(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ディスクと翼とを一体化した一体型翼車における、少なくとも前記ディスクを含むディスク側部分を除いた翼側部分を、該翼側部分の翼弦方向に往復移動させて前記ディスク側部分に線形摩擦接合する線形摩擦接合装置において用いられ、前記翼側部分を保持した状態で前記翼弦方向に往復移動されると共に、前記ディスク側部分から前記翼側部分に加わる荷重を該翼側部分から受ける治具ユニットであって、
前記ディスク側部分に対向する箇所において、前記翼弦方向に往復移動される保持ブロックを有しており、
前記保持ブロックは、前記ディスク側部分に対向する端面に開口した前記翼側部分の収容部を内部に有すると共に、該収容部に収容した前記翼側部分の腹側と背側とに分割可能に構成されており、
前記収容部は、前記翼側部分の前記ディスク側部分に対する摩擦接合端に形成したフランジ部を前記端面に当接させた状態で、該フランジ部の翼先端側に連なり前記ディスク側部分への線形摩擦接合後に除去される前記翼側部分の保持部を保持する保持面を、前記端面の開口に連なる内壁面部分に有すると共に、前記翼側部分の前記保持部よりも翼先端側の翼表面に間隔をおいて対向する対向面を、前記保持面に連なる内壁面部分に有している、
ことを特徴とする一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニット。
前記保持ブロックは、前記翼弦方向に往復移動され、前記ディスク側部分に対向する箇所に開口する凹部を有するメインブロックと、前記ディスク側部分に対向する端面を有し、前記凹部に着脱可能に保持されて該凹部の深さ方向において隙間なく前記凹部に当接され、前記メインブロックにより前記翼弦方向に往復移動されるサブブロックとを有しており、該サブブロックは、前記凹部の深さ方向の全体に延在する寸法で形成されており、前記凹部の深さ方向に貫通し前記端面に開口する貫通部の内周面により前記保持面及び前記対向面を構成していることを特徴とする請求項1記載の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニット。
前記サブブロックは、前記凹部の深さ方向に分割された複数の分割コマによって構成されており、前記複数の分割コマのうち前記凹部の開口に露出する開口側コマは、前記深さ方向に一定の断面形状で貫通する貫通部の内周面により前記保持面を構成しており、前記開口側コマを除く前記サブブロックの他の分割コマは、前記深さ方向に一定の断面形状で貫通する貫通部の内周面により前記対向面の一部を構成していることを特徴とする請求項2記載の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した線形摩擦接合により一体型翼車を新造したり修理する際には、接合する翼側の部材とディスク側の部材とを、ディスクの径方向に近づけながら翼の翼弦方向に相対的に往復移動させることになる。その際に加わる荷重によって翼の翼面に変形等が生じないように工夫することは、線形摩擦接合を用いて一体型翼車を製造(新造又は修理)する上で非常に重要なことである。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、翼側の部材とディスク側の部材とを線形摩擦接合する際に荷重が加わって翼面が変形するのを抑制することができる、一体型翼車の線形摩擦接合装置用の治具ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットは、
ディスクと翼とを一体化した一体型翼車における、少なくとも前記ディスクを含むディスク側部分を除いた翼側部分を、該翼側部分の翼弦方向に往復移動させて前記ディスク側部分に線形摩擦接合する線形摩擦接合装置において用いられ、前記翼側部分を保持した状態で前記翼弦方向に往復移動されると共に、前記ディスク側部分から前記翼側部分に加わる荷重を該翼側部分から受ける治具ユニットであって、
前記ディスク側部分に対向する箇所において、前記翼弦方向に往復移動される保持ブロックを有しており、
前記保持ブロックは、前記ディスク側部分に対向する端面に開口した前記翼側部分の収容部を内部に有すると共に、該収容部に収容した前記翼側部分の腹側と背側とに分割可能に構成されており、
