特許第6156227号(P6156227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6156227入力装置、本体装置、入力情報補正システム、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156227
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】入力装置、本体装置、入力情報補正システム、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170626BHJP
   G06F 3/038 20130101ALI20170626BHJP
【FI】
   G06F3/041 520
   G06F3/038 310Y
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-72207(P2014-72207)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194887(P2015-194887A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 直也
【審査官】 梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/045819(WO,A1)
【文献】 特開2011−175682(JP,A)
【文献】 特開2008−46762(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/150637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041−3/047
G06F 3/033−3/039
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより指定された二次元又は三次元の空間における位置及び/又は動きを検知し、該検知結果を入力情報として本体装置に送信する、該本体装置と分離可能な入力装置であって、
a) 前記本体装置が前記入力情報を補正するための補正情報を記憶する補正情報記憶手段と、
b) 前記補正情報記憶手段が記憶している前記補正情報を、前記本体装置に送信する入力装置補正情報送信手段と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
c) 前記補正情報を、前記本体装置から受信する入力装置補正情報受信手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
入力装置が検知した、ユーザにより指定された二次元又は三次元の空間における位置及び/又は動きを入力情報として受信する、該入力装置と分離可能な本体装置であって、
a) 前記入力情報を補正するための補正情報を前記入力装置から受信する本体装置補正情報受信手段と、
b) 前記本体装置補正情報受信手段が前記入力装置から受信した前記補正情報に基づき、前記入力情報を補正する補正処理手段と、
を備えることを特徴とする本体装置。
【請求項4】
a) 前記補正情報を生成するための補正情報生成手段と、
b) 前記補正情報生成手段によって生成された前記補正情報を、前記入力装置に送信する本体装置補正情報送信手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の本体装置。
【請求項5】
分離可能に接続された入力装置と本体装置とを含む入力情報補正システムであって、請求項1又は2に記載の入力装置と、請求項3又は4に記載の本体装置とを含むことを特徴とする入力情報補正システム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項3又は4に記載の本体装置の各手段として機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置である本体装置と、該本体装置と分離可能に接続された入力装置とを含むシステムにおいて、前記入力装置が検出した入力情報を前記本体装置において補正するための入力装置、本体装置、及び入力情報補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザによる入力操作を本体装置に伝えるためのユーザインターフェースとしての入力装置の形態はますます多様化してきている。このような入力装置の代表的な例はマウスやタッチパッドであるが、既に広く普及しているタッチパネル付入力装置やペンタブレット、及び近年ゲーム機等の民生品への適用が拡がりつつあるモーションキャプチャ用のカメラ等、様々な装置を挙例することができる。
