(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6156535
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】分圧コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01H 33/66 20060101AFI20170626BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20170626BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20170626BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20170626BHJP
H01H 33/16 20060101ALI20170626BHJP
H01H 33/662 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
H01H33/66 Z
H01G1/14 J
H01G4/38 A
H01G4/40 A
H01H33/16
H01H33/662 R
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-53696(P2016-53696)
(22)【出願日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年3月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 晃弘
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−307127(JP,A)
【文献】
特開2009−54400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60−33/68
H01G 4/228
H01G 4/38
H01G 4/40
H01H 9/30− 9/52
H01H 33/00−33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空インタラプタと並列に配置される分圧コンデンサであって、
一対の導体の間に誘電体を備えるとともに外周に円柱形のモールド部を備えた複数個のコンデンサ素子が直列に連結固定されて、全体として細長い円柱状に構成されたコンデンサ列と、
上記コンデンサ列の一端を固定的に支持する固定支持部と、
上記コンデンサ列の他端を該コンデンサ列の長手方向に移動可能に支持する円盤状可動部材および弾性部材を備えた可動支持部と、
上記可動支持部に取り付けられ、該可動支持部の上記円盤状可動部材が少なくとも嵌合するとともに、先端が、可動支持部に最も近い第1のコンデンサ素子の固定支持部側のモールド部端面を越えない長さに設定された断面略C字形をなす絶縁筒と、
を備えてなる分圧コンデンサ。
【請求項2】
上記絶縁筒に、上記第1のコンデンサ素子が嵌合している、ことを特徴とする請求項1に記載の分圧コンデンサ。
【請求項3】
上記絶縁筒の先端は、上記第1のコンデンサ素子のモールド部の上記固定支持部側の面取部を覆わずに該モールド部の円筒面において終端している、ことを特徴とする請求項2に記載の分圧コンデンサ。
【請求項4】
上記コンデンサ列は、直列に配置した複数個のコンデンサ素子の外側を2次モールド部で被覆してなる成型コンデンサとして構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の分圧コンデンサ。
【請求項5】
上記真空インタラプタの端部を覆う円環状のシールドに、上記絶縁筒が覆われている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分圧コンデンサ。
【請求項6】
上記コンデンサ列は、上記真空インタラプタの中間部を覆う中間シールドに電気的に接続された導体を中間部に備えている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分圧コンデンサ。
【請求項7】