前記収容部は、前記翼側部分の前記ディスク側部分に対する摩擦接合端に形成したフランジ部を前記端面に当接させた状態で、該フランジ部の翼先端側に連なり前記ディスク側部分への線形摩擦接合後に除去される前記翼側部分の保持部を保持する保持面を、前記端面の開口に連なる内壁面部分に有すると共に、前記翼側部分の前記保持部よりも翼先端側の翼表面に間隔をおいて対向する対向面を、前記保持面に連なる内壁面部分に有している、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットによれば、ディスクの周面に翼を線形摩擦接合して一体型翼車を新造したり、ディスクの周面から立設された翼の欠損部に補修用の翼片を線形摩擦接合により継ぎ足して一体型翼車を修理する際に、つまり、一体型翼車を製造する際に、保持ブロックの収容部に収容して保持面により保持部を保持した翼側部分を、ディスク側部分に当接させて翼弦方向に往復移動させることになる。
【0011】
このとき、ディスク側部分から翼側部分に加わる荷重は、翼側部分のフランジ部から保持ブロックのディスク側部分に対向する端面に伝達される。このように、翼側部分のフランジ部が当接する端面を保持ブロックが有していることから、ディスク側部分から翼側部分に加わる荷重が翼部に伝わることなく保持ブロックに伝達される。このため、ディスク側部分から加わる荷重によって翼側部分の翼面が変形するのを抑制することができる。
【0012】
また、保持ブロックの収容部の保持面が翼側部分の保持部を保持することから、保持ブロック及び翼側部分が一体となってディスク側部分に対して翼弦方向に往復移動される。しかも、保持ブロックと直接接触するのは、ディスク側部分への線形摩擦接合後に除去される翼側部分の保持部であることから、ディスク側部分に対する往復移動の際に翼側部分に変形が生じるとしても、その変形が生じる箇所は保持部に限られる。
【0013】
このため、翼側部分をディスク側部分に接触させて往復移動させることにより翼側部分の翼面が変形することも、抑制することができる。
【0014】
また、請求項2に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットは、請求項1に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットにおいて、前記翼弦方向に往復移動され、前記ディスク側部分に対向する箇所に開口する凹部を有するメインブロックと、前記ディスク側部分に対向する端面を有し、前記凹部に着脱可能に保持されて該凹部の深さ方向において隙間なく前記凹部に当接され、前記メインブロックにより前記翼弦方向に往復移動されるサブブロックとを有しており、該サブブロックは、前記凹部の深さ方向の全体に延在する寸法で形成されており、前記凹部の深さ方向に貫通し前記端面に開口する貫通部の内周面により前記保持面及び前記対向面を構成していることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットによれば、請求項1に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットにおいて、サブブロックをメインブロックの凹部に取り付けると、凹部の深さ方向において隙間なくサブブロックが凹部に当接する。
【0016】
したがって、サブブロックがその端面で受けた、ディスク側部分から翼側部分に加わる荷重が、翼の翼部に伝わることなくサブブロックを経てメインブロックに伝達される。このため、ディスク側部分から翼側部分に加わる荷重によって翼の翼部が変形するのを抑制することができる。
【0017】
また、請求項3に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットは、請求項2に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットにおいて、前記サブブロックは、前記凹部の深さ方向に分割された複数の分割コマによって構成されており、前記複数の分割コマのうち前記凹部の開口に露出する開口側コマは、前記深さ方向に一定の断面形状で貫通する貫通部の内周面により前記保持面を構成しており、前記開口側コマを除く前記サブブロックの他の分割コマは、前記深さ方向に一定の断面形状で貫通する貫通部の内周面により前記対向面の一部を構成していることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットにおいて、翼側部分の保持部よりも翼先端側の翼部は、腹側が凹、背側が凸の湾曲形状を呈している。この翼表面から一定間隔をおいて対向するように対向面を構成すると、対向面自身を翼表面形状に対応する湾曲面とする必要があり、製造が困難となる。
