(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本発明の凝縮水処理機構は、エンジンの吸排気系に適用される。このため、本発明の凝縮水処理機構の前提構成となるエンジン及びその吸排気系の構成を説明し、その次に凝縮水処理機構の構成を説明し、その次に凝縮水処理機構を制御する制御装置の構成を説明する。
なお、本実施形態でいう上流及び下流は、吸気,排気又は凝縮水の流れる方向を基準にしている。
【0019】
〔一実施形態〕
〔1.構成〕
〔1−1.エンジン及びその吸排気系〕
まず、
図1を参照して、エンジン並びにその吸気系及び排気系の構成を説明する。
〔1−1−1.エンジン〕
エンジン1は、ディーゼルエンジンであり、シリンダヘッド2,シリンダブロック3及びクランクケース4を有している。なお、エンジン1は、図示省略するが気筒を複数有する多気筒エンジンとして構成されている。
【0020】
シリンダヘッド2には、吸気ポート2a及び排気ポート2bが燃焼室5に連通して設けられ、また、各気筒に対応して燃料を噴射するインジェクタ2cが設けられている。なお、詳細は図示しないが、各インジェクタ2cは燃料タンクから燃料を供給するサプライポンプ(高圧ポンプ)を介したコモンレールに接続されており、サプライポンプにより供給された高圧燃料がコモンレール内から各インジェクタ2cに送られて対応する気筒内に噴射され、この噴射燃料と吸気とが混合されて燃焼されるようになっている。
【0021】
シリンダブロック3には、その内部に円筒状の空間(以下、「シリンダ」という)が形成され、このシリンダ内をピストン3aが往復摺動可能に設けられている。燃焼室5は、シリンダブロック3とピストン3aとシリンダヘッド2とに囲繞されて形成されている。
【0022】
クランクケース4には、その内部にエンジンオイル6が貯留され、クランク軸4aが収容されている。このクランク軸4aは、その入力側がピストン3aとコネクティングロッド3bを介して接続され、その出力側がエンジン1の出力軸(図示略)と連結されている。したがって、クランク軸4aの回転数は、エンジン1の回転数と同じ又は対応したものとなっている。
また、エンジン1には、クランク軸4aの回転角度を検出し、この回転角度からエンジン1の回転数(以下、「エンジン回転数」という)を検出するクランク角センサ90が付設されている。
【0023】
〔1−1−2.吸気系〕
次に、エンジン1の上流側に設けられた吸気系の構成を説明する。
吸気系には、吸気管10及びこれに介装又は付設された各装置と、吸気管10とエンジン1の吸気ポート2aとの間に介装されているインテークマニホールド(以下、「インマニ」と略称する)19とが備えられている。
吸気管10及びこれに介装又は付設された各装置とインマニ19とは、それぞれの内部に吸気通路10A(
図1では一箇所にのみ符号を付す)を形成している。
【0024】
以下、吸気系の構成を上流から順に説明する。
吸気管10には、上流から順にエアクリーナ20,第一スロットル弁21,ターボチャージャ(過給機)50のコンプレッサ50a,インタークーラ22,第二スロットル弁23が配置されている。
【0025】
エアクリーナ20は、吸入される新気中の異物を取り除くフィルタである。このエアクリーナ20には、新気中の湿度(水蒸気量)を検出する湿度センサ91が付設されている。また、エアクリーナ20の直下流には、エアクリーナ20を通過した新気の流速(単位時間当たりの流量,以下、「新気量」という)を検出するエアフローセンサ92が設けられている。
【0026】
第一スロットル弁21は、そのスロットル開度によって、新気量を調整するものである。なお、第一スロットル弁21よりも下流側であってターボチャージャ50のコンプレッサ50aの上流側には、後述する低圧EGRシステム51が接続されており、第一スロットル弁21の調整によって、低圧EGRシステム51により還流される排気量も間接的に調整される。
【0027】
ターボチャージャ50は、吸気を圧縮するものである。具体的には、排気により回転されるタービン50bと同軸に設けられたコンプレッサ50aを回転させることにより、ターボチャージャ50を流通する吸気が圧縮される。
