(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の移動式クレーンであって、前記カウンタウェイト台車は、前記連結部材を介して前記上部旋回体に連結されるとともに前記カウンタウェイトを支持する台車本体と、前記台車本体に取付けられる複数の車輪と、前記カウンタウェイト台車が走行するように前記複数の車輪の少なくとも一部を回転駆動する車輪駆動装置と、前記複数の車輪の向きを変える操向装置と、を含み、前記台車制御部は、前記カウンタウェイト台車の走行について予め設定された複数の台車走行モードをそれぞれ実現するように前記車輪駆動装置及び前記操向装置の作動を制御する、移動式クレーン。
請求項1または2記載の移動式クレーンであって、前記複数の台車走行モードは、前記上部旋回体の旋回に追従してその旋回方向に前記カウンタウェイト台車が走行する旋回走行モードと、前記下部走行体の走行に追従して当該下部走行体と並進するように前記カウンタウェイト台車が走行する並進走行モードと、を含み、前記旋回制動制御部は、前記旋回走行モードにおいて旋回停止保持指令が与えられたときは前記上部旋回体の旋回に対して旋回停止保持用制動力を与え、前記並進走行モードにおいて少なくとも前記カウンタウェイト台車が前記下部走行体の側方に位置する状態で当該下部走行体と並進するときには前記上部旋回体の旋回に対して前記旋回停止保持用制動力よりも弱い並進走行用制動力を与えるように、当該制動力の切換を行う、移動式クレーン。
請求項1または2記載の移動式クレーンであって、前記旋回制動装置は、前記上部旋回体の旋回に対して第1の制動力を与える状態と当該第1の制動力を解除する状態とに選択的に切換えられる旋回パーキングブレーキと、前記旋回パーキングブレーキとは別のブレーキであって入力された制動力指令に対応する制動力を前記上部旋回体の旋回に対して与える旋回ポジブレーキと、前記制動力指令を入力するための操作を受けて当該操作に対応した制動力指令を前記旋回ポジブレーキに入力させる制動操作部と、前記旋回ポジブレーキに与えられる制動力指令を前記制動操作部に与えられる操作にかかわらず前記上部旋回体に対して前記第1の制動力よりも弱い第2の制動力を与える制動力指令に強制的に切換える強制制動切換部と、を含む、移動式クレーン。
請求項4記載の移動式クレーンであって、前記複数の台車走行モードは、前記上部旋回体の旋回に追従してその旋回方向に前記カウンタウェイト台車が走行する旋回走行モード及び前記下部走行体の走行に追従して当該下部走行体と並進するように前記カウンタウェイト台車が走行する並進走行モードを含み、前記旋回制動制御部は、前記旋回走行モードにおいて旋回停止保持指令が与えられたときは少なくとも前記旋回パーキングブレーキに前記第1制動力を付与させ、前記並進走行モードにおいて少なくとも前記カウンタウェイト台車が前記下部走行体の側方に位置する状態で当該下部走行体と並進するときには前記旋回パーキングブレーキによる前記第1制動力の付与を解除するとともに前記強制制動切換部を作動させて前記制動操作部に与えられる操作にかかわらず前記上部旋回体の旋回に対して前記旋回ポジブレーキに前記第2制動力を付与させる、移動式クレーン。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る移動式クレーンを示す。この移動式クレーンは、クレーン本体3と、カウンタウェイト台車14と、を備える。クレーン本体3は、下部走行体10と、上部旋回体12と、を有する。カウンタウェイト台車14は、前記クレーン本体3の安定性を高めてその吊り能力を向上させるものであり、当該クレーン本体3に連結された状態で当該クレーン本3体の動きに追従して走行することが可能である。
【0019】
前記下部走行体10は、走行フレーム13と、この走行フレーム13の左右方向、つまり車幅方向、の両外側にそれぞれ位置する一対のクローラ11と、を有し、当該クローラ11の作動により、
図2〜
図5に矢印A1に示されるような下部走行体10の前後方向に沿って走行面G上を自走する。当該前後方向は、前記各クローラ11の長手方向に一致する方向であり、前記車幅方向に対して直交する方向である。
【0020】
前記上部旋回体12は、
図1に示すような旋回フレーム15、ブーム16及びマスト18を有する。
【0021】
前記旋回フレーム15は、旋回可能となるように下部走行体10上に搭載される。この実施の形態に係る前記旋回フレーム15は、前記下部走行体10の走行方向に対して直交する縦方向の(例えば前記走行面Gに対して直交する)旋回中心軸C1回りに旋回可能となるように、前記走行フレーム13に取付けられる。この旋回フレーム15には、
