(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パルス状の高電圧を鉛蓄電池に印加する高電圧充電と、前記高電圧より低い低電圧を前記鉛蓄電池に印加する低電圧充電とを交互に繰り返すことによって前記鉛蓄電池を充電する充電制御部と、
前記高電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池への充電量と、前記低電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池からの放電量との差に基づいて、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間、及び、前記低電圧充電における前記低電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する設定部と
を備え、
前記充電制御部は、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間を変化させ、
前記設定部は、前記低電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量に基づいて、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間、及び、前記低電圧充電における前記低電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する
鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記低電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間を短くする
請求項1に記載の鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記低電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、前記高電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池への充電量と前記低電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間を設定する
請求項1又は2に記載の鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記低電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量に応じた量だけ、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間を短くする、又は、前記低電圧充電における前記低電圧の電圧値を下げる
請求項1に記載の鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記高電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、前記高電圧充電における前記高電圧の印加時間を短くする
請求項6に記載の鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記高電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、前記高電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池への充電量と前記低電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、前記高電圧充電における前記高電圧の印加時間を設定する
請求項6又は7に記載の鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記高電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、前記高電圧充電における前記高電圧の電圧値を低くする
請求項6から8のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の制御装置。
前記設定部は、前記高電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、前記高電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池への充電量と前記低電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、前記高電圧充電における前記高電圧の電圧値を低くする
請求項9に記載の鉛蓄電池の制御装置。
パルス状の高電圧を鉛蓄電池に印加する高電圧充電と、前記高電圧より低い低電圧を前記鉛蓄電池に印加する低電圧充電とを交互に繰り返すことによって前記鉛蓄電池を充電する段階と、
前記高電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池への充電量と、前記低電圧充電を行う期間における前記鉛蓄電池からの放電量との差に基づいて、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間、及び、前記低電圧充電における前記低電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する段階と
を備え、
前記充電する段階は、
前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間を変化させる段階
を有し、
前記設定する段階は、
前記低電圧の印加時間の前記変化により生じた前記充電量と前記放電量との差の変化量に基づいて、前記低電圧充電における前記低電圧の印加時間、及び、前記低電圧充電における前記低電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する段階
を有する鉛蓄電池の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
図1は、一実施形態における電源システム120の機能ブロック及び負荷90を概略的に示す。電源システム120は、電源装置10と蓄電システム20とを備える。電源装置10は、蓄電システム20の入力端子12に接続される。蓄電システム20の出力端子14には負荷90が接続される。電源装置10は交流電源であってよい。負荷90は交流で動作する負荷であってよい。蓄電システム20は、無停電電源装置(UPS)において用いられてよい。また、蓄電システム20は、太陽光発電装置、風力発電装置、燃料電池装置などの発電装置において用いられてよい。
【0027】
蓄電システム20は、コンバータ22と、インバータ24と、鉛蓄電池装置100とを有する。鉛蓄電池装置100は、制御装置30と、鉛蓄電池40と、充放電装置50と、電流計測器60とを有する。制御装置30は、充放電制御部31と、設定部33とを有する。
図1において、電源装置10、コンバータ22、インバータ24、鉛蓄電池40、充放電装置50及び負荷90の電気的接続は、単線図で示される。
