特許第6156144号(P6156144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156144
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】親和性複合体に対する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20170626BHJP
   C07K 16/44 20060101ALI20170626BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170626BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20170626BHJP
   C07K 16/26 20060101ALN20170626BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170626BHJP
【FI】
   C07K16/42
   C07K16/44
   G01N33/53 H
   G01N33/53 N
   G01N33/531 A
   !C07K16/26
   !C12N15/00 AZNA
【請求項の数】7
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2013-534624(P2013-534624)
(86)(22)【出願日】2012年7月4日
(86)【国際出願番号】JP2012067062
(87)【国際公開番号】WO2013042426
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-206162(P2011-206162)
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-6359(P2012-6359)
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小見 和也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】内田 好昭
(72)【発明者】
【氏名】碁石 勝利
(72)【発明者】
【氏名】岡 麻子
(72)【発明者】
【氏名】白川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】佐久 拓弥
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−174460(JP,A)
【文献】 特表昭61−501657(JP,A)
【文献】 特表2006−506634(JP,A)
【文献】 特表2010−523994(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/011644(WO,A1)
【文献】 特開昭63−112599(JP,A)
【文献】 特表2009−509992(JP,A)
【文献】 特開2011−136978(JP,A)
【文献】 Nucleic Acids Res. (Feb 2011) vol.39, no.3, e14
【文献】 YAKUGAKU ZASSHI (2007) vol.127, no.1, p.81-89
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 16/00−16/46
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親和性複合体に対して特異的に結合し得る全長モノクローナル抗体であって、
前記全長モノクローナル抗体が、ニワトリIgMの可変領域を有し、
親和性複合体が、(1)25OHビタミンD3および抗25OHビタミンD3抗体、または(2)25OHビタミンD2および抗25OHビタミンD2抗体を含む、
全長モノクローナル抗体。
【請求項2】
前記全長モノクローナル抗体がニワトリIgM抗体である、請求項1記載の全長モノクローナル抗体。
【請求項3】
前記全長モノクローナル抗体がDT40細胞のニワトリIgM抗体である、請求項1または2記載の全長モノクローナル抗体。
【請求項4】
以下の結合率を示す、請求項1〜3のいずれか一項記載の全長モノクローナル抗体:
25OHビタミンD3および抗25OHビタミンD3抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III−1)または25OHビタミンD2および抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III−2)に対する、親和性複合体III−1またはIII−2に対して特異的に結合し得る全長モノクローナル抗体(抗体III)の結合率を100%として算出した場合、1,25(OH)2ビタミンD3および該抗25OHビタミンD3抗体または該抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III’)、あるいは1,25(OH)2ビタミンD2および該抗25OHビタミンD3抗体または該抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III’’)に対する抗体IIIの結合率が10%以下である。
【請求項5】
以下を含む、25OHビタミンD3および/または25OHビタミンD2の測定用キット
(i)請求項1〜のいずれか一項記載の全長モノクローナル抗体;ならびに
(ii)抗25OHビタミンD3抗体および/または抗25OHビタミンD2抗体
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項記載の全長モノクローナル抗体を用いて、親和性複合体を測定することを含む、親和性複合体の測定方法。
【請求項7】
親和性複合体がサンドイッチ法により測定される、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親和性複合体に対する抗体、および親和性複合体に対する抗体を用いた、親和性複合体を構成する因子のアッセイ等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ホルモン、医薬、ペプチドといった低分子物質の免疫測定法を利用した定量が、頻繁に行われている。測定対象物質が低分子物質である場合、競合阻害法と呼ばれる定量法が利用される。
【0003】
競合阻害法の測定感度は、使用する抗体の抗原に対する親和性に依存するが、一般的に、低分子物質に対する抗体を作製した場合には、高親和性の抗体が得られにくいことが知られている。また、競合阻害法では、1種類の抗体の反応性に基づきその特異性が発揮されるため、高特異性の抗体を獲得する必要があるが、このような抗体を獲得するためには困難が伴う。つまり、競合阻害法による測定に際しては、測定の感度および特異性を満たす抗体の選択のために多大な労力を要する。また、運良く抗体を選択できた場合でも、競合阻害法は、測定対象物質が低濃度および高濃度の場合に、測定精度および測定感度が低い、サンプルと標識抗原との競合条件決定が煩雑といった欠点がある。
【0004】
競合阻害法における上記欠点は、抗原の異なるエピトープを認識する2種の抗体を用いて測定するサンドイッチ法により解消できる。しかし、低分子物質の場合、エピトープは1ヶ所しか存在せず、2種の抗体間で立体障害が生じるため、一般的なサンドイッチ法を利用して低分子物質を定量することは困難であるとされてきた。
【0005】
低分子物質をサンドイッチ法で測定するための方法としては、抗原抗体複合体を認識する抗体を用いる測定法が報告されている。抗体の作製方法としては、動物を用いるin vivo法(例、ハイブリドーマ法)、およびin vitro法(例、ファージディスプレイ法)が知られている。例えば、非特許文献1には、マウス免疫法により、低分子ハプテン(Δ9−tetrahydrocannabinol:MW314.5)−抗体複合体抗体の取得に成功したこと、ならびに、5回の融合実験を実施により、約200クローンの抗マウス抗体(イディオタイプ)抗体が樹立されたが、複合体認識抗体はわずか1クローンであったことが記載されている。
【0006】
なお、サンドイッチ法による低分子物質の測定方法について、特許文献1、2、非特許文献1〜4に開示される方法が知られている。また、抗体および抗体産生細胞の作製技術について、特許文献3に開示される方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/125733号
【特許文献2】特開2001−174460号公報
【特許文献3】国際公開第2004/011644号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ulmanら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90,1184−89(1993)
【非特許文献2】Tammら,Clinical Chemistry,54(9),1511−1518(2008)
【非特許文献3】Oguriら,Journal of American Chemical Society,125(25),7608−7612(2003)
【非特許文献4】Selfら,Clinical Chemistry,40(11),2035−2041(1994)
【非特許文献5】Rossotti et al,Anal.Chem.,82,8838−8843(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低分子物質等の物質をサンドイッチ法で高感度かつ特異的に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、親和性複合体(例、低分子物質およびそれに対する抗体を含む複合体)と所定の方法とを組み合せて用いることにより、親和性複合体に特異的に結合し得る良質な抗体を得ること、ならびに、このような抗体を用いて、親和性複合体を構成する因子(例、低分子物質等の物質)をサンドイッチ法で高感度かつ特異的に測定することに成功し、本願発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体。
〔2〕前記抗体が全長抗体である、〔1〕の抗体。
〔3〕前記抗体が、遺伝子変換の能力を有する動物のイムノグロブリンに由来する領域を有する、〔1〕の抗体。
〔4〕遺伝子変換の能力を有する動物のイムノグロブリンに由来する領域が、相補性決定領域、枠組み領域、または可変領域である、〔3〕の抗体。
〔5〕親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子が低分子物質である、〔1〕〜〔4〕のいずれかの抗体。
〔6〕親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子がタンパク質である、〔1〕〜〔5〕のいずれかの抗体。
〔7〕親和性複合体が、低分子物質およびそれに対する抗体を含む複合体である、〔1〕〜〔6〕のいずれかの抗体。
〔8〕低分子物質が、(a)ステロイド化合物、(b)アミノ酸化合物、または(c)ビタミンである、〔7〕の抗体。
〔9〕以下(a)〜(c)のいずれかである、〔8〕の抗体:
(a)ステロイド化合物が卵胞ホルモンである;
(b)アミノ酸化合物が甲状腺ホルモンである;または
(c)ビタミンがビタミンDである。
〔10〕以下(a)〜(c)のいずれかである、〔9〕の抗体:
(a)卵胞ホルモンがエストラジオールである;
(b)甲状腺ホルモンがトリヨードチロニンである;または
(c)ビタミンDが25OHビタミンD3または25OHビタミンD2である。
〔11〕以下(a)〜(c)の結合率を示す、〔10〕の抗体:
(a)エストラジオールおよび抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I)に対する、親和性複合体Iに対して特異的に結合し得る抗体(抗体I)の結合率を100%として算出した場合、エストロンおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’)、エストリオールおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’)、エストラジオール抱合体および該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’’)、エストラムスチンおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’’’)、またはエストロムスチンおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’’’’)に対する抗体Iの結合率が10%以下である;
(b)トリヨードチロニンおよび抗トリヨードチロニン抗体を含む親和性複合体(親和性複合体II)に対する、親和性複合体IIに対して特異的に結合し得る抗体(抗体II)の結合率を100%として算出した場合、ジヨードチロニンおよび該抗トリヨードチロニン抗体を含む親和性複合体(親和性複合体II’)、またはチロキシンおよび該抗トリヨードチロニン抗体を含む親和性複合体(親和性複合体II’’)に対する抗体IIの結合率が10%以下である;あるいは
(c)25OHビタミンD3および抗25OHビタミンD3抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III−1)または25OHビタミンD2および抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III−2)に対する、親和性複合体III−1またはIII−2に対して特異的に結合し得る抗体(抗体III)の結合率を100%として算出した場合、1,25(OH)ビタミンD3および該抗25OHビタミンD3抗体または該抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III’)、あるいは1,25(OH)ビタミンD2および該抗25OHビタミンD3抗体または該抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III’’)に対する抗体IIIの結合率が10%以下である。
〔12〕親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を培養して、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を得ることを含む方法により作製される、〔1〕〜〔11〕のいずれかの抗体。
〔13〕以下を含む、セット:
(i)親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体;および
(ii)親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子。
〔14〕下記である、〔13〕のセット:
(i’)低分子物質またはタンパク質、およびそれに対する抗体を含む親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体;ならびに
(ii’)低分子物質またはタンパク質に対して特異的に結合し得る抗体。
〔15〕親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を用いて、親和性複合体を測定することを含む、親和性複合体の測定方法。
〔16〕親和性複合体がサンドイッチ法により測定される、〔15〕の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、抗原(例、低分子物質)抗体複合体等の親和性複合体に特異的に結合し得る抗体が提供される。
本発明により、競合阻害法で従来測定していた低分子物質を、サンドイッチ法で測定することができる。サンドイッチ法での測定により、測定感度の上昇、特異性の向上、測定精度の改善、測定系構築の迅速化などが期待できる。また、抗体取得の操作が簡便であるため、操作の自動化による低コスト化、迅速化が容易である。
本発明はまた、低分子物質の測定のみならず、低分子物質以外の因子の測定、および所定の因子を治療標的とする医薬の開発に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の方法により得られた細胞クローン(No.1〜43)を示す図である。2種の細胞クローンが、抗原抗体複合体(エストロゲンおよび抗エストロゲン抗体を含む親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を産生した。
図2図2は、本発明の方法により得られた細胞クローン(No.44〜88)を示す図である。1種の細胞クローンが、抗原抗体複合体(エストロゲンおよび抗エストロゲン抗体を含む親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を産生した。
図3図3は、本発明の方法により得られた細胞クローン(No.1〜56)を示す図である。1種の細胞クローンが、抗原抗体複合体(T3および抗T3抗体を含む親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を産生した。
