特許第6156452号(P6156452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156452
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/74 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   B66C23/74 E
【請求項の数】3
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-145698(P2015-145698)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-24867(P2017-24867A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 敬博
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−201792(JP,A)
【文献】 特開昭62−175398(JP,A)
【文献】 特開平06−024688(JP,A)
【文献】 特開平07−248002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、その下部走行体上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載されていて吊作業を行うための作業装置を有する上部旋回体とを備えたクレーン本体と、
前記上部旋回体に連結される連結状態と前記上部旋回体から切り離される非連結状態とに切換可能であり、前記連結状態では、カウンタウェイトを搭載して前記クレーン本体の動きに応じて移動可能であるとともに、地面に接触する接地状態と前記作業装置から伝達される荷重により地面から浮き上がる浮上状態とをとり得るカウンタウェイト台車と、
前記カウンタウェイト台車が前記連結状態と前記非連結状態とのうちのいずれの状態であるかを導出する連結状態導出部と、
前記カウンタウェイト台車が前記接地状態と前記浮上状態とのうちのいずれの状態にあるかを検出する浮上検出部と、を備え、
前記クレーン本体は、当該クレーン本体の作動を指示するために操作される操作部と、作動油を吐出する油圧ポンプと、その油圧ポンプから吐出される作動油が供給されることにより当該クレーン本体を作動させる動力を発する本体駆動モータと、前記油圧ポンプと前記本体駆動モータとの間の作動油の供給経路に設けられ、供給されるパイロット圧が増加するにつれて前記本体駆動モータへの作動油の供給流量を増加させるようにストロークが変化する制御弁と、パイロット圧を供給するパイロット圧供給源と、そのパイロット圧供給源から前記制御弁へ供給されるパイロット圧を制御するパイロット圧制御装置と、を有し、
前記カウンタウェイト台車は、前記クレーン本体の動きに応じて当該カウンタウェイト台車を移動させる動力を発する台車駆動モータを有し、
前記パイロット圧制御装置は、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合には前記制御弁に供給されるパイロット圧が前記操作部の操作量の増加に応じて第1の比率で増加するようにパイロット圧を制御し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記接地状態である場合には前記制御弁に供給されるパイロット圧が前記操作部の操作量の増加に応じて前記第1の比率よりも低い第2の比率で増加するようにパイロット圧を制御し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記浮上状態である場合には前記制御弁に供給されるパイロット圧が前記操作部の操作量の増加に応じて前記第2の比率よりも高く且つ前記第1の比率以下の第3の比率で増加するようにパイロット圧を制御する、移動式クレーン。
【請求項2】
前記パイロット圧制御装置は、前記パイロット圧供給源と前記制御弁との間のパイロット圧の供給経路に設けられていて、入力される電流が増加するにつれて前記制御弁に供給されるパイロット圧が増加するようにパイロット圧を調節する電磁比例弁と、前記操作部の操作に応じて前記電磁比例弁に入力する電流を制御することにより前記電磁比例弁を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合には前記操作部の操作量の増加に応じて前記第1の比率で増加する電流を前記電磁比例弁に入力し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記接地状態である場合には前記操作部の操作量の増加に応じて前記第2の比率で増加する電流を前記電磁比例弁に入力し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記浮上状態である場合には前記操作部の操作量の増加に応じて前記第3の比率で増加する電流を前記電磁比例弁に入力する、請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項3】
前記カウンタウェイト台車は、当該カウンタウェイト台車の移動時に前記台車駆動モータによって回転駆動され、前記下部走行体による前記クレーン本体の走行時には前記下部走行体の走行方向を向く走行姿勢になり、前記上部旋回体の旋回時にはその旋回方向に沿う方向を向く旋回姿勢になるように縦軸回りに操向可能な車輪を有し、
前記油圧ポンプは、作動油の吐出流量が変更可能な可変容量型であり、
前記クレーン本体は、前記油圧ポンプを作動させるエンジンと、前記油圧ポンプに作動油の吐出流量を変更させる吐出流量変更装置とを有し、
前記制御部は、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合には、前記エンジンの回転数が最低回転数から上昇するにつれて前記油圧ポンプの作動油の吐出流量が増加するように前記吐出流量変更装置に前記油圧ポンプの作動油の吐出流量を変更させ、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記接地状態であり且つ前記カウンタウェイト台車の前記車輪が前記旋回姿勢である場合には、前記エンジンの回転数が最低回転数からその最低回転数よりも高い所定の回転数までの範囲において、前記油圧ポンプの作動油の吐出流量が前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合の前記油圧ポンプの作動油の吐出流量よりも大きい吐出流量になるように前記吐出流量変更装置に前記油圧ポンプの作動油の吐出流量を設定させる、請求項2に記載の移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行可能なクレーン本体と、そのクレーン本体とともに走行可能なカウンタウェイト台車とを備えた移動式クレーンが知られている。カウンタウェイト台車は、カウンタウェイトを搭載し、クレーン本体の安定性を高めてクレーンの吊能力を向上させるものである。下記特許文献1には、このようなカウンタウェイト台車を備えた移動式クレーンの一例が示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたクレーンは、下部走行体及び上部旋回体を有するクレーン本体と、上部旋回体の後部に連結部材を介して連結されるカウンタウェイト台車とを備えている。
【0004】
下部走行体は、本体走行モータを備えており、その本体走行モータが発する動力によって自走可能となっている。上部旋回体は、縦軸回りに旋回可能となるように下部走行体上に搭載されている。上部旋回体には、ブーム、ブームガイライン、マスト、台車ガイライン、吊具などからなる吊作業用の作業装置が設けられている。また、クレーン本体は、上部旋回体を旋回駆動するための本体旋回モータを備えており、吊作業時等において上部旋回体を旋回させる時には、この本体旋回モータが発する動力により上部旋回体を旋回させる。
【0005】
カウンタウェイト台車は、作業装置にかかる吊負荷を分担するように台車ガイラインを介して作業装置のマストと接続されている。また、カウンタウェイト台車は、複数の車輪と台車走行モータを備えており、台車走行モータが車輪を回転駆動することにより自走可能となっている。また、車輪は、縦軸回りに操向可能となっている。下部走行体によるクレーン本体の走行時には、車輪の向きが下部走行体の前後方向に一致するように車輪が操向された状態で台車走行モータが車輪を回転駆動することによりカウンタウェイト台車がクレーン本体の走行方向と同方向へ走行し、上部旋回体の旋回時には、車輪の向きが上部旋回体の旋回方向に沿うように車輪が操向された状態で台車走行モータが車輪を回転駆動することによりカウンタウェイト台車が上部旋回体の旋回方向と同方向へ走行するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−208796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような移動式クレーンでは、その作動(上部旋回体の旋回や下部走行体によるクレーン本体の走行)に台車走行モータの動力を利用できる場合と利用できない場合とがある。
【0008】
例えば、カウンタウェイト台車は、吊作業用の作業装置から吊負荷を受けて地面から浮き上がる場合がある。この場合には、台車走行モータが車輪を回転駆動したとしても、車輪が接地していないので、上部旋回体の旋回やクレーン本体の走行に台車走行モータの動力を利用できない。一方、カウンタウェイト台車の車輪が接地した状態では、台車走行モータの動力を上部旋回体の旋回やクレーン本体の走行に利用できる。
【0009】
また、移動式クレーンでは、カウンタウェイト台車が常に上部旋回体に連結されているとは限らず、カウンタウェイト台車が上部旋回体から切り離されてクレーン本体単独で作動する場合がある。この場合には、クレーン本体の作動に台車走行モータの動力を利用できない。
【0010】
以上のように上部旋回体に対するカウンタウェイト台車の連結の有無と上部旋回体にカウンタウェイト台車が連結されている状態でのカウンタウェイト台車の接地の有無とに応じて、台車走行モータの動力をクレーン本体の作動に利用できるか否かが異なる。台車走行モータの動力を利用できない場合には、クレーン本体の駆動モータ(本体走行モータ、本体旋回モータ)の動力のみでクレーン本体が作動する必要があり、クレーン本体の作動速度が低下する虞がある。一方、台車走行モータの動力を利用できる場合には、クレーン本体の駆動モータの動力に台車走行モータの動力が加わることで過剰な動力となる虞がある。
【0011】