インタークーラ22は、吸気の冷却装置である。このインタークーラ22では、ターボチャージャ50により圧縮されて上昇した吸気温度が低下され、吸気の空気密度の低下が回復される。
【0028】
インタークーラ22よりも下流側であって第二スロットル弁23よりも上流側の吸気管10は、吸気管10のなかで最も鉛直高さが低い部分(以下、「最低部」という)10aを有する。この最低部10aは、インマニ19の鉛直高さよりも低くなっている。すなわち、最低部10aは、吸気通路10Aのなかで鉛直高さが最も低い部分を形成している。なお、最低部10aには、後述する凝縮水処理機構60が接続されている。
【0029】
第二スロットル弁23は、そのスロットル開度によって、吸気量を調整するものである。なお、第二スロットル弁23よりも下流側であってインマニ19よりも上流側には、高圧EGRシステム52が接続され、また、第二スロットル弁23の上流側に後述する凝縮水処理機構60が接続されている。この第二スロットル弁23の調整によって、高圧EGRシステム50により還流される排気量が間接的に調整される。
インマニ19には、連続的に空燃比を検出するリニア空燃比センサ(いわゆるLAFS)93が設けられている。
【0030】
〔1−1−3.排気系〕
次に、エンジン1の下流側に設けられた排気系の構成について説明する。
排気系には、エキゾーストマニホールド(以下、「エキマニ」と略称する)39と、この下流側に接続された排気管30及びこれに介装又は付設された各装置とが備えられている。
エキマニ39と排気管30及びこれに介装又は付設された各装置とは、それぞれの内部に排気通路30A(
図1では一箇所にのみ符号を付す)を形成している。
【0031】
以下、排気系の構成を上流から順に説明する。
エキマニ39には、後述する高圧EGRシステム52が接続されている。
排気管30には、上流から順に上述のターボチャージャ50のタービン50b,一次排気処理装置40,二次排気処理装置41が配置されている。
【0032】
一次排気処理装置40は、排気中の粒子状物質(Particulate Matter,以下、「PM」と略称する)を捕集するためのものである。この一次排気処理装置40は、上流側のDOC(Diesel Oxidation Catalyst)40aと、下流側のDPF(Diesel Particulate Filter)40bとを有する。
【0033】
DOC40aは、排気中の成分に対する酸化能をもった触媒であり、金属或いはセラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒を担持したものである。このDOC40aによって酸化される排気中の成分としては、NO(一酸化窒素),未燃燃料中のHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)等が挙げられる。
【0034】
DPF40bは、排気中に含まれるPMを捕集する多孔質フィルタであり、上流側と下流側とを連通する通路が壁体を介して多数並設されているとともに、通路の上流側開口と下流側開口とが交互に閉鎖(封止)されている。このDPF40bの壁体には、PMの大きさに見合った大きさの多数の細孔が形成されている。このため、PMを含んだ排気がDPF40bを流通すると、壁体内や壁体表面にPMが捕集される。
また、一次排気処理装置40には、DPF40bの上流と下流との差圧を検出する差圧センサ94が付設されている。
【0035】
一次排気処理装置40では、DOC40aによって排気中の還元成分を酸化(燃焼)させて酸化熱(燃焼熱)を発生させることにより、DOC40aの下流側のDPF40bを昇温させ、DPF40bに捕集されたPMが焼却(DPF再生)されるようになっている。このように、一次排気処理装置40は、酸化熱による排気昇温機能を有している。
また、DOC40aによる酸化熱により、一次排気処理装置40下流側の二次排気処理装置41に吸蔵された硫黄成分が放出(いわゆるSパージ)されるようになっている。
