特許第6156221号(P6156221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156221
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/22 20060101AFI20170626BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B66F9/22 X
   F15B11/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-64796(P2014-64796)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187026(P2015-187026A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸和
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−324694(JP,A)
【文献】 特開2006−64110(JP,A)
【文献】 特開2007−238327(JP,A)
【文献】 特開2013−127273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/22
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、
油圧によって動作する油圧作動装置と、
前記油圧ポンプと前記油圧作動装置を接続する接続油路と、
前記接続油路に接続されているとともに、前記油圧作動装置への作動油の給排を制御する電磁式のコントロール弁と、
前記油圧作動装置へ供給されている作動油が通る供給油路と、
油タンクへ排出される作動油が通る排出油路と、
前記供給油路と前記排出油路とを接続させるアンロード弁と、
前記供給油路に接続されているとともに、前記供給油路を通る作動油の圧力によって作動するリリーフ弁と、
前記アンロード弁の開閉状態を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記エンジンに負荷がかけられた時点でのオンロード時間が所定時間未満の場合、前記アンロード弁を閉状態としてオンロードの状態に制御することで圧力を上昇させた後に前記アンロード弁を開状態とする開閉制御を行うことを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記アンロード弁を開状態に制御してから所定の時間の経過時に前記アンロード弁を再度、閉状態としてオンロードの状態に制御する請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
複数の前記油圧作動装置を有するとともに、油圧作動装置毎に動作を指示する複数の指示部材を有し、
前記制御部は、何れかの油圧作動装置が動作している場合に他の油圧作動装置の動作が指示されたときには前記開閉制御を行わない請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動装置を備えた産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備え、油圧ポンプから吐出された作動油によって油圧作動装置を動作させる産業車両としては、例えばフォークリフトが知られている。フォークリフトは、例えば、フォークを昇降動作させる油圧作動装置としてリフト用の油圧シリンダと、マストを傾動動作させる油圧作動装置としてティルト用の油圧シリンダと、を有する。そして、油圧ポンプをエンジンで駆動させる場合には、油圧ポンプの負荷増によってエンジンのトルクが不足すると、エンジンストールが発生してしまうことがある。このため、従来、このようなエンジンストールの発生を防止するための構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−62137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧作動装置を備えたフォークリフトなどの産業車両において、油圧作動装置への作動油の給排を制御するコントロール弁として電磁弁を採用している場合は、エンジンストールの発生を抑止する構成について改善の余地があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、エンジンストールの発生を抑止できる産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する産業車両は、エンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧によって動作する油圧作動装置と、前記油圧ポンプと前記油圧作動装置を接続する接続油路と、前記接続油路に接続されているとともに、前記油圧作動装置への作動油の給排を制御する電磁式のコントロール弁と、前記油圧作動装置へ供給されている作動油が通る供給油路と、油タンクへ排出される作動油が通る排出油路と、前記供給油路と前記排出油路とを接続させるアンロード弁と、前記供給油路に接続されているとともに、前記供給油路を通る作動油の圧力によって作動するリリーフ弁と、前記アンロード弁の開閉状態を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記エンジンに負荷がかけられた時点でのオンロード時間が所定時間未満の場合、前記アンロード弁を閉状態としてオンロードの状態に制御することで圧力を上昇させた後に前記アンロード弁を開状態とする開閉制御を行う。
【0007】
この構成によれば、電磁式のコントロール弁を採用する油圧機構では、油圧作動装置を動作させていない場合、常時、アンロードの状態とされる。アンロードの状態では、油圧機構内の圧力が油タンクへ解放されることで、油圧機構内の圧力は低い状態となる。このため、エンジンに負荷がかけられた場合には、その時点におけるオンロード時間が所定時間未満であれば、オンロードの状態に制御して油圧機構内の圧力を上昇させ、その後にアンロード弁を開状態とすることで圧力の急激な上昇を抑え、エンジンストールの発生を抑止できる。
【0008】
上記産業車両において、前記制御部は、前記アンロード弁を開状態に制御してから所定の時間の経過時に前記アンロード弁を再度、閉状態としてオンロードの状態に制御する。この構成によれば、アンロード弁を再度、閉状態としてオンロードの状態とすることにより、油圧機構内の圧力を油圧作動装置を動作させるために必要な圧力まで高めることができる。
【0009】
上記産業車両において、複数の前記油圧作動装置を有するとともに、油圧作動装置毎に動作を指示する複数の指示部材を有し、前記制御部は、何れかの油圧作動装置が動作している場合に他の油圧作動装置の動作が指示されたときには前記開閉制御を行わない。この構成によれば、他の油圧作動装置の動作の指示を受けたことによってアンロード弁が開状態又は閉状態を取り得ることによって油圧作動装置の動作が不安定になることを抑止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンストールの発生を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フォークリフトの全体構成を示す模式図。
図2】アンロード弁を有する圧力補償回路を説明する油圧回路図。
図3】同じく、圧力補償回路を説明する油圧回路図。
図4】同じく、圧力補償回路を説明する油圧回路図。
図5】荷役動作を開始させる場合の圧力及びエンジン回転数の変遷を示すタイミングチャート。
図6】荷役動作を開始させる場合の処理を説明するフローチャート。
図7】荷役動作の終了後における圧力の変遷を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、産業車両を具体化した一実施形態を図1図7にしたがって説明する。
図1に示すように、産業車両としてのフォークリフト10の車体には、荷役装置11が装備されている。荷役装置11は、左右一対のアウタマスト12とインナマスト13とからなる多段式のマスト14を備え、アウタマスト12には油圧作動装置として油圧式のティルトシリンダ15が連結されているとともにインナマスト13には油圧作動装置として油圧式のリフトシリンダ16が連結されている。マスト14は、ティルトシリンダ15に対する作動油の給排によって車体の前後方向に前傾動作又は後傾動作を行う。インナマスト13は、リフトシリンダ16に対する作動油の給排によって車体の上下方向に昇降動作を行う。また、インナマスト13には、リフトブラケット17を介して荷役具としてのフォーク18が設けられている。フォーク18は、リフトシリンダ16の作動によってインナマスト13がアウタマスト12に沿って昇降動作を行うことにより、リフトブラケット17とともに昇降動作を行う。
【0013】