図2〜
図5において矢印A2に示されるように、前記下部走行体10の前後方向と独立した前後方向(上部旋回体12の前後方向)が設定されている。
【0022】
前記ブーム16は、上部旋回体12の左右方向(前後方向と直交する方向)と平行な起伏回動軸の回りの回動による起伏動作を行うことが可能となるように、前記旋回フレーム15の前端部に取付けられている。すなわち、ブーム16は、前記旋回フレーム15の前端部に前記起伏回動軸回りに回動可能に連結される基端部と、その反対側の端部である先端部と、を有する。前記先端部からはロープ19を介して吊り具20が吊り下げられ、この吊り具20に吊り荷が係合される。
【0023】
前記マスト18は、前記ブーム16を起伏させるための部材である。当該マスト18は、上部旋回体12に搭載された図略のマスト起伏装置によって起伏させられ、これに連動するように前記ブーム16を起伏させる。具体的に、マスト18は、前記旋回フレーム15の前後方向の中間部位に回動可能に連結される基端部と、その反対側の先端部と、を有し、当該先端部がブームガイライン22を介して前記ブーム16の先端部に接続されている。従って、マスト18は、起立状態の前記ブーム16を後方から前記ブームガイライン22を介して支えることが、可能である。
【0024】
前記カウンタウェイト台車14は、台車本体27と、当該台車本体27の上に搭載されるカウンタウェイト28と、当該台車本体27の下側に配置される一対の車輪ユニット30A,30Bと、を有し、前記上部旋回体12における旋回フレーム15の後方に配置される。
【0025】
前記台車本体27は、
図1に示されるような上下方向の台車ガイライン24を介して前記マスト18の先端部に連結されるとともに、連結部材である連結ビーム26を介して当該上部旋回体12の旋回フレーム15の後部に連結され、これにより、吊り作業時に上部旋回体12の前部にかかる吊荷重やブーム16の荷重等とのバランスを取ってクレーン2の安定性を高め、それによってクレーン2の吊り能力を向上させる。
【0026】
前記連結ビーム26は、その長手方向に伸縮可能な構造、例えばテレスコープ式の構造、を有し、当該伸縮によって前記旋回フレーム15と前記カウンタウェイト台車14との距離の変更を可能にする。当該連結ビーム26の長さは、カウンタウェイト台車14の走行時には固定される。この固定は、例えば前記連結ビーム26が前記テレスコープ式の構造、つまり互いに嵌合しながら連結ビーム26の長手方向に摺動可能な複数の箱部材からなる構造、を有する場合、当該箱部材同士をボルト等で締結することにより、行われる。
【0027】
前記各車輪ユニット30A,30Bは、互いに同じ方向を向く複数の車輪32と、これらの車輪32を支持する図略の車輪支持フレームと、を含む。前記各車輪32は、カウンタウェイト台車14が前記下部走行体10とは独立して自走するように回転することが可能である。具体的に、各車輪32は、前記旋回中心軸C1に対して直交する基準面上を転動できるように、当該基準面と平行な(例えば前記走行面Gと平行な)回転中心軸回りに回転するように、前記車輪支持フレームに支持される。
【0028】
さらに、前記各車輪ユニット30A,30Bは、前記車輪32の向きを一括して変更するように作動することが可能であり、当該向きの変更により、複数の台車走行モードを有することが可能である。具体的に、当該車輪ユニット30A,30Bは、前記旋回中心軸C1と平行な縦方向の操向軸C2回りに旋回可能となるように前記台車本体27に取付けられており、当該操向軸C2回りの旋回によって前記各車輪32の向きが一括して変更される。
【0029】
前記複数の台車走行モードは、この実施の形態では、
図2〜
図4に示すようなA)並進走行モードと、
図5に示すようなB)旋回走行モードと、C)単独走行モードと、を含む。
【0030】
A)並進走行モードは、前記上部旋回体12の旋回角度が任意の角度にあり、かつ、前記各車輪32の向きが前記下部走行体10の前後方向と合致した状態で当該車輪32が回転駆動されることにより、当該下部走行体10の走行に追従してカウンタウェイト台車14が走行するモードである。つまり、この並進走行モードでは、カウンタウェイト台車14は下部走行体10と同じ方向に進行する、すなわち並進する、ように駆動される。
【0031】
B)旋回走行モードは、前記各車輪32の向きが前記上部旋回体12の旋回方向と合致した状態で当該車輪32が回転駆動されることにより、前記上部旋回体12の旋回に追従してカウンタウェイト台車14が走行するモードである。つまり、この旋回走行モードでは、カウンタウェイト台車14は上部旋回体12の旋回中心軸C1を中心とする円弧状の軌道に沿って走行するように、駆動される。
