【実施例】
【0095】
実施例1:親和性複合体(E2抗E2抗体複合体)に対する抗体の取得
in vitroニワトリIgM取得技術〔(ADLib(Autonomously Diversifying Library)システム:例えば、WO2004/011644を参照〕を利用して、以下の方法を行なうことにより、E2抗E2抗体複合体に対する抗体を取得した。なお、本明細書中以降において、E1(エストロン)、E2(エストラジオール)、E3(エストリオール)と表記することがある。また、以下において、E2について、1μg/mLは3.7μMに相当し、F18−3抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当し、F12−33抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当し、トリコスタチンA(TSA)について、1μg/mLは3.3μMに相当する。
【0096】
(1)DT40細胞の多様化
多様化させたDT40細胞は、以下の手順により作製されたものを用いた。
・9%FBS,1%ニワトリ血清含有IMDM培地〔CS(Chicken Serum)
+培地〕50mLを計り取り、15cmディッシュに加えた。
・トリコスタチンA(TSA)を2.5ng/mLとなるように加えた。
・1.5×10
7個のDT40細胞を加え、39.5℃に設定したCO
2インキュベータ内で1日培養した。
【0097】
(2)DT40細胞の継代
以下の手順により、DT40細胞を継代した。
・1日培養した細胞懸濁液を50mLチューブに取り、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、10mLのCS
+培地で再び懸濁した。
・CS
+培地950μLに細胞懸濁液50μLを加えて20倍希釈し、撹拌した。
・生細胞数をカウントした。
・新しい15cmディッシュにCS
+培地50mLを加えた。
・1.5×10
7個のDT40細胞を加え、39.5℃に設定したCO
2インキュベータ内で1日培養した。
・目的抗体を産生する細胞の選択前に、TSA処理を2回行った。TSA処理は、2.5ng/mL TSAを含有するCS
+培地中で、39.5℃で一晩培養することにより、行った。
【0098】
(3)抗原結合粒子の調製
以下の手順により、抗原結合粒子を調製した。
・ProteinGが固定されている磁性粒子〔Dynabeads ProteinG(粒子径:2.8μm)、Invitrogen社から入手、カタログ番号:100.03D〕を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(13.5mg/mL)に、300μg/mLの抗E2抗体(F18−3)を加えた。なお、抗E2抗体(F18−3)は、自社において樹立したマウスモノクローナル抗体である。なお、E2に対する抗E2抗体(F18−3)の結合は、種々のデータより、10
−9Mから10
−12M程度と類推される。
・4℃,1hで反応させてF18−3を粒子上に固相化した。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
・1.1μg/mLのE2を含むPBS中に粒子を分散させた。
・4℃,1hで放置して、抗原および抗体が会合した抗原抗体複合体(E2および抗E2抗体を含む親和性複合体)を形成させた。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
【0099】
(4)目的抗体を産生する細胞の培養
以下の手順により、目的抗体を産生する細胞を培養した。
・15cmディッシュ2枚にCS
+培地50mLをそれぞれ加えた。
・1.5×10
7個の細胞を各培地に加え、1日培養した。
・細胞懸濁液を50mLチューブに回収し、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、1% BSA/PBSで2回洗浄して1.5mLチューブに回収した。
・4℃,3500rpm,5minで遠心して上清を除去した。
・(3)で調製した抗原結合粒子を1% BSA/PBSで4回洗浄した。
・細胞(9x10
7細胞/mL)と抗原結合粒子(75μg/mL)とを混合し、4℃,30min反応させた。
・1% BSA/PBSで5回洗浄し、余剰の細胞を除去した。
・CS
−培地で細胞・粒子を分散させた。
・96wellプレートにまき、1週間培養した。
【0100】
(5)目的抗体を産生する細胞の選別
選別は、抗原抗体複合体固相ELISAにより実施した。E2を加えた場合と加えなかった場合での発色の差によって、細胞が目的抗体を産生しているか否かを評価した。手順は、以下のとおりであった。
・アッセイプレートに1μg/mLの抗E2抗体を加え、37℃で1時間インキュベートして固相化した。
・0.05%Tween20含有リン酸緩衝生理食塩水(0.05%PBST)で3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・200ng/mL E2またはバッファーのみを25μL加えた。
・培養上清25μLを加えて1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリ(anti Chicken)IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMB(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)を加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0101】
(6)結果
E2非存在下、E2存在下(100ng/mL)において、抗原抗体複合体(E2および抗E2抗体を含む親和性複合体)に結合する抗体を産生する細胞クローンを高率に得ることに成功した(3/88=3.4%:
図1、2を参照)。このような抗体作製効率は、従来の抗体作製方法では達成し得ない。例えば、従来の動物免疫法(ハイブリドーマ法)による抗体作製効率は、上記効率に到底及ばない。また、従来の動物免疫法では、そもそも、親和性複合体そのものに対する抗体を作製し得ない。したがって、本発明の方法は、効率的に親和性複合体そのものに対する抗体を作製できることが示された。
【0102】