上記固定支持部に、上記コンデンサ列の長手方向の固定支持部側の一部が嵌合した断面略C字形をなす第2の絶縁筒が取り付けられている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の分圧コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空インタラプタと並列に配置される分圧コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の真空インタラプタの各々と並列に円柱状の分圧コンデンサが配置された真空遮断器が開示されている。この分圧コンデンサは、一般に、特許文献2に開示されているように、個々にモールドされた複数のコンデンサ素子を直列に配置し、FRP(繊維強化樹脂)等の絶縁材料から成形された略円筒状の絶縁筒内に収容した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−188734号公報
【特許文献2】特開2013−247144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の分圧コンデンサにおいては、個々のコンデンサ素子のモールド部の外周面と絶縁筒との間に微小なギャップが存在することから、特許文献2に記載されているように、モールド部の軸方向の端部外周縁に、誘電率の異なる3種の材料が非常に近い距離で接するトリプルジャンクションが形成される、という問題がある。このトリプルジャンクションによって電界が集中し、耐電圧が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、真空インタラプタと並列に配置される分圧コンデンサであって、
一対の導体の間に誘電体を備えるとともに外周に円柱形のモールド部を備えた複数個のコンデンサ素子が直列に連結固定されて、全体として細長い円柱状に構成されたコンデンサ列と、
上記コンデンサ列の一端を固定的に支持する固定支持部と、
上記コンデンサ列の他端を該コンデンサ列の長手方向に移動可能に支持する円盤状可動部材および弾性部材を備えた可動支持部と、
上記可動支持部に取り付けられ、該可動支持部の上記円盤状可動部材が少なくとも嵌合するとともに、先端が、可動支持部に最も近い第1のコンデンサ素子の固定支持部側のモールド部端面を越えない長さに設定された断面略C字形をなす絶縁筒と、
を備えている。
【0006】
すなわち、絶縁筒は、可動支持部側の一部のみを部分的に覆うように短く構成されている。コンデンサ素子を覆わずに可動支持部のみを覆う構成であってもよく、可動支持部に最も近い第1のコンデンサ素子までを覆う構成であってもよい。細長い円柱状に構成されたコンデンサ列においては、真空インタラプタの端部および中間シールドから離れたコンデンサ列の長手方向の中央部において最大電界となり、コンデンサ列の長手方向の端部における電界は相対的に低いものとなる。
【0007】
従って、絶縁筒がコンデンサ素子を全く覆わない構成あるいは第1のコンデンサ素子のみと嵌合する構成とすることにより、最大電界となる長手方向中央部でのトリプルジャンクションの形成が回避される。
【0008】
一方、可動支持部側の端部においては、絶縁筒が可動支持部の円盤状可動部材の外周に嵌合しているので、コンデンサ列の支持強度が確保される。更に、可動側シールドが弾性部材や円盤状可動部材を含む可動支持部の周囲を覆うことによって電界が低減される。
【0009】
本発明の好ましい一つの態様では、上記絶縁筒に、可動支持部に最も近い第1のコンデンサ素子が嵌合している。このようにコンデンサ列の端部が絶縁筒に嵌合することで、コンデンサ列の支持強度がより高くなる。第1のコンデンサ素子における電界はコンデンサ列の中で最も低いものとなるので、トリプルジャンクションによる問題は実質的に生じない。
【0010】
さらに好ましい一つの態様では、上記絶縁筒の先端は、上記第1のコンデンサ素子のモールド部の上記固定支持部側の面取部を覆わずに該モールド部の円筒面において終端している。
【0011】
個々に円柱状に形成されるコンデンサ素子のモールド部は、端部外周縁に面取部、一般には断面円弧形をなすR面取部を備えた構成となるが、この面取部の上に絶縁筒が重なると、面取部と絶縁筒内周面との間に楔状のギャップが生じるため、トリプルジャンクションとして電界の集中がより生じやすくなってしまう。絶縁筒の先端がモールド部の円筒面において終端していれば、このような楔状のギャップの形成が回避される。
【0012】
また、本発明の好ましい一つの態様では、コンデンサ列の長手方向に沿った長さが短いものとなっている上記の絶縁筒が、真空インタラプタの端部を覆う円環状のシールドによって覆われている。これにより、絶縁筒付近の電界が低減する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、細長い円柱状に構成されたコンデンサ列の中で高電界となる部位でのトリプルジャンクションの形成を回避することができ、分圧コンデンサとしての耐電圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係る分圧コンデンサの第1実施例を真空インタラプタとともに示す正面図。