フォークリフト10の車体には、フォークリフト10の走行動作及び荷役動作の駆動源となるエンジン19と、エンジン19によって駆動される油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20から吐出された作動油が供給される油圧機構21と、が装備されている。油圧機構21は、各シリンダ15,16への作動油の給排を制御する。また、油圧ポンプ20には、油タンク22から汲み上げた作動油を油圧機構21に供給する油路23が接続されている。油路23は、油圧ポンプ20の吐出口に接続されている。また、油圧機構21には、油タンク22へ排出される作動油が通る排出油路24が接続されている。
【0014】
また、フォークリフト10の車体には、制御部としての車両制御装置25と、エンジン制御装置26と、が搭載されている。エンジン制御装置26は、車両制御装置25に電気的に接続されている。車両制御装置25には、ティルトシリンダ15の動作を指示する指示部材としてのティルト操作部材27の操作状態を検出するティルトセンサ28と、リフトシリンダ16の動作を指示する指示部材としてのリフト操作部材29の操作状態を検出するリフトセンサ30と、が電気的に接続されている。また、車両制御装置25には、運転者の操作によってフォークリフト10の加速を指示するアクセル操作部材31の操作量に応じたアクセル開度を検出するアクセルセンサ32と、運転者の有無を検出する運転者検出センサ33と、が電気的に接続されている。ティルト操作部材27、リフト操作部材29及びアクセル操作部材31は、フォークリフト10の運転室に配置されている。また、運転者検出センサ33は、例えば運転席に配置されている。車両制御装置25は、運転者検出センサ33の検出結果をもとに、運転者が正しい運転操作位置に存在しているか否かを検出する。そして、車両制御装置25は、運転者が正しい運転操作位置に存在していないことを検出すると、フォークリフト10の動作に規制を掛ける。規制される動作には、荷役動作や走行動作を含む。
【0015】
また、車両制御装置25は、エンジン19の回転数指令をエンジン制御装置26に出力することによってエンジン回転数の制御を行う。エンジン制御装置26は、入力した回転数指令をもとにエンジン19を制御する。エンジン制御装置26は、回転数センサ34が検出したエンジン19の実回転数を車両制御装置25に出力する。なお、油圧ポンプ20をエンジン19によって駆動するフォークリフト10では、アクセル操作部材31を踏み込むとともに、ティルト操作部材27やリフト操作部材29を操作することにより、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16を動作させることができる。
【0016】
以下、油圧機構21の構成を詳しく説明する。
油圧機構21は、作動油の給排を制御するコントロール回路36と、油圧機構21内の圧力補償を行う圧力補償回路37と、を有する。
【0017】
コントロール回路36は、ティルトシリンダ15の油室に油路38を介して接続されているコントロール弁39と、リフトシリンダ16の油室に油路40を介して接続されているコントロール弁41と、を有する。各コントロール弁39,41は、油路23及び排出油路24のそれぞれに接続されている。この実施形態では、油路23,38,40により、油圧ポンプ20と油圧作動装置(ティルトシリンダ15、リフトシリンダ16)を接続する接続油路が構成されている。また、油圧作動装置(ティルトシリンダ15、リフトシリンダ16)への作動油の給排を制御するコントロール弁39,41は、接続油路に接続されている。
【0018】
コントロール弁39,41のそれぞれは、電磁式の切換弁である。コントロール弁39は、ティルト操作部材27の操作を検知した車両制御装置25からの電気信号によって開閉状態が切り換わる。コントロール弁41は、リフト操作部材29の操作を検知した車両制御装置25からの電気信号によって開閉状態が切り換わる。
【0019】
油圧ポンプ20から吐出された作動油は、油路23を通ってコントロール弁39,41に流れ、油路38,40を通じて各シリンダ15,16の油室に供給される。例えば、ティルト操作部材27が操作されている場合、油圧ポンプ20から吐出された作動油は、コントロール弁39に接続されている油路38を通じてティルトシリンダ15の油室に供給される。なお、各シリンダ15,16の油室から排出された作動油は、排出油路24を通じて油タンク22に排出される。
【0020】
次に、図2図4にしたがって圧力補償回路37を説明する。
