(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
中空糸膜を製造する方法としては、膜の構成物であるポリマーを有機溶媒に溶解して紡糸原液を調製した後、2重管ノズルから紡糸原液と注入液を吐出させ、それを凝固浴中でゲル化させる湿式または乾湿式紡糸法が広く知られている(特許文献1)。
【0003】
一般に、紡糸原液と注入液は、ギヤポンプによって計量され、規定量を吐出することにより、目的とする径を有する中空糸膜を得ることが出来るが、注入液の粘度が低い場合、ギヤポンプによる計量が変動し、その結果内径のばらつきが大きくなり、目的とする内径を有する中空糸膜を安定して製膜することが困難となる。
【0004】
そのため、注入液の粘度を増大させるために、例えば親水性高分子であるポリビニルピロリドンなどを多量に注入液に添加することが行われている。しかしながら、このような増粘成分を多量に添加すると、注入液の単価が非常に高く、製造コストが割高となる問題があった。また、製造された中空糸膜から親水性高分子の溶出の問題もあった。
特許文献2にはポリビニルピロリドンを含まず、単価がポリビニルピロリドンより安価な糖類を注入液に混合することで粘度を上げる方法がとられている。しかし注入液を調製する工程において、増粘成分を溶媒へ溶解させるための熱や攪拌動力および攪拌時間が必要となる。
【0005】
一方、注入液が低粘度であっても、ギヤポンプではなくヘッド差による圧力で吐出させる方法であれば安定した内径の中空糸膜を得ることができる。特許文献3で示されるように増粘成分が含まれない組成の注入液で紡糸する方法が記載されているが、透水性能が十分とはいえないものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、中空糸膜の内表面側が透過抵抗を増大させることなく、高い透水性能を有し、親水性高分子の溶出が少ない中空糸膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結
果、外側に緻密層を有する非対称構造の中空糸膜であって、緻密層側の表面の平均孔径を1としたとき、他方側の表面の平均孔径が1.6以上3.0以下であり、中空糸膜(重量[g]):水(容量[mL])=1:100の浴比で60℃、1時間中空糸膜を浸漬し、抽出処理して得られる抽出液の220nm吸光度が0.1以下である中空糸膜によって、中空糸膜の内表面側が透過抵抗を増大させることなく、高い透水性能を有し、親水性高分子の溶出が少ない中空糸膜が作製できることを見出
した。
また、緻密層は外表面側であることが、より好ましい。
また、中空糸膜の外径が250〜700μmで内径が150〜450μmであることが、より好ましい。
また、中空糸膜の構成成分がポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンであることが、より好ましい。
【0009】
本発明は、上記記載の中空糸膜を製造するための、製造方法であり、外管部と内管部を有する二重管ノズルの外管から
構成成分がポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンである製膜原液を吐出し、内管から注入液を吐出する中空糸膜の製造方法において、注入液の
成分がポリスルホンの良溶媒
と水のみであり、注入液
の凝固価が50g以上70g以下であることとする製造方法である。
【0010】
また、注入液の主成分はジメチルアセトアミドであることが、より好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中空糸膜
の製造方法によれば、ろ過水および滞留水への親水性高分子の溶出が少なく、高い透水性能を発揮するろ過材料を得ることができる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、さらに0.3μm以上の大きさの細菌を阻止することができ、被処理水に含まれえる一般細菌のろ過側への漏出を防ぐ
ろ過材料を得ることができる。
【0013】
また、本発明
において、中空糸膜の外表面側に緻密層を設けることでろ過抵抗の著しい悪化をより抑制することができる。
また、本発明
において、中空糸膜の構成成分がポリスルホン系のポリマーとポリビニルピロリドンであることにより水の透過抵抗がより小さい膜を得ることができる。
【0014】
また、本発明
において、中空糸膜の外径が250〜700μmで、中空糸膜の内径が150〜450μmであることにより、生産工程通過性がより良好で、かつ一定体積のケースへ糸本数を十分に充填した中空糸膜モジュールとすることが可能になる。
【0015】
