特許第6156158号(P6156158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156158
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ベーン型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/344 20060101AFI20170626BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170626BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   F04C18/344 361G
   F04C18/344 351M
   F04C29/00 C
   F04C29/02 311L
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-8561(P2014-8561)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-137564(P2015-137564A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三ツ井 翼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】鴻村 哲志
(72)【発明者】
【氏名】小林 和男
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−127335(JP,A)
【文献】 特開2013−217276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/344
F04C 29/00
F04C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック内に収容されるとともに回転軸と一体的に回転するロータと、
前記ロータに複数形成されるとともにベーンが出没可能に収容されるベーン溝と、
前記ベーンによって前記シリンダブロック内に区画される複数の圧縮室と、
前記ロータの回転に伴い、前記圧縮室で圧縮された冷媒ガスが吐出される吐出室と、
前記ベーンの底面と前記ベーン溝とによって区画される背圧室と、
前記吐出室から前記背圧室に至る背圧供給通路と、を有するベーン型圧縮機であって、
前記回転軸は、前記背圧供給通路の一部を形成する回転路を有し、
前記背圧供給通路は、
前記吐出室と前記回転路とを連通可能な第1通路と、
前記回転路を介して前記第1通路と連通する第2通路と、
前記第2通路に連通する第1室と、
前記回転路を介して前記第2通路と連通する第3通路と、
前記第3通路に連通する第2室と、
前記第2室と前記背圧室とを連通可能な連通路と、を有し、
前記背圧供給通路は、前記回転軸の回転に伴って前記回転路を介して前記第1通路と前記第2通路とを連通するとき、前記第2通路と前記第3通路とは非連通となるとともに、前記回転軸の回転に伴って前記回転路を介して前記第2通路と前記第3通路とを連通するとき、前記第1通路と前記第2通路とは非連通となり、
前記第1通路と前記第2通路との連通、及び前記第2通路と前記第3通路との連通は、常に前記回転路のみによってなされることを特徴とするベーン型圧縮機。
【請求項2】
前記第1通路、前記第2通路及び前記第3通路の前記回転路に対する開口位置を、前記回転軸の軸方向において揃えたことを特徴とする請求項1に記載のベーン型圧縮機。
【請求項3】
前記回転路は、前記回転軸の外周面に凹設された溝であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベーン型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーン型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ベーン型圧縮機のシリンダブロック内には、回転軸と一体的に回転するロータが収容されている。ロータの外周面には、複数箇所にベーン溝が放射状に延びるようにそれぞれ形成されるとともに、各ベーン溝にはベーンが出没可能に収容されている。これらベーンによってシリンダブロック内には複数の圧縮室が区画されている。そして、ロータの回転に伴い、圧縮室で冷媒ガスが圧縮されるとともに、圧縮室で圧縮された冷媒ガスが吐出室に吐出される。
【0003】
また、各ベーンの底面と各ベーン溝とによって背圧室がそれぞれ区画されている。ベーン型圧縮機において、吐出室と各背圧室との間には、吐出室内の高圧の潤滑油を各背圧室に供給可能な背圧供給通路が設けられている。そして、吐出室内の潤滑油が背圧供給通路を介して各背圧室に供給されることで、各ベーンは、背圧室内の圧力(背圧)によりシリンダブロックの内面に押し付けられる。これにより、圧縮室からの冷媒ガスの漏れが抑制され、圧縮室内での冷媒ガスの圧縮効率が向上する。
【0004】