【
図2】絶縁筒を切り欠いて可動支持部の構成を示した要部断面図。
【
図8】固定支持部側に第2の絶縁筒を備えた第2実施例の正面図。
【
図9】成型コンデンサを用いた第3実施例の正面図。
【
図10】成型コンデンサの内部構成の例を示す断面説明図。
【
図11】コンデンサ素子のR面取部における楔状のギャップの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、第1実施例の分圧コンデンサ1を真空インタラプタ2とともに備えた真空遮断器の要部を示している。真空遮断器全体としては、特許文献1にも示されているように、図示せぬリンク機構を中央に挟んで左右に一対の真空インタラプタ2を備えており、各々の真空インタラプタ2と並列に分圧コンデンサ1が配置されている。これらのリンク機構、真空インタラプタ2および分圧コンデンサ1は、全体が図示せぬタンク内に収容されており、このタンク内には、SF
6等の絶縁ガスが充填されている。
図1は、真空遮断器の右側に位置する真空インタラプタ2およびこれに対応した分圧コンデンサ1を示している。
【0017】
真空インタラプタ2は、図右側に固定側導体4を備えるとともに、図左側に図示せぬリンク機構に連係した可動側導体5を備えている。固定側導体4は、真空インタラプタ2の円筒状容器6の固定側の端部ならびに該固定側導体4の周囲を覆う固定側シールド7を一体に備えている。可動側導体5の周囲は、円筒状容器6の可動側の端部の周囲とともに、可動側シールド8によって覆われている。この可動側シールド8は、可動側導体5に支持されるとともに、可動側導体5に電気的に接続されている。また、真空インタラプタ2の円筒状容器6の長手方向中央部には、内部の電極部の周囲を囲むアークシールド9を備えており、このアークシールド9の周囲は、該アークシールド9に支持されるとともに電気的に接続された中間シールド10によって覆われている。これらの固定側シールド7、可動側シールド8および中間シールド10は、いずれもほぼ等しい径の円環状ないし円筒状に構成されており、互いに同心状となるように配置されている。
【0018】
図3および
図4の断面図にも示すように、真空インタラプタ2は、円形をなす各シールド7,8,10の中心から図の上方に偏心して位置しており、これによって生じた図下方の空間を通るようにして分圧コンデンサ1が配置されている。換言すれば、各シールド7,8,10は、平行に配置された真空インタラプタ2と分圧コンデンサ1の周囲を円形に囲むように設けられている。
【0019】
分圧コンデンサ1は、所要の容量や耐電圧を考慮して個数が選定される複数個のコンデンサ素子15を直列に(換言すれば一直線上に)連結固定したコンデンサ列16を主体としている。このコンデンサ列16は、全体として細長い円柱状に構成されており、真空インタラプタ2の円筒状容器6の径よりも小さな径を有している。
【0020】
個々のコンデンサ素子15は、
図7に概略を示すように、一対の導体17の間に誘電体18を備え、かつ外周に軸方向寸法の短い円柱形をなすエポキシ樹脂等のモールド部19を備えた略円柱状ないし略円盤状の構成となっている。モールド部19の端面から僅かに突出した導体17の端面中心部には、コンデンサ素子15の中心軸線に沿ってネジ孔20が加工されている。そして、
図7に示すように、隣接する2個のコンデンサ素子15の各々のネジ孔20に、両端に雄ネジ部を備えたすり割り付きの連結ネジ21が螺合している。これによって、導体17同士が密接した状態でもって、複数個のコンデンサ素子15が1列に連結固定されている。
【0021】
図1に示す実施例では、コンデンサ列16は計10個のコンデンサ素子15を含んでおり、5個のコンデンサ素子15同士が直接に連結されてなるコンデンサ群を一対備え、この2つのコンデンサ群の間に、帯状金属板からなる中間導体22が介在している。この中間導体22は、被覆付き電線24を介して真空インタラプタ2のアークシールド9に電気的に接続されている。この中間導体22の両端部も、前述したコンデンサ素子15の中心のネジ孔20を利用したボルト23によってコンデンサ素子15の導体17に堅固に固定・接続されている。従って、中間導体22を含めて、10個のコンデンサ素子15を有するコンデンサ列16全体が十分な剛性を有する状態に一体化されている。
【0022】
このようにして細長い円柱状に一体化されたコンデンサ列16は、一端が図右側の固定支持部25において固定的に支持される一方、他端が図左側の可動支持部26においてコンデンサ列の長手方向に所定量移動可能なように支持されている。つまり、一方の可動支持部26によって、コンデンサ列16の長手方向に沿った熱による膨張・収縮を許容する構成となっている。