【0028】
充放電装置50の一端は、コンバータ22とインバータ24との間のノード16に電気的に接続される。充放電装置50の他端は鉛蓄電池40に電気的に接続される。電流計測器60は、充放電装置50と鉛蓄電池40との間を流れる電流を計測する。電流計測器60による計測値は、制御装置30に供給される。また、鉛蓄電池40の端子間電圧は、制御装置30に供給される。
【0029】
コンバータ22は、電源装置10から出力される交流電流を直流電流に変換する。コンバータ22により変換された直流電流は、インバータ24及び充放電装置50の少なくとも一方に出力され得る。充放電装置50は、鉛蓄電池40の充放電を行う。具体的には、充放電装置50は、コンバータ22からの直流電流を、鉛蓄電池40の充電用の直流電流に変換して、鉛蓄電池40側に出力する充電回路を有する。鉛蓄電池40は、充放電装置50から出力される充電用の直流電流により充電される。また、充放電装置50は、鉛蓄電池40から出力される直流電流を、給電用の直流電流に変換して、ノード16側に出力する放電回路を有する。給電用の直流電流は、インバータ24に供給される。制御装置30は、充放電装置50を制御することにより、鉛蓄電池40の充放電を制御する。制御装置30は、鉛蓄電池40の充電制御装置として機能する。また、制御装置30は、鉛蓄電池40の放電制御装置として機能する。
【0030】
インバータ24は、コンバータ22から出力される直流電流及び充放電装置50から出力される直流電流の少なくとも一方を、交流電流に変換して出力する。インバータ24から出力された交流電流は、負荷90に供給される。なお、負荷90が直流で動作する場合は、インバータ24を省略してよい。また、電源装置10が直流を供給する場合は、コンバータ22を省略してよい。
【0031】
通常動作時において、電源システム120は、コンバータ22及びインバータ24を介して電源装置10の電力を負荷90に供給してよい。また、通常動作時において、制御装置30は、電源装置10の電力で鉛蓄電池40を充電してよい。非通常動作時において、蓄電システム20は、鉛蓄電池40に蓄えられている電力を負荷90に供給してよい。
【0032】
なお、蓄電システム20がUPSに用いられる場合、入力電源正常時には、電源装置10からコンバータ22及びインバータ24を介して負荷90に電力が供給される。これに対し、停電などの入力電源異常時には、鉛蓄電池40から充放電装置50及びインバータ24を経て負荷90に電力が供給される。入力電源異常時とは、例えば、電源装置10からの電力について、電圧及び周波数の少なくとも一方が定常状態及び過渡変動範囲を外れた場合、又は、ひずみ若しくは電力瞬断時間が予め定められた限界値を超えたときであってよい。なお、蓄電システム20がUPSに用いられる場合、電源装置10は商用交流電源であってよい。電源装置10は、商用交流電源以外の電源であってよい。なお、電源システム120は、蓄電システム20をバイパスして、入力端子12及び出力端子14を介さずに電源装置10の電力を負荷90に供給する直送回路を有してよい。
【0033】
また、蓄電システム20が発電装置に用いられる場合、電源装置10は発電機であってよい。例えば、電源装置10は、太陽電池、風力発電機、燃料電池、内燃力発電機などの発電機であってよい。この場合、蓄電システム20は電源装置10の補助電源として機能してよい。電源装置10の出力が規定値の場合には、電源装置10からコンバータ22及びインバータ24を介して負荷90に電力が供給される。この場合、鉛蓄電池40は、電源装置10からの電力のうち負荷90によって消費されない余剰電力により充電されてよい。これに対し、電源装置10に異常が生じた場合などには、鉛蓄電池40から充放電装置50及びインバータ24を介して、負荷90に電力が供給される。また、電源装置10から負荷90に供給される電力が、負荷90が必要とする電力より小さい場合に、鉛蓄電池40から充放電装置50及びインバータ24を介して、負荷90に不足分の電力が供給されてよい。
【0034】
鉛蓄電池40は、電極としての少なくとも1つの正極及び少なくとも1つの負極と、正極と負極との間に設けられたセパレータと、正極、負極及びセパレータが設けられた空間を満たす電解液を有する1以上の電池セルを有する。鉛蓄電池40は、例えば直列接続された6つの電池セルを有するユニットであってよい。鉛蓄電池40において、電池セルとは、直列に接続された一対の正極及び負極を有する鉛蓄電池の最小単位を指す。本実施形態において、電池セルの数について特に記載がない場合を除いて、鉛蓄電池40は直列接続された6つの電池セルを有する。
【0035】
制御装置30は、充放電装置50を制御することにより、鉛蓄電池40を間欠充電する。制御装置30において、充放電制御部31は、鉛蓄電池40の充放電を制御する主体となる。充放電制御部31は、鉛蓄電池40の充電制御部として機能する。充放電制御部31は、鉛蓄電池40の放電制御部として機能する。具体的には、充放電制御部31は、パルス状の高電圧を鉛蓄電池40に印加する高電圧充電と、高電圧より低い低電圧を鉛蓄電池40に印加する低電圧充電とを交互に繰り返すことによって鉛蓄電池40を充電する。間欠とは、高電圧が印加されない期間が繰り返し存在することを意味する。
【0036】
ここで、鉛蓄蓄電池の負極及び正極の劣化について説明する。鉛蓄電池においては、充電時に下記の半反応が進む。
(正極反応)PbSO
4+2H
2O → PbO
2+4H
++SO
42−+2e
−
(負極反応)PbSO
4+2e
− → Pb+SO
42−
また、放電時には、充電時とは逆の下記の半反応が進む。
(正極反応)PbO
2+4H
++SO
42−+2e
− → PbSO
4+2H
2O
(負極反応)Pb+SO
42− → PbSO
4+2e
−
鉛蓄電池においては放電により負極に形成された硫酸鉛により、サルフェーションが促進される場合がある。
【0037】
電極に形成された硫酸鉛は、速やかに十分な充電を行えば分解されて電解液に戻り得る。しかし、硫酸鉛が付着した状態が継続すると、電極に形成された硫酸鉛が結晶化して硬質化する。硫酸鉛が硬質化すると、充電によっても上記の反応は実質的に起こらない。したがって、結晶化した硫酸鉛が電極を被うことで、電極の有効面積が減少する。これにより、各電極における反応が進みにくくなり、放電性能が低下し得る。また、結晶化した硫酸鉛の量が多くなるほど、電気エネルギーの蓄積を担う電解液中の鉛イオン及び硫酸イオンが減少する。そのため、結晶化した硫酸鉛が増えるほど、蓄電性能が低下し得る。場合によっては、鉛蓄電池の充電が困難になってしまう。このようにして、負極は、主として硫酸鉛により劣化し得る。
【0038】
また、鉛蓄電池の充電時において、上記した正極反応及び負極反応で表される電池反応以外に、電解液中の水の電気分解反応が生じる場合がある。水の電気分解により生じた水素及び酸素の少なくとも一部は、鉛蓄電池の外部に放出され得る。また、電解液は、蒸発及び透湿などによっても鉛蓄電池の外部に失われる。これにより、電解液濃度が経時的に上昇し得る。例えば、電解液中の水が失われることで、鉛蓄電池の充電率が規定値である場合における硫酸濃度が、経時的に上昇し得る。これにより、正極の電極格子の腐食が進む。このようにして、正極の劣化が進む。なお、水の電気分解反応は、充電時における電池反応以外の副反応の一例である。
