特許第6156557号(P6156557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6156557非架橋樹脂組成物、非架橋樹脂成形体、及び非架橋樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6156557
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】非架橋樹脂組成物、非架橋樹脂成形体、及び非架橋樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20170626BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20170626BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20170626BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20170626BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20170626BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K7/06
   C08L77/00
   C08L79/08 Z
   C08L23/26
   C08J5/00CES
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-152067(P2016-152067)
(22)【出願日】2016年8月2日
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-154288(P2015-154288)
(32)【優先日】2015年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-34686(P2016-34686)
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大越 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 剛
(72)【発明者】
【氏名】守屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 侑子
(72)【発明者】
【氏名】中島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古屋 俊江
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−058552(JP,A)
【文献】 特開2014−181307(JP,A)
【文献】 特開平06−192448(JP,A)
【文献】 特開2001−146533(JP,A)
【文献】 特開2010−168526(JP,A)
【文献】 特開2011−016909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
77/00−77/12
79/00−79/08
C08J 5/00−5/24
C08K 7/00−7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、
前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下の炭素繊0.1質量部以上20質量部以下のポリアミド、及びカルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された0.1質量部以上20質量部以下の修飾ポリオレフィンである相溶化剤と、
を含み、
前記ポリアミドが前記炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さが50nm以上700nm以下である非架橋樹脂組成物。
【請求項2】
前記被覆層と前記ポリオレフィンとの間に、前記相溶化剤の層が介在している請求項1に記載の非架橋樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種のポリオレフィンであり、
前記相溶化剤が、カルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された修飾ポリオレフィンのうち、修飾ポリプロピレン、修飾ポリエチレン、修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種の相溶化剤である請求項1又は請求項2に記載の非架橋樹脂組成物。
【請求項4】
前記修飾ポリオレフィンが、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非架橋樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上10質量%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の非架橋樹脂組成物。
【請求項6】
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上15質量%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の非架橋樹脂組成物。
【請求項7】
ポリオレフィンと、
前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下の炭素繊0.1質量部以上20質量部以下のポリアミド、及びカルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された0.1質量部以上20質量部以下の修飾ポリオレフィンである相溶化剤と、
を含み、
前記ポリアミドが前記炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さが50nm以上700nm以下である非架橋樹脂成形体。
【請求項8】
前記被覆層と前記ポリオレフィンとの間に、前記相溶化剤の層が介在している請求項に記載の非架橋樹脂成形体。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種のポリオレフィンであり、
前記相溶化剤が、カルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された修飾ポリオレフィンのうち、修飾ポリプロピレン、修飾ポリエチレン、修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種の相溶化剤である請求項7又は請求項8に記載の非架橋樹脂成形体
【請求項10】
前記修飾ポリオレフィンが、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンである請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の非架橋樹脂成形体。
【請求項11】
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上10質量%以下である請求項〜請求項10のいずれか1項に記載の非架橋樹脂成形体。
【請求項12】
