(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2の繊維基材に第2の樹脂組成物を含浸し、これを加熱加圧してなる1または2以上の第2の樹脂層を内層に有するものであり、前記第2の繊維基材がガラス繊維基材であり、
前記第2の繊維基材が、目付が100g/m2以上、220g/m2以下のガラス繊維織布である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の被研磨物保持材。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハ、ハードディスクなどの被研磨物を研磨するとき、被研磨物保持材に使用される積層板は、繊維基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸乾燥して得たプリプレグを所定枚数重ねて一体に加熱加圧成形した積層板が使用されている。
積層板は、次のようにして被研磨物保持材へ加工する。定尺の積層板から所定寸法の円板を切り出し、この積層板に1ないし複数個の円形の孔を開ける。また、円板の周囲には、歯車の歯を形成する。このようにして製作した被研磨物保持材を用いて研磨を行なうときは、前記保持材を研磨機にセットし、その円形の孔には被研磨物を保持する。保持材の周囲の歯に駆動歯車の歯を噛み合わせて、保持材を駆動させる。これに伴って、円形の孔に保持した被研磨物も駆動され、被研磨物の表面は、これに当接している研磨材によって研磨される。
【0003】
被研磨物保持材に要求される特性は、耐摩耗性、板厚精度、反り特性、寸法安定性などである。また、近年、被研磨物に要求される品質や性能が高くなるに伴い、被研磨物におけるスクラッチ(研磨傷)の発生が抑制された被研磨物保持材が求められている。
これらの改善のため、被研磨物にスクラッチを発生させない被研磨物保持材を形成する材料として、アラミド系繊維(例えば、特許文献1参照。)が検討されているものの、被研磨物保持材に対するさらなる耐摩耗性の向上や、被研磨物である基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度の向上が求められていた。
【0004】
この様な点の改善のために、アラミド繊維、PBO繊維、全芳香族ポリエステル繊維及び高強度ポリエチレン繊維等の有機繊維基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の組成物を含浸したプリプレグを表層とし、ガラス繊維基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の組成物を含浸したプリプレグを中間層として、これらプリプレグを積層し加熱加圧して得られた被研磨物保持材(例えば、特許文献2参照。)等が検討されている。しかし、表層に用いる有機繊維基材と中間層に用いるガラス繊維材の線膨張係数の違い等による歪の問題があり、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度の向上という点で、改善の余地があった。また、アラミド繊維、PBO繊維、全芳香族ポリエステル繊維及び高強度ポリエチレン繊維等の有機繊維は、ガラス繊維と比較すると高価であるため、経済性も考慮して、有機繊維を用いずに被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度の向上と、被研磨物におけるスクラッチ発生の抑制とを両立することが望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宣説明を省略する。
【0020】
図1に本発明の被研磨物保持材の実施形態を示す平面図、
図2に本発明の被研磨物保持材に用いられる積層板の実施形態を示す断面図を示した。
【0021】
本発明の被研磨物保持材1は、例えば、
図1の平面図に示すような形状を有する平板であり、このような被研磨物保持材1は、例えば、
図2に示すような定尺の積層板2から所定寸法の円板を切り出し、切り出した円板に1ないし複数個の円形の孔11を開けるとともに、円板の周囲に歯車の歯12を形成することによって、作製することができる。このようにして製作した被研磨物保持材1を用いて被研磨物の研磨を行なうときは、被研磨物保持材1を研磨機にセットし、被研磨物保持材1の円形の孔11に被研磨物を保持し、被研磨物保持材1の周囲の歯車の歯12に駆動歯車の歯を噛み合わせて、被研磨物保持材1と、被研磨物保持材1の円形の孔11に保持された被研磨物を駆動させることによって行うことができるものである。