【0003】
こうした入力装置のセンサが十分な検出精度を備えていないと、ユーザが入力操作を行った位置と、入力装置が検出する入力位置との間にずれが生じる。その結果、入力装置から取得した入力情報に基づいてなされる本体装置の動作が、ユーザが意図したものと異なってしまうといった不具合が生じる場合がある。例えば、タッチパネルと重畳して設けられている表示部の画面上に表示された所望のGUIボタンを押下できなかったり、別のボタンが押下されるといったことが起こり得る。これは、連続的な入力値がデジタルの離散的な値と厳密には一致しないことに起因する問題であり、空間内での位置や動きといったアナログ量を検知する入力装置に特有の問題とも言える。
【0004】
上記では位置の検出精度の問題について述べたが、方向の検出精度が問題となる場合もある。例えば、CADを用いた製図等に広く使用されている高解像度マウスは、通常のマウスと比較して移動の検出閾値が低く、マウスの僅かな動きを検出して画面上のカーソルを移動させることができる。しかしその反面、実際にマウスを動かした方向と画面上でのカーソルの移動方向が異なるという問題が生じやすい。マウスの場合は画面上に表示されたカーソルを目で追いながら操作することができるので、通常の用途であれば僅かなずれは大きな問題とはならないが、製図のように精細な応答が求められる状況においては、こうしたずれは程度が僅かであっても無視できない。
【0005】
上述したような位置や方向のずれを解消するため、入力情報は本体装置に伝送された後に補正されることが一般的であり、補正の精度を高めるための技術が数多く開示されている(例えば特許文献1)。
ここで言う補正とは、本体装置の演算処理部が、入力装置から取得した入力値を所定の補正式に代入し、得られた値を入力値として扱う処理である。上記所定の補正式は、予め本体装置の製造時に用意された式に所定の情報(補正情報)を適用することで規定される。この補正情報は例えばセンサのオフセット、ゲイン、スパン、ベクトル値とその係数等であり、入力装置の個体差に応じて異なる値をとるものである。補正情報は例えば以下のような較正(キャリブレーション)作業によって決定される。すなわち、入力装置が表示部の画面と重畳して設置されているタッチパネル付入力装置であれば、表示部に表示された複数の標的に対する指やペン等の指示体によるタッチを検出し、該検出した複数のタッチ位置と、表示部における複数の標的の表示位置との各座標を参照し、各タッチ位置の座標を、対応する標的の表示位置の座標に変換するよう補正情報が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-146266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
入力装置が製造時に本体装置と一体に設けられていない場合、補正情報を決定するための較正作業は、入力装置と本体装置とを組み合わせて使用するユーザが行う必要がある。較正作業は通常、入力装置と本体装置とが初めて接続されたときに行われ、これによって決定された補正情報は本体装置内の記憶領域に保存されるのが一般的であった。従って、本体装置が故障によって修理又は交換され、該本体装置に保存されていた補正情報が失われると、ユーザはその都度較正作業を行わなければならない。較正作業は入力装置のその後の実質的な検出精度を左右するため正確に行う必要があり、このような作業を操作に習熟していないユーザに何度も強いることは好ましくない。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、本体装置と入力装置とを組み合わせて使用する際に必要な較正作業の回数を減らし、ユーザにとっての利便性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された第1発明は、ユーザにより指定された二次元又は三次元の空間における位置及び/又は動きを検知し、該検知結果を入力情報として本体装置に送信する、該本体装置と分離可能な入力装置であって、
a) 前記本体装置が前記入力情報を補正するための補正情報を記憶する補正情報記憶手段と、
b) 前記補正情報記憶手段が記憶している前記補正情報を、前記本体装置に送信する入力装置補正情報送信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明における「補正」とは、入力装置の実質的な検出精度を向上させるための処理に関する概念であり、入力情報による検知結果に所定の式を適用し、その値を変換することを意味する。具体例として、タッチパネル上のタッチ位置の座標、マウスカーソルの移動方向等の調整が、本発明の「補正」に含まれる。なお、「動き」には、移動の量及び方向が含まれる。
