特許第6156136号(P6156136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6156136はんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156136
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】はんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   H01L21/92 603B
   H01L21/92 604E
   H01L21/92 602B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-270853(P2013-270853)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126159(P2015-126159A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139240
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100119921
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 正之
(74)【代理人】
【識別番号】100113826
【弁理士】
【氏名又は名称】倉地 保幸
(74)【代理人】
【識別番号】100076679
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 将
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】八十嶋 司
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−266230(JP,A)
【文献】 特開平7−30244(JP,A)
【文献】 特開2010−62256(JP,A)
【文献】 特開平3−48426(JP,A)
【文献】 特開2012−250239(JP,A)
【文献】 特開2005−294482(JP,A)
【文献】 特開平7−312400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペーストであって、該芯用ペーストは、60〜95質量%の混合粉末と5〜40質量%のフラックスとからなり、前記混合粉末は、第一群粉末と第二群粉末との混合粉末とからなり、前記第一群粉末は、芯用ペーストの焼結温度より高い液相温度を有する金属粉末及び合金粉末の少なくとも一種以上からなり、前記第二群粉末は、芯用ペーストの焼結温度より液相温度が低く、焼結温度で液相が出現する金属粉末及び合金粉末の少なくとも一種以上からなり、前記第一群粉末の含有量は、前記第一群粉末と前記第二群粉末の合計量の10〜90質量%であることを特徴とするはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト。
【請求項2】
前記第一群粉末は、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ti、Ni、Fe、Coの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末を第一A群粉末、また、液相温度が450℃以上のろう合金粉末及び液相温度が280℃以上の高温はんだ合金粉末の内から選ばれた一種又は二種以上の合金粉末を第一B群粉末とした場合、第一A群粉末と第一B群粉末の少なくとも一種以上からなることを特徴とする請求項1に記載のはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト。
【請求項3】
前記第二群粉末は、Sn,In,Bi,Gaの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末を第二A群粉末、また、液相温度が240℃以下のはんだ合金の合金粉末を第二B群粉末とした場合、第二A群粉末と第二B群粉末の少なくとも一種以上からなることを特徴とする請求項1に記載のはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペーストに係り、特に、半導体装置用はんだバンプのファインピッチ化を図ったはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の高密度実装のために、はんだバンプを用いた接合が一般に用いられているが、より一層の高密度化を図るためには、はんだバンプ形成のファインピッチ化が求められる。