ところで、ベーン型圧縮機の運転が停止して、回転軸の回転が停止されると、吐出室内の冷媒ガスやこれに含まれる潤滑油が、背圧供給通路及び各背圧室を介して圧縮室に逆流し、この冷媒ガスや潤滑油の逆流によって、外部冷媒回路におけるベーン型圧縮機の上流側にある蒸発器が加熱されて、冷凍効率が低下してしまう虞がある。そこで、回転軸の回転方向の位相によって、吐出室と各背圧室とを連通又は非連通とする間欠機構を有するものが、特許文献1に開示されている。これによれば、回転軸の停止後に吐出室と各背圧室とを非連通とすることができるため、回転軸の停止後において、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油が、背圧供給通路及び各背圧室を介して圧縮室に逆流してしまうことが防止される。よって、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油の逆流による蒸発器の加熱が防止されて、冷凍効率が低下することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−127335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のベーン型圧縮機では、回転軸の停止後において、回転軸の回転方向の位相によっては、間欠機構によって吐出室と各背圧室とが連通する場合があり、回転軸の停止後に、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油が、背圧供給通路及び各背圧室を介して圧縮室に逆流してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、回転軸の停止後に、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油が背圧供給通路及び各背圧室を介して圧縮室に逆流してしまうことを防止することができるベーン型圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するベーン型圧縮機は、シリンダブロック内に収容されるとともに回転軸と一体的に回転するロータと、前記ロータに複数形成されるとともにベーンが出没可能に収容されるベーン溝と、前記ベーンによって前記シリンダブロック内に区画される複数の圧縮室と、前記ロータの回転に伴い、前記圧縮室で圧縮された冷媒ガスが吐出される吐出室と、前記ベーンの底面と前記ベーン溝とによって区画される背圧室と、前記吐出室から前記背圧室に至る背圧供給通路と、を有するベーン型圧縮機であって、前記回転軸は、前記背圧供給通路の一部を形成する回転路を有し、前記背圧供給通路は、前記吐出室と前記回転路とを連通可能な第1通路と、前記回転路を介して前記第1通路と連通する第2通路と、前記第2通路に連通する第1室と、前記回転路を介して前記第2通路と連通する第3通路と、前記第3通路に連通する第2室と、前記第2室と前記背圧室とを連通可能な連通路と、を有し、前記背圧供給通路は、前記回転軸の回転に伴って前記回転路を介して前記第1通路と前記第2通路とを連通するとき、前記第2通路と前記第3通路とは非連通となるとともに、前記回転軸の回転に伴って前記回転路を介して前記第2通路と前記第3通路とを連通するとき、前記第1通路と前記第2通路とは非連通となり、前記第1通路と前記第2通路との連通、及び前記第2通路と前記第3通路との連通は、常に前記回転路のみによってなされる。
【0009】
これによれば、回転軸の回転に伴って、吐出室から第1通路を介して回転路に流入した冷媒ガスや潤滑油は、回転路を介した第1通路と第2通路との連通が行われると、第2通路を介して第1室に流入する。第1室に流入した冷媒ガスや潤滑油は、回転軸の回転に伴って、回転路を介した第2通路と第3通路との連通が行われると、第2通路、回転路及び第3通路を介して第2室に流入する。そして、第2室に流入した冷媒ガスや潤滑油は、連通路を介して背圧室に供給される。このように、第1通路と第2通路との連通、及び第2通路と第3通路との連通が、常に回転路のみによってなされることで、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油が背圧室に供給される。
【0010】
そして、回転軸の回転が停止したときに、回転路を介した第1通路と第2通路との連通が行われていたとしても、第2通路と第3通路とが非連通となっている。同様に、回転軸の回転が停止したときに、回転路を介した第2通路と第3通路との連通が行われていたとしても、第1通路と第2通路とが非連通となっている。すなわち、回転軸の回転が停止したときに、背圧供給通路を介した吐出室と背圧室との連通が確実に遮断される。よって、回転軸の停止後に、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油が背圧供給通路及び各背圧室を介して圧縮室に逆流してしまうことを防止することができる。
【0011】
上記ベーン型圧縮機において、前記第1通路、前記第2通路及び前記第3通路の前記回転路に対する開口位置を、前記回転軸の軸方向において揃えたことが好ましい。これによれば、回転軸に回転路を一つ形成するだけでよいため、構成を簡素化させることができる。
【0012】
