特許第6156132号(P6156132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156132
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】光ディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/0045 20060101AFI20170626BHJP
   G11B 7/004 20060101ALI20170626BHJP
   G11B 7/1263 20120101ALI20170626BHJP
   G11B 7/1267 20120101ALI20170626BHJP
【FI】
   G11B7/0045 B
   G11B7/004 C
   G11B7/1263
   G11B7/1267
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-267825(P2013-267825)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-125784(P2015-125784A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】313001480
【氏名又は名称】オンキヨー&パイオニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−054980(JP,A)
【文献】 特開2008−152819(JP,A)
【文献】 特開平09−288827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/0045
G11B 7/004
G11B 7/1263
G11B 7/1267
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転駆動する駆動手段と、
前記光ディスクにデータを記録する際に、記録品質を示す評価パラメータを用いて記録パワーを補正する補正手段と、
前記補正手段による記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超える場合に前記駆動手段の駆動速度を低下させるとともに、低下後の駆動速度に応じた記録パワーに設定する制御手段と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記制御手段は、駆動速度を低下させた後に再び前記補正手段による記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超えない場合に前記駆動手段の駆動速度を元の速度に復帰させるとともに、復帰後の駆動速度に応じた記録パワーに設定する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の光ディスク装置において、
前記補正手段は、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCにより記録パワーを補正する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクを回転駆動する駆動手段と、
前記光ディスクにデータを記録する際に、記録品質を示す評価パラメータを用いて記録パワーを補正する補正手段と、
前記補正手段による記録パワーの補正量、あるいは記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超える場合に前記駆動手段の駆動速度を低下させるとともに、低下後の駆動速度に応じた記録パワーに設定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、駆動速度を低下させた後に再び前記補正手段による記録パワーの補正量、あるいは記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超えない場合に前記駆動手段の駆動速度を元の速度に復帰させるとともに、復帰後の駆動速度に応じた記録パワーに設定する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ディスク装置において、
前記補正手段は、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCにより記録パワーを補正する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置、特にデータ記録時の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ディスクの表面に付着した汚れや埃、傷等により記録再生特性が劣化することに鑑み、光ディスク表面の欠陥を検出する技術が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、再生パワーのレーザ光を照射して光ディスクをトレースし、トレース期間中の戻り光量を検出し、所定の閾値と比較することで光ディスクの表面欠陥を検出することが開示されている。光ディスクの表面欠陥を検出した場合、光ディスクの駆動速度を低下させて記録エラーを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−179152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、再生パワーで光ディスクをトレースする構成では、光ディスクの全領域をトレースする場合には時間を要する問題がある。例えば、トレースするための再生速度と、その後の記録速度が同じであるとすると、通常の記録時間に比して2倍の時間を要することになる。
【0006】