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上15質量%以下である請求項〜請求項11のいずれか1項に記載の非架橋樹脂成形体。
【請求項13】
ポリオレフィンと、前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下の炭素繊0.1質量部以上20質量部以下のポリアミド、及びカルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された0.1質量部以上20質量部以下の修飾ポリオレフィンである相溶化剤と、を溶融混練する工程を含む非架橋樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非架橋樹脂組成物、非架橋樹脂成形体、及び非架橋樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され、各種用途に使用されている。
特に、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを含む樹脂組成物は、家電製品や自動車の各種部品、筐体等、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品に使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、「(a)0.1〜90重量%の少なくとも1種類のポリオレフィン、(b)0.1〜50重量%の少なくとも1種類のポリアミド、(c)0.1〜15重量%の少なくとも1種類の修飾ポリオレフィン、(d)5.0〜75重量%の少なくとも1種類の強化用繊維、(e)0.1〜10重量%の少なくとも1種類の硫黄含有添加剤を含む、3mm以上の長さを有する長繊維強化ポリオレフィン構造体」が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、「酸変性ポリオレフィン(A)ブロックおよびポリアミド(B)ブロックを有し、13C−NMRによるアミド基由来の炭素と、メチル基、メチレン基およびメチン基由来の炭素との比(α)が、0.5/99.5〜12/88であるポリマー(X)を含有してなるポリオレフィン樹脂用改質剤」が開示されている。さらに、特許文献2には、「このポリオレフィン樹脂用改質剤(K)、ポリオレフィン樹脂(D)および無機繊維(E)を含有してなる無機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−528956号公報
【特許文献2】特開2014−181307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ポリオレフィン及び炭素繊維を含む非架橋樹脂組成物において、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が炭素繊維の周囲に被覆層を形成しない、又は、当該樹脂が炭素繊維の周囲に形成する被覆層の厚さが50nm未満若しくは700nm超えの場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
【0008】
請求項1に係る発明は、
ポリオレフィンと、
前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下の炭素繊0.1質量部以上20質量部以下のポリアミド、及びカルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された0.1質量部以上20質量部以下の修飾ポリオレフィンである相溶化剤と、
を含み、
前記ポリアミドが前記炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さが50nm以上700nm以下である非架橋樹脂組成物。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記被覆層と前記ポリオレフィンとの間に、前記相溶化剤の層が介在している請求項1に記載の非架橋樹脂組成物。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種のポリオレフィンであり、
前記相溶化剤が、カルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された修飾ポリオレフィンのうち、修飾ポリプロピレン、修飾ポリエチレン、修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種の相溶化剤である請求項1又は請求項2に記載の非架橋樹脂組成物。
【0011】
請求項4に係る発明は、
前記修飾ポリオレフィンが、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非架橋樹脂組成物。
【0015】
請求項に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上10質量%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の非架橋樹脂組成物。
【0016】
請求項に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上15質量%以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の非架橋樹脂組成物。
【0017】
請求項に係る発明は、
ポリオレフィンと、
前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下の炭素繊0.1質量部以上20質量部以下のポリアミド、及びカルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された0.1質量部以上20質量部以下の修飾ポリオレフィンである相溶化剤と、
を含み、
前記ポリアミドが前記炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さが50nm以上700nm以下である非架橋樹脂成形体。
【0018】
請求項に係る発明は、
前記被覆層と前記ポリオレフィンとの間に、前記相溶化剤の層が介在している請求項に記載の非架橋樹脂成形体。
【0019】
請求項に係る発明は、
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種のポリオレフィンであり、
前記相溶化剤が、カルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された修飾ポリオレフィンのうち、修飾ポリプロピレン、修飾ポリエチレン、修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂から選択される少なくも1種の相溶化剤である請求項7又は請求項8に記載の非架橋樹脂成形体
【0020】
請求項10に係る発明は、
前記修飾ポリオレフィンが、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンである請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の非架橋樹脂成形体。
【0024】
