い電圧に昇圧する回路である。昇圧チョッパ回路10には、接続されるLEDモジュールに電力を供給する点灯回路40(定電流回路)が接続されている。
【0015】
点灯装置100は、制御電源回路60を備えている。制御電源回路60は、昇圧チョッパ回路10及び点灯回路40に制御電源Vcc1を供給する。
【0016】
点灯装置100は、温度を検出する温度検出回路30を備える。この温度検出回路30は、上述した温度センサSENに内蔵された回路である。
【0017】
昇圧チョッパ回路10は、ダイオードブリッジDBが出力する出力電圧の電圧波形を検出する抵抗R1、R2を備えている。抵抗R1と抵抗R2で分圧された電圧はPFC制御回路11に入力されている。抵抗R1およびR2の直列回路の一端は、インダクタL1およびダイオードD1の直列回路を介して点灯回路40に接続している。
【0018】
昇圧チョッパ回路10は、スイッチング素子として設けられたMOS−FET(MOS電界効果トランジスタ)Q1と、このMOS−FETQ1とグランドとの間に直列に挿入された抵抗R3とを備えている。PFC制御回路11は、MOS−FETQ1のゲートに制御信号を与えることでそのオン/オフを制御することができる。
【0019】
昇圧チョッパ回路10は、電解コンデンサC1を備えている。電解コンデンサC1は、ダイオードD1のカソードと、グランドとの間に挿入されている。電解コンデンサC1は、平滑コンデンサとして機能することができる。
【0020】
温度検出回路30は、抵抗R4とサーミスタRmとが直列接続されて構成されている。サーミスタRmは電解コンデンサC1に近接して配置され、この電解コンデンサC1の温度に応じて、抵抗値が変化する。「電解コンデンサC1の温度」とは、より具体的には電解コンデンサC1の周囲部品(プリント基板PWB))を介して検出される温度であり、電解コンデンサC1の温度に依存する温度である。
【0021】
サーミスタRmには、具体的には、例えば、NTCサーミスタまたはPTCサーミスタを用いることができる。NTCサーミスタは、温度上昇に対して抵抗が減少するサーミスタである。PTCサーミスタは、温度上昇に対して抵抗が増大するサーミスタである。本実施の形態では、PTCサーミスタを用いる場合について説明する。
【0022】
温度検出回路30は、抵抗R4とサーミスタRmの中間点の電圧を、制御回路50に対して出力する。つまり、温度検出回路30は、抵抗R4とサーミスタRmによって分圧される分圧電圧を検出する。温度検出回路30は、サーミスタRmの抵抗値が変わることによって、抵抗R4とサーミスタRmの分圧比が変化する。したがって、温度検出回路30が出力する検出電圧は、電解コンデンサC1の温度変化に比例して変化する。
【0023】
点灯回路40は、MOS−FET(MOS電界効果トランジスタ)Q2と、このMOS−FETQ2のオン/オフを制御する点灯制御回路41とを備えている。点灯回路40は、MOS−FETQ2をスイッチング素子としたコンバータ回路である。コンデンサC2は、一端がMOS−FETQ2の出力に接続され他端がグランドに接続されており、平滑コンデンサとして機能する。
【0024】
ダイオードD2のカソードが、光源モジュール200のアノード側に接続し、ダイオードD2のアノードが、光源モジュール200のカソード側に接続する。抵抗R5の一端は、光源モジュール200のカソード、ダイオードD2のアノード、点灯制御回路41にそれぞれと接続し、抵抗R5の他端はグランドに接続している。
【0025】
制御回路50は、具体的にはマイコンである。制御回路50は、設定電圧および起動時間Tを対応付けたテーブルを記憶している。起動時間Tは、電源投入から目標電流値に到達するまでの時間である。本実施の形態では、起動時間Tは、徐々に出力電流を増加させていくことで交流電源投入時からLEDの最大点灯(100%点灯)に達するまでの時間である。
【0026】
制御回路50は、温度検出回路30が出力する検出電圧と、内部に設定される設定電圧と比較する。比較の結果、検出電圧と最も近い設定電圧が1つ決定され、その最も近い設定電圧に応じた起動時間Tがテーブルから読み出される。このような処理により、点灯回路40を起動する起動時間Tを決定することができる。
【0027】
設定電圧は、本実施の形態では
図6に示す表にあるとおり5段階に設定されている。ただし、本発明はこれに限られず、設定電圧は5段階に限らず任意の段階に区切って設定されていてもよく、数式の形で連続的に設定電圧と起動時間Tとを対応付けるものであってもよい。
【0028】
制御電源回路60は、制御電源Vcc1を生成して、点灯回路40の点灯制御回路41、昇圧チョッパ回路10のPFC制御回路11、および制御回路50それぞれに供給する。
【0029】
次に、
