(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0016】
(熱電モジュール2)
図1に示すように、本実施形態では、熱電モジュール2は、熱電素子としての複数の半導体素子4と、高抵抗層6と、内部導体層8と、取り出し電極10、12と、を有する。また、本実施形態では、熱電モジュールにおいて、半導体素子として、全てn型の半導体素子を用いている。
【0017】
図1に示すように、各半導体素子4の第1端部4aが熱源側(高温側)に配置され、第2端部4bが反熱源側(低温側)に配置される。すなわち、各半導体素子4の第1端部4aと第2端部4bとの間で温度差が生じる。このような温度差が生じることで、熱電効果により端部間で起電力が発生する。半導体素子単体での起電力は小さいため、
図1に示すように、内部導体層8を介して、半導体素子を直列に接続し、取り出し電極10、12を通じて電力を得る。このとき、半導体素子の周囲には高抵抗層が形成されているため短絡は生じない。
【0018】
(半導体素子4)
半導体素子4は、本実施形態に係る熱電素子用組成物から構成される。該熱電素子用組成物は、CaおよびMnを有し、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、負のゼーベック係数を示す。したがって、半導体素子4は、n型の半導体素子である。また、CaとMnとのモル比を示すCa/Mnが1.0002〜1.1978であり、好ましくは1.0002〜1.1053であり、より好ましくは1.0002〜1.0202である。
【0019】
通常、熱電素子用組成物として、Ca/Mn=1であるCaMnO
3を用いるが、本実施形態では、Ca/Mnを1より大きくしている。このようにすることで、該組成物から構成される半導体素子の使用温度域(たとえば、800℃以上)における熱伝導率を低くすることができ、性能指数Zを向上させることができる。その結果、高性能の熱電モジュールを得ることができる。しかも、該組成物の線膨張率は、導体、たとえばPdの線膨張率に近い。その結果、上記の熱電モジュールの使用時にクラック等の構造欠陥の発生を抑制できるため、モジュールの信頼性を確保することができる。
【0020】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、ランタノイドで置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。すなわち、CaとMnとの合計モル数が2.0000モルである該熱電素子用組成物において、ランタノイドはCaおよび/またはMnを0.3モルまで置換する。なお、ランタノイドは、Caを置換してもよいし、Mnを置換してもよいし、CaおよびMnの両方を置換してもよい。後述する置換元素も同様である。
【0021】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができるため、クラックの発生を防止できる。
【0022】
ランタノイドとしては、Nd、Pr、Sm、La、Ybから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、Nd、PrおよびSmから選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
【0023】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、2族元素で置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0024】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0025】
2族元素としては、Ba、MgおよびSrから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、BaおよびMgから選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、5族元素で置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0027】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0028】
5族元素としては、Ta、NbおよびVから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、TaおよびNbから選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
【0029】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、6族元素で置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0030】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0031】
6族元素としては、MoおよびWから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、Moであることがより好ましい。
【0032】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、14族元素で置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0033】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0034】
14族元素としては、SnおよびSiから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、Snであることがより好ましい。
【0035】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、第1遷移金属元素で置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0036】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0037】
第1遷移金属元素としては、Fe、Cu、Ni、Cr、Ti、Coから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、CrおよびNiであることがより好ましい。
【0038】
また、本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、Yで置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0039】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。しかも、該組成物を構成する結晶粒子の粒子径を均一にする効果を有しており、焼成温度が変動しても電気特性のバラツキをも小さくすることができる。