請求項11に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記ポリアミドの含有量が、1質量%以上10質量%以下である請求項〜請求項10のいずれか1項に記載の非架橋樹脂成形体。
【0025】
請求項12に係る発明は、
前記炭素繊維の質量に対する、前記相溶化剤の含有量が、1質量%以上15質量%以下である請求項〜請求項11のいずれか1項に記載の非架橋樹脂成形体。
【0026】
請求項13に係る発明は、
ポリオレフィンと、前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下の炭素繊0.1質量部以上20質量部以下のポリアミド、及びカルボン酸無水物残基を含む修飾部位が導入された0.1質量部以上20質量部以下の修飾ポリオレフィンである相溶化剤と、を溶融混練する工程を含む非架橋樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、ポリオレフィン及び炭素繊維を含む非架橋樹脂組成物において、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が炭素繊維の周囲に被覆層を形成しない、又は、当該樹脂が炭素繊維の周囲に形成する被覆層の厚さが50nm未満若しくは700nm超えの場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項2に係る発明によれば、被覆層とポリオレフィンとの間に、相溶化剤の層が介在していない場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂としてイミダゾールを用いた場合と比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合と比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
【0028】
請求項に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超である場合に比べ、成形性に優れ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部未満又は20質量部超である場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部未満又は20質量部超である場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、1質量%未満又は10質量%超えである場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
請求項に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する、相溶化剤の含有量が、1質量%未満又は15質量%超えである場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる非架橋樹脂組成物が提供される。
【0029】
請求項に係る発明によれば、ポリオレフィン及び炭素繊維を含む非架橋樹脂成形体において、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が炭素繊維の周囲に被覆層を形成しない、又は、当該樹脂が炭素繊維の周囲に形成する被覆層の厚さが50nm未満若しくは700nm超えの場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項に係る発明によれば、被覆層とポリオレフィンとの間に、相溶化剤の層が介在していない場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂としてポリイミダゾールを用いた場合と比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項に係る発明によれば、相溶化剤としてエポキシコポリマーを用いた場合と比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
【0030】
請求項に係る発明によれば、炭素繊維の含有量が、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部未満又は200質量部超である場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部未満又は20質量部超である場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項に係る発明によれば、相溶化剤の含有量が、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部未満又は20質量部超である場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項11に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂の含有量が、1質量%未満又は10質量%超えである場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
請求項12に係る発明によれば、炭素繊維の質量に対する、相溶化剤の含有量が、1質量%未満又は15質量%超えである場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が提供される。
【0031】
請求項13に係る発明によれば、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と相溶化剤との重合体に、ポリオレフィン、及び炭素繊維を溶融混練する工程を含む場合に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた非架橋樹脂成形体が得られる樹脂組成物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態に係る樹脂成形体の要部を示すBF−STEM像である。
図2】本実施形態に係る樹脂成形体の要部の一例を説明するための模式図である。
図3】マイクロドロップレット法を用いられる試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の樹脂組成物及び樹脂成形体の一例である実施形態について説明する。
【0034】
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィンと、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、相溶化剤と、を含む。そして、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂は、炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さは50nm以上700nm以下となっている。
以下、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂を、「特定樹脂」と称することがある。
【0035】
近年では、機械的強度に優れた樹脂成形体を得るために、母材(マトリックス)としてのポリオレフィンと強化繊維とを含む樹脂組成物が用いられている。