【0023】
そして、上記可動支持部26には、
図1に示すように、コンデンサ列16の長手方向の一部、具体的には、可動支持部26に最も近い第1のコンデンサ素子15(
図1に符号15Aとして示す)までを覆う長さの絶縁筒31が取り付けられている。この絶縁筒31は、適宜な絶縁性樹脂材料を基材としたFRP(繊維強化樹脂)などの絶縁材料により、
図6に示すように、円の上方(つまり真空インタラプタ2側)の一部が開口した断面略C字形の筒状に形成されたものであり、その内径は、コンデンサ列16(コンデンサ素子15)の外径よりもごく僅か大きなものとなっている。後述する可動支持部26の構成部品は、この絶縁筒31の内側に配置されており、かつ第1のコンデンサ素子15Aは、この絶縁筒31の内周側に、フッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))製のクッションとなるシート32(
図6参照)を介して嵌合している。
【0024】
ここで、
図11(A)に拡大して示すように、コンデンサ素子15は、モールド部19の端面外周縁が鋭端とならないように面取部とりわけ断面円弧形のR面取部19aを備えているが、上記絶縁筒31の先端31aは、第1のコンデンサ素子15Aの固定支持部25側のR面取部19aを覆うことなくモールド部19の円筒面19bにおいて終端している。また、この絶縁筒31は、
図1に示すように、可動側シールド8の内周側に位置しているが、その先端31aの軸方向の位置は、可動側シールド8の軸方向の範囲内にある。つまり、絶縁筒31の全体が可動側シールド8に覆われている。
【0025】
図2は、絶縁筒31に覆われた形となる可動支持部26の構成を示している。この可動支持部26は、コンデンサ列16の直径方向に沿って延びる円柱状のピン35と、絶縁筒31内で軸方向(コンデンサ列16の長手方向)に移動可能な円盤状可動部材としてのスプリングシート36と、上記ピン35と上記スプリングシート36との間に圧縮状態で配設された弾性部材としてのコイルスプリング37と、上記スプリングシート36とコンデンサ列16の端部つまり第1のコンデンサ素子15Aの端部とを連結した帯状金属板からなる可動端導体38と、を備えている。上記スプリングシート36は、絶縁筒31の内周面に移動可能に嵌合した円盤状をなし、その中心部からピン35へ向かって延びる軸部36aの外周にコイルスプリング37が装着されている。また、ピン35の径方向に貫通形成されたネジ孔に調節ボルト39が螺合しており、軸部36aの先端に設けられた凹部の底面に、この調節ボルト39の先端が当接している。この調節ボルト39は、スプリングシート36が過度にピン35側に移動することを規制している。
【0026】
上記スプリングシート36の外周部には、絶縁筒31の開口面の幅に対応した大きさの矩形のガイド板40が取り付けられており、
図3に示すように、このガイド板40が絶縁筒31の開口面に嵌合している。これによって、絶縁筒31内でのスプリングシート36の回転が防止され、ひいては可動端導体38やコンデンサ列16全体の回転が規制されている。
【0027】
可動端導体38は、一端が、中間導体22と同様にコンデンサ素子15の中心のネジ孔20に螺合するボルト23でもって第1のコンデンサ素子15Aに固定され、他端がスプリングシート36の中心部に同じくボルト23でもって固定されている。可動端導体38は、被覆付き電線41を介して真空インタラプタ2の可動側導体5に電気的に接続されている。
【0028】
上記ピン35は、
図3に示すように、一対の略L字形のブラケット42によって真空インタラプタ2に支持されている。各々のブラケット42は、絶縁筒31に設けた孔を貫通したピン35の両端にボルト43を介して取り付けられている。
【0029】
図5および
図6は、コンデンサ列16の一端を支持する固定支持部25の構成を示している。この固定支持部25は、コンデンサ列16の直径方向に沿って延びる円柱状のピン45と、このピン45を径方向に貫通して先端の雄ネジ部がコンデンサ列16端部のコンデンサ素子15の中心のネジ孔20に螺合したボルト46と、上記ピン45と上記コンデンサ素子15の導体17との間に挟持された円筒状の固定端導体47と、を備えている。上記ピン45は、両端にボルト49を介して取り付けられたブラケット48によって、真空インタラプタ2に支持されている。固定端導体47は、被覆付き電線50を介して真空インタラプタ2の固定側導体4に電気的に接続されている。
【0030】