【0019】
一方、翼表面のどの部分とも接触しないような平面で対向面を構成するには、保持ブロックの収容部の容積を大きくする必要があり、そうするためには、ディスク側部分から翼側部分に加わる荷重のサブブロックによる受圧面積を小さくしなければならなくなる。したがって、ディスク側部分からの荷重に対する耐性をサブブロックに持たせるのが難しくなる。
【0020】
そこで、請求項3に記載した本発明の一体型翼車の線形摩擦接合装置用治具ユニットのように、サブブロックを凹部の深さ方向に分割した複数の分割コマで構成すれば、翼側部分の保持部を保持する保持面を有する開口側コマを除く他の分割コマの貫通部の内周面を、翼表面の全体に接触しない平面ではなく、分割コマが対向する表面部分だけに接触しない平面で構成することができる。
【0021】
つまり、各分割コマの貫通部の位置を、各分割コマの貫通部の内周面に対向する前記翼表面の、深さ方向と直交する平面内における位置に合わせて、各分割コマごとにずらすことができる。これにより、各分割コマに設けるディスク側部分からの荷重の受圧面積を、サブブロックを一つの物体で構成する場合に比べて大きくして、サブブロックとしての剛性を高めることができる。よって、ディスク側部分からの荷重に対するサブブロックの耐性を強くすることができる。
【0022】
したがって、翼側部分をディスク側部分に線形摩擦接合する際に翼側部分をディスク側部分に十分に押し付けて、翼側部分のディスク側部分に対する線形摩擦接合を効率よく行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、翼側の部材とディスク側の部材とを線形摩擦接合する際に荷重が加わって翼面が変形するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る治具ユニットを用いた一体型翼車の線形摩擦接合装置の概略構成を示す説明図である。
【0026】
図1に示す線形摩擦接合装置10は、圧縮機やタービンの一体型翼車(ブリスク)の製造に用いるものである。
図2の拡大斜視図で要部を示すように、一体型翼車1は、円筒状のディスク3とその周面3aから立設された複数の動翼5とを一体化したものである。
【0027】
本実施形態の線形摩擦接合装置10は、動翼5をディスク3の周面3aに摩擦接合することで、動翼5をディスク3と一体化させる。なお、本実施形態では、ディスク3が請求項中のディスク側部分に相当し、動翼5が請求項中の翼及び翼側部分に相当する。
【0028】
そして、
図1に示す線形摩擦接合装置10は、ベース部20、ディスク保持部30、荷重付与部40、動翼保持部50、軸受部60、振動付与部70、及び、制御部80を有している。
【0029】
ベース部20は平板テーブル状を呈しており、線形摩擦接合装置10の設置床面に干渉機構を介して設置されている。このベース部20上には、制御部80を除く各部30〜70が配置されている。
【0030】
ディスク保持部30は、ベース部20上のガイドレール21に沿って動翼保持部50に対し接近離間する水平方向に移動可能に配置されている。このディスク保持部30には、油圧シリンダ等の荷重付与部40によって、動翼保持部50に対して接近する向きへの荷重が付与される。なお、ディスク保持部30は、ディスク3を隣り合う動翼5どうしの1ピッチ分ずつ周方向に回転させるロータリーアクチュエータ31を内蔵している。
【0031】
動翼保持部50は、ベース部20上の軸受部60によって、ベース部20に対して上下方向に移動可能に支持されている。動翼保持部50は、詳しくは、軸受部60によって軸受支持されるベースブロック51と、ベースブロック51に取り付けられるメインブロック52と、メインブロック52に着脱可能に保持されるサブブロック53(
図4参照)とを有している。メインブロック52とサブブロック53は請求項中の保持ブロックを構成している。
【0032】
メインブロック52は、
図3の斜視図に示すように、ベースブロック51に対する取付ねじ54(
図4参照)が貫通するねじ孔52bを前面52aに有している。また、メインブロック52は、前面52aに開口した凹部52cを有している。凹部52cの上下には、左右に間隔をおいて前面52aから膨出した一対のブロック固定部52d,52dがそれぞれ設けられている。