このような樹脂組成物では、強化繊維とポリオレフィンとの親和性が低いと、この両者の界面に空間が生じ、かかる界面における密着性が低下することがある。
特に、樹脂組成物中の強化繊維として炭素繊維を用いた場合には、ガラス繊維等に比べ高い機械的強度を求められるため、炭素繊維とポリオレフィンとの界面における密着性の低下は、機械的強度、特に曲げ弾性率及び引張り弾性率の低下を招くことがある。
【0036】
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィンと、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂(特定樹脂)と、相溶化剤と、の4成分を含む。
この4成分を含むことで、曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れる樹脂成形体が得られる。このような効果が得られる作用については明確ではないが、以下のように推測される。
【0037】
本実施形態に係る樹脂組成物から樹脂成形体を得る際、かかる樹脂組成物を熱溶融混合すると、母材としてのポリオレフィンと相溶化剤とが溶融し、また、相溶化剤の分子内の一部と特定樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合とで両者が相溶して、特定樹脂が樹脂組成物中で分散することとなる。
この状態の中で、特定樹脂が炭素繊維と接触すると、特定樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合と、炭素繊維の表面に存在する極性基と、が親和力(引力及び水素結合)にて物理的に接着する。また、一般的にポリオレフィンと特定樹脂とは相溶性が低いため、ポリオレフィンと特定樹脂との間の斥力により、特定樹脂と炭素繊維との接触頻度が上がり、その結果として、特定樹脂の炭素繊維に対する接着量や接着面積が上がる。このように、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が形成される(図1参照)。なお、図1中、PPはポリオレフィンを示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層を示している。
そして、被覆層を形成する特定樹脂も相溶化剤の分子内の一部と相溶している状態のため、この相溶化剤がポリオレフィンとも相溶することで、引力と斥力とが平衡状態が形成され、特定樹脂による被覆層は、厚さが50nm以上700nm以下と薄く、かつ均一に近い状態で形成されることとなる。特に、炭素繊維の表面に存在するカルボキシ基と特定樹脂の分子内に含まれるアミド結合又はイミド結合との親和性は高いため、炭素繊維の周囲には特定樹脂による被覆層が形成され易く、薄膜で且つ均一性に優れる被覆層になると考えられる。
なお、被覆層は炭素繊維の周囲全体を被覆していることが好ましいが、一部被覆されていない部分があってもよい。
【0038】
以上のことから、炭素繊維とポリオレフィンとの界面の密着性が高まり、機械的強度、特に曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた樹脂成形体が得られると推測される。
【0039】
ここで、本実施形態に係る樹脂組成物も、樹脂組成物(例えばペレット)の製造のときの熱溶融混練、及び射出成型により、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が形成され、当該被覆層の厚さが50nm以上700nm以下となる構造を有している。
【0040】
本実施形態に係る樹脂組成物において、特定樹脂による被覆層の厚さは、50nm以上700nm以下であり、曲げ弾性率及び引張り弾性率の更なる向上の点から、50nm以上650nm以下が好ましい。被覆層の厚みを50nm以上とすると、曲げ弾性率及び引張り弾性率が向上し、被覆層の厚みを700nm以下とすると、被覆層を介した炭素繊維とポリオレフィンとの界面が脆弱となることを抑え、曲げ弾性率及び引張り弾性率の低下が抑制される。
【0041】
被覆層の厚さは、次の方法により測定された値である。電子顕微鏡(Keyence社製VE−9800)を用いて、測定対象物を液体窒素中で破断させ、その断面を観察する。その断面において、炭素繊維の周囲に被覆する被覆層の厚みを100箇所計測し、その平均値として算出する。
【0042】
なお、本実施形態に係る樹脂組成物(及びその樹脂成形体)では、例えば、かかる被覆層とポリオレフィンとの間を相溶化剤が一部相溶する構成をとる。
具体的には、例えば、特定樹脂による被覆層と母材であるポリオレフィンとの間には、相溶化剤の層が介在していることがよい(図2参照)。つまり、被覆層の表面に相溶化剤の層が形成され、この相溶化剤の層を介して、被覆層とポリオレフィンが隣接していることがよい。相溶化剤の層は被覆層に比べ薄く形成されるが、相溶化剤の層の介在により、被覆層とポリオレフィンとの密着性(接着性)が高まり、機械的強度、特に曲げ弾性率及び引張り弾性率に優れた樹脂成形体が得られ易くなる。なお、図2中、PPはポリオレフィンを示し、CFが炭素繊維を示し、CLは被覆層、CAは相溶化剤の層を示している。
【0043】
特に、相溶化剤の層は、被覆層とは結合(水素結合、相溶化剤と特定樹脂との官能基の反応による共有結合等)し、ポリオレフィンとは相溶した状態で、被覆層とポリオレフィンの間に介在していることがよい。この構成は、例えば、相溶化剤として、母材であるポリオレフィンと同じ構造又は相溶する構造を有し、且つ、分子内の一部に前述した特定樹脂の官能基と反応する部位を含む相溶化剤を適用すると実現され易い。
具体的には、例えば、ポリオレフィンとしてポリオレフィン、特定樹脂としてポリアミド、及び相溶化剤として無水マレイン酸修飾ポリオレフィンを適用した場合、無水マレイン酸修飾ポリオレフィンの層(相溶化剤の層)は、その無水マレイン酸部位が開環して生成したカルボキシ基がポリアミドの層(被覆層)のアミン残基と反応して結合し、そのポリオレフィン部位がポリオレフィンと相溶した状態で介在していることがよい。
【0044】
ここで、相溶化剤の層が、被覆層とポリオレフィンとの間に介在していることを確認する方法は、次の通りである。
解析装置として赤外分光分析装置(サーモフィッシャー社製NICOLET6700FT−IR)を用いる。例えば、ポリオレフィンとしてポリプロピレン(以下PP)、ポリアミドとしてPA66と修飾ポリオレフィンとしてマレイン酸変性ポリプロピレン(以下MA−PP)との樹脂組成物(又は樹脂成形体)の場合、その混合物、PPとPA66との混合物、PPとMA−PPとの混合物、参照としてPP単体、PA66単体、MA−PP単体のIRスペクトルをKBr錠剤法で取得し、混合物における酸無水物由来(MA−PPに特徴的なピーク)の波数1820cm−1以上1750cm−1以下の範囲のピーク面積を比較解析する。PPとPA66とMA−PPとの混合物において、酸無水物ピーク面積の減少を確認し、MA−PPとPA66とが反応していることを確認する。これにより、被覆層とポリオレフィンとの間に相溶化剤の層(結合層)が介在していることが確認できる。詳しくは、MA−PPとPA66とが反応していると、MA−PPの環状マレイン化部分が開環してPA66のアミン残基が化学結合することで環状マレイン化部分が減るので、被覆層とポリオレフィンとの間に相溶化剤の層(結合層)が介在していると確認できる。
【0045】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の各成分の詳細について説明する。