実施例2:抗E2抗体およびE2抗E2抗体複合体に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、特異性を評価した。
・アッセイプレートに2種の抗E2抗体(F18−3、F12−33)、抗AFP抗体(ネガティブコントロール)をそれぞれ2μg/mLの濃度で加え、37℃で1時間インキュベートして固相化した。なお、抗E2抗体(F18−3、F12−33)は、自社において樹立したマウスモノクローナル抗体である。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・2ng/mL E1、2ng/mL E2またはバッファーのみを25μL加えた。
・上記手法で樹立したクローン(2−1、2−2、2−3、2−4、2−5および2−6)の培養上清を25μL加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリIgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD
450を測定した。
【0103】
(2)結果
結果は、表1に示したとおりである。クローン2−1、2−3および2−5は、抗原〔E2抗E2抗体(F18−3)複合体〕に対して特異的に結合した(*を参照)。一方、クローン2−2、2−4および2−6は、抗原〔E2抗E2抗体(F18−3)複合体〕に対して結合せず、F18−3抗体に結合した。なお、クローン2−1、2−3および2−5は、実施例1のクローン4、9および46にそれぞれ対応し、クローン2−2、2−4および2−6は、実施例1のクローン8、34および77にそれぞれ対応していた。
以上より、本発明の方法により、複合体に特異的に結合し得る抗体が得られることが確認された。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例3:E2に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、E2に対する目的抗体の特異性を評価した。
・アッセイプレートにE2−BSA(ウシ血清アルブミン)複合体を各濃度で加え、37℃で1時間インキュベートして固相化した。E2ではなく、E2−BSA複合体を用いた理由は、E2は低分子化合物であり、単独ではアッセイプレート上に吸着しないためである。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・100ng/mL E2またはバッファーのみを25μLずつ加えた。
・実施例1で樹立し、実施例2で評価されたクローン(2−1、2−2、2−3、2−4、2−5および2−6)の培養上清を25μL加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリIgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD
450を測定した。
【0106】
(2)結果
結果は、表2に示したとおりである。E2(E2−BSA)単独を固相したELISAでは、陽性を示すクローンは見出されなかった。したがって、クローン2−1、2−2、2−3、2−4、2−5および2−6は、E2に対して結合し得る抗体を産生しないと考えられる。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例4:類似物質に対する交差反応性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する抗体の交差反応性を評価した。
・5μg/mL 抗E2抗体(F18−3)を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・E1,E3,E2を各濃度で調製し、25μLずつ加えた。
・3種の抗体を含む培養上清(クローン2−1、2−3、2−5)を各25μLずつ加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリIgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD
450を測定した。
【0109】
(2)結果
結果は、表3に示したとおりである。表3では、交差反応性(%)は、目的の親和性複合体に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子に対する本発明の抗体の結合率に基づき算出している。3種の抗体(クローン2−1、2−3、2−5)は、E1、E3に殆ど結合しなかった。
【0110】
【表3】
【0111】
以上より、3種の抗体(クローン2−1、2−3、2−5)は、抗原抗体複合体〔E2−抗E2抗体(F18−3)を含む複合体〕に特異的に結合できることが示された。したがって、本発明により、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体の開発が可能であることが実証された。また、サンドイッチ法による低分子物質の測定も可能であることが実証された。
【0112】
実施例5:組換えI型キメラ抗体の作製
ニワトリIgM抗体をマウスIgG抗体に変換して、組換えI型キメラ抗体を作製した。組換えI型キメラ抗体は、E2−抗E2抗体複合体に対するニワトリIgM抗体のμ鎖およびλ鎖可変領域(VHおよびVL)の下流に、マウス定常領域(CH、CL)を連結した抗体である〔重鎖:ニワトリIgM(μ鎖)由来のVH−マウスIgG1(γ1鎖)由来のCH;軽鎖:ニワトリIgM(λ鎖)由来のVL−マウスIgG1(κ鎖)由来のCL〕。以下、必要に応じて、「キメラI型(抗体)」と呼称する。
【0113】
(1)キメラI型重鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラI型重鎖発現ベクターを作製した。
a)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のμ鎖cDNAを鋳型としてプライマーAとプライマーBを用いてPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域を増幅した。
b)抗TNFマウスIgG1抗体のγ鎖cDNAを鋳型として、プライマーCとプライマーDを用いてPCRを行い、マウスIgG1の定常領域を増幅した。
