特許第6156604号(P6156604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6156604Allergin−1アンタゴニストによるがん免疫増強剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6156604
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】Allergin−1アンタゴニストによるがん免疫増強剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170626BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A61K39/395 U
   A61K39/395 E
   A61K48/00
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P37/04
   A61P35/02
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61P43/00 121
   A61K38/02
【請求項の数】29
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-503028(P2017-503028)
(86)(22)【出願日】2016年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2016075887
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-173659(P2015-173659)
(32)【優先日】2015年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-138374(P2016-138374)
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】柴山 史朗
(72)【発明者】
【氏名】有馬 宏
(72)【発明者】
【氏名】新坊 拓也
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 田原聡子,新しいアレルギー抑制分子,Allergin−1 An immunoglobulin-like receptor, Allergin-1, inhibits immunoglobulin E-mediated immediatehypersensitivity reactions,医学のあゆみ,2013年,Vol245,No3,第235−240頁
【文献】 児玉龍彦,Vol.43 拡がる“茶のしずく石鹸”被害−小麦アレルギーへのITIMモチーフ受容体群を介する治療法の可能性,医学のあゆみ,2012年,第240巻第4号,第330−334頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 38/02
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 37/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Allergin−1抗体またはAllergin−1のアンチセンスRNA若しくはsiRNAを有効成分として含むがん免疫増強剤。
【請求項2】
がんの進行抑制、再発抑制および/または治療のために使用される請求項1記載の剤。
【請求項3】
抗Allergin−1抗体が、Allergin−1の免疫抑制的細胞内伝達シグナルを抑制する請求項1または2記載の剤。
【請求項4】
抗Allergin−1抗体が、抗ヒトAllergin−1抗体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
抗Allergin−1抗体が、モノクローナル抗体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の剤。
【請求項6】
抗Allergin−1モノクローナル抗体が、IgG1またはIgG4アイソタイプである請求項5記載の剤。
【請求項7】
抗Allergin−1モノクローナル抗体が、Fab、Fab′、Fv、scFvおよび(Fab′)2断片からなる群から選択される抗体断片である請求項5または6記載の剤。
【請求項8】
抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒト化またはヒト抗体である請求項5〜7のいずれか1項に記載の剤。
【請求項9】
抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒト化またはヒト抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体である請求項5記載の剤。
【請求項10】
抗Allergin−1抗体が、Allergin−1における同一分子上に存在する二以上の異なるエピトープを認識する、Allergin−1多重特異性抗体である請求項1〜9のいずれか1項に記載の剤。
【請求項11】
がんが、固形がんまたは血液がんである請求項2〜10のいずれか1項に記載の剤。
【請求項12】
固形がんが、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんである請求項11記載の剤。
【請求項13】
血液がんが、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病から選択される一以上の血液がんである請求項11記載の剤。
【請求項14】
抗がん剤による治療効果が十分でないがん患者に投与することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の剤。
【請求項15】
抗がん剤が、腫瘍免疫治療薬である請求項14記載の剤。
【請求項16】
腫瘍免疫治療薬が、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質、抗CTLA−4抗体、抗LAG−3抗体、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗HVEM抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗CD28抗体、抗CCR4抗体および抗CD4抗体から選択される一以上の薬剤である請求項15記載の剤。
【請求項17】
抗PD−1抗体が、Nivolumab、REGN−2810、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317、STI−A1110またはAMP−514である請求項16記載の剤。
【請求項18】
抗PD−L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabまたはBMS−936559である請求項16記載の剤。
【請求項19】
抗CTLA−4抗体が、IpilimumabまたはTremelimumabである請求項16記載の剤。
【請求項20】
PD−L2融合タンパク質が、AMP−224である請求項16記載の剤。
【請求項21】
さらに、一種以上の抗がん剤を投与することを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の剤。
【請求項22】
抗Allergin−1抗体またはAllergin−1のアンチセンスRNA若しくはsiRNAと抗がん剤が別々の製剤として投与される請求項21記載の剤。
【請求項23】