【0022】
本発明の被研磨物保持材1及びこれに用いられる積層板2は、第1の繊維基材211に第1の樹脂組成物を含浸し、これを加熱加圧してなる第1の樹脂層21を最外層に有する被研磨物保持材1であって、第1の繊維基材がガラス繊維基材であり、第1の繊維基材を除く第1の樹脂層中に、ノボラック骨格を有する樹脂に由来する構造を50質量%以上の割合で含むことを特徴とする。これにより、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反りや板厚精度を改善し、かつ被研磨物におけるスクラッチの発生が抑制され、耐摩耗性が良好となり、さらに経済的にも有利な被研磨物保持材を得ることができる。第1の繊維基材を除く第1の樹脂層中に、ノボラック骨格を有する樹脂に由来する構造を、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましい。これにより、上述した効果がさらに顕著に発揮される。尚、ノボラック骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリアジンノボラック樹脂、カシュー変性ノボラック樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ変性ノボラック樹脂、キシレン変性ノボラック樹脂、メシチレン変性ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。また、第1の繊維基材を除く第1の樹脂層中に、ノボラック骨格を有する樹脂に由来する構造を所定の質量%の割合で含むとは、第1の樹脂層中の第1の樹脂組成物として上述したノボラック骨格を有する樹脂を所定量含むことにより、第1の繊維基材を除く第1の樹脂層中において、耐摩耗性を向上させることを意味する。
【0023】
先ず、本発明の被研磨物保持材1及びこれに用いられる積層板2において、最外層を構成する第1の樹脂層21について詳細に説明する。第1の樹脂層21は、第1の繊維基材211に第1の樹脂組成物を含浸し、これを加熱加圧してなるものである。
【0024】
第1の樹脂層21に用いられる第1の繊維基材211としては、目付が30g/m
2以上、150g/m
2以下のガラス繊維織布を用いることが好ましく、目付が48g/m
2以上、105g/m
2以下のガラス繊維織布を用いることがより好ましい。これにより、被研磨物におけるスクラッチの発生を抑制し、耐摩耗性を向上させる効果を得ることができる。また、第1の繊維基材211としては、フィラメント本数が100本以上、300本以下のガラス繊維織布を用いることが好ましく、フィラメント本数が150本以上、250本以下のガラス繊維織布を用いることがより好ましい。これにより、被研磨物におけるスクラッチの発生を抑制し、耐摩耗性を向上させる効果を得ることができる。さらに、第1の繊維基材211としては、厚さが50μm以上、150μm以下のガラス繊維織布を用いることが好ましく、厚さが80μm以上、120μm以下のガラス繊維織布を用いることがより好ましい。これにより、被研磨物におけるスクラッチの発生を抑制し、耐摩耗性を向上させる効果を得ることができる。このようなガラス繊維織布としては、例えば、IPCスペックの#1501、#1504、#2117、#2116、#1116、#3313、#2319、#1280、#1080、#1078、#1067、#106スタイルのものが挙げられる。これらのガラス繊維織布は、開繊加工や扁平加工を施したものであってもよい。
【0025】
第1の樹脂層21に用いられる第1の繊維基材211を構成するガラス成分としては、特に、限定されないが、例えば、Eガラス、NEガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、ARガラス等が挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性の観点ではTガラスが好ましく、生産性、経済性の観点ではEガラスが好ましい。
【0026】
本発明の被研磨物保持材1は、第1の樹脂層21中に、第1の繊維基材211を25質量%以上、60質量%以下の割合で含むことが好ましく、45質量%以上、60質量%以下の割合で含むことがより好ましい。これにより、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反りや板厚精度を改善する効果を向上させることができる。また、上記範囲内であると、被研磨物におけるスクラッチの発生を抑制する効果を得ることができる。また、研磨機の鳴きを抑制する効果が得られるという観点では、第1の樹脂層21中に、第1の繊維基材211を25質量%以上、50質量%以下の割合で含むことが好ましく、35質量%以上、50質量%以下の割合で含むことがより好ましい。