【0040】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、Znで置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0041】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0042】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、Zrで置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.03〜0.15モルである。
【0043】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。しかも、該組成物を構成する結晶粒子の粒子径を微細にする効果を有しており、電気特性のバラツキをも小さくすることができる。
【0044】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、Naで置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.001〜0.03モルである。
【0045】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0046】
本実施形態に係る熱電素子用組成物は、Caおよび/またはMnの一部が、Alで置換されていてもよい。置換量は、CaとMnとの合計モル数2.0000モルに対し、好ましくは0モルより多く、0.3モル以下、より好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.001〜0.03モルである。
【0047】
置換量を上記の範囲とすることで、熱伝導率を低くし、性能指数Zが向上するとともに、組成物の線膨張係数を導体の線膨張係数に近づけることができる。
【0048】
なお、上記の置換元素を併用してもよい。
【0049】
半導体素子4の形状は特に制限されず、用途等に応じて決定すればよいが、本実施形態では、
図1において、Z軸方向に延びる四角柱の形状を有している。また、そのサイズも特に限定されないが、たとえば四角柱の高さが1〜50mmであり、底面の縦または横が1〜50mm程度である。
【0050】
(高抵抗層6)
本実施形態では、
図1に示すように、高抵抗層6は、半導体素子4間を直列に接続する内部導体層8が半導体素子4と隔てられるように形成され、半導体素子間の短絡を防いでいる。高抵抗層が形成されていなくても、熱電モジュールとしての特性を示すことができるが、高抵抗層が形成されることで、内部導体層を保護することができる。高抵抗層の材質は特に制限されないが、本実施形態では、高抵抗層は、CaおよびMnを含み、それらのモル比率がCa:Mn=32:68〜37:63である酸化物を主成分として含有している。
【0051】
該高抵抗層は、Zr、Fe、Ni、Alなどの添加物を含んでもよい。また、高抵抗層の厚みは、特に制限されず、用途等に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態では、1〜1000μmである。なお、本実施形態では、室温(25℃)における高抵抗層の電気抵抗率は、500Ω・cm以上であることが好ましい。
【0052】
(内部導体層8)
内部導体層8は、発生した起電力を取り出せる程度の導電性を有していれば特に制限されないが、Cu、Pt、Au、Ag、Pd、Ni等の導電性金属のいずれか、あるいはそれらの合金が例示される。本実施形態では、Pdが好ましい。また、上記の導電性金属あるいは合金と、高抵抗層を構成する成分と、のコンポジット層であってもよいし、上記の導電性金属あるいは合金と、高抵抗層を構成する成分と、本実施形態に係る説電素子用組成物と、のコンポジット層であってもよい。
【0053】
内部導体層の厚みは、特に制限されず、用途等に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態では、1〜500μmである。なお、本実施形態では、室温(25℃)における内部導体層の電気抵抗率は、0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0054】
(取り出し電極10,12)
取り出し電極10,12は、発生した起電力を取り出せる程度の導電性を有していれば特に制限されないが、上述した導電性金属あるいは合金であってもよいし、上記のコンポジット層であってもよい。
【0055】
(熱電モジュールの製造方法)
図1に示す構造の熱電モジュール2は、印刷法やシート法等の公知の方法により製造すればよい。本実施形態では、焼成後に端子部、高抵抗層、内部導体層および半導体素子となる各ペースト層を形成して、積層体を作製し、これを焼成することで、熱電モジュールを製造する。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0056】
本実施形態では、半導体素子を形成するための素子ペーストを調製する。まず、上述の複合酸化物の原料を準備し、これらの原料と、バインダと、溶剤と、を混練して、素子ペーストを調製する。必要に応じて、上述の置換元素を含む酸化物の原料を準備し、該複合酸化物の原料と混合して、素子ペーストを調製してもよい。なお、これらの酸化物を所定の組成になるように秤量・混合し、混合物を所定温度で仮焼した後に得られる仮焼物を用いて、素子ペーストを調製してもよい。
【0057】
上記の複合酸化物あるいは置換元素を含む酸化物の原料としては、酸化物だけでなく、その混合物や複合酸化物を用いることができる。また、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物を用いてもよい。
【0058】
高抵抗層を形成するための抵抗体ペーストは、素子ペーストと同様にして調製すればよい。
【0059】
内部導体層を形成するための電極ペーストは、上記の導電性金属等の原料と、バインダと、溶剤と、を混練して得られる。
【0060】
端子部および取り出し電極を形成するための電極ペーストは、内部導体層を形成するための電極ペーストと同様にして調製すればよい。
【0061】
得られたペーストを用いて、PETフィルムなどの支持シートの上に、
図1に示す第1端子部10a,8aとなる電極ペースト層を、スクリーン印刷などにより所定パターンで形成する。その後に、
図1に示す高抵抗層6となる抵抗体ペースト層、内部導体層8となる電極ペースト層、半導体素子4となる素子ペースト層を、スクリーン印刷などにより所定パターンで形成する。
【0062】
それらの印刷を繰り返し、最後に、
図1に示す第2端子部8bおよび取り出し電極12となる電極ペースト層をスクリーン印刷などにより所定パターンで形成し、積層体を得る。