そして、この要請に応えるべく、ファインピッチ化を実現するためのはんだバンプについて、従来からいくつかの提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、半導体基板表面の導体パッド上に、ピラー金属、ピラー金属上面を覆うアンダーバンプ金属層及び導体パッドとほぼ等径のはんだ金属層を順次形成してはんだ金属のリフロー処理を行うことによってはんだバンプを形成することが提案されており、また、特許文献2には、特許文献1記載のものと同様に導体パッドとほぼ等径のはんだ金属層を順次形成した後、ピラー金属層の直径を減少させ、次いで、はんだ金属のリフロー処理を行い、図1に示すようなはんだバンプを形成することによって、ファインピッチ化を図ることが提案されている。
【0004】
また、例えば、特許文献3には、半導体チップ上のパット電極を下向きにして溶融はんだの噴流面に接触させることにより当該パッド電極上に一次はんだバンプを形成し、この一次はんだバンプが形成されたパッド電極を上向きにし、これにスクリーン印刷の手法によってはんだペーストを載置し、このはんだペーストを下向きにし、この下向きにされ重力が加えられた状態で前記はんだペーストをリフローして二次はんだバンプを形成することによって、パット電極のファインピッチ化を可能としたはんだバンプの製造も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−187258号公報
【特許文献2】特開2006−332694号公報
【特許文献3】特許第3961876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に示されるように、半導体の高密度実装に向けて、はんだバンプのファインピッチ化が図られているところであるが、はんだバンプの密着性、導電性を確保した上でのファインピッチ化技術は、未だ確立されていない。
例えば、特許文献1、2記載の技術においては、ウエハや有機基板の電極上に、電気メッキ法を用いて、小径のピラーを形成し、その上にメッキ法を用いてはんだ金属を形成し、リフロー処理を施すことではんだバンプを形成し、バンプの高さをある程度にまで高く形成している。ただし、メッキ法にてピラー形成、はんだ金属形成しているために、プロセススループットが悪く、また、溶融時のはんだ金属の自重および表面張力によって、バンプが扁平になりバンプ高さが制限されるため、はんだバンプ径に比して、それほど高いアスペクト比のものを得ることはできず、仮に、はんだ金属の載置量を増やしたとしても、隣接する他のはんだバンプに接触してショートを引き起こすおそれが生じるという問題がある。
また、特許文献3記載の技術においても、一次はんだバンプ表面のはんだペーストに対して、下向きにしてリフローすることによって、比較的、アスペクト比の高いバンプは形成されるが、アッセンブリ時など、再溶融時に、はんだ金属の自重および表面張力によって自ずとアスペクト比は制約を受け、隣接する溶融はんだ金属バンプと接触することで、電気的導通不良の原因となる恐れがある。
したがって、半導体の高密度実装を実現するためには、ファインピッチ化が可能となる高アスペクト比のはんだバンプが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、はんだバンプのファインピッチ化を可能とすべく、はんだバンプの構造について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0008】
即ち、本発明者らは、はんだバンプの作製にあたり、予め、所定の材料からなる芯用ペーストを半導体基板の所定位置(例えば、半導体パッケージ用有機基板上に形成されたパッド電極表面あるいは半導体パッケージ用ウエハ上に形成されたUBM(アンダーバンプメタル))に塗布し、リフロー処理することで、この芯用ペーストを焼結して所定の高さの焼結芯を形成し、次いで、該焼結芯の周囲に印刷法ではんだペーストを付着させた後、このはんだペーストをリフロー処理することによって、内部に焼結芯が形成された高アスペクト比のはんだバンプが形成されることを見出した。