なお、一次排気処理装置40よりも下流側であって二次排気処理装置41よりも上流側には、上流から順に、後述する凝縮水処理機構60及び低圧EGR51の各要部が接続されている。
【0036】
二次排気処理装置41は、排気中に含まれるNOxを浄化するためのものである。具体的に言えば、二次排気処理装置41は、バリウムやカリウムなどの塩基類を吸蔵材に使用し、NOxを硝酸塩として吸蔵するものである。このように、二次排気処理装置41は、発熱せずに排気を浄化処理する。
この二次排気処理装置41の下流側の排気通路30Aには、後述する凝縮水処理機構60が二箇所に接続されている。
【0037】
〔1−1−4.EGR〕
本吸排気系には、吸気系と排気系に跨って低圧EGRシステム51及び高圧EGRシステム52が設けられている。これらのEGRシステム51,52は、排気を吸気に還流させることによりNOxを低減させるためのものである。
【0038】
低圧EGRシステム51は、一次排気処理装置40よりも下流であって二次排気処理装置41よりも上流を流通する排気を第一スロットル弁21よりも下流であってターボチャージャ50のタービン50aよりも上流の吸気通路10Aに還流させるものである。この低圧EGRシステム51は、排気側の端部である一端部51aと吸気側の端部である他端部51bとを接続する低圧EGR管51cと、この低圧EGR管51cに介装された低圧EGRクーラ51d及び低圧EGR弁51eとを有する。
【0039】
低圧EGR管51cの内部には、還流される排気が流通する低圧EGR通路51Aが形成される。この低圧EGR管51cの一端部51aは、一次排気処理装置40よりも下流側であって二次排気処理装置41よりも上流側に接続されている。一方、低圧EGR管51cの他端部51bは、第一スロットル弁21よりも下流側であってターボチャージャ50のコンプレッサ50aよりも上流側に接続されている。
低圧EGRクーラ51dは、還流される排気の温度を低下させる冷却装置である。この低圧EGRクーラ51dよりも他端部51b側(吸気側)には、低圧EGR弁51eが設けられている。
低圧EGR弁51eは、低圧EGRシステム51による排気の還流量を調整するものであり、開度調整可能な弁として構成されている。
【0040】
また、高圧EGRシステム52は、エキマニ39を流通する排気を吸気通路10Aの第二スロットル弁23よりも下流側の部分に還流させるものである。この高圧EGRシステム52は、排気側の端部である一端部52aと吸気側の端部である他端部52bとを接続する高圧EGR管52cと、この高圧EGR管52cに介装された高圧EGRクーラ52d及び高圧EGR弁52eとを有する。
【0041】
高圧EGR管52cの内部には、還流される排気が流通する高圧EGR通路52Aが形成される。この高圧EGR管52cの一端部52aはエキマニ39に接続されている。一方、高圧EGR管52cの他端部52bは、第二スロットル弁23よりも下流側であってインマニ19よりも上流側に接続されている。
高圧EGRクーラ52dは、低圧EGRクーラ51dと同様に構成された冷却装置であり、また、高圧EGR弁52eは、低圧EGR弁51eと同様に構成された開度調整可能な弁である。
【0042】
〔1−2.凝縮水処理機構〕
次に、上記したエンジン1の吸排気系に適用される凝縮水処理機構60の構成について説明する。
凝縮水処理機構60は、ターボチャージャ50で圧縮された吸気がインタークーラ22で冷却されることにより生成された凝縮水を処理するための機構である。具体的には、最低部10aに溜まろうとする凝縮水を吸気通路10Aの系外に導いて貯留し、この凝縮水を排気通路30Aに排出させるためのものである。
【0043】
このために、凝縮水処理機構60は、凝縮水が流通する凝縮水通路60Aを内部に形成する凝縮水管61と、凝縮水を貯留するタンク(貯留部)62と、背圧用切替弁63と、開閉弁64と、背圧用通路65Aを内部に形成する背圧用配管65と、再生用通路66Aを内部に形成する再生用配管66と、再生用切替弁67と、フィルタ68とを有する。凝縮水管61には、凝縮水の流通する順に、背圧用切替弁63,タンク62,開閉弁64,再生用切替弁67,フィルタ68が設けられている。また、背圧用切替弁63には背圧用配管65が接続され、再生用切替弁67には再生用配管66が接続されている。