【0039】
電源システム120においては、充放電制御部31の制御により高電圧充電と低電圧充電とを交互に繰り返して鉛蓄電池40を充電する。低電圧充電期間が存在することで、電解液中の水が電気分解により二次電池から失われることを抑制できる。また、低電圧と高電圧とを切り替えて印加することで、負極に形成された硫酸鉛の分解を促進し得る。これにより、鉛蓄電池40の電極の劣化を抑制することができる。間欠充電の具体例及び電極の劣化抑制については、後述する。
【0040】
高電圧充電及び低電圧充電の充電条件を設定する制御について説明する。設定部33は、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40への充電量と、低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40からの放電量との差に基づいて、低電圧充電における低電圧の印加時間、低電圧充電における低電圧の電圧値、高電圧充電における高電圧の印加時間、及び、高電圧充電における高電圧の電圧値の少なくとも1つを設定する。なお、低電圧充電における低電圧の印加時間、低電圧充電における低電圧の電圧値、高電圧充電における高電圧の印加時間、及び、高電圧充電における高電圧の電圧値は、充電条件の一例である。充電条件とは、低電圧充電における鉛蓄電池40からの放電量、及び、高電圧充電における鉛蓄電池40の充電量を制御するための条件である。例えば、充電条件は、高電圧充電において鉛蓄電池40に印加する波形、及び、低電圧充電において鉛蓄電池40に印加する波形の少なくとも一方を含んでよい。
【0041】
まず、低電圧充電における充電条件の設定について具体的に説明する。なお、低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40からの放電量を単に「放電量」と呼ぶ場合がある。また、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40への充電量を単に「充電量」と呼ぶ場合がある。
【0042】
設定部33は、充電量と放電量との差に基づいて、低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40の自己放電量を算出してよい。設定部33は、算出した自己放電量に基づいて、低電圧充電における低電圧の印加時間、及び、低電圧充電における低電圧の電圧値の少なくとも一方を設定してよい。
【0043】
充放電制御部31は、低電圧充電における低電圧の印加時間を変化させる。この場合、設定部33は、低電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量に基づいて、低電圧充電における低電圧の印加時間、及び、低電圧充電における低電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する。例えば、設定部33は、低電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、低電圧充電における低電圧の印加時間を短くしてよい。設定部33は、低電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量に応じた量だけ、低電圧充電における低電圧の印加時間を短くする、又は、低電圧充電における低電圧の電圧値を下げてよい。
【0044】
後で詳細に説明するように、高電圧充電を行う期間における充電量と低電圧充電を行う期間における放電量との差から、低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40の自己放電量を見積もることができる。自己放電量は、鉛蓄電池40の劣化状態によって変化する。自己放電量が大きいと、負極において硫酸銅が硬質化して、いわゆるサルフェーション劣化が進行してしまう。制御装置30によれば、自己放電量に応じて低電圧充電を行う期間を短くしたり、低電圧充電の低電圧の電圧値を高めたりすることができるので、自己放電量が増大することを抑制できる。このように、制御装置30によれば、低電圧充電の充電条件を、鉛蓄電池40の状態に応じて適切に設定することができる。
【0045】
なお、設定部33は、低電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40への充電量と低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、低電圧充電における低電圧の印加時間を設定してよい。
【0046】
また、設定部33は、低電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、低電圧充電における低電圧の電圧値を高めてよい。設定部33は、低電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40への充電量と低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、低電圧充電における低電圧の電圧値を下げてよい。
【0047】
次に、高電圧充電における充電条件の設定について説明する。設定部33は、充電量と放電量との差に基づいて、高電圧充電を行う期間に鉛蓄電池40に供給された、鉛蓄電池40の電池反応に寄与した電気量以外の電気量を算出する。設定部33は、算出した電気量に基づいて、高電圧充電における高電圧の印加時間、及び、高電圧充電における高電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する。ここで、「鉛蓄電池40の電池反応に寄与した電気量以外の電気量」は、副反応に寄与した電気量と短絡等で発生する電気量の総和と考えることができる。
【0048】
充放電制御部31は、高電圧充電における高電圧の印加時間を変化させる。この場合、設定部33は、高電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量に基づいて、高電圧充電における高電圧の印加時間、及び、高電圧充電における高電圧の電圧値の少なくとも一方を設定する。例えば、設定部33は、高電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、高電圧充電における高電圧の印加時間を短くしてよい。
【0049】
後で詳細に説明するように、高電圧充電を行う期間における充電量と低電圧充電を行う期間における放電量との差から、高電圧充電を行う期間における副反応に寄与する電気量及び短絡等で発生する電気量を見積もることができる。副反応とは、水の電気分解を含む。副反応に寄与する電気量や短絡等で発生する電気量は、鉛蓄電池40の劣化状態によって変化する。例えば水の電気分解量が大きくなると、電解液濃度が上昇して、正極の腐食が進行してしまう。制御装置30によれば、副反応に寄与する電気量に応じて高電圧充電を行う期間を短くしたり、高電圧充電の高電圧の電圧値を低くしたりすることができるので、副反応に寄与する電気量が増大することを抑制できる。また、鉛蓄電池40の劣化等によって短絡が生じ易くなっている場合は、高電圧充電を行う期間を短くしたり、高電圧充電の高電圧の電圧値を低くしたりすることで、短絡等で流れる電気量を低減することができる。このように、制御装置30によれば、高電圧充電の充電条件を、鉛蓄電池40の状態に応じて適切に設定することができる。なお、本実施形態の説明において、本実施形態に係る制御の意義を分かり易く説明するために、「鉛蓄電池40の電池反応に寄与した電気量以外の電気量」として、鉛蓄電池40における副反応、特に水の電気分解反応に寄与した電気量を取り上げて説明する場合がある。また、副反応に寄与した電気量を「副反応量」と呼ぶ場合がある。