【0032】
C)単独走行モードは、前記クレーン本体3が停止した状態で前記カウンタウェイト台車14のみが単独で走行するモードであり、前記伸縮ブーム26を伸縮させる(つまり旋回フレーム15とカウンタウェイト台車14との距離を変更する)ために用いられる。また、この単独走行モードの他、D)台車停止モードであってカウンタウェイト台車14が停止した状態で下部走行体10の走行のみが行われるモードが設定されてもよい。このモードも、前記伸縮ブーム26の伸縮に用いられることが可能である。
【0033】
次に、この移動式クレーンに搭載される駆動制御系について、
図6を参照しながら説明する。
【0034】
前記クレーン本体3には、
図6に示すようなクローラ駆動装置33、走行操作装置34、旋回操作装置36、旋回駆動装置38、旋回角度検出器39、旋回制動装置40、旋回停止保持スイッチ41、モード選択装置42及び本体側制御部44が搭載されている。
【0035】
前記クローラ駆動装置33は、下部走行体10を走行させる走行駆動装置であって、前記一対のクローラ11を駆動することにより下部走行体10を自走させる。
【0036】
前記走行操作装置34は、クレーン本体3の走行(前進又は後進)及び走行停止を指示するために用いられるものであり、前記上部旋回体12に含まれる図略の運転室内に設けられている。走行操作装置34は、走行操作レバー34aと、操作装置本体34bと、を有する。走行操作レバー34aには、下部走行体10の走行方向及び走行速度を指定するための回動操作が与えられる。操作装置本体34bは、前記走行操作レバー34aに与えられる操作の方向に対応した走行方向及び当該操作の量に対応する走行速度についての指令信号を生成し、前記本体側制御部44に入力する。
【0037】
前記旋回操作装置36は、上部旋回体12の旋回駆動及び旋回停止を指示するために用いられるものであり、前記運転室内に設けられている。旋回操作装置36は、旋回操作レバー36aと、操作装置本体36bと、を有する。旋回操作レバー36aには、上部旋回体12の旋回方向及び旋回速度を指定するための回動操作が与えられる。操作装置本体36bは、前記旋回操作レバー36aに与えられる操作の方向に対応した旋回方向及び当該操作の量に対応する旋回速度についての指令信号を生成し、前記本体側制御部44に入力する。
【0038】
旋回駆動装置38は、上部旋回体12(の旋回フレーム15)を前記旋回中心軸C1回りに旋回させる装置であり、
図7に示すような旋回モータ58、減速機60、油圧ポンプ62及び旋回制御回路64を含む。
【0039】
前記旋回モータ58は、一対のポートと、出力軸と、を有する油圧モータであり、当該出力軸は、前記減速機60を介して前記旋回フレーム15に連結されている。当該出力軸は、前記油圧ポンプ62から前記旋回制御回路64を通じて前記旋回モータ58のいずれかのポートに作動油が供給されることにより、その供給されたポートに対応する方向に回転し、これにより、当該方向に前記旋回フレーム15を旋回させる。これと同時に旋回モータ58は他方のポートから作動油を吐出し、この作動油は前記旋回制御回路64を通じてタンクTに戻される。
【0040】
前記旋回制御回路64は、前記旋回モータ58と前記油圧ポンプ62との間に介在し、前記本体側制御部44からの指令信号の入力を受けて当該油圧ポンプ62から当該旋回モータ58への作動油の供給の向き及び流量を変化させる。当該旋回制御回路64は、例えば、前記油圧ポンプ62と前記旋回モータ58との間の油路を切換えるためのパイロット切換弁からなるコントロールバルブ、当該コントロールバルブにパイロット圧を供給するパイロットライン、及び当該パイロットラインに設けられる電磁比例減圧弁を含み、当該電磁比例減圧弁に前記本体側制御部44からの速度指令信号が入力されることにより、前記作動油の供給方向及び供給流量の制御、すなわち前記旋回フレーム15の旋回方向及び旋回流量の制御が行われる。
【0041】
前記旋回角度検出器39は、前記旋回フレーム15の旋回角度に対応する検出信号を生成し、前記本体側制御部44に入力する。この検出信号は、前記旋回駆動装置38による旋回駆動の制御に供される。
【0042】
前記旋回制動装置40は、前記上部旋回体12の旋回を制動するための装置であり、この実施の形態では、
図7に示すような旋回パーキングブレーキ66、旋回ポジブレーキ68、パーキングブレーキ用油圧源70、パーキングブレーキ用切換弁72、ポジブレーキ用油圧源74、ブレーキペダル75及びポジブレーキモード切換回路76、を含む。
【0043】