圧力補償回路37は、油圧作動装置(ティルトシリンダ15、リフトシリンダ16)へ接続される第1供給油路45を有する。第1供給油路45は、各シリンダ15,16のセンシング圧力を圧力補償回路37へ導入する。これにより、第1供給油路45は、油圧作動装置へ供給されている作動油が通る供給油路となる。また、第1供給油路45は、排出油路24に接続される。
【0021】
圧力補償回路37は、油路23を含む接続油路の分岐部位P1から分岐されている第2供給油路46を有する。第2供給油路46は、油路23に接続されていることにより、油圧作動装置へ供給されている作動油が通る供給油路となる。また、第2供給油路46は、第1供給油路45の途中の接続部位P2において第1供給油路45に接続されている。
【0022】
第1供給油路45には、各シリンダ15,16へ接続する側を上流側とし、排出油路24へ接続する側を下流側とした時、上流側から下流側に向かって順に、逆止弁47と、リリーフ弁48と、フィルタ49と、アンロード弁50とが、接続されている。リリーフ弁48には、予め定めた作動圧が設定されている。また、アンロード弁50は、開状態と閉状態とを取り得る電磁弁である。アンロード弁50のソレノイドのON/OFFは、車両制御装置25によって制御される。この実施形態の圧力補償回路37では、図2に示すようにアンロード弁50を閉状態とした時には排出油路24と第1供給油路45とが接続されていない状態となり、図3及び図4に示すようにアンロード弁50を開状態とした時には排出油路24と第1供給油路45とが接続された状態となる。アンロード弁50は、供給油路である第1供給油路45と排出油路24を接続させる弁である。
【0023】
また、第1供給油路45には、当該第1供給油路45から分岐されている分岐油路51が接続されている。分岐油路51は、リリーフ弁48と逆止弁47との間の接続部位P3と、リリーフ弁48とフィルタ49との間の接続部位P4と、に接続されている。これにより、分岐油路51は、リリーフ弁48を迂回させるように作動油を通すことができる。そして、分岐油路51には、開状態と閉状態を取り得るとともにばね力によって動作する開閉弁52が接続されている。開閉弁52は、分岐油路51を開閉させる。
【0024】
また、開閉弁52と第2供給油路46の接続部位P5との間には、油路53が接続されている。油路53には、第2供給油路46から開閉弁52に向う作動油の流れを許容するように逆止弁54が接続されている。また、油路53には、逆止弁54を迂回するように分岐した油路55が接続されている。油路55には、オリフィス56が接続されている。開閉弁52は、図2に示すようにアンロード弁50を閉状態とした時、第1供給油路45と、第2供給油路46と、油路53(逆止弁54)とを通じてばね力に抗した圧力が付与されることによって閉状態となる。つまり、逆止弁54は、アンロード弁50が閉状態のときに第2供給油路46の圧力を開閉弁52に付与する。一方、開閉弁52は、図3及び図4に示すようにアンロード弁50を開状態とした時に、第1供給油路45と、第2供給油路46と、油路53(逆止弁54)とを通じて付与される圧力が低下することによって開状態となるように動作することができる。図3に示すように開閉弁52が開状態の時には、開閉弁52に付与される圧力が油路55のオリフィス56により、第2供給油路46を通じて第1供給油路45へ解放される。また、第2供給油路46には、分岐部位P1と接続部位P5との間に、減圧弁57とオリフィス58とが接続されている。
【0025】
以下、図2図7にしたがって、この実施形態のフォークリフト10に搭載された油圧機構21の作用を説明する。
図2は、オンロードの状態の圧力補償回路37を示す。オンロードの状態では、アンロード弁50が閉状態に制御されていることから、油路23の圧力は、排出油路24へ解放されていない。このため、油圧ポンプ20から吐出された作動油は、コントロール弁39,41を通じてティルトシリンダ15やリフトシリンダ16へ流れることになる。つまり、図2の状態は、通常の荷役動作時に圧力補償回路37が取り得ている状態である。なお、開閉弁52は、第1供給油路45と、第2供給油路46と、油路53(逆止弁54)とを通じて付与される圧力によって閉状態を取り得ている。
【0026】