【0050】
なお、設定部33は、高電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40への充電量と低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、高電圧充電における高電圧の印加時間を設定してよい。
【0051】
また、設定部33は、高電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、高電圧充電における高電圧の電圧値を低くしてよい。設定部33は、高電圧の印加時間の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量が予め定められた閾値を超える場合に、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40への充電量と低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池40からの放電量との差が予め定められた基準値以下になるように、高電圧充電における高電圧の電圧値を低くしてよい。
【0052】
なお、充放電制御部31は、高電圧充電における高電圧の電圧値を変化させてもよい。この場合、設定部33は、高電圧の電圧値の変化により生じた充電量と放電量との差の変化量に基づいて、高電圧充電における高電圧の印加時間、及び、高電圧充電における高電圧の電圧値の少なくとも一方を設定してよい。
【0053】
また、高電圧充電を行う期間の副反応量を見積もるために、充放電制御部31は、高電圧充電における高電圧の印加時間及び電圧値の少なくとも一方を変化させてよい。この場合、設定部33は、高電圧の印加時間及び電圧値の少なくとも一方を変化させることにより生じた充電量と放電量との差の変化量に応じた量だけ、高電圧充電における高電圧の印加時間を変化させる、又は、高電圧充電における高電圧の電圧値を変化させてよい。
【0054】
以上に説明したように、制御装置30によれば、高電圧充電と低電圧充電とを繰り返す充電方式において、高電圧充電及び低電圧充電の充電条件を適切に決定することができる。特に、鉛蓄電池40における自己放電量や、鉛蓄電池40において生じる副反応量に応じて、高電圧充電及び低電圧充電の充電条件を適切に決定することができる。
【0055】
図2は、鉛蓄電池40に印加する充電電圧のタイミングチャートを模式的に示す。
図2のタイミングチャートの横軸は時刻を示す。
図2のタイミングチャートの縦軸は鉛蓄電池40の端子間に印加する電圧を示す。
図2のタイミングチャートに示されるように、充放電制御部31は、間欠充電によって鉛蓄電池40を充電する。
【0056】
T
Hは、鉛蓄電池40の端子間に高電圧を印加する高電圧充電期間の時間長さを示す。T
Lは、鉛蓄電池40の端子間に低電圧V
Lを印加する高電圧充電期間の時間長さを示す。V
Hは、高電圧の電圧値を示す。V
Hは、高電圧充電を行う期間における最大電圧値を示してよい。V
Lは、低電圧の電圧値を示す。V
Lは、低電圧充電を行う期間における最小電圧値を示してよい。
【0057】
横軸において、ts1は、低電圧を印加している状態から高電圧の印加を開始する時刻の1つを示す。te1は、ts1から始まる高電圧の印加を終了して、低電圧の印加を開始する時刻を示す。よって、T
H=te1−ts1である。充放電制御部31は、ts1において、鉛蓄電池40に印加する電圧を低電圧から高電圧に切り替え、te1において、鉛蓄電池40に印加する電圧を高電圧から低電圧に切り替える。
【0058】
充放電制御部31は、充放電装置50を制御して、鉛蓄電池40に高電圧を印加するT
Hと鉛蓄電池40に低電圧を印加するT
Lとを有する1周期Tを1回以上繰り返すことにより、鉛蓄電池40を間欠充電する。なお、V
H、V
L、T
H及びT
Lは、設定部33が設定する充電条件の一例である。
【0059】
高電圧充電において、充放電制御部31は、充放電装置50を制御することにより、パルス状の高電圧を鉛蓄電池40に印加する。
図2に示すパルス状の高電圧は、予め定められたピーク電圧値V
Hを有する矩形波形状を有する。なお、パルス状の高電圧とは、短時間で急峻に電圧値が上昇する電圧波形を意味してよい。パルス状の高電圧は、矩形波以外に、例えば、正弦波、三角波又は鋸波におけるピークを含む部分期間の波形形状を有してよい。
【0060】
ここで、V
H、V
L、T
H及びT
Lがどの程度の値であるかを例示するとともに、間欠充電により得られる効果を説明することを目的として、V
H、V
L、T
H及びT
Lの具体的な数値等を例示する。
【0061】
T
Hは、例えば60秒である。T
Lは例えば3600秒である。間欠充電によれば、高電圧をパルス状に印加するので、T
Hを短くすることができる。T
Hが短いほど、電解液中の水が電気分解により二次電池から失われることを抑制できる。また、パルス状の高電圧を印加することで、負極に発生した硫酸鉛が分解され易くなる場合がある。また、T
Hを短くすることで、鉛蓄電池40の正極の劣化を抑制し得る。例えば、正極に形成される酸化鉛に起因する体積膨張を抑制し得る。
【0062】
V
Hは、電池メーカーが指定する仕様値であってよい。V
Hは13.65Vであってよい。この場合、T
Hの期間内に、1つの電池セル当たり2.275V(=13.65V/6)の高電圧が印加され得る。V
Hは13.38Vであってよい。この場合、T
Hの期間内に、1つの電池セル当たり2.23V(=13.38V/6)の高電圧が印加され得る。なお、鉛蓄電池40の仕様に応じて、V
Hの値を変更してもよい。
【0063】
V
Lは、例えば12.6Vである。この場合、T
Lの期間内に、1つの電池セルあたり2.1Vの電圧が印加される。なお、V
Lは、0Vよりも高くてよい。V
Lは、鉛蓄電池40の完全放電時の起電力以上であってもよい。例えば、1つの電池セルの完全放電時の起電力が1.95Vである場合、V
Lは11.7V以上であってよい。
【0064】
鉛蓄電池への印加電圧が極端に低いと、自己放電が進んで、負極で硫酸鉛の形成及び結晶化が進み易い。例えば、充電電圧が0Vの場合、負極で硫酸鉛の結晶化が進み易くなる。これに対し、蓄電システム20においては、V
Lを0Vよりも高くすることで、硫酸鉛の結晶化の進行を抑制し得る。また、V
Lを完全放電時の起電力以上とすることによっても、硫酸鉛の結晶化の進行を抑制し得る。このように、充放電制御部31は、低電圧充電期間において、鉛蓄電池40の負極の劣化を抑制し得る電圧値を、鉛蓄電池40に印加する。
【0065】
なお、V