本発明の目的は、上部旋回体に対するカウンタウェイト台車の連結の有無と上部旋回体にカウンタウェイト台車が連結されている状態でのカウンタウェイト台車の接地の有無とに応じてクレーン本体の作動に適切な動力を供給することが可能な移動式クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明による移動式クレーンは、自走可能な下部走行体と、その下部走行体上に縦軸回りに旋回可能となるように搭載されていて吊作業を行うための作業装置を有する上部旋回体とを備えたクレーン本体と、前記上部旋回体に連結される連結状態と前記上部旋回体から切り離される非連結状態とに切換可能であり、前記連結状態では、カウンタウェイトを搭載して前記クレーン本体の動きに応じて移動可能であるとともに、地面に接触する接地状態と前記作業装置から伝達される荷重により地面から浮き上がる浮上状態とをとり得るカウンタウェイト台車と、前記カウンタウェイト台車が前記連結状態と前記非連結状態とのうちのいずれの状態であるかを導出する連結状態導出部と、前記カウンタウェイト台車が前記接地状態と前記浮上状態とのうちのいずれの状態にあるかを検出する浮上検出部と、を備え、前記クレーン本体は、当該クレーン本体の作動を指示するために操作される操作部と、作動油を吐出する油圧ポンプと、その油圧ポンプから吐出される作動油が供給されることにより当該クレーン本体を作動させる動力を発する本体駆動モータと、前記油圧ポンプと前記本体駆動モータとの間の作動油の供給経路に設けられ、供給されるパイロット圧が増加するにつれて前記本体駆動モータへの作動油の供給流量を増加させるようにストロークが変化する制御弁と、パイロット圧を供給するパイロット圧供給源と、そのパイロット圧供給源から前記制御弁へ供給されるパイロット圧を制御するパイロット圧制御装置と、を有し、前記カウンタウェイト台車は、前記クレーン本体の動きに応じて当該カウンタウェイト台車を移動させる動力を発する台車駆動モータを有し、前記パイロット圧制御装置は、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合には前記制御弁に供給されるパイロット圧が前記操作部の操作量の増加に応じて第1の比率で増加するようにパイロット圧を制御し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記接地状態である場合には前記制御弁に供給されるパイロット圧が前記操作部の操作量の増加に応じて前記第1の比率よりも低い第2の比率で増加するようにパイロット圧を制御し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記浮上状態である場合には前記制御弁に供給されるパイロット圧が前記操作部の操作量の増加に応じて前記第2の比率よりも高く且つ前記第1の比率以下の第3の比率で増加するようにパイロット圧を制御する(請求項1)。
【0013】
このクレーンでは、カウンタウェイト台車が上部旋回体に連結された連結状態であり且つカウンタウェイト台車が接地状態である場合には、カウンタウェイト台車が上部旋回体から切り離された非連結状態である場合に比べて、操作部の操作量の増加に対するパイロット圧の増加の比率が低くなる。その結果、パイロット圧が供給される制御弁により調節される本体駆動モータへの作動油の供給流量が少なくなり、クレーン本体の作動のために本体駆動モータが発する動力が小さくなる。カウンタウェイト台車が連結状態で且つ接地状態である場合には、台車駆動モータの動力をクレーン本体の作動に利用できるので、その分、本体駆動モータの動力が小さくなることで、動力が過剰になるのを防ぐことができる。また、カウンタウェイト台車が上部旋回体に連結された連結状態であり且つカウンタウェイト台車が浮上状態である場合には、操作部の操作量の増加に対するパイロット圧の増加の比率が、カウンタウェイト台車が連結状態で且つ接地状態である場合の同比率よりも高くなるとともに、カウンタウェイト台車が非連結状態である場合の同比率以下になる。その結果、制御弁により調節される本体駆動モータへの作動油の供給流量が、カウンタウェイト台車が連結状態で且つ接地状態である場合の本体駆動モータへの作動油の供給流量よりも多く、且つ、カウンタウェイト台車が非連結状態である場合の本体駆動モータへの作動油の供給流量以下になり、クレーン本体の作動のために本体駆動モータが発する動力がカウンタウェイト台車が連結状態で且つ接地状態である場合に本体駆動モータが発する動力よりも大きく且つカウンタウェイト台車が非連結状態である場合に本体駆動モータが発する動力以下になる。カウンタウェイト台車が浮上状態である場合には、台車駆動モータの動力をクレーン本体の作動に利用できないが、その代わりに本体駆動モータの動力が大きくなることでクレーン本体の作動速度が低下するのを抑制できる。また、本体駆動モータの動力が大きくなっても、その動力はカウンタウェイト台車が非連結状態である場合に本体駆動モータが発する動力以下であるため、動力が過剰になるのを防ぐことができる。以上のように、このクレーンでは、上部旋回体に対するカウンタウェイト台車の連結の有無と上部旋回体にカウンタウェイト台車が連結されている状態でのカウンタウェイト台車の接地の有無とに応じてクレーン本体の作動に適切な動力を供給することができる。
【0014】
前記移動式クレーンにおいて、前記パイロット圧制御装置は、前記パイロット圧供給源と前記制御弁との間のパイロット圧の供給経路に設けられていて、入力される電流が増加するにつれて前記制御弁に供給されるパイロット圧が増加するようにパイロット圧を調節する電磁比例弁と、前記操作部の操作に応じて前記電磁比例弁に入力する電流を制御することにより前記電磁比例弁を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合には前記操作部の操作量の増加に応じて前記第1の比率で増加する電流を前記電磁比例弁に入力し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記接地状態である場合には前記操作部の操作量の増加に応じて前記第2の比率で増加する電流を前記電磁比例弁に入力し、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記浮上状態である場合には前記操作部の操作量の増加に応じて前記第3の比率で増加する電流を前記電磁比例弁に入力してもよい(請求項2)。
【0015】
この構成によれば、前記移動式クレーンにおけるパイロット圧制御装置を具体化することができる。
【0016】
前記移動式クレーンにおいて、前記カウンタウェイト台車は、当該カウンタウェイト台車の移動時に前記台車駆動モータによって回転駆動され、前記下部走行体による前記クレーン本体の走行時には前記下部走行体の走行方向を向く走行姿勢になり、前記上部旋回体の旋回時にはその旋回方向に沿う方向を向く旋回姿勢になるように縦軸回りに操向可能な車輪を有し、前記油圧ポンプは、作動油の吐出流量が変更可能な可変容量型であり、前記クレーン本体は、前記油圧ポンプを作動させるエンジンと、前記油圧ポンプに作動油の吐出流量を変更させる吐出流量変更装置とを有し、前記制御部は、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合には、前記エンジンの回転数が最低回転数から上昇するにつれて前記油圧ポンプの作動油の吐出流量が増加するように前記吐出流量変更装置に前記油圧ポンプの作動油の吐出流量を変更させ、前記連結状態導出部によって導出された状態が前記連結状態であり且つ前記浮上検出部によって検出された状態が前記接地状態であり且つ前記カウンタウェイト台車の前記車輪が前記旋回姿勢である場合には、前記エンジンの回転数が最低回転数からその最低回転数よりも高い所定の回転数までの範囲において、前記油圧ポンプの作動油の吐出流量が前記連結状態導出部によって導出された状態が前記非連結状態である場合の前記油圧ポンプの作動油の吐出流量よりも大きい吐出流量になるように前記吐出流量変更装置に前記油圧ポンプの作動油の吐出流量を設定させる(請求項3)。
【0017】
この構成によれば、クレーン本体の油圧ポンプ周辺の油圧系統が本体駆動モータ側からの作動油の逆流によって破損するのを防止することができる。具体的に、カウンタウェイト台車が連結状態で且つ接地状態であり且つそのカウンタウェイト台車の車輪が旋回姿勢になって上部旋回体の旋回とともにカウンタウェイト台車が上部旋回体の旋回方向へ移動する場合に、カウンタウェイト台車の旋回方向への移動速度が本体駆動モータの駆動により生じる上部旋回体の旋回速度を上回って上部旋回体が旋回方向に移動するカウンタウェイト台車によって引っ張られて旋回させられる状態になる場合がある。この状態において、仮に、カウンタウェイト台車が非連結状態である場合になされるようにエンジンの回転数が最低回転数付近まで低下したときに油圧ポンプの作動油の吐出流量が非常に小さい流量まで低下すると、本体駆動モータがポンプとして機能して油圧ポンプ側が本体駆動モータ側に対して負圧になって本体駆動モータから油圧ポンプ側へ作動油が逆流する場合があり、その結果、油圧ポンプ周辺の油圧系統が破損する虞がある。これに対し、本構成では、カウンタウェイト台車が連結状態且つ接地状態で且つそのカウンタウェイト台車の車輪が旋回姿勢にある場合には、エンジンの回転数が最低回転数からその最低回転数よりも高い所定の回転数までの範囲において、油圧ポンプの作動油の吐出流量が、カウンタウェイト台車が非連結状態である場合の油圧ポンプの作動油の吐出流量よりも大きい吐出流量になるので、前述のように上部旋回体がカウンタウェイト台車によって旋回方向に引っ張られて旋回させられる状態になった場合であっても、本体駆動モータがポンプとして機能して油圧ポンプ側が本体駆動モータ側に対して負圧になるのを抑制でき、本体駆動モータから油圧ポンプ側への作動油の逆流を防止できる。その結果、クレーン本体の油圧ポンプ周辺の油圧系統の破損を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、上部旋回体に対するカウンタウェイト台車の連結の有無と上部旋回体にカウンタウェイト台車が連結されている状態でのカウンタウェイト台車の接地の有無とに応じてクレーン本体の作動に適切な動力を供給することが可能な移動式クレーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による移動式クレーンの概略的な側面図であってカウンタウェイト台車が連結状態且つ接地状態にある状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による移動式クレーンの概略的な側面図であってカウンタウェイト台車が連結状態且つ浮上状態にある状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による移動式クレーンの概略的な側面図であってカウンタウェイト台車が非連結状態にある状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による移動式クレーンのカウンタウェイト台車を後側から見た図である。