抗Allergin−1抗体またはAllergin−1のアンチセンスRNA若しくはsiRNAおよび抗がん剤が一つの製剤として投与されることを特徴とする請求項21記載の剤。
【請求項24】
抗がん剤が、腫瘍免疫治療薬である請求項21〜23のいずれか1項に記載の剤。
【請求項25】
腫瘍免疫治療薬が、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質、抗CTLA−4抗体、抗LAG−3抗体、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗HVEM抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗CD28抗体、抗CCR4抗体および抗CD4抗体から選択される一以上である請求項24記載の剤。
【請求項26】
抗PD−1抗体が、Nivolumab、REGN−2810、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317、STI−A1110またはAMP−514である請求項25記載の剤。
【請求項27】
抗PD−L1抗体が、Atezolizumab、AvelumabまたはDurvalumabである請求項25記載の剤。
【請求項28】
抗CTLA−4抗体が、IpilimumabまたはTremelimumabである請求項25記載の剤。
【請求項29】
PD−L2融合タンパク質が、AMP−224である請求項25記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Allergin−1アンタゴニストを有効成分として含むがん免疫増強剤に関する。さらに具体的には、本発明は、Allergin−1アンタゴニスト単独あるいは抗がん剤との併用投与を特徴とするがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
がん免疫療法とは、外科的手術、放射線療法、抗がん剤や分子標的薬による薬物療法などの従来の治療法と異なり、がん患者自身に元来備わっている免疫監視機構に作用して、がんに対する免疫力を強化することによって、がんの進行を抑制ないし治療する療法である。近年のがん免疫研究によって、がんの進展にはがん局所を中心とした免疫抑制環境がかかわっており、がん自身が免疫監視機構を回避するシステムを利用していることが知られるようになってきた。そのような回避システムに利用される分子として、CTLA−4やPD−1あるいはそのリガンドであるPD−L1などの所謂、免疫チェックポイント分子群が知られている(特許文献1および2)が、既に、これらの阻害薬が臨床において極めて顕著な成果を上げている。
【0003】
しかしながら、依然として、これら免疫チェックポイント阻害薬によっても十分な治療効果が認められないがん患者が存在しているのは事実であり、これらがん患者に対する新たな治療法やその確立に欠かせない標的分子の機能解明が急務である。
【0004】
ところで、本発明に係るAllergin−1は、その細胞内領域にITIMドメインをもち、細胞外にはイムノグロブリン様構造を有する膜型受容体であり、肥満細胞に強く発現する分子である。同分子の遺伝子欠損マウスを用いた解析から、IgE受容体のシグナルを介した脱顆粒を抑制することでアナフィラキシーを抑制し、ダニ抗原によって誘発される喘息反応を抑制するなど、アレルギー反応を抑制する分子として機能することが知られている(非特許文献1、2および3)。
【0005】
しかしながら、同分子ががん免疫を抑制する機能を有することはこれまで十分に知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/121168号パンフレット
【特許文献2】特開2006−340714号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nature Immunology,2010年,第11巻,第7号,p.601−608
【非特許文献2】PLOS ONE,2013年,第8巻,第10号,e76160
【非特許文献3】アレルギー・免疫,2011年,第18巻,第4号,p.506−514
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、がん免疫増強作用を有する新規な有効成分からなるがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは鋭意検討した結果、Allergin−1に対するアンタゴニストが上記課題を解決することを見出して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] Allergin−1アンタゴニストを有効成分として含むがん免疫増強剤。
[2] がんの進行抑制、再発抑制および/または治療のために使用される前項[1]記載の剤。
[3] Allergin−1アンタゴニストを有効成分として含む、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[4] Allergin−1アンタゴニストが、Allergin−1の免疫抑制的細胞内伝達シグナルを抑制する前項[1]〜[3]のいずれか1つに記載の剤。
[5] Allergin−1アンタゴニストが、抗Allergin−1抗体、Allergin−1結合タンパク質またはAllergin−1融合タンパク質である前項[1]〜[4]のいずれか1つに記載の剤。
[6] 抗Allergin−1抗体が、抗ヒトAllergin−1抗体である前項[5]記載の剤。
[7] 抗Allergin−1抗体が、モノクローナル抗体である前項[5]または[6]記載の剤。
[8] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、IgG1またはIgG4アイソタイプである前項[7]記載の剤。
[9] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、Fab、Fab′、Fv、scFvおよび(Fab′)2断片からなる群から選択される抗体断片である前項[7]または[8]記載の剤。
[10] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒト化またはヒト抗体である前項[7]〜[9]のいずれか1つに記載の剤。
[11] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒト化またはヒト抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体である前項[7]記載の剤。
[12] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒトAllergin−1に対してKd値が5x10-8M以下で結合する抗体である前項[7]〜[11]のいずれか1つに記載の剤。
[13] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒトAllergin−1に対してKd値が1x10-8M以下で結合する抗体である前項[7]〜[11]のいずれか1つに記載の剤。
[14] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒトAllergin−1に対してKd値が5x10-9M以下で結合する抗体である前項[7]〜[11]のいずれか1つに記載の剤。
[15] 抗Allergin−1モノクローナル抗体が、ヒトAllergin−1に対してKd値が1x10-9M以下で結合する抗体である前項[7]〜[11]のいずれか1つに記載の剤。
[16] 抗Allergin−1抗体が、Allergin−1における同一分子上に存在する二以上の異なるエピトープを認識する、Allergin−1多重特異性抗体である前項[5]または[6]記載の剤。