Lは、鉛蓄電池40における理論起電力の74%以上であってもよい。例えば、1つの電池セルの理論起電力が2.04Vである場合に、V
Lは9.06V以上であってよい。V
Lは、鉛蓄電池40における理論起電力の93%以上であってもよい。例えば、1つの電池セルの理論起電力が2.04Vである場合に、V
Lは11.4V以上であってよい。V
Lが理論起電力の74%以上又は93%以上である場合とは、低電圧充電期間における瞬間最低値が理論起電力の74%以上又は93%以上であることを意味してよい。V
Lが理論起電力の74%以上又は93%以上である場合、サルフェーションの抑制に一定の効果があり得る。
【0066】
また、V
Lは、鉛蓄電池40の完全充電時の起電力以下であってよい。1つの電池セルの完全充電時の起電力が2.1Vである場合に、V
Lは12.6V以下であってよい。
【0067】
また、V
Lは、鉛蓄電池40における理論起電力の電圧値の121%以下であってよい。1つの電池セルの理論起電力が2.04Vである場合に、V
Lは14.8V以下であってもよい。
【0068】
なお、T
Lは、T
Hよりも長くてよい。また、T
Hが60秒であり、T
Lが240秒以上であってよい。また、T
Hが60秒であり、T
Lが30分以上であってよい。T
Hが60秒であり、T
Lが1時間以上であってよい。T
Hが60秒であり、T
Lが2時間以上であってよい。このように、T
LとT
Hとの比は、4≦T
L/T
H、30≦T
L/T
H、60≦T
L/T
H、又は120≦T
L/T
Hであってよい。
【0069】
また、T
Hが60秒であり、T
Lが5時間以下であってよい。T
Hが60秒であり、T
Lが3時間以下であってよい。このように、T
LとT
Hとの比は、T
L/T
H≦180又はT
L/T
H≦300としてよい。特に、鉛蓄電池において、T
Lが3時間以上5時間以下の間において、負極の劣化の進行が早まる場合があることが、本願の発明者らによる実験において確認されている。したがって、T
Lを5時間以下、より好ましくは3時間以下とすることは、鉛蓄電池の劣化抑制に有効といえる。
【0070】
図3は、間欠充電の一周期における鉛蓄電池40の端子間電圧及び端子間電流のより詳細な波形を模式的に示す。
図3の波形において、横軸は時刻を示し、縦軸は電圧を示す。
図3におけるts1、te1及びts2は、それぞれ
図2におけるts1、te1及びts2に対応する。なお、
図3は、電圧波形及び電流波形並びに充電量及び放電量をより詳細に示すことを目的として、一様なスケールでは描かれていない。
【0071】
波形310は、鉛蓄電池40の端子間電圧を示す。波形300は、鉛蓄電池40の端子間電流を示す。充放電制御部31は、ts1から鉛蓄電池40に高電圧を印加することで、鉛蓄電池40の充電電流が流れ始める。これにより、端子間電圧は上昇する。鉛蓄電池40の端子間電圧がV
Hに到達すると、充放電制御部31は、端子間電圧がV
Hに維持されるように制御する。充放電制御部31は、te1から所定時間だけ前の時刻tcになるまで、端子間電圧をV
Hに維持する。これにより、鉛蓄電池40への充電電流は時間的に減少する。充放電制御部31は、tcにおいて、鉛蓄電池40の充電電流を0にし、その所定時間後のte1において、低電圧充電を開始する。
【0072】
充放電制御部31は、te1から鉛蓄電池40に低電圧を印加する。これにより、鉛蓄電池40の端子から放電電流が流れ始める。これにより、端子間電圧は下降する。鉛蓄電池40の端子間電圧がV
Lに到達すると、充放電制御部31は、ts2になるまで、端子間電圧がV
Lに維持されるように制御する。これにより、鉛蓄電池40からの放電電流の大きさは時間的に減少して、0に近づいていく。
【0073】
次に、鉛蓄電池40からの放電量と鉛蓄電池40の充電量について説明する。放電量とは、鉛蓄電池40から取り出された電気量である。設定部33は、低電圧充電期間において、電流計測器60から取得した計測値が示す電流値を時間積算することにより、放電量を算出する。充電量とは、鉛蓄電池40の充電のために使用した電気量である。設定部33は、高電圧充電期間において、電流計測器60から取得した計測値が示す電流値を時間積算することにより、充電量を算出する。
【0074】
低電圧充電期間においては、鉛蓄電池40のキャパシタンス成分で蓄えられた電荷が端子を通じて外部に放出される他に、自己放電が生じ得る。低電圧充電期間における鉛蓄電池40からの放電量は、キャパシタンス成分で蓄えられた電気量を表す。キャパシタンス成分とは、鉛蓄電池40の電極の表面や電極の活物質の欠陥に生成する電気二重層に起因する成分を含む。
【0075】
一方、高電圧充電期間においては鉛蓄電池40に供給される電荷は、主として、鉛蓄電池40のキャパシタンス成分により蓄えられる他に、低電圧充電期間における自己放電で失われた電荷の補充と、高電圧充電期間における電解液中の水の電気分解に費やされる。よって、高電圧充電期間における充電量は、鉛蓄電池40のキャパシタンス成分で蓄えられる電気量と、電解液中の水の電気分解に消費される電気量と、低電圧充電期間で生じた自己放電の補充に用いられた電気量との和を表す。
【0076】
したがって、高電圧充電期間における鉛蓄電池40の充電量から、低電圧充電期間における鉛蓄電池40からの放電量を減算することにより、高電圧充電期間における水の電気分解に費される電気量と、低電圧充電期間における自己放電の電気量の和を算出することができる。なお、本実施形態において、高電圧充電期間における鉛蓄電池40の充電量から低電圧充電期間における鉛蓄電池40からの放電量を減算した電気量をaと呼ぶ。aは、充電量と放電量との差により表される。
【0077】
低電圧充電期間における自己放電は、低電圧充電期間の長さに依存する。高電圧充電期間における電気分解の量は、高電圧充電期間の長さ及び高電圧の電圧値に依存する。そのため、高電圧充電期間の長さ及び高電圧の電圧値を一定にして、低電圧充電期間の長さのみをΔ1だけ変化させた場合、低電圧充電期間の長さの変化により生じるaの変化量Δaは、低電圧充電期間中のΔ1の間に生じた自己放電の電気量を表す。したがって、Δa/Δ1は、低電圧充電期間における単位時間あたりの自己放電の電気量を表す。よって、鉛蓄電池40における自己放電の生じ易さを示す指標として、Δa/Δ1を用いることができる。
【0078】
設定部33は、Δa/Δ1が予め定められた閾値を超える場合、T
Lを短くする。なお、当該閾値は、鉛蓄電池40において単位時間あたりに許容できる自己放電の電気量であってよい。当該閾値は、鉛蓄電池40の電池容量の0.0001%以上0.1%以下であってよい。Δa/Δ1が予め定められた閾値を超える場合、設定部33は、鉛蓄電池40の電池容量をW、鉛蓄電池40の単位電池容量あたりに許容できる自己放電の電気量を表す定数をαとすると、(Δa/Δ1)×T
L'=αWを満たすT
L'を、新たに設定する低電圧期間の長さとして算出する。なお、αWは、各低電圧期間において鉛蓄電池40において許容できる自己放電の電気量を表す。αは、0.1%以上10%以下であってよい。
【0079】
なお、設定部33は、Δa/Δ1が予め定められた閾値を超える場合に、V
Lを変更してよい。例えば、設定部33は、a/T
Lが当該閾値以下になるまで充放電制御部31にV