図5】移動式クレーンの制御システムの機能ブロック図である。
図6】旋回体駆動装置の油圧回路図である。
図7】カウンタウェイト台車の浮上検出部を示す図である。
図8】旋回操作レバーの中立位置からの操作量と切換弁に入力する電流値との相関関係を示す図である。
図9】エンジン回転数と油圧ポンプの吐出流量と傾転角調節比例弁に入力する電流値との相関関係を示す図である。
図10】上部旋回体の旋回時の制御プロセスを示すフローチャートである。
図11】油圧ポンプの作動油の吐出流量の制御プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図9を参照して、本発明の一実施形態による移動式クレーン2について説明する。なお、以下、移動式クレーン2を単にクレーン2と称する。
【0021】
本実施形態によるクレーン2は、図1に示すように、自走可能に構成されるとともにクレーン作業を行うクレーン本体3と、クレーン本体3の安定性を高めて吊能力を向上するためのカウンタウェイト台車4と、クレーン本体3とカウンタウェイト台車4とを相互に連結する連結ビーム5とを備える。以下、カウンタウェイト台車4を単に台車4と称する。本実施形態によるクレーン2は、台車4が連結ビーム5を介してクレーン本体3の上部旋回体7(後述)に連結された連結状態(図1及び図2参照)と、台車4が上部旋回体7から切り離されてクレーン本体3単体となった非連結状態(図3参照)とをとり得るように構成されている。
【0022】
クレーン本体3は、下部走行体6と、上部旋回体7と、旋回体駆動装置8(図5参照)と、走行操作装置9と、旋回操作装置10と、エンジン12と、回転数検出部13と、油圧ポンプ14と、吐出流量変更装置15と、を備えている。
【0023】
下部走行体6(図1参照)は、クローラ式であり、自走可能に構成されている。下部走行体6は、その車幅方向の両側部(左右両側部)に分かれて配置された一対のクローラ装置20を備えている。各クローラ装置20は、図略の油圧モータ、図略の制御弁及び図略の切換弁等を有する図略の駆動装置を有する。この駆動装置の構成は、後述する旋回体駆動装置8の構成と同様である。各クローラ装置20は、その油圧モータに作動油が供給されて当該油圧モータが動力を発することにより作動し、下部走行体6を自走させるようになっている。
【0024】
エンジン12(図5参照)、回転数検出部13(図5参照)、油圧ポンプ14(図6参照)及び吐出流量変更装置15(図6参照)は、下部走行体6に搭載されている。
【0025】
エンジン12は、油圧ポンプ14へ動力を供給して油圧ポンプ14を作動させる。回転数検出部13は、エンジン12の回転数を検出するものであり、エンジン12に付設されている。回転数検出部13は、検出した回転数のデータを後述の本体側制御部82へ送信するようになっている。
【0026】
油圧ポンプ14は、各クローラ装置20の油圧モータ、旋回体駆動装置8の旋回モータ36、台車4の操向装置55の操向用モータ、及び、台車4の車輪駆動モータ62へ供給する作動油を吐出するものである。油圧ポンプ14は、エンジン12から動力が供給されることによって作動し、作動油を吐出する。
【0027】
油圧ポンプ14は、作動油の吐出流量が変更可能な可変容量型である。具体的には、油圧ポンプ14は、傾転角を変更可能な斜板14a(図6参照)を有しており、この斜板14aの傾転角が変化することで当該油圧ポンプ14の容量が変化して当該油圧ポンプ14が吐出する作動油の流量が変化するようになっている。具体的には、斜板14aの傾転角が増加するにつれて油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が増加するようになっている。
【0028】
吐出流量変更装置15は、斜板14aの傾転角を変更することによって油圧ポンプ14に作動油の吐出流量を変更させるものである。この吐出流量変更装置15は、傾転角調節機構15aと、傾転角調節比例弁15bとを有する。
【0029】
傾転角調節機構15aは、油圧ポンプ14の斜板14aに接続されており、その斜板14aの傾転角を変更するための機構である。傾転角調節機構15aは、供給される油圧の大きさに応じて斜板14aの傾転角を調節する。具体的には、傾転角調節機構15aは、供給される油圧が増加するにつれて斜板14aの傾転角を減少させるようになっている。
【0030】
傾転角調節比例弁15bは、傾転角調節機構15aに油圧ポンプ14の斜板14aの傾転角を調節させるために、傾転角調節機構15aに供給される油圧を調節する電磁比例弁である。傾転角調節比例弁15bは、傾転角調節機構15aと油圧源22との間の油圧の供給経路に設けられている。傾転角調節比例弁15bには、本体側制御部82(後述)から電流が入力されるようになっている。傾転角調節比例弁15bは、油圧源22から傾転角調節機構15aへ供給される油圧の大きさを当該傾転角調節比例弁15bに入力される電流の大きさに応じた大きさにする。具体的には、傾転角調節比例弁15bは、入力される電流が増加するにつれて傾転角調節機構15aに供給される油圧を増加させる。これにより、本体側制御部82(後述)から傾転角調節比例弁15bに入力される電流が増加するにつれて、傾転角調節比例弁15bは傾転角調節機構15aに供給される油圧を増加させ、それに伴って、傾転角調節機構15aは斜板14aの傾転角を減少させて油圧ポンプ14の作動油の吐出流量を減少させるようになっている。傾転角調節比例弁15bに入力される電流の値と油圧ポンプ14の作動油の吐出流量とは、直線的な比例関係にある。
【0031】
上部旋回体7(図1参照)は、縦軸C1回りに旋回可能となるように下部走行体6上に搭載されている。上部旋回体7は、図1図3に示すように、下部走行体6上に旋回可能となるように取り付けられた上部旋回体本体24と、その上部旋回体本体24に搭載された作業装置25とを備える。
【0032】
作業装置25は、吊荷の吊作業を行うための装置である。作業装置25は、ブーム26と、マスト28と、吊具29と、ブームガイライン30と、台車ガイライン32とを備える。
【0033】
ブーム26は、起伏自在となるように上部旋回体本体24の前端部に取り付けられている。このブーム26の先端部から図2に示すようにワイヤロープを介して吊具29が吊り下げられ、この吊具29によって吊荷が吊られる。
【0034】
マスト28は、ブーム26の後側の位置でその基端部(下端部)を支点として水平軸回りに回動可能となるように上部旋回体本体24に取り付けられている。マスト28の先端部(上端部)は、ブームガイライン30を介してブーム26の先端部と接続されている。これにより、マスト28は、起立状態のブーム26を後方からブームガイライン30を介して支える。また、マスト28の先端部は、台車ガイライン32を介して台車4に接続されている。
【0035】
なお、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「前側」は、上部旋回体7のブーム26が設けられた側を意味し、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「後側」は、ブーム26が設けられた側に対して反対側を意味する。また、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「右側」は、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5が一体となった状態でそれらの後側から前側へ向かって見た場合での右側を意味し、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「左側」は、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5が一体となった状態でそれらの後側から前側へ向かって見た場合での左側を意味する。
【0036】
旋回体駆動装置8(図5参照)は、上部旋回体7を縦軸C1回りに旋回駆動する装置である。旋回体駆動装置8は、図6に示すように、旋回モータ36と、油圧回路37と、図略の伝達装置とを備える。
【0037】
旋回モータ36は、油圧モータであり、作動油が供給されることによって作動して上部旋回体7を旋回させる動力を発する。旋回モータ36は、本発明における本体駆動モータの一例である。この旋回モータ36が発する動力を、図略の伝達装置が下部走行体6と上部旋回体本体24との間で伝達して下部走行体6に対して上部旋回体7を旋回させるようになっている。旋回モータ36は、第1給排口36a及び第2給排口36bを有する。旋回モータ36は、第1給排口36aに作動油が供給されることにより上部旋回体7を右回りに旋回させ、第2給排口36bに作動油が供給されることにより上部旋回体7を左回りに旋回させる。
【0038】
油圧回路37は、制御弁38と、供給配管40と、戻し配管41と、第1管路42と、第2管路43とを備える。
【0039】
制御弁38は、油圧ポンプ14と旋回モータ36との間の作動油の供給経路に設けられ、旋回モータ36への作動油の供給流量を制御するものである。制御弁38は、供給されるパイロット圧が増加するにつれて旋回モータ36への作動油の供給流量を増加させるようにストロークが変化する。制御弁38は、供給配管40を介して油圧ポンプ14と接続されるとともに、戻し配管41を介してタンク46と接続されている。また、制御弁38は、第1管路42を介して旋回モータ36の第1給排口36aに接続されるとともに、第2管路43を介して旋回モータ36の第2給排口36bに接続されている。
【0040】
制御弁38は、供給配管40を第1管路42に接続するとともに戻し配管41を第2管路43に接続する第1供給位置38aと、供給配管40を第2管路43に接続するとともに戻し配管41を第1管路42に接続する第2供給位置38bと、供給配管40及び戻し配管41を第1管路42及び第2管路43と接続しない供給停止位置38cとをとり得るように構成されている。
【0041】
制御弁38は、第1パイロットポート39a及び第2パイロットポート39bを有する。制御弁38は、第1パイロットポート39aにパイロット圧が供給されることによって第1供給位置38aになり、第2パイロットポート39bにパイロット圧が供給されることによって第2供給位置38bになり、第1及び第2パイロットポート39a,39bのいずれにもパイロット圧が供給されない場合に供給停止位置38cになるように構成されている。
【0042】