c)a)およびb)で増幅したDNA断片の混合物を鋳型としてプライマーAとプライマーDを用いてアセンブルPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域とマウスIgG1 γ鎖定常領域が連結された1本のDNA断片を調製した。
d)c)で得られたDNA断片を制限酵素Hind IIIとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1のHind III−Not I部位に挿入した。
【0114】
(2)キメラI型軽鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラI型軽鎖発現ベクターを作製した。
e)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のλ鎖cDNAを鋳型としてプライマーEとプライマーFを用いてPCRを行い、ニワトリλ鎖可変領域を増幅した。
f)抗TNFマウスIgG1抗体のκ鎖cDNAを鋳型として、プライマーGとプライマーHを用いてPCRを行い、マウスκ鎖定常領域を増幅した。
g)e)およびf)で増幅したDNA断片の混合物を鋳型として、プライマーEとプライマーHを用いてアセンブルPCRを行い、ニワトリλ鎖可変領域とマウスκ鎖定常領域が連結された1本のDNA断片を調製した。
h)g)で得られたDNA断片を制限酵素Hind IIIとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1/ZeoのHind III−Not I部位に挿入した。
【0115】
(3)組換えキメラI型抗体の作製および発現確認
以下の手順により、組換えキメラI型抗体を作製した。
i)キメラI型重鎖発現ベクター、およびキメラI型軽鎖発現べクターで形質転換された大腸菌コロニーをそれぞれ100μg/mlアンピシリンを含む150mlのLB培地中で37℃一晩振蕩培養した後、Quiagen社のPlasmid Midi Kitを用いてプラスミドを調製した。
j)i)で調製したキメラI型重鎖発現ベクター、およびキメラI型軽鎖発現べクターをそれぞれ4μg用いてInvitrogen社のLipofectamin 2000により、10
6個のCHO細胞を形質転換した。
k)j)で形質転換したCHO細胞を10%ウシ胎児血清を含むHam F−12倍地を用いて、CO
2インキュベータ中、37℃で24時間培養した。
l)キメラI型抗体の発現を確認するため、k)の培養上清中にキメラI型抗体が分泌されているかを、ELISA法にて確認した。すなわちELISA plate(Nunc社)に抗マウスIgGを固相化し、これに(1/2)n希釈した培養上清を反応させ、次いでPOD標識された抗マウスIgG(DAKO社)で検出した。なお、陽性対照としてマウスモノクロ抗体(anti TNF36)を、陰性対照としてCHO培養上清を用いた。その結果、キメラI型抗体の発現が確認された(表4)。
【0116】
【表4】
【0117】
実施例6:組換えII型キメラ抗体の作製
ニワトリIgM抗体をマウスIgG抗体に変換して、組換えII型キメラ抗体を作製した。組換えII型キメラ抗体は、E2−抗E2抗体複合体に対するニワトリIgM抗体のλ鎖(VLおよびCL)とμ鎖可変領域(VH)およびCH1ドメインの下流に、マウスIgG1のHinge領域以降の領域(Hinge領域、CH2およびCH3)を連結した抗体である〔重鎖:ニワトリIgM(μ鎖)由来のVHおよびCH1−マウスIgG1(γ1鎖)由来のHinge領域、CH2およびCH3;軽鎖:ニワトリIgM(λ鎖)由来のVLおよびCL〕。以下、必要に応じて、「キメラII型(抗体)」と呼称する。
【0118】
(1)キメラII型重鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラII型重鎖発現ベクターを作製した。
a’)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のμ鎖cDNAを鋳型としてプライマーIとプライマーJを用いてPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域およびCH1を増幅した。
b’)抗TNFマウスIgG1抗体のγ鎖cDNAを鋳型として、プライマーKとプライマーDを用いてPCRを行い、マウスγ鎖のHinge領域以降の領域(Hinge領域、CH2およびCH3)を増幅した。
c’)a’)およびb’)で増幅したDNA断片の混合物を鋳型として、プライマーIとプライマーDを用いてアセンブルPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域およびCH1とマウスγのHinge領域以降の領域(Hinge領域、CH2およびCH3)が連結された1本のDNA断片を調製した。
d’)c’)で得られたDNA断片を制限酵素Nhe IとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1のNhe I−Not I部位に挿入した。
【0119】
(2)キメラII型軽鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラII型軽鎖発現ベクターを作製した。
e’)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のλ鎖cDNAを鋳型としてプライマーEとプライマーLを用いてPCRを行い、ニワトリλ鎖を増幅した。
f’)e’)で増幅したDNA断片をHind IIIとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1/ZeoのHind III−Not I部位に挿入した。
【0120】
(3)組換えキメラII型抗体の作製および発現確認
以下の手順により、組換えキメラII型抗体を作製した。
g’)キメラII型重鎖発現ベクター、およびキメラII型軽鎖発現ベクターで形質転換された大腸菌コロ二ーをそれぞれ100μg/mlアンピシリンを含む150mlのLB培地中で37℃一晩振蕩培養した後、Quiagen社のPlasmid Midi Kitを用いてプラスミドを調製した。
h’)g’)で調製したキメラII型重鎖発現ベクター、およびキメラII型軽鎖発現べクターをそれぞれ4μg用いてInvitrogen社のLipofectamin 2000により、10