図4の縦断面図に示すように、各ブロック固定部52dには、固定ねじ55を挿通するねじ孔52eが上下方向に貫通して形成されている。
【0033】
サブブロック53は、ベースブロック51及びメインブロック52と共に動翼保持部50を構成する。また、サブブロック53は、メインブロック52と共に、請求項中の治具ユニットを構成している。このサブブロック53は、
図1のディスク保持部30のディスク3に摩擦接合する動翼5を保持するもので、
図4に示すように、メインブロック52の凹部52cに保持され、固定ねじ55によってメインブロック52に固定される。本実施形態では、サブブロック53は、凹部52cの深さ方向において4つのコマ53a〜53d(請求項中の分割コマに相当)に分割されている。
【0034】
ここで、サブブロック53に保持される動翼5の構成について説明する。動翼5は、ディスク3の周面に摩擦接合される接合面5a寄りの周面部分に、断面矩形状の保持部5bを有している。また、保持部5bの接合面5a側に、保持部5bよりも一回り大きい外形の矩形のフランジ部5cを有している。保持部5bのフランジ部5cとは反対側には、動翼5の翼部5dが形成されている。上述した保持部5b及びフランジ部5cは、ディスク3に動翼5を摩擦接合した後に、
図2に仮想線で示すように、正規の動翼5の外形となるまで切削除去される。
【0035】
図4に示すように、上述した動翼5を保持するサブブロック53の各コマ53a〜53dは、動翼5を収容する収容部53e〜53hをそれぞれ内部に有している。
【0036】
図5(a)は
図3のメインブロックの凹部にサブブロックを保持させた状態を示す斜視図、(b)は(a)のサブブロックの分解斜視図である。また、
図6(a)は
図5(a)のメインブロック52に固定したサブブロック53が保持する動翼5に
図1のディスク保持部30のディスク3の周面3aを当接させて荷重をかけた状態を示す縦断面図、(b)は(a)のサブブロックの一部切欠正面図である。
【0037】
図5(a)に示すサブブロック53のコマ53a〜53dのうち、メインブロック52の凹部52cの開口から外部に露出する開口側コマ53aは、
図5(b)に示すように、動翼5の腹側及び背側にそれぞれ配置される左右のコマ片53i,53jと、動翼5の上方及び下方にそれぞれ配置される上下のコマ片53k,53lとにより、上下と左右(腹側及び背側)に分割可能に構成されている。
【0038】
このうち、左右の各コマ片53i,53jは、
図5(a)に示すように、凹部52cと同じ上下高さを有しており、上下に対向する2つのブロック固定部52d,52d間にそれぞれ配置される。一方、開口側コマ53aの上下の各コマ片53k,53lは、左右に対向する2つのブロック固定部52d,52dの間隔と同じ幅を有しており、左右のブロック固定部52d,52d間と左右の各コマ片53i,53j間とに跨ってそれぞれ配置される。
【0039】
上述した4つのコマ片53i〜53lによって、
図4に示すように、開口側コマ53aの中央に動翼5の収容部53e(請求項中の開口側コマの貫通部に相当)が貫通して形成されている。この収容部53eは、動翼5の保持部5bの外形に対応する大きさ及び断面形状の保持面53mと、動翼5の翼部5dに間隔をおいて対向する対向面53nを有している。
【0040】
また、開口側コマ53aを除く他のコマ53b〜53dは、
図5(b)に示すように、左右のコマ片53o,53pで構成されており、それぞれの収容部53f〜53h(請求項中の他の分割コマの貫通部に相当)が、左右のコマ片53o,53pに跨って形成されている。即ち、他のコマ53b〜53dは、それぞれの収容部53f〜53hを境に動翼5の腹側及び背側に分割可能に構成されている。
【0041】
なお、動翼5の翼部5dは、腹側が凹、背側が凸の湾曲形状を呈している。また、翼部5dには、全体に亘って捻りが加えられている。この捻りは、
図7の説明図で示すように、翼基部5drよりも翼先端5dtの方が、翼部5dの前縁の位置が動翼5の回転方向において先行するようなものである。このため、
図7に仮想線で示している各コマ53b〜53dの収容部53f〜53hの位置は、実際には、
図4に示すように、翼部5dの各収容部53f〜53hにそれぞれ収容される部分の位置に合わせてそれぞれ異なる。
【0042】