本発明における入力装置としては、タッチパネル付入力装置、ペンタブレット、マウス、モーションセンサ付きゲーム機用コントローラ、及びモーションキャプチャ用カメラ等を挙例することができる。
【0011】
上記の構成によれば、本体装置が入力情報を補正するための補正情報は補正情報記憶手段によって記憶され、入力装置補正情報送信手段によって本体装置に送信される。従って、本体装置が補正情報を持っていない場合や、本体装置が保持していた補正情報が該本体装置の修理又は交換等によって失われた場合にも、該本体装置は入力装置から補正情報を受信し、これに基づいて適切な補正を行うことができる。従って、補正情報を決定するための較正作業を、本体装置の修理又は交換の都度行う必要がなくなり、ユーザにとっての利便性を高めることができる。
また、入力装置が補正情報記憶手段を備えたことにより、較正作業を入力装置の製造段階で予め行っておくことも可能となる。この場合に、操作に習熟した者が較正作業を行えば、操作に不慣れなユーザが較正作業を行う場合よりも実質的な検出精度が高められた状態で入力装置をユーザに提供することができる。さらに、製造時に習熟者が予め較正作業を行うのであれば、入力装置がユーザに提供される段階での実質的な検出精度についてはある程度の水準が保証されるので、元々の検出精度が低い安価なセンサを部品として用いることができ、入力装置の製造コストを抑えることもできる。
なお、入力装置補正情報送信手段は、本体装置からの要求に応じて補正情報を該本体装置に送信してもよいし、入力装置の起動時又は本体装置との接続が確立された時点で自発的に補正情報を該本体装置に送信してもよい。
【0012】
前記入力装置はさらに、
c) 前記補正情報を、前記本体装置から受信する入力装置補正情報受信手段
を備えていてもよい。
この構成によれば、補正情報記憶手段は、入力装置補正情報受信手段が本体装置から受信した補正情報を記憶するので、ユーザが本体装置側で較正作業を行って補正情報を任意に更新することができる。
【0013】
上記課題を解決するために成された第2発明は、入力装置が検知した、ユーザにより指定された二次元又は三次元の空間における位置及び/又は動きを入力情報として受信する、該入力装置と分離可能な本体装置であって、
a) 前記入力情報を補正するための補正情報を前記入力装置から受信する本体装置補正情報受信手段と、
b) 前記本体装置補正情報受信手段が前記入力装置から受信した前記補正情報に基づき、前記入力情報を補正する補正処理手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、本体装置補正情報受信手段が入力装置から補正情報を受信し、補正処理手段は該受信された補正情報に基づいて入力情報を補正する。従って、本体装置が補正情報を持っていない場合や、本体装置が保持していた補正情報が該本体装置の修理又は交換等によって失われた場合にも、本体装置補正情報受信手段が入力装置から受信した補正情報を用いて、補正処理手段が入力情報を適切に補正することができる。これにより、補正情報を決定するための較正作業を、本体装置の修理又は交換の都度行う必要がなくなり、ユーザにとっての利便性を高めることができる。
【0015】
前記本体装置はさらに、
c) 前記補正情報を生成するための補正情報生成手段と、
d) 前記補正情報生成手段によって生成された前記補正情報を、前記入力装置に送信する本体装置補正情報送信手段と、
を備えていてもよい。
この構成によれば、補正情報生成手段が生成した補正情報が入力装置に送信されるので、ユーザが本体装置側で較正作業を行って補正情報を任意に更新することができる。
【0016】
上記課題を解決するために成された第3発明は、分離可能に接続された入力装置と本体装置とを含む入力情報補正システムであって、前記第1発明に係る入力装置と、前記第2発明に係る本体装置とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記第1乃至第3発明によれば、本体装置と入力装置とを組み合わせて使用する際に必要な較正作業の回数を減らし、ユーザにとっての利便性を高めることができる。
さらに、補正情報を入力装置側で記憶することで、該入力装置はソフトウェア的な手法により高い検出精度を有することとなる。これにより、入力装置の検出精度をハードウェアで保証する必要がなくなるため、より簡便な構造、またより安価な部品により入力装置を構成することが可能となり、製造コストの低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る入力装置と本体装置とを含む入力情報補正システムの概略構成を示すブロック図。
図2】同実施形態に係る入力情報補正システムの外観図。
図3図2に示す本体装置が備える表示部による画面表示例を入力装置とともに示す図。