[17] がんが、固形がんまたは血液がんである前項[2]〜[16]のいずれか1つに記載の剤。
[18] 固形がんが、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんである前項[17]記載の剤。
[19] 血液がんが、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病から選択される一以上のがんである前項[17]記載の剤。
[20] 抗がん剤による治療効果が十分でないがん患者に投与することを特徴とする前項[2]〜[19]のいずれか1つに記載の剤。
[21] 抗がん剤が、腫瘍免疫治療薬である前項[20]記載の剤。
[22] 腫瘍免疫治療薬が、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質、抗CTLA−4抗体、抗LAG−3抗体、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗HVEM抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗CD28抗体、抗CCR4抗体および抗CD4抗体から選択される一以上の薬剤である前項[21]記載の剤。
[23] 抗PD−1抗体が、Nivolumab、REGN−2810、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317、STI−A1110またはAMP−514である前項[22]記載の剤。
[24] 抗PD−L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabまたはBMS−936559である前項[22]記載の剤。
[25] 抗CTLA−4抗体が、IpilimumabまたはTremelimumabである前項[22]記載の剤。
[26] PD−L2融合タンパク質が、AMP−224である前項[22]記載の剤。
[27] さらに、一種以上の抗がん剤を投与することを特徴とする前項[1]〜[26]のいずれか1つに記載の剤。
[28] Allergin−1アンタゴニストと抗がん剤が別々の製剤として投与される前項[27]記載の剤。
[29] Allergin−1アンタゴニストの投与の前に抗がん剤が投与される前項[28]記載の剤。
[30] 抗がん剤の投与の前にAllergin−1アンタゴニストが投与される前項[28]記載の剤。
[31] Allergin−1アンタゴニストおよび抗がん剤が同時に投与される期間を含むことを特徴とする前項[27]〜[30]のいずれか1つに記載の剤。
[32] Allergin−1アンタゴニストおよび抗がん剤が同時に投与されることを特徴とする前項[27]または[28]記載の剤。
[33] Allergin−1アンタゴニストおよび抗がん剤が一つの製剤として投与されることを特徴とする前項[27]または[32]記載の剤。
[34] 抗がん剤が、腫瘍免疫治療薬である前項[27]〜[33]のいずれか1つに記載の剤。
[35] 腫瘍免疫治療薬が、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質、抗CTLA−4抗体、抗LAG−3抗体、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗HVEM抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗CD28抗体、抗CCR4抗体および抗CD4抗体から選択される一以上である前項[34]記載の剤。
[36] 抗PD−1抗体が、Nivolumab、REGN−2810、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317、STI−A1110またはAMP−514である前項[35]記載の剤。
[37] 抗PD−L1抗体が、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabまたはBMS−936559である前項[35]記載の剤。
[38] 抗CTLA−4抗体が、IpilimumabまたはTremelimumabである前項[35]記載の剤。
[39] PD−L2融合タンパク質が、AMP−224である前項[35]記載の剤。
[40] 抗CD4抗体が、IT1208である前項[35]記載の剤。
[41] Allergin−1アンタゴニストが、I型インターフェロン(例えば、インターフェロン−αおよび/またインターフェロン−β)の産生を増強する前項[1]〜[40]のいずれか1つに記載の剤。
[42] Allergin−1アンタゴニストが、CD8陽性T細胞の増殖を刺激する前項[1]〜[41]のいずれか1つに記載の剤。
[43] Allergin−1アンタゴニストが、CD8陽性T細胞を活性化する前項[1]〜[42]のいずれか1つに記載の剤。
[44] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんに対するがん免疫増強剤。
[45] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)から選択される一以上のがんに対するがん免疫増強剤。
[46] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[47] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[48] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんにおいて、腫瘍免疫治療薬による治療効果が十分でない当該がん患者に投与することを特徴とするがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[49] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)から選択される一以上のがんにおいて、腫瘍免疫治療薬による治療効果が十分でない当該がん患者に投与することを特徴とするがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[50] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質、抗CTLA−4抗体、抗LAG−3抗体、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗HVEM抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗CD28抗体、抗CCR4抗体および抗CD4抗体から選択される一以上の腫瘍免疫治療薬とともに投与することを特徴とする、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[51] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質、抗CTLA−4抗体、抗LAG−3抗体、抗Tim3抗体、抗KIR抗体、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体、抗OX40抗体、抗HVEM抗体、抗CD27抗体、抗GITR抗体、抗CD28抗体、抗CCR4抗体および抗CD4抗体から選択される一以上の腫瘍免疫治療薬とともに投与することを特徴とする、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[52] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、Nivolumab、REGN−2810