図4図4は、本発明の方法により得られた細胞クローン(No.57〜144)を示す図である。5種の細胞クローンが、抗原抗体複合体(T3および抗T3抗体を含む親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を産生した。
図5図5は、本発明の抗体を用いた測定におけるT3に対する感度を示す図である。
図6図6は、本発明の方法により得られた細胞クローン(No.1〜86)を示す図である。4種の細胞クローンが、抗原抗体複合体(25OHビタミンD3および抗25OHビタミンD抗体を含む親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を産生した。
図7図7は、本発明の方法により得られた細胞クローン(No.87〜174)を示す図である。2種の細胞クローンが、抗原抗体複合体(25OHビタミンD3および抗25OHビタミンD抗体を含む親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を産生した。
図8図8は、本発明の抗体を用いた測定における25OHビタミンD3に対する感度を示す図である。
図9図9は、競合系による固相抗体(一次抗体:抗E2抗体)の特異性の評価を示す図である。
図10図10は、サンドイッチ法によるE2測定における特異性の改善を示す図である。
図11図11は、競合系による固相抗体(一次抗体:抗25(OH)ビタミンD2抗体)の特異性の評価を示す図である。
図12図12は、サンドイッチ法による抗25(OH)ビタミンD2およびD3測定における特異性の改善を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.抗体)
本発明は、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を提供する。
【0015】
用語「親和性複合体(affinity complex)」とは、2以上の因子の会合または凝集(即ち、非共有結合)により形成される複合体をいう。一方、親和性複合体と異なる複合体としては、共有結合性複合体が挙げられる。用語「共有結合性複合体(covalent complex)」とは、2以上の因子の共有結合により形成される複合体をいう。このような共有結合性複合体としては、例えば、免疫原性のない低分子物質(即ち、ハプテン)と、キャリア(例、BSA、KLH等のタンパク質)とが、共有結合を介して結合したコンジュゲ−ト(conjugate)が挙げられる。換言すれば、共有結合性複合体は、免疫原性のない低分子物質(即ち、ハプテン)に対する免疫を動物において惹起し、それにより、低分子物質に対する抗体を取得するために、従来から動物に投与されている、免疫されるべき複合体(即ち、免疫複合体)であり得る。従来は、このような共有結合性複合体を用いて、低分子物質に対する抗体が作製されていたが、副産物として、共有結合性複合体に対して特異的に結合し得る抗体(共有結合部分周辺を認識する抗体)も得られていたと考えられる。しかしながら、このようなコンジュゲートを抗原として用いることにより作製された、共有結合性複合体に対する抗体は、親和性複合体そのものを抗原として用いることにより作製された本発明の抗体と、異なる。この理由は、例えば、共有結合部分の人為的な導入により作製された共有結合性複合体の立体構造は、共有結合部分の存在および位置により、ならびに共有結合部分の導入に起因する立体構造(例、フォールディングおよび/またはコンホメーション)の潜在的な変化等により、自然な会合(即ち、非共有結合)により形成される親和性複合体のものと異なるためである。
【0016】
親和性複合体は、同種の因子が会合または凝集したホモ複合体、または異種の因子が会合または凝集したヘテロ複合体である。親和性複合体はまた、天然に生じる親和性複合体、または天然に生じ得ない、人為的に作製された親和性複合体であってもよい。天然に生じる親和性複合体としては、例えば、ウイルスまたは生物(例、微生物、昆虫、植物、動物)において見出される親和性複合体、および環境中に存在し得る親和性複合体が挙げられる。親和性複合体はさらに、多量体(例、二量体、三量体、四量体)である。親和性複合体を構成する因子としては、例えば、タンパク質、低分子物質、糖、核酸(例、DNA、RNA)、金属ならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
親和性複合体を構成する因子は、好ましくは、タンパク質であってもよい。このようなタンパク質としては、親和的結合の能力を有するタンパク質、凝集能を有するタンパク質が挙げられる。親和的結合の能力を有するタンパク質としては、例えば、リガンド依存性タンパク質〔例、Gタンパク質共役型レセプター等の細胞膜上レセプター、ならびに可溶性レセプター(例、免疫グロブリン、細胞膜上レセプターから切断された細胞外ドメイン)、および核内レセプター〕、核酸結合タンパク質(例、転写因子、核酸の保護または輸送タンパク質)、タンパク質複合体を形成するタンパク質(例、アダプタータンパク質)、細胞外マトリクスタンパク質(例、細胞間接着タンパク質)、酵素〔例、チロシンキナーゼ(レセプターまたは非レセプター)、セリン/スレオニンキナーゼ等のキナーゼ〕、糖タンパク質が挙げられる。凝集能を有するタンパク質としては、例えば、変性タンパク質、病原性タンパク質(例、βアミロイド等の神経変性タンパク質)が挙げられる。
【0018】
親和性複合体を構成する因子であるタンパク質は、好ましくは、抗体であってもよい。親和性複合体を構成する抗体は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY等のいずれのアイソタイプであってもよい。このような抗体はまた、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体(例、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体)であってもよい。親和性複合体を構成する抗体は、自己抗原に対する抗体であってもよい。このような抗体はまた、後述するような全長抗体、または抗体断片であってもよい。抗体断片は、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、単鎖抗体が挙げられる。
【0019】
親和性複合体を構成する因子はまた、好ましくは、低分子物質であってもよい。用語「低分子物質(small substance)」とは、分子量1,500未満の化合物をいう。低分子物質は、天然物質または合成物質である。低分子物質の分子量は、1,200未満、1,000未満、800未満、700未満、600未満、500未満、400未満または300未満であってもよい。低分子物質の分子量はまた、50以上、100以上、150以上または200以上であってもよい。低分子物質としては、例えば、リガンド、ホルモン、脂質、脂肪酸、ビタミン、オピオイド、神経伝達物質(例、カテコールアミン)、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、およびオリゴペプチド、あるいは医薬、毒物、および代謝産物が挙げられる。ホルモンとしては、例えば、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、ペプチドホルモンが挙げられる。
【0020】
一実施形態では、低分子物質は、ステロイド化合物であってもよい。ステロイド化合物とは、ステロイド骨格(シクロペンタノペルヒドロフェナントレン骨格)を有する化合物をいう。ステロイド化合物としては、ステロイドホルモン、およびステロイド骨格を保持するその誘導体(例、タンパク質同化ステロイド、抗男性ホルモン剤および抗卵胞ホルモン剤等の合成ステロイド)が挙げられる。ステロイドホルモンとしては、例えば、男性ホルモン、卵胞ホルモン、黄体ホルモン、コルチコイド(例、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド)が挙げられるが、卵胞ホルモンが好ましい。卵胞ホルモンとしては、例えば、エストロン、エストラジオール、エストリオールが挙げられる。低分子物質はまた、ステロイド化合物の代謝産物であってもよい。ステロイド化合物の代謝産物としては、例えば、上述したようなステロイド化合物にヒドロキシル基が付加された化合物、および抱合体が挙げられる。抱合体としては、例えば、グルクロン酸抱合体、硫酸抱合体(例、エストラジオールの3位もしくは17位のいずれかのヒドロキシル基、または3位および17位の双方のヒドロキシル基に硫酸基が抱合された化合物)、グルタチオン抱合体、アセチル抱合体、アミノ酸抱合体が挙げられる。低分子物質はさらに、ステロイド化合物類似治療用薬物(例、エストラムスチン)またはその代謝産物(例、エストロムスチン)であってもよい。
【0021】
【化1】
【0022】
別の実施形態では、低分子物質は、アミノ酸化合物であってもよい。アミノ酸化合物とは、アミノ基およびカルボキシル基を有する化合物をいう。アミノ酸化合物としては、例えば、α−アミノ酸(例、グリシン、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、オルニチン、シトルリン)、β−アミノ酸(例、β−アラニン)、γ−アミノ酸(例、γ-アミノ酪酸)、ならびに、アミノ基およびカルボキシル基を保持するそれらの誘導体が挙げられる。アミノ酸化合物は、L体またはD体であってもよい。低分子物質はまた、アミノ酸化合物の代謝産物であってもよい。アミノ酸化合物の代謝産物としては、例えば、上述したようなアミノ酸化合物にヒドロキシル基が付加された化合物、および上述したような抱合体が挙げられる。低分子物質はさらに、アミノ酸化合物類似治療用薬物またはその代謝産物であってもよい。
【0023】
好ましくは、アミノ酸化合物は、式(I):R−CHCH(NH)COOHで表される化合物であってもよい。Rとしては、以下が挙げられる:
(i)炭化水素基;
(ii)アリール基;
(iii)炭化水素−アリール基;
(iv)アリール−炭化水素基;
(v)炭化水素オキシ−炭化水素基、アリールオキシ−炭化水素基、炭化水素オキシ−アリール基、またはアリールオキシ−アリール基;
(vi)炭化水素チオ−炭化水素基、アリールチオ−炭化水素基、炭化水素チオ−アリール基、またはアリールチオ−アリール基;
(vii)モノまたはジ(炭化水素)アミノ−炭化水素基、モノまたはジ(アリール)アミノ−炭化水素基、モノまたはジ(炭化水素)アミノ−アリール基、あるいはモノまたはジ(アリール)アミノ−アリール基。
【0024】
炭化水素基は、直鎖、分岐鎖または環状の非芳香族炭化水素基であり、その炭素原子数は、例えば1〜15個、好ましくは1〜12個、より好ましくは1〜9個、特に好ましくは1〜6個である。このような炭化水素基としては、例えば、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル)、アルケニル基(例、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル)、シクロアルキル基(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル)が挙げられる。炭化水素も、炭化水素基と同様である。
【0025】
アリール基は、芳香族炭化水素基であり、その炭素原子数は、例えば1〜14個である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基が挙げられる。アリールも、アリール基と同様である。
【0026】
Rは、1〜8個、好ましくは1〜6個の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基、イミド基、カルボキシル基、アミド基、スルホニル基、ニトロ基、ホルミル基、炭素原子数1〜6の炭化水素基が挙げられる。
【0027】
より好ましくは、式(I)で表される化合物は、式(II):R−X−R−CHCH(NH)COOHで表される化合物であってもよい。RおよびRは、それぞれ独立して、上述した炭化水素基または上述したアリール基を示し、好ましくは上述したシクロアルキル基または上述したアリール基を示し、特に好ましくは上述したアリール基を示す。−X−は、−O−、−S−、−NH−または結合手を示し、好ましくは−O−、−S−または−NH−を示し、より好ましくは−O−または−S−を示し、特に好ましくは−O−を示す。Rは、1〜4個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよい。Rは、1〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。RおよびRについての置換基は、Rについて上述したものと同様である。
【0028】
さらにより好ましくは、式(II)で表される化合物は、以下に示すように、チロシンから生合成されるチロシン誘導体であってもよい。チロシン誘導体としては、甲状腺ホルモン(例、トリヨードチロニン、チロキシン)が挙げられる。チロシン誘導体はまた、甲状腺ホルモンの代謝産物であってもよい。甲状腺ホルモンの代謝産物としては、例えば、甲状腺ホルモンにヒドロキシル基が付加された化合物、および上述したような抱合体が挙げられる。低分子物質はさらに、甲状腺ホルモン類似治療用薬物またはその代謝産物であってもよい。
【0029】
【化2】
【0030】
さらに別の実施形態では、低分子物質は、ビタミンであってもよい。ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、Kが挙げられる。好ましくは、ビタミンは、脂溶性ビタミン(例、ビタミンA、D、E、K)であり、より好ましくは、以下に示すようなビタミンDである。低分子物質はまた、ビタミンの代謝産物であってもよい。ビタミンの代謝産物としては、例えば、上述したようなビタミンにヒドロキシル基が付加された化合物、および上述したような抱合体が挙げられる。低分子物質はさらに、ビタミン類似治療用薬物またはその代謝産物であってもよい。
【0031】
【化3】
【0032】
親和性複合体は、上述したような2以上の因子を含む複合体である。具体的には、親和性複合体としては、低分子物質およびタンパク質(例、抗体)を含む複合体、2以上のタンパク質を含むタンパク質複合体、タンパク質および核酸を含む複合体、タンパク質および金属を含む金属要求性タンパク質複合体、タンパク質凝集体、相補的な2以上の核酸を含む核酸複合体(例、二重鎖、三重鎖)、金属錯体が挙げられる。
【0033】
親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を効率的に作製するという観点からは、親和性複合体は、親和性複合体を構成する因子間で強い結合親和性を有するものが好ましい。したがって、抗体の効率的作製の観点から、親和性複合体は、親和性複合体を構成する因子間の結合親和性により特定されてもよい。好ましい結合親和性としては、10−5M未満、5×10−5M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満または10−11M未満の解離定数(即ち、Kd)を有する親和性が挙げられる。解離定数はまた、10−15M以上、5×10−15M以上、10−14M以上、5×10−14M以上、10−13M以上、5×10−13M以上、10−12M以上、5×10−12M以上、10−11M以上、5×10−11M以上、10−10M以上または5×10−10M以上であってもよい。なお、親和性複合体を構成する因子間の結合親和性が低い場合であっても、溶液中の因子の濃度を増加させることにより、親和性複合体の形成を促進することができるため、抗体を効率的に作製できる。したがって、親和性複合体を構成する因子間の結合親和性は、必ずしも重要ではない。
【0034】
表現「親和性複合体に対して特異的に結合し得る〔capable of specifically binding to an(the) affinity complex〕」とは、親和性複合体に対して、親和性複合体を構成する各因子よりも、優先的に結合する能力を有することをいう。例えば、本発明の抗体は、親和性複合体に結合する能力を有し、かつ親和性複合体を構成する各因子に結合する能力を実質的に有し得ない。したがって、本発明の抗体は、親和性複合体を構成する各因子(例、低分子物質、タンパク質)またはその類似因子(例、低分子物質のアナログ、ホモログタンパク質)に対する交差反応性により特定されてもよい。例えば、目的の親和性複合体に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子、あるいは類似因子を含む親和性複合体(類似親和性複合体)に対する本発明の抗体の結合率は、20%以下、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%、0.1%、または0.05%以下であってもよい。
【0035】
例えば、本発明の抗体は、以下(a)〜(c)の結合率を示すものであってもよい:
(a)エストラジオールおよび抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I)に対する、親和性複合体Iに対して特異的に結合し得る抗体(抗体I)の結合率を100%として算出した場合、エストロンおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’)、エストリオールおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’)、エストラジオール抱合体および該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’’)、エストラムスチンおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’’’)、またはエストロムスチンおよび該抗エストラジオール抗体を含む親和性複合体(親和性複合体I’’’’’)に対する抗体Iの結合率が上記値以下である;
(b)トリヨードチロニンおよび抗トリヨードチロニン抗体を含む親和性複合体(親和性複合体II)に対する、親和性複合体IIに対して特異的に結合し得る抗体(抗体II)の結合率を100%として算出した場合、ジヨードチロニンおよび該抗トリヨードチロニン抗体を含む親和性複合体(親和性複合体II’)、またはチロキシンおよび該抗トリヨードチロニン抗体を含む親和性複合体(親和性複合体II’’)に対する抗体IIの結合率が上記値以下である;あるいは
(c)25OHビタミンD3および抗25OHビタミンD3抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III−1)または25OHビタミンD2および抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III−2)に対する、親和性複合体III−1またはIII−2に対して特異的に結合し得る抗体(抗体III)の結合率を100%として算出した場合、1,25(OH)ビタミンD3および該抗25OHビタミンD3抗体または該抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III’)、あるいは1,25(OH)ビタミンD2および該抗25OHビタミンD3抗体または該抗25OHビタミンD2抗体を含む親和性複合体(親和性複合体III’’)に対する抗体IIIの結合率が上記値以下である。
【0036】
親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体はまた、親和性複合体に対して、共有結合性複合体(共有結合性複合体を構成する各因子は、親和性複合体を構成する各因子と同一である)よりも、優先的に結合する能力を有し得る。本発明の抗体は親和性複合体そのものを抗原として用いて作製されたものであることから、本発明の抗体は、共有結合性複合体よりも、親和性複合体に対して、特異的に結合し得る。したがって、本発明の抗体は、親和性複合体に対する結合親和性により特定されてもよい。親和性複合体に対する本発明の抗体の結合親和性としては、10−5M未満、5×10−5M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満または10−11M未満の解離定数(即ち、Kd)を有する親和性が挙げられる。親和性複合体に対する本発明の抗体の解離定数はまた、10−15M以上、5×10−15M以上、10−14M以上、5×10−14M以上、10−13M以上、5×10−13M以上、10−12M以上、5×10−12M以上、10−11M以上、5×10−11M以上、10−10M以上、5×10−10M以上、10−9M以上または5×10−9M以上であってもよい。
【0037】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体であり得る。本発明の抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY等のいずれのアイソタイプであってもよいが、例えば、IgGまたはIgMである。
【0038】
本発明の抗体は、遺伝子変換の能力を有する動物のイムノグロブリンに由来する領域(例、可変領域、相補性決定領域、枠組み領域、定常領域)を有していてもよい。遺伝子変換の能力を有する動物のイムノグロブリンに由来する領域としては、例えば、可変領域(VR)および定常領域(CR)、ならびにVR中に見出される相補性決定領域(CDR)および枠組み領域(FR)が挙げられる。VRとしては、例えば、重鎖可変領域(VH)軽鎖可変領域(VL)が挙げられる。CRとしては、例えば、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3およびCH4を含むCH)、軽鎖定常領域(CL)が挙げられる。
【0039】
用語「遺伝子変換(gene conversion)」とは、V(D)J再編成を受けた可変領域遺伝子が、V遺伝子上流に存在する偽遺伝子に置換されることをいう。ニワトリ等の鳥類、ウシ、ヒツジ、ウサギ等の哺乳動物などの動物(遺伝子変換の能力を有する動物)では、抗体産生細胞における抗体遺伝子の可変領域は、部位特異的組換えであるV(D)J再編成、および相同組換えの一種である遺伝子変換の双方によって多様化され得る。一方、ヒト、マウス等の哺乳動物(遺伝子変換の能力を有しない動物)では、抗体産生細胞における抗体遺伝子の可変領域は、V(D)J再編成によって多様化されるものの、遺伝子変換によっては多様化され得ない。後述するような本発明の抗体の作製方法では、多様性に富む抗体産生細胞の集団(即ち、多様な抗体を産生する能力を有する多様な抗体産生細胞の集団)が好ましく使用されることから、このような抗体産生細胞により産生される本発明の抗体は、遺伝子変換の能力を有する動物のイムノグロブリンに由来する領域を有し得る。
本明細書中以降、遺伝子変換の能力を有する動物を、動物Xと省略することがある。また、遺伝子変換の能力を有しない動物を、動物Yと省略することがある。
【0040】
本発明者らが把握している限り、動物Xでは、複合体(特に、親和性複合体)に対する抗体は、人為的に作製されていないようである。したがって、動物Xのイムノグロブリンに由来する領域を有する本発明の抗体は、in vivoで作製される従来の抗体に対して新規であると考えられる。
【0041】
本発明の抗体は、動物Xのイムノグロブリンに由来する第1の領域(例、VR、CR、CDR、FR)、および/または動物Yのイムノグロブリンに由来する第2の領域(例、VR、CR、CDR、FR)を有していてもよい。例えば、本発明の抗体は、動物Xのイムノグロブリンに由来する第1の領域として、CDR、FR、またはCDRおよびFRの双方を含むVRを有し、かつ、動物Yのイムノグロブリンに由来する第2の領域として、CR、FR、またはCRおよびFRの双方を有していてもよい。このような抗体は、後述する抗体等に対応し得る。
好ましくは、本発明の抗体は、(I)(a)動物Xのイムノグロブリン(例、IgM)に由来する第1の領域(例、VR、CDR、FR)、および動物Yのイムノグロブリン(例、IgG)に由来する第2の領域(例、CR、CH1、CH2、CH3)を有する重鎖、ならびに(b)動物Xのイムノグロブリン(例、IgM)に由来する第1の領域(例、VR、CDR、FR)、および動物Yのイムノグロブリン(例、IgG)に由来する第2の領域(例、CR)を有する軽鎖(例、λ鎖、κ鎖、ならびにλ鎖およびκ鎖のキメラ鎖)、あるいは(II)(a)動物Xのイムノグロブリン(例、IgM)に由来する第1の領域(例、VR、CDR、FR、CR、CH1)、および動物Yのイムノグロブリン(例、IgG)に由来する第2の領域(例、CR、CH2、CH3)を有する重鎖、ならびに(b)動物Xのイムノグロブリン(例、IgM)に由来するVRおよびCRを有する軽鎖(例、λ鎖、κ鎖)を有していてもよい。
より好ましくは、本発明の抗体は、(I’)(a’)ニワトリIgMに由来するVR、および動物Y(例、マウス、ヒト)IgG(例、IgG1)に由来するCR(CH1、CH2、CH3)を有する重鎖、ならびに(b’)ニワトリIgMに由来するVR、および動物Y(例、マウス、ヒト)IgG(例、IgG1)に由来するCRを有する軽鎖(例、λ鎖、κ鎖、ならびにλ鎖およびκ鎖のキメラ鎖)、あるいは(II’)(a’)ニワトリIgMに由来するVRおよびCH1、および動物Y(例、マウス、ヒト)のIgG(例、IgG1)に由来するCH2およびCH3を有する重鎖、ならびに(b’)ニワトリIgMに由来するVRおよびCRを有する軽鎖(例、λ鎖、κ鎖)を有していてもよい。
上述した動物のイムノグロブリン遺伝子のヌクレオチド配列が知られているため、当業者は、遺伝子工学的な手法を用いることにより、このような抗体を適宜作製することができる(例、実施例5、6を参照)。(I)および(I’)の抗体は、後述するキメラI型抗体に対応し得る。(II)および(II’)の抗体は、後述するキメラII型抗体に対応し得る。
【0042】
本発明の抗体は、全長抗体であってもよい。用語「全長抗体」とは、可変領域および定常領域を各々含む重鎖および軽鎖を含む抗体(例、2つのFab部分およびFc部分を含む抗体)をいう。本発明の抗体はまた、このような全長抗体に由来する抗体断片であってもよい。抗体断片は、本発明の全長抗体の一部であり、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fvが挙げられる。
【0043】
in vitroで作製される従来の抗体は、慣行的には、いわゆる単鎖抗体(scFv)であり、定常領域を有し得ない。したがって、本発明の全長抗体またはその抗体断片は、in vitroで作製される従来の抗体に対して新規であると考えられる。なお、単鎖抗体を全長抗体に改変する場合、一般論として、抗原に対する結合力および/または特異性は、喪失または著しく低下することが知られている。したがって、本発明の全長抗体は、in vitroで作製される従来の単鎖抗体、およびそれから誘導される可能性がある全長抗体に対して優れる。なお、後述する本発明の方法は、全長抗体が取得できる、短期間(数日)で、多様な抗体産生細胞の集団(抗体のライブラリ)を調製できる、ならびに1回のスクリーニング操作で真の陽性クローンを取得できる(おそらく、アッセイに用いられる抗体産生細胞(例、DT40細胞)の大きさに起因して、非特異的反応が抑制され得るため)等の利点がある。
【0044】
本発明の抗体はまた、親和性複合体の表面上に露出している部分に対して特異的に結合し得る抗体(即ち、複合体に対する中和抗体)であり得る。後述するような本発明の方法によれば、このような抗体を作製できる。例えば、親和性複合体が、生体内でヘテロ多量体(例、3種のタンパク質によるヘテロ3量体)を形成して作用を示すものである場合、ヘテロ多量体のうち互いに会合する2量体(親和性複合体)に対して特異的に結合し得る抗体を用いることにより、ヘテロ多量体の形成により媒介される生物学的シグナルの発生を妨げることができる。
【0045】
本発明の抗体はまた、免疫原性の親和性複合体、または免疫原性のない親和性複合体(即ち、ハプテン)に対して特異的に結合し得る抗体であり得る。免疫原性とは、動物における抗体応答を誘発する能力をいう。後述するような本発明の方法によれば、免疫原性の親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体のみならず、免疫原性のない親和性複合体(即ち、ハプテン)に対して特異的に結合し得る抗体もまた、作製できる。本発明の方法は、多様な抗体産生細胞の集団(多様な抗体のライブラリと同義)から、親和性複合体に対して結合し得る抗体を産生している抗体産生細胞を得るものである。したがって、親和性複合体自体に免疫原性がない場合であっても、親和性複合体に対して結合し得る抗体を産生している抗体産生細胞を得ることができる。
【0046】
本発明の抗体はまた、任意の動物に由来する因子を含む複合体に対して特異的に結合し得る抗体であり得る。後述するような本発明の方法によれば、親和性複合体を構成する因子の一部または全部が任意の動物に由来する場合であっても、このような親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を作製できる。動物を用いる従来の方法では、同種の動物に由来する因子に対する免疫応答を誘導し得ないため(例、抗原およびそれに対するマウス抗体を含む複合体を、マウスに免疫する場合)、このような因子に対する抗体を作製し得ない。しかしながら、本発明の方法によれば、任意の動物に由来する因子を含む複合体に対して特異的に結合し得る抗体を作製できる。
【0047】
本発明の抗体はまた、親和性複合体における因子間の会合部分、および/または、会合により引き起こされる、因子の変化した立体構造(例、フォールディングおよび/またはコンホメーション)を特異的に認識することにより、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体であり得る。
【0048】
本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体であってもよい。
【0049】
キメラ抗体とは、VRおよびCRが互いに異なる動物種のイムノグロブリンに由来するモノクローナル抗体を意味する。例えば、キメラ抗体は、動物X(例、ニワトリ)のイムノグロブリンに由来するVR、かつ、動物Y(例、ヒト)のイムノグロブリンに由来するCRを有するキメラ(動物X/動物Y)抗体であり得る。動物Yのイムノグロブリン由来のCRは、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEおよびIgY等のアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有する。本発明のキメラ抗体のCRは、いずれのアイソタイプに属していてもよい。
【0050】
キメラ抗体は、自体公知の方法により作製できる(例えば、Morrison,Science 229:1202(1985);Oiら、BioTechniques 4:214(1986);Gilliesら、(1989)J.Immunol.Methods 125:191−202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号を参照)。具体的には、キメラ抗体は、以下のとおり作製できる。先ず、動物Xに由来する抗体産生細胞から単離した動物Xモノクローナル抗体をコードするDNAから取得したV遺伝子(H鎖VRをコードするVDJ遺伝子)の下流に、動物YイムノグロムリンをコードするDNAから取得したC遺伝子(H鎖CRをコードするC遺伝子)を連結し、動物Xに由来する抗体産生細胞から単離した動物Xモノクローナル抗体をコードするDNAから取得したV遺伝子(L鎖VRをコードするVJ遺伝子)の下流に動物YイムノグロムリンをコードするDNAから取得したC遺伝子(L鎖CRをコードするC遺伝子)を連結する。次いで、これらの連結物を、各々発現可能なように1つ又は別々の発現ベクターに挿入し、得られた発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換細胞を培養することにより作製することができる(例、実施例5、6を参照)。本発明はまた、本発明の抗体を、キメラ抗体に変換することを含む、キメラ抗体の作製方法を提供する。
【0051】
ヒト化抗体とは、遺伝子工学的に作製されるモノクローナル抗体であって、例えば、CDRの一部又は全部が動物X(例、ニワトリ)モノクローナル抗体に由来し、FRおよびCRがヒトイムノグロブリンに由来するモノクローナル抗体を意味する。CDRは、抗体のVR中の超可変領域(HVR)に存在する、抗原と相補的に結合する部分(例、CDR1、CDR2、CDR3)であり、FRは、CDRの前後に介在する比較的保存された部分(例、FR1、FR2、FR3、FR4)である。換言すれば、ヒト化抗体は、動物X(例、ニワトリ)モノクローナル抗体のCDRの一部又は全部以外の全ての領域が、ヒトイムノグロブリンの対応領域で置換されたモノクローナル抗体を意味する。
【0052】
ヒト化抗体は、自体公知の方法により作製できる〔例えば、CDR移植(欧州特許第239,400号;WO91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号および同第5,585,089号)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号;同第519,596号;Padlan、Molecular Immunology 28(4/5):489−498(1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguskaら、PNAS 91:969−973(1994))、およびチェーンシャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)を参照〕。なお、FR中のアミノ酸残基は、抗原結合性の維持(好ましくは、改善)の観点より、CDRドナー抗体由来の対応残基と置換されてもよい。FR中における置換されるべきアミノ酸残基は、当該分野で周知の方法によって決定することができ、例えば、抗原結合に重要なFR中のアミノ酸残基を同定するためのCDRおよびFRの相互作用のモデリング、ならびに特定の位置における異常なFRアミノ酸残基を同定するための配列比較によって、決定することができる〔例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332:323(1988)を参照〕。具体的には、ヒト化抗体は、以下のとおり作製できる。先ず、動物Xモノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞から、動物XのH鎖CDR遺伝子、およびそれに対応する動物XのL鎖CDR遺伝子を単離し、そして、ヒトイムノグロブリン遺伝子から、動物XのH鎖CDRに対応する、ヒトH鎖CDR以外の全領域をコードするヒトH鎖遺伝子、および動物XのL鎖CDRに対応する、ヒトL鎖CDR以外の全領域をコードするヒトL鎖遺伝子を単離する。次いで、CDRを移植する。その後、CDRが移植されたヒトH鎖遺伝子、およびCDRが移植されたヒトL鎖遺伝子を、各々発現可能なように1つ又は別々の発現ベクターに挿入し、得られた発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換細胞を培養することにより作製することができる。本発明はまた、本発明の抗体を、ヒト化抗体に変換することを含む、ヒト化抗体の作製方法を提供する。