【0009】
そして、本発明者らは、前記焼結芯を形成するための芯用ペースト材料についてさらに検討を進め、芯用ペースト材料としては、はんだ金属との濡れ性が良い焼結芯を形成し、はんだ金属と焼結芯の密着性向上を図り得る芯用ペーストであることが好ましく、また、はんだ金属をリフローする際にも、焼結芯は、はんだリフロー温度で、軟化・溶融せず、焼結芯としてのそのままの形状を維持し、焼結芯の周囲にはんだ金属を付着させる必要がある。ここで、焼結芯を形成する際の芯用ペーストの焼結温度は、取扱性及び基板やウエハの耐熱性を考慮して、通常のはんだ金属ペーストをリフローする温度近傍またはそれ以下で焼結する必要がある。ただし、焼結後は、次工程であるはんだ金属ペーストのリフロー時は芯として軟化・溶融しないように芯用ペースト材料を検討した。
その結果、はんだ金属ペーストをリフローする温度で焼結芯を軟化・溶融させないという観点から、第一群粉末としては、芯用ペーストの焼結温度より高い液相温度を有する金属粉末、合金粉末または金属−合金混合粉末を用い、また、第二群粉末としては、芯用ペーストの焼結温度より低い液相温度を有し、焼結温度で液相が出現する金属粉末、合金粉末または金属−合金混合粉末を用い、第一群粉末と第二群粉末との混合粉末を含有するペーストが、芯用ペーストとして好適であることを見出した。
具体的に言えば、金属粉末からなる第一群粉末としては、例えば、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ti、Ni、Fe、Coの内から選ばれる一種又は二種以上(以下、「第一A群」という場合もある)をあげることができ、また、金属粉末からなる第二群粉末としては、例えば、Sn,In、Bi、Gaの内から選ばれる一種又は二種以上(以下、「第二A群」という場合もある)をあげることができる。
さらに、合金粉末からなる第一群粉末としては、例えば、液相温度が450℃以上のろう合金、液相温度が280℃以上の高温はんだ合金(以下、「第一B群」という場合もある)をあげることができ、また、合金粉末からなる第二群粉末としては、例えば、液相温度が240℃以下のはんだ合金(以下、「第二B群」という場合もある)等をあげることができる。
【0010】
そして、前記芯用ペーストを焼結して形成した焼結芯を、予めはんだバンプ内部に形成しておいた場合には、焼結芯の存在によって、はんだバンプの自重による扁平化が生じにくくなるため、バンプ高さの高い高アスペクト比のはんだバンプが得られること、また、はんだ金属と焼結芯の密着性がすぐれることから、バンプと半導体基板との密着性も向上すること、さらに、この高アスペクト比のはんだバンプは、従来バンプに比し遜色のない導電性を備えることを見出したのである。
【0011】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
(1)はんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペーストであって、該芯用ペーストは、60〜95質量%の混合粉末と5〜40質量%のフラックスとからなり、前記混合粉末は、第一群粉末と第二群粉末との混合粉末とからなり、前記第一群粉末は、芯用ペーストの焼結温度より高い液相温度を有する金属粉末及び合金粉末の少なくとも一種以上からなり、前記第二群粉末は、芯用ペーストの焼結温度より液相温度が低く、焼結温度で液相が出現する金属粉末及び合金粉末の少なくとも一種以上からなり、前記第一群粉末の含有量は、前記第一群粉末と前記第二群粉末の合計量の10〜90質量%であることを特徴とするはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト、
(2)前記第一群粉末は、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ti、Ni、Fe、Coの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末を第一A群粉末、また、液相温度が450℃以上のろう合金粉末及び液相温度が280℃以上の高温はんだ合金粉末の内から選ばれた一種又は二種以上の合金粉末を第一B群粉末とした場合、第一A群粉末と第一B群粉末の少なくとも一種以上からなることを特徴とする前記(1)に記載のはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト、