、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317、AMP−514、ANB011およびSTI−A1110から選択される一以上の抗PD−1抗体とともに投与することを特徴とする、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[53] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、Nivolumab、REGN−2810、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317、AMP−514、ANB011およびSTI−A1110から選択される一以上の抗PD−1抗体とともに投与することを特徴とする、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[54] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabおよびBMS−936559から選択される一以上の抗PD−L1抗体とともに投与することを特徴とする、悪性黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌、肛門癌、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[55] ヒトもしくはヒト化抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体を有効成分として含み、Atezolizumab、Avelumab、DurvalumabおよびBMS−936559から選択される一以上の抗PD−L1抗体とともに投与することを特徴とする、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)から選択される一以上のがんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤。
[56] がん免疫を増強するためのAllergin−1アンタゴニスト。
[57] がん免疫増強剤の製造におけるAllergin−1アンタゴニストの使用。
[58] がん治療を必要とする患者に、有効投与量のAllergin−1アンタゴニストを投与することからなる、がん免疫増強方法。
[59] がんの進行抑制、再発抑制および/または治療のためのAllergin−1アンタゴニスト。
[60] がんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤の製造におけるAllergin−1アンタゴニストの使用。
[61] がん治療を必要とする患者に、有効投与量のAllergin−1アンタゴニストを投与することからなる、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るAllergin−1アンタゴニストは、がん免疫増強作用を有し、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】Allergin−1標的ベクターの構造および作製したAllergin−1遺伝子欠損(以下、Allergin−1KOまたはAlg1−KOと表記することがある。)マウスのヘテロマウスとホモマウスのサザンブロット解析結果を示す。
図2】マウス大腸癌細胞株MC38を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウスにおける、MC38の腫瘍体積の推移(中央値および平均値)を示す。
図3】マウスメラノーマ細胞株B16F10を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウスにおけるB16F10の腫瘍体積の推移(中央値および平均値)を示す。
図4】MC38を担癌したAllergin−1KOマウスに対して、抗マウスPD−1抗体4H2(10mg/kg)を投与した際のMC38の腫瘍体積の推移(右図)を示す。図中、「mIgG」はコントロール抗体を意味する。
図5】MC38を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウスにおける腫瘍浸潤リンパ球の解析結果を示す。
図6】C57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウスへのTLR9アゴニスト(CpG)投与後の血中IFNα量の測定結果を示す。
図7】MC38を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウス各々に対して、抗マウスPD−1抗体4H2(3mg/kg)を投与した際のMC38の腫瘍体積の推移を示す。図中、「mIgG」はコントロール抗体を意味する。
図8】MC38を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウス各々に対して、抗マウスPD−1抗体4H2(1mg/kg)を投与した際のMC38の腫瘍体積の推移を示す。
図9】MC38を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウス各々に対して、抗マウスCD4抗体GK1.5(5mg/kg)を投与した際のMC38の腫瘍体積の推移を示す。図中、「ratIgG2b」はコントロール抗体を意味する。
図10】B16F10を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウス各々に対して、抗マウスCD4抗体GK1.5(5mg/kg)を投与した際のB16F10の腫瘍体積の推移を示す。
図11】C57BL/6マウス(WT)およびAllergin−1KOマウス(KO)へのTLR7アゴニスト(polyuridine)投与後の血中IFNα(図中A)およびIFNβ(図中B)測定結果を示す。
図12】C57BL/6マウス(WT)およびAllergin−1KOマウス各々から回収した腹腔内マクロファージへのSTINGアゴニスト(cGAMP)添加後に産生された培養上清中IFNβ量の測定結果を示す。
図13】B16F10を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウス各々に対して、抗マウスPD−1抗体4H2(10mg/kg)を投与した際のB16F10の腫瘍体積の推移を示す。
図14】MC38およびB16F10を担癌したC57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウスにおける、各々(MC38(A)およびB16F10(B))の平均腫瘍体積の推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
Allergin−1は、MILR1とも呼ばれ、ヒトにおいては、3つのスプライシングバリアント“Allergin−1L”、“Allergin−1S1”および“Allergin−1S2”から成り、各々GenBank登録番号NP_001078892.1、AB542951.1およびAB542952.1で示されるアミノ酸配列から成る膜型タンパク質である。また、そのマウスのホモログは、MCA32と呼ばれ、GenBank登録番号AB542953.1で示されるアミノ酸配列を有する。
【0014】
本明細書において、「Allergin−1」とは、特に限定しない限り、ヒトAllergin−1およびそのスプライシングバリアントならびにこれまでに同定されている哺乳動物のホモログをも含むものとして使用される。
【0015】