【0044】
なお、下記では、凝縮水通路60Aを四つに分けたものを用いて説明する。具体的には、凝縮水の流通する順に、背圧用切替弁63までの第一凝縮水通路61Aと、背圧用切替弁63からタンク62までの第二凝縮水通路61Bと、タンク62から再生用切替弁67までの第三凝縮水通路61Cと、再生用切替弁67よりも下流の第四凝縮水通路61Dの四つに分けて説明する。
以下、凝縮水管61,タンク62,背圧用切替弁63,背圧用配管65,開閉弁64,再生用切替弁67,再生用配管66,フィルタ68の順に各構成を説明する。
【0045】
凝縮水管61は、凝縮水が流入する側の端部(凝縮水通路60Aの一端部61aと対応する)が吸気管10の最低部10aに接続され、凝縮水が流出する側の端部(凝縮水通路60Aの他端部61bと対応する)が排気通路30Aを形成する排気管30に接続されている。この凝縮水管61の他端部61bは、排気処理装置40,41の何れよりも下流に接続されている。
【0046】
図2に示すように、凝縮水通路60Aの一端部61a(何れも破線で示す)が接続される吸気管10の最低部10aには、複数のスリット11(一箇所にのみ符号を付す)が設けられている。
スリット11は、吸気管10に沿う吸気の流通を妨げないような大きさ又は配置で設けられている。ここでは、複数のスリット11が千鳥状に配置され、各スリット11の長手方向が吸気の流通方向に沿うように配向されたものを例示する。複数のスリット11の千鳥状配置によれば、スリット11の大きさの設定自由度を確保しやすく、各スリット11の長手方向を吸気の流通方向に沿わせることにより、吸気の流通を妨げ難くすることができる。ただし、スリット11の配向及び配置は何れも任意であり、その他の配向や配置を採ることができる。
【0047】
図1に示すように、タンク62には、その上部に凝縮水の流入口62aが形成され、その下部に凝縮水の流出口62bが形成されている。言い換えれば、流入口62aは流出口62bよりも高い部分に設けられている。つまり、タンク62は、貯留された凝縮水により流出口62bが浸漬されやすく、流入口62aが貯留された凝縮水により浸漬されにくくなっている。
【0048】
背圧用切替弁63は、凝縮水管61の凝縮水が流入する側の端部(凝縮水通路60Aの一端部61a)とタンク62との間に介装されており、流入側の二系統の接続部としての第一流入接続部63a及び第二流入接続部63bと、流出側の一系統の接続部としての流出接続部63cとが設けられている。この背圧用切替弁63は、(i)流入接続部63a,63bの一方と流出接続部63cとが連通されるとともに、流入接続部63a,63bの他方と流出接続部63cとの連通が遮断された状態と、(ii)流入接続部63a,63bの他方と流出接続部63cとが連通されるとともに、流入接続部63a,63bの一方と流出接続部63cとの連通が遮断された状態と、を切り替えるものである。
ここでは、第一流入接続部63a及び流出接続部63cのそれぞれに凝縮水管61が接続され、第二流入接続部63bに背圧用配管65が接続されている。
【0049】
このため、背圧用切替弁63は、(i)第一凝縮水通路61Aと第二凝縮水通路61Bとが連通され、且つ、背圧用通路65Aと第二凝縮水通路61Bとの連通が遮断された状態と、(ii)第一凝縮水通路61Aと第二凝縮水通路61Bとの連通が遮断され、且つ、背圧用通路65Aと第二凝縮水通路61Bとが連通された状態と、を切り替えるようになっている。
【0050】
言い換えれば、背圧用切替弁63は、(i)凝縮水通路61Aの一端部61aとタンク62とを連通し、且つ、背圧用通路65Aを介した排気通路30Aとタンク62との連通を遮断する状態(以下、「貯留状態」という)と、(ii)凝縮水通路61Aの一端部61aとタンク62との連通を遮断し、且つ、背圧用通路65Aを介した排気通路30Aとタンク62とを連通する状態(以下、「排出状態」という)と、を切り替え可能に構成されている。
【0051】