【0027】
第1の繊維基材211に含浸させる第1の樹脂組成物としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。耐摩耗性の観点では、ノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂の含有量については、特に限定されないが、第1の樹脂組成物100質量部中にノボラック型エポキシ樹脂を40質量部以上、80質量部以下の割合で含むことがより好ましく、40質量部以上、60質量部以下の割合で含むことが特に好ましい。これにより、第1の樹脂層21の表面硬度を高めることができ、耐摩耗性を向上させる効果を得ることができる。また、樹脂のスキン層の磨滅が遅くなることにより、ガラス繊維が研磨面に露出するまでの時間を延ばすことができ、これにより、被研磨物におけるスクラッチの発生を抑制する効果を得ることができる。
【0030】
また、積層板の反りの観点では、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量については、特に限定されないが、第1の樹脂組成物100質量部中にビスフェノールA型エポキシ樹脂を5質量部以上、40質量部以下の割合で含むことがより好ましく、10質量部以上、30質量部以下の割合で含むことが特に好ましい。これにより、被研磨物保持材の反りを抑制させ、被研磨物の平滑性を向上させることができる。
【0031】
第1の繊維基材211に含浸させる第1の樹脂組成物としてエポキシ樹脂を用いる場合には、通常用いられる一般的なエポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤を含有することができる。用いることができる硬化剤としては、公知のものが使用可能であり、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂や1,1,1−トリスヒドロキシフェニルエタン等の多価フェノール類、芳香族アミン、脂肪族アミン等のアミン系硬化剤、酸無水物、ジシアンジアミド、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0032】
硬化剤として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。耐摩耗性の観点では、ノボラック型フェノール樹脂がより好ましく、フェノールノボラック樹脂が特に好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の含有量については、特に限定されないが、第1の樹脂組成物100質量部中にノボラック型フェノール樹脂を20質量部以上、40質量部以下の割合で含むことがより好ましく、25質量部以上、35質量部以下の割合で含むことが特に好ましい。これにより、第1の樹脂層21の表面硬度を高めることができ、耐摩耗性を向上させる効果を得ることができる。また、樹脂のスキン層の磨滅が遅くなることにより、ガラス繊維が研磨面に露出するまでの時間を延ばすことができ、これにより、被研磨物におけるスクラッチの発生を抑制する効果を得ることができる。
【0033】
第1の繊維基材211に含浸させる第1の樹脂組成物には、無機充填材を含んでいてもよい。用いることができる無機充填材としては、特に限定されず、例えばアルミナ、カオリンクレー、シリカ、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ等が挙げられる。これらの無機充填材は、単独で用いても、2種以上併用してもよい。無機充填材を用いることにより、第1の樹脂層の強度を向上させることができる。また、無機充填材を用いることにより、第1の樹脂層の線膨張係数を小さくすることができるため、無機充填材の配合量を適宜調整することにより、第1の樹脂層の線膨張係数と、後述する第2の樹脂層の線膨張係数とをより近づけることが可能となり、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度を向上させることも可能となる。
【0034】
次に、本発明の被研磨物保持材1及びこれに用いられる積層板2において、内層を構成する第2の樹脂層22について詳細に説明する。第2の樹脂層22は、第2の繊維基材221に第2の樹脂組成物を含浸し、これを加熱加圧してなるものであり、第2の繊維基材がガラス繊維基材であるものである。