【0046】
−ポリオレフィン(A)−
ポリオレフィンは、樹脂組成物の母材であり、炭素繊維により強化される樹脂成分である(マトリックス樹脂とも呼ばれる)。
ポリオレフィンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリオレフィンとしては、オレフィンに由来する繰り返し単位を含む樹脂であって、樹脂全体に対し30質量%)以下であれば、オレフィン以外の単量体に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
ポリオレフィンは、オレフィン(必要に応じて、オレフィン以外の単量体)の付加重合によって得られる。
また、ポリオレフィンを得るための、オレフィン及びオレフィン以外の単量体は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、ポリオレフィンは、コポリマーであってもよいし、ホモポリマーであってよい。また、ポリオレフィンは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0048】
ここで、オレフィンとしては、直鎖状又は分岐状の脂肪族オレフィン、脂環式オレフィンが挙げられる。
脂肪族オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等のα−オレフィンが挙げられる。
また、脂環式オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
中でも、コストの点から、α−オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0049】
また、オレフィン以外の単量体としては、公知の付加重合性化合物から選択される。
付加重合性化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン類;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類;等が挙げられる。
【0050】
好適なポリオレフィンとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブテン、ポリイソブチレン、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等が挙げられる。
中でも、オレフィンに由来する繰り返し単位のみを含む樹脂であることが好ましく、特に、コストの点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0051】
ポリオレフィンの分子量は、特に限定されず、樹脂の種類、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上20万以下の範囲がより好ましい。
また、ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂の種類、成形条件や樹脂成形体に用途等に応じて決定すればよい。例えば、ポリオレフィンの融点(Tm)は、100℃以上300℃以下の範囲が好ましく、150℃以上250℃以下の範囲がより好ましい。
【0052】
なお、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)及び融点(Tm)は、以下のようにして測定された値を示す。
即ち、ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で行う。GPC装置としては高温GPCシステム「HLC−8321GPC/HT」、溶離液としてo−ジクロロベンゼンを用いる。ポリオレフィンを一旦高温(140℃以上150℃以下の温度)でo−ジクロロベンゼンに溶融・ろ過し、ろ液を測定試料とする。測定条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、RI検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作成する。
また、ポリオレフィンの融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0053】
ポリオレフィンの含有量は、樹脂成形体の用途等に応じて、決定すればよいが、例えば、樹脂組成物の全質量に対して、5質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上95質量%以下がより好ましく、20質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
【0054】
−炭素繊維−
炭素繊維としては、公知の炭素繊維が用いられ、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のいずれもが用いられる。
【0055】
炭素繊維は、公知の表面処理が施されたものであってもよい。
炭素繊維の表面処理としては、例えば、酸化処理、サイジング処理が挙げられる。
また、炭素繊維の繊維径、繊維長等は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。
更に、炭素繊維の形態は、特に限定されず、樹脂成形体の用途等に応じて選択すればよい。炭素繊維の形態としては、例えば、多数の単繊維から構成される繊維束、繊維束を集束したもの、繊維を二次元又は三次元に織った織物等が挙げられる。
【0056】
炭素繊維としては、市販品を用いてもよい。
PAN系炭素繊維の市販品としては、東レ(株)製の「トレカ(登録商標)」、東邦テナックス(株)製の「テナックス」、三菱レイヨン(株)製の「パイロフィル(登録商標)」等が挙げられる。その他、PAN系炭素繊維の市販品としては、Hexcel社製、Cytec社製,Dow−Aksa社製、台湾プラスチック社製,SGL社製の市販品も挙げられる。
ピッチ系炭素繊維の市販品としては、三菱レイヨン(株)製の「ダイリアード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー(株)製の「GRANOC」、(株)クレハ製の「クレカ」等が挙げられる。その他、ピッチ系炭素繊維の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製、Cytec社製の市販品も挙げられる。
【0057】
なお、炭素繊維は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
炭素繊維の含有量は、母材であるポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部以上200質量部以下であること好ましく、1質量部以上180質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上150質量部以下であることが更に好ましい。
炭素繊維がポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部以上含まれることで、樹脂組成物の強化が図られ、また、炭素繊維の含有量を、ポリオレフィン100質量部に対し200質量部以下とすることで、樹脂成形体を得る際の成形性が良好になる。
なお、炭素繊維以外の強化繊維を用いる場合、強化繊維の全質量に対して80質量%以上を炭素繊維とすることが好ましい。
