特許第6156184号(P6156184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156184
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20170626BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B60K15/04 C
   F02M37/00 301M
   F02M37/00 301Q
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-31733(P2014-31733)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-157494(P2015-157494A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平松 義也
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−131824(JP,A)
【文献】 特開平09−068126(JP,A)
【文献】 特表2002−530603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油ノズルから吐出される燃料を燃料タンクに供給する燃料供給装置(FS)であって、
前記給油ノズルが挿入される開口部(21)を備え、導電性を有する導電層(25A)と、導電性を有しない非導電層(24A)を含む多層構造をなす樹脂製のフィラーネック(2A)と、
前記フィラーネック(2A)に接続され、最外層に導電性を有する導電外層(45)を備える多層構造をなす樹脂製の燃料パイプ(40)と、
前記フィラーネック(2A)の前記開口部(21)を開閉する、導電性を有する蓋体(FC)と、
を備え、
前記フィラーネック(2A)は、
前記蓋体(FC)と接触する導電性の蓋体接触部(22A)と、前記燃料パイプ(40)の前記導電外層(45)と接触する導電性の導電外層接触部(2A)と、を備え、前記蓋体(FC)から前記燃料パイプ(40)の前記導電外層(45)までの導電経路を形成し、
前記導電層(25A)は、前記フィラーネック(20A)の最外層に配置され、
前記蓋体接触部(22A)は、前記導電層(25A)から、前記非導電層(24A)を貫通して形成されている、燃料供給装置(FS)。
【請求項2】
油ノズルから吐出される燃料を燃料タンクに供給する燃料供給装置(FS)であって、
前記給油ノズルが挿入される開口部(21)を備え、導電性を有する導電層(24)と、導電性を有しない非導電層(25)を含む多層構造をなす樹脂製のフィラーネック(20,20B)と、
前記フィラーネック(20,20B)に接続され、最外層に導電性を有する導電外層(45,55)を備える多層構造をなす樹脂製の燃料パイプ(40,50)と、
前記フィラーネック(20,20B)の前記開口部(21)を開閉する、導電性を有する蓋体(FC)と、
を備え、
前記フィラーネック(20,20B)は、
前記蓋体(FC)と接触する導電性の蓋体接触部(22)と、前記燃料パイプ(40,50)の前記導電外層(45,55)と接触する導電性の導電外層接触部(23,23B)と、を備え、前記蓋体(FC)から前記燃料パイプ(40,50)の前記導電外層(45,55)までの導電経路を形成し、
前記導電層(24)は、前記フィラーネック(20,20B)の最内層に配置され、
前記導電外層接触部(23,23B)は、前記導電層(24)から、前記非導電層(25)を貫通して形成されており、
前記フィラーネック(20,20B)は、前記燃料パイプ(40,50)が接続される、ファーツリー形状に形成されたパイプ接続部(26,28)を備え、
前記燃料パイプ(40,50)は、前記パイプ接続部(26,28)の前記ファーツリー形状の突状部分を含む少なくとも一部と前記導電外層接触部(23,23B)とに挟まれており、前記パイプ接続部(26,28)の前記ファーツリー形状の突状部分により前記導電外層接触部(23,23B)側に押し出されている、