Lを所定電圧(例えば、0.01V)ずつ上昇させることによって、V
Lを設定してもよい。なお、設定部33は、Δa/Δ1が予め定められた閾値を超える場合に、a/T
Lが当該閾値以下になるように、T
L及びV
Lを変更してもよい。
【0080】
以上において、低電圧充電期間における充電条件を設定する処理を説明した。次に、高電圧充電期間における充電条件を設定する処理を説明する。なお、高電圧充電の充電条件を設定する処理を分かり易く説明するために、高電圧充電において生じる副反応として水の電気分解を取り上げて説明するが、副反応とは、水の電気分解に限られない。
【0081】
低電圧充電期間の長さ及び高電圧充電期間における高電圧の電圧値を一定にして、高電圧充電期間の長さのみをΔ2だけ変化させた場合、高電圧充電期間の長さの変化により生じるaの変化量Δaは、高電圧充電期間中のΔ2の間に生じた水の電気分解量を表す。したがって、Δa/Δ2により、単位時間あたりの水の電気分解量を算出することができる。よって、鉛蓄電池40における水の電気分解の生じ易さを示す指標として、Δa/Δ2を用いることができる。
【0082】
設定部33は、Δa/Δ2が予め定められた閾値を超える場合、T
Hを短くする。なお、当該閾値は、鉛蓄電池40において単位時間あたりに許容できる水の電気分解量であってよい。当該閾値は、鉛蓄電池40の電池容量の0.00001%以上0.1%以下であってよい。Δa/Δ2が予め定められた閾値を超える場合、設定部33は、鉛蓄電池40の電池容量をW、鉛蓄電池40の単位電池容量あたりに許容し得る水の電気分解量を表す定数をβとすると、(Δa/Δ2)×T
H'=βWを満たすT
H'を、新たに設定する高電圧期間の長さとして算出する。なお、βWは、各高電圧期間において鉛蓄電池40において許容し得る水の電気分解量を表す。βは、0.0001%以上0.01%以下であってよい。
【0083】
なお、設定部33は、Δa/Δ2が予め定められた閾値を超える場合に、V
Hを設定してよい。例えば、設定部33は、a/T
Hが当該閾値以下になるまで充放電制御部31にV
Hを所定電圧(例えば、0.01V)ずつ低下させることによって、V
Hを設定してもよい。なお、設定部33は、Δa/Δ2が予め定められた閾値を超える場合に、a/T
Hが当該閾値以下になるように、T
H及びV
Hを変更してもよい。
【0084】
また、高電圧充電期間における電気分解の量は、高電圧充電期間の長さだけでなく、高電圧充電期間における高電圧の電圧値にも依存する。そのため、高電圧充電期間における高電圧の電圧値を変化させることによっても、鉛蓄電池40の水の電気分解の生じ易さを示す指標を得ることができる。例えば、V
HをΔV
Hだけ変化させた場合に生じるaの変化量をΔaとすると、Δa/ΔV
Hは、鉛蓄電池40の水の電気分解の生じ易さを示す指標となる。設定部33は、Δa/ΔV
Hが予め定められた閾値より大きい場合に、V
Hを低くしてよい。また、設定部33は、Δa/ΔV
Hが予め定められた閾値より大きい場合に、T
Hを短くしてよい。設定部33は、Δa/ΔV
Hが予め定められた閾値より大きい場合に、V
Hを低くし、かつ、T
Hを短くしてよい。設定部33は、Δa/ΔV
Hが予め定められた閾値を超える場合に、a/T
Hが当該閾値以下になるように、T
H及びV
Hを変更してよい。
【0085】
なお、鉛蓄電池40の劣化モードによっては、水の電気分解が生じにくくなる場合もある。したがって、設定部33は、Δa/Δ2が予め定められた閾値を下回る場合、又は、Δa/ΔV
Hが予め定められた閾値より小さい場合に、T
Hを長くしてよい。具体的には、鉛蓄電池40の電池容量をW、鉛蓄電池40の単位電池容量あたりに許容し得る水の電気分解量を表す定数をβとすると、(Δa/Δ2)×T
H'=βWを満たすT
H'を、新たに設定する高電圧期間の長さとして算出する。また、設定部33は、Δa/Δ2が予め定められた閾値を下回る場合、又は、Δa/ΔV
Hが予め定められた閾値より小さい場合に、V
Hを高くしてよい。設定部33は、a/T
Hが当該閾値以下になるまでV
Hを所定電圧(例えば、0.01V)ずつ高めることによって、V
Hを設定してもよい。このように、鉛蓄電池40において水の電気分解が生じにくい状態である場合は、T
Hを長くする、又は、V
Hを高くすることによって、鉛蓄電池40の充電不足が生じることを抑制することができる。
【0086】
図4は、設定部33によりT
Lが短く設定される場合の端子間電圧のタイミングチャートを模式的に示す。
図4の波形において、横軸は時刻を示し、縦軸は電圧を示す。
【0087】
設定部33は、時刻t0から時刻t1までのT
Lの低電圧充電期間において、鉛蓄電池40からの放電量を算出する。また、設定部33は、時刻t1から時刻t2までのT
Hの高電圧充電期間において、鉛蓄電池40への充電量を算出する。そして、設定部33は、時刻t1から時刻t2までの間の充電量から、時刻t0から時刻t1までの間の放電量を減算して、充電量と放電量との差a0を算出する。
【0088】
設定部33は、次の時刻t2から時刻t3までの低電圧充電期間において、低電圧充電期間をΔ1だけ長くして、鉛蓄電池40からの放電量を算出する。また、設定部33は、時刻t3から時刻t4までのT
Hの高電圧充電期間において、鉛蓄電池40への充電量を算出する。そして、設定部33は、時刻t3から時刻t4までの充電量から、時刻t2から時刻t3までの間の放電量を減算して、充電量と放電量との差a1を算出する。
【0089】
設定部33は、Δa=a1−a0を算出する。そして、設定部33は、Δa/Δ1が予め定められた閾値より大きい場合に、(Δa/Δ1)×T
L'=αWを満たすT
L'を算出する。これにより、設定部33は、時刻t4以後の低電圧充電期間を、T
Lより短いT
L'とする。これにより、低電圧充電期間における自己放電の電気量を、許容できる基準値αWまで低減することができる。
【0090】
本制御においてV
Hは変更されない。また、T
Hも変更されない。よって、間欠充電の周期は、T
LがT
L'に減少した分だけ、TからT'に減少する。なお、時刻t4以降において、T
Lを短くすることに加えて、又は、T
Lを短くすることに代えて、V
Lを増加させてもよい。
【0091】
図5は、設定部33によりT
Hが短く設定される場合の端子間電圧のタイミングチャートを模式的に示す。
図5の波形において、横軸は時刻を示し、縦軸は電圧を示す。
【0092】
設定部33は、時刻t0から時刻t1までのT
Lの低電圧充電期間において、鉛蓄電池40からの放電量を算出する。また、設定部33は、時刻t1から時刻t2までのT
Hの高電圧充電期間において、鉛蓄電池40への充電量を算出する。そして、設定部33は、時刻t1から時刻t2までの間の充電量から、時刻t0から時刻t1までの間の放電量を減算して、充電量と放電量との差a0を算出する。
【0093】
設定部33は、次の時刻t2から時刻t3までのT
Lの低電圧充電期間において、鉛蓄電池40からの放電量を算出する。設定部33は、時刻t3から時刻t4までの高電圧充電期間において、高電圧充電期間をΔ2だけ長くして、鉛蓄電池40への充電量を算出する。そして、設定部33は、時刻t3から時刻t4までの充電量から、時刻t2から時刻t3までの間の放電量を減算して、充電量と放電量との差a1を算出する。