【0053】
ヒト抗体とは、イムノグロブリンを構成するH鎖及びL鎖のVRおよびCRを含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体を意味する。
【0054】
ヒト抗体は、自体公知の方法により作製できる。例えば、ヒト抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子またはそれを含む染色体を、非ヒト動物(例、動物X、非ヒト動物Y)に組込むことにより(例えば、相同組換えにより、非ヒト動物の遺伝子座中に組み込むことにより)作製されたトランスジェニック動物から単離された抗体産生細胞、またはヒトイムノグロブリン遺伝子またはそれを含む染色体が導入されたトランスジェニック抗体産生細胞を用いることにより、作製することができる。トランスジェニック動物は、ヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであり、かつ内因性免疫グロブリンを発現しない動物であってもよい。ヒト抗体を産生するトランスジェニック動物(および/またはヒト抗体を産生するトランスジェニック抗体産生細胞)が、マウス、ウシ等の動物(および/または抗体産生細胞)について知られている。このようなトランスジェニック動物(および/または細胞)の作製、ならびに/あるいはヒト抗体の作製は、例えば、WO98/37757、WO00/10383、WO00/075300、WO2002/070648、WO2003/047336、WO2003/085107、WO2005/104835、WO2006/047367、特開2001−231403、特開2009−82033、米国特許第5,939,598号、ならびに/あるいはLonbergおよびHuszar、Int.Rev.Immunol.13:65−93(1995);WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;欧州特許第0 598 877;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;同第5,885,793号;同第5,916,771号;および同第5,939,598号に開示されている。なお、本発明の抗体(例、ヒト化抗体およびヒト抗体)は、抗原/抗体反応にpH依存性を付与するように作製された、抗原/抗体反応を繰り返し遮断できるリサイクリング抗体であってもよい(例、Nature Biotechnology,28,1203−1207(2010)を参照)。本発明はまた、ヒト抗体の作製方法を提供する。
【0055】
本発明の抗体は、そのヌクレオチド配列を決定することで、当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYおよびAusubelら編、1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NYに記載の技術を参照)を用いて操作され、例えば、アミノ酸残基が変異(例、置換、欠失、および/または挿入)されてもよい。本発明の抗体はまた、後述するように、他の部分または物質、あるいは支持体等の固相と連結されていてもよい。
【0056】
本発明の抗体は、免疫グロブリン等のタンパク質について公知の方法により、単離または精製することができる。このような方法としては、例えば、クロマトグラフィー(例、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、透析、ならびに溶解度の差異を利用する方法が挙げられる。本発明の抗体はまた、抗体の定常領域(例、特定のアイソタイプの定常領域)に親和性を有する物質(例、タンパク質)を用いることにより、あるいは異種ポリペプチド配列に融合することにより、容易に精製することができる。
【0057】
(2.抗体産生細胞)
本発明は、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を提供する。当該抗体産生細胞により産生され得る、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体は、上述したとおりである。
【0058】
用語「抗体産生細胞(antibody−producing cell)」とは、抗体を産生する能力を有する細胞をいう。抗体産生細胞は、抗体を産生する能力を有する動物に由来し得る細胞であり、B細胞が挙げられる。抗体産生細胞は、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ)、鳥類(例、ニワトリ)等の動物に由来する細胞であり得る。抗体産生細胞としては、初代培養細胞、細胞株が挙げられるが、細胞株が好ましい。
【0059】
抗体産生細胞は、好ましくは、V(D)J再編成に加えて、可変領域中のさらなる変異を引き起こし得る抗体産生細胞であり得る。可変領域中のさらなる変異を引き起こし得る抗体産生細胞の一例は、遺伝子変換の能力を有する動物に由来する、かかる能力を保持する抗体産生細胞である。可変領域中のさらなる変異を引き起こし得る抗体産生細胞の別の例は、可変領域中の体細胞突然変異を引き起こし得る抗体産生細胞である。可変領域中の体細胞突然変異を引き起こし得る抗体産生細胞として、可変領域中の体細胞突然変異の頻度が著しく亢進し得る抗体産生細胞が報告されており、例えば、リンパ腫(例、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫)由来の細胞を用いることができる。このような抗体産生細胞の作製は、例えば、Buersteddeら〔EMBO J.(1990)9:921−927〕、WO2004/011644、WO2004/058964、WO2002/100998等の先行文献に開示されている。
【0060】
抗体産生細胞は、好ましくは、遺伝子変換の能力を有する動物に由来し得る。遺伝子変換の能力を有する動物に由来する抗体産生細胞は、ノックアウト細胞であってもよい。このようなノックアウト細胞としては、XRCC(例、XRCC1、XRCC2、XRCC3等の1以上のXRCC分子種)のノックアウト細胞が挙げられる。より好ましくは、抗体産生細胞は、DT40細胞等のファブリキウス嚢リンパ腫細胞である。DT40細胞は、ニワトリ由来B細胞株であり、当該細胞の保有する染色体に変異(例、特定の遺伝子の組換え、挿入、削除等)が導入された、誘導体株および亜株(Subline)もまた含まれる(例、WO2004/011644を参照)。
【0061】
抗体産生細胞は、特定のアイソタイプの免疫グロブリンを産生するように、抗体遺伝子座において相同組換えが生じている細胞であってもよい。特定のアイソタイプとしては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEおよびIgYが挙げられる。
【0062】
抗体産生細胞はまた、本発明の抗体または他のタンパク質の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより作製される形質転換体であってもよい。発現ベクターによる外来遺伝子の発現は、一過的または恒常的(すなわち、安定的)であり得る。宿主細胞としては、例えば、細菌(例、大腸菌)、酵母等の微生物、ならびに昆虫細胞、鳥類細胞および哺乳動物細胞(例、CHO細胞、MDCK細胞)等の動物細胞が挙げられる。本発明はまた、形質転換体の作製に用いられる、このような発現ベクターを提供する。
【0063】
発現ベクターで用いられるプロモーターは、導入される細胞で機能し得るものであれば特に制限されず、例えば、微生物および動物細胞中で機能し得るプロモーターが挙げられる。このようなプロモーターとしては、例えば、ウイルスプロモーター(例、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR、ラウス肉腫ウイルスLTR、MoMuLV由来LTR、アデノウイルス由来初期プロモーター)、哺乳動物由来の構成遺伝子プロモーター(例、β−アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター)が挙げられる。
【0064】
発現ベクターは、好ましくは核酸分子をコードするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドの下流に転写終結シグナル(すなわち、ターミネーター領域)を含む。さらに、発現ベクターは、薬剤(例、アンピシリン、カナマイシン、G418)に対する耐性遺伝子を含んでいてもよい。
【0065】
外来の遺伝子を癌細胞に導入するために用いられる発現ベクターの基本ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター(例、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、レンチウイルス等のウイルス由来ベクター)であり得る。
【0066】
(3.抗体産生細胞の作製方法)
本発明は、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞の作製方法を提供する。本方法は、親和性複合体を用いて、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を調製することを含む。親和性複合体、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体、および抗体産生細胞は、上述したとおりである。例えば、このような調製は、多様な抗体産生細胞を異なるウェル中に播種し、培養した後、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体が培養上清中に存在するか否かを評価することにより、行われる。あるいは、このような調製は、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体に結合する能力を有する抗体産生細胞を選別することにより、行われる。このような調製は、培地、緩衝液、水等の溶液中で行われ得る。すなわち、このような調製は、インビトロで行われ得る。
【0067】
本発明では、目的の工程に応じた任意の適切な培地が用いられる。例えば、所定の細胞について、培地の調製に用いられる基礎培地としては、例えば、MEM、IMDM、DMEM、αMEM、ハム培地、RPMI培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地が挙げられる。培地は、例えば、血清(例えば、ニワトリ血清、FCS等のウシ血清)、血清代替物(例、KSR)、脂肪酸又は脂質、アミノ酸、ビタミン、増殖因子、サイトカイン、抗酸化剤、2−メルカプトエタノール、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等を含むことができる。培養温度、CO濃度等の他の培養条件は、適宜設定できる。培養温度は、特に限定されるものではないが、例えば約30〜40℃、好ましくは約39.5℃である。また、CO濃度は、例えば約1〜10%、好ましくは約5%である。培養における細胞数、各種因子の濃度等のその他の条件は、適宜設定できる。本発明で用いられ得る所定の細胞としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)由来の細胞(例、CHO細胞、MDCK細胞)、鳥類(例、ニワトリ)由来の細胞(例、DT40細胞)、昆虫由来の細胞が挙げられる。
【0068】
本発明では、目的の工程に応じた任意の適切な緩衝液が用いられる。このような緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液(例、PBS、PBST)、Tris緩衝液(例、Tris−HCl)、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液が挙げられる。緩衝液は、塩等の物質をさらに含んでいてもよい。緩衝液のpHは、目的の工程に応じて適宜調整され、例えばpH4.0〜10.0、好ましくはpH5.0〜9.0、より好ましくはpH6.0〜8.0、さらにより好ましくはpH6.5〜7.5である。
【0069】
好ましくは、多様な抗体産生細胞の集団からの、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞の調製は、親和性複合体を用いて、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体に結合する能力を有する抗体産生細胞を選別することにより、行われる。親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞は、会合する能力を保持する、天然の因子の一部(例、リガンド結合ドメイン、細胞外ドメイン、可溶性レセプター)を含む親和性複合体を用いて、作製してもよい。親和性複合体は、後述するような検出用物質で、標識されていてもよい。親和性複合体は、直接的に、またはリンカー(例、プロテインG)を介して間接的に、固体に固定されていてもよい。固体は、後述するような検出用物質で、標識されていてもよい。親和性複合体が固定され得る固体としては、例えば、粒子(例、磁性粒子、蛍光標識粒子)が挙げられる。具体的には、調製は、以下のとおり行われてもよい。先ず、多様な抗体産生細胞の集団を、親和性複合体が固定された固体と、溶液(例、緩衝液)中で混合し、所定の温度(例えば、0〜40℃、好ましくは2〜10℃)で、所定の時間(例えば、5〜300分、好ましくは15〜60分)、反応させる。溶液中の抗体産生細胞の濃度は、例えば、1.0×10〜1.0×1010細胞/ml、1.0×10〜1.0×10細胞/ml、または1.0×10〜5.0×10細胞/mlであってもよい。親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体ではなく、親和性複合体を構成する各因子に対して結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞の取得を防止するという観点(即ち、ブロッキング)のため、反応用溶液は、親和性複合体に加えて、親和性複合体を構成する少なくとも1つまたは複数の因子を含んでいてもよい。次いで、固体に固定された親和性複合体と結合した抗体産生細胞を、任意の手法(例、磁気的または蛍光的方法)により、多様な抗体産生細胞の集団から回収する。必要に応じて、回収された抗体産生細胞を培地中に分散させて、抗体産生細胞と、親和性複合体が固定された固体とを解離させ、その後、抗体産生細胞を培養する。得られた抗体産生細胞は、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生し得る。
【0070】
得られた抗体産生細胞が、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生するか否かを確認してもよい。このような確認は、例えば、親和性複合体を用いて行うことができる。具体的には、確認は、以下のとおり行われてもよい。先ず、支持体(例、プレート)上に、親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子を固定する。次いで、親和性複合体を形成する他の因子の存在下および非存在下において、抗体産生細胞の培養上清を添加する。最後に、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体の検出手段〔例、当該抗体の定常領域に結合し得る抗免疫グロブリン(例、IgM)抗体に結合した酵素(例、HRP)およびその基質(例、TMB)〕を用いて、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体が、抗体産生細胞の培養上清中に含まれているか否かを評価する。
【0071】