前記旋回パーキングブレーキ66は、いわゆるネガブレーキであり、前記パーキングブレーキ用油圧源70からの作動油の供給を受けないときに前記旋回モータ58(の例えば旋回出力軸)に前記上部旋回体12の旋回停止を保持するための所定の大きさの旋回停止保持用制動力である第1制動力Fb1(例えば120kgf・m)を与え(ブレーキON)、前記作動油の供給を受けると当該制動力の付与を解除する(ブレーキOFF)。前記パーキングブレーキ用切換弁72は、例えば電磁切換弁からなり、前記旋回パーキングブレーキ66と前記パーキングブレーキ用油圧源70との間に介在する。当該パーキングブレーキ用切換弁72は、前記本体側制御部44から入力される切換指令信号に応じて開閉動作する。つまり、前記パーキングブレーキ用油圧源70から前記旋回パーキングブレーキ66への前記作動油の供給を許容する状態と阻止する状態とに切換えられる。
【0044】
前記旋回ポジブレーキ68は、前記ポジブレーキ用油圧源74からの作動油の供給を受けて、つまり制動力指令であるブレーキ圧の入力を受けて、前記旋回モータ58の出力軸に係合するブレーキディスク73に、前記ブレーキ圧に対応した大きさの制動力であって前記上部旋回体12の旋回に対する制動力を付与する。
【0045】
前記ブレーキペダル75は、前記運転室内に設けられ、前記旋回ポジブレーキ68による制動力を指令するための操作(例えば踏込み操作)を受ける。
【0046】
前記ポジブレーキモード切換回路76は、前記旋回ポジブレーキ68に制動力指令(前記ブレーキ圧)を与えるモードを、前記ブレーキペダル75に与えられる操作に対応した制動力指令を与える通常操作モードと、当該ブレーキペダル75の操作量にかかわらず、前記ブレーキペダル75に与えられる制動力指令(ブレーキ圧)を予め設定された制動力指令に強制的に切換える強制指令モードと、に切換えるものである。具体的に、このポジブレーキモード切換回路76は、前記通常操作モードにおいて用いられる第1ブレーキ圧供給ライン78Aと、前記強制指令モードにおいて用いられる第2ブレーキ圧供給ライン78Bと、を併有し、両供給ライン78A,78Bは前記ポジブレーキ用油圧源74と前記旋回ポジブレーキ68との間で互いに並列に配置されている。
【0047】
前記第1ブレーキ圧供給ライン78Aには、その上流側から順に、ブレーキ弁80及び第1開閉弁82Aが設けられている。
【0048】
前記ブレーキ弁80は、手動操作式の減圧弁であり、前記ブレーキペダル75に機械的に接続され、当該ブレーキ弁80の二次圧(ブレーキ圧)を前記ブレーキペダル75の操作量に対応した圧力に調整する。従って、当該ブレーキ弁80は、前記ブレーキペダル75とともに、当該ブレーキペダルに与えられた操作に応じた制動力指令を前記制動ポジブレーキ68に入力させる制動操作部を構成する。
【0049】
前記第1開閉弁82Aは、2位置パイロット切換弁からなり、前記第1ブレーキ圧供給ライン78Aを開通する開位置と遮断する閉位置とを有する。第1開閉弁82Aは、当該第1開閉弁82Aに一定以上のパイロット圧が供給されない時は前記開位置を維持し、当該一定以上のパイロット圧が供給されると前記閉位置に切換えられる。
【0050】
前記第2ブレーキ圧供給ライン78Bには、その上流側から順に、絞り84、ライン切換弁86及び第2開閉弁82Bが設けられ、前記ライン切換弁86の二次側にライン切換用パイロット回路88が接続されている。
【0051】
前記絞り84は、前記第2ブレーキ圧供給ライン78Bにおける流量を制限することにより、この第2ブレーキ圧供給ライン78Bを通じて前記旋回ポジブレーキ68に供給されるブレーキ圧を前記ポジブレーキ用油圧源74の吐出圧よりも低い所定のブレーキ圧に調整する。このブレーキ圧は、前記並進走行モードの際に用いられる並進走行用ブレーキ圧であり、当該並進走行用ブレーキ圧は、前記旋回ポジブレーキ68が前記旋回モータ58に与える制動力を、前記旋回パーキングブレーキ66によって前記旋回モータ58に与えられる前記第1制動力Fb1よりも低い第2制動力Fb2(<Fb1)である並進走行用制動力にするブレーキ圧である。前記第2制動力Fb2は、後述の並進走行時、特に側方並進時、において上部旋回体12の旋回を適度な度合いで拘束するのに適した制動力(例えば90kgf・m)である。この第2制動力Fb2及び前記第1制動力Fb1の具体的な値は、クレーンの仕様に応じて適宜設定される。
【0052】
前記ライン切換弁86は、
図7に示す例では2位置の電磁切換弁86からなり、前記本体側制御部44から入力される切換指令信号に応じて、第1選択位置(
図7の左側位置)と第2選択位置(