図3も参照して、本発明の実施の形態にかかる点灯装置100の動作を説明する。
図3は、本発明の実施の形態にかかる点灯装置100の動作を説明するための図である。
図3において、それぞれハッチングを付した領域は次の意味である。グラフVQ1が、昇圧チョッパ回路10のMOS−FETQ1のソースドレイン電圧VDSを示している。グラフIoが、点灯回路40の出力電流波形を示している。グラフVD2が、点灯回路40(バックコンバータ回路)におけるダイオードD2の両端電圧の波形を示している。
【0030】
図3(a)は、本実施の形態にかかる制御を行わない場合における、低温時(電解コンデンサC1の電解液が凍結しているとき)の不具合について説明するための図である。
図3(b)は、電解コンデンサC1の温度がtc1である場合に本実施の形態の起動シーケンスを起動時間T1で行った場合の電圧波形を示す。
図3(c)は、電解コンデンサC1の温度がtc2(但し、tc1>tc2)である場合に本実施の形態の起動シーケンスを起動時間T2で行った場合の電圧波形を示す。ただし、T1<T2である。
【0031】
本実施の形態では、制御回路50が、電解コンデンサC1の温度に応じて異なる起動シーケンスを実行する。具体的には、
図3(b)(c)に示すように、電解コンデンサC1の温度が低いほど、起動時間Tを長く設定する。
【0032】
次に、実施の形態にかかる点灯装置100において実行される具体的な制御内容を説明する。まず、点灯装置100に交流電源が投入されると、制御電源回路60が起動して制御電源Vcc1を生成し、その制御電源Vcc1を受けてPFC制御回路11、点灯制御回路41および制御回路50が起動する。
【0033】
このとき、制御回路50は、温度検出回路30が出力する検出電圧を読み取る。制御回路50は、読み取った検出電圧を、
図6に示すテーブル内の設定電圧と比較して、検出電圧と最も近い設定電圧に対応付けられた起動時間Tを読み取る。
【0034】
次に、制御回路50は、読み取った起動時間Tに基づいて、目標電流値に向かって徐々に出力電流を増加させるように点灯制御回路41に制御信号を出力する。目標電流値とは、光源モジュール200のLEDを目標の明るさ(例えば、最大の明るさ)で点灯するために必要な電流の大きさである。この出力電流の増加は、起動時間Tに達したときに点灯回路40の出力電流が最大(100%)となるように行われる。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、目標電流値を最大未満の出力電流に設定してもよい。
【0035】
目標電流値を点灯回路40に出力させるための制御情報(例えば、スイッチ素子であるMOS−FETQ1、Q2のオン時間の割合)は、制御回路50に備える記憶回路に予め記憶・設定しておく。
【0036】
このようにすることによって、制御回路50は、電解コンデンサC1の温度に応じて、起動時間Tを変化させることができる。
【0037】
電解コンデンサC1の電解液が凍結している場合、この起動時間Tの間、電解コンデンサC1に印加されている電圧の振幅幅(振動)を抑えることができる。その結果、電解コンデンサC1に印加される電圧が点灯装置を構成する電子部品の定格電圧を超える恐れがなくなる。
【0038】
ここで、低温時(電解コンデンサC1の電解液が凍結しているとき)の不具合について、さらに詳細に説明する。
【0039】
電解コンデンサC1の電解液が凍結している場合、電解コンデンサC1のコンデンサ容量は通常(電解液が凍結していないとき)と比較して低くなり、また、ESR(等価直列抵抗)の値が高くなる。そのため、昇圧チョッパ回路10が動作したとき、電解コンデンサC1に充電される電荷量が少なくなる。充電電荷量が少なくなると、点灯回路40がLEDに最大電流を供給した場合、電解コンデンサC1の電荷が直ぐに少なくなって電圧が低下し、それを補うために昇圧チョッパ回路10は出力電圧を高めようとする。
【0040】
したがって、
図3(a)に示すように、交流電源を投入してから、電解コンデンサC1の電圧は激しく振動(振幅が大きい)してしまい、符号Xで示す丸印に現れているように昇圧電圧がオーバーシュートしてしまう恐れもある。その結果、点灯装置を構成する電子部品の定格電圧を超えてしまう恐れがある。また、点灯回路40はLEDを安定的に点灯させることができずに、LEDがチラついたり、点滅したりしてしまう要因となる。
【0041】
この点、本実施の形態にかかる点灯装置100によれば、電解コンデンサC1の温度に応じて、点灯回路40の起動時間Tを変化させることができる。このため、電解コンデンサC1の電解液が凍結している場合には、点灯回路40がLEDにいきなり最大電流を供給(100%点灯)させずに徐々に出力電流を増加させることができる。従って、電解コンデンサC1に印加される電圧が電子部品の定格電圧を越えることがなく、また、LEDがチラついたり、点滅したりする恐れを減らせる。