抗体産生細胞により産生される抗体の、ヘテロ複合体に対する特異性は、上述した方法論により確認できる。一方、抗体産生細胞により産生される抗体の、ホモ複合体に対する特異性は、上述した方法論により確認し得ない。なぜなら、ホモ複合体を構成する同種の因子(単量体)は、溶液中で、自律的に会合して複合体を形成し、単量体として存在し得ないためである。したがって、抗体産生細胞により産生される抗体がホモ複合体に特異的であり、ホモ複合体を形成し得る単量体には結合し得ないことについて、さらなる評価が必要である。このような評価は、例えば、i)因子間の会合部分に会合不能となるようなアミノ酸変異(例、置換、欠失、挿入)を導入した変異因子を作製し、変異因子に対して本発明の抗体が結合しないことを確認することにより、ii)因子間の会合を阻害するように、因子にタンパク質(例、GFP、GST)を付加した融合因子を作製し、融合因子に対して本発明の抗体が結合しないことを確認することにより、あるいはiii)因子が親和性複合体を形成しないように調製された溶液を用いて確認することにより、行うことができる。iii)で述べた溶液の調製は、例えば、塩濃度、pH値等の条件の調整、あるいは、同種の因子a間の結合強度よりも、因子aと高い結合強度を示し得る異種の因子bを、溶液中に添加することにより、または因子aと会合し得る異種の因子bを溶液中に過剰に添加することにより、行うことができる。
【0072】
本発明の方法は、互いに親和性を有する2以上の因子を会合させて、親和性複合体を調製することをさらに含んでいてもよい。会合は、溶液(例、緩衝液)中で行われ得る。親和性複合体を構成する因子は、上述したとおりである。2以上の因子のうち少なくとも1つの因子は、予め固体に固定されていてもよい。この場合、調製される親和性複合体は、固体に固定されたものであってもよい。因子は、例えば、リンカーを介して、固体に固定されてもよい。例えば、因子がイムノグロブリンである場合、因子は、イムノグロブリンに親和性を有するタンパク質(例、プロテインG)を介して、固体に固定されてもよい。互いに親和性を有する2以上の因子を会合させる場合、溶液中の各因子の濃度は、親和性複合体が形成される限り特に限定されないが、例えば、0.001〜100,000μM、0.01〜10,000μM、0.05〜1000μM、または0.1〜100μMであってもよい。なお、本発明の方法において用いられる親和性複合体は、種々の種類の親和性複合体を含むライブラリであってもよく、アレイ様式で用いられてもよい。
【0073】
本発明の方法は、多様な抗体産生細胞の集団を提供することをさらに含んでいてもよい。多様な抗体産生細胞の集団は、予め調製されたものを用いてもよいし、新たに調製されたものを用いてもよい。多様な抗体産生細胞の集団は、好ましくは、V(D)J再編成に加えて、可変領域中のさらなる変異を引き起こし得る抗体産生細胞の集団であり得る。多様な抗体産生細胞の集団としては、例えば、上述したような、遺伝子変換の能力を有する動物に由来する、かかる能力を保持する抗体産生細胞の集団、ならびに可変領域中の体細胞突然変異を引き起こし得る抗体産生細胞の集団が挙げられる。これらの集団の調製は、例えば、先に列挙した文献中に記載される方法により、行うことができる。
【0074】
本発明の方法は、培地中において、遺伝子変換の能力を有する抗体産生細胞を、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤で処理して、多様な抗体産生細胞の集団を調製することをさらに含んでいてもよい。このような処理により、先ず、抗体産生細胞の染色体におけるクロマチン構造の弛緩が促進される。次いで、クロマチン構造の弛緩により、抗体遺伝子座における相同組換えが促進され、多様な抗体を産生する多様な抗体産生細胞の集団が得られる。ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤としては、例えば、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の活性を抑制する活性を有する抗体等のタンパク質因子、ならびにトリコスタチンA、ブチル酸およびバルプロ酸等の化合物が挙げられる。遺伝子変換の能力を有する抗体産生細胞から多様な抗体産生細胞の集団を調製する方法の詳細は、例えば、WO2004/011644を参照のこと。なお、このような技術の一例は、ADLib(Autonomously Diversifying Library)システムとして知られている。
【0075】
本発明の方法は、親和性複合体を用いて、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を調製する前に、親和性複合体を構成する因子を用いて、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体を構成する因子に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を除去することを含んでいてもよい。このような方法論により、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を、効率的に取得できる。例えば、目的の抗体産生細胞が、親和性複合体に結合する能力を有する抗体産生細胞である場合、除去は、以下のとおり行われてもよい。先ず、溶液中において、親和性複合体を構成する因子を、支持体(例、プレート)上に固定する。次いで、多様な抗体産生細胞の集団を溶液中に添加し、一定時間放置して、親和性複合体を構成する因子に結合する能力を有する抗体産生細胞を、支持体上の因子に結合させる。支持体に結合しなかった抗体産生細胞の集団を含む溶液を回収した後、親和性複合体を用いて、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を調製する。除去は、親和性複合体を構成する1つの種類の因子に対して行われてもよく、または複数回繰り返されることにより、親和性複合体を構成する2以上(例、全て)の種類の因子に対して行われてもよい。
【0076】
本発明の抗体は、上述したように、親和性複合体における因子間の会合部分、および/または、会合により引き起こされる、因子の変化した立体構造(例、フォールディングおよび/またはコンホメーション)を特異的に認識する可能性がある。したがって、本発明の方法は、本発明の抗体を、親和性複合体における因子間の会合部分に特異的に結合し得る抗体、または会合により引き起こされる、因子の変化した立体構造(例、フォールディングおよび/またはコンホメーション)に特異的に結合し得る抗体、あるいは上記特性の双方を有する抗体に分類することを、さらに含んでいてもよい。
【0077】
本発明の方法は、以上の工程を全てまたは一部繰り返すことにより、行なわれてもよい。例えば、以上の工程を、2回以上繰り返すことにより、親和性複合体に対してより良質の抗体を産生する抗体産生細胞を調製することができる。本発明の方法はまた、異なる方法論の組合せにより、行なわれてもよい。例えば、ADLibシステムに内在する方法論を、上述したような体細胞突然変異の誘発法と組み合せることにより、親和性複合体に対して至適化された抗体を産生する抗体産生細胞を調製することができる。勿論、本発明の方法はそれ自体優れたものであることから、必ずしも他の方法論と併用される必要はない。目的抗体のより迅速な取得という観点からは、本発明の方法は、単独で用いることができる。
【0078】
(4.抗体の作製方法)
本発明は、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体の作製方法を提供する。本方法では、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を培養することにより、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体が得られる。親和性複合体、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体、および抗体産生細胞は、上述したとおりである。
【0079】
抗体産生細胞の培養は、培地中で行うことができる。例えば、動物細胞については、上述した培地を用いることができる。また、微生物については、培地は、微生物の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが挙げられ、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機又は有機物質が挙げられ、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地には、酵母エキス、ビタミン類などを添加してもよい。培養条件、例えば温度、培地のpH及び培養時間は、抗体産生細胞から抗体が大量に産生されるように適宜選択される。培養温度は、例えば30〜40℃である。
【0080】
抗体の作製方法は、培地中において、多様な抗体産生細胞の集団から、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体を産生する能力を有する抗体産生細胞を得ることをさらに含んでいてもよい。このような工程は、本発明の抗体産生細胞の作製方法と同様にして行うことができる。
【0081】
(5.抗体の用途)
本発明の抗体は、例えば、試薬(例、診断試薬、実験試薬)および医薬として、ならびに因子のスクリーニングに有用である。
【0082】
例えば、本発明の抗体は、試薬として、親和性複合体のイムノアッセイ(定性的または定量的測定)に用いられ得る。イムノアッセイとしては、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、サンドイッチELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、免疫クロマト法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学的染色法が挙げられる。
【0083】
試薬として用いられる場合、本発明の抗体は、検出用物質に連結されていてもよい。本発明の抗体は、検出用物質に直接的または間接的(即ち、リンカーの使用により)に連結され得る。検出用物質としては、例えば、酵素(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、親和性物質(例、ストレプトアビジン、ビオチン)、蛍光物質(例、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン)、発光物質(例、ルシフェリン、エクオリン)、放射性物質(例、125I、131I、111In、99Tc)が挙げられる。検出用物質に連結された本発明の抗体は、イムノアッセイに有用である。
【0084】
試薬として用いられる場合、本発明の抗体は、支持体上に固定されていてもよい。支持体としては、例えば、メンブレン(例、ニトロセルロース膜)、ガラス、プラスチック、金属、プレート(例、マルチウェルプレート)が挙げられる。支持体上に固定された本発明の抗体は、例えば、イムノアッセイ、および親和性複合体の精製に有用である。
【0085】
好ましくは、本発明の抗体は、非競合測定法に用いられる。非競合測定法としては、例えば、サンドイッチ法が挙げられる。好ましくは、本発明の抗体がサンドイッチ法に用いられる場合、因子(例、低分子物質、タンパク質)に対する第1の抗体、ならびに因子およびそれに対する第1の抗体を含む親和性複合体に対して特異的に結合し得る第2の抗体(即ち、抗体の組合せ)の使用もまた、好ましい。
【0086】
本発明の抗体はまた、医薬として、生体内に存在する親和性複合体に結合することにより、その親和性複合体の機能を喪失させ得、または、その親和性複合体の体内動態を変更し得る。例えば、本発明の抗体は、生体内に存在する、少なくとも3つの因子から構成される親和性複合体の形成阻害に用いられ得る。具体的には、生体内に存在する親和性複合体が因子a(例、リガンド)、因子b(例、レセプター)および因子c(例、コアクチベーターおよびコリプレッサー等のコファクター)から構成される場合、本発明の抗体は、因子aおよび因子bから構成される親和性複合体に対して、競合的に結合することにより、因子aおよび因子bから構成される親和性複合体と因子cとの間の結合を阻害し、それにより、因子a、因子bおよび因子cから構成される親和性複合体の形成により媒介される生物学的シグナル(例、増殖シグナル)を調節し得る。例えば、因子cがコアクチベーターである場合、本発明の抗体は、生物学的シグナルを低減し得る。一方、因子cがコリプレッサーである場合、本発明の抗体は、生物学的シグナルを増強し得る。あるいは、生体内に存在する親和性複合体を構成する因子に、生物学的シグナル(例、増殖シグナル)を増強するような変異が生じた場合、本発明の抗体は、親和性複合体の形成を阻害することにより、生物学的シグナルを低減し得る。
【0087】
医薬として用いられる場合、本発明の抗体は、治療に有用な物質に連結されていてもよい。本発明の抗体は、治療に有用な物質に直接的または間接的(即ち、リンカーの使用により)に連結され得る。治療に有用な物質としては、例えば、抗癌剤、毒素(例、細胞増殖抑制性もしくは細胞殺傷性)、タンパク質(例えば、増殖因子、サイトカイン)、放射性金属〔例、αエミッター(例、213Bi)〕、アポトーシス促進剤、安定化剤(例、PEG)が挙げられる。このような物質を抗体に連結する技術は周知であり、例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243−56頁(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623−53頁(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)、475−506頁(1985)を参照のこと。
【0088】
医薬として用いられる場合、本発明の抗体は、医薬上許容され得る担体を含む医薬組成物として投与される。医薬組成物は、経口的または非経口的に投与される(例、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与)。医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0089】
医薬として用いられる場合、本発明の抗体の投与量は、有効成分の活性や種類、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、通常、成人1日あたり有効成分量として約0.001〜約500mg/kgである。
【0090】
本発明の抗体は、親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子と組み合わされて用いられてもよい。この場合、本発明の抗体は、(i)親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体、および(ii)親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子を含むセットとして提供される。親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子は、親和性複合体を構成する上述した因子と同様である。本発明のセットはまた、(i’)因子(例、低分子物質、タンパク質)、およびそれに対する抗体を含む親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体、および(ii’)因子(例、低分子物質、タンパク質)に対して特異的に結合し得る抗体を含むものであってもよい。本発明のセットは、キットとして提供されてもよい。
【0091】
本発明のセットは、例えば、親和性複合体を構成し得る因子の検出および/または定量に有用である。本発明の抗体がこのようなセットして提供される場合、本発明の抗体は、上述したように、検出用物質に連結されていてもよい。あるいは、本発明の抗体が検出用物質に連結されていない場合、本発明のセットは、検出用物質、および/または検出用物質に連結されている、本発明の抗体の検出用タンパク質(例、抗イムノグロブリン抗体、またはプロテインG)を、さらに含んでいてもよい。例えば、親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子がタンパク質である場合、本発明のセットは、サンドイッチ法に有用である。
【0092】
あるいは、親和性複合体を構成する少なくとも1つの因子が抗体等のタンパク質である場合、本発明のセットは、親和性複合体を構成する別の因子(例、低分子物質、タンパク質)を治療標的とするサンドイッチ療法(例、2重抗体療法)に用いられる。
例えば、抗体は、低分子物質に対する高い特異性を必ずしも有しない。しかしながら、低分子物質に対して特異的に結合し得る抗体を、低分子物質およびそれに対して特異的に結合し得る抗体を含む親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体と組み合せることで、2重の特異性が達成され、特異性が増幅される。このような抗体の組合せは、低分子物質に対して、抗体単独よりも特異的である。したがって、本発明のセットは、低分子物質に対する抗体療法に有用である。
また、抗体は、高度の相同性を有する複数のタンパク質のうちの特定の標的タンパク質に対して高い特異性を必ずしも有しない。例えば、治療標的が天然タンパク質aであり、かつ、天然タンパク質aに対して高い相同性(例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上のアミノ酸配列同一性)を有する天然タンパク質b(ホモログ)が存在する場合、天然タンパク質aに対してより選択的に作用させるため、このような抗体の組合せを用いることができる。したがって、本発明のセットは、高度の相同性を有する複数の天然タンパク質のうち、特定の天然タンパク質を治療標的とする抗体療法に有用である。