(3)前記第二群粉末は、Sn,In,Bi,Gaの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末を第二A群粉末、また、液相温度が240℃以下のはんだ合金の合金粉末を第二B群粉末とした場合、第二A群粉末と第二B群粉末の少なくとも一種以上からなることを特徴とする前記(1)に記載のはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペースト、
に特徴を有するものである。
【0012】
以下、図面とともに本発明を詳細に説明する。
図2に、本発明のはんだバンプの製造工程の概略説明図を示し、図3に、本発明の製造法により得られたはんだバンプの断面概略模式図を示す。
【0013】
図2に示すように、本発明のはんだバンプは、(a)〜(d)の工程(第一工程という)及び(e)〜(h)の工程(第二工程という)により作製することができる。
第一工程は、以下のとおりである。
まず、パッド電極が形成されている半導体基板の表面(半導体パッケージ用ウエハ上にUBMが設けられている場合も当然に含むが、以下、UBMについての説明は省略する。)に、パッド電極のほぼ中央部の表面が露出する程度の開口を有するメタルマスクを取付け(図2(a)参照)、メタルマスクの開口からパッド電極のほぼ中央部の表面にスキージを用いて本発明の芯用ペーストを印刷する(図2(b)参照)。
次いで、メタルマスクを取り外し(図2(c)参照)、芯用ペーストの種類に応じた温度で焼結し、パッド電極のほぼ中央部に、半導体基板に垂直な方向に延び、かつ、最終的に形成されるはんだバンプの高さよりも低い高さの焼結芯を形成する。
なお、図2では、パッド電極表面に形成されるUMBの図示を省略しているが、パッド電極上にUBMが設けられている場合も、本発明の範囲に含まれることは勿論である。
【0014】
前記第一工程で形成される焼結芯は、本発明の芯用ペーストを焼結することによって形成されるものであって、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ti、Ni、Fe、Coの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末(第一A群粉末)からなる第一群粉末と、Sn,In、Bi、Gaの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末(第二A群粉末)からなる第二群粉末とを含有する粉末焼結体として構成することができる。
第一A群粉末としては、Cu,Ag,Auから選ばれた一種又は二種以上であることが望ましく、また、第二A群粉末としては、Sn,In,Biから選ばれた一種又は二種以上であることが望ましい。
また、前記焼結芯は、液相温度(以下、「融点」ともいう)が450℃程度のろう合金、融点が280℃以上の高温はんだ合金からなる合金粉末(第一B群粉末)を第一群粉末とし、融点が240℃以下のはんだ合金等からなる合金粉末(第二B群粉末)を第二群粉末とし、第一群粉末と第二群粉末の混合粉末を含有する芯用ペーストを焼結することによって形成しても良い。
さらに、前記焼結芯は、第一群粉末として前記金属粉末(第一A群粉末)を使用し、第二群粉末として前記合金粉末(第二B群粉末)を使用した芯用ペーストから形成することもでき、またその逆に、第一群粉末として前記合金粉末(第一B群粉末)を使用し、第二群粉末として前記金属粉末(第二A群粉末)を使用した芯用ペーストから形成しても良い。
前記融点が450℃程度のろう合金からなる第一群粉末の合金粉末(第一B群粉末)としては、例えば、具体的には、以下のものをあげることができる。Agろう、Cuろう、黄銅ろう、Alろう、Niろう、Pdろう、Auろうなどがある。たとえば、Ag−28質量%Cu(液相線温度780℃)、Ag−22質量%Cu−17質量%Zn−5質量%Sn(液相線温度650℃)、Al−11.7質量%Si(液相線温度577℃)、Au−18質量%Ni(液相線温度950℃)などがある。
また、前記融点が280℃以上の高温はんだ合金からなる第一群粉末の合金粉末(第一B群粉末)としては、例えば、具体的には、以下のものをあげることができる。Au−20質量%Sn(液相線温度280℃)、Au−12質量%Ge(液相線温度356℃)、Au−6質量%Si(液相線温度370℃)、Pb−5質量%Sn(液相線温度314℃)、Pb−10質量%Sn(液相線温度302℃)などがある。