【0035】
第2の樹脂層22に用いられる第2の繊維基材221としては、目付が100g/m
2以上、220g/m
2以下のガラス繊維織布を用いることが好ましく、目付が140g/m
2以上、220g/m
2以下のガラス繊維織布を用いることがより好ましい。これにより、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度を向上させる効果を得ることができる。また、第2の繊維基材221としては、フィラメント本数が300本以上、500本以下のガラス繊維織布を用いることが好ましく、フィラメント本数が350本以上、450本以下のガラス繊維織布を用いることがより好ましい。これにより、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度を向上させる効果を得ることができる。さらに、第2の繊維基材221としては、厚さが100μm以上、250μm以下のガラス繊維織布を用いることが好ましく、厚さが180μm以上、200μm以下のガラス繊維織布を用いることがより好ましい。これにより、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度を向上させる効果を得ることができる。このようなガラス繊維織布としては、例えば、IPCスペックの#1116、#2116、#2117、#1504、#1501、#7628、#7629スタイルのものが挙げられる。これらのガラス繊維織布は、開繊加工や扁平加工を施したものであってもよい。
【0036】
第2の樹脂層22に用いられる第2の繊維基材221を構成するガラス成分としては、特に、限定されないが、例えば、Eガラス、NEガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス等が挙げられる。これらの中でも、生産性、経済性の観点ではEガラスが好ましい。
【0037】
本発明の被研磨物保持材1は、第2の樹脂層22中に、第2の繊維基材221を50質量%以上、70質量%以下の割合で含むことが好ましく、60質量%以上、70質量%以下の割合で含むことがより好ましい。これにより、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反りや板厚精度を改善する効果を向上させることができる。
【0038】
第2の繊維基材221に含浸させる第2の樹脂組成物としては、上述の第1の樹脂組成物と同様のものを用いることができる。反りや板厚精度の観点からは、無機充填材の配合量を適宜調整することにより、上述した第1の樹脂層の線膨張係数と、第2の樹脂層の線膨張係数とをより近づけることが可能となり、基板の薄肉化に伴う被研磨物保持材における反り抑制や板厚精度を向上させることも可能となる。
【0039】
次に、本発明の被研磨物保持材1に用いられる積層板2の製造方法について、説明する。第1の樹脂組成物を溶媒に溶解し、固形分30〜80質量%程度、好ましくは50〜70質量%の第1の樹脂組成物ワニスを調製する。これを第1の繊維基材211に含浸したのち、乾燥して第1のプリプレグを得る。同様にして、第2の樹脂組成物を溶媒に溶解し、固形分30〜80質量%程度、好ましくは50〜70質量%の第2の樹脂組成物ワニスを調製する。これを第2の繊維基材221に含浸したのち、乾燥して第2のプリプレグを得る。尚、溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン/セロソルブ、メチルエチルケトン/トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等が挙げられる。その後、第1のプリプレグを最外層(表面層)に配置し、第2のプリプレグを内層(中間層)に配置して、プリプレグを所定枚数重ね、離型フィルムで被覆した鏡面板に挟み込み、プレス熱盤間で加熱加圧成形することで、積層板2を得ることができる。加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、通常温度160〜200℃、圧力5〜50MPaで、90〜150分程度で行われる。
【0040】
また、プリプレグの使用枚数はシリコンウエハ、ハードディスクなど被研磨物の種類や研磨条件により調整される。また、被研磨物保持材1及びこれに用いられる積層板2の厚みは、これを使用する被研磨物の種類や研磨条件に応じて適宜選択され、通常0.3〜2.0mm程度、好ましくは0.4〜1.0mm程度である。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されない。