上記実施例の構成においては、コンデンサ列16を支持する絶縁筒31がコンデンサ列16の長さに比較して軸方向(コンデンサ列16の長手方向)に短いものとなっており、可動支持部26に最も近い第1のコンデンサ素子15Aのみが絶縁筒31に嵌合している。従って、前述したような絶縁筒31とコンデンサ素子15のモールド部19の端部外周縁との間で形成されるトリプルジャンクションによる耐電圧の低下が抑制される。すなわち、上記のコンデンサ列16においては、5個のコンデンサ素子15を含むコンデンサ群の中の中央のコンデンサ素子15(換言すれば、固定側シールド7と中間シールド10との間の中央に位置するコンデンサ素子15ならびに可動側シールド8と中間シールド10との間の中央に位置するコンデンサ素子15)において、電界が最大となる。上記実施例の絶縁筒31は、このように最大電界となる中央のコンデンサ素子15に隣接していないため、最大電界となる部位でのトリプルジャンクションの形成が回避される。従って、高電界部位でのトリプルジャンクションに起因した放電や絶縁破壊の虞が低減する。
【0031】
また、絶縁筒31の先端31aは、前述したように、第1のコンデンサ素子15AのR面取部19aを覆わずにモールド部19の円筒面19bにおいて終端している。従って、R面取部19aに起因した電界の集中によるトリプルジャンクションの形成が回避される。つまり、
図11(B)は、比較例として、絶縁筒31の先端31aが第1のコンデンサ素子15AのR面取部19aを覆う位置まで延びている構成を示しているが、このようにR面取部19aの上に絶縁筒31が重なると、R面取部19aと絶縁筒31内周面との間に楔状のギャップGが生じるため、トリプルジャンクションとしての電界の集中がより生じやすくなる。
図11(A)のように絶縁筒31の先端31aがモールド部19の円筒面19bにおいて終端していれば、このような楔状のギャップGの形成が回避される。
【0032】
また、上記実施例では、絶縁筒31を短く構成したことで、その全体が円環状の可動側シールド8によって覆われている。これにより、絶縁筒31付近の電界がより確実に低減し、コンデンサ素子15Aのモールド部19との間での放電や絶縁破壊がより確実に阻止される。なお、図示例では、絶縁筒31の全長が可動側シールド8に完全に覆われているが、絶縁筒31の先端が可動側シールド8から多少突出していても、可動側シールド8によって周辺に電界緩和効果が得られるため、絶縁筒31付近の電界は低くなる。
【0033】
一方、上記実施例では、絶縁筒31の全長が短いものの、可動支持部26側の端部において絶縁筒31が第1のコンデンサ素子15Aの外周に嵌合しているので、コンデンサ列16の支持強度が十分に確保される。つまり、コンデンサ列16の端部を、熱による長さ方向の膨張・収縮を許容しつつ確実に保持することができる。そして、可動支持部26の軸方向に動くスプリングシート36が、絶縁筒31によって確実にガイドされ、かつ、コイルスプリング37やスプリングシート36等を含む可動支持部26の周囲が可動側シールド8によって覆われることで確実に電界が低減される。
【0034】
なお、図示例では、第1のコンデンサ素子15Aが絶縁筒31と嵌合するように絶縁筒31の全長を設定してあるが、絶縁筒31をさらに短くし、第1のコンデンサ素子15Aが絶縁筒31の先端から露出するようにしてもよい。つまり、絶縁筒31は、少なくとも可動支持部26の円盤状のスプリングシート36が嵌合するだけの長さを有していればよい。
【0035】
次に、
図8は、この発明に係る分圧コンデンサ1の第2実施例を示している。この第2実施例は、コンデンサ列16の可動支持部26側に設けられた絶縁筒31に加えて、コンデンサ列16の一端を固定的に支持する固定支持部25側に第2の絶縁筒51を備えた構成となっている。第2の絶縁筒51は、基本的な構成は可動支持部26側の絶縁筒31と同様であり、FRP(繊維強化樹脂)などの絶縁材料により、真空インタラプタ2側の一部が開口した断面略C字形の筒状に形成されており、その内周面に、前述したフッ素樹脂製シート32を介して、コンデンサ列16の長手方向の一部が嵌合している。
【0036】
詳しくは、コンデンサ列16の中で最も固定支持部25側に位置するコンデンサ素子15(符号15Bとして示す)のみが第2の絶縁筒51に嵌合している。そして、第2の絶縁筒51の先端51aは、やはりコンデンサ素子15BのR面取部19aを覆わずに、円筒面19bにおいて終端している。なお、第2の絶縁筒51は、固定支持部25のピン45が貫通することによって支持されている。
【0037】