さらに、抗体は、変異タンパク質に対して高い特異性を必ずしも有しない。このような変異タンパク質としては、例えば、天然タンパク質に対して、1または数個のアミノ酸残基が変異(例、置換、欠失、挿入、および/または付加)したタンパク質が挙げられる。例えば、癌において、正常細胞に発現している非変異タンパク質a(天然タンパク質a)を治療標的とすることが所望されておらず、かつ、異常細胞に発現している変異タンパク質a’のみを治療標的とすることが所望されている場合、変異タンパク質a’に対してより選択的に作用させるため、このような抗体の組合せを用いることができる。したがって、本発明のセットは、変異タンパク質のみを治療標的とする抗体療法に有用である。
【0093】
本発明のセットは、親和性複合体を形成し得る因子のスクリーニングに有用である。本発明のセットはまた、異なる作用機序を有するリガンド(例、低分子物質、タンパク質)のスクリーニングに有用である。所定のレセプターに対するリガンドとしては、異なる作用機序を有するもの(例、アゴニスト、アンタゴニスト、リバースアゴニスト)が知られている。所定のレセプターに対するこのようなリガンドの作用機序の差異は、レセプターおよびリガンドの会合により引き起こされ得るレセプターの立体構造(例、フォールディングおよび/またはコンホメーション)の変化に起因し得る。したがって、本発明の抗体として、会合により引き起こされる、因子の変化した立体構造(例、フォールディングおよび/またはコンホメーション)を特異的に認識し得るものを用いた場合には、リガンドの作用機序の種類の同定に役立つ可能性がある。
【0094】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0095】
実施例1:親和性複合体(E2抗E2抗体複合体)に対する抗体の取得
in vitroニワトリIgM取得技術〔(ADLib(Autonomously Diversifying Library)システム:例えば、WO2004/011644を参照〕を利用して、以下の方法を行なうことにより、E2抗E2抗体複合体に対する抗体を取得した。なお、本明細書中以降において、E1(エストロン)、E2(エストラジオール)、E3(エストリオール)と表記することがある。また、以下において、E2について、1μg/mLは3.7μMに相当し、F18−3抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当し、F12−33抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当し、トリコスタチンA(TSA)について、1μg/mLは3.3μMに相当する。
【0096】
(1)DT40細胞の多様化
多様化させたDT40細胞は、以下の手順により作製されたものを用いた。
・9%FBS,1%ニワトリ血清含有IMDM培地〔CS(Chicken Serum)培地〕50mLを計り取り、15cmディッシュに加えた。
・トリコスタチンA(TSA)を2.5ng/mLとなるように加えた。
・1.5×10個のDT40細胞を加え、39.5℃に設定したCOインキュベータ内で1日培養した。
【0097】
(2)DT40細胞の継代
以下の手順により、DT40細胞を継代した。
・1日培養した細胞懸濁液を50mLチューブに取り、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、10mLのCS培地で再び懸濁した。
・CS培地950μLに細胞懸濁液50μLを加えて20倍希釈し、撹拌した。
・生細胞数をカウントした。
・新しい15cmディッシュにCS培地50mLを加えた。
・1.5×10個のDT40細胞を加え、39.5℃に設定したCOインキュベータ内で1日培養した。
・目的抗体を産生する細胞の選択前に、TSA処理を2回行った。TSA処理は、2.5ng/mL TSAを含有するCS培地中で、39.5℃で一晩培養することにより、行った。
【0098】
(3)抗原結合粒子の調製
以下の手順により、抗原結合粒子を調製した。
・ProteinGが固定されている磁性粒子〔Dynabeads ProteinG(粒子径:2.8μm)、Invitrogen社から入手、カタログ番号:100.03D〕を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(13.5mg/mL)に、300μg/mLの抗E2抗体(F18−3)を加えた。なお、抗E2抗体(F18−3)は、自社において樹立したマウスモノクローナル抗体である。なお、E2に対する抗E2抗体(F18−3)の結合は、種々のデータより、10−9Mから10−12M程度と類推される。
・4℃,1hで反応させてF18−3を粒子上に固相化した。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
・1.1μg/mLのE2を含むPBS中に粒子を分散させた。
・4℃,1hで放置して、抗原および抗体が会合した抗原抗体複合体(E2および抗E2抗体を含む親和性複合体)を形成させた。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
【0099】
(4)目的抗体を産生する細胞の培養
以下の手順により、目的抗体を産生する細胞を培養した。
・15cmディッシュ2枚にCS培地50mLをそれぞれ加えた。
・1.5×10個の細胞を各培地に加え、1日培養した。
・細胞懸濁液を50mLチューブに回収し、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、1% BSA/PBSで2回洗浄して1.5mLチューブに回収した。
・4℃,3500rpm,5minで遠心して上清を除去した。
・(3)で調製した抗原結合粒子を1% BSA/PBSで4回洗浄した。
・細胞(9x10細胞/mL)と抗原結合粒子(75μg/mL)とを混合し、4℃,30min反応させた。
・1% BSA/PBSで5回洗浄し、余剰の細胞を除去した。
・CS培地で細胞・粒子を分散させた。
・96wellプレートにまき、1週間培養した。
【0100】
(5)目的抗体を産生する細胞の選別
選別は、抗原抗体複合体固相ELISAにより実施した。E2を加えた場合と加えなかった場合での発色の差によって、細胞が目的抗体を産生しているか否かを評価した。手順は、以下のとおりであった。
・アッセイプレートに1μg/mLの抗E2抗体を加え、37℃で1時間インキュベートして固相化した。
・0.05%Tween20含有リン酸緩衝生理食塩水(0.05%PBST)で3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・200ng/mL E2またはバッファーのみを25μL加えた。
・培養上清25μLを加えて1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリ(anti Chicken)IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMB(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)を加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0101】
(6)結果
E2非存在下、E2存在下(100ng/mL)において、抗原抗体複合体(E2および抗E2抗体を含む親和性複合体)に結合する抗体を産生する細胞クローンを高率に得ることに成功した(3/88=3.4%:図1、2を参照)。このような抗体作製効率は、従来の抗体作製方法では達成し得ない。例えば、従来の動物免疫法(ハイブリドーマ法)による抗体作製効率は、上記効率に到底及ばない。また、従来の動物免疫法では、そもそも、親和性複合体そのものに対する抗体を作製し得ない。したがって、本発明の方法は、効率的に親和性複合体そのものに対する抗体を作製できることが示された。
【0102】
実施例2:抗E2抗体およびE2抗E2抗体複合体に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、特異性を評価した。
・アッセイプレートに2種の抗E2抗体(F18−3、F12−33)、抗AFP抗体(ネガティブコントロール)をそれぞれ2μg/mLの濃度で加え、37℃で1時間インキュベートして固相化した。なお、抗E2抗体(F18−3、F12−33)は、自社において樹立したマウスモノクローナル抗体である。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・2ng/mL E1、2ng/mL E2またはバッファーのみを25μL加えた。
・上記手法で樹立したクローン(2−1、2−2、2−3、2−4、2−5および2−6)の培養上清を25μL加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリIgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0103】
(2)結果
結果は、表1に示したとおりである。クローン2−1、2−3および2−5は、抗原〔E2抗E2抗体(F18−3)複合体〕に対して特異的に結合した(*を参照)。一方、クローン2−2、2−4および2−6は、抗原〔E2抗E2抗体(F18−3)複合体〕に対して結合せず、F18−3抗体に結合した。なお、クローン2−1、2−3および2−5は、実施例1のクローン4、9および46にそれぞれ対応し、クローン2−2、2−4および2−6は、実施例1のクローン8、34および77にそれぞれ対応していた。
以上より、本発明の方法により、複合体に特異的に結合し得る抗体が得られることが確認された。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例3:E2に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、E2に対する目的抗体の特異性を評価した。
・アッセイプレートにE2−BSA(ウシ血清アルブミン)複合体を各濃度で加え、37℃で1時間インキュベートして固相化した。E2ではなく、E2−BSA複合体を用いた理由は、E2は低分子化合物であり、単独ではアッセイプレート上に吸着しないためである。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・100ng/mL E2またはバッファーのみを25μLずつ加えた。
・実施例1で樹立し、実施例2で評価されたクローン(2−1、2−2、2−3、2−4、2−5および2−6)の培養上清を25μL加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリIgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0106】
(2)結果
結果は、表2に示したとおりである。E2(E2−BSA)単独を固相したELISAでは、陽性を示すクローンは見出されなかった。したがって、クローン2−1、2−2、2−3、2−4、2−5および2−6は、E2に対して結合し得る抗体を産生しないと考えられる。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例4:類似物質に対する交差反応性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する抗体の交差反応性を評価した。
・5μg/mL 抗E2抗体(F18−3)を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% スキムミルク/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・E1,E3,E2を各濃度で調製し、25μLずつ加えた。
・3種の抗体を含む培養上清(クローン2−1、2−3、2−5)を各25μLずつ加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・抗ニワトリIgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0109】
(2)結果
結果は、表3に示したとおりである。表3では、交差反応性(%)は、目的の親和性複合体に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子に対する本発明の抗体の結合率に基づき算出している。3種の抗体(クローン2−1、2−3、2−5)は、E1、E3に殆ど結合しなかった。
【0110】
【表3】
【0111】
以上より、3種の抗体(クローン2−1、2−3、2−5)は、抗原抗体複合体〔E2−抗E2抗体(F18−3)を含む複合体〕に特異的に結合できることが示された。したがって、本発明により、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体の開発が可能であることが実証された。また、サンドイッチ法による低分子物質の測定も可能であることが実証された。
【0112】
実施例5:組換えI型キメラ抗体の作製
ニワトリIgM抗体をマウスIgG抗体に変換して、組換えI型キメラ抗体を作製した。組換えI型キメラ抗体は、E2−抗E2抗体複合体に対するニワトリIgM抗体のμ鎖およびλ鎖可変領域(VHおよびVL)の下流に、マウス定常領域(CH、CL)を連結した抗体である〔重鎖:ニワトリIgM(μ鎖)由来のVH−マウスIgG1(γ1鎖)由来のCH;軽鎖:ニワトリIgM(λ鎖)由来のVL−マウスIgG1(κ鎖)由来のCL〕。以下、必要に応じて、「キメラI型(抗体)」と呼称する。
【0113】
(1)キメラI型重鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラI型重鎖発現ベクターを作製した。
a)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のμ鎖cDNAを鋳型としてプライマーAとプライマーBを用いてPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域を増幅した。
b)抗TNFマウスIgG1抗体のγ鎖cDNAを鋳型として、プライマーCとプライマーDを用いてPCRを行い、マウスIgG1の定常領域を増幅した。
c)a)およびb)で増幅したDNA断片の混合物を鋳型としてプライマーAとプライマーDを用いてアセンブルPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域とマウスIgG1 γ鎖定常領域が連結された1本のDNA断片を調製した。
d)c)で得られたDNA断片を制限酵素Hind IIIとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1のHind III−Not I部位に挿入した。
【0114】
(2)キメラI型軽鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラI型軽鎖発現ベクターを作製した。
e)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のλ鎖cDNAを鋳型としてプライマーEとプライマーFを用いてPCRを行い、ニワトリλ鎖可変領域を増幅した。
f)抗TNFマウスIgG1抗体のκ鎖cDNAを鋳型として、プライマーGとプライマーHを用いてPCRを行い、マウスκ鎖定常領域を増幅した。
g)e)およびf)で増幅したDNA断片の混合物を鋳型として、プライマーEとプライマーHを用いてアセンブルPCRを行い、ニワトリλ鎖可変領域とマウスκ鎖定常領域が連結された1本のDNA断片を調製した。
h)g)で得られたDNA断片を制限酵素Hind IIIとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1/ZeoのHind III−Not I部位に挿入した。
【0115】
(3)組換えキメラI型抗体の作製および発現確認
以下の手順により、組換えキメラI型抗体を作製した。
i)キメラI型重鎖発現ベクター、およびキメラI型軽鎖発現べクターで形質転換された大腸菌コロニーをそれぞれ100μg/mlアンピシリンを含む150mlのLB培地中で37℃一晩振蕩培養した後、Quiagen社のPlasmid Midi Kitを用いてプラスミドを調製した。
j)i)で調製したキメラI型重鎖発現ベクター、およびキメラI型軽鎖発現べクターをそれぞれ4μg用いてInvitrogen社のLipofectamin 2000により、10個のCHO細胞を形質転換した。
k)j)で形質転換したCHO細胞を10%ウシ胎児血清を含むHam F−12倍地を用いて、COインキュベータ中、37℃で24時間培養した。
l)キメラI型抗体の発現を確認するため、k)の培養上清中にキメラI型抗体が分泌されているかを、ELISA法にて確認した。すなわちELISA plate(Nunc社)に抗マウスIgGを固相化し、これに(1/2)n希釈した培養上清を反応させ、次いでPOD標識された抗マウスIgG(DAKO社)で検出した。なお、陽性対照としてマウスモノクロ抗体(anti TNF36)を、陰性対照としてCHO培養上清を用いた。その結果、キメラI型抗体の発現が確認された(表4)。