一方、図3は、アンロードの状態の圧力補償回路37を示す。図3に示すアンロードの状態では、アンロード弁50が開状態に制御されているとともに開閉弁52が開状態に制御されていることから、油路23、第1供給油路45及び第2供給油路46の圧力は、排出油路24へ解放されている。このため、この状態において圧力補償回路37を含む油圧機構21内の圧力は排出油路24に解放されており、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16に対して圧力が付与されていない。そして、この実施形態のフォークリフト10では、コントロール弁39,41を電磁式の切換弁で構成していることから、荷役動作を行っていない状態では、図3に示すアンロードの状態を取り得ている。
【0027】
ところで、アクセル操作部材31が操作されずにエンジン19がアイドル回転数で制御されている場合など、油圧機構21内の圧力が低下している状態(無負荷の状態)で、荷役動作を行わせようとすると、油圧作動装置の起動に伴って油圧ポンプ20の負荷が急激に上昇する。そして、油圧ポンプ20の負荷の増加に伴ってエンジン19のトルクが不足すると、エンジンストールが発生する場合がある。このため、この実施形態の車両制御装置25は、エンジン19に対して急激な負荷変動が生じ得る状況において、エンジンストールを回避させる制御を行う。
【0028】
なお、前述した荷役動作には、ティルトシリンダ15の動作やリフトシリンダ16の動作を含む。そして、このような荷役動作が、エンジン19に負荷がかけられる負荷動作となる。また、車両制御装置25は、運転者検出センサ33の検出結果をもとに運転者が正しい運転操作位置に存在していることを検出している場合に、荷役動作を許可する。この状態が、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16の動作を許可する状態となる。
【0029】
この実施形態において車両制御装置25は、荷役操作が行われた際に油圧機構21内の圧力の急激な上昇を抑制することで、エンジンストールを回避させる。具体的に言えば、車両制御装置25は、圧力を段階的に上昇させることで急激な圧力の上昇を抑制する。荷役操作とは、ティルト操作部材27やリフト操作部材29を操作することである。
【0030】
以下、図6にしたがって、エンジンストールを回避させるために車両制御装置25が行う制御内容を説明する。
車両制御装置25は、ティルトセンサ28やリフトセンサ30の検知結果をもとに荷役操作が行われたか否かを判定する(ステップS10)。車両制御装置25は、運転者検出センサ33の検知結果に基づき荷役動作を許可している場合において、荷役操作が行われたとき、ステップS10を肯定判定する。一方、車両制御装置25は、荷役操作が行われていない場合、運転者検出センサ33の検知結果に基づき荷役動作を許可していない場合、及び荷役操作を既に検知している状態でさらに別の荷役操作を検知した場合、ステップS10を否定判定し、処理を終了する。なお、荷役操作を既に検知している状態でさらに別の荷役操作を検知した場合には、例えばティルト操作部材27の操作を検知した後に、リフト操作部材29の操作を検知した場合など、複数の荷役操作が同時に行われる場合を含む。
【0031】
ステップS10を肯定判定した車両制御装置25は、荷役操作に基づき荷役動作を行った場合(エンジン19に負荷がかけられた場合)にエンジンストールが発生しやすい条件が成立しているか否かを判定する(ステップS11)。エンジンストールが発生しやすい条件には、例えば荷役操作を検知した時のエンジン回転数が比較的、低い回転数(例えば、アイドル回転数付近)である場合が挙げられる。このようにエンジン回転数が低い場合は、油圧ポンプ20の負荷の増加によってエンジン19のトルクが不足しやすく、その結果としてエンジンストールが発生する可能性が高い。車両制御装置25は、上記条件が成立する場合にステップS11を肯定判定する一方、上記条件が成立しない場合にステップS11を否定判定し、ステップS17においてアンロード弁50を閉状態としてオンロードの状態で制御する。
【0032】
ステップS11を肯定判定した車両制御装置25は、次に、オンロード時間が予め定めた所定時間としての時間TX(例えば数百ms)未満であるか否かを判定する(ステップS12)。オンロード時間は、圧力補償回路37が図2に示す状態において、油圧機構21がオンロードの状態とされている時間である。車両制御装置25は、荷役操作によって油圧機構21がオンロードの状態になると、内蔵されているタイマによってオンロード時間を計測する。オンロード時間が時間TX以上の場合、油圧機構21内の圧力は高められている。つまり、直前にも荷役動作が行われており、油圧機構21内の圧力がまだ高い状態を維持している。この場合は、新たな荷役操作に基づき油圧機構21をオンロードの状態としても、既に油圧機構21内の圧力が高められていることから、急激な圧力の上昇は起こりにくい。このため、車両制御装置25は、ステップS12を否定判定し、ステップS17においてアンロード弁50を閉状態としてオンロードの状態で制御する。