本発明の中空糸膜の製造方法によれば中空糸膜の内表面側の透過抵抗を抑えた中空糸膜を、増粘成分が含まれず、原材料コストを抑えた注入液で製造することができ、さらに注入液調製時に必要な加熱と攪拌時間が増粘成分を含む場合に比べて大幅に短縮することができる。また、製造された中空糸膜から親水性高分子の溶出の問題も大幅に低減することができる。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、ジメチルアセトアミドを注入液の主成分とすることで、中空糸膜の構造を容易に調節することができ、かつ洗浄工程を経た中空糸膜に溶媒が残存しない中空糸膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明
において、中空糸膜は
、外側に緻密層を有する非対称構造の中空糸膜であって、緻密層側の表面の平均孔径を1としたとき他方側の表面の平均孔径が1.6以上3.0以下である。
【0019】
外側に緻密層を有するため、微細な大きさの細菌を阻止することができ、非対称構造としたため、緻密層と反対側のろ過抵抗を抑制することができる。緻密層側の表面の平均孔径を1としたとき他方側の表面の平均孔径が1.6以上であると、ろ過抵抗が十分抑制でき、3.0以下であると中空糸膜の強度を十分保つことができる。
【0020】
本発明
において、中空糸膜は、中空糸膜(重量[g]):水(容量[mL])=1:100の浴比で60℃、1時間中空糸膜を浸漬し、抽出処理して得られる抽出液の220nm吸光度が0.1以下である。
本吸光度が0.1を超えると、水処理膜や気体分離膜、医療用分離膜等に用いられるときに、親水性高分子の溶出が多くなり好ましくない。
また、中空糸膜の外表面側に緻密層をもたせることで、外表面側から内表面側へ被処理水を流通させた際に、被処理水に含まれえる濁質が膜の内部に入り込むことを防げるため、孔の閉塞によるろ過抵抗の著しい悪化を抑制することができる。
本発明に
おいて、中空糸膜の構成成分は、中空糸膜を形成する材料であれば、特に限定されず、ポリスルホン系のポリマー、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテート、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、酢酸ビニル等を用いることができる。特に、ポリスルホン系のポリマーとポリビニルピロリドンであると、ろ過に最適な細孔を得ることができ、膜に親水性の性質をもたせることができ、水の透過抵抗がより小さい膜を得ることができる。組成比率は重量比率(%)でポリスルホン系ポリマーが5〜20%であることがさらに好ましい。
また、中空糸膜の外径が250〜700μmで中空糸膜の内径が150〜450μmであると、生産工程通過性に対して破断強度を十分有し、かつ一定体積のケースへ糸本数を十分に充填した中空糸膜モジュールとすることが可能となり好ましい。また、中空糸膜の内径が150μm以上であると、流体が中空部を通る際の抵抗が大きくならず、好ましい。
【0021】
本発明の中空糸の製造方法は、外管部と内管部を有する二重管ノズルの外管部から
構成成分がポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンである製膜原液を吐出し、内管部から注入液を吐出する中空糸膜の製造方法であって、注入液の
成分がポリスルホンの良溶媒
と水のみであり、注入液
の凝固価が50g以上70g以下であることを特徴とする。
紡糸方法には製膜原液を溶融温度以上に加熱してノズルから吐出させ、冷却されることで固化する溶融紡糸がある。また、ノズルから吐出された製膜原液の溶媒成分が気化されることで固化する乾式紡糸がある。また、ノズルから製膜原液を吐出し、空走区間を設けず凝固浴に導かれる湿式紡糸がある。ここではノズルから吐出された製膜原液が所定区間を空走した後、下流側に設けられている凝固浴に導かれる乾湿式紡糸を例にとり説明する。
【0022】
凝固浴によって中空形状に凝固した中空糸膜は水洗され、その後巻き取り装置にて巻き取られる。製膜原液には、ポリスルホン系ポリマー等の中空糸膜構成成分が溶解されている。ポリスルホン系ポリマーは、下記式(1)または(2)の繰り返し単位からなるポリマーであるが、一部の骨格に官能基が付与されているものでもよく、これらに限定されない。
【0025】
ポリスルホン系以外にもセルロースアセテート、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、酢酸ビニル等が製膜原液の成分として用いることができる。