また、記録品質を低下させる要因としては、表面欠陥のみならず、記録膜自体の面内感度差、チルトやフォーカスバランス等のサーボ的な影響、回転数や光ピックアップの位置により引き起こされる共振現象等のメカ的な影響があり得るが、このような多様な原因に対処することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、光ディスク表面の汚れや埃、傷に限らず、記録膜自体の面内感度差、チルトやフォーカスバランス等のサーボ的な影響、回転数や光ピックアップの位置により引き起こされる共振現象等のメカ的な影響等が存在していても、記録時間を大幅に低下させることなく記録品質を維持できる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光ディスクを回転駆動する駆動手段と、前記光ディスクにデータを記録する際に、記録品質を示す評価パラメータを用いて記録パワーを補正する補正手段と、前記補正手段による記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超える場合に前記駆動手段の駆動速度を低下させるとともに、低下後の駆動速度に応じた記録パワーに設定する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記制御手段は、駆動速度を低下させた後に再び前記補正手段による記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超えない場合に前記駆動手段の駆動速度を元の速度に復帰させるとともに、復帰後の駆動速度に応じた記録パワーに設定することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施形態では、前記補正手段は、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCにより記録パワーを補正することを特徴とする。また、本発明は、光ディスクを回転駆動する駆動手段と、前記光ディスクにデータを記録する際に、記録品質を示す評価パラメータを用いて記録パワーを補正する補正手段と、前記補正手段による記録パワーの補正量、あるいは記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超える場合に前記駆動手段の駆動速度を低下させるとともに、低下後の駆動速度に応じた記録パワーに設定する制御手段とを備え、前記制御手段は、駆動速度を低下させた後に再び前記補正手段による記録パワーの補正量、あるいは記録パワーの補正量の一定時間内若しくは一定区間内の積分値を閾値と比較し、閾値を超えない場合に前記駆動手段の駆動速度を元の速度に復帰させるとともに、復帰後の駆動速度に応じた記録パワーに設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光ディスクの表面欠陥やサーボ的な影響、共振現象等のメカ的な影響等が存在していても、記録時間を大幅に低下させることなく記録品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光ディスク装置の構成ブロック図である。
図2】実施形態の処理フローチャートである。
図3】記録速度及び記録パワーの時間変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本実施形態に係る光ディスク装置の全体構成図を示す。DVD−R/RW、+R/+RW、RAM等の記録可能な光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により回転駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0015】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。ドライバ20は、ドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22はオートパワーコントロール回路(APC)24により駆動電流が所望の値となるように制御される。APC24は、光ディスク10のテストエリア(PCA)において実行されたOPC(Optimum Power Control)により選択された最適記録パワーとなるようにドライバ22の駆動電流を制御する。OPCは、光ディスク10のPCAに記録パワーを複数段に変化させてテストデータを記録し、該テストデータを再生してその信号品質を評価し、所望の信号品質が得られる記録パワーを選択する処理である。信号品質には、β値やγ値、変調度、ジッタ等が用いられる。光ディスク10の記録層が第1層及び第2層から構成されている場合、OPCは各記録層毎に実行される。但し、奥側の第2層に関しては、第1層が未記録の場合と記録済の場合とで、それぞれ異なる記録パワーが設定される。
【0016】
光ディスク10に記録されたデータを再生する際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られた8−16変調信号をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、2値化信号を8−16復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト装置に出力する。なお、再生データをホスト装置に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0017】