【0094】
設定部33は、Δa=a1−a0を算出する。設定部33は、Δa/Δ2が予め定められた閾値より大きい場合に、(Δa/Δ2)×T
H'=βWを満たすT
H'を算出する。これにより、設定部33は、時刻t4より後の高電圧充電期間の長さを、T
Hより短いT
H'とする。これにより、水の電気分解量を、許容できる基準値βWまで低減することができる。
【0095】
本制御においてV
Lは変更されない。また、T
Lも変更されない。よって、間欠充電の周期は、T
HがT
H'に減少した分だけ、TからT''に減少する。なお、時刻t4より後の高電圧充電期間において、T
Hを短くすることに加えて、又は、T
Hを短くすることに代えて、V
Hを減少させてもよい。
【0096】
図6は、制御装置30による鉛蓄電池40の制御方法を示すフローチャートである。制御装置30は、この制御方法における各段階の動作を制御する主体であってよい。これを実現するべく、制御装置30は、CPU又はASIC等の処理装置及びメモリ等を有してよい。なお、
図6のフローチャートは、蓄電システム20における制御方法の一例を示すに過ぎない。
図6のフローチャートの各段階を適宜組み換えてよく、
図6のフローチャートの一部の段階を省略してもよく、
図6のフローチャートに他の段階を追加してもよい。
【0097】
本フローチャートのS602において、充放電制御部31は、電源装置10の電力を利用して、鉛蓄電池40の充電率が規定の充電率に達するまで鉛蓄電池40を充電する。充放電制御部31は、定電流充電によって、鉛蓄電池40の充電率が規定の充電率に達するまで充電してよい。規定の充電率は、鉛蓄電池40毎に定められてよい。例えば、規定の充電率は、完全充電状態の80%以上100%以下の範囲内の値であってよい。完全充電状態とは、鉛蓄電池40が満充電状態と判断される状態であってよい。完全充電状態とは、所定の充電条件で鉛蓄電池40の定格容量に達するまで鉛蓄電池40を充電した状態であってよい。
【0098】
S604において、設定部33は、間欠充電における高電圧V
Hの値を既定値に設定する。例えば、設定部33は、V
Hの値を13.38Vに設定する。また、設定部33は、間欠充電における低電圧V
Lの値を既定値に設定する。例えば、設定部33は、V
Lの値を12.6Vに設定する。
【0099】
S606において、充放電制御部31は、設定部33が設定した高電圧及び低電圧による間欠充電を開始する。これにより、例えば低電圧充電期間において自己放電で失われた電荷及び鉛蓄電池40のキャパシタンス成分から放出された電荷を、高電圧充電期間において補充することができる。
【0100】
S610において、充放電制御部31は、充電を継続するか否かを判断する。例えば、充放電制御部31は、電源装置10の異常発生が生じた場合に、充電を停止する旨を判断する。この場合、本フローチャートの制御を終了し、充放電制御部31は、充放電装置50を制御して鉛蓄電池40を放電させて、鉛蓄電池40から負荷90に電力を供給する。その他、充放電制御部31は、鉛蓄電池40の運用停止信号や間欠充電の停止信号を受信した場合に、充電を継続しないと判断し、鉛蓄電池40の運用停止信号や間欠充電の停止信号を受信していない場合に、充電を継続すると判断してよい。S610において充電を継続すると判断した場合、S612に進む。
【0101】
S612において、設定部33は、充電条件を再設定するか否かを判断する。例えば、設定部33は、S606において間欠充電を開始してから予め定められた時間が経過した場合に、充電条件を再設定すると判断する。なお、設定部33は、間欠充電を開始した後に最後に充電条件を再設定したときから予め定められた時間が経過した場合に、充電条件を再設定すると判断する。予め定められた時間としては、1ヶ月程度の時間であってよい。再設定するか否かを判断するための時間は、鉛蓄電池40において予測される劣化の進行速度に応じて定められてよい。設定部33は、充電条件を再設定しないと判断した場合、S610に進む。
【0102】
設定部33は、S612において充電条件を再設定すると判断した場合、充電条件を再設定して(S614)、S610に進む。S614に適用される処理のフローチャートについては、
図7から
図10に関連して説明する。
【0103】
図7は、低電圧充電の充電条件を再設定する処理を表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、
図6のフローチャートにおけるS614の処理に適用できる。
【0104】
本フローチャートのS702において、充放電制御部31は、T
LをΔ1だけ変化させて鉛蓄電池40を低電圧充電する。S702において、充放電制御部31は、T
LをΔ1だけ長くしてよいし、T
LをΔ1だけ短くしてもよい。
【0105】
S702の低電圧充電期間に続く高電圧充電期間において、充放電制御部31は、高電圧充電を行う(S704)。S706において、設定部33は、T
LをΔ1だけ変化させたことにより生じた充電量と放電量の差aの変化量Δaを算出する。具体的には、設定部33は、S704における充電量とS702における放電量との差から、直近の高電圧充電期間及び低電圧充電期間における充電量と放電量との差を減算することにより、Δaを算出する。
【0106】
S708において、設定部33は、Δa/Δ1が閾値を超えているか否かを判断する。当該閾値は、鉛蓄電池40において単位時間あたりに許容できる自己放電の電気量であってよい。Δa/Δ1が閾値を超えていない場合、本フローチャートを終了する。Δa/Δ1が閾値を超えている場合、設定部33は、新たなT
L'を算出する(S710)。具体的には、設定部33は、T
L'=αW/(Δa/Δ1)によりT
L'を算出する。S712において、設定部33は、以後の間欠充電における各低電圧充電期間の長さをT
L'に設定して、本フローチャートの処理を終了する。
【0107】
図8は、高電圧充電の充電条件を再設定する処理を表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、
図6のフローチャートにおけるS614の処理に適用できる。
【0108】
本フローチャートのS802において、充放電制御部31は、鉛蓄電池40を低電圧充電する。S802の低電圧充電期間に続く高電圧充電期間において、充放電制御部31は、T
HをΔ2だけ変化させて高電圧充電を行う(S804)。なお、S804において、T
HをΔ2だけ長くしてよいし、T
HをΔ2だけ短くしてもよい。
【0109】
S806において、設定部33は、T
HをΔ2だけ変化させたことにより生じた充電量と放電量の差aの変化量Δaを算出する。具体的には、設定部33は、S804における充電量とS802における放電量との差から、直近の高電圧充電期間及び低電圧充電期間における充電量と放電量との差を減算することにより、Δaを算出する。
【0110】
S808において、設定部33は、Δa/Δ2が閾値を超えているか否かを判断する。当該閾値は、鉛蓄電池40において単位時間あたりに許容できる副反応の電気量であってよい。Δa/Δ2が閾値を超えていない場合、本フローチャートを終了する。Δa/Δ2が閾値を超えている場合、設定部33は、新たなT
H'を算出する(S810)。具体的には、設定部33は、T