背圧用配管65は、排気が流入する側の端部(背圧用通路65Aの一端部65aと対応)が排気処理装置40,41よりも下流側の排気管30に接続され、排気が流出する側の端部(背圧用通路65Aの他端部65bと対応)が上記の背圧用切替弁63に接続されている。この背圧用配管65の一端部65aは、凝縮水管61よりも下流側の排気管30に接続されている。
【0052】
開閉弁64は、タンク62と再生用切替弁67との間(第三凝縮水通路61C)に介装されている。この開閉弁64は、その開度を調整可能な弁であり、この開閉弁64の開度に応じて、開閉弁64が配設された第三凝縮水通路61Cにおける凝縮水の流通度合い(排出度合い)が調整される。
【0053】
再生用切替弁67は、タンク62とフィルタ68との間に介装されており、流入側の二系統の接続部としての第一流入接続部67a及び第二流入接続部67bと、流出側の一系統の接続部としての流出接続部67cとが設けられている。この再生用切替弁67は、上記の背圧用切替弁63と同様に、流入接続部67a,67bの何れか一方と流出接続部67cとを連通したときには、流入接続部67a,67bの何れか他方と流出接続部67cとの連通を遮断するようになっている。
ここでは、第一流入接続部67a及び流出接続部67cのそれぞれに凝縮水管61が接続され、第二流入接続部67bに再生用配管66が接続されている。
【0054】
このため、再生用切替弁67は、(I)第三凝縮水通路61Cと第四凝縮水通路61Dとが連通され、且つ、再生用通路66Aと第四凝縮水通路61Dとの連通が遮断された状態と、(II)第三凝縮水通路61Cと第四凝縮水通路61Dとの連通が遮断され、且つ、再生用通路66Aと第四凝縮水通路61Dとが連通された状態と、を切り替えるようになっている。
【0055】
言い換えれば、再生用切替弁67は、(I)タンク62とフィルタ68を介した排気通路30Aとを連通し、且つ、再生用通路66Aとフィルタ68を介した排気通路30Aとの連通を遮断する状態(以下、「凝縮水浄化状態」という)と、(II)タンク62とフィルタ68を介した排気通路30Aとの連通を遮断し、且つ、再生用通路66Aとフィルタ68を介した排気通路30Aとを連通する状態(以下、「再生状態」という)と、を切り替え可能に構成されている。
【0056】
再生用配管66は、排気が流入する側の端部(再生用通路66Aの一端部66aと対応)が、一次排気処理装置40よりも下流側であって二次排気処理装置41よりも上流側の排気管30に接続され、また、排気が流出する側の端部(再生用通路66Aの他端部66bと対応)が、上記の再生用切替弁67に接続されている。この再生用配管66の一端部65aは、一次排気処理装置40の直下流に接続されることが好ましい。
フィルタ68は、加熱により浄化能力を再生可能な再生フィルタである。このフィルタ68は、凝縮水中に含まれうる異物を吸着又は除去するものであればよく、例えば活性炭フィルタを用いることができる。
【0057】
〔1−3.制御装置〕
次に、凝縮水処理機構60を制御する制御装置100の構成を説明する。なお、制御装置100は、マイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置である。
【0058】
制御装置100は吸排気系の広汎なシステムを制御するものであり、その入力側に制御に用いる各種情報を検出するセンサ90〜94が接続され、その出力側に制御対象となる弁21,23,51e,52e,63,64,67が接続されている。この制御装置100は、センサ90〜94による検出情報に基づいて、弁21,23,51e,52e,63,64,67の各開度を調整することにより各制御を実施するものである。
本実施形態では、制御装置100により実施される制御のうち、EGRシステム51,52の制御及び凝縮水処理機構60の制御に着目して説明する。
【0059】
〔1−3−1.EGRシステムの制御〕
低圧EGRシステム51は、主に低圧EGR弁51eの開度が調整されることにより制御され、副次的に第一スロットル弁21の開度が調整されることにより制御される。これらの弁51e,21の開度が調整されることで排気の還流量が制御され、低圧EGRシステム51が制御される。