このように固定支持部25側にも第2の絶縁筒51を設けることによって、コンデンサ列16の支持強度が向上する。上記の第2の絶縁筒51に関しても、絶縁筒31に関して説明したのと同様に、5個のコンデンサ素子15の中の中央部において最大電界となるので、高電界部位でのトリプルジャンクションの形成を回避することが可能である。
【0038】
また、図示しないが、絶縁筒31に加えて、コンデンサ列16の長手方向の中央部つまり中間導体22の周囲に第3の絶縁筒を設け、中間導体22の両側に位置する一対のコンデンサ素子15がこの第3の絶縁筒に嵌合した構成としてもよい。この第3の絶縁筒は、上記の第2の絶縁筒51と同様に、第3の絶縁筒を直径方向に貫通するピンおよびブラケットを介して例えば中間シールド10に支持させることが可能である。
【0039】
次に、
図9は、コンデンサ列16として、成型コンデンサ160を用いた本発明の第3実施例を示している。この成型コンデンサ160は、第1実施例において説明したように連結ネジ21を介して複数個連結固定してなるコンデンサ素子15の外周を、さらに2次モールド部190によってモールドして、細長い円柱状に構成したものである。特に、この実施例では、
図10(a)の説明図にも示すように、5個のコンデンサ素子15を含む第1コンデンサ列部分161と、同じく5個のコンデンサ素子15を含む第2コンデンサ列部分162と、が中央の円環状の中間コンデンサ導体163とともに2次モールド部190によって一体にモールド成形された構成となっている。なお、
図10(b)、(c)は、成型コンデンサ160の変形例を示しており、図(b)の例では、中間コンデンサ導体163が周方向の一部にのみ設けられている。図(c)の例では、第1コンデンサ列部分161と第2コンデンサ列部分162とが個々にモールドされた上で、中間コンデンサ導体163を介して堅固に連結された構成となっている。成型コンデンサ160としては、
図10(a)〜(c)のいずれであってもよい。
【0040】
上記中間コンデンサ導体163は、
図10(a)〜(c)に示すように、5個のコンデンサ素子15と5個のコンデンサ素子15との間に電気的に接続されている。そして、
図9に示すように、中間コンデンサ導体163は、被覆付き電線24を介して真空インタラプタ2のアークシールド9に電気的に接続されている。
【0041】
このように2次モールド部190によってコンデンサ素子15を被覆した成型コンデンサ160を用いた構成では、コンデンサ列16自体の剛性が高くなることから、全長の短い絶縁筒31であっても、コンデンサ列16の支持強度が高く得られる。
【0042】
なお、第2実施例と同様に、固定支持部25側に第2の絶縁筒51を付加することも可能である。さらに、中間コンデンサ導体163の周囲に第3の絶縁筒を付加することも可能である。
【0043】
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明は上記実施例のように一対の真空インタラプタ2を備えた構成に限定されるものではなく、種々の型式の真空インタラプタに付随した分圧コンデンサに適用することが可能である。また、上記実施例では、真空インタラプタ2の可動側導体5側に分圧コンデンサ1の可動支持部26が配置されているが、真空インタラプタ2の固定側導体4側に分圧コンデンサ1の可動支持部26を配置した構成であってもよい。さらに、コンデンサ列の中に中間導体22を含まない構成であっても本発明は適用が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…分圧コンデンサ
2…真空インタラプタ
4…固定側導体
5…可動側導体
7…固定側シールド
8…可動側シールド
10…中間シールド
15…コンデンサ素子
16…コンデンサ列
21…連結ネジ
22…中間導体
25…固定支持部
26…可動支持部
31…絶縁筒
35…ピン
36…スプリングシート
37…コイルスプリング
51…第2の絶縁筒
160…成型コンデンサ
【要約】
【課題】分圧コンデンサ1のコンデンサ列16の中の高電界部位でのトリプルジャンクションの形成を防止する。
【解決手段】真空インタラプタ2に並列に設けられる分圧コンデンサ1は、複数個のコンデンサ素子15を連結ネジで連結して細長い円柱状に構成したコンデンサ列16を有する。コンデンサ列16の一端は、固定支持部25で支持され、他端は、可動支持部26において熱による膨張・収縮を許容するように支持される。可動支持部26に取り付けられた絶縁筒31は、長さが短いものとなっており、第1のコンデンサ素子15Aのみが嵌合している。5個のコンデンサ素子15の中の中央が高電界部位となり、コンデンサ列16の端部は電界が低いので、高電界部位でのトリプルジャンクションの形成が防止される。
【選択図】
図1