(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156014
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】低電圧判定回路
(51)【国際特許分類】
G01R 19/165 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
G01R19/165 K
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-197175(P2013-197175)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64231(P2015-64231A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】塚本 克馬
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑典
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−046271(JP,A)
【文献】
実開平03−109178(JP,U)
【文献】
特開2003−315381(JP,A)
【文献】
特開平03−010170(JP,A)
【文献】
特開昭53−095080(JP,A)
【文献】
米国特許第04716372(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電圧をダイオードを通じて与えられ、与えられた電圧により基準電圧を作成する基準電圧作成回路と、前記電源からの電圧を所定比に分圧する分圧回路と、該分圧回路が分圧した電圧を、前記基準電圧作成回路が作成した基準電圧に基づきデジタル変換する変換器と、該変換器がデジタル変換したデジタル電圧値が所定の電圧値より低いか否かを判定する判定手段とを備える低電圧判定回路において、
前記電源にカソードが接続され、アノードが抵抗を通じて固定電位に接続されたツェナーダイオードと、
該ツェナーダイオードのアノード電圧が所定の第2電圧値より低いか否かを判定する比較器と
を備え、
前記第2電圧値は、前記基準電圧の電圧値に比例しており、
前記判定手段及び比較器の何れかが低いと判定したときに、前記電源からの電圧が低いと判定するように構成してある
ことを特徴とする低電圧判定回路。
【請求項2】
前記変換器、判定手段及び比較器は、マイクロコンピュータにより構成されており、前記比較器は、デジタル入力ポートであり、前記第2電圧をデジタル入力信号のオン/オフを判定する閾値としてある請求項1に記載の低電圧判定回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から与えられた電圧により基準電圧を作成する基準電圧作成回路と、電源からの電圧を分圧する分圧回路と、分圧回路が分圧した電圧を、基準電圧に基づきデジタル変換する変換器とを備え、変換器がデジタル変換したデジタル電圧値が所定の電圧値より低いか否かを判定する低電圧判定回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低電圧の判定には、一般的にコンパレータ(比較器)を用いたアナログ回路が使用されるが、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと記載)を有する回路の場合は、コンパレータの代わりにマイコン内蔵のAD(アナログ/デジタル)変換器を用いることができる。
【0003】
図4は、従来のマイコンを用いた低電圧判定回路の構成例を示すブロック図である。
この低電圧判定回路は、順接続されたダイオード2を通じて与えられた電源1からの電圧により基準電圧(リファレンス電圧)(例えば5V)を作成するレギュレータ(基準電圧作成回路)3と、電源1と接地端子との間に直列接続された抵抗R1,R2からなる分圧回路とを備えている。
【0004】
この低電圧判定回路は、また、抵抗R1,R2が分圧した電圧を、レギュレータ3が作成した基準電圧に基づきデジタル変換するAD変換器4と、AD変換器4がデジタル変換したデジタル電圧値が所定の電圧値より低いか否かを判定する低電圧判定部(判定手段)5とを備えている。低電圧判定部5は、低いと判定したときは、出力をオフにする。
AD変換器4及び低電圧判定部5は、マイコン9により構成されている。
【0005】
ここで、実際には、ダイオード2及びレギュレータ3には、それぞれ電圧降下0.9V及び0.35Vが生じており、電源電圧Vsには5V+1.25V=6.25V以上が必要であるので、電源電圧Vs=6.5V以下を低電圧と判定するようにする。
また、例えば、R1=91kΩ、R2=27kΩ、基準電圧Vcc=5.0Vとして、10ビットでデジタル変換するようにすると、低電圧と判定する為の閾値(デジタル変換値)ADは(1)式で計算される。
AD=6.5V×(27k/118k)×(1/5.0V)×1023
=304 (1)
【0006】