【0060】
同様に、高圧EGRシステム52は、主に高圧EGR弁52eの開度が調整されることにより制御され、副次的に第二スロットル弁23の開度が調整されることにより制御される。これらの弁52e,23の開度が調整されることで排気の還流量が制御され、高圧EGRシステム52が制御される。
制御装置100は、センサ90〜94による検出情報に基づいて、上記のEGRシステム51,52にかかる弁21,23,51e,52eの開度を制御し、排気の還流量を制御する。
【0061】
〔1−3−2.凝縮水処理機構の制御〕
凝縮水処理機構60は、開閉弁64の開度が調整され、切替弁63,67が切り替えられることにより制御される。以下、凝縮水処理機構60の制御について、凝縮水を貯留する貯留制御と、凝縮水を排出する排出制御と、フィルタ68を再生する再生制御とを説明する。
【0062】
〔1−3−2−1.貯留制御〕
貯留制御は、凝縮水を吸気通路10Aからその系外に導いてタンク62に貯留するものである。この貯留制御では、背圧用切替弁63が上記(i)の貯留状態にされ、再生用切替弁67が上記(II)の再生状態にされる。なお、貯留制御では、開閉弁64は制御されず、その開度は任意である。
【0063】
〔1−3−2−2.排出制御〕
排出制御は、タンク62に貯留された凝縮水をインマニ19により形成される吸気通路10Aに排出するものである。この排出制御では、背圧用切替弁63が上記(ii)の排出状態にされ、再生用切替弁67が上記(I)の凝縮水浄化状態にされ、開閉弁64が少なくとも開放状態とされる。なお、開閉弁64は、所望の凝縮水の排出度合に応じて開度調整される。
【0064】
〔1−3−2−3.再生制御〕
再生制御は、フィルタ68を加熱することで浄化能力を再生させるものである。この再生制御では、各弁63,64,67の状態は貯留制御と同様であり、背圧用切替弁63が上記(i)の貯留状態にされ、再生用切替弁67が上記(II)の再生状態にされる。このため、再生制御及び貯留制御は、実質的に同一であり、同時に実施される。
【0065】
〔1−3−2−4.制御条件〕
制御装置100は、貯留制御,排出制御及び再生制御を各種の条件に応じて実施する。この制御装置100は、湿度センサ91やエアフローセンサ92の検出情報に基づいて、凝縮水の生成量を推定演算している。さらに、制御装置100は、推定演算した凝縮水の生成量と予め記憶されたタンク62の容量とに基づいて、タンク62が凝縮水で満杯か否かを判定している。
【0066】
この制御装置100は、タンク62が凝縮水で満杯でない限り、貯留制御,排出制御及び再生制御の何れの制御を実施してもよいが、各制御を実施する各条件を以下に例示する。なお、タンク62が凝縮水で満杯であると推定されると、排出制御が実施される。
例えば、制御装置100は、推定演算した凝縮水の生成量が所定量未満であれば、貯留制御を実施し、また、推定演算した凝縮水の生成量が所定量以上であれば、排出制御を実施する。ここでいう所定量としては、タンク62の容量の半分や1/3といった量を用いることができる。
【0067】
また、制御装置100は、DPF再生時やSパージ時などの一次排気処理装置40において昇温による排気を浄化処理するときに、再生制御を実施する。このときには、消音機能付きの一次排気処理装置40の下流に昇温された排気が流通するため、この昇温された排気がフィルタ68に導入される。これに替えて又は加えて、制御装置100は、所定期間よりも長いこと再生制御が実施されていないときに再生制御を実施してもよい。
【0068】
〔2.作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかる凝縮水処理機構60は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
新気の吸気は、エアクリーナ20を経て、第一スロットル弁21のスロットル開度に応じて絞られる。この下流の低圧EGRシステム51の他端部51bでは、低圧EGR弁51eの開度に応じて還流された排気と新気とが合流した吸気がターボチャージャ50のコンプレッサ50aにより圧縮される。