燃料供給装置(FS)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの燃料タンクに燃料を供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料供給装置として、フィラーネックに接続した樹脂製の燃料パイプを通じて燃料を燃料タンクに供給する機構が知られている。こうした燃料供給装置では、給油者から蓋体やフィラーネックを介して伝わる静電気を逃すためのアース経路を確保する必要が生じる。例えば、特許文献1の燃料給油装置では、導電性樹脂製のフィラーネックの外周に、外層が導電性樹脂の2層の燃料パイプを圧入した状態において、フィラーネックのアース接続部が燃料パイプの外層に接触し、燃料パイプの外層から、金属製のパイプ保持装置を通じて、車体へのアース経路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2011−131824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、耐燃料透過性、耐衝撃性の向上の要請から、フィラーネック自体を、耐燃料透過性の樹脂と、耐衝撃性の樹脂との2層構造にすることが検討されている。樹脂に導電性を付与するためには、導電性物質を付与するが、2層共に導電性物質を付与すると、費用を要するため、一方の層だけに導電性を付与することが好ましい。2層のうち、一方の層だけにしか導電性を付与しない場合に、蓋体、フィラーネック、および燃料パイプの外層を通じたアース経路の確保が難しかった。このような課題は、フィラーネックおよび燃料パイプが2層以上の多層構造の場合に共通する課題である。
【0005】
本発明は、上記従来の技術の課題を踏まえ、多層構造のフィラーネックと、多層構造の燃料パイプを用いて、アース経路を構成することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、給油ノズルから吐出される燃料を燃料タンクに供給する燃料供給装置が提供される。この燃料供給装置は、前記給油ノズルが挿入される開口部を備え、導電性を有する導電層と、導電性を有しない非導電層を含む多層構造をなす樹脂製のフィラーネックと、前記フィラーネックに接続され、最外層に導電性を有する導電外層を備える多層構造をなす樹脂製の燃料パイプと、前記フィラーネックの前記開口部を開閉する、導電性を有する蓋体と、を備え、前記フィラーネックは、前記蓋体と接触する導電性の蓋体接触部と、前記燃料パイプの前記導電外層と接触する導電性の導電外層接触部と、を備え、前記蓋体から前記燃料パイプの前記導電外層までの導電経路を形成する
【0008】
この燃料供給装置によれば、蓋体、フィラーネック、および燃料パイプが電気的に接続され、燃料パイプの外層を通じたアース経路を確保することができる。
【0009】
(2) 上記実施形態において、前記フィラーネックは、前記導電層が最内層に配置され、前記導電外層接触部は、前記導電層から、前記非導電層を貫通して形成されてもよい。このようにすると、フィラーネックの導電層が最内層に配置される場合であって、たとえ、その他の層が非導電性であっても、導電外層接触部を介して、蓋体、フィラーネック、および燃料パイプが電気的に接続され、燃料パイプの外層を通じたアース経路を確保することができる。
【0010】
(3) 上記実施形態において、前記フィラーネックは、前記導電層が最外層に配置され、前記蓋体接触部は、前記導電層から、前記非導電層を貫通して形成されてもよい。このようにすると、フィラーネックの導電層が最外層に配置される場合であっても、蓋体接触部を介して、蓋体、フィラーネック、および燃料パイプが電気的に接続され、燃料パイプの外層を通じたアース経路を確保することができる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、フィラーネック、燃料供給装置を備える装置、燃料供給装置を備える移動体、燃料供給装置を備える自動車、燃料供給装置の製造方法などの種々の形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料供給装置において、蓋体、フィラーネック、および燃料パイプが電気的に接続され、燃料パイプの外層を通じたアース経路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の燃料供給装置の概略構成を示す説明図である。