特許文献1には、電源の電圧を抵抗分割する抵抗分割回路と、抵抗分割回路の出力電圧と参考電圧を比較する電圧比較回路と、一端が接地された容量と、出力電圧が参考電圧より低い場合に容量を充電し、出力電圧が参考電圧より高い場合に容量を放電する充放電回路とを備える低電圧保護回路が開示されている。容量の他端の電圧を反転するインバータと、インバータの出力信号とメイン信号のAND演算を行うAND回路と、メイン信号がLレベルの場合に、充放電回路への電源供給を停止する第1のスイッチと、メイン信号がLレベルの場合に、容量を充電する第2のスイッチとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−132709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した(1)式の電源電圧Vs及び基準電圧Vccを変数で表示して(2)式とすると、
AD=Vs×(27k/118k)×(1/Vcc)×1023 (2)
ここで、電源電圧Vsが
図5の特性図の横軸のように低下して行くと、基準電圧Vccは、
図5に示すように、電源電圧Vsには比例せずに低下するので、電源電圧Vsの抵抗R1,R2による分電圧のデジタル変換値ADは、電源電圧Vsが5.3V以下に低下すると、逆に閾値304を超えるようになる。その為、電源電圧Vsが5.3V以下(<6.5V以下)に低下しているにも関らず、低電圧判定部5は低電圧と判定できなくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、マイクロコンピュータを備えて、安価に精度良く低電圧を判定できる低電圧判定回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る低電圧判定回路は、電源からの電圧をダイオードを通じて与えられ、与えられた電圧により基準電圧を作成する基準電圧作成回路と、前記電源からの電圧を所定比に分圧する分圧回路と、該分圧回路が分圧した電圧を、前記基準電圧作成回路が作成した基準電圧に基づきデジタル変換する変換器と、該変換器がデジタル変換したデジタル電圧値が所定の電圧値より低いか否かを判定する判定手段とを備える低電圧判定回路において、前記電源にカソードが接続され、アノードが抵抗を通じて固定電位に接続されたツェナーダイオードと、該ツェナーダイオードのアノード電圧が所定の第2電圧値より低いか否かを判定する比較器とを備え、
前記第2電圧値は、前記基準電圧の電圧値に比例しており、前記判定手段及び比較器の何れかが低いと判定したときに、前記電源からの電圧が低いと判定するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
この低電圧判定回路では、基準電圧作成回路が、電源からの電圧をダイオードを通じて与えられ、与えられた電圧により基準電圧を作成し、分圧回路が、電源からの電圧を所定比に分圧する。変換器が、分圧回路が分圧した電圧を、基準電圧作成回路が作成した基準電圧に基づきデジタル変換し、判定手段が、変換器がデジタル変換したデジタル電圧値が所定の電圧値より低いか否かを判定する。ツェナーダイオードが、電源にカソードが接続され、アノードが抵抗を通じて固定電位に接続され、比較器が、ツェナーダイオードのアノード電圧が所定の第2電圧値より低いか否かを判定し、判定手段及び比較器の何れかが低いと判定したときに、電源からの電圧が低いと判定する。
【0012】
第2発明に係る低電圧判定回路は、前記変換器、判定手段及び比較器は、マイクロコンピュータにより構成されており、前記比較器は、デジタル入力ポートであり、前記第2電圧をデジタル入力信号のオン/オフを判定する閾値としてあることを特徴とする。
【0013】
この低電圧判定回路は、変換器、判定手段及び比較器が、マイクロコンピュータにより構成されており、比較器は、デジタル入力ポートであり、第2電圧をデジタル入力信号のオン/オフを判定する閾値としてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る低電圧判定回路によれば、マイクロコンピュータを備えて、安価に精度良く低電圧を判定できる低電圧判定回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る低電圧判定回路の実施の形態の概略構成を示す回路図である。
【
図2】
図1に示す低電圧判定回路の動作例を示す特性図である。
【
図3】
図1に示す低電圧判定回路の動作例を示す特性図である。
【
図4】従来の低電圧判定回路の概略構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す低電圧判定回路の動作例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る低電圧判定回路の実施の形態の概略構成を示す回路図である。
この低電圧判定回路は、順接続されたダイオード2を通じて与えられた電源1からの電圧により基準電圧(リファレンス電圧)を作成するレギュレータ(基準電圧作成回路)3と、電源1と接地端子との間に直列接続された抵抗R1,R2からなる分圧回路とを備えている。
【0017】
この低電圧判定回路は、また、抵抗R1,R2が分圧した電圧を、レギュレータ3が作成した基準電圧に基づきデジタル変換するAD変換器4と、AD変換器4がデジタル変換したデジタル電圧値が所定の電圧値より低いか否かを判定する低電圧判定部(判定手段)5aとを備えている。低電圧判定部5aは、低いと判定したときは、出力をオフにする。
【0018】