H'=βW/(Δa/Δ2)によりT
H'を算出する。S812において、設定部33は、以後の間欠充電における各高電圧充電期間の長さをT
H'に設定して、本フローチャートの処理を終了する。
【0111】
上述したように、鉛蓄電池40の劣化モードによっては、水の電気分解が生じにくくなる場合もある。この場合において高電圧充電の充電条件を再設定するための処理としては、S808において、Δa/Δ2が第2の閾値未満であるか否かを判断する処理を適用すればよい。第2の閾値は、高電圧充電において鉛蓄電池40に最低限供給するべき最小の電気量を供給した場合に、単位時間あたりに生じ得る副反応の電気量であってよい。
【0112】
図9は、低電圧充電の充電条件を再設定する他の処理を表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、
図6のフローチャートにおけるS614の処理に適用できる。本フローチャートのS902からS908の処理は、
図7のS702からS708の処理と同じであるので、その説明を省略して、ここではS910からの処理を説明する。
【0113】
S908においてΔa/Δ1が閾値を超えていると判断された場合、充放電制御部31は、V
Lを所定電圧ΔV1だけ高くして鉛蓄電池40を低電圧充電する(S910)。ΔV1は、0.01Vであってよい。S910の低電圧充電期間に続く高電圧充電期間において、充放電制御部31は、高電圧充電を行う(S912)。S914において、設定部33は、S912における充電量とS910における放電量との差aを算出する。
【0114】
S916において、設定部33は、a/T
Lが閾値以下であるか否かを判断する。当該閾値は、鉛蓄電池40において単位時間あたりに許容できる自己放電の電気量であってよい。a/T
Lが閾値以下である場合、本フローチャートを終了する。a/T
Lが閾値以下でない場合、S910に進む。これにより、設定部33は、a/T
Lが閾値以下になるまでV
LをΔV1ずつ高めていくことで、a/T
Lが閾値以下になるようなV
Lを設定することができる。
【0115】
また、低電圧充電期間の充電条件としてT
L及びV
Lの両方を変更する場合は、S910において、T
L及びV
Lを所定の刻み幅で変化させていくようにすればよい。
【0116】
図10は、高電圧充電の充電条件を再設定する他の処理を表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、
図6のフローチャートにおけるS614の処理に適用できる。本フローチャートのS1002からS1008の処理は、
図8のS802からS808の処理と同じであるので、その説明を省略して、ここではS1010からの処理を説明する。
【0117】
S1008においてΔa/Δ2が閾値を超えていると判断された場合、充放電制御部31は、S1010において低電圧充電を行った後、S1010の低電圧充電期間に続く高電圧充電期間において、V
Hを所定電圧ΔV1だけ低くして鉛蓄電池40を高電圧充電する(S1012)。ΔV1は、0.01Vであってよい。S1014において、設定部33は、S1012における充電量とS1010における放電量との差aを算出する。
【0118】
S1016において、設定部33は、a/T
Hが閾値以下であるか否かを判断する。当該閾値は、鉛蓄電池40において単位時間あたりに許容できる副反応の電気量であってよい。a/T
Hが閾値以下である場合、本フローチャートを終了する。a/T
Hが閾値以下でない場合、S1010に進む。これにより、設定部33は、a/T
Hが閾値以下になるまでV
HをΔV1ずつ低くしていくことで、a/T
Hが閾値以下になるようなV
Hを設定することができる。
【0119】
上述したように、鉛蓄電池40の劣化モードによっては、水の電気分解が生じにくくなる場合もある。この場合において高電圧充電の充電条件を再設定する処理としては、S1008において、Δa/Δ2が第2の閾値未満であるか否かを判断し、S1012において、V
Hを所定電圧ΔV1だけ高くして鉛蓄電池40を高電圧充電し、S1016において、a/T
Hが第2の閾値以上であるか否かを判断する処理を適用すればよい。
【0120】
また、高電圧充電期間の充電条件としてT
H及びV
Hの両方を変更する場合は、S1012において、T
H及びV
Hを所定の刻み幅で変化させていくようにすればよい。
【0121】
上述したように、V
HをΔV
Hだけ変化させることによっても、鉛蓄電池40における副反応の生じ易さの指標Δa/ΔV
Hを得ることができる。この処理を適用する場合、S1004においてV
HをΔV
Hだけ変化させ、S1008においてΔa/ΔV
Hと、電圧値に関する閾値とを比較する処理を適用すればよい。
【0122】
図7から
図10に関連して、低電圧充電及び高電圧充電のそれぞれの充電条件を再設定する処理を、フローチャートを用いて説明した。
図6のS614の処理には、
図7から
図10に関連して説明した処理の任意の組み合わせで適用できる。例えば、
図6のS614の処理として、
図7又は
図9に関連して説明した処理により低電圧充電の充電条件を再設定すると共に、
図8又は
図10に関連して説明した処理により高電圧充電を再設定してよい。例えば、低電圧充電の充電条件を再設定した後に、高電圧充電を再設定してよい。また、高電圧充電の充電条件を再設定した後に、低電圧充電を再設定してもよい。
【0123】
以上に説明したように、制御装置30によれば、高電圧充電と低電圧充電とを繰り返す充電方式において、高電圧充電及び低電圧充電の充電条件を適切に決定することができる。特に、低電圧充電での鉛蓄電池40の自己放電量や、高電圧充電での鉛蓄電池40の副反応量に応じて、高電圧充電及び低電圧充電の充電条件を適切に決定することができる。
【0124】
本実施形態で説明した鉛蓄電池40は、二次電池の一例である。電源システム120において、鉛蓄電池に代えて、鉛蓄電池以外の二次電池を適用してもよい。鉛蓄電池以外の二次電池においても、制御装置30に関連して説明した制御を適用できる場合がある。
【0125】
制御装置30は、コンピュータにより実現されてよい。コンピュータがプログラムを実行することにより、プログラムは、コンピュータが有するプロセッサおよびメモリ等の各部を制御して、制御装置30として機能させてよい。当該プログラムは、コンピュータを、充放電制御部31と設定部33として機能させてよい。
【0126】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0127】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【解決手段】鉛蓄電池の制御装置は、パルス状の高電圧を鉛蓄電池に印加する高電圧充電と、高電圧より低い低電圧を鉛蓄電池に印加する低電圧充電とを交互に繰り返すことによって鉛蓄電池を充電する充電制御部を備える。制御装置は、高電圧充電を行う期間における鉛蓄電池への充電量と、低電圧充電を行う期間における鉛蓄電池からの放電量との差に基づいて、低電圧充電における低電圧の印加時間、低電圧充電における低電圧の電圧値、高電圧充電における高電圧の印加時間、及び、高電圧充電における高電圧の電圧値の少なくとも1つを設定する設定部を備える。