また、前記融点が240℃以下のはんだ合金からなる第二群粉末の合金粉末(第二B群粉末)をとしては、例えば、具体的には、以下のものをあげることができる。Sn−3質量%Ag−
0.5質量%Cu(液相線温度217℃)、Sn−9質量%Zn(液相線温度199℃)、Sn−58質量%Bi(液相線温度138℃)、Pb−63質量%Sn(液相線温度183℃)、Sn−36質量%Pb−2質量%Ag(液相線温度179℃)などがある。
通常のはんだペーストをリフローする温度近傍またはそれ以下で焼結された焼結芯は焼結後、はんだ金属のリフロー温度より高い融点を持つ必要がある。これははんだ金属リフロー処理時にも、焼結芯が、軟化・溶融せず、焼結芯としてのそのままの形状を維持し、焼結芯の周囲にはんだ金属を付着させる必要があるからであって、これによって、高アスペクト比のはんだバンプが形成され、また、焼結芯が、はんだ金属と広い接触面積を有することによって、はんだバンプが自重によって扁平化することを防止すると同時に、はんだ金属と焼結芯の密着性を高め、ひいては、バンプとパッド電極、半導体基板との密着性を高めるという作用を発揮させるために必要であるという理由による。
また、はんだ金属の種類と焼結芯を形成する芯用ペーストの組合せによっては、はんだ金属と焼結芯の界面で拡散反応が生じ、はんだ金属と焼結芯との密着性が向上し、より一層、密着性にすぐれた高アスペクト比のはんだバンプが形成される。
なお、焼結芯を形成するための焼結に際し、第一群粉末と第二群粉末との組み合わせによっては、第一群粉末と第二群粉末との反応で、はんだ金属のリフロー温度より融点が低い低融点の合金・金属間化合物が形成されることもあり得るが、はんだ金属リフロー処理時にも、焼結芯が、軟化・溶融せず、焼結芯としてのそのままの形状を維持するという機能を全うするためには、形成される低融点の合金・金属間化合物の生成量をコントロールし、焼結芯として形状をそのまま維持できるようにしなければならない。
【0015】
前記のような焼結芯を形成するために使用される本発明の芯用ペーストは、以下の手順で調製することができる。
なお、ここでは、第一群粉末、第二群粉末ともに、金属粉末を使用した場合(即ち、第一A群粉末及び第二A群粉末を使用した場合)について説明する。
本発明の芯用ペーストの原料粉末としては、まず、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ti、Ni、Fe、Coの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末(第一A群粉末)からなる第一群粉末と、Sn,In、Bi、Gaの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末(第二A群粉末)からなる第二群粉末を用意する。
上記第一群粉末と第二群粉末との混合粉末は、その総質量を100質量%とした場合に、第一群粉末の含有量が10〜90質量%となるように配合して、芯用ペースト用の混合粉末を作製する。
そして、この混合粉末を、V型混合機等の通常用いられる粉末混合機中で混合する。
次に、芯用ペーストの総質量を100質量%とした時に、フラックス含有量が5〜40質量%であり、残りは前記混合粉末となるように配合して芯用ペーストを調製し、この芯用ペーストを、機械混練機等の通常用いられる混練機中で混合することにより、前記焼結芯を形成するために使用される本発明の芯用ペーストを作製する。
なお、第一群粉末、第二群粉末ともに、金属粉末のみを使用して本発明の芯用ペーストを作製する場合(即ち、第一A群粉末及び第二A群粉末を使用する場合)には、以下の金属粉末が望ましい。
即ち、芯用ペーストの焼結温度は、はんだ金属のリフロー処理温度近傍またはそれ以下であるが、焼結後の焼結芯の融点は通常のリフロー温度より高いという観点、及び、はんだ金属との濡れ性、密着性に優れるという観点から、第一群粉末の金属粉末(第一A群粉末)として、Cu、Ag、Auの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末を用いることが望ましく、また、第二群粉末の金属粉末(第二A群粉末)としては、Sn、In、Biの内から選ばれた一種又は二種以上の金属粉末を用いることが望ましい。
【0016】