【0069】
通常、排気には、燃焼により生成された水蒸気が含まれるため、新気よりも多くの水蒸気が含まれている。このため、排気を含む吸気がターボチャージャ50で圧縮されインタークーラ22で冷却されることにより、吸気中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生成される場合がある。
この凝縮水は、吸気管10の最低部10aに溜まろうとするが、この最低部10aに接続された凝縮水処理機構60の一端部61aから吸気系の系外に導かれる。
【0070】
この場合、貯留制御が実施されていれば、凝縮水は、吸気管10の最低部10aから第一凝縮水通路61A及び第二凝縮水通路61Bを通ってタンク62に貯留される。このとき、貯留状態の背圧用切替弁63と再生状態の再生用切替弁67とによりタンク62と排気通路30Aとの連通が遮断されているため、タンク62に貯留された凝縮水は、排気通路30Aに排出されることはない。また、貯留制御の実施時には、再生制御が同時に実施されることになり、再生用切替弁67により再生状態にされることでフィルタ68への凝縮水の流入が遮断され、フィルタ68を排気が流通する。凝縮水の温度よりも排気温の方が高いのが通常であり、フィルタ68は加熱され、その浄化能力が再生される。
【0071】
また、排出制御が実施されると、背圧用通路65Aを介した排気通路30Aの排気圧がタンク62に貯留された凝縮水を押し出す背圧となる。このとき、開状態の開閉弁64及び凝縮水浄化状態の再生用切替弁67により第三凝縮水通路61C及び第四凝縮水通路61Dが連通されているため、タンク62に貯留された凝縮水は、背圧により押し出され、フィルタ68で浄化処理されて排気通路30Aに排出される。
したがって、本実施形態の凝縮水処理機構60によれば、凝縮水が吸気通路10Aに溜まることが無く、凝縮水の巻き上げを防止することができる。
【0072】
背圧用切替弁63により貯留状態に切り替えられたときには、排気通路30Aとタンク62との連通が遮断され、タンク62に凝縮水を貯留することができる。また、背圧用切替弁63により排出状態に切り替えられたときには、吸気通路10Aに接続された凝縮水通路60Aの一端部61aとタンク62との連通が遮断されつつ、排気通路30Aとタンク62とが連通されるため、吸気圧を確保(いわゆるブースト抜けを回避)してエンジン1の性能を確保しながら、タンク62に貯留された凝縮水を排気通路30Aに排出することができる。このとき、凝縮水は吸気通路10Aに排出されないので、凝縮水の燃焼室5への流入による不具合を回避することができる。
【0073】
このように、凝縮水を貯留するタンク62及びこれよりも上流側に介装された背圧用切替弁63と、背圧用切替弁63と排気通路30Aとに接続された背圧用通路65Aとを備えているため、凝縮水の巻き上げを防止し、適切に凝縮水を処理することができる。
【0074】
背圧用通路65Aの一端部65a、即ち、排気の流入口が排気通路30Aの排気処理装置40,41よりも下流側に接続されているため、浄化処理された排気を用いて凝縮水を排出することができる。このため、排ガス性能を確保することができる。
凝縮水通路60Aのタンク62よりも下流側にはフィルタ68が備えられているため、凝縮水を浄化して排出することができる。
【0075】
具体的には、再生制御が実施され、再生用切替弁67により再生状態に切り替えられたときには、フィルタ68による凝縮水の浄化を停止して、フィルタ68に一次排気処理装置40で加熱された排気を流通させることができる。これにより、フィルタ68の浄化能力を再生することができる。
また、排出制御が実施され、再生用切替弁67により凝縮水浄化状態に切り替えられたときには、タンク62とフィルタ68を介した排気通路30Aとが連通され、凝縮水をフィルタ68で浄化して排気通路30Aに排出することができる。
【0076】