上記ベーン型圧縮機において、前記回転路は、前記回転軸の外周面に凹設された溝であることが好ましい。これによれば、回転路として、回転軸の径方向に貫通する貫通孔を形成する場合に比べて、回転軸に対する加工を容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、回転軸の停止後に、吐出室内の冷媒ガスや潤滑油が背圧供給通路及び各背圧室を介して圧縮室に逆流してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態におけるベーン型圧縮機の側断面図。
図2図1における2−2線断面図。
図3図1における3−3線断面図。
図4】第1通路と溝とが連通している状態を示す断面図。
図5】溝を介して第1通路と第2通路とが連通している状態を示す断面図。
図6】溝を介して第2通路と第3通路とが連通している状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ベーン型圧縮機を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1に示すように、ベーン型圧縮機10のハウジング11は、リヤハウジング12と、このリヤハウジング12の前端面(一端面)に接合されたフロントハウジング13とから形成されている。フロントハウジング13は、リヤハウジング12(ハウジング11)内に収容される筒状のシリンダブロック14を有する。よって、本実施形態では、シリンダブロック14はフロントハウジング13に一体化されている。
【0016】
シリンダブロック14の後端面には、サイドプレート15が接合されている。フロントハウジング13及びサイドプレート15には回転軸16が回転可能に支持されるとともに、回転軸16はシリンダブロック14内を貫通している。フロントハウジング13と回転軸16との間にはリップシール型の軸封装置17aが介在されている。軸封装置17aは、フロントハウジング13に形成された収容室17内に収容されている。軸封装置17aは、回転軸16の周面に沿った冷媒ガスの洩れを防止する。シリンダブロック14内において、回転軸16には円筒状をなすロータ18が回転軸16に一体回転可能に止着されている。ロータ18は、その前端面(一端面)がフロントハウジング13の端面と対向するとともに、後端面(他端面)がサイドプレート15に対向している。
【0017】
図2及び図3に示すように、シリンダブロック14の内周面は楕円状に形成されている。ロータ18の外周面には、複数箇所に放射状にベーン溝18aが形成されるとともに、各ベーン溝18aそれぞれにはベーン19が出没可能に収容されている。さらに、各ベーン19の底面19eと各ベーン溝18aとによって背圧室20が区画されている。
【0018】
そして、回転軸16の回転に伴うロータ18の回転によってベーン19の先端面がシリンダブロック14の内周面に接触すると、ロータ18の外周面と、シリンダブロック14の内壁と、隣り合うベーン19と、フロントハウジング13及びサイドプレート15との間に、複数の圧縮室21が区画されるようになっている。ベーン型圧縮機10において、ロータ18の回転方向に関して圧縮室21が容積を拡大する行程が吸入行程となり、圧縮室21が容積を減少する行程が圧縮行程となる。
【0019】
図1に示すように、リヤハウジング12の上部には、吸入ポート22が形成されている。また、シリンダブロック14の外周面には、シリンダブロック14の周方向全周に亘って凹部14aが形成されている。そして、凹部14a及びリヤハウジング12の内周面によって吸入ポート22に連通する吸入室23が区画されている。
【0020】
図2に示すように、シリンダブロック14には、吸入室23と連通する一対の吸入口24が形成されている。そして、吸入行程中の各圧縮室21と吸入室23とは、それぞれ吸入口24を介して連通される。
【0021】
図3に示すように、回転軸16を挟んだシリンダブロック14の外周面それぞれには、シリンダブロック14の外周面から凹む凹部14bが形成されている。各凹部14bは、シリンダブロック14の外周面から回転軸16に向けて延びる延設面141bと、延設面141bに対し交差しつつシリンダブロック14の外周面に向けて延びる取付面142bとから形成されている。そして、各延設面141b、取付面142b、及びリヤハウジング12の内周面によって一対の吐出空間26が区画されている。
【0022】
シリンダブロック14には、各取付面142bに開口して圧縮行程中の圧縮室21と吐出空間26とを連通する吐出口27が形成されている。取付面142bには、吐出口27を開閉する吐出弁27vと、吐出弁27vの開度を規制するリテーナ27aとが取り付けられている。そして、圧縮室21で圧縮された冷媒ガスは、吐出弁27vを押し退けて吐出口27を介して吐出空間26へ吐出される。
【0023】
図1に示すように、リヤハウジング12の上部には吐出ポート28が形成されている。また、リヤハウジング12の後側には、サイドプレート15によって吐出室29が区画形成されている。吐出室29内には、冷媒ガス中に含まれる潤滑油を分離するための油分離器30が配設されている。油分離器30は、有底円筒状のケース31を有する。ケース31におけるサイドプレート15側の端面とサイドプレート15における吐出室29側の端面との間には、ケース31とサイドプレート15との間をシールするガスケット31sが介在されている。