この低電圧判定回路は、また、電源1にカソードが接続され、アノードが抵抗R3を通じて接地されているツェナーダイオード8と、ツェナーダイオード8のアノード電圧と電源7から出力される比較電圧とを比較するコンパレータ(比較器)6とを備えている。コンパレータ6の出力は低電圧判定部5aに与えられ、コンパレータ6が、ツェナーダイオード8のアノード電圧の方が低いと判定したとき、低電圧判定部5aは出力をオフにする。
【0019】
AD変換器4、低電圧判定部5a、コンパレータ6及び電源7は、マイコン9aにより構成されており、レギュレータ3が作成した基準電圧は、マイコン9aの基準電圧(リファランス電圧)入力端子を経由してAD変換器4に与えられる。抵抗R1,R2が分圧した電圧は、マイコン9aのAD入力端子経由でAD変換器4に入力される。
ツェナーダイオード8のアノード電圧は、マイコン9aのデジタル入力ポート経由でコンパレータ6へ入力される。電源7から出力される比較電圧は、レギュレータ3が作成する基準電圧の1/3であり、コンパレータ6は、デジタル入力ポートへ入力された信号のオン/オフを判定している。
【0020】
このような構成の低電圧判定回路では、実際には、ダイオード2及びレギュレータ3には、それぞれ電圧降下0.9V及び0.35Vが生じており、電源電圧Vsには5V+1.25V=6.25V以上が必要であるので、例えば、電源電圧Vs=6.5V以下を低電圧と判定するようにする。
また、例えば、R1=91kΩ、R2=27kΩ、基準電圧Vcc=5.0Vとして、10ビットでデジタル変換するようにすると、低電圧と判定する為の閾値(デジタル変換値)ADは(1)式で計算される。
【0021】
AD=6.5V×(27k/118k)×(1/5.0V)×1023
=304 (1)
(1)式の電源電圧Vs及び基準電圧Vccを変数で表示して(2)式とすると、
AD=Vs×(27k/118k)×(1/Vcc)×1023 (2)
【0022】
ここで、電源電圧Vsが
図2の特性図の横軸のように低下して行くと、基準電圧Vccは、
図2に示すように、電源電圧Vsには比例せずに低下するので、電源電圧Vsの抵抗R1,R2による分電圧のデジタル変換値ADは、
図2に示すように、電源電圧Vsが5.3V以下に低下すると、逆に閾値304を超えるようになる。その為、電源電圧Vsが5.3V以下(<6.5V以下)に低下しているにも関らず、低電圧判定部5aは低電圧と判定できない。ここまでは、従来技術の
図5で説明した特性と同様である。
尚、マイコン9aのコンパレータ6の閾値は、
図2に示すように、電源電圧Vsが低下しても、低下する基準電圧Vccの1/3に維持され続ける。
【0023】
一方、電源電圧Vs=6.5V以下を低電圧と判定する場合、そのときのツェナーダイオード8のアノード電圧Vaは、基準電圧Vcc=5.0Vの1/3であるから、Va=1.67Vとなり、ツェナーダイオード8の通流電流Izは、Iz=1.67V/100kΩ=16.7μAとなる。
このとき、ツェナーダイオード8のツェナー電圧Vzとしては、Vz=6.5V−1.67V=4.83Vが必要である。
【0024】
実際には、ツェナーダイオード8は、個体差、温度、通流電流等により、ツェナー電圧Vzに例えば4.4〜4.9Vのバラツキが存在する。ツェナー電圧Vzのバラツキにより、ツェナーダイオード8のアノード電圧は、
図2に示すように、アナログ入力minからアナログ入力maxまでバラツク可能性があるので、マイコン9aのデジタル入力ポート経由でコンパレータ6を使用する低電圧判定の判定精度は良くない。
【0025】
しかし、ツェナーダイオード8のアノード電圧のバラツク範囲(アナログ回路バラツキ;5.8〜6.4V)は、
図3に示すように、AD変換器4で確実に低電圧を判定できる範囲である。また、ツェナーダイオード8のアノード電圧がバラツクことがなく、コンパレータ6で低電圧を良い精度で判定できる範囲には、AD変換器4で低電圧を判定できない範囲が含まれている。
尚、ツェナー電圧Vzのバラツキ範囲4.4〜4.9Vは、抵抗R3の抵抗値を変えることにより調整することが可能である。
【0026】
従って、電源電圧Vsが6.5Vを超えている場合、低電圧判定部5aはAD変換器4のデジタル変換値ADを低電圧と判定せず、コンパレータ6もツェナーダイオード8のアノード電圧を低電圧と判定しない(Hレベル(オン)と判定する)。
電源電圧Vsが6.5V≧Vs>5.3Vである場合、低電圧判定部5aはAD変換器4のデジタル変換値ADを精度良く低電圧と判定し、コンパレータ6は、6.4V≧Vs≧5.8Vで、ツェナーダイオード8のアノード電圧を低電圧と判定する精度が悪く、5.8V>Vs>5.3Vで、低電圧と判定する精度が良い。
【0027】
電源電圧Vsが5.3V以下である場合は、低電圧判定部5aはAD変換器4のデジタル変換値ADを低電圧と判定することができず、コンパレータ6は、ツェナーダイオード8のアノード電圧を低電圧と精度良く判定することができる。
以上より、低電圧判定部5aは、電源電圧Vsが6.5V以下である場合、電源電圧Vsが低電圧と精度良く判定するか、電源電圧Vsが低電圧との精度良い判定結果を得ることができるので、確実に出力をオフにすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1,7 電源
2 ダイオード
3 レギュレータ(基準電圧作成回路)
4 AD変換器(変換器)
5a 低電圧判定部(判定手段)
6 コンパレータ(比較器)
8 ツェナーダイオード
9a マイコン
R1,R2,R3 抵抗