図2】フィラーネックおよび燃料パイプの一部の断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】第2実施形態の燃料供給装置のフィラーネックおよび燃料パイプの一部の断面構成を概略的に示す説明図である。
図4】変形例の燃料供給装置のフィラーネックおよび燃料パイプの一部の断面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
(A1) 燃料供給装置の構成:
図1は本発明の第1実施形態の燃料供給装置の概略構成を示す説明図である。燃料供給装置FSは、自動車の燃料タンクへの燃料供給に使用されるものであり、燃料キャップFCと、フィラーネック20と、フィラーネック20に接続された燃料パイプ40,50と、燃料パイプ40,50を車体側部材(図示省略)に取り付けるためのパイプ保持装置PHと、燃料パイプ40,50の端部を燃料タンクに接続するタンク接続部材(図示省略)とを備えている。
【0015】
燃料パイプ40は、フィラーネック20と燃料タンクとを接続する樹脂パイプであり、一端はフィラーネック20に接続され、他端は燃料タンクに接続されている。燃料パイプ40は、2層構造を成し、内層は耐燃料透過性に優れたポリエチレンから形成され、外層はカーボンブラックを添加することで導電性を付与したポリエチレンから形成されている。燃料パイプ40を2層構造にすることにより、耐燃料透過性および導電性を付与している。また、外層のみに導電性を付与することにより、コストの増加を抑えつつ、後述するアース経路を確保している。
【0016】
導電性を付与するための添加剤は、カーボンブラックに限定されない。例えば、カーボンフィラー、黒鉛等のカーボンや、銀、銅などの金属や、酸化錫、酸化インジウムなどの金属化合物等を添加してもよい。また、樹脂は、ポリエチレンに限定されず、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン等、種々の樹脂を用いることができる。特に、耐燃料透過性が優れたものとして、ナイロン、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)を用いてもよい。また、内層、外層を形成する材料は、耐燃料透過性、耐衝撃性、耐久性、コスト、重量等を考慮して、ゴム、シリコン等、種々の材料を添加してもよい。
【0017】
燃料キャップFCは、導電性を有する樹脂から形成される。燃料キャップFCは、ねじ部27Cを備え、燃料キャップ接触部22に形成されたねじ部27Nと螺号して、ゴム製のシール材Sを介して、フィラーネック20に装着される。燃料キャップFCは、この形状に限定されず、フィラーネック20の開口部21を開閉できればよい。例えば、フラップ弁等の弁体を用いて開閉する構成(一般に、キャップレスと称される)にしてもよい。
【0018】
給油時に燃料キャップFCをフィラーネック20から外して、給油ガンから燃料をフィラーネック20に注入すると、燃料は、フィラーネック20および燃料パイプ40で構成される燃料供給通路を通じて、燃料タンクに供給される。燃料パイプ40は、後述するように、燃料給油時に、人体等に帯電した静電気を除くアース経路の一部として作用する。
【0019】
燃料パイプ50は、給油時に燃料タンク内の燃料蒸気を燃料パイプ40に循環するためのブリーザ用のパイプである。燃料パイプ40と同様に、一端はフィラーネック20に接続され、他端は燃料タンクに接続されている。燃料パイプ50は、耐燃料透過性に優れたポリエチレンから形成されている。燃料パイプ50を、燃料パイプ40と同様に2層構造にしてもよい。
【0020】
給油ガンからフィラーネック20および燃料パイプ40で構成される燃料供給通路を通じて、燃料タンクに燃料が供給されるとき、燃料パイプ50は、燃料タンク内の燃料蒸気を燃料タンクから逃がして燃料の供給を円滑にする。
【0021】
(A2)フィラーネックの構成:
図2はフィラーネックおよび燃料パイプの一部の断面構成を概略的に示す説明図である。フィラーネック20は、略筒状体に形成され、一端は、燃料キャップFCが嵌合される開口部21が形成され、他端は、燃料パイプ40が接続されるパイプ接続部26が形成されている。また、燃料パイプ50が接続されるパイプ接続部(図示省略)が、分岐して設けられている。
【0022】
フィラーネック20は、2層構造をなし、内層は耐燃料透過性に優れ、カーボンブラックを添加することで導電性を付与したナイロンから形成され、外層は耐衝撃性が高いポリエチレンから形成されている。フィラーネック20を2層構造にすることにより、耐燃料透過性および耐衝撃性の要請に応えている。また、内層のみに導電性を付与することにより、コストの増加を抑制しつつ、後述するアース経路を確保している。本実施形態において、内層を形成する導電性樹脂の電気抵抗は、10-6〜10-9Ω・mである。
【0023】
導電性樹脂の電気抵抗は、上記に限定されず、導電性を有する程度の電気抵抗であればよい。導電性を付与するための添加剤は、カーボンブラックに限定されない。例えば、カーボンフィラー、黒鉛等のカーボンや、銀、銅などの金属や、酸化錫、酸化インジウムなどの金属化合物等を添加してもよい。また、樹脂は、ナイロン、ポリエチレンに限定されず、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン等、種々の樹脂を用いることができる。また、内層、外層を形成する材料は、耐燃料透過性、耐衝撃性、耐久性、コスト、重量等を考慮して、ゴム、シリコン等、種々の材料を添加してもよい。
【0024】
また、フィラーネック20は、燃料キャップFCと接触する燃料キャップ接触部22と、燃料パイプ40の導電外層45と接触する導電外層接触部23と、を備える。燃料キャップ接触部22は、燃料キャップFCがフィラーネック20に装着された際に燃料キャップFCと接触する。燃料キャップ接触部22は、内層24の一部として構成されている。すなわち、燃料キャップ接触部22は、内層24の一部として、外層25の内周に設けられており、燃料キャップFCと接触している。
【0025】
燃料キャップFCがフィラーネック20に装着され、燃料キャップ接触部22が燃料キャップFCと接触すると、燃料キャップFCとフィラーネック20とが電気的に接続される。燃料キャップ接触部22はこの形状に限定されない。導電性を有する内層24と燃料キャップFCとに接触し、燃料キャップFCから内層24への導電経路が確保できればよい。例えば、内層24からスリット状に延設されたり、内層24から小片状に延設されて、燃料キャップFCと部分的に接触する構成にしてもよい。
【0026】
導電外層接触部23は、内層24を形成する材料と同一の導電性樹脂から成り、内層24と一体的に射出成形により形成される。導電外層接触部23は、略筒状をなす内層24から外径方向に突出し、外層25を貫通して鈎状に設けられている。本実施形態では、導電外層接触部23は、フィラーネック20の外周の対称となる位置に、2箇所設けられている。
【0027】
フィラーネック20のパイプ接続部26は、環状に外径方向に突出し、断面が略直角三角形をなす突起が複数形成されている、ファーツリー形状に形成されており、燃料パイプ40の圧入時は燃料パイプ40の接続端を拡張させて挿入しやすく、燃料パイプ40が引き抜かれる方向に力が加わっても抜けにくくなっている。
【0028】
パイプ接続部26の外周面と導電外層接触部23の内面との間隙は、燃料パイプ40の肉厚より小さく形成され、図示するように、燃料パイプ40がフィラーネック20に接続されると、燃料パイプ40の接続端はパイプ接続部26と導電外層接触部23とに挟まれて、燃料パイプ40の導電外層45に導電外層接触部23が食い込む状態で接触している。特に、パイプ接続部26のファーツリーにより、外周側へ押し出されることで、フィラーネック20と燃料パイプ40とが電気的に接続される。
【0029】
導電外層接触部23の数および形状は、本実施形態に限定されず、フィラーネック20の導電性を有する内層24と燃料パイプ40の導電外層45とに接触し、フィラーネック20から燃料パイプ40への導電経路が確保できればよい。例えば、1箇所設けても良いし、3箇所以上設けても良い。