6個のCHO細胞を形質転換した。
i’)h’)で形質転換したCHO細胞を10%ウシ胎児血清を含むHam F−12倍地を用いて、CO
2インキュベータ中、37℃で24時間培養した。
j’)キメラII型抗体の発現を確認するため、i’)の培養上清中にキメラII型抗体が分泌されているかを、ELISA法にて確認した。すなわちELISA plate(Nunc社)に抗マウスIgGを固相化し、これに(1/2)n希釈した培養上清を反応させ、次いでPOD標識された抗マウスIgG(DAKO社)で検出した。なお、陽性対照としてマウスモノクロ抗体(anti TNF36)を、陰性対照としてCHO培養上清を用いた。その結果、キメラII型抗体の発現が確認された(表5)。
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
実施例7:親和性複合体(T3−抗T3抗体複合体)に対する抗体の取得
in vitro ニワトリIgM取得技術(ADLibシステム)を利用して、以下の方法を行なうことにより、T3−抗T3抗体複合体に対する抗体を取得した。なお、本明細書中以降において、T2(ジヨードチロニン)、T3(トリヨードチロニン)、T4(チロキシン)と表記することがある。また、以下において、T3について、1μg/mLは1.5μMに相当し、T3−92抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当し、T3−31抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当する。
【0124】
(1)ニワトリB細胞株DT40ライブラリの多様化
多様化されたDT40細胞は、実施例1(1)の手順により調製した。
【0125】
(2)DT40ライブラリの継代
DT40細胞の継代は、実施例1(2)の手順により行った。
【0126】
(3)抗原結合粒子の調製
以下の手順により、抗原結合粒子を調製した。
・ProteinGが固定化してある磁性粒子に300μg/mLの抗T3抗体(T3−92)を加えた。
・4℃,1hで反応させてT3−92を固相化した。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
・300μg/mLのT3を含むPBSで粒子を分散させた。
・4℃,1hで反応させて抗原抗体複合体を形成させた。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
【0127】
(4)目的抗体を産生する細胞の培養
以下の手順により、目的抗体を産生する細胞を培養した。
・15cmディッシュ2枚にCS
+培地50mLをそれぞれ加えた。
・1.5X10
7個の細胞を加え、1日培養した。
・細胞懸濁液を50mLチューブに回収し、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、1% BSA/PBSで2回洗浄して1.5mLチューブに回収した。
・4℃,3500rpm,5minで遠心して上清を除去した。
・(3)で調製した抗原結合粒子を1% BSA/PBSで4回洗浄した。
・細胞と抗原結合粒子とを混合し、4℃,30min反応させた。
・1% BSA/PBSで5回洗浄し、余剰の細胞を除去した。
・CS
−培地で細胞・粒子を分散させた。
・96wellプレートにまき、1週間培養した。
【0128】
(5)目的抗体を産生する細胞の選別
選別は、抗原抗体複合体固相ELISAにより実施した。T3を加えた場合と加えなかった場合での発色の差によって、細胞が目的抗体を産生しているか否かを評価した。手順は、以下のとおりであった。
・アッセイプレートに1μg/mLの抗T3抗体を加え、固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・50ng/mL T3またはバッファーのみを50μL加え、T3を固相抗体に結合させた。
・PBSTで3回洗浄した。
・DT40培養上清50μLを加えて1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0129】
(6)結果
T3非存在下、T3存在下(50ng/mL)で反応性に顕著な差のあるクローン(Well No.23,91,94,101,110,121)を高率に得ることに成功した(6クローン/144=4.2%:
図3、4を参照)。
【0130】
実施例8:親和性複合体(T3−抗T3抗体複合体)抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、特異性を評価した。
・アッセイプレートに2種の抗T3抗体(T3−92,T3−31)、抗AFP抗体をそれぞれ2μg/mLで固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・T3,T2,T4を100ng/mLに調製し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0131】
(2)結果
結果は、表7に示したとおりである。クローン6−19、5−3、5−6、5−13および5−22は、抗原〔T3抗T3抗体(T3−92)複合体〕に対して特異的に結合した(*を参照)。クローン5−33はT2抗T3抗体(T3−92)複合体と弱い交差反応があった。検出抗体にクローン5−33を用いた場合はT2との交差反応性が認められたことから、固相抗体T3−92がT2にも弱く交差反応することを示唆している。一方、クローン5−32は、抗原〔T3抗T3抗体(T3−92)複合体〕だけではなく、T3−92抗体のみにも結合した。5−32はT3−31抗体には結合しなかったこことからT3−92抗体に特異的に結合するクローンであった。なお、クローン6−19、5−3、5−6、5−13および5−22は、実施例7のクローン23、91、94、101および110にそれぞれ対応し、クローン5−33は、実施例7のクローン121に対応し、クローン5−32は、実施例7のクローン120に対応する。
【0132】
【表7】
【0133】
実施例9:T3に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、T3に対する目的抗体の特異性を評価した。