図7の右側位置)とに切換えられる。ライン切換弁86は、前記第1選択位置では、前記第2ブレーキ圧供給ライン78Bを遮断するとともに当該第2ブレーキ圧供給ライン78Bのうちの前記ライン切換弁86の二次側のラインをタンクに連通し、前記第2選択位置では前記第2ブレーキ圧供給ライン78Bを開通する。
【0053】
前記第2開閉弁82Bは、2位置パイロット切換弁からなり、前記第2ブレーキ圧供給ライン78Bを開通する開位置と遮断する閉位置とを有する。第2開閉弁82Bは、当該第2開閉弁82Bに一定以上のパイロット圧が供給されない時は前記閉位置を維持し、当該一定以上のパイロット圧が供給されると前記開位置に切換えられる。
【0054】
前記ライン切換用パイロット回路88は、前記ライン切換弁86の二次側の圧力をパイロット圧として前記第1及び第2開閉弁82A,82Bに導くことにより、当該ライン切換弁86の位置切換と連動して前記第1及び第2開閉弁82A,82Bを開閉させる。すなわち、ライン切換用パイロット回路88は、前記ライン切換弁86が前記第1選択位置にあるときは、第1及び第2開閉弁82A,82Bに供給されるパイロット圧を前記ライン切換弁86の二次側の圧力すなわちタンク圧に相当する圧力まで低下させることにより、前記第1開閉弁82Aを開位置に保つとともに前記第2開閉弁82Bを閉位置に保ち、これにより、前記第1ブレーキ圧供給ライン78Aが使用される状態にする一方、前記ライン切換弁86が前記第2選択位置にあるときは、第1及び第2開閉弁82A,82Bに供給されるパイロット圧を前記ライン切換弁86の二次側の圧力すなわち前記並進走行用ブレーキ圧に相当する圧力まで上昇させることにより、前記第1開閉弁82Aを閉位置に切換えるとともに前記第2開閉弁82Bを開位置に切換えて前記第2ブレーキ圧供給ライン78Bが使用される状態にする。
【0055】
従って、この実施の形態に係る前記旋回制動装置40において、前記絞り84、前記ライン切換弁86、前記第1及び第2開閉弁82A,82B及びライン切換用パイロット回路88は、前記ブレーキペダル75の操作にかかわらず前記旋回ポジブレーキ68に与えられる制動力指令であるブレーキ圧を強制的に並進走行用ブレーキ圧に切換える強制制動切換部を構成する。
【0056】
前記旋回停止保持スイッチ41は、前記運転室に設けられ、オン操作を受けたときに旋回停止保持指令を本体側制御部44に入力するものである。
【0057】
前記モード選択装置42は、前記カウンタウェイト台車14の走行について前記のように設定された複数の台車走行モード、すなわち、旋回走行モード、並進走行モード、単独走行モード、及び従動モードの中からオペレータが所望の台車走行モードを選択する、つまり実行されるべき台車走行モードを指定する、ために用いられるモード指定部である。具体的に、モード選択装置42は、選択部46と送信部48とを有する。選択部46は、例えば複数の選択ボタンを含み、オペレータが前記台車走行モードを選択するために行う操作を受ける。送信部48は、選択部46の操作により選択された台車走行モードを指定するためのモード選択信号を前記本体側制御部44に入力する。
【0058】
本体側制御部44は、前記走行操作装置34、前記旋回操作装置36、前記旋回角度検出器39、旋回停止保持スイッチ41及び前記モード選択装置42からそれぞれ入力される信号に基づき、クレーン本体3での各種制御を行う。具体的には次の制御を行う。
【0059】
1)本体側走行駆動制御
本体側制御部44は、走行操作装置34から入力される指令信号(走行指令信号)に基づき、走行制御信号を生成してクローラ駆動装置33に入力し、これにより、前記走行操作装置34の走行操作レバー34aに与えられた操作に対応する走行方向に当該操作に対応する走行速度で下部走行体10を走行させるように、前記クローラ装置11を作動させる。
【0060】
2)旋回駆動制御
本体側制御部44は、旋回操作装置36から入力される指令信号(旋回指令信号)に基づき、旋回制御信号を生成して旋回駆動装置38(の例えば旋回制御回路64)に入力し、これにより、前記旋回操作装置36の旋回操作レバー36aに与えられた操作に対応する旋回方向に当該操作に対応する旋回速度で上部旋回体12を旋回させるように、前記旋回駆動装置38を作動させる。
【0061】
3)モード切換制御及び旋回制動制御
本体側制御部44は、モード選択装置42を用いてオペレータにより選択された台車走行モードを実現するように、台車側制御部56にモード指令信号を入力する。さらに、その選択された台車走行モードに応じて前記旋回制動装置40が前記上部旋回体12の旋回に与える制動力を切換えるように、前記旋回制動装置40に制動制御信号を入力する。これらモード切換制御及び旋回制動制御については、後に詳述する。