【0116】
【表4】
【0117】
実施例6:組換えII型キメラ抗体の作製
ニワトリIgM抗体をマウスIgG抗体に変換して、組換えII型キメラ抗体を作製した。組換えII型キメラ抗体は、E2−抗E2抗体複合体に対するニワトリIgM抗体のλ鎖(VLおよびCL)とμ鎖可変領域(VH)およびCH1ドメインの下流に、マウスIgG1のHinge領域以降の領域(Hinge領域、CH2およびCH3)を連結した抗体である〔重鎖:ニワトリIgM(μ鎖)由来のVHおよびCH1−マウスIgG1(γ1鎖)由来のHinge領域、CH2およびCH3;軽鎖:ニワトリIgM(λ鎖)由来のVLおよびCL〕。以下、必要に応じて、「キメラII型(抗体)」と呼称する。
【0118】
(1)キメラII型重鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラII型重鎖発現ベクターを作製した。
a’)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のμ鎖cDNAを鋳型としてプライマーIとプライマーJを用いてPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域およびCH1を増幅した。
b’)抗TNFマウスIgG1抗体のγ鎖cDNAを鋳型として、プライマーKとプライマーDを用いてPCRを行い、マウスγ鎖のHinge領域以降の領域(Hinge領域、CH2およびCH3)を増幅した。
c’)a’)およびb’)で増幅したDNA断片の混合物を鋳型として、プライマーIとプライマーDを用いてアセンブルPCRを行い、ニワトリμ鎖可変領域およびCH1とマウスγのHinge領域以降の領域(Hinge領域、CH2およびCH3)が連結された1本のDNA断片を調製した。
d’)c’)で得られたDNA断片を制限酵素Nhe IとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1のNhe I−Not I部位に挿入した。
【0119】
(2)キメラII型軽鎖発現ベクターの作製
以下の手順により、キメラII型軽鎖発現ベクターを作製した。
e’)E2−抗E2抗体複合体結合ニワトリIgM抗体(クローン2−3)のλ鎖cDNAを鋳型としてプライマーEとプライマーLを用いてPCRを行い、ニワトリλ鎖を増幅した。
f’)e’)で増幅したDNA断片をHind IIIとNot Iで処理した後、市販(Invitrogen社)の発現ベクターpcDNA3.1/ZeoのHind III−Not I部位に挿入した。
【0120】
(3)組換えキメラII型抗体の作製および発現確認
以下の手順により、組換えキメラII型抗体を作製した。
g’)キメラII型重鎖発現ベクター、およびキメラII型軽鎖発現ベクターで形質転換された大腸菌コロ二ーをそれぞれ100μg/mlアンピシリンを含む150mlのLB培地中で37℃一晩振蕩培養した後、Quiagen社のPlasmid Midi Kitを用いてプラスミドを調製した。
h’)g’)で調製したキメラII型重鎖発現ベクター、およびキメラII型軽鎖発現べクターをそれぞれ4μg用いてInvitrogen社のLipofectamin 2000により、10個のCHO細胞を形質転換した。
i’)h’)で形質転換したCHO細胞を10%ウシ胎児血清を含むHam F−12倍地を用いて、COインキュベータ中、37℃で24時間培養した。
j’)キメラII型抗体の発現を確認するため、i’)の培養上清中にキメラII型抗体が分泌されているかを、ELISA法にて確認した。すなわちELISA plate(Nunc社)に抗マウスIgGを固相化し、これに(1/2)n希釈した培養上清を反応させ、次いでPOD標識された抗マウスIgG(DAKO社)で検出した。なお、陽性対照としてマウスモノクロ抗体(anti TNF36)を、陰性対照としてCHO培養上清を用いた。その結果、キメラII型抗体の発現が確認された(表5)。
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
実施例7:親和性複合体(T3−抗T3抗体複合体)に対する抗体の取得
in vitro ニワトリIgM取得技術(ADLibシステム)を利用して、以下の方法を行なうことにより、T3−抗T3抗体複合体に対する抗体を取得した。なお、本明細書中以降において、T2(ジヨードチロニン)、T3(トリヨードチロニン)、T4(チロキシン)と表記することがある。また、以下において、T3について、1μg/mLは1.5μMに相当し、T3−92抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当し、T3−31抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当する。
【0124】
(1)ニワトリB細胞株DT40ライブラリの多様化
多様化されたDT40細胞は、実施例1(1)の手順により調製した。
【0125】
(2)DT40ライブラリの継代
DT40細胞の継代は、実施例1(2)の手順により行った。
【0126】
(3)抗原結合粒子の調製
以下の手順により、抗原結合粒子を調製した。
・ProteinGが固定化してある磁性粒子に300μg/mLの抗T3抗体(T3−92)を加えた。
・4℃,1hで反応させてT3−92を固相化した。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
・300μg/mLのT3を含むPBSで粒子を分散させた。
・4℃,1hで反応させて抗原抗体複合体を形成させた。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
【0127】
(4)目的抗体を産生する細胞の培養
以下の手順により、目的抗体を産生する細胞を培養した。
・15cmディッシュ2枚にCS培地50mLをそれぞれ加えた。
・1.5X10個の細胞を加え、1日培養した。
・細胞懸濁液を50mLチューブに回収し、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、1% BSA/PBSで2回洗浄して1.5mLチューブに回収した。
・4℃,3500rpm,5minで遠心して上清を除去した。
・(3)で調製した抗原結合粒子を1% BSA/PBSで4回洗浄した。
・細胞と抗原結合粒子とを混合し、4℃,30min反応させた。
・1% BSA/PBSで5回洗浄し、余剰の細胞を除去した。
・CS培地で細胞・粒子を分散させた。
・96wellプレートにまき、1週間培養した。
【0128】
(5)目的抗体を産生する細胞の選別
選別は、抗原抗体複合体固相ELISAにより実施した。T3を加えた場合と加えなかった場合での発色の差によって、細胞が目的抗体を産生しているか否かを評価した。手順は、以下のとおりであった。
・アッセイプレートに1μg/mLの抗T3抗体を加え、固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・50ng/mL T3またはバッファーのみを50μL加え、T3を固相抗体に結合させた。
・PBSTで3回洗浄した。
・DT40培養上清50μLを加えて1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0129】
(6)結果
T3非存在下、T3存在下(50ng/mL)で反応性に顕著な差のあるクローン(Well No.23,91,94,101,110,121)を高率に得ることに成功した(6クローン/144=4.2%:図3、4を参照)。
【0130】
実施例8:親和性複合体(T3−抗T3抗体複合体)抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、特異性を評価した。
・アッセイプレートに2種の抗T3抗体(T3−92,T3−31)、抗AFP抗体をそれぞれ2μg/mLで固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・T3,T2,T4を100ng/mLに調製し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0131】
(2)結果
結果は、表7に示したとおりである。クローン6−19、5−3、5−6、5−13および5−22は、抗原〔T3抗T3抗体(T3−92)複合体〕に対して特異的に結合した(*を参照)。クローン5−33はT2抗T3抗体(T3−92)複合体と弱い交差反応があった。検出抗体にクローン5−33を用いた場合はT2との交差反応性が認められたことから、固相抗体T3−92がT2にも弱く交差反応することを示唆している。一方、クローン5−32は、抗原〔T3抗T3抗体(T3−92)複合体〕だけではなく、T3−92抗体のみにも結合した。5−32はT3−31抗体には結合しなかったこことからT3−92抗体に特異的に結合するクローンであった。なお、クローン6−19、5−3、5−6、5−13および5−22は、実施例7のクローン23、91、94、101および110にそれぞれ対応し、クローン5−33は、実施例7のクローン121に対応し、クローン5−32は、実施例7のクローン120に対応する。
【0132】
【表7】
【0133】
実施例9:T3に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、T3に対する目的抗体の特異性を評価した。
・アッセイプレートにT3−BSAコンジュゲートを5μg/mL固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・1次反応にマウス抗体を用いた場合は、anti mouse Ig−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0134】
(2)結果
結果は、表8に示したとおりである。T3(T3−BSA)単独を固相したELISAでは、陽性を示すクローンは見出されなかった。したがって、クローン6−19、5−3、5−6、5−13、5−22および5−33は、T3に対して結合し得る抗体を産生しないと考えられる。
【0135】
【表8】
【0136】
実施例10:類似物質に対する交差反応性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する抗体の交差反応性を評価した・アッセイプレートに2μg/mL 抗T3抗体(T3−92)を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・T3、T2、T4を各濃度に調製し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0137】
(2)結果
結果は、表9に示したとおりである。表9では、交差反応性(%)は、目的の親和性複合体に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子に対する本発明の抗体の結合率に基づき算出している。5種の抗体(クローン5−3、5−6、5−13、6−19および5−22)は、T2、T4に殆ど結合しなかった。検出抗体にクローン5−33を用いた場合はT2と弱い交差反応があった。この結果は、固相抗体T3−92がT2にも交差反応することを示しており、5種の抗体(クローン5−3、5−6、5−13、6−19および5−22)は類似親和性複合体と親和性複合体を識別していることを示している。
【0138】
【表9】
【0139】
以上より、5種の抗体(クローン5−3、5−6、5−13、5−22および6−19)は、抗原抗体複合体〔T3−抗T3抗体(T3−92)を含む複合体〕に特異的に結合できることが示された。したがって、本発明により、親和性複合体に対して特異的に結合し得る抗体の開発が可能であることが実証された。また、サンドイッチ法による低分子物質の測定も可能であることが実証された。
【0140】
実施例11:T3に対する感度の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、T3に対する感度を評価した。
・アッセイプレートに2μg/mL 抗T3抗体(T3−92)を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・T3を各濃度に調整し、50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加え、発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0141】
(2)結果
結果は、表10、図5に示したとおりである。作製した抗体(クローン5−3−1)を用いたサンドイッチ法により、1pg/mL以下のT3の検出が可能であった。なお、クローン5−3−1は、実施例7のクローン5−3に対応する。
【0142】
【表10】
【0143】
実施例12:親和性複合体(25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体)に対する抗体の取得
in vitro ニワトリIgM取得技術(ADLibシステム)を利用して、以下の方法を行なうことにより、25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体に対する抗体を取得した。また、以下において、25OHビタミンD3について、1μg/mLは2.5μMに相当し、抗25OHビタミンD抗体について、1μg/mLは6.7nMに相当する。
【0144】
(1)ニワトリB細胞株DT40ライブラリの多様化
多様化されたDT40細胞は、実施例1(1)の手順により調製した。
【0145】
(2)DT40ライブラリの継代
DT40細胞の継代は、実施例1(2)の手順により行った。
【0146】
(3)抗原結合粒子の調製
以下の手順により、抗原結合粒子を調製した。
・ProteinGが固定化してある磁性粒子に300μg/mLの抗25OHビタミンD抗体を加えた。
・4℃,1hで反応させて抗体を固相化した。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
・300μg/mLの25OHビタミンD3を含むPBSで粒子を分散させた。
・4℃,1hで反応させて抗原抗体複合体を形成させた。
・0.1% BSA/PBSで粒子を4回洗浄した。
【0147】
(4)目的抗体を産生する細胞の培養
以下の手順により、目的抗体を産生する細胞を培養した。
・15cmディッシュ2枚にCS培地50mLをそれぞれ加えた。
・1.5X10個の細胞を加え、1日培養した。
・細胞懸濁液を50mLチューブに回収し、4℃,1000rpm,10minで遠心した。
・上清除去後、1% BSA/PBSで2回洗浄して1.5mLチューブに回収した。
・4℃,3500rpm,5minで遠心して上清を除去した。
・(3)で調製した抗原結合粒子を1% BSA/PBSで4回洗浄した。
・細胞と抗原結合粒子とを混合し、4℃,30min反応させた。
・1% BSA/PBSで5回洗浄し、余剰の細胞を除去した。
・CS培地で細胞・粒子を分散させた。
・96wellプレートにまき、1週間培養した。
【0148】
(5)目的抗体を産生する細胞の選別
選別は、抗原抗体複合体固相ELISAにより実施した。25OHビタミンD3を加えた場合と加えなかった場合での発色の差によって、細胞が目的抗体を産生しているか否かを評価した。手順は、以下のとおりであった。
・アッセイプレートに1μg/mLの抗25OHビタミンD抗体を加え、固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・1μg/mL 25OHビタミンD3またはバッファーのみを50μL加え、25OHビタミンD3を固相抗体に結合させた。
・PBSTで3回洗浄した。
・DT40培養上清50μLを加えて1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、3次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0149】
(6)結果
25OHビタミンD3非存在下、存在下(1μg/mL)で反応性に顕著な差のあるクローン(Well No.4, 52, 80, 81, 94, 120)を高率に得ることに成功した(6クローン/174=3.4%:図6、7を参照)。
【0150】
実施例13:親和性複合体(25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体)抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、特異性を評価した。
・アッセイプレートに抗25OHビタミンD抗体、抗T3抗体をそれぞれ1μg/mLで固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・25OHビタミンD3、ならびにその類似物質である25OHビタミンD2、1,25(OH)ビタミンD3、1,25(OH)ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンD2をそれぞれ200ng/mLに調製し50μLずつ加えインキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、3次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0151】