・アッセイプレートにT3−BSAコンジュゲートを5μg/mL固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・1次反応にマウス抗体を用いた場合は、anti mouse Ig−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0134】
(2)結果
結果は、表8に示したとおりである。T3(T3−BSA)単独を固相したELISAでは、陽性を示すクローンは見出されなかった。したがって、クローン6−19、5−3、5−6、5−13、5−22および5−33は、T3に対して結合し得る抗体を産生しないと考えられる。
【0135】
【表8】
【0136】
実施例10:類似物質に対する交差反応性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する抗体の交差反応性を評価した・アッセイプレートに2μg/mL 抗T3抗体(T3−92)を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・T3、T2、T4を各濃度に調製し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0137】
(2)結果
結果は、表9に示したとおりである。表9では、交差反応性(%)は、目的の親和性複合体に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子に対する本発明の抗体の結合率に基づき算出している。5種の抗体(クローン5−3、5−6、5−13、6−19および5−22)は、T2、T4に殆ど結合しなかった。検出抗体にクローン5−33を用いた場合はT2と弱い交差反応があった。この結果は、固相抗体T3−92がT2にも交差反応することを示しており、5種の抗体(クローン5−3、5−6、5−13、6−19および5−22)は類似親和性複合体と親和性複合体を識別していることを示している。
【0138】
【表9】
【0139】
以上より、5種の抗体(クローン5−3、5−6、5−13、5−22および6−19)は、抗原抗体複合体〔T3−抗T3抗体(T3−92)を含む複合体〕に特異的に結合できることが示された。したがって、本発明により、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体の開発が可能であることが実証された。また、サンドイッチ法による低分子物質の測定も可能であることが実証された。
【0140】
実施例11:T3に対する感度の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、T3に対する感度を評価した。
・アッセイプレートに2μg/mL 抗T3抗体(T3−92)を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・T3を各濃度に調整し、50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0141】
(2)結果
結果は、表10、
図5に示したとおりである。作製した抗体(クローン5−3−1)を用いたサンドイッチ法により、1pg/mL以下のT3の検出が可能であった。なお、クローン5−3−1は、実施例7のクローン5−3に対応する。
【0142】
【表10】
【0143】
実施例12:親和性複合体(25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体)に対する抗体の取得
in vitro ニワトリIgM取得技術(ADLibシステム)を利用して、以下の方法を行なうことにより、25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体に対する抗体を取得した。また、以下において、25OHビタミンD3について、1μg/mLは2.5μMに相当し、抗25OHビタミンD抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当する。
【0144】
(1)ニワトリB細胞株DT40ライブラリの多様化
多様化されたDT40細胞は、実施例1(1)の手順により調製した。
【0145】
(2)DT40ライブラリの継代
DT40細胞の継代は、実施例1(2)の手順により行った。
【0146】
(3)抗原結合粒子の調製
以下の手順により、抗原結合粒子を調製した。
・ProteinGが固定化してある磁性粒子に300μg/mLの抗25OHビタミンD抗体を加えた。
・4℃,1hで反応させて抗体を固相化した。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
・300μg/mLの25OHビタミンD3を含むPBSで粒子を分散させた。
・4℃,1hで反応させて抗原抗体複合体を形成させた。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
【0147】
(4)目的抗体を産生する細胞の培養
以下の手順により、目的抗体を産生する細胞を培養した。
・15cmディッシュ2枚にCS
+培地50mLをそれぞれ加えた。
・1.5X10
7個の細胞を加え、1日培養した。
・細胞懸濁液を50mLチューブに回収し、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、1% BSA/PBSで2回洗浄して1.5mLチューブに回収した。
・4℃,3500rpm,5minで遠心して上清を除去した。
・(3)で調製した抗原結合粒子を1% BSA/PBSで4回洗浄した。
・細胞と抗原結合粒子とを混合し、4℃,30min反応させた。
・1% BSA/PBSで5回洗浄し、余剰の細胞を除去した。
・CS
−培地で細胞・粒子を分散させた。
・96wellプレートにまき、1週間培養した。
【0148】
(5)目的抗体を産生する細胞の選別
選別は、抗原抗体複合体固相ELISAにより実施した。25OHビタミンD3を加えた場合と加えなかった場合での発色の差によって、細胞が目的抗体を産生しているか否かを評価した。手順は、以下のとおりであった。
・アッセイプレートに1μg/mLの抗25OHビタミンD抗体を加え、固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・1μg/mL 25OHビタミンD3またはバッファーのみを50μL加え、25OHビタミンD3を固相抗体に結合させた。