制御弁38は、第1供給位置38aでは、油圧ポンプ14から供給配管40に吐出された作動油を第1管路42へ導き、それによって、第1管路42から旋回モータ36の第1給排口36aへ作動油が供給される。その結果、旋回モータ36が上部旋回体7(図1参照)を右回りに旋回させるように作動し、その旋回モータ36の第2給排口36bから作動油が排出される。また、制御弁38は、第1供給位置38aでは、旋回モータ36の第2給排口36bから第2管路43に排出された作動油をその第2管路43から戻し配管41へ導き、それによって、作動油が戻し配管41を通じてタンク46へ戻る。
【0043】
制御弁38は、第2供給位置38bでは、油圧ポンプ14から供給配管40に吐出された作動油を第2管路43へ導き、それによって、第2管路43から旋回モータ36の第2給排口36bへ作動油が供給される。その結果、旋回モータ36が上部旋回体7を左回りに旋回させるように作動し、その旋回モータ36の第1給排口36aから作動油が排出される。また、制御弁38は、第2供給位置38bでは、旋回モータ36の第1給排口36aから第1管路42に排出された作動油をその第1管路42から戻し配管41へ導き、それによって、作動油が戻し配管41を通じてタンク46へ戻る。
【0044】
制御弁38は、供給停止位置38cでは、供給配管40及び戻し配管41と第1管路42及び第2管路43との接続を遮断し、それによって、油圧ポンプ14から旋回モータ36の第1給排口36a及び第2給排口36bのいずれへも作動油が供給されなくなる。その結果、旋回モータ36の作動が停止し、上部旋回体7を旋回させるための駆動力が上部旋回体7に付与されなくなる。
【0045】
また、油圧回路37には、パイロット圧供給源47とパイロット圧制御装置48が付随して設けられているが、このパイロット圧供給源47とパイロット圧制御装置48については後述する。
【0046】
走行操作装置9(図5参照)は、クレーン本体3の走行(前進又は後進)及び走行停止を指示するために用いられるものであり、上部旋回体7が有する運転室24a(図1参照)内に設けられている。走行操作装置9は、下部走行体6の前方と後方とのうちの一方への走行を指示するために操作される走行操作レバー9aを備える。以下、走行操作レバー9aのことを単にレバー9aと称する。
【0047】
レバー9aは、下部走行体6の走行の停止を指示する中立位置と、中立位置から一方側の位置であって下部走行体6の前方への走行を指示する前進位置と、中立位置から前記一方側と反対側の位置であって下部走行体6の後方への走行を指示する後進位置との間で傾倒操作可能となっている。レバー9aの中立位置から前進位置への操作に応じてクローラ装置20が下部走行体6を前方へ駆動し、レバー9aの中立位置から後進位置への操作に応じてクローラ装置20が下部走行体6を後方へ駆動するようになっている。
【0048】
旋回操作装置10(図5参照)は、上部旋回体7の旋回(右旋回又は左旋回)及び旋回停止を指示するために用いられるものであり、上部旋回体7が有する運転室24a(図1参照)内に設けられている。旋回操作装置10は、上部旋回体7の右旋回と左旋回とのうちの一方の旋回を指示するために操作される旋回操作レバー10aを備える。旋回操作レバー10aは、本発明における操作部の一例である。以下、旋回操作レバー10aのことを単にレバー10aと称する。
【0049】
レバー10aは、上部旋回体7の旋回の停止を指示する中立位置と、中立位置から一方側の位置であって上部旋回体7の右旋回を指示する右旋回位置と、中立位置から前記一方側と反対側の位置であって上部旋回体7の左旋回を指示する左旋回位置との間で傾倒操作可能となっている。レバー10aの中立位置から右旋回位置への操作に応じて旋回体駆動装置8が上部旋回体7を右旋回させ、レバー10aの中立位置から左旋回位置への操作に応じて旋回体駆動装置8が上部旋回体7を左旋回させるようになっている。
【0050】
連結ビーム5(図1参照)は、上部旋回体7(上部旋回体本体24)からその上部旋回体7の後方へ延びている。具体的には、連結ビーム5の前端部が、上部旋回体7の左右方向(水平方向)に延びる図略のピンにより上部旋回体本体24の後端部に結合されており、連結ビーム5は、その上部旋回体本体24の後端部から突出して後方へ上部旋回体本体24の前後方向に沿って延びている。連結ビーム5は、上部旋回体本体24にピン結合されることによって上部旋回体本体24に対して着脱可能となっている。クレーン2の前記連結状態では、連結ビーム5が上部旋回体本体24に結合され、クレーン2の前記非連結状態では、連結ビーム5が上部旋回体本体24から取り外される。連結ビーム5は、上部旋回体本体24にピン結合された状態において、前記ピンを軸として上下に多少回動可能となっている。
【0051】
台車4(図1参照)は、上部旋回体7からその上部旋回体7の後方へ離れた位置に配置されている。台車4は、クレーン本体3の動き(クレーン本体3の走行や上部旋回体7の旋回)に応じて移動可能(自走可能)となっている。台車4は、その上にカウンタウェイト27を積載し、上記のように台車ガイライン32を介して作業装置25のマスト28の先端部と連結されるとともに連結ビーム5を介して上部旋回体本体24の後部と連結されることにより、吊作業時に上部旋回体7の前部にかかる吊荷重やブーム26の荷重等とのバランスを取ってクレーン2の安定性を高め、それによってクレーン2の吊能力を向上するものである。すなわち、台車4には、作業装置25から上部旋回体7の前部にかかる吊荷重やブーム26の荷重等が台車ガイライン32を介して伝達される。台車4に伝達される荷重が比較的小さい場合には、台車4は、図1に示すように地面Gに接触した接地状態になる。一方、台車4に伝達される荷重が非常に大きい場合には、前記のように連結ビーム5が上下に多少回動可能であることから、台車4は、図2に示すように地面Gから浮き上がった浮上状態になる場合がある。
【0052】
台車4は、図4に示すように、台車フレーム52と、一対の車輪ユニット54と、一対の操向装置55と、浮上検出部56と、台車側制御部84とを有する。
【0053】
台車フレーム52は、台車4のベースとなるフレームであり、前記連結状態では連結ビーム5の後部に結合されている。カウンタウェイト27(図1参照)は、この台車フレーム52上に積載される。
【0054】
一対の車輪ユニット54は、台車フレーム52に取り付けられている。一対の車輪ユニット54は、台車フレーム52の下側に配置されるとともに、左右に並んで配置されている。各車輪ユニット54は、ユニットフレーム57と、複数の車輪58とを有する。
【0055】
ユニットフレーム57は、縦軸C2回りに旋回可能となるように台車フレーム52に取り付けられている。これにより、車輪ユニット54が縦軸C2回りに旋回可能となっている。複数の車輪58は、縦軸C2と直交する水平軸回りに双方向に回転可能となるようにユニットフレーム57によって支持されている。
【0056】
一対の車輪ユニット54のうちの一方の車輪ユニット54は、その車輪ユニット54の車輪58をそれらの軸回りに回転駆動する車輪駆動装置60を有する。車輪駆動装置60は、車輪駆動モータ62(図4参照)と、車輪駆動油圧回路63(図5参照)と、台車4に設けられた図略の油圧ポンプとを有する。
【0057】
車輪駆動モータ62は、作動油が供給されることにより、クレーン本体3の動きに応じて台車4を移動させるために車輪58を回転させる駆動力を発する油圧モータである。車輪駆動モータ62は、本発明における台車駆動モータの一例である。
【0058】
車輪駆動油圧回路63は、台車4に設けられた前記図略の油圧ポンプと接続されている。この油圧ポンプは、クレーン2の台車4についての状態が前記連結状態である場合に、クレーン本体3に設けられたタンク46(図6参照)と接続される。当該油圧ポンプは、タンク46から車輪駆動モータ62側へ作動油を送るものであり、車輪駆動油圧回路63は、この油圧ポンプ14から送出された作動油の車輪駆動モータ62への供給流量を制御して、車輪58を回転駆動する車輪駆動モータ62の動作を制御する。
【0059】
操向装置55(図4参照)は、一対の車輪ユニット54のそれぞれに付設されている。各操向装置55は、対応する車輪ユニット54のユニットフレーム57を台車フレーム52に対して縦軸C2回りに旋回させて当該車輪ユニット54の複数の車輪58を一体的に操向するものである。操向装置55は、車輪ユニット54を操向するための動力を発する油圧モータである図略の操向用モータと、その操向用モータの作動を制御する操向制御油圧回路66(図5参照)とを有する。
【0060】
操向制御油圧回路66は、操向用モータへの作動油の供給を制御して、車輪ユニット54を操向する操向用モータの動作を制御するように構成されている。
【0061】
浮上検出部56は、クレーン本体3の上部旋回体7に連結された台車4が地面Gに接触した接地状態と地面Gから浮き上がった浮上状態とのうちのいずれの状態にあるかを検出するものである。この浮上検出部56は、具体的には図7に示すように構成されている。
【0062】
浮上検出部56は、アーム68と、キャスタ69と、リミットスイッチ70とを有する。
【0063】
アーム68は、その一端部が車輪58の回転中心となる水平軸と平行な水平軸回りに回動可能となるようにユニットフレーム57に取り付けられている。これにより、アーム68は、その一端部を支点として上下に回動可能となっている。
【0064】
キャスタ69は、ユニットフレーム57に取り付けられたアーム68の一端部と反対側の端部に取り付けられている。キャスタ69は、アーム68の前記反対側の端部に対して車輪58の回転中心となる水平軸と平行な水平軸回りに相対的に回動可能となるように取り付けられている。キャスタ69は、車輪58の回転中心となる水平軸と平行な水平軸回りに回転可能なキャスタ車輪71を有する。このキャスタ車輪71は、台車4の車輪58が接地状態にある状態では、地面Gに接触して台車4の移動に伴ってその地面G上を転動する。台車4の接地状態では、車輪58が台車4の重量によってたわんだ状態で地面Gに接触するとともに、アーム68が水平に近い位置まで回動した姿勢でキャスタ車輪71が地面Gに接触した状態A(図7参照)となる。一方、台車4の浮上状態では、車輪58はたわみがなくなって地面Gから浮き上がるとともに、アーム68が接地状態での姿勢から下方へ回動した姿勢でキャスタ車輪71が地面Gに接触した状態B(図7参照)となる。前記状態Aから前記状態Bへのアーム68の回動は、キャスタ69の自重によって行われる。
【0065】