ここで、前記混合粉末中における第一群粉末の含有量が10質量%未満であると、リフロー時に溶融する第二群粉末の金属含有量が多すぎて、芯が崩れてしまい、芯柱状の焼結芯にならない。また、2回目のリフロー時に、芯柱状の焼結芯を構成する第一群粉末の金属と第二群粉末の金属において、第二群粉末の金属に起因する再溶融が発生してしまう。
一方、第一群粉末の含有量が90質量%を超えると、リフロー時に溶融する第二群粉末の金属が少なすぎて焼結が進まず、第二工程であるはんだ金属ペースト印刷時に形状が崩れてしまうため、本発明では、混合粉末中における第一群粉末の含有量を10〜90質量%と定めたが、30〜80質量%であることがより望ましい。
【0017】
また、本発明の芯用ペースト中におけるフラックスとしては、通常用いられる一般的なフラックスを用いることが可能であり、特に制限するものではないが、ペーストの濡れ性の観点等から、RAやRMAフラックスを用いることが好ましい。また、このフラックス中には、通常用いられるロジン、活性剤、溶剤およびチキソ剤等が含まれていても構わない。
本発明の芯用ペーストにおいて、ペースト中のフラックス含有量が5質量%未満であると、ペースト状にならない。一方、フラックス含有量が40質量%を超えると芯用ペーストの粘度が低すぎて、印刷の際にダレが生じたり、リフロー時に芯が崩れてしまい芯柱状の焼結芯としての十分な高さが確保できないことより、本発明では、芯用ペースト中のフラックス含有量を5〜40質量%と定めたが、フラックス含有量は、6 〜15 質量%であることが望ましい。
【0018】
また、前記第一工程で、上記で調製した本発明芯用ペーストを焼結することによって焼結芯を形成するが、焼結芯を形成するための焼結温度は、通常のはんだ金属ペーストのリフロー温度近傍またはそれ以下で行う。
したがって、使用するはんだ金属の種類に応じて、芯用ペーストに含有される第一群粉末と第二群粉末の種類、配合割合を定めなければならない。
例えば、はんだ金属として、Pb−Sn系合金(リフロー処理温度は、約210℃)を用いる場合は、このリフロー温度で焼結する芯用ペーストを用いる必要があり、芯柱状の焼結芯を形成させた後、Pb−Sn系合金ペーストを印刷し、このリフロー温度でバンプ形成することになる。一方、Sn、SnAg系合金、SnCu合金、SnAgCu系合金(リフロー処理温度は、約 240℃)を用いる場合は、このリフロー温度で焼結する芯用ペーストを用いる必要があり、焼結芯柱を形成させた後、Sn、SnAg系合金、SnCu合金、SnAgCu系合金ペーストを印刷し、このリフロー温度でバンプ形成することになる。
よって、ここで用いられる芯用ペーストは、これらのリフロー処理温度で焼結が進むように第一群粉末と第二群粉末の種類、配合割合を決定する必要がある。通常、焼結は第二群粉末が溶融することで、第一群粉末と反応することで進む。
また、ここで用いるはんだ金属粉及び芯用ペーストに用いる第一群の金属粉及び第二群の金属粉としては、粒径0.1〜35μmで平均粒径が0.3〜20μmの粉末を用いる。
なお、焼結によって得られた焼結芯は、第一群の金属粉末と第二群の金属粉末とからなる粉末焼結体、あるいは、第一群の金属粉末、合金粉末と第二群の金属粉末、合金粉末の相互が拡散等による合金化反応を起こした合金焼結体、あるいは、粉末焼結体と合金焼結体の混じった混合焼結体のいずれであっても構わない。
【0019】
前記第一工程(図2(a)〜(d))で、パッド電極のほぼ中央部に、半導体基板に垂直な方向に延び、かつ、最終的に形成されるはんだバンプの高さよりも低い高さの焼結芯を形成した後、第二工程で、はんだペーストを印刷塗布し、高アスペクト比のはんだバンプを作製する。
即ち、焼結芯がほぼ中央部に形成されたパッド電極の径より大きな開口を有し、焼結芯の高さ以上の厚みを有するメタルマスクを取付け(図2(e)参照)、メタルマスクの開口からパッド電極の露出部分及び焼結芯全体を覆うようにスキージを用いてはんだペーストを印刷塗布する(図2(f)参照)。
次いで、メタルマスクを取り外し(図2(g)参照)、はんだペーストの種類に応じたリフロー処理温度でリフロー処理し、パッド電極の表面に、しかも、焼結芯をその内部に閉じ込めるようにしてはんだバンプを形成する(図2(h)参照)。
前記第一工程(図2(a)〜(d))及び第二工程(図2(e)〜(h))により、ファインピッチ化に好適なはんだバンプが形成される。
【0020】
図3に、本発明の芯ペーストを用いて形成した焼結芯を内部に有するはんだバンプの縦断面拡大模式図を示す。