光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からの記録すべきデータはインタフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードして8−16変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは、例えばマルチパルスにおける先頭パルスのパルス幅や後続パルスのパルス幅、パルスデューティから構成される。記録ストラテジは記録品質に影響することから、通常はある最適ストラテジに固定される。OPC時に記録ストラテジを併せて設定してもよい。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データは、記録パワーのレーザ光を照射して形成されるマーク部と、記録パワー以外のレーザ光(再生パワーやゼロパワーあるいはイレースパワー)が照射されるだけのスペース部の長さ、すなわちマークの前端及び後端のエッジ位置により記録されるマークエッジ方式である。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を2値化回路34に供給し、2値化された8−16変調データはエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、8−16変調データをデコードし、正常にデコードできない場合は交替処理を行う。具体的には、バッファメモリ38に記憶されている記録済みデータを交替領域へ記録する。光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からのライトコマンド及びこれに付随する記録すべきデータを受信し、指定されたアドレスに光ピックアップ16をシークさせて記録動作に移行する。
【0018】
また、データ記録時には、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCにより記録パワーを補正しつつ記録を行う。ランニングOPC及びウォーキングOPCはいずれも公知であるが、ランニングOPCは、データ記録中において光ディスクからの反射光量を検出し、反射光量に応じて記録レーザ光パワーを補正するものであり、データ記録中の反射光量のうち、記録レーザ光によりピットが形成されてその反射光量が安定するレベルB部分をサンプリングして検出し、このレベルBの値に応じて記録レーザ光パワーを補正する。例えば、記録レーザ光パワーをP、レベルBの値をBとすると、B/Pnが一定となるように記録レーザ光パワーPを補正する。nは例えば2等に設定される。また、ウォーキングOPCは、一定間隔ごと又は一定時間ごとに記録を中断して記録終端部を再生してその記録終端部におけるβ値を測定し、測定して得られたβ値と目標β値とを比較して記録パワーを補正するものである。
【0019】
光ディスク10の表面欠陥や記録膜自体の面内感度差、チルトやフォーカスバランス等のサーボ的な影響、回転数や光ピックアップの位置により引き起こされる共振現象等のメカ的な影響が存在すると、その領域ではランニングOPCやウォーキングOPCにより記録パワーが増減補正されることになる。本実施形態では、このことに着目し、ランニングOPCやウォーキングOPCにより記録パワーが補正された場合、その領域では、逆に、表面欠陥や記録膜自体の面内感度差、チルトやフォーカスバランス等のサーボ的な影響、回転数や光ピックアップの位置により引き起こされる共振現象等のメカ的な影響が存在するものとみなす。そして、システムコントローラ32は、APC24に指令する記録パワーPの補正量ΔPを監視し、記録パワーPの補正量ΔPの積算、すなわち記録パワーPの補正量ΔPの積分値が所定の閾値を超えた場合に、光ディスク10の回転速度を低下させて記録品質の低下を防止する。
【0020】
図2に、本実施形態の処理フローチャートを示す。データの記録が開始されると、システムコントローラ32は、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCによる記録パワーPの補正量ΔPを監視する(S101)。具体的には、システムコントローラ32は、一定時間内あるいは一定区間内のパワー補正量ΔPの積分値を算出し、算出した積分値を所定の閾値と大小比較することで監視する。
【0021】
そして、記録パワーPの補正量ΔPの積分値が閾値を未だ超えていない場合(S102でNO)、上位の記録速度へ復帰することが可能であるか否かを判定する(S103)。未だ、記録速度、すなわち光ディスク10の回転速度を低下させていない場合にはNOと判定され、引き続きパワー補正量ΔPの監視を続ける。
【0022】
パワー補正量ΔPの積分値が閾値を超えた場合(S102でYES)、減速が可能であるか否かを判定する(S105)。既に最低速度で光ディスク10を回転駆動している場合には減速は不可と判定され、そうでなければ可能と判定される。減速が可能である場合、記録を中断して下位の速度へ減速し、下位速度の最適記録パワーを設定して再び記録を開始する(S106)。具体的な例として、光ディスク10の回転速度を2倍速、4倍速、6倍速、8倍速で回転駆動するものとし、予め各回転速度における最適記録パワーをOPCにより求めておく。
2倍速:6mW
4倍速:8mW
6倍速:10mW
8倍速:12mW
の如くである。そして、現在の記録速度が6倍速である場合、S105でYESと判定され、S106で下位速度の4倍速へ減速するとともに、4倍速の最適記録パワーである8mWに設定して記録を再開する。記録を再開した後、引き続きパワー補正量ΔPの監視を続ける。
【0023】
一方、一定時間内あるいは一定区間内のパワー補正量ΔPの積分値が閾値を超えない場合、上記のように上位記録速度へ復帰することが可能か否かを判定する。回転速度が4倍速の場合、上位の速度である6倍速に復帰することが可能であるため、S103でYESと判定されると、記録を中断して上位の速度へ復帰するとともに、その上位の速度の最適記録パワーを設定して再び記録を開始する(S104)。すなわち、4倍速から6倍速に増速するとともに、記録パワーを6倍速の最適記録パワーである10mWに設定して記録を再開する。
【0024】