以上の構成による動翼保持部50に動翼5を保持させる際には、まず、サブブロック53の開口側コマ53aの収容部53eに、動翼5の保持部5bを保持させると共に、他のコマ53b〜53dの収容部53f〜53hに動翼5の翼部5dを収容して、サブブロック53をコマ53d側(動翼5の翼先端5dt側)からメインブロック52の凹部52cに挿入する。
【0043】
一方、メインブロック52の凹部52cの上方のブロック固定部52d,52dの間と、凹部52cの下方のブロック固定部52d,52dの間には、
図5(a)に示すように、取付片56aのコマ押え部56bをそれぞれ挿入する。そして、取付片56aのねじ孔56cとブロック固定部52dのねじ孔52eを貫通させた固定ねじ55を、
図5(b)に示す、開口側コマ53aの左右のコマ片53i,53jのねじ孔53q,53rにねじ止めする。これにより、動翼5を保持したサブブロック53がメインブロック52に固定される。そこで最後に、メインブロック52を取付ねじ54によりベースブロック51にねじ止めする。
【0044】
これにより、
図6(b)に示すように、各取付片56aのコマ押え部56bによって上下のコマ片53k,53lが動翼5の保持部5b側に押圧されて、動翼5の保持部5bが開口側コマ53aの収容部53e(の内周面で構成される保持面)により強固に保持される。また、
図6(a)に示すように、動翼5のフランジ部5cが、開口側コマ53aのコマ53bが当接しない方の端面に当接する。この状態で、動翼5の翼部5dは、各コマ53b〜53dの収容部53f〜53hから間隔をおいて位置する。
【0045】
なお、ベースブロック51、メインブロック52、及び、サブブロック53は、例えばステンレス鋼で形成することができる。これらは、ディスク保持部30のディスク3やその周面3aに接合面5aを当接させた動翼5を介して伝わる荷重付与部40からの荷重に対抗する剛性を有している。また、サブブロック53は、ディスク3の周面3aに摩擦接合する際の動翼5の加熱温度に対する耐熱性を有している。
【0046】
上述した動翼保持部50には、
図1に示すベース部20上の振動付与部70によって、動翼5の翼弦方向Xに往復移動する振動力が付与される。振動付与部70は、油圧シリンダ等によって構成することができる。
【0047】
なお、振動付与部70により振動力を付与する前に、動翼保持部50のサブブロック53に保持された動翼5の特に接合面5aを、摩擦接合に適した温度に加熱してもよい。動翼5を加熱する際には、動翼5を直接加熱してもよく、動翼保持部50を介して間接的に動翼5を加熱してもよい。
【0048】
動翼5を加熱するか否かは、ディスク3や動翼5に用いる材料や、線形摩擦接合装置10によって行う線形摩擦接合動作の内容といった条件に応じて、任意に決定することができる。
【0049】
なお、ディスク保持部30に設けたロータリーアクチュエータ31によるディスク3の回転や、荷重付与部40によるディスク保持部30の動翼保持部50側への荷重付与、振動付与部70による動翼保持部50への翼弦方向Yの振動力付与等は、制御部80によって制御される。
【0050】
このように構成された本実施形態の線形摩擦接合装置10では、動翼保持部50に保持させた動翼5の接合面5aを、ディスク保持部30に保持したディスク3の周面3aに当接させる。そして、荷重付与部40によりディスク3を動翼5の接合面5aに押し付けつつ動翼5を振動付与部70により翼弦方向Xに往復移動(振動)させる。これにより、動翼5の接合面5aがディスク3の周面3aに摩擦接合される。
【0051】
以上の作業を、ディスク保持部30のロータリーアクチュエータ31によりディスク3を動翼5の立設間隔ずつ回転させつつ繰り返す。そして、ディスク3の周面3aに必要数の動翼5を摩擦接合したならば、各動翼5の保持部5b及びフランジ部5cや、摩擦接合によりバリが生じた接合面5aの部分を、エンドミル等を用いて正規の動翼5の外形となるまで切削除去する。これにより、ディスク3と動翼5とを一体化した一体型翼車1が完成する。
【0052】
そして、一体型翼車1を製造する際にディスク3から動翼5に加わる荷重は、動翼5のフランジ部5cからサブブロック53の開口側コマ53aのディスク保持部30側の端面に伝達され、サブブロック53が当接するメインブロック52の凹部52cの底面に伝達される。このように、動翼5のフランジ部5cが当接する端面をサブブロック53が有していることから、ディスク3から動翼5に加わる荷重が翼部5dに伝わることなくサブブロック53を経てメインブロック52に伝達される。このため、ディスク3から加わる荷重によって動翼5の翼部5dが変形するのを抑制することができる。