図3に示されるように、本発明のはんだバンプは、本発明芯用ペーストの焼結によって形成された焼結芯がバンプ内部に内包され、該焼結芯の周囲にはんだ金属が被着することによって、謂わば、卵型形状であって、しかも、有芯構造のはんだバンプが構成される。
従来のはんだバンプでは、芯用ペーストを用いて形成された焼結芯がバンプ内部に形成されていないため、はんだバンプ自体の自重により、バンプが扁平化し、バンプ高さを高くすることができなかったが、本発明によれば、有芯構造を構成するはんだバンプ内部の焼結芯にはんだ金属が密着することにより、導電性の低下を招くこともなく、はんだバンプと焼結芯、ひいては、はんだバンプとパッド電極、半導体基板との密着力が向上する。
さらに、焼結芯が、半導体基板に垂直な方向に延び、この周囲にはんだ金属が付着してはんだバンプを構成していることから、はんだバンプの高さを高くとることができる。
その結果、従来技術におけるはんだバンプの高さをh、また、はんだバンプ径をdとした場合の従来のはんだバンプのアスペクト比h/dに比して、本発明の有芯構造のはんだバンプの高さHとはんだバンプの径Dの比H/Dの値(即ち、本発明のはんだバンプのアスペクト比)は大きな値(即ち、H/D>h/d)となり、高アスペクト比のはんだバンプが形成されるから、はんだバンプのファインピッチ化を実現することができる。
なお、図3でも、パッド電極表面に形成されるアンダーバンプ金属の図示を省略しているが、パッド電極上にアンダーバンプ金属が設けられている場合も、本発明の範囲に含まれることは勿論である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペーストによれば、芯用ペーストを焼結することによって形成された焼結芯がバンプ内部に内包されているため、バンプの自重による扁平化が生じにくく、高アスペクト比のはんだバンプを形成することができるとともに、焼結芯とはんだ金属とが密着性にすぐれ、その結果、はんだバンプはパッド電極、半導体基板に対して強固に密着し、また、導電性を低下させることもないから、半導体の高密度実装を実現するためのファインピッチ化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術(特許文献2に記載のもの)におけるはんだバンプの概略説明図である。
図2】本発明の有芯構造はんだバンプの製造工程の概略説明図を示す。
図3】本発明の製造法により得られた有芯構造はんだバンプの断面概略模式図を示す。
図4】本発明芯用ペーストEを用いて、焼結温度240℃で形成された焼結芯のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るはんだバンプの焼結芯を形成するための芯用ペーストについて、実施例を用いて説明する。
【0024】
[実施例1]
表1に、本実施例1ではんだバンプを形成するために使用したはんだ金属として、5種類の合金粉末の成分組成を示す。
なお、このはんだ金属用合金粉末の粒径は、2〜12μmであり、平均粒径は、7μmである。
また、表2に、本実施例1で焼結芯を形成するために使用した本発明の芯用ペーストA〜Mを構成する金属粉末の種類、組合せ、配合割合、さらに、フラックスの種類とその含有割合を示す。
なお、芯用ペーストに含有される金属粉末については、その粒径は1〜5μmであり、平均粒径は、2.5μmである。
【0025】
まず、第一工程として、図2(a)〜(d)に示すように、パッド電極(直径:85μm)が形成されている半導体基板の表面に、パッド電極径より小径の開口(開口直径:43μm、開口ピッチ:150μm)が設けられた厚さ20μmのメタルマスクを載置し、表2に示す本発明の芯用ペーストA〜Mをスキージによりパッド電極表面に印刷塗布し、メタルマスクを取り外した後、印刷塗布した芯用ペーストを、窒素雰囲気のベルト炉で、表4に示す温度で焼結して、パッド電極の中央部にほぼメタルマスクの厚さに相当する高さを有する焼結芯を形成する。
【0026】
次に、第二工程として、図2(e)〜(h)に示すように、焼結芯がほぼ中央部に形成されたパッド電極の径より大きな開口を有し、焼結芯の高さ以上の厚みを有するメタルマスク(開口直径:110μm、開口ピッチ:150μm、厚さ:30μm)を載置し、メタルマスクの開口からパッド電極の露出部分及び焼結芯全体を覆うようにスキージを用いて、表1に示すはんだ金属用粉末を含有するはんだペーストを印刷塗布し、メタルマスクを取り外した後、窒素雰囲気のベルト炉で、はんだペーストの種類に応じて表4に示す温度でリフロー処理する。