図3に、記録速度N及び記録パワーPの時間変化の一例を示す。図において、符号100は記録パワーを示し、符号200は記録速度(回転速度)Nを示す。6倍速における最適記録パワー10mWでデータを記録している際に、何らかの要因によりランニングOPCあるいはウォーキングOPCによる記録パワーが変動し、記録パワーPの補正量ΔPの積分値が順次増大して時刻t1で閾値を超えると、回転速度を6倍速から4倍速に低下させるとともに、記録パワーPを4倍速に最適な記録パワー8mWに設定する。そして、4倍速、記録パワー8mWで記録を再開した後に、再び記録パワーPの補正量ΔPの積分値を一定時間あるいは一定区間において算出し、閾値を超えない場合、時刻t2において再び回転速度を6倍速に復帰させるとともに、記録パワーPを6倍速における最適記録パワー10mWに復帰させて記録を再開する。
【0025】
以上の処理を繰り返すことで、パワー補正量ΔPの積分値が大きい領域では自動的に光ディスク10の回転速度を低下させることで記録品質を維持ないし向上させることができる。また、一旦記録速度が低下したとしても、パワー補正量ΔPの積算値が閾値を超えなくなった場合には再び元の記録速度に自動復帰するので、記録速度の低下を最小限に抑えることが可能である。
【0026】
本実施形態では、記録パワーPのパワー補正量ΔPの積分値を評価しているため、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCによるパワー補正量ΔPの変動の度合いを正確に把握することができる。従って、光ディスク10の表面欠陥のみならず、サーボ的な影響や共振現象等のメカ的な影響により記録パワーPが増大ないし減少補正される事象も正確に把握することができ、これらを考慮して記録速度を増減調整することが可能である。
【0027】
なお、温度上昇によりレーザ波長が変化し、これにより記録特性が変化することも知られているが、本実施形態では、温度上昇によりレーザ波長が変化すると、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCによる記録パワーPの補正として現れるから、パワー補正量ΔPの積分値を評価することでレーザ波長の変化にも対処することが可能である。
【0028】
また、ランニングOPCあるいはウォーキングOPCによる記録パワーPを補正する際に、レーザダイオードの光量規格等の制約から、パワー補正量ΔPの上限を設定し、パワー補正量ΔPがその上限に達した場合にそれ以上の記録パワーの補正を停止する技術も想定されるが、本実施形態における閾値は当該上限とは無関係に設定されるものであり、記録パワーPの補正が未だ可能である範囲内において記録速度を低下させるとともに記録パワーPを低下させるものである。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0030】
例えば、図2の処理において、S106にて減速した後、S104にて元の速度に復帰することになるが、減速と復帰が頻繁に繰り返されることを防止するために、S103あるいはS104にて復帰回数を上限値(任意の設定回数)と比較し、上限値を超える場合に元の速度への復帰を制限してもよい。
【0031】
また、図2の処理において、S106で減速した後、元の速度に復帰するか否かを判定する際の閾値を、減速時の閾値と同一ではなく、復帰専用の閾値としてもよい。例えば、減速時の閾値をTH1、復帰専用の閾値をTH2とすると、TH1>TH2としてもよい。
【0032】
勿論、閾値の代わりに、元の速度に復帰するか否かを判定する際の積分時間あるいは積分区間を、減速時と同一ではなく、復帰専用の積分時間あるいは積分区間としてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、パワー補正量ΔPの積分値を閾値と大小比較しているが、簡易的に、パワー補正量ΔP自体を閾値と大小比較してもよい。すなわち、パワー補正量ΔPの絶対値を閾値と大小比較し、閾値を超えた場合に記録速度を低下させるとともに、その記録速度に最適の記録パワーを設定して記録を再開してもよい。この場合、減速後に元の速度に復帰するか否かを判定する際に、一定時間あるいは一定区間、閾値を超えない場合に元の速度に復帰すればよい。
【0034】
また、本実施形態では、記録パワーを補正する方法としてランニングOPCあるいはウォーキングOPCを例示したが、これに限定されるものではなく、記録中に記録品質を示すβ値などの評価パラメータを用いて記録パワーを補正する任意の技術を用いることができる。
【0035】
また、本実施形態では、パワー補正量ΔPの積分値が閾値を超えた場合に下位の速度に減速しているが、この場合、パワー補正量ΔPの積分値の大小に応じて、1段階減速するか、あるいは2段階以上減速するかを決定してもよい。例えば、パワー補正量ΔPの積分値が閾値を超えた場合であって、積分値がさらに第2の閾値を超えていない場合には1段階だけ減速し、第2の閾値を超えている場合には2段階減速する等である。2段階減速した場合でも、減速後の記録パワーは、2段階減速したときの記録速度に最適の記録パワーに設定する。また、2段階減速した場合でも、復帰時には1段階ずつ増速してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、一定時間内あるいは一定区間内のパワー補正量の積分値を算出しているが、一定時間あるいは一定区間は予め製品出荷時に設定してシステムコントローラ32のプログラムメモリに記憶させておく他、ユーザが所望の時間あるいは区間を設定してプログラムメモリに記憶させてもよい。この場合、光ディスク10を内周、中周、外周に分け、内周、中周、外周とで互いに異なる時間あるいは区間を設定してもよい。すなわち、積分値を算出する積分時間あるいは積分区間は、必ずしも光ディスク10の全領域において同一である必要はない。
【符号の説明】
【0037】
10 光ディスク、16 光ピックアップ、32 システムコントローラ。
図1
図2
図3