本明細書において、「Allergin−1アンタゴニスト」とは、Allergin−1の本来の生理学的機能を抑制または低減ないし完全に阻害する物質を意味する。「Allergin−1アンタゴニスト」として、例えば、Allergin−1の天然リガンドと拮抗して、Allergin−1の免疫抑制的細胞内伝達シグナルを抑制または低減ないし完全に阻害する物質が挙げられる。具体的には、例えば、抗Allergin−1抗体、Allergin−1融合タンパク質、Allergin−1結合タンパク質、ペプチドまたは低分子化合物などがあげられる。ここで、Allergin−1融合タンパク質とは、例えば、Allergin−1の天然リガンドのAllergin−1への結合に拮抗して、Allergin−1の免疫抑制的細胞内伝達シグナルを抑制または低減ないし完全に阻害する作用を有する、Allergin−1の細胞外ドメインもしくはその一部を含むタンパク質分子を意味し、例えば、Allergin−1の細胞外ドメインもしくはその一部と抗体のFc領域を結合させたものが挙げられる。また、Allergin−1結合タンパク質とは、Allergin−1に結合することによって、例えば、Allergin−1の天然リガンドのAllergin−1への結合に拮抗して、Allergin−1の免疫抑制的細胞内伝達シグナルを抑制または低減ないし完全に阻害する作用を有するタンパク質を意味する。例えば、Allergin−1の天然リガンドやその細胞外ドメインやその一部分、それらを基にした融合タンパク質、Scaffoldタンパク質などが挙げられる。Allergin−1に対するScaffoldタンパク質としては、例えば、Adnectin(国際公開第2001/64942号)、Affibody(登録商標)(国際公開第95/19374号、国際公開第2000/63243号)、Anticalin(登録商標)(国際公開第99/16873号)、Avimer(Nature Biotechnology (2005),Vol.23,pp.1556−1561)、DARPin(Nature Biotechnology (2004),Vol.22,pp.575−582)、LRRP(Nature (2004),Vol.430,No.6996,pp.174−180)、Affilin(登録商標)(国際公開第2001/04144号および国際公開第2004/106368号)、Affitin(Journal of molecular biology (2008),Vol.383,No.5,pp.1058−1068)、Fynomer(国際公開第2011/023685号)などが挙げられるが、それらに限定されない。なお、Allergin−1の遺伝子発現ないしタンパク質合成を阻害する、Allergin−1のアンチセンスRNAあるいはsiRNA(small interfering RNA)も、Allergin−1の本来の生理学的機能を抑制または低減ないし完全に阻害する物質として、Allergin−1アンタゴニストと同様に有用である。
【0016】
本発明に係るAllergin−1アンタゴニストのうち、抗Allergin−1抗体やAllergin−1結合タンパク質が、Allergin−1の天然リガンドと拮抗するかどうかは、例えば、以下の方法によって確認することができる。
【0017】
まず、Allergin−1融合タンパク質を作製し、その融合タンパク質が結合する細胞株を探索する。Allergin−1融合タンパク質の特異的な結合を確認した細胞株を用いて、同細胞へのAllergin−1融合タンパク質の結合に対するAllergin−1アンタゴニストの拮抗の有無を指標として、Allergin−1アンタゴニストであることを確認することができる。例えば、Allergin−1融合タンパク質はヒト急性単球性白血病由来細胞株THP−1に結合するが、THP−1へのAllergin−1融合タンパク質の結合阻害活性をモニターすることで、Allergin−1アンタゴニストを取得することができる。
【0018】
本明細書において、「抗体」とは、全長抗体、すなわち、ジスルフィド結合で連結された2つの重鎖および2つの軽鎖からなる完全長の抗体またはその抗体断片(例えば、単鎖抗体(例えば、Fab、Fab′、Fv、scFvなど)および(Fab′)2)および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディなど)をも含む。
【0019】
本明細書において、「モノクローナル抗体」とは、特定の抗原に対する単一の結合特異性を有する実質的に均一の集団からなる抗体を意味する。本発明において使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilsteinら,Nature(1975),256:495−97、Hongoら,Hybridoma(1995),14(3):253−260、Harlowら,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版;1988)およびHammerlingら,Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,563−681(Elsevier,N.Y.,1981)を参照)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ方法(例えば、Ladnerらの米国特許第5223409号、5403484号および5571698号、Dowerらの米国特許第5427908号および5580717号、McCaffertyらの米国特許第5969108号および6172197号およびGriffithsらの米国特許第5885793号、6521404号、6544731号、6555313号、6582915号および6593081号を参照)で作製することができる。
【0020】
本明細書において「多重特異性抗体」とは、二つ以上の異なる抗原分子あるいはエピトープに対する結合特異性を一分子に備え持つ抗体を意味し、代表的には、二重特異性抗体の形態が挙げられる。ここで、エピトープは、二つ以上の異なる抗原分子上のエピトープであっても、同一の抗原分子上に存在する二以上の異なるエピトープであってもよい。二重特異性抗体の形態には、例えば、ダイアボディ、二重特異性sc(Fv)2、二重特異性ミニボディ、二重特異性F(ab′)2、二重特異性ハイブリッド抗体、共有結合型ダイアボディ(二重特異性DART)(国際公開第2006/113665号または国際公開第2008/157379号)、二重特異性(FvCys)2(J.Immunol.,1992,Vol.149,No.1,p.120−126)、二重特異性F(ab′−ジッパー)2(J.Immunol.,1992,Vol.148,No.5,p.1547−1553)、二重特異性(Fv−ジッパー)2(Biochemistry,1992,Vol.31,No.6,p.1579−1584)、二重特異性三鎖抗体(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993,Vol.90,No.14,p.6444−6448)および二重特異性mAb2(www.f−star.com/technology_mab.html)等がある。
【0021】
本明細書において「抗体断片」とは、全長抗体の一部であって、少なくとも抗原結合部分を含む抗体であり、例えば、Fab、Fab′、Fv、scFvおよびF(ab′)2などが挙げられる。ここで、抗原結合部分とは、抗体がその抗原に結合することができる最少単位を意味し、例えば、重鎖可変領域および軽鎖可変領域にある各々3つずつの相補性決定領域(CDR)とそれらCDRの組合せにより目的の抗原が認識できるようCDRを配置するフレームワーク領域から構成される。
【0022】