【0053】
また、サブブロック53の開口側コマ53aの収容部53eが動翼5の保持部5bを保持することから、メインブロック52と共にサブブロック53及び動翼5が一体となってディスク3に対し翼弦方向に往復移動される。しかも、サブブロック53と直接接触するのは、ディスク3の周面3aへの摩擦接合後に除去される動翼5の保持部5bやフランジ部5c等である。このため、ディスク3の周面3aに対するメインブロック52やサブブロック53の往復移動の際に動翼5に変形が生じるとしても、その変形が生じる箇所は動翼5の保持部5bに限られる。
【0054】
このため、動翼5の接合面5aをディスク3の周面3aに接触させて往復移動させることにより動翼5の翼部5dが変形することも、抑制することができる。
【0055】
なお、動翼5の保持部5bよりも翼先端側の翼部5dは、腹側が凹、背側が凸の湾曲形状で、かつ、捻りが加えられている。このため、サブブロック53を単体で構成すると、翼部5dの表面(請求項中の翼表面に相当)から一定間隔をおいて対向する収容部をサブブロック53に形成するには、翼部の表面形状に対応する湾曲面とする必要があり、製造が困難となる。
【0056】
一方、サブブロック53の収容部を平面で構成するには、翼部5dの全体に亘って表面に接触しないように、収容部の容積を大きくする必要があり、そうするためには、ディスク3から動翼5に加わる荷重のサブブロック53による受圧面積を小さくしなければならなくなる。
【0057】
そこで、本実施形態では、サブブロック53を、サブブロック53が保持されるメインブロック52の凹部52cの深さ方向に4つに分割した。そして、凹部52cの開口に露出する開口側コマ53aの収容部53eにより動翼5の保持部5bを保持し、他の各コマ53b〜53dの収容部53f〜53hに、動翼5の翼部5dの対応する部分を収容した。
【0058】
このため、各コマ53b〜53dの収容部53f〜53hを、動翼5の翼部5dの対応する部分にだけ接触しない平面で構成することができる。したがって、各コマ53b〜53dの収容部53f〜53hの位置を、各コマ53b〜53dの収容部53f〜53hに対向する翼部5dの、凹部52cの深さ方向と直交する平面内における位置に合わせて、各コマ53b〜53dごとにずらすことができる。
【0059】
これにより、各コマ53b〜53dに設けるディスク3からの荷重の受圧面積を、サブブロック53を一つの物体で構成する場合に比べて大きくし、サブブロック53としての剛性を高めることができる。よって、ディスク3からの荷重に対するサブブロック53の耐性を強くすることができる。
【0060】
したがって、動翼5をディスク3に線形摩擦接合する際に動翼5をディスク3に十分に押し付けて、動翼5のディスク3に対する線形摩擦接合を効率よく行えるようにすることができる。
【0061】
なお、サブブロック53を複数のコマ53a〜53dに分割するか否かは任意である。また、分割する際の分割数も、本実施形態のように、開口側コマ53aを除いて3つに分割する代わりに、開口側コマ53aを除いて2つに分割したり、4つ以上に分割しても良い。
【0062】
さらに、本実施形態では、動翼5を根元からディスク3の周面3aに摩擦接合して一体型翼車1を新しく製造する場合について説明した。しかし、本発明は、既に形成された一体型翼車1の翼部5dが一部欠けた動翼5を修理する際に、翼部5dの欠けた部分を切除し補修用の翼部を接合する際にも、利用することができる。
【0063】
この場合、ディスク保持部30には、ディスク3と動翼5の翼部5dの根元側の一部とからなるディスク側部分が保持され、動翼保持部50のメインブロック52及びサブブロック53には、ディスク3の周面3aに残っている動翼5の翼部5dの根元側に継ぎ足す補修用の翼部5dの先端側部分(動翼側部分)が保持される。そして、ディスク3側の動翼5の翼部5dの欠損部を切除した切り口と、補修用の動翼5の翼部5dの接合面とを当接させて、摩擦接合することになる。
【0064】
また、本実施形態では、ディスクの周面に摩擦接合するのが、ディスクと共に回転する動翼である場合について説明した。しかし、本発明は、静翼のように回転しない翼とディスクとを一体化したブリスクを摩擦接合により製造する際にも適用可能である。