・PBSTで3回洗浄した。
・DT40培養上清50μLを加えて1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、3次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0149】
(6)結果
25OHビタミンD3非存在下、存在下(1μg/mL)で反応性に顕著な差のあるクローン(Well No.4, 52, 80, 81, 94, 120)を高率に得ることに成功した(6クローン/174=3.4%:
図6、7を参照)。
【0150】
実施例13:親和性複合体(25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体)抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、特異性を評価した。
・アッセイプレートに抗25OHビタミンD抗体、抗T3抗体をそれぞれ1μg/mLで固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・25OHビタミンD3、ならびにその類似物質である25OHビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD3、1,25(OH)
2ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンD2をそれぞれ200ng/mLに調製し50μLずつ加えインキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、3次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0151】
(2)結果
結果は、表11に示したとおりである。クローン3−2D1−12および3−2D1−22は、抗原とした25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体および25OHビタミンD2−抗25OHビタミンD抗体複合体に対して特異的に結合した(*を参照)。クローン3−2D1−12および3−2D1−22は、ネガティブコントロールとして用いた抗T3抗体には結合しなかった。なお、クローン3−2D1−12および3−2D1−22は、実施例12で得られたクローン4のサブクローンに対応する。
【0152】
【表11】
【0153】
実施例14:25OHビタミンD3に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、25OHビタミンD3に対する目的抗体の特異性を評価した。
・アッセイプレートに25OHビタミンD3−BSAコンジュゲートを1μg/mL固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、2次反応を行った。
・1次反応に抗25OHビタミンD抗体を用いた場合は、抗IgG−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、3次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0154】
(2)結果
結果は、表12に示したとおりである。クローン3−2D1−12および3−2D1−12は、25OHビタミンD3−BSA固相ELISAでは反応しなかった。このことは、これらのクローンが、25OHビタミンD3単独と結合しないことを示す。
【0155】
【表12】
【0156】
参考例1:抗25OHビタミンD抗体の交差反応性の確認
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する抗25OHビタミンD抗体の交差反応性を評価した。
・アッセイプレートに1μg/mL 抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・アルカリホスファターゼ標識−25OHビタミンD3 200ng/mlと25OHビタミンD3、25OHビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD3、1,25(OH)
2ビタミンD2、ビタミンD3またはビタミンD2を各濃度に調製して混合し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・ミリQ水で2回洗浄した。
・PNPPを加えて、発色反応を行った。
・2.5mM EDTAを加えて発色反応を停止した。
・OD405を測定した。
【0157】
(2)結果
結果は、表13に示したとおりである。表13では、交差反応性(%)は、25OHビタミンD3に対する抗25OHビタミンD抗体の結合率を100%として算出した場合、25OHビタミンD3類似因子に対する抗25OHビタミンD抗体の結合率に基づき算出している。抗25OHビタミンD抗体は、25OHビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD3、および1,25(OH)
2ビタミンD2と高い交差反応性を示したが、ビタミンD3およびビタミンD2とは実質的に交差反応性を示さなかった。
【0158】
【表13】
【0159】
実施例15:類似物質に対する目的抗体の交差反応性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する目的抗体の交差反応性を評価した。
・アッセイプレートに1μg/mL 抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・25OHビタミンD3、25OHビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD3または1,25(OH)
2ビタミンD2を各濃度に調製し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・クローン3−2D1−12をそれぞれに50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0160】
(2)結果