【0033】
一方、オンロード時間が時間TX未満の場合は、油圧機構21内の圧力が高められていないことになる。このため、この状態で荷役操作に基づき油圧機構21を負荷状態にすると、急激に圧力が上昇し、エンジン19のトルクが不足する可能性がある。このため、車両制御装置25は、ステップS12を肯定判定し、次の処理(ステップS13)に進んで急激な圧力の上昇を起こりにくくする。
【0034】
ステップS13において車両制御装置25は、油圧機構21を一旦オンロードの状態とし、圧力補償回路37を含む油圧機構21内に圧力を封入する。例えば、図3に示すアンロードの状態では、圧力が排出油路24に解放されている。このようにアンロードの状態が継続していた場合は、ステップS12が肯定判定されることになる。このため、車両制御装置25は、図2に示すようにアンロード弁50を閉状態としてオンロードの状態とする。そして、車両制御装置25は、オンロード時間が時間TXに達するまで、図2に示すオンロードの状態を維持する(ステップS14)。なお、ステップS14においてオンロードの状態を維持する時間は、ステップS12において車両制御装置25のタイマが計測しているオンロード時間によって変化する。例えば、オンロード時間が零であればステップS14においてオンロードの状態が維持される時間は時間TXに等しく、オンロード時間が零よりも大きい時間であればステップS14でオンロードの状態が維持される時間は時間TXからオンロード時間を差分した時間になる。
【0035】
このオンロードにより、油圧ポンプ20から吐出された作動油が油路23を流れることにより、油路23の圧力は上昇する。また、コントロール弁39,41を通じてティルトシリンダ15やリフトシリンダ16へ作動油が供給されることで、第1供給油路45の圧力も上昇する。
【0036】
そして、ステップS14を肯定判定、すなわち時間TXの間、圧力の封入を行った車両制御装置25は、アンロード弁50を閉状態から開状態とし、図2に示すオンロードの状態から図4に示すアンロードの状態へ戻す(ステップS15)。これにより、圧力補償回路37内の圧力は、排出油路24へ解放されるようになる。そして、油圧ポンプ20から吐出された作動油は油路23を流れるが、圧力補償回路37の圧力の低下に伴い油路23の圧力も低下する。また、コントロール弁39,41を通じてティルトシリンダ15やリフトシリンダ16へ作動油が供給されることで、第1供給油路45の圧力が上昇する。なお、荷役動作に関わらず、第1供給油路45の圧力に比して油路23の圧力が若干高くなるように圧力補償を行っている。
【0037】
そして、圧力補償回路37では、第1供給油路45の圧力がリリーフ弁48の作動圧に達すると、リリーフ弁48が開放される。これにより、第1供給油路45の圧力は、アンロード弁50を通じて排出油路24に開放されるようになり、リリーフ弁48の作動圧以上に上昇しなくなる。また、それとともに油路23の圧力も、第1供給油路45の圧力に比して若干高い圧力で維持される。なお、開閉弁52は、この状態においてばね力に抗した圧力が加わっていることで閉状態を維持している。
【0038】
上記のようにアンロードの状態に制御した車両制御装置25は、その状態を時間TY(例えば数百ms)の間、維持する(ステップS16)。そして、車両制御装置25は、アンロードの状態に制御してからの経過時間が時間TYに達すると(ステップS16を肯定判定)、アンロード弁50を閉状態としてオンロードの状態で制御する(ステップS17)。これにより、圧力補償回路37は、図2に示すように第1供給油路45の圧力が排出油路24へ開放されていない状態となる。このため、圧力補償回路37は、回路外に圧力を解放させることができず、回路内の圧力はリリーフ弁48の作動圧を越えて上昇する。また、第1供給油路45の圧力及び第2供給油路46の圧力もそれぞれ上昇する。その結果、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16を作動させるために必要な圧力が油路23を通じてコントロール弁39,41に供給されるとともに、ティルト操作部材27やリフト操作部材29の操作に応じてティルトシリンダ15やリフトシリンダ16が動作することになる。
【0039】