図4】同実施形態に係る入力情報補正システムによる、補正情報決定処理の流れを示すフローチャート。
図5】同実施形態に係る入力情報補正システムにおける較正作業の説明図。
図6】同実施形態に係る入力情報補正システムによる、入力情報補正処理の流れを示すフローチャート。
図7】入力装置が三次元座標を取得する場合の入力情報補正システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の記載において、先に説明した図面と同一の機能を有する部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。また、本明細書における「座標」との文言は、表示部の画面又はこれと重畳して設置されるタッチパネルの入力面における座標を指す。
【0020】
〔入力情報補正システム100の概略〕
図1に、本発明の一実施形態に係る、入力情報補正システム100を示す。入力情報補正システム100は、入力装置1と本体装置2とを含み、両者はネットワークケーブルNW(又は無線LAN(Local Area Network))を介して分離可能に接続されている。
【0021】
入力装置1は、タッチパネル11、通信部(入力装置補正情報送信手段、入力装置補正情報受信手段)12、補正情報記憶部(補正情報記憶手段)13、及び要求受付部14を備える。
タッチパネル11は、ユーザによるタッチ(指示体の接触又は近接)を検知する手段であり、例えば静電容量方式タッチパネルであれば、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ複数配線された電極アレイを含む。本実施形態では一例として、タッチパネル11は静電容量方式タッチパネルとする。タッチパネル11は、電極アレイを構成する各電極の容量値の変化を検出することでタッチを検出し、該容量値を入力信号として出力する。
通信部12は、外部装置等との接続を司る手段であり、本実施形態では本体装置2が備える通信部21と接続されている。
補正情報記憶部13は、通信部12を介して本体装置2から受信した補正情報を保存するものであり、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置によって実現される。ここで、補正情報とは、タッチパネル11によって検知されたユーザのタッチ位置の座標を本体装置2が補正する際に使用される、後述する補正式の係数等の情報である。
要求受付部14は、後述する本体装置2からの補正情報要求信号を受け付け、補正情報記憶部13から補正情報を取得するものである。
【0022】
本体装置2の実態はコンピュータであり、通信部(本体装置補正情報受信手段、本体装置補正情報送信手段)21、表示部22、制御部23、及び記憶部24を備えてなる構成である。本体装置はこの他に、図示しない入力部を備えていてもよい。
通信部21は、通信部12と同様、外部装置等との接続を司る手段であり、本実施形態では入力装置1が備える通信部12と接続されている。
表示部22は、本体装置2が扱う情報を表示するものであり、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置によって実現される。
記憶部24は、本体装置2の制御部23が実行する各プログラムを実行するときに読み出す各種データを非一時的に記憶するものであり、ROM(Read only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。この他、RAMなどの揮発性記憶装置で構成される一時記憶部が本体装置2に備えられていてもよい。
また、本体装置2は液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)等の分析機器と有線又は無線で接続されているか、若しくは一体に設けられていてもよいが、本発明の趣旨からは外れるため図示を省略する。
【0023】
制御部23は、本体装置2が備える各要素の機能を統括し、本体装置2の動作を制御するものである、制御部23は例えばCPU(Central Processing Unit)等で実現され、制御部23が備える後述の各要素は、制御部23としてのCPUが、ROM等に記憶されているプログラムをRAM等に読み出して実行することで実現される。
制御部23は、図1に示すとおり、機能ブロックとして、座標特定部231、補正情報生成部(補正情報生成手段)232、補正情報取得部233、補正処理部(補正処理手段)234、システム管理部235、及び表示制御部236を備えている。
【0024】
座標特定部231は、タッチパネル11が検知した入力信号を通信部21を介して取得し、各電極の容量値から、ユーザによるタッチ操作がなされた位置の座標を特定するものである。座標の特定方法については、例えば特許文献1に記載された公知の方法を用いることができる。