【0042】
各種原料として、下記のものを用いた。
(1)エポキシ樹脂
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂1:DIC株式会社製、エピクロンN−690(軟化点90℃、エポキシ当量225g/eq)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂1:三菱化学株式会社製、エピコート1001(軟化点64℃、エポキシ当量475g/eq)
(2)硬化剤
フェノールノボラック樹脂1:住友ベークライト株式会社製、PR−51470(軟化点107℃、水酸基当量105g/eq)
ジシアンジアミド:日本カーバイド工業株式会社製、DDA
(3)硬化促進剤
2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ):四国化成工業株式会社製
(4)ガラス繊維織布
ガラス繊維織布1(GC1):ユニチカグラスファイバー株式会社製、E10T(Eガラス製、目付106g/m
2、フィラメント径約5μm、フィラメント本数約400本、厚さ90μm)
ガラス繊維織布2(GC2):ユニチカグラスファイバー株式会社製、E18S(Eガラス製、目付210g/m
2、フィラメント径約9μm、フィラメント本数約400本、厚さ180μm)
ガラス繊維織布3(GC3):ユニチカグラスファイバー株式会社製、E06B(Eガラス製、目付48g/m
2、フィラメント径約5μm、フィラメント本数約200本、厚さ55μm)
アラミド繊維織布4(AC4):旭化成イーマテリアルズ株式会社製、アラミド繊維職布(テクノーラ製、目付60.6g/m
2、フィラメント径18μm、フィラメント本数65本、厚さ95μm)
【0043】
実施例1
第1及び第2の繊維基材用の樹脂組成物ワニスの調製
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂1を50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1を20質量部、フェノールノボラック樹脂1を30質量部、2P4MZを0.1質量部、からなる混合物に溶媒としてメチルエチルケトンを加えて固形分55質量%の樹脂組成物Aのワニスを調製した。
【0044】
第1のプリプレグの作製
ガラス繊維織布1に樹脂組成物Aのワニスを含浸後乾燥して、樹脂組成物量40質量%、ガラス繊維織布量60質量%のプリプレグ1A40(GC1/樹脂組成物A/樹脂組成物量40質量%の意)を作製した。
【0045】
第2のプリプレグの作製
ガラス繊維織布2に樹脂組成物Aのワニスを含浸後乾燥して、樹脂組成物量41質量%、ガラス繊維織布量59質量%のプリプレグ2A41(GC2/樹脂組成物A/樹脂組成物量41質量%の意)を作製した。
【0046】
被研磨物保持材用積層板の作製
プリプレグ1A40を2枚、最外層(表面層)に配置し、プリプレグ2A41を3枚、内層(中間層)に配置して重ね、離型フィルムで被覆した鏡面板に挟み込んで、プレス熱盤間で加熱加圧成形して、縦1250mm、横1250mm、厚さ0.8mmの積層板を作製した。加熱加圧成形の条件は、加熱温度180℃、加圧圧力40MPa、加圧時間120分で行った。
【0047】
被研磨物保持材の作製
得られた被研磨物保持材用積層板から、ルーターマシンを用いて、外形に歯車用の歯を加工して歯車の歯の凸部を結んだ線の外形寸法がφ515mmとなるようにし、被研磨物を保持する孔の内径寸法がφ200mmとなる被研磨物保持材を作製した。
【0048】
実施例2〜14、比較例1、4
表1に示した組成で配合を行って、第1及び第2の繊維基材用の樹脂組成物のワニスとして、それぞれ樹脂組成物A〜Gのワニスを調整した。そののち、第1の繊維基材としてのGC1〜GC3に、表1に示した組合せで樹脂組成物のワニスを表1に示したGC量になるように含浸後、乾燥した、最外層に配置するプリプレグとしてプリプレグ1B40(GC1/樹脂組成物B/樹脂組成物量40質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、1C40、1D40、1E40、1F40、1G40、1A50(GC1/樹脂組成物A/樹脂組成物量50質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、1B50、1C50、2A41(GC2/樹脂組成物A/樹脂組成物量41質量%の意)、3A74(GC3/樹脂組成物A/樹脂組成物量74質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、3B74、3C74、3D74、3E74を作製した。