本明細書において、「キメラ抗体」は、可変領域配列と定常領域配列が別々の哺乳動物に由来する抗体を意味し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来するものがある。キメラ抗体は、上記のハイブリドーマ法、組換えDNA法あるいはファージディスプレイ方法で単離された抗体産生ハイブリドーマから、公知の手法により単離された抗体可変領域をコードする遺伝子を、公知の方法を用いて、ヒト由来の抗体定常領域をコードする遺伝子に連結させ、作製することができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4816567号参照)。
【0023】
本明細書において、「ヒト化抗体」とは、マウスのような別の哺乳種の生殖細胞型に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に移植した抗体を意味する。ヒト化抗体の場合も、上記方法で単離された抗体産生ハイブリドーマから、公知の手法により単離された抗体CDR領域をコードする遺伝子を、公知の方法を用いて、ヒト由来の抗体フレームワーク領域をコードする遺伝子に連結させ、作製することができる(例えば、Winterの米国特許第5225539号および第5530101号、Queenらの米国特許第5585089号および第6180370号を参照)。
【0024】
本明細書において、「ヒト抗体」とは、フレームワーク領域およびCDR領域からなる可変領域ならびに定常領域の両方ともにヒト生殖細胞型免疫グロブリン配列に由来する抗体を意味する。本発明において使用されるヒト抗体は、ヒト抗体を産生するように形質転換されたマウス、例えば、Humabマウス(例えば、LonbergとKayらによる米国特許第5545806号、第5569825号、第5625126号、第5633425号、第5789650号、第5877397号、第5661016号、第5814318号、第5874299号および第5770429号を参照)、KMマウス(例えば、Ishidaらの国際公開第2002/43478号参照)、Xenoマウス(例えば、米国特許第5939598号、第6075181号、第6114598号、第6150584号および第6162963号を参照)またはTcマウス(例えば、Tomizukaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000):722−727参照)を用いた方法で作製することができる。また、免疫によりヒト抗体応答が起こるように、ヒト免疫細胞を再構築したSCIDマウス(例えば、Wilsonらの米国特許第5476996号および第5698767号参照)を用いても調製できる。さらに、本発明において使用されるヒト抗体は、上記したファージディスプレイ方法でも作製することができる。
【0025】
本明細書において「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG)を称するものとして使用される。本発明に係る抗Allergin−1抗体として、好ましいアイソタイプはIgG1またはIgG4であり、ここで、IgG1としては、Fc受容体への結合が消失あるいは減弱するように、その重鎖定常領域の任意のアミノ酸が置換、欠損あるいは挿入した改変体がより好ましい。IgG4としては、スワッピングを抑制するように、その重鎖定常領域の任意のアミノ酸が置換、欠損あるいは挿入した改変体がより好ましい。
【0026】
本明細書において「融合タンパク質」は、各々が異なる特性を有するタンパク質を互いに共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを意味し、例えば、膜結合型タンパク質を融合タンパク質として利用する場合、タンパク質自体の可溶化を促進させるため、主に細胞外の何れかの部分と抗体のFc領域を結合させて融合タンパク質とすることがある。
【0027】
本発明のAllergin−1アンタゴニストとして選択され得る抗Allergin−1抗体として好ましくは、ヒトAllergin−1に対して解離定数(Kd値)が5×10-8M以下で結合し、より好ましくはヒトAllergin−1に対してKd値が1×10-8M以下で結合し、さらに好ましくはヒトAllergin−1に対してKd値が5×10-9M以下で結合し、特に好ましくはヒトAllergin−1に対してKd値が1×10-9M以下で結合する抗体である。
【0028】
さらに、別の態様において、抗Allergin−1抗体として好ましくは、抗ヒトAllergin−1多重特異性抗体であって、同一の抗原分子上に存在する二以上の異なるエピトープを認識する抗体である。
【0029】
さらに、もう一つの態様において、抗Allergin−1抗体として好ましくは、抗ヒトAllergin−1モノクローナル抗体であり、さらに好ましくは、抗ヒトAllergin−1モノクローナルIgG1またはIgG4抗体である。
【0030】
本明細書において「がん治療」とは、例えば、(i)がん細胞の増殖を減少させる、(ii)がんに起因する症状を低減させる、(iii)がん患者の生活の質を向上させる、(iv)既に投与されている他の抗がん剤またはがん治療補助薬の用量を低減させる、および/または(v)がん患者の生存を延長させるために行われる治療を含み、「がんの進行抑制」とは、がんの進行を遅延、がんに関連する症状を安定化および症状の進行を後退させることを意味する。また、「再発抑制」とは、がん治療或いはがん切除手術によってがん病変が完全にあるいは実質的に消滅或いは取り除かれた患者におけるがんの再発を予防的に抑止することを意味する。
【0031】
ここで、Allergin−1アンタゴニストが進行抑制、再発抑制および/または治療の対象とするがんには、何れの固形がんおよび血液がんも含まれ、固形がんとして、特に効果が期待できるがんとしては、例えば、悪性黒色腫(例えば、皮膚、口腔粘膜上皮または眼窩内などにおける悪性黒色腫)、非小細胞肺癌(例えば、扁平非小細胞肺癌および非扁平非小細胞肺癌)、小細胞肺癌、頭頸部癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、乳癌、卵巣癌、卵巣明細胞腺癌、骨・軟部肉腫(例えば、ユーイング肉腫、小児横紋筋肉腫および子宮体部平滑筋肉腫)、神経膠芽腫、神経膠肉腫、鼻咽頭癌、子宮癌(例えば、子宮頸癌および子宮体癌)、肛門癌(例えば、肛門管癌)、大腸癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌、胃癌、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌、尿管癌、腎盂癌および尿道癌)、前立腺癌、卵管癌、原発性腹膜癌、胸膜中皮腫および骨髄増殖症候群が挙げられる。また、特に効果が期待できる血液がんとしては、例えば、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびホジキンリンパ腫)および白血病(例えば、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病)が挙げられる。
【0032】
さらに、その他、例えば、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、皮膚癌(例えば、メルケル細胞癌)、直腸癌、結腸癌、精巣癌(胚細胞腫瘍)、膣癌、外陰部癌、陰茎癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、脳腫瘍、脊椎腫瘍、カポジ肉腫、扁平上皮癌、慢性または急性リンパ球性白血病、成人T細胞白血病、中枢神経系原発悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群、小児癌または原発不明癌に対しても効果が期待できる。
【0033】