補正情報生成部232は、補正情報を生成する。具体的には、座標特定部231が特定した座標を補正処理部234が補正する際に必要な補正情報を、後述する補正情報決定処理によって決定する。補正情報生成部232はさらに、該決定した補正情報を、通信部21を介して入力装置1に送信する。
補正情報取得部233は、通信部21を介して入力装置1から補正情報を取得する。具体的には、補正情報取得部233は、入力装置1に対し補正情報要求信号を送信し、該補正情報要求信号に応じて要求受付部14が補正情報記憶部13から読み出した補正情報を、通信部21を介して取得する。
補正処理部234は、座標特定部231が特定した座標を補正するものである。具体的には、本体装置2の製造時に設定された所定の補正式に、補正情報取得部233が取得した補正情報を加味したものを、座標特定部231が特定した座標に対し適用し、その値を変換する。上記所定の補正式は、例えば以下の式(1)及び(2)である。
x = ax' + b …(1)
y = cy' + d …(2)
ここで、(x', y')は補正前の座標であり、(x, y)は補正後の座標である。このとき、係数a、b、c及びdが本発明における補正情報となる。
システム管理部235は、本体装置2上で動作する不図示の各種プログラム(OS(Operating System)、ミドルウェア、アプリケーションプログラム等)を管理する。補正処理部234によって補正された座標はシステム管理部235に送信され、各種プログラムは補正後の座標に基づいて動作する。
表示制御部236は、制御部23によって処理された各種情報を、表示部22にて可視化するために、表示部22に対し、当該各種情報の映像信号を出力するものである。
【0025】
図2に、入力情報補正システム100の外観の一例を示す。本体装置2は、不図示の分析機器と有線又は無線で接続された、該分析機器の動作を制御する分析制御装置であり、表示部22に重畳するように、タッチパネル11を備える入力装置1が取り付けられて使用される。なお、同図では入力装置1はネットワークケーブルNWによって本体装置2と物理的に接続されているが、無線LAN等で接続されていてもよい。
【0026】
実際の使用場面例を図3に示す。図3は、図2に示す表示部22による画面表示例を、表示部22と重畳するタッチパネル11を備える入力装置1とともに示す図である。表示部22には、分析機器から受信した分析データから作成された波形線や各データ値等の分析結果画像30とともに、圧力や温度等の分析パラメータの調整や、表示画面の切り替え等の指示を受け付けるGUIボタン31が複数表示されている。ユーザは、表示部22による表示画面で分析結果を確認しながら、所望のGUIボタン31の表示位置でタッチパネル11を指示体(図では指)Fでタッチすることで、該GUIボタン31を押下し、分析パラメータの変更や表示画面の切り替えを行う。
【0027】
〔補正情報決定処理の流れ〕
ここで、入力情報補正システム100において、実際にユーザがタッチ操作を行った位置と、本体装置2が認識するタッチ位置との間のずれを補正するため、以下のような較正作業が事前に行われる必要がある。図4は、入力情報補正システム100における較正作業の説明図である。以下、フローチャートである図4、及び較正作業の説明図である図5を参照しつつ、入力情報補正システム100における補正情報決定処理の流れについて説明を行う。
【0028】
較正作業が開始すると、まず、補正情報生成部232の指示により、表示制御部236が表示部22の画面上の所定の位置に標的50を表示させる(ステップS101)。標的50は、較正作業においてユーザがタッチすべき目標点である。標的50は表示部22の画面上に複数表示されることが好ましく、本実施形態では、複数の標的50が順に1個ずつ画面上に表示されるものとする。別の例として、複数の標的50が画面上に同時に表示されてもよい。標的50の表示位置は表示部22の画面の四隅の近傍に表示されてもよいし、ランダムな位置に表示されてもよい。
【0029】
標的50が表示されると、次にタッチパネル11がタッチを検出する(ステップS102)。具体的には、電極アレイに含まれる電極の容量値が変化したことをトリガとして、各電極の容量値を入力信号として出力する。続いて、通信部12は、この入力信号を本体装置2の通信部21に送信する(ステップS103)。
【0030】
次に、座標特定部231がタッチ位置の座標を特定する(ステップS104)。具体的には、ステップS103によって通信部21が入力信号を受信すると、座標特定部231が該受信された入力信号を取得し、各電極の容量値から、ユーザがタッチ操作を行った位置の座標を特定する。表示した標的50の数が予め定められた所定数に達していなければ(ステップS105でNo)、補正情報決定処理はステップS101に戻る。