【0062】
一方、前記カウンタウェイト台車14は、前記駆動制御系として、
図6に示すような第1操向角度検出器50A、第2操向角度検出器50B、第1操向装置52A、第2操向装置52B、第1走行駆動装置54A、第2走行駆動装置54B、及び台車側制御部56をさらに有する。
【0063】
前記第1及び第2操向角度検出器50A,50Bは、それぞれ、前記第1及び第2車輪ユニット30A,30Bの操向角度、つまり、前記操向中心軸C2回りの回転角度、を検出する。具体的に、第1及び第2操向角度検出器50A,50Bは、対応する車輪ユニット30A,30Bの操向角度に関する検出信号を生成して台車側制御部56に入力する。
【0064】
前記第1及び第2操向装置52A,52Bは、前記一対の車輪ユニット30A,30Bのそれぞれに付設され、対応する車輪ユニット30Aまたは30Bを台車本体27に対して前記操向中心軸C2回りに旋回させて当該車輪ユニットに含まれる複数の車輪32を一体的に操向するものである。各操向装置52A,52Bは、前記車輪ユニット30A,30Bを旋回させる操向用モータと、前記台車側制御部56から入力される指令信号を受けて前記操向用モータの作動を制御する操向制御回路と、を含む。なお、前記カウンタウェイト台車14には複数のジャッキ装置が設けられて当該ジャッキ装置がカウンタウェイト台車14をジャッキアップした状態、つまり各車輪32が走行面Gから浮いた状態、で前記第1及び第2操向装置52A,52Bによる操向が行われることが、好ましい。
【0065】
前記第1及び第2車輪駆動装置54A,54Bは、前記第1及び第2車輪ユニット30A,30Bにそれぞれ付設され、対応する車輪ユニットに属する車輪32のうちの少なくとも一部を台車側制御部56から入力された指令信号に対応する方向に当該指令信号に対応した速度で回転駆動する。
【0066】
前記台車側制御部56は、前記本体側制御部44から入力されるモード指令信号に基づき、つまり前記モード選択装置42を用いて選択された台車走行モードに基づき、当該台車走行モードを実現するように前記各操向装置52A,52B及び各車輪駆動装置54A,54Bの作動を制御する。
【0067】
具体的に、前記のA)並進走行モードが選択された場合、台車側制御部56は、前記各車輪32の向きを前記下部走行体10の前後方向と合致させるように第1及び第2操向装置52A,52Bを作動させ、前記下部走行体10の走行速度に等しい速度でカウンタウェイト台車14を走行させるように前記第1及び第2車輪駆動装置54A,54Bを作動させる。
【0068】
前記のB)旋回走行モードが選択された場合、台車側制御部56は、前記各車輪32の向きを前記上部旋回体12の旋回方向と合致させるように第1及び第2操向装置52A,52Bを作動させ、前記上部旋回体12の旋回角速度と等しい旋回角速度でカウンタウェイト台車14を旋回走行させるように前記第1及び第2車輪駆動装置54A,54Bを作動させる。
【0069】
前記のC)単独走行モード、つまり前記連結ビーム26を伸縮させるためのモード、が選択された場合、台車側制御部56は、前記各車輪32の向きを当該連結ビーム26の伸縮方向と平行な方向(つまり旋回半径方向)に合致させるように第1及び第2操向装置52A,52Bを作動させ、前記走行操作装置34に与えられた操作に対応する向きに当該操作に対応する速度でカウンタウェイト台車14を直進走行させるように前記第1及び第2車輪駆動装置54A,54Bを作動させる。また、前記のD)台車停止モードが選択された場合は、前記各車輪32の回転を阻止する。
【0070】
次に、前記本体側制御部44が行う前記の3)モード切換制御及び旋回制動制御について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
【0071】
前記本体側制御部44は、前記モード切換制御及び旋回制動制御を行うための機能として、
図8に示す台車指令部90及び旋回制動制御部92を有する。
【0072】
前記台車指令部90は、前記モード選択装置42から入力されるモード選択信号に基づき、選択されている台車走行モードを判定し、その台車走行モードについてのモード指令信号を生成して前記台車側制御部56に入力する。従って、当該台車指令部90及び台車側制御部56は、カウンタウェイト台車14が指定された台車走行モードで前記クレーン本体3の動きに追従して走行するように当該カウンタウェイト台車14の動きを制御する台車制御部を構成する。
【0073】