【0042】
また、電解コンデンサC1の温度に応じて起動時間Tを設定するので、電解コンデンサC1の電解液が凍結しない温度環境下にあっては、起動時間Tを短くすることもできる。従って、電解コンデンサC1が凍結していない環境下で無駄な起動時間が費やされるのを抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電解コンデンサC1の電解液が凍結している場合には、徐々に点灯回路の出力電流を増加させる時間を長く設定し、調光点灯から全光点灯(100%点灯)させることができる。このため、昇圧チョッパ回路の電解コンデンサに印加される電圧変動を抑えることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、電解液が液状化している場合は、電源投入時に瞬時に全光点灯(100%点灯)とすることができる。このため、通常環境下では瞬時に点灯することが可能となる。
【0045】
なお、この
図1に示す点灯装置100は、点灯回路40のコンデンサC2にフィルムコンデンサなど電解液を含まない場合について説明しているが、コンデンサC2に電解コンデンサを用いてもよい。その場合、コンデンサC2が置かれる温度環境下は、電解コンデンサC1が置かれる温度環境下とほぼ等しい。従って、電解コンデンサC1の温度からコンデンサC2の温度もほぼ同じものとして、制御回路50が点灯回路40を制御するようにしてもよい。
【0046】
また、
図4に示すように、電解コンデンサC1に対して温度検出回路30を備えることなく、電解コンデンサC2aの近傍に温度検出回路30aを備えるようにしてもよい。
【0047】
また、
図5に示すように、電解コンデンサC1と電解コンデンサC2aにそれぞれ温度検出回路30、30aを備えるようにしてもよい。これにより、正確に電解コンデンサC1,C2aそれぞれの温度検知を行うことができる。
【0048】
なお、出力電流の増加の仕方は様々に考えられるが、例えば、
図7乃至9に示すようにしてもよい。
図7乃至9において、T1、T2、T3は、それぞれ制御回路50が検出電圧に応じて読み取った異なる起動時間Tを示しており、T1<T2<T3の関係となっている。
【0049】
図7は、起動時T0から、目標電流値(本実施の形態では100%全光点灯となる電流値)に向かって、各起動時間T1、T2,T3内に出力電流を増加率一定で単純増加させるものである。起動時間T1、T2,T3ごとに、傾き(電流上昇率)が異なっている。
【0050】
図8は、起動時に50%調光点灯から3段階で各起動時間T1、T2,T3内に出力電流を目標電流値に到達させるものである。例えば、起動時間T1の場合には、一段目の増加を時刻t11で行い、二段目の増加を時刻t12で行う。起動時間T2の場合には、一段目の増加を時刻t21で行い、二段目の増加を時刻t22で行う。起動時間T3の場合には、一段目の増加を時刻t31で行い、二段目の増加を時刻t32で行う。それぞれ、起動時間を増加段数(3段)でちょうど等分した時間ごとに、電流を上昇させている。
【0051】
図9は、起動時に50%調光点灯から目標電流値に向けて各起動時間T1、T2,T3内に出力電流を増加率一定で単純増加させるものである。起動時間T1、T2,T3、傾き(電流上昇率)が異なっている。
【0052】
また、本実施の形態では、制御回路50は点灯回路40を制御して、電解コンデンサC1の電圧振動を抑制する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。
【0053】
図10は、本発明の実施の形態の変形例にかかる点灯装置300の回路図である。
図10に示すように、制御回路50を昇圧チョッパ回路10のPFC制御回路11に接続しても良い。このような回路において、制御回路50が昇圧チョッパ回路10(具体的には、MOS−FETQ1)を制御して起動時間Tを調整することにより、電解コンデンサC1の電圧振動を抑制するようにしてもよい。あるいは、制御回路50が点灯回路40と昇圧チョッパ回路10の両方を制御することにより、起動時間Tを調整しても良い。
【0054】
また、本実施の形態では、温度検出回路30が検出する検出電圧を制御回路50が直接検出して電解コンデンサC1の温度を検出する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。温度検出回路30と制御回路50との間にアンプを設けて、アンプによって温度検出回路30の検出電圧の電圧値を増幅してもよい。また、温度検出回路30の検出電圧と基準電圧とを比較して、その比較結果をアンプに出力させたりするようにしてもよい。