さらに、本願発明に係るAllergin−1アンタゴニストは、特に、既存の抗がん剤(抗悪性腫瘍剤)による治療効果が不十分ながん患者に対して処方されることにより、その有用性が認められる。その中でも特に、腫瘍免疫治療薬による治療効果が不十分ながん患者に対して処方されることにより、その有用性が特に認められる。ここで、「抗がん剤による治療効果が不十分或いは十分ではないがん患者」としては、例えば、その腫瘍収縮効果判定RECISTにおいて、既存の抗がん剤による治療によっても「進行(PD)」と判定された患者が挙げられる。また、既存の抗がん剤としては、例えば、アルキル化薬、白金製剤、代謝拮抗剤(例えば、葉酸代謝拮抗薬、ピリジン代謝阻害薬、プリン代謝阻害薬、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害薬、ヌクレオチドアナログ)、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管重合阻害薬、微小管脱重合阻害薬、抗腫瘍性抗生物質、サイトカイン製剤、抗ホルモン薬、分子標的薬および腫瘍免疫治療薬などが挙げられる。
【0034】
ここで、アルキル化薬としては、例えば、ダカルバジン、ニムスチン、テモゾロミド、フォテムスチン、シクロホスファミドおよびイホスファミドなどが挙げられる。白金製剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなどが挙げられる。葉酸代謝拮抗薬としては、例えば、ペメトレキセド、ロイコボリンおよびメトトレキサートなどが挙げられる。ピリジン代謝阻害薬としては、例えば、TS−1(登録商標)、5−フルオロウラシル、UFT、カルモフール、ドキシフルリジンおよびカペシタビンなどが挙げられる。ヌクレオチドアナログとしては、例えば、ゲムシタビンなどが挙げられる。トポイソメラーゼ阻害薬としては、例えば、イリノテカンおよびエトポシドなどが挙げられる。微小管重合阻害薬としては、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンなどが挙げられる。微小管脱重合阻害薬としては、例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセルなどが挙げられる。抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよびエピルビシンなどが挙げられる。サイトカイン製剤としては、例えば、IFN−α2a、IFN−α2b、ペグIFN−α2b、天然型IFN−βおよびインターロイキン−2などが挙げられる。抗ホルモン薬としては、例えば、タモキシフェン、フルベストラント、ゴセレリン、リュープロレリン、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンなどが挙げられる。分子標的薬としては、例えば、イマチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、クリゾチニブ、テムシロリムス、エベロリムス、アキシチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、イブルチニブ、オファツムマブおよびパニツムマブなどが挙げられる。
【0035】
本明細書において「腫瘍免疫治療」とは、がんに対する免疫反応を増強すること、すなわち、がん免疫増強によって、がんの増殖を抑制、がんを縮小ないし消滅させる治療法であり、「腫瘍免疫治療薬」とは、その免疫反応を増強する作用を有する薬剤を意味する。それらの治療薬としては、例えば、抗PD−1抗体(例えば、ヒト抗ヒトPD−1モノクローナル(中和)抗体(例えば、NivolumabおよびREGN−2810)およびヒト化抗ヒトPD−1モノクローナル(中和)抗体(例えば、Pembrolizumab、PDR−001、BGB−A317およびAMP−514(別称:MEDI0680))、ANB011(別称:TSR−042)およびSTI−A1110)、抗PD−L1抗体(例えば、Atezolizumab(別称:RG7446またはMPDL3280A)、Avelumab(別称:PF−06834635またはMSB0010718C)、Durvalumab(別称:MEDI4736)、BMS−936559、STI−1010、STI−1011およびSTI−1014)、PD−1拮抗剤(例えば、AUNP−12)、抗PD−L2抗体、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質(例えば、AMP−224)、抗CTLA−4抗体(例えば、IpilimumabおよびTremelimumab)、抗LAG−3抗体(例えば、BMS−986016およびLAG525)、抗Tim3抗体(例えば、MBG453)、抗KIR抗体(例えば、Lirilumab)、抗BTLA抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD137抗体(例えば、Urelumab)、抗OX40抗体(例えば、MEDI6469)、抗HVEM抗体、抗CD27抗体(例えば、Varlilumab)、抗GITR抗体(例えば、MK−4166およびTRX−518)、抗CD28抗体、抗CCR4抗体(例えば、Mogamulizumab)、抗CD4抗体(例えば、MTRX−1011A、TRX−1、Ibalizumab、huB−F5、Zanolimumab、4162W94、Clenoliximab、Keliximab、AD−519、PRO−542、Cedelizumab、TNX−355、Dacetuzumab、Tregalizumab、Priliximab、MDX−CD4、CAMPATH−9、IT1208)、TLRアゴニスト、およびSTINGアゴニスト(例えば、MIW815)などが挙げられる。なお、本明細書における腫瘍免疫治療薬には、本発明に係るAllergin−1アンタゴニストを含まない。
【0036】
ここで、Nivolumabは、WO2006/121168に記載された方法に準じて製造することができ、Pembrolizumabは、WO2008/156712に記載された方法に準じて製造することができ、BMS−936559は、WO2007/005874に記載された方法に準じて製造することができ、Ipilimumabは、WO2001/014424に記載された方法に準じて製造することができる。
【0037】
本発明に係るAllergin−1アンタゴニストは、通常、全身的または局所的に、非経口の形で投与される。その投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、0.1μg/kgから300mg/kgの範囲で、特に好ましくは、0.1mg/kgから10mg/kgの範囲で、一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0038】
本発明に係るAllergin−1アンタゴニストは、(1)がんの進行抑制、再発抑制および/または治療効果の増強のために、(2)組み合わせて使用される他の薬剤の投与量の低減および/または(3)組み合わせて使用される他の薬剤の副作用の軽減のために、上記のがんの治療目的に使用される一種以上の他の薬剤(主に、抗がん剤)とともに組み合わせて使用してもよい。Allergin−1アンタゴニストと他の薬剤を別々に投与する場合には、Allergin−1アンタゴニストを先に投与し、その投与の後に他の薬剤を投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、Allergin−1アンタゴニストを後に投与してもよく、また、上記投与において、一定期間、両薬剤が同時に投与される期間があってもよい。また、各々の薬剤の投与方法は同じでも異なっていてもよい。薬剤の性質により、Allergin−1アンタゴニストを含む製剤と他の薬剤を含む製剤のキットとして提供することもできる。ここで、他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、前記他の薬剤には、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0039】