リミットスイッチ70は、台車4が浮上状態になったときのアーム68の動きによってその台車4が浮上状態になったことを検知するものである。具体的には、台車4が浮上状態になってアーム68が前記状態Bになった場合に、リミットスイッチ70のレバー70aがアーム68によって押される。リミットスイッチ70は、このレバー70aが押されたことを検知することによって台車4が浮上状態になったことを検知する。また、リミットスイッチ70は、レバー70aがアーム68により押されることによってオンになり、検知信号を台車側制御部84へ出力する。一方、台車4が接地状態でアーム68が前記状態Aになっている場合には、アーム68がリミットスイッチ70のレバー70aから離れていてレバー70aは押されないため、リミットスイッチ70はオフになっている。リミットスイッチ70は、オフになっている状態では検知信号を台車側制御部84へ出力しない。
【0066】
台車側制御部84は、台車4の動作の制御を行うものである。台車側制御部84は、台車4が前記連結状態であるときには通信ラインを介して本体側制御部82(後述)と接続される。台車側制御部84は、台車4が前記連結状態であるときには本体側制御部82から通信ラインを介して当該台車側制御部84へ送信される指令信号に従って台車4の動作を制御する。また、台車側制御部84は、台車4が前記連結状態であるときには通信ラインを介して本体側制御部82へ接続信号を送信する。
【0067】
また、本実施形態では、クレーン本体3は、過負荷演算装置72と、姿勢選択装置74と、パイロット圧供給源47と、パイロット圧制御装置48と、を備える。
【0068】
過負荷演算装置72は、吊作業時に作業装置25にかかる負荷を算出するとともにその負荷がクレーン2の吊能力を超えた過剰な負荷であるか否かを判別するものである。過負荷演算装置72は、クレーン本体3に設けられている。吊作業の実施に先立って図略の入力装置により各種情報が入力されることによって吊作業でのクレーン2の使用パターンが設定される。入力装置により入力される前記各種情報は、例えば、ブーム26の長さについての情報や、台車4が前記連結状態と前記非連結状態のどちらの状態であるかの情報、台車4に積載されたカウンタウェイト27の段数などの情報である。
【0069】
過負荷演算装置72は、設定されたクレーン2の使用パターン及び前記入力装置により入力された前記各種情報に基づいて、クレーン2の吊能力としての荷重値を導出する。そして、過負荷演算装置72は、導出した荷重値が基準値以上であるか否かと本体側制御部82(後述)に台車側制御部84から前記接続信号が入力されているか否かとに基づいて台車4の状態が前記連結状態と前記非連結状態とのうちのいずれの状態であるかを導出する。すなわち、過負荷演算装置72は、本発明における連結状態導出部の一例である。前記連結状態では、過負荷演算装置72により導出されるクレーン2の吊能力の荷重値が高くなり、前記非連結状態では、過負荷演算装置72により導出されるクレーン2の吊能力の荷重値が前記連結状態で導出された荷重値よりも低くなる。過負荷演算装置72には、クレーン2が連結状態である場合と非連結状態である場合とを判別するための吊能力の荷重値に関する基準値が組み込まれている。過負荷演算装置72は、導出した吊能力の荷重値が基準値以上であり且つ本体側制御部82に台車側制御部84から前記接続信号が入力されている場合には、クレーン2は連結状態であると判別し、導出した吊能力の荷重値が基準値よりも小さく且つ本体側制御部82に前記接続信号が入力されていない場合には、クレーン2は非連結状態であると判別する。
【0070】
姿勢選択装置74(図5参照)は、オペレータが台車4の各車輪ユニット54の縦軸C2回りの姿勢を選択するために用いるものであり、クレーン本体3に設けられている。姿勢選択装置74により選択可能な車輪ユニット54の姿勢として、走行姿勢と旋回姿勢とがある。
【0071】
走行姿勢は、下部走行体6によるクレーン本体3の走行時に設定される姿勢であり、車輪ユニット54の各車輪58が下部走行体6の走行方向を向く姿勢である。旋回姿勢は、上部旋回体7の旋回時に設定される姿勢であり、車輪ユニット54の各車輪58が上部旋回体7の旋回方向に沿う方向を向く姿勢である。
【0072】
姿勢選択装置74は、選択部78と、送信部79とを有する。
【0073】
選択部78は、車輪ユニット54の姿勢を選択するために操作する選択ボタン等からなる。すなわち、選択部78の操作により車輪ユニット54に走行姿勢をとらせるか又は旋回姿勢をとらせるかが指示される。
【0074】
送信部79は、選択部78の操作により選択された姿勢を示す信号を本体側制御部82(後述)へ送信するものである。
【0075】
パイロット圧供給源47は、パイロット圧を供給するものであり、パイロット圧制御装置48は、パイロット圧供給源47から制御弁38の第1及び第2パイロットポート39a,39bへ供給されるパイロット圧を制御するものである。
【0076】
パイロット圧制御装置48は、過負荷演算装置72によって導出される台車4の状態が非連結状態である場合には、制御弁38に供給されるパイロット圧がレバー10aの操作量の増加に応じて第1の比率で増加するようにパイロット圧を制御する。また、パイロット圧制御装置48は、過負荷演算装置72によって導出される台車4の状態が連結状態であり且つ浮上検出部56によって検出される台車4の状態が接地状態である場合には、制御弁38に供給されるパイロット圧がレバー10aの操作量の増加に応じて前記第1の比率よりも低い第2の比率で増加するようにパイロット圧を制御する。また、パイロット圧制御装置48は、過負荷演算装置72によって導出される台車4の状態が連結状態であり且つ浮上検出部56によって検出される台車4の状態が浮上状態である場合には、制御弁38に供給されるパイロット圧がレバー10aの操作量の増加に応じて前記第2の比率よりも高く且つ前記第1の比率よりも低い第3の比率で増加するようにパイロット圧を制御する。
【0077】
パイロット圧制御装置48は、右旋回切換弁44と、左旋回切換弁45と、本体側制御部82とを有する。
【0078】
右旋回切換弁44は、制御弁38の第1パイロットポート39aとパイロット圧供給源47との間のパイロット圧の供給経路に設けられており、左旋回切換弁45は、制御弁38の第2パイロットポート39bとパイロット圧供給源47との間のパイロット圧の供給経路に設けられている。右旋回切換弁44及び左旋回切換弁45は、本発明における電磁比例弁の一例である。
【0079】
右旋回切換弁44は、第1パイロットポート39aへのパイロット圧の供給と非供給とを切り換える電磁比例弁であり、左旋回切換弁45は、第2パイロットポート39bへのパイロット圧の供給と非供給とを切り換える電磁比例弁である。右旋回切換弁44は、本体側制御部82(後述)から電流が入力されることにより第1パイロットポート39aへのパイロット圧の供給を許容する開状態になり、電流が入力されない場合には第1パイロットポート39aへのパイロット圧の供給を阻止する閉状態になる。また、左旋回切換弁45は、本体側制御部82(後述)から電流が入力されることにより第2パイロットポート39bへのパイロット圧の供給を許容する開状態になり、電流が入力されない場合には第2パイロットポート39bへのパイロット圧の供給を阻止する閉状態になる。
【0080】
また、右旋回切換弁44は、第1パイロットポート39aに供給されるパイロット圧を当該右旋回切換弁44に入力される電流に応じた大きさの圧力にする。具体的には、右旋回切換弁44は、入力される電流が増加するにつれて第1パイロットポート39aに供給されるパイロット圧が増加するようにパイロット圧を調節する。これにより、右旋回切換弁44に入力される電流が増加するにつれて、制御弁38を通じて旋回モータ36の第1給排口36aへ供給される作動油の流量が増加し、それに伴って、上部旋回体7を右回りに旋回させる旋回モータ36の駆動力が増加するようになっている。
【0081】
また、左旋回切換弁45は、第2パイロットポート39bに供給されるパイロット圧を当該左旋回切換弁45に入力される電流に応じた大きさの圧力にする。具体的には、左旋回切換弁45は、入力される電流が増加するにつれて第2パイロットポート39bに供給されるパイロット圧が増加するようにパイロット圧を調節する。これにより、左旋回切換弁45に入力される電流が増加するにつれて、制御弁38を通じて旋回モータ36の第2給排口36bへ供給される作動油の流量が増加し、それに伴って、上部旋回体7を左回りに旋回させる旋回モータ36の駆動力が増加するようになっている。
【0082】
本体側制御部82は、クレーン本体3の動作の制御を行う。本体側制御部82は、本発明における制御部の一例である。また、本体側制御部82は、台車側制御部84へ指令信号を送信してその指令信号に応じた台車4の動作の制御を台車側制御部84に実行させる。
【0083】
具体的に、本体側制御部82は、選択部78の操作により走行姿勢が選択されてその走行姿勢が選択されたことを示す信号を送信部79から受信したことに応じて、台車側制御部84へ指令信号を送信して台車側制御部84に各操向装置55を制御させて、車輪ユニット54が走行姿勢をとるように各操向装置55に車輪ユニット54を操向させる。また、本体側制御部82は、選択部78の操作により旋回姿勢が選択されてその旋回姿勢が選択されたことを示す信号を送信部79から受信したことに応じて、台車側制御部84へ指令信号を送信して台車側制御部84に各操向装置55を制御させて、車輪ユニット54が旋回姿勢をとるように各操向装置55に車輪ユニット54を操向させる。
【0084】
本体側制御部82は、レバー9aが中立位置から前進位置へ操作された場合には、それに応じて、下部走行体6がその前方へ走行するように各クローラ装置20を作動させるとともに、下部走行体6の前方への台車4の走行を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。台車側制御部84は、この指令信号を受けて台車4が下部走行体6の前方へ走行するように車輪駆動装置60に車輪58を回転駆動させる。また、本体側制御部82は、レバー9aが中立位置から後進位置へ操作された場合には、それに応じて、下部走行体6がその後方へ走行するように各クローラ装置20を作動させるとともに、下部走行体6の後方への台車4の走行を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。台車側制御部84は、この指令信号を受けて台車4が下部走行体6の後方へ走行するように車輪駆動装置60に車輪58を回転駆動させる。
【0085】
また、本体側制御部82は、レバー10aが中立位置から右旋回位置へ操作された場合には、それに応じて、旋回体駆動装置8に上部旋回体7を右旋回させるとともに、その上部旋回体7の旋回方向への台車4の移動を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。台車側制御部84は、この指令信号を受けて台車4が上部旋回体7の右旋回方向へ移動するように車輪駆動装置60に車輪58を回転駆動させる。また、本体側制御部82は、レバー10aが中立位置から左旋回位置へ操作された場合には、それに応じて、旋回体駆動装置8に上部旋回体7を左旋回させるとともに、その上部旋回体7の旋回方向への台車4の移動を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。台車側制御部84は、この指令信号を受けて台車4が上部旋回体7の左旋回方向へ移動するように車輪駆動装置60に車輪58を回転駆動させる。
【0086】
本体側制御部82は、旋回体駆動装置8に上部旋回体7を旋回させる際、右旋回切換弁44と左旋回切換弁45のうちレバー10aが操作された側に対応する方の切換弁に電流を入力してその切換弁に制御弁38の第1パイロットポート39a及び第2パイロットポート39bのうち対応する方のパイロットポートへのパイロット圧の供給を許容させる。これにより、制御弁38が、第1供給位置38aと第2供給位置38bのうちパイロット圧が供給された方のパイロットポートに対応する供給位置になり、旋回モータ36の第1給排口36aと第2給排口36bのうち制御弁38がなった供給位置に対応する方の給排口へ作動油が供給される。その結果、旋回モータ36が、レバー10aの操作された側に対応する方向へ上部旋回体7を旋回させる。
【0087】
本体側制御部82は、レバー10aが操作された側に対応する方の切換弁に電流を入力する際、レバー10aの中立位置からの操作量に対応する大きさの電流を切換弁に入力する。具体的には、本体側制御部82は、レバー10aの中立位置からの操作量と電流値との相関関係を規定した操作量電流関係を記憶しており、その操作量電流関係に基づいて、旋回操作装置10から受けたレバー10aの操作量のデータに対応する電流値を導出する。そして、本体側制御部82は、導出した電流値に相当する電流を切換弁に入力する。これにより、本体側制御部82は、切換弁に制御弁38へ供給されるパイロット圧を調節させ、それによって制御弁38を通って旋回モータ36へ供給される作動油の流量を調節する。
【0088】
本体側制御部82は、操作量電流関係として、第1操作量電流関係Fm1と、第2操作量電流関係Fm2と、第3操作量電流関係Fm3とを記憶しており、その第1〜第3操作量電流関係Fm1〜Fm3のうち過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態(連結状態又は非連結状態)及び浮上検出部56によって検出された台車4の状態(浮上状態又は接地状態)とに応じたものを用いて、レバー10aの操作量に応じた電流値を導出する。
【0089】
第1操作量電流関係Fm1は、過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態が非連結状態である場合に用いられる。第2操作量電流関係Fm2は、過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態が連結状態で且つ浮上検出部56によって検出された台車4の状態が接地状態である場合に用いられる。第3操作量電流関係Fm3は、過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態が連結状態で且つ浮上検出部56によって検出された台車4の状態が浮上状態である場合に用いられる。
【0090】
第1〜第3操作量電流関係Fm1〜Fm3は、図8に示されている。第1〜第3操作量電流関係Fm1〜Fm3は、全て、レバー10aの操作量が増加するにつれて電流値が増加するレバー10aの操作量と電流値との直線的な比例関係になっている。そして、第1操作量電流関係がレバー10aの操作量の増加に応じて第1の比率で電流値が増加するように規定されているのに対し、第2操作量電流関係は、レバー10aの操作量の増加に応じて第1の比率よりも低い第2の比率で電流値が増加するように規定されている。また、第3操作量電流関係は、レバー10aの操作量の増加に応じて第2の比率よりも高く且つ第1の比率よりも低い第3の比率で電流値が増加するように規定されている。
【0091】
第1〜第3操作量電流関係Fm1〜Fm3において、レバー10aの操作量が最小の0であるときの電流値、すなわち最低の電流値はいずれも100mAである。一方、第1操作量電流関係において、レバー10aの操作量が最大の100であるときの電流値、すなわち最大の電流値は550mAである。また、第2操作量電流関係において、レバー10aの操作量が最大の100であるときの電流値、すなわち最大の電流値は350mAである。また、第3操作量電流関係において、レバー10aの操作量が最大の100であるときの電流値、すなわち最大の電流値は450mAである。
【0092】
また、本体側制御部82は、回転数検出部13により検出されるエンジン12の回転数に応じて油圧ポンプ14の作動油の吐出流量を制御する。
【0093】
具体的には、本体側制御部82は、過負荷演算装置72によって導出された台車4の状態が非連結状態である場合にはエンジン12の回転数が最低回転数から上昇するにつれて油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が増加するように吐出流量変更装置15に油圧ポンプ14の作動油の吐出流量を変更させる。
【0094】
また、本体側制御部82は、過負荷演算装置72によって導出された台車4の状態が連結状態であり、且つ、浮上検出部56によって検出された台車4の状態が接地状態であり、且つ、台車4の車輪ユニット54が旋回姿勢である場合には、エンジン12の回転数が最低回転数からその最低回転数よりも高い所定の回転数までの範囲において、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が、過負荷演算装置72によって導出された台車4の状態が非連結状態である場合の油圧ポンプ14の作動油の吐出流量よりも大きい吐出流量になるように吐出流量変更装置15に油圧ポンプ14の吐出流量を設定させる。
【0095】
より具体的には、本体側制御部82は、回転数検出部13により検出されるエンジン12の回転数に応じて傾転角調節比例弁15bに入力する電流を制御することによって、油圧源22から傾転角調節機構15aに供給される油圧を傾転角調節比例弁15bに調節させ、それによって傾転角調節機構15aに油圧ポンプ14の斜板14aの傾転角を調節させることによって油圧ポンプ14の作動油の吐出流量を制御する。
【0096】
本体側制御部82は、エンジン12の回転数と傾転角調節比例弁15bに入力する電流値との相関関係を規定した回転数電流関係を記憶しており、傾転角調節比例弁15bに入力する電流の値として、回転数検出部13により検出されるエンジン12の回転数に対応する電流値を回転数電流関係に基づいて導出する。また、本体側制御部82は、回転数電流関係として、第1回転数電流関係Fr1と、第2回転数電流関係Fr2と、換算テーブルとを記憶しており、それらの中から過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態(連結状態又は非連結状態)と、浮上検出部56によって検出された台車4の状態(浮上状態又は接地状態)と、台車4の車輪ユニット54が旋回姿勢にあるか否かとに応じたものを用いて、エンジン12の回転数に応じた電流値を導出する。
【0097】
第1回転数電流関係Fr1は、過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態が非連結状態である場合に用いられる。第2回転数電流関係Fr2は、過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態が連結状態で且つ浮上検出部56によって検出される台車4の状態が接地状態で且つ車輪ユニット54が旋回姿勢にある場合に用いられる。換算テーブルは、過負荷演算装置72によって判別された台車4の状態が連結状態であり、且つ、浮上検出部56によって検出される台車4の状態が浮上状態であるか又は車輪ユニット54の姿勢が走行姿勢である場合に用いられる。
【0098】
第1回転数電流関係Fr1は、図9に示すように、エンジン12の回転数が最低回転数Rminから最高回転数Rmaxへ向かって上昇するにつれて電流値が650mAから375mAへ直線的に減少するように規定されている。傾転角調節比例弁15bに入力される電流値と油圧ポンプ14の作動油の吐出流量との間には、傾転角調節比例弁15bに入力される電流値が増加するにつれて油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が直線的に減少するという相関関係がある。このため、エンジン12の回転数が最低回転数Rminの時に第1回転数電流関係Fr1に基づいて導出される電流650mAが傾転角調節比例弁15bに入力されることによって、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量は最小吐出流量Dminになり、エンジン12の回転数が上昇するに伴って第1回転数電流関係Fr1に基づいて導出される電流が650mAから増加してその電流が傾転角調節比例弁15bに入力されることにより、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量は最小吐出流量Dminから増加する。そして、エンジン12の回転数が最高回転数Rmaxの時に第1回転数電流関係Fr1に基づいて導出される電流375mAが傾転角調節比例弁15bに入力されることによって、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量は最大吐出流量Dmaxになる。
【0099】
また、第2回転数電流関係Fr2は、図9に示すように、傾転角調節比例弁15bに入力する電流を、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が最大吐出流量Dmaxになる電流値375mAと油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が最小吐出流量Dminになる電流値650mAとの間の中間の500mA〜550mAの範囲内でエンジン12の回転数に応じて変化するように規定している。
【0100】