【0024】
ケース31の開口側には円筒状の油分離筒32が嵌合固定されている。ケース31の下部には、ケース31内と吐出室29の底部側とを連通する油通路31aが形成されている。また、サイドプレート15及びケース31には、吐出空間26とケース31内とを連通する連通部33が形成されている。
【0025】
図4に示すように、回転軸16におけるサイドプレート15に支持された部位の外周面には、回転路としての溝16aが周面に沿った一部分に延びるように凹設されている。また、サイドプレート15には、吐出室29と溝16aとを連通可能な第1通路41が形成されている。さらに、サイドプレート15には、溝16aを介して第1通路41と連通する第2通路42と、第2通路42に連通する第1室51とが形成されている。また、サイドプレート15には、溝16aを介して第2通路42と連通する第3通路43と、第3通路43に連通する第2室52とが形成されている。第1室51及び第2室52は、回転軸16の周方向に沿って回転軸16を囲むように延びている。
【0026】
さらに、サイドプレート15には、第2室52と背圧室20とを連通可能な連通路44が二つ形成されている。各連通路44は、ロータ18の回転により、圧縮行程及び吐出行程中の背圧室20と連通するようになっている。よって、第1通路41、溝16a、第2通路42、第1室51、第3通路43、第2室52及び各連通路44によって、吐出室29から背圧室20に至る背圧供給通路が形成されている。
【0027】
第1通路41、第2通路42及び第3通路43の溝16aに対する開口位置は、回転軸16の軸方向において揃えられている。すなわち、第1通路41、第2通路42及び第3通路43の溝16aに対する開口位置は、回転軸16の周方向に並ぶとともに、回転軸16の端部から等しい距離に配置されている。溝16aにおける回転軸16の周方向の長さは、溝16aによって第1通路41と第2通路42とを連通可能な長さであるとともに、第2通路42と第3通路43とを連通可能な長さになっている。よって、第1通路41と第2通路42との連通、及び第2通路42と第3通路43との連通が、常に溝16aのみによってなされる。
【0028】
回転軸16が回転すると、ロータ18及びベーン19が回転し、ベーン型圧縮機10の外部(例えば外部冷媒回路)から吸入ポート22を介して吸入室23に冷媒ガスが吸入される。吸入室23に吸入された冷媒ガスは、各吸入口24を介して吸入行程中の各圧縮室21に吸入される。そして、各圧縮室21に吸入された冷媒ガスは、圧縮行程中の圧縮室21の容積減少により圧縮される。圧縮された冷媒ガスは、各圧縮室21から吐出口27を介して各吐出空間26に吐出される。
【0029】
各吐出空間26内の冷媒ガスは、連通部33を介してケース31内に流出して、油分離筒32の外周面に吹き付けられるとともに、油分離筒32の外周面を旋回しながらケース31内の下方へ導かれる。このとき、遠心分離によって、冷媒ガスから潤滑油が分離される。油分離器30において、潤滑油が分離された冷媒ガスは、油分離筒32の内部を上方へ移動し、吐出ポート28を介してベーン型圧縮機10の外部(例えば外部冷媒回路)へ吐出される。
【0030】
一方、油分離器30において、冷媒ガスから分離された潤滑油はケース31の底部側へ移動するとともに、油通路31aを介して吐出室29の底部に貯留される。吐出室29の底部に貯留された潤滑油は、第1通路41に流入する。
【0031】
図5に示すように、第1通路41に流入した潤滑油は、回転軸16の回転に伴って、溝16aを介した第1通路41と第2通路42との連通が行われると、第1通路41から溝16a及び第2通路42を介して第1室51に流入する。
【0032】
図6に示すように、第1室51に流入した潤滑油は、回転軸16の回転に伴って、溝16aを介した第2通路42と第3通路43との連通が行われると、第2通路42、溝16a及び第3通路43を介して第2室52に流入する。そして、第2室52に流入した潤滑油は、各連通路44を介して、ロータ18の回転により、圧縮行程及び吐出行程中の背圧室20に供給される。
【0033】
ベーン19は、背圧室20に供給された潤滑油の背圧によって外周側に押し出され、シリンダブロック14の内壁に押し付けられる。これにより、圧縮室21からの冷媒ガスの漏れが抑制され、圧縮室21内での冷媒ガスの圧縮効率が向上する。また、背圧室20に供給された潤滑油によって、ベーン19とベーン溝18aとの摺動部分が潤滑される。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5に示すように、回転軸16の回転が停止したときに、溝16aを介した第1通路41と第2通路42との連通が行われていたとしても、第2通路42と第3通路43とが非連通となっている。同様に、図6に示すように、回転軸16の回転が停止したときに、溝16aを介した第2通路42と第3通路43との連通が行われていたとしても、第1通路41と第2通路42とが非連通となっている。すなわち、回転軸16の回転が停止したときに、背圧供給通路を介した吐出室29と背圧室20との連通が確実に遮断される。よって、回転軸16の停止後に、吐出室29内の冷媒ガスや潤滑油が背圧供給通路及び各背圧室20を介して圧縮室21に逆流してしまうことが防止される。