また、第2の繊維基材としてのGC2に表1に示した組合せで樹脂組成物のワニスを表1に示したGC量になるように含浸後、乾燥した。内層に配置するプリプレグとしてプリプレグ2A41(GC2/樹脂組成物A/樹脂組成物量41質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、2B41、2C41、2D41、2E41、2F41、2G41、2A35(GC2/樹脂組成物A/樹脂組成物量35質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、2B35、2C35、2D35、2E35、を作製し、表1に示した枚数を重ねて配置した。それ以外は、実施例1と同様にして、被研磨物保持材用積層板、被研磨物保持材を作製した。
【0049】
比較例2、3
表1に示した組成で配合を行って、第1及び第2の繊維基材用の樹脂組成物のワニスとして、それぞれ、樹脂組成物A、Fのワニスを調整した。そののち、第1の繊維基材としてのアラミド繊維織布AC4に、樹脂組成物A、Fのワニスを含浸後、乾燥した。最外層に配置するプリプレグとしてプリプレグ4A55(AC4/樹脂組成物A/樹脂組成物量55質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、4F40を作製した。また、第2の繊維基材としてのGC2に樹脂組成物A、Fのワニスを含浸後、乾燥した、内層に配置するプリプレグとしてプリプレグ2A41(GC2/樹脂組成物A/樹脂組成物量41質量%の意、以下樹脂組成物種のみ相違)、2F41を作製した。それ以外は、実施例1と同様にして、被研磨物保持材用積層板、被研磨物保持材を作製した。
【0050】
評価方法
実施例1〜14、比較例1〜4で作製した被研磨物保持材用積層板、被研磨物保持材について、下記の評価を行った結果を、表1に示した。
【0051】
ガラス転移温度
得られた被研磨物保持材用積層板から、幅10mm、厚さ0.8mm、長さ50mmの試験片を切り出し、DMA装置(TAインスツルメント社製DMA2980)を用いて5℃/分の割合で昇温しながら、周波数1Hzの歪みを与えて動的粘弾性の測定を行った。ガラス転移温度は、tanδが最大値を示す温度とした。
【0052】
硬度(バーコール硬さ)
得られた被研磨物保持材用積層板について、JIS K 6711「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に基づいて、25℃におけるバーコール硬さ(硬度計:GYZJ934−1)を測定した。
【0053】
耐摩耗性
得られた被研磨物保持材515mmφの円盤状の積層板に中央付近に200mmφの穴をあけた被研磨物保持材用積層板を両面研磨装置を用いて研磨した。得られた被研磨物保持材の内部にある200mmφの穴部に、0.7mm厚のシリコンウェハを入れ、面圧9.8MPa、キャリア回転数5rpm、上下研磨プレートの回転数20rpmで、180分間研磨を実施した。摩耗量が12μm以下を○、12μmを超えるものを×とした。
【0054】
反り
得られた被研磨物保持材を平盤に平置きして、その浮き上がり値を測定した。浮き上がり値が、5mm以下のものを○、5mmを超えるものを×とした。
【0055】
平滑性
得られた被研磨物保持材について、接触式表面粗さ計を用いて、表面凹凸差R
MAX−R
MINを求めた。R
MAX−R
MINが4μm以下であるものを◎、4μmを超え、6μm以下であるものを〇、6μmを超えるものと×とした。
【0056】
【表1】
【0057】
第1の繊維基材に第1の樹脂組成物を含浸し、これを加熱加圧してなる第1の樹脂層を最外層に有するものであって、第1の繊維基材としてガラス繊維基材を用い、かつ第1の樹脂層中に、ノボラック骨格を有する樹脂に由来する構造を50質量%以上の割合で含む実施例1〜14は、いずれも、ガラス転移温度(耐熱性)、バーコール硬さ(表面硬度)が高く、耐摩耗性、反り及び平滑性の優れる結果となった。とりわけ、第1の繊維基材として目付が30g/m
2以上、150g/m
2以下のガラス繊維織布を用いた実施例1〜10、12〜14では、平滑性が特に優れた結果となった。
一方、第1の繊維基材としてガラス繊維基材を用いる代わりにアラミド繊維織布を用いた比較例2、3では、反りが劣る結果となった。また、第1の樹脂層中におけるノボラック骨格を有する樹脂に由来する構造の割合が50質量%に満たない比較例1、3、4では、ガラス転移温度(耐熱性)、バーコール硬さ(表面硬度)が低く、耐摩耗性が劣る結果となった。