具体的には、第2回転数電流関係Fr2は、エンジン12の回転数が最低回転数Rminから最高回転数Rmaxへ向かって上昇するにつれて電流値が550mAから500mAへ直線的に減少するように規定されている。このため、エンジン12の回転数が最低回転数Rminから最高回転数Rmaxへ上昇するに伴って第2回転数電流関係Fr2に基づいて導出される電流が傾転角調節比例弁15bに入力されるときの油圧ポンプ14の作動油の吐出流量の増加割合は、第1回転数電流関係Fr1に基づいて導出される電流が傾転角調節比例弁15bに入力される場合の増加割合に比べて緩慢であり、且つ、エンジン12の回転数が最低回転数Rminからその最低回転数Rminよりも高い所定の回転数Rまでの範囲において、第2回転数電流関係Fr2に基づいて導出される電流が傾転角調節比例弁15bに入力されるときの油圧ポンプ14の作動油の吐出流量は、第1回転数電流関係Fr1に基づいて導出される電流が傾転角調節比例弁15bに入力されるときの油圧ポンプ14の作動油の吐出流量よりも大きくなる。
【0101】
また、換算テーブルは、第1回転数電流関係Fr1及び第2回転数電流関係Fr2と異なるエンジン12の回転数と傾転角調節比例弁15bに入力する電流値との間の相関関係を規定したものである。例えば、換算テーブルは、下部走行体6によるクレーン本体3の走行時やクレーン本体3が作動停止していて台車4のみが移動する時のエンジン12の回転数と傾転角調節比例弁15bに入力する電流値との間の相関関係を規定したものである。
【0102】
次に、図10のフローチャートを参照して、上部旋回体7の旋回時の制御プロセスについて説明する。
【0103】
まず、オペレータが、クレーン2の使用パターンの設定を行う(ステップS1)。具体的には、オペレータは、図略の入力装置により前記各種情報を入力し、それによって吊作業でのクレーン2の使用パターンを設定する。そして、この設定された使用パターンと入力された前記各種情報とに基づいて、過負荷演算装置72によりクレーン2の吊能力としての荷重値が導出される。
【0104】
次に、オペレータが、旋回操作装置10のレバー10aを中立位置から右旋回位置又は左旋回位置へ操作する(ステップS2)。
【0105】
次に、過負荷演算装置72が、台車4の状態が前記連結状態と前記非連結状態とのうちのいずれの状態であるかを判別する(ステップS3)。具体的には、過負荷演算装置72は、前記のように導出したクレーン2の吊能力の荷重値が基準値以上であり且つ本体側制御部82に台車側制御部84から前記接続信号が入力されている場合には、台車4の状態は前記連結状態であると判別し、前記吊能力の荷重値が基準値よりも小さく且つ本体側制御部82に台車側制御部84から前記接続信号が入力されていない場合には、台車4の状態は前記非連結状態であると判別する。なお、過負荷演算装置72は、前記吊能力の荷重値が基準値以上であるにもかかわらず本体側制御部82に前記接続信号が入力されていない場合や、前記吊能力の荷重値が基準値よりも小さいにもかかわらず本体側制御部82に前記接続信号が入力されている場合には、エラーであると判別する。
【0106】
ステップS3において過負荷演算装置72が台車4の状態は前記非連結状態であると判別した場合には、次に、本体側制御部82は、ステップS2で操作されたレバー10aの中立位置からの操作量に応じた電流値を第1操作量電流関係Fm1図8参照)に基づいて導出し、その導出した電流値に相当する電流を右旋回切換弁44と左旋回切換弁45のうちレバー10aが操作された側に対応する方の切換弁に入力する(ステップS4)。すなわち、本体側制御部82は、レバー10aが右旋回位置側へ操作された場合には、導出した電流値に相当する電流を右旋回切換弁44に入力し、レバー10aが左旋回位置側へ操作された場合には、導出した電流値に相当する電流を左旋回切換弁45に入力する。
【0107】
右旋回切換弁44又は左旋回切換弁45に電流が入力されることにより、制御弁38が旋回モータ36への作動油の供給を許容する状態となり、作動油が供給された旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる(ステップS8)。
【0108】
具体的に、右旋回切換弁44に電流が入力された場合には、その入力された電流の大きさに応じたパイロット圧が制御弁38の第1パイロットポート39aに供給されて制御弁38が第1供給位置38aになり、第1パイロットポート39aに供給されたパイロット圧の大きさに応じた流量の作動油が旋回モータ36の第1給排口36aへ供給される。換言すれば、旋回モータ36の第1給排口36aへレバー10aの右旋回位置側への操作量に応じた流量の作動油が供給される。その結果、旋回モータ36は、レバー10aの操作量に応じた駆動力で上部旋回体7を右回りに旋回させる。
【0109】
一方、左旋回切換弁45に電流が入力された場合には、その入力された電流の大きさに応じたパイロット圧が制御弁38の第2パイロットポート39bに供給されて制御弁38が第2供給位置38bになり、第2パイロットポート39bに供給されたパイロット圧の大きさに応じた流量の作動油が旋回モータ36の第2給排口36bへ供給される。換言すれば、旋回モータ36の第2給排口36bへレバー10aの左旋回位置側への操作量に応じた流量の作動油が供給される。その結果、旋回モータ36は、レバー10aの操作量に応じた駆動力で上部旋回体7を左回りに旋回させる。
【0110】
前記ステップS3において過負荷演算装置72が台車4の状態は前記連結状態であると判別した場合には、次に、本体側制御部82は、台車4が前記接地状態と前記浮上状態とのうちのいずれの状態であるかを判別する(ステップS5)。具体的には、本体側制御部82は、浮上検出部56のリミットスイッチ70から出力される検知信号が台車側制御部84を介して当該本体側制御部82に入力されている場合には、台車4が前記浮上状態であると判別し、その検知信号の入力がない場合には、台車4が前記接地状態であると判別する。
【0111】
本体側制御部82は、台車4が接地状態であると判別した場合には、次に、ステップS2で操作されたレバー10aの中立位置からの操作量に応じた電流値を第2操作量電流関係Fm2図8参照)に基づいて導出し、その導出した電流値に相当する電流を右旋回切換弁44と左旋回切換弁45とのうちレバー10aが操作された側に対応する方の切換弁に入力する(ステップS6)。このとき、切換弁に入力される電流は、ステップS4で本体側制御部82から切換弁に入力される電流よりも小さい。このため、次のステップS8で旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力は、ステップS4で本体側制御部82から切換弁に電流が入力されたことに応じて旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力よりも小さくなる。
【0112】
具体的に、ステップS6で電流が入力された切換弁に対応するパイロットポート39a,39bへ供給されるパイロット圧は、ステップS4で電流が入力された切換弁に対応するパイロットポート39a,39bへ供給されるパイロット圧よりも小さくなり、その結果、制御弁38を通って旋回モータ36へ供給される作動油の流量がステップS4での電流の入力に応じて制御弁38を通って旋回モータ36に供給される作動油の流量よりも小さくなる。このため、ステップS6の後のステップS8において旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力は、ステップS4の後のステップS8において旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力よりも小さくなる。
【0113】
一方、ステップS5において、本体側制御部82は、台車4が浮上状態であると判断した場合には、次に、ステップS2で操作されたレバー10aの中立位置からの操作量に応じた電流値を第3操作量電流関係Fm3図8参照)に基づいて導出し、その導出した電流値に相当する電流を右旋回切換弁44と左旋回切換弁45とのうちレバー10aが操作された側に対応する方の切換弁に入力する(ステップS7)。このとき、切換弁に入力される電流は、ステップS6で本体側制御部82から切換弁に入力される電流よりも大きく且つステップS4で本体側制御部82から切換弁に入力される電流よりも小さい。このため、次のステップS8で旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力は、ステップS6で本体側制御部82から切換弁に電流が入力されたことに応じて旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力よりも大きく且つステップS4で本体側制御部82から切換弁に電流が入力されたことに応じて旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力よりも小さくなる。
【0114】
具体的には、ステップS7で電流が入力された切換弁に対応するパイロットポート39a,39bへ供給されるパイロット圧は、ステップS6で電流が入力された切換弁に対応するパイロットポート39a,39bへ供給されるパイロット圧よりも大きくなるとともに、ステップS4で電流が入力された切換弁に対応するパイロットポート39a,39bへ供給されるパイロット圧よりも小さくなる。その結果、制御弁38を通って旋回モータ36へ供給される作動油の流量は、ステップS6での電流の入力に応じて制御弁38を通って旋回モータ36に供給される作動油の流量よりも大きくなり、且つ、ステップS4での電流の入力に応じて制御弁38を通って旋回モータ36に供給される作動油の流量よりも小さくなる。このため、ステップS7の後のステップS8において旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力は、ステップS6の後のステップS8において旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動力よりも大きくなり、且つ、ステップS4の後のステップS8において旋回モータ36が上部旋回体7を旋回させる駆動量よりも小さくなる。
【0115】
以上のようにして、レバー10aの操作に応じた上部旋回体7の旋回動作が行われる。
【0116】
そして、以上の上部旋回体7の旋回動作のための制御弁38による作動油の流量制御と並行して、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量の制御が行われる。図11のフローチャートに、この制御のプロセスが示されている。
【0117】
まず、オペレータによるクレーン2の使用パターンの設定が行われ(ステップS11)、その後、過負荷演算装置72によりクレーン2が前記連結状態と前記非連結状態とのうちのいずれの状態であるかが判別される(ステップS13)。ステップS11のクレーン2の使用パターンの設定は、前記ステップS1と共通のプロセスであり、ステップS13の判別の処理は、前記ステップS3の処理と共通のプロセスである。
【0118】