【0031】
ステップS101〜S104が所定数の標的50について行われると(ステップS105でYes)、補正情報生成部232が補正情報を生成する(ステップS106)。具体的には、補正情報生成部232は、ステップS101における標的50の各表示位置の座標と、ステップS104にて特定したタッチ位置の座標とを参照し、後者の座標を前者の座標に変換するために適切な補正情報を生成する。例として、図5に示す標的50の表示位置の座標が(30, 30)であり、ユーザが指示体Fでこの標的50をタッチした結果特定されたタッチ位置51の座標が(15, 45)であったとする。この場合、タッチ位置の座標(15, 45)を(30, 30)に補正する補正情報、すなわち上記式(1)及び(2)によれば、x = 30, y = 30, x' = 15, y' = 45としたときの最適な係数a、b、c及びdが求められる。
無論、表示される標的50の数が多ければ、また複数の標的50の表示位置が画面上に広く分散していれば、より正確な補正情報が求められる。標的50の表示数及び表示位置は、較正作業に要する時間、及び検出精度の許容誤差等に応じて適宜決定されればよい。
【0032】
そして、補正情報生成部232は、生成した補正情報を通信部21を介して入力装置1の通信部12に送信する(ステップS107)。
通信部12が受信した補正情報は補正情報記憶部13に保存される(ステップS108)。
【0033】
以上説明した処理により、入力装置1に係る補正情報が決定されるとともに、該決定された補正情報が入力装置1が備える補正情報記憶部13に保存される。なお、ステップS106にて補正情報生成部232が生成した補正情報は、本体装置2の記憶部24又は図示しない一時記憶部にも保存されてもよい。
【0034】
〔入力情報補正処理の流れ〕
次に、フローチャートである図6を参照しつつ、入力情報補正システム100における入力情報補正処理の流れについて説明を行う。
まず、補正情報取得部233は、本体装置2内の記憶部24又は図示しない一時記憶部に入力装置1に係る補正情報が存在するか否かを判定する(ステップS201)。この判定が行われるタイミングは、本体装置2の起動時であってもよいし、入力装置1との接続が確立された時点であってもよい。
本体装置2内に入力装置1に係る補正情報が存在しない場合(ステップS201でNo)、補正情報取得部233は、入力装置1の通信部12に対し補正情報要求信号を送信する(ステップS202)。
通信部12が受信した補正情報要求信号は要求受付部14に通知され、要求受付部14は該要求に応じて、補正情報記憶部13に保存されている補正情報を読み出し(ステップS203)、該読み出した補正情報を、通信部12を介して本体装置2の通信部21に送信する(ステップS204)。該送信された補正情報は、通信部21を介して補正情報取得部233に取得される。
【0035】
ここまでの処理によって、本体装置2は入力装置1に係る補正情報を取得する。以下では、上記取得した補正情報に基づく入力信号の補正処理がなされる。
続くステップS205〜S207に係る処理は、上述の補正情報決定処理におけるステップS102〜S104と同様である。
【0036】
次に、補正処理部234は、補正情報に基づきタッチ位置座標を補正する(ステップS208)。具体的には、補正処理部234は、本体装置2の製造時に設定された所定の補正式に、ステップS204によって補正情報取得部233が取得した補正情報を加味したものを、ステップS207にて座標特定部231が特定した座標に対し適用する。
続いて、補正処理部234は、システム管理部235に対し、補正後の座標を出力する(ステップS209)。本ステップの結果、システム管理部235は、本体装置2上で動作する各プログラムに対し、ステップS208における補正後の座標の位置でタッチが行われたという操作信号を出力する。これにより、例えば図3に示すような画面を表示する分析制御用ソフトウェアは、所定のGUIボタン31上でタッチ操作が行われたと認識し、該GUIボタン31の押下等を行う。以降、ステップS206の手前に戻り、新たな入力信号が得られれば順次タッチ位置座標の補正がなされる。
なお、ステップS201にて、本体装置2内に既に入力装置1に係る補正情報が存在すると判定された場合(ステップS201でYes)、ステップS202〜S204はスキップされ、本体装置2は自装置にて保持している補正情報に基づいてタッチ位置座標の補正を行う。あるいは、補正情報を本体装置2内に保存しない構成とした場合には、ステップS201を設けず、本体装置2の起動又は入力装置1との接続確立の都度、補正情報取得部233が補正情報要求信号を送信するようにすればよい。
【0037】