前記旋回制動制御部92は、前記台車指令部90が判定した台車走行モード及び旋回停止保持スイッチ41から入力される旋回停止保持指令に応じて前記旋回制動装置40が前記上部旋回体12の旋回に対して与える制動力を切換えるように、当該旋回制動装置40に制動指令信号を入力する。具体的に、当該旋回制動制御部92は、選択された台車走行モードに応じて、
図6に示される前記旋回制動装置40のパーキングブレーキ用切換弁72及びライン切換弁86にそれぞれ切換指令信号を入力する。
【0074】
この旋回制動制御部92が行う制御動作を
図9に示す。なお、
図9のフローチャートに示される制御動作は、クレーン本体3にカウンタウェイト台車14が連結された場合の制御動作であり、カウンタウェイト台車14が連結されていない場合には通常のクレーンと同様の制動制御動作が実行される。
【0075】
図9において、台車走行モードとして旋回走行モードが選択されている場合(ステップS1でYES)、旋回制動制御部92は、旋回停止保持スイッチ41の操作内容に応じて(ステップS2)制動状態の切換を行う。
【0076】
具体的に、旋回停止保持スイッチ41がオン操作されている場合、つまり旋回停止保持指令が入力されている場合(ステップS2でYES)、旋回制動制御部92は、パーキングブレーキ用切換弁72を開位置にして旋回パーキングブレーキ66に上部旋回体12に対して第1制動力Fb1を付与させるとともに、ライン切換弁86を第2選択位置にすることにより、ブレーキペダル75の操作にかかわらず旋回ポジブレーキ68に並進走行用ブレーキ圧を付与させて当該旋回ポジブレーキ68が上部旋回体12に第2制動力Fb2を付与する状態(強制制動状態)にする(ステップS3)。これにより、上部旋回体12は十分な制動力でもって旋回停止状態に保持される。なお、前記第1制動力Fb1のみでも上部旋回体12の旋回停止状態を十分に保持できる場合には、旋回ポジブレーキ68を通常状態(ブレーキペダル75の操作に対応した制動力を上部旋回体12に付与する状態)に維持してもよい。
【0077】
前記旋回走行モードが選択されている場合において、前記旋回停止保持指令が解除されている場合、つまり旋回停止保持スイッチ41がオン操作されていない場合(ステップS2でNO)、旋回制動制御部92は、パーキングブレーキ用切換弁72を閉位置にして旋回パーキングブレーキ66による制動を解除するとともに、ライン切換弁86を第1選択位置にすることにより、通常制動状態、つまり、旋回ポジブレーキ68にブレーキペダル75の操作に応じたブレーキ圧が付与されて当該旋回ポジブレーキ68が当該ブレーキ圧に応じた制動力を上部旋回体12に付与する状態、にする(ステップS4)。これにより、上部旋回体12の旋回駆動が許容されるとともに、オペレータのブレーキペダル75の操作による制動が有効となる。
【0078】
一方、前記台車走行モードとして並進走行モードが選択されている場合(ステップS1でNOかつステップS5でYES)、旋回制動制御部92は、旋回停止保持スイッチ41の操作にかかわらず、パーキングブレーキ用切換弁72を閉位置にして旋回パーキングブレーキ66による制動を解除するとともに、ライン切換弁86を第2選択位置に切換えてブレーキペダル75の操作にかかわらず旋回ポジブレーキ68に並進走行用ブレーキ圧が付与される状態、つまり、旋回ポジブレーキ68が上部旋回体12の旋回に対して旋回パーキングブレーキ66による第1制動力Fb1よりも弱い第2制動力Fb2を付与する状態(強制制動状態)にする(ステップS6)。この第2制動力Fb2の付与は、連結部材である連結ビーム26またはその他の部位に過大な荷重が加わるのを抑止しながら良好な並進走行を行うことを可能にする。
【0079】
例として、
図4に示されるように下部走行体10の側方にカウンタウェイト台車14が位置する状態(
図4では下部走行体10に対する上部旋回体12の旋回角度が90°である状態)で並進走行、つまり下部走行体10とカウンタウェイト台車14が同じ方向(下部走行体10の前後方向)に走行する側方並進を想定する。この場合、下部走行体10の走行速度とカウンタウェイト台車14の走行速度とが常に完全一致している場合には問題がないが、一時的に両速度の間にずれが生じると、そのずれの分だけ下部走行体10に対してカウンタウェイト台車14が相対変位しようとし、このことが、上部旋回体12の旋回制動状態によっては、連結ビーム26またはその他の部材に対する大きな荷重の付与をもたらすおそれがある。
【0080】
例えば、前記側方並進時に上部旋回体12の旋回に対して全く制動力が付与されていない場合、前記走行速度のずれに起因して上部旋回体12の旋回を伴いながらこれに連結されているカウンタウェイト台車14が下部走行体10に対して相対変位しようとする。しかし、走行時における連結ビーム26の長さは固定されているので、前記相対変位が大きくなるほど前記連結ビーム26またはその周囲の部材に作用する荷重(特に当該連結ビーム26に曲げを生じさせるような向きの荷重)が顕著に増大するおそれがある。