図5は、前述した制御によって得られる圧力(実線)とエンジン回転数(一点鎖線)の変遷を示す。
荷役動作を指示すると、油圧ポンプ20の駆動によって油圧機構21の圧力は上昇するが、その一方でエンジン回転数は回転数X(例えばアイドル回転数)から低下する。このため、図4に示すようにアンロード弁50を開状態(図5の「開」)にすると、前述したように圧力はリリーフ弁48の作動圧に等しい圧力Yまで上昇し(図5の時間T1)、その後、圧力Yを維持する。このため、エンジン19は、油圧ポンプ20の負荷の増加が一旦止まることによってエンジンストールが回避され、時間T2においてエンジン回転数を上昇させるように復帰することができる。その後、時間T3において図2に示すようにアンロード弁50を閉状態(図5の「閉」)にすると、圧力はリリーフ弁48の作動圧を越えて上昇し、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16を作動させるために必要な圧力Zに到達する。
【0040】
車両制御装置25は、図5に示すように、時間T3までの時間を時間TYとしてアンロード弁50を開状態に制御する。リリーフ弁48の作動圧となり得る圧力Yは、エンジンストールを回避することが可能な最大の圧力に設定することが好ましく、シミュレーションなどによって算出すると良い。なお、圧力Yを高く設定し過ぎた場合は、図5に示すエンジン回転数の変遷から明らかなようにエンジンストールが発生する可能性が高まる。一方、時間TYを長くし過ぎた場合や圧力Yを低く設定し過ぎた場合は、図5に示す圧力の変遷から明らかなように圧力Zに到達するまでの時間が長くなる可能性がある。つまり、圧力Zに到達するまでの時間が長くなると、荷役動作を指示してもティルトシリンダ15やリフトシリンダ16が反応しない時間が長くなる可能性がある。本実施形態の車両制御装置25は、図5に示すように、エンジンストールの発生を抑止するために、圧力補償回路37のアンロード弁50を開閉動作させることによって圧力を段階的(この実施形態では2段階)に上昇させる。
【0041】
次に、荷役動作後の制御内容を説明する。
車両制御装置25は、荷役動作の指示がなくなると、図4に示すように、アンロード弁50を開状態とし、アンロードの状態とする。これにより、リリーフ弁48が作動することによって第1供給油路45の圧力は、アンロード弁50を通じて排出油路24へ解放されるようになる。このため、第1供給油路45の圧力は低下する。
【0042】
アンロード弁50が開状態となった時点で油路53の圧力も排出油路24へ解放されるようになる。ここで、開閉弁52の開閉は、開閉弁52に付与されている油路53の圧力が解放されることにより、開閉弁52へ付与されているばね力を駆動力として閉状態から開状態へ切り替わり始める。切り替わりに必要な時間は、オリフィス56の径によって決定される。そして、図3に示すように、開閉弁52が開状態になると、第1供給油路45の圧力は開閉弁52を通じて排出油路24へ解放される。一方、油路23の圧力は第1供給油路45よりもやや高い圧力が付与されているため、第1供給油路45の圧力が排出油路24に解放されることにより圧力は低下する。その結果、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16へ付与される圧力が低下する。この実施形態では、開閉弁52と、逆止弁54と、オリフィス56とにより、時間の経過によって第1供給油路45を開放させるタイマ回路部が構成されている。
【0043】
図7は、前述した制御によって得られる圧力(実線)の変遷を示す。
図7に示すように、車両制御装置25は、時間T4において荷役動作の指示がなくなると、アンロード弁50を開状態に制御する。これにより、各シリンダ15,16へ付与されている圧力Zは、圧力補償回路37を通じて排出油路24へ解放され、徐々に低下する。そして、圧力Yに到達した後、開閉弁52が開状態になると、各シリンダ15,16へ付与されている圧力はさらに低下し、時間T5においてほぼ零の状態となる。これにより、運転者が正しい運転操作位置に存在していない状態で何らかの要因によって荷役動作が指示されても、荷役動作には規制が掛けられる。なお、圧力Yに到達した段階では、タイマ回路部が作動する迄の間、油圧機構21内は圧力Yに維持されている。このため、この段階で荷役動作を指示すれば、図6のステップS12が否定判定されて図2に示すオンロードの状態へ制御される。