【0059】
ここで、以降、ポリオレフィン100質量部に対する含有量(質量部)は、「phr(per hundred resin)と略記することがある。
この略記を使用した場合、上記炭素繊維の含有量は、0.1phr以上200phr以下となる。
【0060】
−イミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を含む樹脂(特定樹脂)−
特定樹脂は、特定の部分構造を含み、前述したように、炭素繊維の周囲を被覆しうる樹脂である。
この特定樹脂について、詳細に説明する。
【0061】
特定樹脂は、ポリオレフィンとの相溶性が低い樹脂、具体的にはポリオレフィンとは溶解度パラメータ(SP値)が異なる樹脂であることが好ましい。
ここで、ポリオレフィンと特定樹脂とのSP値の差としては、両者間の相溶性、両者間の斥力の点から、3以上が好ましく、3以上6以下がより好ましい。
ここでいうSP値とは、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
【0062】
また、特定樹脂は、分子内にイミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を含む。
イミド結合又はアミド結合を含むことで、炭素繊維の表面に存在する極性基との間で親和性が発現する。
特定樹脂の具体的な種類としては、イミド結合及びアミド結合の少なくとも一方を主鎖に含む熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミノ酸等が挙げられる。
【0063】
特定樹脂としては、ポリオレフィンとの相溶性が低く、SP値が異なる方が好ましいため、ポリオレフィンとは種類の異なる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
中でも、曲げ弾性率及び引張り弾性率の更なる向上の点、炭素繊維との密着性に優れる点から、ポリアミド(PA)が好ましい。
【0064】
ここで、特定樹脂と炭素繊維との密着性は、例えば、界面せん断強度といった指標にて評価される。
界面せん断強度は、マイクロドロップレット法を用いて測定される。ここで、図3に示す試験の模式図を用いて、マイクロドロップレット法について説明する。
マイクロドロップレット法とは、単繊維fに液体樹脂を塗布し、ドロップレットD(樹脂粒、樹脂玉とも呼ばれる)をつけ、このドロップレットDを固定した後に、矢印方向に単繊維fの引き抜き試験を行うことで、両者の界面接着性を評価する方法である。
そして、この試験を元に、下記式を用いて、界面せん断強度(τ)が算出される。
【0065】
【数1】


【0066】
式中、τは界面せん断強度を表し、Fは引抜荷重を表し、dは単繊維の繊維径を表し、Lはドロップレット長を表す。
算出された界面せん断強度(τ)の値が大きいほど、炭素繊維と特定樹脂との密着性が高いことを示し、この値が大きな炭素繊維及び特定樹脂の組み合わせを選択することにより、より高い曲げ弾性率及び引張り弾性率を有する樹脂成形体が形成される、といった指標ともなる。
【0067】
ポリアミドとしては、ジカルボン酸とジアミンとを共縮重合したもの、ラクタムを開環重縮合したもの、が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、フタル酸、等が挙げられ、中でも、アジピン酸、テレフタル酸が好ましい。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、デカメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン等が挙げられ、中でも、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられ、中でも、ε−カプロラクタムが好ましい。
【0068】
ポリアミドとしては、炭素繊維との親和性(接着性)の点、樹脂成形体の成形性の点から、ε−カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(PA6)、6.6ナイロン、6.10ナイロン、1〜12ナイロン、芳香族ナイロンで知られるMXD,HT−1m、6−Tナイロン、ポリアミノトリアゾール、ポリベンツイミダゾール、ポリオキサジアゾール、ポリアミドイミド、ピペラジン系ポリイミドであることが好ましく、中でも、6.6ナイロンが好ましい。
【0069】
特定樹脂の分子量は、特に限定されず、樹脂組成物中に併存するポリオレフィンよりも熱溶融し易ければよい。例えば、特定樹脂がポリアミドであれば、その重量平均分子量は、1万以上30万以下の範囲が好ましく、1万以上10万以下の範囲がより好ましい。
また、特定樹脂のガラス転移温度又は溶融温度は、上記分子量と同様、特に限定されず、樹脂組成物中に併存するポリオレフィンよりも熱溶融し易ければよい。例えば、特定樹脂がポリアミドであれば、その融点(Tm)は、100℃以上400℃以下の範囲が好ましく、150℃以上350℃以下の範囲がより好ましい。
【0070】
特定樹脂の含有量は、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上20質量部以下であることが更に好ましい。
特定樹脂の含有量が上記の範囲であることで、炭素繊維との親和性が得られ、曲げ弾性率及び引張り弾性率の向上が図られる。
【0071】
特定樹脂の含有量は、炭素繊維との親和性を効果的に発現させる点から、前述した炭素繊維の含有量と比例させることが好ましい。
炭素繊維の質量に対する特定樹脂の含有量としては、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上9質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上8質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する特定樹脂の含有量が、1質量%以上であると炭素繊維と特定樹脂との親和性が得られ易い、10質量%以下であると樹脂流動性が向上する。
【0072】
−相溶化剤−
相溶化剤は、ポリオレフィンと特定樹脂との親和性を高める樹脂である。
相溶化剤としては、ポリオレフィンに応じて決定すればよい。
相溶化剤としては、ポリオレフィンと同じ構造又は相溶する構造を有し、且つ、分子内の一部に前述した特定樹脂と親和性を有する部位又は特定樹脂の官能基と反応する部位を含むものが好ましい。
【0073】
具体的には、相溶化剤としては、修飾ポリオレフィンを用いることが好ましい。
ここで、ポリオレフィンがポリプロピレン(PP)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾ポリプロピレン(PP)が好ましく、同様に、ポリオレフィンがエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)であれば修飾ポリオレフィンとしては修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)が好ましい。
【0074】
修飾ポリオレフィンとしては、カルボキシ基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸エステル残基、イミノ基、アミノ基、エポキシ基等を含む修飾部位が導入されたポリオレフィンが挙げられる。