再生用通路66Aの一端部66aは、排気通路30Aの一次排気処理装置40よりも下流側であって二次排気処理装置41よりも上流側に接続されるため、加熱された排気の温度の低下を抑制しながら排気をフィルタ68に導入することができる。これにより、フィルタ68を効率よく再生することができる。特に、再生用通路66Aの一端部66aが、一次排気処理装置40の直下流に接続されていれば、更に効率よくフィルタ68を再生することができる。
【0077】
背圧用通路65Aの一端部65aは、一次排気処理装置40よりも下流側に介装された二次排気処理装置41よりも更に下流側に接続されているため、背圧用通路65Aに導入される排気は、一次排気処理装置40で浄化処理され、さらに、二次排気処理装置41で浄化処理されたものであるので、フィルタ68による浄化処理の負担を軽減させることができる。
凝縮水通路60Aにおけるタンク62と再生用切替弁67との間には、開度を調整可能な開閉弁64が介装されるため、凝縮水の排出度合を調整することができる。
【0078】
凝縮水通路60Aの一端部61aは、吸気通路10Aの鉛直高さが最も低い部分を形成する最低部10aに接続されているため、効率良く凝縮水を吸気系外に導くことができる。
凝縮水通路60Aの一端部61aは、吸気通路10Aを形成する吸気管10の最低部10aに形成されたスリット11であるため、吸気の流通を妨げることがなく、凝縮水を凝縮水処理機構60に導入することができる。
【0079】
このように、凝縮水処理機構60の一端部61aよりも下流側の吸気通路10Aにおける凝縮水の流通が回避されるため、一端部61aよりも下流側に設けられたリニア空燃比センサ93の被水を防止することができる。敷衍して言えば、一端部61aよりも下流側の吸気通路10Aに設けられた各種装置の被水を防止することができ、延いては、かかる各種装置の耐久性や信頼性を確保することができる。
【0080】
〔3.その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、最低部10aが吸気管10のなかで最も鉛直高さが低いものを説明したが、最低部10aは、少なくともインタークーラ19よりも下流側の吸気通路10Aのなかで最も低い部分であればよい。この場合も、最低部10aに溜まろうとする凝縮しは、凝縮水処理機構60により適切に処理される。
【0081】
また、凝縮水処理機構60における凝縮水通路60Aの一端部61aの接続先が最低部10aのものを上述したが、この接続先は、インタークーラ22における鉛直高さが最も低い部分(最低部)に接続されていてもよい。この場合、インタークーラ22の最低部に溜まろうとする凝縮水は、凝縮水処理機構60により適切に処理される。
また、ターボチャージャ50に替えて、エンジン1の出力軸により駆動されるスーパーチャージャを用いてもよい。
【0082】
また、再生用配管66は省略し、これに合わせて、再生用切替弁67も省略してもよい。この場合、フィルタ68を再生することができないため、交換式のフィルタを用いることが好ましい。さらに、開閉弁64も省略することができる。
【0083】
上述の実施形態では、凝縮水処理機構60の凝縮水通路60Aの他端部61bが排気処理装置40,41よりも下流側に接続されたものを説明したが、この接続箇所は、排気処理装置40,41よりも上流側であってもよい。この場合、排気通路30Aに排出された凝縮水は、排気処理装置40,41を流通するため、凝縮水処理機構60からフィルタ68を省略してもよい。
【0084】
上述の一実施形態では、吸気管10の最低部10aにスリット11が形成されたものを説明したが、スリット11に替えて又は加えて、丸孔や長孔といった任意の形状の細孔が形成されていてもよい。かかる細孔は、吸気管10に沿う吸気の流通を妨げないような大きさ又は配置で設けられる。この場合にも、吸気の流通を妨げることがなく、凝縮水を凝縮水処理機構60に導入することができる。
【0085】
また、リニア空燃比センサ93に替えて又は加えて、O
2センサがインマニ19に付設されていてもよい。
また、ディーゼルエンジンを例に挙げて上述したが、これに替えてガソリンエンジンを用いてもよい。この場合、燃料としてガソリンを用いるのは勿論、インジェクタや後処理装置などの構成がガソリンエンジンに対応したものになる。