【0081】
一方、前記上部旋回体12の旋回に対して例えば旋回パーキングブレーキ66による第1制動力Fb1のような大きな制動力が付与されると、クレーン本体3及びカウンタウェイト台車14を含めたクレーン全体が剛体化してしまうため、前記走行速度のずれはやはり前記連結ビーム26またはその周辺の部材への大きな荷重の作用をもたらす。この現象は、
図4に示されるように上部旋回体12の旋回角度が90°またはこれに近い角度であるほど、著しい。
【0082】
これに対し、前記側方並進時に上部旋回体12の旋回に対して前記第1制動力Fb1よりも弱い適当な強さの第2制動力Fb2を与えると、下部走行体10の走行速度に対するカウンタウェイト台車14の走行速度のずれを前記上部旋回体12の適度な旋回、すなわち、制動力が全く与えられない状態での自由旋回ではなく、適度な制動力が付与された状態での制限を受けた旋回、によって吸収することが可能であり、これにより、前記連結ビーム26やその他の部位に大きな荷重が作用することを抑止することができる。
【0083】
なお、この実施の形態において、選択された台車走行モードが前記旋回走行モード及び前記並進走行モードのいずれでもない場合(ステップS1,S5でそれぞれNO)、すなわち単独走行モードや台車停止モードが選択されていて連結ビーム26の伸縮が行われる場合、旋回制動制御部92は、旋回パーキングブレーキ66による制動を解除するとともに、旋回ポジブレーキ68を通常制動状態、つまりブレーキペダル75に応じた制動力を上部旋回体12に与える状態、にする(ステップS4)。これらのモードにおける制動力の設定は、適宜変更可能である。また、単独走行モードや台車停止モードは必ずしも台車走行モードに含まれていなくてもよい。
【0084】
以上のように、
図1〜
図9に開示される移動式クレーンによれば、上部旋回体12の旋回に対して台車走行モードに応じた制動力を付与することにより、連結ビーム26その他の部材に過大な荷重が作用するのを抑止しながら各台車走行モードを良好に実行することが可能である。
【0085】
ただし、本発明に係る移動式クレーンは、
図1〜
図9に開示されるものに限られない。本発明は、例えば次のような形態をとることが可能である。
【0086】
a)旋回制動装置について
旋回制動装置は、前記のような旋回パーキングブレーキ66と旋回ポジブレーキ68との組み合わせによるものに限られない。旋回制動装置は、当該旋回制動装置が上部旋回体の旋回に対して付与する制動力の変更が可能であるもの、換言すれば、互いに大きさの異なる少なくとも2種類の制動力を発揮できるものであればよい。例えば、それぞれが互いに異なる制動力を発揮する複数のネガブレーキが組み合わされたものでもよいし、逆に、単一のポジブレーキであってその制動力が連続的に変更可能であるものを備えたものでもよい。例えば、
図7に示される油圧回路において前記絞り84に代えて電磁比例減圧弁が設けられることにより、単一の旋回ポジブレーキ68を用いながら制動力を自在に変更することが、可能である。ただし、
図7に示される旋回制動装置40は、既存の旋回パーキングブレーキ66及び手動操作用の旋回ポジブレーキ68を利用して制動力の切換を行うことができる利点がある。
【0087】
b)並進走行用制動力の付与について
並進走行用制動力の付与は、少なくとも、前記並進走行用モードの中でも特に大きな曲げ荷重が発生しやすい側方並進時、つまり、下部走行体の幅方向の両端よりも当該幅方向の外側にカウンタウェイト台車が位置する状態での並進走行時、に行われればよい。それ以外の並進走行時、例えば下部走行体の直ぐ後方にカウンタウェイト台車が位置する状態での走行時、には、走行速度のずれに起因して連結部材に作用する曲げ荷重は非常に小さく、総じて発生する荷重は側方並進時に比べて比較的小さいので、上部旋回体に大きな制動力、例えば前記旋回パーキングブレーキ66による制動力が与えられてもよい。あるいは制動力が完全に解除されてもよい。
【0088】
c)旋回停止保持指令について
旋回停止保持指令は、前記旋回停止保持スイッチ41のような専用の入力部によって入力されるものに限られない。例えば、前記旋回操作装置36の旋回操作レバー36aが予め設定された一定時間以上中立位置に保持されたことを旋回停止保持指令とみなし、当該中立位置から旋回操作レバー36aが一定量以上操作されたことを旋回停止保持指令の解除とみなしてもよい。