【0030】
(A3)第1実施形態の効果:
第1実施形態の燃料供給装置FSによれば、フィラーネック20の導電外層接触部23が、導電性のない外層25を貫通して、燃料パイプ40の導電外層45と接触しているため、フィラーネック20の外層25が非導電性でも、フィラーネック20と燃料パイプ40とを電気的に接続することができる。従って、第1実施形態の燃料供給装置FSによれば、燃料キャップFCからフィラーネック20の燃料キャップ接触部22、内層24、導電外層接触部23、燃料パイプ40の導電外層45、パイプ保持装置PHを通じて車体側部材へのアース経路が構成されている。このアース経路を通じて、燃料キャップFCを開けて給油する時に、人体等に帯電した静電気を速やかに逃がすことができる。
【0031】
上述の通り、燃料パイプ40がフィラーネック20に接続されると、燃料パイプ40の接続端はパイプ接続部26と導電外層接触部23とに挟まれて、燃料パイプ40の導電外層45に導電外層接触部23が食い込む状態で接触しているため、接触面積が増加し電気的接続を確実にとることができる。
【0032】
また、アース経路は、燃料パイプ40を利用しているから、フィラーネック20と車体側部材までのアースワイヤを配設することが不要となり、構成および接続作業を簡単にできる。
【0033】
B.第2実施形態:
(B1)フィラーネックの構成:
図3は、第2実施形態の燃料供給装置のフィラーネックおよび燃料パイプの一部の断面構成を概略的に示す説明図である。第2実施形態の燃料供給装置は、フィラーネックの構成が第1実施形態と異なるものの、他の構成は同一であるため、その説明を省略し、同一の符号を用いて説明する。
【0034】
第2実施形態のフィラーネック20Aは、第1実施形態と同様に2層構造をなすものの、第1実施形態と異なり、外層25Aが導電性樹脂からなり、内層24Aは導電性を有さない。フィラーネック20Aは、第1実施形態のフィラーネック20と同様に、燃料キャップFCと接触する燃料キャップ接触部22Aと、燃料パイプ40の導電外層45と接触する導電外層接触部23Aと、を備える。
【0035】
燃料キャップ接触部22Aは、外層25Aを形成する材料と同一の導電性樹脂から成り、外層25Aと一体的に射出成形により形成される。燃料キャップ接触部22Aは、略筒状をなす外層25Aから内径方向に突出し、内層24Aを貫通して柱状(突起状)に設けられている。燃料キャップFCがフィラーネック20Aに装着され、燃料キャップ接触部22Aが燃料キャップFCと接触すると、燃料キャップFCとフィラーネック20Aとが電気的に接続される。
【0036】
本実施形態では、燃料キャップ接触部22Aは、フィラーネック20の内周の対称となる位置に、2箇所設けられている。燃料キャップ接触部22Aの数および形状は、本実施形態に限定されず、導電性を有する外層25Aと燃料キャップFCとに接触し、燃料キャップFCから外層25Aへの導電経路が確保できればよい。例えば、1箇所設けても良いし、3箇所以上設けても良い。さらに、全周に亘って環状に設けてもよい。
【0037】
導電外層接触部23Aは、外層25Aを形成する材料と同一の導電性樹脂から成り、外層25Aと一体的に射出成形により形成される。導電外層接触部23Aは、略筒状をなす外層25Aから外径方向に突出して鈎状に設けられている。本実施形態では、第1実施形態と同様に、導電外層接触部23Aは、フィラーネック20の外周の対称となる位置に、2箇所設けられている。
【0038】
図示するように、燃料パイプ40がフィラーネック20に接続されると、第1実施形態と同様に、燃料パイプ40の接続端はパイプ接続部26と導電外層接触部23Aとに挟まれて、燃料パイプ40の導電外層45に導電外層接触部23Aが食い込む状態で接触している。これにより、フィラーネック20Aと燃料パイプ40とが電気的に接続される。
【0039】
導電外層接触部23Aの数および形状は、本実施形態に限定されず、フィラーネック20の導電性を有する外層25Aと燃料パイプ40の導電外層45とに接触し、フィラーネック20から燃料パイプ40への導電経路が確保できればよい。例えば、1箇所設けても良いし、3箇所以上設けても良い。
【0040】
(B2)第2実施形態の効果:
第2実施形態の燃料供給装置FSによれば、フィラーネック20Aの燃料キャップ接触部22Aが、非導電性の内層24を貫通して、燃料キャップFCと接触しているため、フィラーネック20Aの内層24Aが非導電性であっても、燃料キャップFCとフィラーネック20とを電気的に接続することができる。従って、第2実施形態の燃料供給装置FSによれば、燃料キャップFCからフィラーネック20Aの燃料キャップ接触部22A、外層25A、導電外層接触部23A、燃料パイプ40の導電外層45、パイプ保持装置PHを通じて車体側部材へのアース経路が構成されている。このアース経路を通じて、燃料キャップFCを開けて給油する時に、人体等に帯電した静電気を速やかに逃がすことができる。
【0041】
C.変形例:
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
(C1)変形例1:
上記実施形態では、アース経路を燃料供給用の燃料パイプ40に設けているが、これに限定されず、ブリーザ用の燃料パイプ50に設けてもよい。図4は、変形例の燃料供給装置のフィラーネックおよび燃料パイプの一部の断面構成を概略的に示す説明図である。図4に示すように、変形例のフィラーネック20Bは、第1実施形態のフィラーネック20における導電外層接触部23に換えて、導電外層接触部23Bを備える。導電外層接触部23Bは、燃料パイプ50が接続されるパイプ接続部28に設けられている。導電外層接触部23Bは、第1実施形態の導電外層接触部23と同様に、内層24と一体的に射出成形により形成され、略筒状をなす内層24から外径方向に突出し、外層25を貫通して鈎状に設けられている。変形例の燃料供給装置では、燃料パイプ50を、第1実施形態の燃料パイプ40と同様に、外層に導電性樹脂を用いた2層構造に構成している。これにより、燃料キャップFCからフィラーネック20の燃料キャップ接触部22、内層24、導電外層接触部23B、燃料パイプ50の導電外層55、パイプ保持装置PHを通じて車体側部材へのアース経路が構成される。さらに、燃料パイプ40と燃料パイプ50の両方にアース経路を設けてもよい。
【0043】
(C2)変形例2:
上記第1実施形態では、導電外層接触部23を内層24Aと一体的に射出成形により形成し、第2実施形態では、燃料キャップ接触部22Aおよび導電外層接触部23Aを外層25Aと一体的に射出成形により形成する例を示したが、形成方法は上記実施形態に限定されない。例えば、ブロー成形、熱成形、圧縮成形等の成形方法により成形してもよい。また、燃料キャップ接触部22、22A、導電外層接触部23、23Aを、内層、外層と別部品として形成し、接着剤や熱溶着等により接着してもよい。その場合には、燃料キャップ接触部22、22A、導電外層接触部23、23Aを、内層、外層と異なる材料で構成してもよい。
【0044】
(C3)変形例3:
上記実施形態では、フィラーネック20、20A、および燃料パイプ40が、それぞれ、2層構造を成すものを例示したが、3層以上の多層構造であってもよい。3層以上の場合にも、導電性を有する層の配置に応じて、燃料キャップFCからフィラーネック、燃料パイプを通じたアース経路が確保できるように、適宜、燃料キャップ接触部、導電外層接触部を構成すればよい。
【0045】
(C4)変形例4:
上記実施形態では、フィラーネック20のパイプ接続部26の外周面と導電外層接触部23の内面との間隙を、燃料パイプ40の肉厚より小さく形成しているが、燃料パイプ40の肉厚以下であればよい。燃料パイプ40の接続端がパイプ接続部26と導電外層接触部23とに挟まれて、燃料パイプ40の導電外層45に導電外層接触部23が接触すればよい。但し、上記実施形態のように構成すると、接触面積が増加し電気的接続を確実にとることができ、好ましい。
【符号の説明】
【0046】
20、20A、20B…フィラーネック
21…開口部
22、22A…燃料キャップ接触部
23、23A、23B…導電外層接触部
24、24A…内層
25、25A…外層
26、28…パイプ接続部
40…燃料パイプ
45、55…導電外層
50…燃料パイプ
51…パイプ接続端
FC…燃料キャップ
PH…パイプ保持装置
FS…燃料供給装置
S…シール材
図1
図2
図3
図4