【0035】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)第1通路41と第2通路42との連通、及び第2通路42と第3通路43との連通が、常に溝16aのみによってなされる。これによれば、回転軸16の回転が停止したときに、溝16aを介した第1通路41と第2通路42との連通が行われていたとしても、第2通路42と第3通路43とが非連通となっている。同様に、回転軸16の回転が停止したときに、溝16aを介した第2通路42と第3通路43との連通が行われていたとしても、第1通路41と第2通路42とが非連通となっている。すなわち、回転軸16の回転が停止したときに、背圧供給通路を介した吐出室29と背圧室20との連通が確実に遮断される。よって、回転軸16の停止後に、吐出室29内の冷媒ガスや潤滑油が背圧供給通路及び各背圧室20を介して圧縮室21に逆流してしまうことを防止することができる。
【0036】
(2)第1通路41、第2通路42及び第3通路43の溝16aに対する開口位置を、回転軸16の軸方向において揃えた。これによれば、回転軸16に溝16aを一つ形成するだけでよいため、構成を簡素化させることができる。
【0037】
(3)回転軸16の外周面に凹設された溝16aを回転路とする構成は、例えば、回転軸16の径方向に貫通する貫通孔を回転路として形成する場合に比べて、回転軸16に対する加工を容易なものとすることができる。
【0038】
(4)本実施形態では、サイドプレート15に第1通路41、第2通路42、第3通路43、第1室51及び第2室52を形成するとともに、回転軸16に溝16aを形成することで、回転軸16の回転が停止したときに、背圧供給通路を介した吐出室29と背圧室20との連通が確実に遮断されるようにしている。よって、サイドプレート15及び回転軸16を加工するだけで、回転軸16の回転が停止したときに、背圧供給通路を介した吐出室29と背圧室20との連通の遮断が達成できるため、生産性を向上させることができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、回転路として、回転軸16の径方向に貫通する貫通孔を形成してもよい。
【0040】
○ 実施形態において、例えば、回転軸16の外周面に、回転路としての溝16aが周面に沿った一部分に延びるように二つ凹設されていてもよい。各溝16aは、回転軸16の軸方向にずれた位置に配置されている。第1通路41は、一方の溝16aに連通可能である。また、サイドプレート15には、第2通路42が二つ形成されている。一方の第2通路42は一方の溝16aに連通可能であるとともに、他方の第2通路42は他方の溝16aに連通可能である。さらに、第3通路43は、他方の溝16aに連通可能である。よって、第1通路41及び一方の第2通路42における一方の溝16aに対する開口位置が、回転軸16の軸方向において揃えられているとともに、他方の第2通路42及び第3通路43における他方の溝16aに対する開口位置が、回転軸16の軸方向において揃えられている。このように、第1通路41、第2通路42及び第3通路43の溝16aに対する開口位置が、回転軸16の軸方向において揃っていなくてもよい。
【0041】
○ 実施形態において、サイドプレート15に、第1室51が二つ以上形成されていてもよい。この場合、サイドプレート15には、各第1室51同士を溝16aを介して連通させる通路が形成されている。
【0042】
○ 実施形態において、回転軸16とサイドプレート15との間にベアリングが配設されていてもよい。この場合、ベアリングに、第1通路41、第2通路42及び第3通路43を構成する貫通孔をそれぞれ形成する必要がある。
【0043】
○ 実施形態において、回転軸16におけるフロントハウジング13に支持された部位の外周面に溝16aが形成されていてもよい。そして、第1通路41が、サイドプレート15、シリンダブロック14及びフロントハウジング13に亘って延びるように形成されていてもよい。さらに、シリンダブロック14に、第2通路42、第3通路43、連通路44、第1室51及び第2室52が形成されていてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、シリンダブロック14が、フロントハウジング13とは別体であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…ベーン型圧縮機、14…シリンダブロック、16…回転軸、16a…回転路としての溝、18…ロータ、18a…ベーン溝、19…ベーン、19e…底面、20…背圧室、21…圧縮室、29…吐出室、41…背圧供給通路を形成する第1通路、42…背圧供給通路を形成する第2通路、43…背圧供給通路を形成する第3通路、44…背圧供給通路を形成する連通路、51…背圧供給通路を形成する第1室、52…背圧供給通路を形成する第2室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6