以上説明した処理によれば、入力装置1に係る補正情報は入力装置1内の補正情報記憶部13に保存され、本体装置2が補正処理を行うに際し、補正情報取得部233からの補正情報要求信号に応じて、本体装置2側に読み出される。従って、本体装置2が補正情報を保持しておく必要がなくなるので、本体装置の修理又は交換の都度の較正が不要となり、ユーザにとっての利便性を高めることができる。
なお、上述ではタッチ操作のみについて説明を行ったが、ドラッグ操作やフリック操作等についても上述の入力情報補正処理を同様に適用可能であることは言うまでもない。
【0038】
また、上述の較正作業は必ずしもユーザによって行われる必要はなく、入力装置1の製造段階において、較正作業に習熟した者によって行われてもよい。この場合、入力装置1と接続して使用される本体装置について、表示部の寸法等の規格が構成作業時に既知である必要があるが、特定の組み合わせでのみ使用されることが分かっている状況であれば、このような出荷前の較正は極めて有用である。すなわち、ユーザによる較正作業が不要となるだけでなく、習熟者による較正で得られたより正確な補正情報に基づいた補正が行われるので、操作に不慣れなユーザが較正作業を行う場合よりも実質的な検出精度が高められた状態の入力装置1がユーザに提供される。これにより、操作に不慣れなユーザでも適切に較正作業を行えるよう、元々の検出精度が高い高価なセンサを部品として使用するといった、従来技術における設計上の制限が取り除かれるため、安価なセンサを用いて入力装置1の製造コストを抑えることもできる。
【0039】
上述の実施形態では、入力装置が検知手段としてタッチパネルを備える例について説明した。しかし本発明に係る入力装置はこれに限定されず、二次元又は三次元の空間における位置及び/又は動きを、入力信号による近似値として検知する検知手段を備えた、本体装置と分離可能なあらゆる入力装置を包含する概念である。具体的には、例えば、入力装置としてのペンタブレット、マウス、モーションセンサ付きゲーム機用コントローラ、又はモーションキャプチャ用カメラ等が検出した入力信号を、該入力装置と分離可能な本体装置にて補正するシステムに、本発明に係る入力情報補正システムを適用することができる。
【0040】
上記にて例示したとおり、本発明に係る入力装置は、二次元だけでなく、図7に示すように三次元(X、Y、Z座標上)での入力を対象とすることもできる。この場合、例えば表示部22a付近に設置された赤外線発信器70から発せられる光を、ユーザが保持する入力装置71に備えられたカメラによって受信し、これによって表示部22aに対する三次元的な座標を特定すればよい。
【0041】
また、上述の実施形態では二次元又は三次元空間内の位置の補正及びそのための補正情報について説明を行ったが、空間内の移動方向を補正するための情報も、本発明の補正情報に含まれる。例えば入力装置が光学式マウスであれば、光センサの検知結果に基づく移動方向を本体装置にて補正する際の所定の補正式に適用する係数が補正情報となる。この場合の補正情報も、上述の実施形態で説明した入力装置1と同様、該光学式マウスが備える補正情報記憶部に保存されればよい。
【0042】
以上、本発明に係る入力装置、本体装置、及びこれらを含む入力情報補正システムについて、例を挙げつつ説明したが、上記は一例に過ぎず、本発明の精神内で適宜に変形、改良、修正を行っても構わない。例えば、上述の実施形態では、本体装置2が備える補正情報取得部233が入力装置1に対して補正情報要求信号を送信し、該要求に対して入力装置1が備える要求受付部14が補正情報記憶部13から補正情報を読み出してこれを本体装置2に送信する構成として説明した。しかし、入力装置1が、自装置の起動時又は本体装置2との接続が確立された時点で、本体装置2に対して補正情報記憶部13に保存されている補正情報を送信する構成としてもよい。
【0043】
なお、上述の実施形態及び応用例では、入力装置が検知した入力信号は本体装置にて表示部上の座標や移動方向として出力されるものとして説明を行ったが、入力信号の出力態様はこれらに限定されない。例えば、本体装置は補正後の入力信号に基づいて、自装置が備えるランプの点灯状態やハードウェアボタンの押下状態を制御してもよい。また、本体装置は補正後の入力信号に基づいて、該本体装置と有線又は無線で接続された別の装置の動作を制御したり、補正後の入力信号を別の装置に出力したりする構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1、71…入力装置
11…タッチパネル
12…通信部
13…補正情報記憶部
2…本体装置
21…通信部
232…補正情報生成部
233…補正情報取得部
234…補正処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7