ポリオレフィンに導入される修飾部位としては、ポリオレフィンと特定樹脂との親和性の更なる向上の点、成形加工時の上限温度の点から、カルボン酸無水物残基を含むことが好ましく、特に、無水マレイン酸残基を含むことが好ましい。
【0075】
修飾ポリオレフィンは、上述した修飾部位を含む化合物をポリオレフィンに反応させて直接化学結合する方法や、上述した修飾部位を含む化合物を用いてグラフト鎖を形成し、このグラフト鎖をポリオレフィンに結合させる方法などがある。
上述した修飾部位を含む化合物としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水クエン酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルベンゾエート、N−〔4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル〕アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体が挙げられる。
なお、上記の中でも、不飽和カルボン酸である無水マレイン酸をポリオレフィンと反応させてなる修飾ポリオレフィンが好ましい。
【0076】
修飾ポリオレフィンとして具体的には、無水マレイン酸修飾ポリプロピレン、無水マレイン酸修飾ポリエチレン、無水マレイン酸修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、これらの付加体又は共重合等の酸修飾ポリオレフィンが挙げられる。
【0077】
修飾ポリオレフィンとしては、市販品を用いてもよい。
修飾プロピレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(100TS、110TS、1001、1010)等が挙げられる。
修飾ポリエチレンとしては、三洋化成工業(株)製のユーメックス(登録商標)シリーズ(2000)、三菱化学(株)製のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)としては、三菱化学(株)のモディック(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0078】
なお、相溶化剤の分子量は、特に限定されないが、加工性の点から、0.5万以上10万以下の範囲が好ましく、0.5万以上8万以下の範囲がより好ましい。
【0079】
相溶化剤の含有量は、ポリオレフィン100質量部に対し0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上18質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上15質量部以下であることが更に好ましい。
相溶化剤の含有量が上記の範囲であることで、ポリオレフィンと特定樹脂との親和性が高められ、曲げ弾性率及び引張り弾性率の向上が図られる。
【0080】
相溶化剤の含有量は、ポリオレフィンと特定樹脂との親和性を効果的に発現させる点から、前述した特定樹脂の含有量と比例させる(炭素繊維の含有量に間接的に比例させる)ことが好ましい。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量としては、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
炭素繊維の質量に対する相溶化剤の含有量が、1質量%以上であると炭素繊維と特定樹脂との親和性が得られ易い。15質量%以下(特に10質量%以下)であると変色や劣化の原因となる未反応官能基の残存が抑制される。
【0081】
−その他の成分−
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分の他、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、加熱された際の垂れ(ドリップ)防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、炭素繊維以外の補強剤(タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)等の周知の添加剤が挙げられる。
その他の成分は、例えば、ポリオレフィン100質量部に対し0質量部以上10質量部以下がよく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。ここで、「0質量部」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
【0082】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段が用いられ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
溶融混練の際の温度(シリンダ温度)としては、樹脂組成物を構成する樹脂成分の融点等に応じて、決定すればよい。
【0083】
特に、本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィンと、炭素繊維と、特定樹脂と、相溶化剤と、を溶融混練する工程を含む製造方法により得られることが好ましい。ポリオレフィンと、炭素繊維と、特定樹脂と、相溶化剤と、を一括して溶融混練すると、炭素繊維の周囲に特定樹脂による被覆層が薄く且つ均一に近い状態で形成され易くなり、曲げ弾性率及び引張り弾性率が高まる。
【0084】
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、ポリオレフィンと、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂(特定樹脂)と、相溶化剤と、を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。そして、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂は、炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さは50nm以上700nm以下となっている。
【0085】
なお、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を調製しておき、この樹脂組成物を成形して得られたものであってもよいし、炭素繊維以外の成分を含む組成物を調製し、成形時に、かかる組成物と炭素繊維とを混合して得られたものであってもよい。
成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0086】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い点で、射出成形が好ましい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば180℃以上300℃以下であり、好ましくは200℃以上280℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上100℃以下であり、30℃以上60℃以下がより好ましい。