結果は、表14に示したとおりである。表14では、交差反応性(%)は、目的の親和性複合体(25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体)に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子に対する本発明の抗体の結合率に基づき算出している。単独の抗25OHビタミンD抗体のみを使用する競合阻害アッセイでは、25OHビタミンD3、25OHビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD2、および1,25(OH)
2ビタミンD3を識別することができなかったが、本発明の抗体を用いたサンドイッチアッセイにより、25OHビタミンD3および25OHビタミンD2を識別して測定することができた。
【0161】
【表14】
【0162】
実施例16:目的抗体を用いた測定における25OHビタミンD3に対する感度
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、目的抗体を用いた測定における25OHビタミンD3に対する感度を評価した。
・アッセイプレートに1μg/mL 抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・25OHビタミンD3を各濃度に調製し、50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・クローン3−2D1−12を50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0163】
(2)結果
結果は、表15、
図8に示したとおりである。樹立した抗体、クローン3−2D1−12を用いたサンドイッチ法により、3ng/ml以下の25OHビタミンD3の検出が可能であった。
【0164】
【表15】
【0165】
実施例17:E2および抗E2抗体の複合体に対する本発明の抗体の特異性
(17−1)競合法による固相抗体(1次抗体)の特異性の評価
本発明の抗体の特異性を評価するため、先ず、E2に対する一次抗体の特異性を評価した。
【0166】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗E2抗体(F18−3)を固相化した。
・NUNC Polysorpに抗E2抗体(0.5μg/ml)を加え、一晩インキュベートした。
・抗E2抗体を固相化したプレートを5%スキムミルクでブロッキングした(37C,1hr)。
(ii)ELISA
以下の手順により、ELISAを行った。なお、E2−3 sulfateは、E2の3位の水酸基中の水素原子が硫酸基で置換された化合物である。
・抗原:E2(6ng/mlから3n倍希釈)と類似抗原:E1,E3,E2−3 sulfate(54ng/mlから3n倍希釈)を調製した。
・標識抗原:E2−3位ALP(アルカリホスファターゼ)融合体(46ng/ml)を調製した。
・固相プレートに抗原または類似抗原(各50μl)と標識抗原(50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hインキュベートした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・pNPPで発色させ、吸光度を測定した。
・抗原または類似抗原の添加なしを100%として、各濃度の抗原または類似抗原を添加した際の阻害率(% Reaction)を算出した。
【0167】
(B)結果
本測定法に用いた1次抗体は、E1およびE3への交差反応性は認められなかったが(
図9)、E2−3 sulfateには10%程度の交差反応性が認められた(
図9)。したがって、この一次抗体は、E2に対する特異性が必ずしも高くないことが示された。
【0168】
(17−2)サンドイッチ法による測定の特異性の改善(1)
本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対するE2の特異的な測定の改善が可能かどうかを評価した。
【0169】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗E2抗体〔上記(17−1)で用いたものと同じ〕を固相化した。
・NUNC Polysorpに抗E2抗体(2.5μg/ml)を加え、一晩インキュベートした。
・抗E2抗体を固相化したプレートを5%スキムミルクでブロッキングした(37C,1hr)。
【0170】
(ii)ELISA
以下の手順により、ELISAを行った。
・抗原:E2(2ng/mlから3n倍希釈)と類似抗原:E1,E3,E2−3s(54ng/mlから3n倍希釈)を調製した。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)と2次抗体(ニワトリ由来E2抗E2抗体複合体抗体(クローン2−1):50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hインキュベートした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートに抗ニワトリ(anti Chicken) IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)で発色させ、吸光度を測定した。
【0171】
(B)結果
本発明の抗体は、「E2および1次抗体の複合体」と「E2−3 sulfateおよび1次抗体の複合体」を判別可能であった(
図10)。すなわち、本発明の抗体は、E2+1次抗体の複合体中のE2−3位のsulfate基の有無を特異的に認識していると考えられる。したがって、本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対するE2の特異的な測定が改善されることが示された。
【0172】
(17−3)サンドイッチ法による測定の特異性の改善(2)
本発明の抗体を用いることで、治療用薬物に対するE2の特異的な測定の改善が可能かどうかを評価した。
【0173】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗E2抗体〔上記(17−1)で用いたものと同じ〕を固相化した。
・NUNC Polysorpに抗E2抗体(2.5μg/ml)を加え、一晩インキュベートした。