(2)結果
結果は、表11に示したとおりである。クローン3−2D1−12および3−2D1−22は、抗原とした25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体および25OHビタミンD2−抗25OHビタミンD抗体複合体に対して特異的に結合した(*を参照)。クローン3−2D1−12および3−2D1−22は、ネガティブコントロールとして用いた抗T3抗体には結合しなかった。なお、クローン3−2D1−12および3−2D1−22は、実施例12で得られたクローン4のサブクローンに対応する。
【0152】
【表11】
【0153】
実施例14:25OHビタミンD3に対する目的抗体の特異性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、25OHビタミンD3に対する目的抗体の特異性を評価した。
・アッセイプレートに25OHビタミンD3−BSAコンジュゲートを1μg/mL固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・上記手法で樹立した抗体を各クローン50μLずつ加え、1次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、2次反応を行った。
・1次反応に抗25OHビタミンD抗体を用いた場合は、抗IgG−HRPを加え、2次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、3次反応を行った。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0154】
(2)結果
結果は、表12に示したとおりである。クローン3−2D1−12および3−2D1−12は、25OHビタミンD3−BSA固相ELISAでは反応しなかった。このことは、これらのクローンが、25OHビタミンD3単独と結合しないことを示す。
【0155】
【表12】
【0156】
参考例1:抗25OHビタミンD抗体の交差反応性の確認
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する抗25OHビタミンD抗体の交差反応性を評価した。
・アッセイプレートに1μg/mL 抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・アルカリホスファターゼ標識−25OHビタミンD3 200ng/mlと25OHビタミンD3、25OHビタミンD2、1,25(OH)ビタミンD3、1,25(OH)ビタミンD2、ビタミンD3またはビタミンD2を各濃度に調製して混合し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・ミリQ水で2回洗浄した。
・PNPPを加えて、発色反応を行った。
・2.5mM EDTAを加えて発色反応を停止した。
・OD405を測定した。
【0157】
(2)結果
結果は、表13に示したとおりである。表13では、交差反応性(%)は、25OHビタミンD3に対する抗25OHビタミンD抗体の結合率を100%として算出した場合、25OHビタミンD3類似因子に対する抗25OHビタミンD抗体の結合率に基づき算出している。抗25OHビタミンD抗体は、25OHビタミンD2、1,25(OH)ビタミンD3、および1,25(OH)ビタミンD2と高い交差反応性を示したが、ビタミンD3およびビタミンD2とは実質的に交差反応性を示さなかった。
【0158】
【表13】
【0159】
実施例15:類似物質に対する目的抗体の交差反応性の評価
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、類似物質に対する目的抗体の交差反応性を評価した。
・アッセイプレートに1μg/mL 抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・25OHビタミンD3、25OHビタミンD2、1,25(OH)ビタミンD3または1,25(OH)ビタミンD2を各濃度に調製し、それぞれ50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・クローン3−2D1−12をそれぞれに50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0160】
(2)結果
結果は、表14に示したとおりである。表14では、交差反応性(%)は、目的の親和性複合体(25OHビタミンD3−抗25OHビタミンD抗体複合体)に対する本発明の抗体の結合率を100%として算出した場合、親和性複合体を構成する各因子またはその類似因子に対する本発明の抗体の結合率に基づき算出している。単独の抗25OHビタミンD抗体のみを使用する競合阻害アッセイでは、25OHビタミンD3、25OHビタミンD2、1,25(OH)ビタミンD2、および1,25(OH)ビタミンD3を識別することができなかったが、本発明の抗体を用いたサンドイッチアッセイにより、25OHビタミンD3および25OHビタミンD2を識別して測定することができた。
【0161】
【表14】
【0162】
実施例16:目的抗体を用いた測定における25OHビタミンD3に対する感度
(1)方法
ELISAを以下の手順により行って、目的抗体を用いた測定における25OHビタミンD3に対する感度を評価した。
・アッセイプレートに1μg/mL 抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・PBSTで3回洗浄した。
・1% BSA/PBSでブロッキングした。
・PBSTで3回洗浄した。
・25OHビタミンD3を各濃度に調製し、50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・クローン3−2D1−12を50μLずつ加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・anti Chicken IgM−biotinを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・StreptAvidin−HRPを加え、インキュベーションした。
・PBSTで3回洗浄した。
・TMBを加え、発色反応を行った。
・1N 硫酸を加えて発色反応を停止した。
・OD450を測定した。
【0163】
(2)結果
結果は、表15、図8に示したとおりである。樹立した抗体、クローン3−2D1−12を用いたサンドイッチ法により、3ng/ml以下の25OHビタミンD3の検出が可能であった。
【0164】
【表15】
【0165】
実施例17:E2および抗E2抗体の複合体に対する本発明の抗体の特異性
(17−1)競合法による固相抗体(1次抗体)の特異性の評価
本発明の抗体の特異性を評価するため、先ず、E2に対する一次抗体の特異性を評価した。
【0166】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗E2抗体(F18−3)を固相化した。
・NUNC Polysorpに抗E2抗体(0.5μg/ml)を加え、一晩インキュベートした。
・抗E2抗体を固相化したプレートを5%スキムミルクでブロッキングした(37C,1hr)。
(ii)ELISA
以下の手順により、ELISAを行った。なお、E2−3 sulfateは、E2の3位の水酸基中の水素原子が硫酸基で置換された化合物である。
・抗原:E2(6ng/mlから3n倍希釈)と類似抗原:E1,E3,E2−3 sulfate(54ng/mlから3n倍希釈)を調製した。
・標識抗原:E2−3位ALP(アルカリホスファターゼ)融合体(46ng/ml)を調製した。
・固相プレートに抗原または類似抗原(各50μl)と標識抗原(50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hインキュベートした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・pNPPで発色させ、吸光度を測定した。
・抗原または類似抗原の添加なしを100%として、各濃度の抗原または類似抗原を添加した際の阻害率(% Reaction)を算出した。
【0167】
(B)結果
本測定法に用いた1次抗体は、E1およびE3への交差反応性は認められなかったが(図9)、E2−3 sulfateには10%程度の交差反応性が認められた(図9)。したがって、この一次抗体は、E2に対する特異性が必ずしも高くないことが示された。
【0168】
(17−2)サンドイッチ法による測定の特異性の改善(1)
本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対するE2の特異的な測定の改善が可能かどうかを評価した。
【0169】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗E2抗体〔上記(17−1)で用いたものと同じ〕を固相化した。
・NUNC Polysorpに抗E2抗体(2.5μg/ml)を加え、一晩インキュベートした。
・抗E2抗体を固相化したプレートを5%スキムミルクでブロッキングした(37C,1hr)。
【0170】
(ii)ELISA
以下の手順により、ELISAを行った。
・抗原:E2(2ng/mlから3n倍希釈)と類似抗原:E1,E3,E2−3s(54ng/mlから3n倍希釈)を調製した。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)と2次抗体(ニワトリ由来E2抗E2抗体複合体抗体(クローン2−1):50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hインキュベートした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートに抗ニワトリ(anti Chicken) IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)で発色させ、吸光度を測定した。
【0171】
(B)結果
本発明の抗体は、「E2および1次抗体の複合体」と「E2−3 sulfateおよび1次抗体の複合体」を判別可能であった(図10)。すなわち、本発明の抗体は、E2+1次抗体の複合体中のE2−3位のsulfate基の有無を特異的に認識していると考えられる。したがって、本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対するE2の特異的な測定が改善されることが示された。
【0172】
(17−3)サンドイッチ法による測定の特異性の改善(2)
本発明の抗体を用いることで、治療用薬物に対するE2の特異的な測定の改善が可能かどうかを評価した。
【0173】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗E2抗体〔上記(17−1)で用いたものと同じ〕を固相化した。
・NUNC Polysorpに抗E2抗体(2.5μg/ml)を加え、一晩インキュベートした。
・抗E2抗体を固相化したプレートを5%スキムミルクでブロッキングした(37C,1hr)。
【0174】
(ii)ELISA
・抗原:E2(2ng/mlから3n倍希釈)とE2類似治療用薬物(100ng/ml)を調製した。E2類似治療用薬物としては、エストロムスチンおよびエストラムスチンを用いた。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)と2次抗体(ニワトリ由来E2抗E2抗体複合体抗体(クローン2−1):50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hインキュベートした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートに抗ニワトリ(anti Chicken) IgM−HRPを加え、2次反応を行った。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・TMBで発色させ、吸光度を測定した。
・E2測定時の吸光度に基づき類似薬物への交差反応性(%)を計算した。
【0175】
(B)結果
本発明の抗体は、「E2および1次抗体の複合体」と「E2類似治療用薬物および1次抗体の複合体」を判別可能であった(表16)。したがって、本発明の抗体を用いることで、E2類似治療用薬物に対するE2の特異的な測定が改善されることが示された。
【0176】
【表16】
【0177】
実施例18:25(OH)ビタミンD2またはD3およびそれに対する抗体の複合体に対する本発明の抗体の特異性
(18−1)競合法による固相抗体(1次抗体)の特異性の評価
本発明の抗体の特異性を評価するため、先ず、25(OH)ビタミンD2に対する一次抗体の特異性を評価した。
【0178】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗25OHビタミンD抗体を固相化した。
・NUNC Maxisorpに抗25OHビタミンD抗体(1μg/ml)を加え、37℃で1hrインキュベートした。
・抗25OHビタミンD抗体を固相化したプレートを1% BSA−PBSでブロッキングした(37C,1hr)。
【0179】
(ii)ELISA
・抗原:25OHビタミンD3(111ng/mlから3n倍希釈)と類似抗原:25OHビタミンD2、1,25(OH)ビタミンD3、1,25(OH)ビタミンD2(111ng/mlから3n倍希釈)を調製した。
・標識抗原:25OHビタミンD3−3位ALP融合体(20ng/ml)を調製した。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)と標識抗原(50μl)を添加した。
・37℃,1hrインキュベーション
・PBS−tween20(0.05%)でwashx3
・pNPPで発色させ、吸光度を測定した。
・抗原または類似抗原の添加なしを100%として、各濃度の抗原または類似抗原を添加した際の阻害率(% Reaction)を算出した。
【0180】
(B)結果
本測定法に用いた1次抗体は、25(OH)ビタミンD2、25(OH)ビタミンD3、1,25(OH)ビタミンD2、および1,25(OH)ビタミンD3に対して同程度の反応性を示した(図11)。したがって、この一次抗体は、特定のビタミンDに対する特異性が低いことが示された。
【0181】
(18−2)サンドイッチ法による測定の特異性の改善
本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対する特定のビタミンDの特異的な測定の改善が可能かどうかを評価した。
【0182】
(A)方法
(i)1次抗体の固相化
以下の手順により、抗25OHビタミンD抗体〔上記(18−1)で用いたものと同じ〕を固相化した。
・NUNC Maxisorpに抗25OHビタミンD抗体(1μg/ml)を加え、37℃で1hrインキュベートした。
・抗25OHビタミンD抗体を固相化したプレートを1% BSA−PBSでブロッキングした(37C,1hr)。
【0183】
(ii)ELISA
・抗原:25OHビタミンD3(370ng/mlから5n希釈)と類似抗原:25(OH)ビタミンD2(370ng/mlから5n希釈)、1,25(OH)2ビタミンD3、1,25(OH)2ビタミンD2(37000ng/mlから5n希釈)を調製した。
・固相プレートに抗原、類似抗原(各50μl)を添加した。
・PBS−tween20(0.05%)でwashx3
・固相プレートに二次抗体(ニワトリ由来25(OH)ビタミンD抗25(OH)ビタミンD複合体抗体:50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hrインキュベーションした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートに抗ニワトリIgG抗体−ストレプトアビジン(50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hrインキュベーションした。
・固相プレートをPBS−tween20(0.05%)で3回洗浄した。
・固相プレートにストレプトアビジン−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)(50μl)を添加した。
・固相プレートを37℃で1hrインキュベーションした。
・TMBで発色させ、吸光度を測定した。
【0184】
(B)結果
本発明の抗体は、「25OHビタミンD2またはD3および1次抗体の複合体」と「1,25(OH)ビタミンD2またはD3および1次抗体の複合体」を判別可能であった(図12)。すなわち、本発明の抗体は、1,25(OH)ビタミンD2またはD3および1次抗体の複合体中の1,25(OH)ビタミンD2またはD3の1位のOH基の有無を特異的に認識していると考えられる。したがって、本発明の抗体を用いることで、生体内類似物質に対する1,25(OH)ビタミンD2およびD3の特異的な測定が改善されることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]