射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0087】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、容器などの用途に好適に用いられる。より具体的には、電子・電気機器や家電製品の筐体;電子・電気機器や家電製品の各種部品;自動車の内装部品;CD−ROMやDVD等の収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などである。
特に、本実施形態に係る樹脂成形体は、強化繊維として炭素繊維を適用しているため、より機械的強度に優れた樹脂成形体となることから、金属部品への代替用途に好適となる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0089】
[実施例1〜10、比較例1〜9]
表1及び表2に従った成分(表中の数値は部数を示す)を、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、表1及び表2に示す溶融混練温度(シリンダ温度)で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製、NEX150)にて、表1及び表2に示す射出成形温度(シリンダ温度)、金型温度50℃で、ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応)(試験部厚さ4mm、幅10mm)と、D2試験片(長さ60mm、幅60mm、厚み2mm)と、を成形した。
【0090】
[評価]
得られた2種の試験片を用いて、以下のような評価を行った。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0091】
−曲げ弾性率−
得られたISO多目的ダンベル試験片について、万能試験装置(島津製作所社製、オートグラフAG−Xplus)を用いて、ISO178に準拠する方法で、曲げ弾性率を測定した。
【0092】
−引張り弾性率、伸び−
得られたISO多目的ダンベル試験片について、評価装置(島津製作所製、精密万能試験機オートグラフAG−IS 5kN)を用いてISO527に準拠する方法で、引張り弾性率、及び伸びについて測定した。
【0093】
−荷重たわみ温度(HDT)−
得られたISO多目的ダンベル試験片について、HDT測定装置(東洋精機(株)製、HDT−3)を用いて、ISO178曲げ試験に準拠する方法で、1.8MPaの荷重における荷重たわみ温度(℃)を測定した。
【0094】
−寸法変化率−
得られたD2試験片を、28℃、31%RHの条件下で24hr放置し、試験片のTD方向及びMD方向のそれぞれについて、放置前後での試験片の寸法変化率(%)を測定した。
なお、寸法変化は、顕微測長装置(オリンパス製、STM6−LM)により測定した。
【0095】
−被覆層の厚さ測定−
得られたD2試験片を用いて、既述の方法に従って、被覆層の厚さを測定した。なお、この測定の前に、被覆層の有無を確認した。また、表1〜表2中、「−」との表記は、被覆層が形成され、その被覆層の厚さが50nm以上700nm以下の範囲内にあることを確認したことを示している。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】


【0098】
なお、表1〜表2の材料種の詳細は、以下の通りである。
−熱可塑性樹脂−
・ポリプロピレン(ノバテック(登録商標)PP MA3、日本ポリプロ(株)製)、SP値:9.3
・ポリエチレン(ウルトゼックス20100J、(株)プライムポリマー製)、SP値:8.0
・EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(41X 三井デユポン(株)製)、SP値:10.0
−強化繊維−
・炭素繊維(表面処理有、トレカ(登録商標)糸T300、東レ(株)製)
・炭素繊維(表面処理無、上記トレカを溶媒浸漬し、サイジング剤を除去したもの)
−特定樹脂−
・ポリアミド(PA6、ザイテル(登録商標)7331J、Dupont社製)、SP値:13.6
・ポリアミド(PA66、101L、Dupont社製)、SP値:11.6
・ポリアミド(PA6T、TY−502NZ、東洋紡製)、SP値:13.5
−相溶化剤−
・無水マレイン酸修飾ポリプロピレン(ユーメックス(登録商標)110TS、三洋化成工業(株)製
・無水マレイン酸修飾ポリエチレン(モディックM142、三菱化学(株)製)
・無水マレイン酸修飾EVA:無水マレイン酸修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(モディックA543、三菱化学(株)製)
【0099】
−改質剤−
共重合体A:ポリアミド6(ザイテル(登録商標)7331J、Dupont社製)」5に対し、無水マレイン酸修飾ポリプロピレン(ユーメックス(登録商標)110TS、三洋化成工業(株)製)を3の割合にて乾燥状態で混合(ドライブレンド)する。それを2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、シリンダ温度240℃で混練し、ペレットを得た。このペレットを共重合体Aとして使用した。
【0100】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に共に優れた成形体が得られることが分かる。
特に、実施例3と比較例7及び8との比較により、特定樹脂及び相溶化剤のどちらか一方では、曲げ弾性率及び引張り弾性率の向上には十分でないことが分かる。
また、ポリオレフィンに対する炭素繊維の含有量が同じである場合、本実施例(実施例3)の方が比較例(比較例4〜6)に比べ、曲げ弾性率及び引張り弾性率に加え、引張り弾性率伸び、荷重たわみ温度(HDT)、及び寸法変化率の全てにおいて優れること分かる。
さらに、共重合体Aを使用し、炭素繊維の周囲に被覆層が形成された比較例9は、被覆層の厚さが754nmであった。この比較例9に比べ、本実施例(例えば実施例3等)は、適切な厚みの被覆層を有するため、曲げ弾性率及び引張り弾性率に共に優れた成形体が得られることが分かる。なお、比較例9と実施例(例えば実施例3等)との被覆層をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察したところ、比較例9に比べ、実施例(例えば実施例3等)は被覆層が均一に近い状態で炭素繊維の周囲に形成されていることが確認された。
【0101】
また、各実施例で作製した成形体を既述方法により分析したところ、被覆層とポリオレフィンとの間に、使用した相溶化剤の層(無水マレイン酸修飾ポリプロピレンの層、無水マレイン酸修飾ポリエチレン層、無水マレイン酸修飾エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の層)が介在していること(被覆層の表面に相溶化剤の層が形成されていること)が確認された。
【要約】
【課題】曲げ弾性率及び引張り強度に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオレフィンと、炭素繊維と、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂と、相溶化剤と、を含み、アミド結合及びイミド結合の少なくとも一方を含む樹脂が、前記炭素繊維の周囲に被覆層を形成し、当該被覆層の厚さが50nm以上700nm以下である樹脂組成物。
【選択図】なし
図1
図2
図3