・抗E2抗体を固相化したプレートを5%スキムミルクでブロッキングした(37C,1hr)。
【0174】
(ii)ELISA
・抗原:E2(2ng/mlから3n倍希釈)とE2類似治療用薬物(100ng/ml)を調製した。E2類似治療用薬物としては、エストロムスチンおよびエストラムスチンを用いた。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)と2次抗体(ニワトリ由来E2抗E2抗体複合体抗体(クローン2−1):50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hインキュベートした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートに抗ニワトリ(anti Chicken) IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・TMBで発色させ、吸光度を測定した。
・E2測定時の吸光度に基づき類似薬物への交差反応性(%)を計算した。
【0175】
(B)結果
本発明の抗体は、「E2および1次抗体の複合体」と「E2類似治療用薬物および1次抗体の複合体」を判別可能であった(表16)。したがって、本発明の抗体を用いることで、E2類似治療用薬物に対するE2の特異的な測定が改善されることが示された。
【0176】
【表16】
【0177】
実施例18:25(OH)ビタミンD2またはD3およびそれに対する抗体の複合体に対する本発明の抗体の特異性
(18−1)競合法による固相抗体(1次抗体)の特異性の評価
本発明の抗体の特異性を評価するため、先ず、25(OH)ビタミンD2に対する一次抗体の特異性を評価した。
【0178】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・NUNC Maxisorpに抗25OHビタミンD抗体(1μg/ml)を加え、37℃で1hrインキュベートした。
・抗25OHビタミンD抗体を固相化したプレートを1% BSA−PBSでブロッキングした(37C,1hr)。
【0179】
(ii)ELISA
・抗原:25OHビタミンD3(111ng/mlから3n倍希釈)と類似抗原:25OHビタミンD2、1,25(OH)
2ビタミンD3、1,25(OH)
2ビタミンD2(111ng/mlから3n倍希釈)を調製した。
・標識抗原:25OHビタミンD3−3位ALP融合体(20ng/ml)を調製した。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)と標識抗原(50μl)を添加した。
・37℃,1hrインキュベーション
・PBS−tween20(0.05%)でwashx3
・pNPPで発色させ、吸光度を測定した。
・抗原または類似抗原の添加なしを100%として、各濃度の抗原または類似抗原を添加した際の阻害率(% Reaction)を算出した。
【0180】
(B)結果
本測定法に用いた1次抗体は、25(OH)ビタミンD2、25(OH)ビタミンD3、1,25(OH)
2ビタミンD2、および1,25(OH)
2ビタミンD3に対して同程度の反応性を示した(
図11)。したがって、この一次抗体は、特定のビタミンDに対する特異性が低いことが示された。
【0181】
(18−2)サンドイッチ法による測定の特異性の改善
本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対する特定のビタミンDの特異的な測定の改善が可能かどうかを評価した。
【0182】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗25OHビタミンD抗体〔上記(18−1)で用いたものと同じ〕を固相化した。
・NUNC Maxisorpに抗25OHビタミンD抗体(1μg/ml)を加え、37℃で1hrインキュベートした。
・抗25OHビタミンD抗体を固相化したプレートを1% BSA−PBSでブロッキングした(37C,1hr)。
【0183】
(ii)ELISA
・抗原:25OHビタミンD3(370ng/mlから5n希釈)と類似抗原:25(OH)ビタミンD2(370ng/mlから5n希釈)、1,25(OH)2ビタミンD3、1,25(OH)2ビタミンD2(37000ng/mlから5n希釈)を調製した。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)を添加した。
・PBS−tween20(0.05%)でwashx3
・固相プレートに二次抗体(ニワトリ由来25(OH)ビタミンD抗25(OH)ビタミンD複合体抗体:50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hrインキュベーションした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートに抗ニワトリIgG抗体−ストレプトアビジン(50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hrインキュベーションした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートにストレプトアビジン−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)(50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hrインキュベーションした。
・TMBで発色させ、吸光度を測定した。
【0184】
(B)結果
本発明の抗体は、「25OHビタミンD2またはD3および1次抗体の複合体」と「1,25(OH)
2ビタミンD2またはD3および1次抗体の複合体」を判別可能であった(
図12)。すなわち、本発明の抗体は、1,25(OH)
2ビタミンD2またはD3および1次抗体の複合体中の1,25(OH)
2ビタミンD2またはD3の1位のOH基の有無を特異的に認識していると考えられる。したがって、本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対する1,25(OH)
2ビタミンD2およびD3の特異的な測定が改善されることが示された。