【0063】
得られた積層体に対し、必要に応じて脱バインダ処理を行い、その後に焼成処理を行う。脱バインダ処理時の加熱温度は、特に限定されないが、たとえば250〜500℃である。また、焼成時の加熱温度は、たとえば大気中にて、1100〜1400℃である。このようにして、焼結体としての熱電素子用組成物が得られる。
【0064】
本実施形態では、同じn型の複数の半導体素子4を用い、さらに、半導体素子4を構成する本実施形態に係る熱電素子用組成物の組成に近い組成を有する材料で高抵抗層を形成して、熱電モジュール2を構成している。その結果、モジュール一体化のための製造が容易になり、同時焼成時にクラックや剥がれなどが生じるおそれが少なくなる。そのため、熱電モジュール2の品質が向上すると共に、信頼性が向上する。
【0065】
なお、熱電モジュールの全周を高抵抗層で覆うように構成し、取り出し電極の一部のみが外部に露出するようにしても良い。
【0066】
また、熱電モジュールにおいて、四角柱形状の各半導体素子の全周が高抵抗層で覆われ、隣接する素子の接合部に位置する高抵抗層の内部に、内部導体層が埋め込まれていてもよい。
【0067】
また、熱電モジュールは、半導体素子が直交する2軸の各方向に行列状に配置され、全体として、平板ブロックを形成していてもよい。
【0068】
さらに、熱電モジュールは、半導体素子がリング分割片の形状とされ、リング分割片の内周側および外周側が、第1端部および第2端部となるように、これらの半導体素子を組み合わせて円柱リングを形成されていてもよい。また、リングを複数に分割して構成された分割型熱電モジュールを組み合わせて構成してもよい。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0070】
たとえば、上述した実施形態では、複数のn型半導体素子のみで熱電モジュールを構成しているが、n型半導体素子とp型半導体素子とを用いて、熱電モジュールを構成してもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明する。
【0072】
(実施例1)
まず、CaとMnとを含み、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物の原料として、CaCO
3およびMn
3O
4を準備した。また、表1および2に示す置換元素の原料を準備した。置換元素の原料としては、酸化物、炭酸塩などを用いた。
【0073】
次に、これらの原料を、CaとMnとの合計が2.0000モル、CaとMnとの比が表1に示す比になるように秤量し、ボールミルにより約20時間湿式混合して、原料混合物を得た。また、置換元素は、CaとMnとの合計2.0000モルのうち、表1および2に示す量を元素換算で置換するように秤量した。なお、置換されたCaおよびMn量は、表1に示すCaとMnとの比に応じて決めた。
【0074】
次に、得られた原料混合物を、空気中において1050℃で10時間仮焼して仮焼き材料とした後、ボールミルで20時間湿式粉砕して粉砕材料を得た。
【0075】
次に、この粉砕材料を乾燥した後、該粉砕材料100重量%に、バインダとしてのポリビニルアルコールを1重量%添加して造粒し、20メッシュの篩で整粒して顆粒とした。この顆粒を、150MPaの圧力で加圧成形して、円柱形状(寸法=φ12mm×高さ2mm)の成形体を得た。
【0076】
次に、これら各成形体を、空気中において、1100〜1400℃で2時間焼成して、各試料の焼結体を得た。得られた焼結体に対し熱伝導率および線膨張係数の特性評価を行った。
【0077】
また、得られた粉砕材料と、Pd粉末と、を用いて、
図2に示す熱電モジュールを作製した。まず、粉砕材料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、素子ペーストを得た。
【0078】
また、Pd粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、ペースト化して電極ペーストを作製した。
【0079】
そして、上記にて作製した素子ペーストを用いて、PETフィルム上に、グリーンシートを形成した。次いで、この上に電極ペーストを用いて、Pd電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層(内部導体)を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを2枚積層し、その上にグリーンシートをさらに積層し、加圧接着することによりグリーン積層体を得た。
【0080】
次いで、得られたグリーン積層体について、脱バインダ処理を行い、空気中において、1100〜1400℃で2時間焼成して、熱電モジュールの試料を得た。すなわち、
図2に示す熱電モジュール20において、半導体素子40と内部導体80とが一体化されている。得られた熱電モジュールに対し構造欠陥の特性評価を行った。
【0081】
(熱伝導率)
得られた円柱状焼結体に対し、熱伝導率測定装置(アルバック理工株式会社製TC7000)を用いて、レーザーフラッシュ法により、800℃における熱伝導率を測定した。熱伝導率は小さいことが好ましく、本実施例では、熱伝導率が4.0W/mK以下である試料を良好とした。結果を表1および2に示す。
【0082】
(線膨張係数)
円柱状焼結体に対し、線膨張係数測定装置(ブルカーエイエックスエス社製TD5000SA)を用いて、室温から800℃までの熱膨張を測定し、線熱膨張係数αを測定した。線膨張係数は、Pdの線膨張係数(14.5ppm/℃)を基準とし、この値に近いほど好ましい。本実施例では、線膨張係数が、14.5±1.9ppm/℃の範囲内にある試料を良好とした。結果を表1および2に示す。
【0083】
(構造欠陥)
得られた熱電モジュール20に対し、
図2に示すように、一方端40aを800℃に加熱し、他方端40bを100℃として、熱電モジュールの使用温度に近い温度とし、組成物と導体との界面にクラックが発生するか否かを評価した。この試験を同一組成の試料10個に対して行い、クラックが発生しないものを良好とした。結果を表1および2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1より、置換元素が含まれず、Ca/Mn=1.0000である場合(試料番号1)、熱伝導率が高いことが確認できた。また、置換元素が含まれず、Ca/Mn=1.2222である場合(試料番号7)、Pdの線膨張係数との差が大きくなり、クラックが発生する試料が確認できた。
【0087】
一方、置換元素が含まれず、Ca/Mnが上述した範囲内である場合には、熱伝導率が低く、Pdの線膨張係数との差も小さいため、クラック等の構造欠陥の発生を抑制できることが確認できた。
【0088】
また、表1および2より、Caおよび/またはMnの一部を、置換元素で置換することで、熱伝導率を低くしつつ、クラック等の構造欠陥の発生を抑制できることが確認できた。