ポリマーを溶解する溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジオキサン等、多種の溶媒が用いられるが、特にジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンが望ましい。
【0026】
製膜原液の粘度を調整するためには、製膜原液に添加剤を加えることもできる。例えば、浄水器用の中空糸膜では親水性ポリマーを付与することで、中空糸膜自身も親水性となるため、好適に用いられる。ポリスルホン系ポリマーとの親和性を考慮すると、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールが最も好ましい。また、親水性ポリマーは様々な分子量を選択することができ、分子量が大きいと、同じ添加量でも粘度が大きくなり、親水性ポリマーの添加量を少なくできることが知られている。適宜得るべき製膜原液粘度のため、親水性ポリマーの分子量と添加量を調整したらよい。
【0027】
内管部に注入される注入液としてポリマー成分に対して非凝固性の液体を用いれば、中空糸膜の内表面側に緻密層を形成させず、内表面側の透過抵抗を抑えた膜構造とすることができる。下流側に設けられる凝固浴によって外表面から凝固が始まるため、中空糸膜の外表面側に緻密層が形成される。
一方、注入液に凝固性の液体を用いる場合、内表面から凝固が始まるため、中空糸膜の内表面側に緻密層が形成されることになる。前記を組み合わせて外表面側及び内表面側の両者に緻密層を持つ両側緻密の中空糸膜とすることもできる。また、注入液に凝固性がある液体を用いた場合、ノズルから凝固浴までの空走区間を長く設けることや、凝固浴の溶媒濃度を高くすることで外表面の凝固速度が遅くなり、内表面側のみが緻密である中空糸膜とすることもできる。
緻密層を中空糸膜の外側表面に形成する場合には、注入液の主成分には中空糸構成成分の良溶媒を用いることが好ましい。良溶媒としては紡糸原液に使用された溶媒を用いることができる。そして、注入液には凝固剤を混合させるのが好ましい。凝固剤の割合が高ければ凝固性の注入液となり、溶媒の割合が高ければ凝固性が低い注入液となる。中空糸成分としてポリスルホン系高分子を使用した場合は、特にジメチルアセトアミドを使用するのが好ましい。ジメチルアセトアミドを使用することにより、ポリスルホンに対する凝固性を容易に調節することができ、かつ洗浄工程を経た中空糸膜に溶媒が残存しない中空糸膜を得ることができる。
凝固剤の例としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、1,4−ブタンジオール等がある。コストや取り扱いの容易性から水が最も好ましい。
凝固性の高い注入液を用いる場合、その注入液の凝固性の度合いによっては、紡糸の際、乾式部分でのドラフトによって亀裂が生じ、滑らかな内表面を形成出来ない。さらに凝固性が高くなると、吐出時の中空糸の内周長を収縮し得ずに、中空部分が多角形や、星形に変形してしまう。また、凝固性が高いと内表面側の開孔率が下がることや、孔径が小さくなる傾向となり、透水性が低下する。
注入液の紡糸原液に対する凝固性の指標として、凝固価がある。この凝固価とは、膜を構成する主ポリマー1重量%溶液50gに対し、注入液を少量ずつ添加し、系内が白濁した時点の、注入液の添加重量を表す。この凝固価の値が小さい程、注入液によるポリマー成分への凝固性が高いことを示す。
注入液で、凝固価が50以上70以下であれば外表面孔径平均値に対する内表面孔径平均値の比率が1.6以上となる。孔径比が1.6以上であればろ過抵抗を十分抑えられる。凝固価のみの調節では内表面孔径平均値の比率は3.0より大きくならず、製膜原液のポリスルホン系ポリマー濃度を小さくすることで孔径平均値の比率は大きくなるが、3.0より大きくすると膜の強度が十分保てない。
【0028】
乾湿式紡糸の乾式部分においては、吐出糸条を凝固浴の雰囲気にさらして、温度上昇及び吸湿により原液の相分離を促進させることで、透水性の向上がはかれる。乾式部分に温度と湿度をより積極的に調整した走行区間を設けることも膜の開孔の制御に対して有効である。0.3μmのラテックスビーズ阻止率が0.99以上であることも制御可能となる。
凝固浴の液体としては、水を主成分とするものであることが、安価であり、好ましい。ポリマー組成の凝固速度を調整するために、水とポリマー成分の溶媒との混合物が好ましく用いられる。凝固浴の温度は、相分離の進行を高めるために高温であるほうがより透水性能を高めることができ、さらに親水性高分子の抽出速度が上がるため、洗浄性が向上する。
【0029】