前記の第一工程及び第二工程により、パッド電極の表面に、焼結芯をその内部に閉じ込めた表4に示す有芯構造はんだバンプ1〜17(以下、「本発明バンプ1〜17」という)を作製した。
【0027】
図4には、本発明の焼結芯の一例として、本発明の芯用ペーストEを用いて、焼結温度240℃で形成された9個の焼結芯のSEM画像を示す。表4に示す本発明バンプ5の内部には、この焼結芯が閉じ込められて有芯構造のバンプが構成される。
【0028】
上記で作製した本発明バンプ1〜17について、バンプ高さを評価するため、バンプの高さ測定を行った。
測定は、NEXIV VMR−3030(Nikon社製)を使用し、光学式画像解析により、バンプの頂点部から基板までの高さを測定することにより行い、200バンプについての測定値を平均して、バンプ高さとした。なお、本実施例では、パッド電極の直径及びメタルマスクの開口直径が一定であるため、バンプ高さが高いほどアスペスト比は高くなる。
表4に、本発明バンプ1〜17について求めたバンプ高さを示す。
【0029】
[比較例]
比較のために、実施例1における本発明の芯用ペーストA〜Mと異なる種類の表3に示す比較例のペーストa〜fを使用して、前記本発明バンプ1〜17を作製する時と同様な第一工程、第二工程を経て、表5に示す比較例のはんだバンプ1〜6(以下、「比較例バンプ1〜6」という)を作製した。
【0030】
[参考例]
参考のために、パッド電極(直径:85μm)が形成されている半導体基板の表面に、実施例1の第二工程で使用したと同じサイズのメタルマスク(開口直径:110μm、開口ピッチ:150μm、厚さ:30μm)を載置し、メタルマスクの開口からスキージを用いて、表1に示すはんだ金属用粉末を含有するはんだペーストを印刷塗布し、メタルマスクを取り外した後、窒素雰囲気のベルト炉で、はんだペーストの種類に応じて表5に示す温度でリフロー処理し、パッド電極の表面に、表5に示す参考例のはんだバンプ1〜5(以下、「参考例バンプ1〜5」という)を作製した。
即ち、参考例バンプ1〜5は、焼結芯の形成を行っていない点で、本発明バンプ1〜22とは、はんだバンプの構造及び製造法が大きく異なっている。
【0031】
比較例バンプ1〜6及び参考例バンプ1〜5について、本発明バンプ1〜22と同様にして、バンプ高さを求めた。なお、本比較例では、パッド電極の直径及びメタルマスクの開口直径が一定であるため、バンプ高さが高いほどアスペスト比は高くなる。
表5に、比較例バンプ1〜6及び参考例バンプ1〜5について求めたバンプ高さを示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
[実施例2]
実施例2として、第一群粉末あるいは第二群粉末の少なくとも一方を合金粉末とした表6に示す本発明芯用ペーストN〜Rを用いて、実施例1と同様にして、表7に示す有芯構造はんだバンプ18〜22(以下、「本発明バンプ18〜22」という)を作製した。
なお、このはんだ金属用合金粉末の粒径は、2〜12μmであり、平均粒径は、7μmであり、芯用ペーストに含有される金属粉末、合金粉末については、その粒径は1〜5μmであり、平均粒径は、2.5μmである。
表7に、本発明バンプ18〜22について求めたバンプ高さを示す。
【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
表3、表5に示す結果から、比較例バンプ1〜6のバンプ高さはせいぜい30μm前後であって、ファインピッチ化を図るためには十分な高さとはいえず、また、参考例バンプ1〜5は、自重によりバンプが扁平化し、バンプ高さが低いばかりか、他のバンプとの接触による短絡を引き起こしやすいものであった。
これに対して、表4、表7に示されるように本発明の芯用ペーストを使用して形成した焼結芯が内部に形成された本発明バンプ1〜17、18〜22は、バンプ高さが40μmを超えるものであって、比較例バンプ1〜6、参考例バンプ1〜5に比べてバンプ高さが高く高アスペクト比を有し、また、バンプ内部に焼結芯が形成されていることによって、焼結芯とはんだ金属との密着性、はんだバンプとパッド電極との密着性がすぐれ、また、導電性を低下させる恐れもないことから、半導体の高密度実装を実現するためのファインピッチ化に好適であることが分かる。









図1
図2
図3
図4