過負荷演算装置72がクレーン2は前記非連結状態であると判別した場合には、次に、本体側制御部82が、回転数検出部13により検出されたエンジン12の回転数に応じた電流値を第1回転数電流関係Fr1図9参照)に基づいて導出し、その導出した電流値に相当する電流を傾転角調節比例弁15bに入力する(ステップS14)。これにより、傾転角調節比例弁15bは、入力された電流の大きさに応じて油圧ポンプ14の斜板14aの傾転角を調節して油圧ポンプ14の容量を調節し、それによって油圧ポンプ14の作動油の吐出流量を調節する。
【0119】
ステップS13において過負荷演算装置72がクレーン2は前記連結状態であると判別した場合には、次に、本体側制御部82は、台車4の車輪ユニット54が旋回姿勢で且つ台車4が接地状態であるか否かを判別する(ステップS15)。このとき、本体側制御部82は、台車側制御部84が操向装置55に車輪ユニット54を旋回姿勢に操向させていた場合には車輪ユニット54は旋回姿勢であると判断し、台車側制御部84が操向装置55に車輪ユニット54を走行姿勢に操向させていた場合には車輪ユニット54は旋回姿勢ではないと判断する。また、本体側制御部82は、浮上検出部56のリミットスイッチ70が台車4の地面からの浮上を検知したときに発する検知信号が台車側制御部84を経て当該本体側制御部82に入力された場合には、台車4は浮上状態であり、接地状態ではないと判断し、その検知信号が当該本体側制御部82に入力されていない場合には、台車4は接地状態であると判断する。
【0120】
本体側制御部82は、ステップS15において、車輪ユニット54が旋回姿勢で且つ台車4が接地状態であると判断した場合には、次に、回転数検出部13により検出されたエンジン12の回転数に応じた電流値を第2回転数電流関係Fr2図9参照)に基づいて導出し、その導出した電流値に相当する電流を傾転角調節比例弁15bに入力する(ステップS17)。
【0121】
このとき、傾転角調節比例弁15bに入力される電流は、エンジン12の回転数が最低回転数Rminから所定の回転数Rまでの範囲(図9参照)では、ステップS14で傾転角調節比例弁15bに入力される電流よりも大きい。これにより、このエンジン12の回転数が最低回転数Rminから所定の回転数Rまでの範囲では、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が、ステップS14で傾転角調節比例弁15bに電流が入力されたことに応じて油圧ポンプ14から吐出される作動油の流量よりも大きくなる。このようにエンジン12の回転数が最低回転数Rmin付近において、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量がある程度大きな流量で確保されることにより、上部旋回体7の旋回方向への台車4の移動速度(自走速度)が旋回モータ36の駆動により生じる上部旋回体7の旋回速度を上回って上部旋回体7が旋回方向に移動する台車4によって連結ビーム5を介して旋回方向に引っ張られて旋回させられる状態になったとしても、旋回モータ36がポンプとして機能して油圧ポンプ14側が旋回モータ36側に対して負圧になるのが抑制される。その結果、旋回モータ36から油圧ポンプ14側への作動油の逆流が抑制される。
【0122】
また、本体側制御部82は、ステップS15において、車輪ユニット54が旋回姿勢ではないと判断した場合又は台車4が接地状態ではないと判断した場合には、次に、回転数検出部13により検出されたエンジン12の回転数に応じた電流値を換算テーブルに基づいて導出し、その導出した電流値に相当する電流を傾転角調節比例弁15bに入力する(ステップS16)。これにより、傾転角調節比例弁15bは、入力された電流の大きさに応じて油圧ポンプ14の斜板14aの傾転角を調節して油圧ポンプ14の容量を調節し、それによって油圧ポンプ14の作動油の吐出流量を調節する。
【0123】
以上のようにして、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量の制御が行われる。
【0124】
本実施形態では、台車4が上部旋回体7に連結された連結状態であり且つ台車4が接地状態である場合には、台車4が上部旋回体7から切り離された非連結状態である場合に比べて、レバー10aの操作量の増加に対する切換弁44,45への入力電流の増加の比率が低くなる。その結果、制御弁38により調節される旋回モータ36への作動油の供給流量が少なくなり、上部旋回体7の旋回のために旋回モータ36が発する動力が小さくなる。台車4が連結状態で且つ接地状態である場合には、車輪駆動モータ62の動力を上部旋回体7の旋回に利用できるので、その分、旋回モータ36の動力が小さくなることで、動力が過剰になるのを防ぐことができる。
【0125】
また、本実施形態では、台車4が上部旋回体7に連結された連結状態であり且つ台車4が浮上状態である場合には、レバー10aの操作量の増加に対する切換弁44,45への入力電流の増加の比率が、台車4が連結状態で且つ接地状態である場合の同比率よりも高くなるとともに、台車4が非連結状態である場合の同比率以下になる。その結果、制御弁38により調節される旋回モータ36への作動油の供給流量が、台車4が連結状態で且つ接地状態である場合の旋回モータ36への作動油の供給流量よりも多く、且つ、台車4が非連結状態である場合の旋回モータ36への作動油の供給流量以下になり、旋回モータ36が発する動力が、台車4が連結状態で且つ接地状態である場合に旋回モータ36が発する動力よりも大きく且つ台車4が非連結状態である場合に旋回モータ36が発する動力以下になる。台車4が浮上状態である場合には、車輪駆動モータ62の動力を上部旋回体7の旋回に利用できないが、その代わりに旋回モータ36の動力が大きくなることで上部旋回体7の旋回速度が低下するのを抑制できる。また、旋回モータ36の動力が大きくなっても、台車4が非連結状態である場合に旋回モータ36が発する動力以下であるため、動力が過剰になるのを防ぐことができる。
【0126】
以上のように、本実施形態では、上部旋回体7に対する台車4の連結の有無と上部旋回体7に台車4が連結されている状態での台車4の接地の有無とに応じて上部旋回体7の旋回に適切な動力を供給することができる。
【0127】
また、本実施形態では、クレーン本体3の油圧ポンプ14周辺の油圧系統が旋回モータ36側からの作動油の逆流によって破損するのを防止することができる。
【0128】
具体的に、台車4が連結状態且つ接地状態であり且つその台車4の車輪ユニット54が旋回姿勢になって上部旋回体7の旋回とともに台車4が上部旋回体7の旋回方向へ移動する場合に、台車4の旋回方向への移動速度(自走速度)が旋回モータ36の駆動により生じる上部旋回体7の旋回速度を上回って上部旋回体7が旋回方向に移動する台車4によって連結ビーム5を介して旋回方向に引っ張られて旋回させられる状態になる場合がある。この状態において、仮に、台車4が非連結状態である場合になされるようにエンジン12の回転数が最低回転数付近まで低下したときに油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が非常に小さい流量まで低下すると、旋回モータ36がポンプとして機能して油圧ポンプ14側が旋回モータ36側に対して負圧になって旋回モータ36から油圧ポンプ14側へ作動油が逆流する場合があり、その結果、油圧ポンプ14周辺の油圧系統が破損する虞がある。これに対し、本実施形態では、台車4が連結状態且つ接地状態で且つその台車4の車輪ユニット54が旋回姿勢にある場合には、エンジン12の回転数が最低回転数からその最低回転数よりも高い所定の回転数までの範囲において、油圧ポンプ14の作動油の吐出流量が、台車4が非連結状態である場合の油圧ポンプ14の作動油の吐出流量よりも大きい吐出流量になるので、前述のように上部旋回体7が台車4によって連結ビーム5を介して旋回方向に引っ張られて旋回させられる状態になった場合であっても、旋回モータ36がポンプとして機能して油圧ポンプ14側が旋回モータ36側に対して負圧になるのを抑制でき、旋回モータ36から油圧ポンプ14側への作動油の逆流を防止できる。その結果、クレーン本体3の油圧ポンプ14周辺の油圧系統の破損を防止できる。
【0129】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0130】
例えば、パイロット圧制御装置は、パイロット圧供給源と制御弁のパイロットポートとの間のパイロット圧の供給経路に設けられたリモコン弁と、そのリモコン弁と制御弁のパイロットポートとの間に設けられて、リモコン弁を介して制御弁のパイロットポートへ供給されるパイロット圧を減圧する電磁比例減圧弁と、旋回操作レバーの操作に応じて電磁比例減圧弁に入力する電流を制御することにより電磁比例減圧弁による減圧の程度を制御する制御部とによって構成してもよい。この場合には、旋回操作レバーの操作量の増減に応じて、基本的にはリモコン弁が制御弁のパイロットポートへ供給されるパイロット圧が増減するようにそのパイロット圧を制御するが、制御部が電磁比例減圧弁による減圧の程度を制御することにより旋回操作レバーの操作量の増加に応じて前記第1の比率でパイロット圧が増加する状態、前記第2の比率でパイロット圧が増加する状態、及び、前記第3の比率でパイロット圧が増加する状態をそれぞれ生成すればよい。
【0131】
また、前記実施形態では、過負荷演算装置は、導出したクレーンの吊能力の荷重値が基準値以上であるか否か及び本体側制御部に台車側制御部から前記接続信号が入力されているか否かの両方に基づいてクレーンの台車についての状態が前記連結状態と前記非連結状態のいずれの状態であるかを判別したが、必ずしもこのような判別方法に限定されるものではない。例えば、過負荷演算装置は、導出したクレーンの吊能力の荷重値が基準値以上であるか否かのみに基づいてクレーンの台車についての状態が前記連結状態と前記非連結状態のいずれの状態であるかを判別してもよく、また、本体側制御部に台車側制御部から前記接続信号が入力されているか否かのみに基づいてクレーンの台車についての状態が前記連結状態と前記非連結状態のいずれの状態であるかを判別してもよい。
【符号の説明】
【0132】
3 クレーン本体
4 カウンタウェイト台車
6 下部走行体
7 上部旋回体
10a 旋回操作レバー(操作部)
12 エンジン
14 油圧ポンプ
15 吐出流量変更装置
25 作業装置
27 カウンタウェイト
36 旋回モータ(本体駆動モータ)
38 制御弁
44 右旋回切換弁(電磁比例弁)
45 左旋回切換弁(電磁比例弁)
47 パイロット圧供給源
48 パイロット圧制御装置
56 浮上検出部
58 車輪
62 車輪駆動モータ(台車駆動モータ)
82 本体側制御部(制御部)
72 過負荷演算装置(連結状態導出部)
図1
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