凝固浴にて構造形成された中空糸膜は巻取り工程前に設けられた水洗浴にて洗浄する。または巻取り後、オフラインで洗浄する方法があり、両者を適宜組み合わせて実施することが好ましい。洗浄時は水やアルコール等の水溶性成分の溶媒が好ましく、80℃以上の高温の液で洗浄すると抽出効率がよく、好ましい。
親水性高分子を膜中に残存させることで水濡れ性を保持し、高い透水性を得ることができる。しかし膜中に残存する親水性高分子がわずかに溶出することがある。このことは、メディカル用途、食品工業用途においては望ましくない。不溶化のための架橋反応としては、ビニル系の親水性高分子ではγ線照射が有効である。特にポリビニルピロリドンの場合は、加熱することでも架橋をさせることができる。熱処理温度は、170℃では5時間程度、180℃では2.5時間程度、190℃でも1.5時間程度することが好ましい。さらに温度を上げるとそれだけ処理時間は短縮される。150℃以下においては、処理時間が長すぎ、実用的ではない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)中空糸膜表面の孔径測定
電界放射型走査型電子顕微鏡(日立社製、S−800)で中空糸膜外表面の500倍画像を撮影した。画像サイズは655×720ピクセルとした。Matrox Inspector2.2(Matrox Electronic Systems Ltd.)で画像処理を行った。孔部分を白く、それ以外を黒く反転させ、白い部分のピクセル数を測定した。二値化の境界レベルは、最も白い部分と最も黒い部分の差の中間の値とした。
【0031】
尚、画像の解像度は0.28169μm/ピクセルであったので、上記電子顕微鏡画像の面積Sは37421.1μm
2と算出された。
【0032】
また、平均孔径は、白く表示された孔の数をカウントし、各孔のピクセル数を測定した。孔のピクセル数が2ピクセル以下のものについては、ノイズとして除去した。次式によって各孔のピクセル数から孔面積を算出した。
孔面積(μm
2)=(孔のピクセル数)×(解像度0.28169)
2
上記孔面積から、各孔の直径を算出し、その算術平均を平均孔径とした。なお、孔数が3000を越える場合はカウントできないため、その場合は解析範囲を300×300ピクセルに減らして同様の操作を行った。
(2)吸光度測定
中空糸膜(重量[g]):水(容量[mL])=1:100の浴比(すなわち、中空糸膜重量1gに対して水の容量が100mL)で60℃、1時間浸積した液を抽出液とする。石英セルに抽出液を入れ、分光光度計(日立社製、U−5100)を用いて220nmの吸光度を光路長10mmで測定した。抽出前の水と抽出液の吸光度との差を抽出液の吸光度と表記した。
(3)透水性能測定
両端に還流液用の孔を備えたケースに中空糸膜を挿入し、市販のポッティング剤を用いて小型モジュールを作製し、37℃に保って中空糸膜内側に水圧をかけて膜を通して外側へ一定時間内に透過する水の量と有効膜面積および膜間圧力差から算出する方法で透水性能を測定する。
(4)中空糸膜の外径、内径の測定
中空糸膜の外径、内径の測定は、マイクロウオッチャーの200倍レンズ(NIKON社製、ECLIPSE−LV100)で測定した。
(5)0.3μmのラテックスビーズ阻止率
(3)の透水性能測定と同様の小型モジュールを作製し、中空糸膜外側から200ppmの濃度のラテックスビーズ水溶液(invitrogen社製、Sulfate latex、粒子径0.3μm)を供給し、膜を通して内側に透過してきた液の濃度を測定する。供給側濃度200ppmと透過側濃度から阻止率を求める。
(阻止率=1−Cp/Cf)
Cp:透過側濃度 Cf:供給側濃度
260nmの吸光度とラテックスビーズ濃度の関係をあらかじめ測定しておき、透過側の液の吸光度を測定することで濃度を求める。吸光度の測定は分光光度計(日立社製、U−5100)を用いて求めた。
【0033】
[実施例1]
ポリスルホン(BASF社製:ウルトラゾ−ンS6010)15重量部とポリビニルピロリドン(BASF社製K−90)7重量部とジメチルアセトアミド(以下DMAc)75重量部と水3重量部を溶解撹拌し、製膜原液を調製した。この製膜原液を37℃に保たれた外周スリット幅0.15mmの二重管ノズルより吐出した。内管からはDMAc94重量部と水6重量部の注入液を吐出させた。この注入液の凝固価は68gであった。口金から吐出された原液および注入液は所定の乾式長を通過させた後、凝固浴にて凝固され、水洗工程を経て巻き取った。巻き取られた中空糸は外径460μm、内径300μmであった。上記の中空糸を乾燥した後、170℃の乾熱下で6hr熱処理し、オフラインで90℃の温水により洗浄し、乾燥後、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の吸光度は0.05であり、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は1.8であり、透水性は110ml/(m