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)電磁式のコントロール弁39,41を採用する油圧機構21では、油圧作動装置(ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16)を動作させていない場合、常時、アンロードの状態とされる。アンロードの状態では、油圧機構21内の圧力が油タンク22へ解放されることで、油圧機構21内の圧力は低い状態となる。このため、エンジン19に負荷がかけられる荷役動作が指示された場合には、その時点におけるオンロード時間が所定時間(時間TX)未満であれば、オンロードの状態に制御して油圧機構21内の圧力を上昇させる。そして、その後にアンロード弁50を開状態とすることで圧力の急激な上昇を抑え、エンジンストールの発生を抑止できる。
【0045】
(2)各シリンダ15,16に対して圧力を段階的に上昇させることで、アンロード弁50を開状態に制御したときにはエンジンストールの発生を抑止できる。そして、アンロード弁50を再度、閉状態としてオンロードの状態とすることにより、油圧機構21内の圧力を各ティルトシリンダ15,16を動作させるために必要な圧力まで高めることができる。
【0046】
(3)同時の動作が指示された場合は、アンロード弁50を開閉させる制御を行わない。このため、他の油圧作動装置の動作の指示を受けたことによってアンロード弁50が開状態又は閉状態を取り得ることによって油圧作動装置の動作が不安定になることを抑止できる。
【0047】
(4)荷役動作が終了した後は、油圧機構21をアンロードの状態とすることにより、油圧機構21の圧力を低下させることができる。このため、運転者が正しい運転操作位置に存在していない場合において、誤操作などによって油圧作動装置(ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16)が動作してしまうことを防止できる。
【0048】
(5)タイマ回路部の作用により、荷役動作を終了した後の油圧機構21内の圧力を段階的に低下させるので、荷役動作の終了後に再び荷役動作が指示される場合において油圧作動装置をスムーズに動作させることができる。つまり、タイマ回路部により、荷役動作を終了した後、油圧機構21内の圧力を維持しておくことができる。
【0049】
(6)タイマ回路部として機械的に油路を開閉させる開閉弁52を用いることで、油圧回路の構成を簡素化できる。したがって、コストの増加を抑えることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0050】
○ 実施形態は、エンジン19に負荷がかけられる荷役動作が指示されたことによってアンロード弁50を開状態に制御したが、荷役動作を指示した時に限らず、エンジン19に負荷がかけられる場合もある。エンジン19は、負荷がかけられると、エンジン回転数が低下する場合がある。このため、エンジン回転数の低下を検知し、エンジン回転数の低下を検知したことをエンジン19に負荷がかけられた場合として判断しても良い。そして、エンジン回転数の低下を検知したことによってアンロード弁50を開状態に制御しても良い。
【0051】
○ タイマ回路部を、開閉弁52、逆止弁54、及びオリフィス56に代えて、電磁弁によって構成しても良い。そして、車両制御装置25は、荷役動作の終了後、予め定めた時間の経過時に電磁弁を開状態に制御して油圧機構21内の圧力を低下させる。
【0052】
○ 実施形態は、油圧作動装置としてアタッチメントを動作させる油圧シリンダをさらに有するフォークリフト10に具体化しても良い。
○ 実施形態は、油圧作動装置としてパワーステアリング機構を動作させる油圧シリンダをさらに備えたフォークリフト10に具体化しても良い。
【0053】
○ 産業車両はフォークリフト10に限らず、ショベルローダなどの油圧作動装置を有する車両に具体化しても良い。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を追記する。
【0054】
(イ)供給油路には、時間の経過によって供給油路を開放させるタイマ回路部が接続されている。
【符号の説明】
【0055】
10…フォークリフト、15…ティルトシリンダ、16…リフトシリンダ、19…エンジン、20…油圧ポンプ、23,38,40…油路、27…ティルト操作部材、29…リフト操作部材、39,41…コントロール弁、45…第1供給油路、46…第2供給油路、50…アンロード弁、TX,TY…時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7