2・h・Pa)であった。0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であった。
【0034】
[実施例2]
中空糸膜の寸法が外径240μm内径120μmであることと注入液の組成がDMAc92重量部と水8重量部であることを除いて実施例1と同様に作製した。この注入液の凝固価は61gであり、得られた中空糸膜の吸光度は0.05であり、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は1.8であり、0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であったが、紡糸工程において糸切れの頻度が高く、強度がやや不足していた。
【0035】
[実施例3]
二重管ノズルの内管から吐出する注入液の組成をDMAc90重量部と水10重量部とすることを除いて実施例1と同様に作製した。この注入液の凝固価は52gであり、得られた中空糸膜の吸光度は0.05であり、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は1.7であり、0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であった。
【0036】
[比較例1]
実施例1と同一組成の原液を二重管ノズルより吐出し、注入液の組成はDMAc85部と水15部とした。この注入液の凝固価は20gであった。実施例1と同様の洗浄と熱処理を実施し、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であり、吸光度は0.05であったが、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は1.4であり、透水性が104ml/(m
2・h・Pa)であった。
【0037】
[比較例2]
実施例1と同一組成の原液を二重管ノズルより吐出し、注入液の組成はDMAc68部と水32部とした。この注入液の凝固価は8gであった。実施例1と同様の洗浄と熱処理を実施し、中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であり、吸光度は0.05であったが、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は1.3であり、透水性が61ml/(m
2・h・Pa)であった。
【0038】
[比較例3]
実施例1と同一組成の原液を二重管ノズルより吐出し、PVP(BASF社製K−30)29部とグリセリン15部とDMAc56部からなる注入液を用いた。この注入液の凝固価は61gであった。実施例1と同様の洗浄と熱処理を実施し、中空糸膜を得た。0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であり、吸光度は0.05であり、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は0.8であり、透水性は110ml/(m
2・h・Pa)であったが、この注入液の調製に要する時間は実施例1の10倍であり、注入液の単価は3倍であった。
【0039】
[比較例4]
実施例1と同一組成の原液を二重管ノズルより吐出し、PVP(BASF社製K−90)10部とグリセリン17部とDMAc73部からなる注入液を用いた。この注入液の凝固価は55gであった。実施例1と同様の洗浄と熱処理を実施し、中空糸膜を得た。0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であり、吸光度は0.08であり、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は0.9であり、透水性は109ml/(m
2・h・Pa)であったが、この注入液の調製に要する時間は実施例1の10倍であり、注入液の単価は3倍であった。
【0040】
[比較例5]
実施例1と同一組成の原液を二重管ノズルより吐出し、PVP(BASF社製K−30)29部とグリセリン15部とDMAc56部からなる注入液を用いた。この注入液の凝固価は61gであった。実施例1と同様の洗浄を行い145℃で6h熱処理を実施し、中空糸膜を得た。0.3μmのラテックスビーズ阻止率は0.99であり、外表面に対する内表面の平均孔径の比率は0.8であり、透水性は110ml/(m
2・h・Pa)であったが、吸光度は0.15であった。
【0041】
【表1】