他の薬剤の主な一例として挙げられる抗がん剤としては、例えば、上記した抗がん剤が挙げられる。
【0040】
本発明に係るAllergin−1アンタゴニストは、注射剤または点滴のための輸液として製剤化されて用いられる。注射剤または輸液は、水溶液、懸濁液または乳濁液のいずれの形態であってもよく、また用時に溶剤を加えることにより、溶解、懸濁または乳濁して使用されるように固形剤として製剤化されていてもよい。注射剤または点滴のための輸液に使用される溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖溶液および等張液(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、プロピレングリコール等の溶液)等を用いることができる。
【0041】
ここで、注射剤または点滴のための輸液、あるいは用時に溶剤を加えることにより、溶解、懸濁または乳濁して使用されるような固形剤に使用される薬学的に許容できる担体としては、例えば、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、防腐剤、pH調整剤および抗酸化剤等が挙げられる。安定剤としては、例えば、各種アミノ酸、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。溶解補助剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80(登録商標)、HCO−50等)等を用いることができる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等を用いることができる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等を用いることができる。防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等を用いることができる。抗酸化剤として、例えば、(1)アスコルビン酸、システインハイドロクロライド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤、(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ハイドロキシアニソール、ブチル化ハイドロキシトルエン、レシチン、プロピルガレート、α−トコフェロール等のような油溶性抗酸化剤および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤等を用いることができる。
【0042】
注射剤または点滴のための輸液は、その最終工程において滅菌するかあるいは無菌操作法、例えば、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することによって製造することができる。また、注射剤または点滴のための輸液は、真空乾燥および凍結乾燥による無菌粉末(薬学的に許容できる担体の粉末を含んでいてもよい。)を、適切な溶剤に用時溶解して使用することもできる。
【0043】
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
【実施例】
【0044】
実施例1:Allergin−1KOマウスの作製
Allergin−1標的ベクターを構築した。詳細には、Allergin−1の開始コドンを含む第一エクソンをネオマイシン耐性遺伝子カセットで置き換えた(図1A)。C57BL/6Nマウス由来のES細胞に直鎖化したAllergin−1標的ベクターをエレクトロポレーション法でトランスフェクションした。当該細胞を薬剤耐性スクリーニングで選択し、サザンブロット解析により相同組み換えが起こっているクローンを選択した。ポジティブクローンを用いてアグリゲーション法によるキメラマウス作製を行った。受容胚にはICRの8細胞期胚を使用した。得られたキメラマウスのキメラ率は体全体の毛色の率を目安に判定した。得られたキメラマウス個体を用いてC57BL/6Nマウスと交配を行い、F1産子についてサザンブロットにより遺伝子解析を行うことによってF1ヘテロ個体を得た。F1ヘテロ個体の雌雄を交配させてAlg1−KOマウスを得たことをサザンブロットにより遺伝子解析により確認した(図1B)。
【0045】
Allergin−1KOマウスは、特に観察される表現型を示さなかったことから、Allergin−1アンタゴニストの副作用は軽微であることが期待される。
【0046】
実施例2:Allergin−1KOマウスにおける腫瘍増殖(MC38)
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスにMC38を2.0x105/マウスで皮下移植した。一群の例数は15例とした。MC38の腫瘍体積を移植日から7日、10日、14日、17日、21日および24日目に各々測定した。図2に各群の腫瘍体積の中央値(図2左図)および平均値±標準誤差(図2右図)の推移を示した。Allergin−1KOマウスでは野生型マウスと比較して腫瘍増殖が顕著に抑制された。
【0047】
実施例3:Allergin−1KOマウスにおける腫瘍増殖(B16F10)
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスにB16F10を2.0x105/マウスで皮下移植した。一群の例数は10例とした。移植当日を0日目とし、各群におけるB16F10の腫瘍体積を移植日から7日、11日、14日、18日および21日目に各々測定した。抗マウスPD−1抗体4H2(WO2006/121168の実施例12に記載の方法で作製された抗体)投与群では、4H2をWTマウスに移植当日、6日目、12日目および18日目に腹腔内投与した。図3に各群の腫瘍体積の中央値(図3左図)および平均値±標準誤差(図3右図)の推移を示した。図3に示されるように、B16F10に関しても、Allergin−1KOマウスでは野生型マウスと比較してその腫瘍増殖が顕著に抑制された。一方、WTマウスに抗マウスPD−1抗体4H2を投与した群では、移植後21日目の腫瘍体積の中央値は1985.6mm3(平均値:2105.0±418.4mm3)であった。なお、担癌のみの非投与群の21日目の腫瘍体積の中央値は2661.0mm3(平均値:2622.6±377.1mm3)であった。
【0048】
実施例2および3の結果から、Allergin−1を阻害することによって腫瘍増殖を抑制できることが示された。
【0049】
実施例4:Allergin−1KOマウスにおける抗PD−1抗体の効果
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスにMC38を2.0x105細胞/マウスで皮下移植した。移植当日を0日目とし、mIgGおよび抗マウスPD−1抗体4H2を移植当日、6日目および12日目に腹腔内投与した。4H2の投与量は10mg/kg(移植0日目のみ20mg/kg)とした。一群の例数は担癌のみの群(図4左図)は15例、抗体投与群(図4右図)は10例とした。MC38の腫瘍体積を移植日から7日、11日、14日、18日、21日、24日および27日目に各々測定した。図4は各群の腫瘍体積の平均値±標準誤差の推移を示した。Allergin−1KOマウスに4H2抗体を投与した群では、Allergin−1KOマウスにコントロール抗体を投与した群と比較して腫瘍増殖がさらに抑制され、測定期間における腫瘍増殖は全く認められなかった。
【0050】
実施例3および実施例4の結果から、Allergin−1阻害とPD−1阻害により相乗効果が発揮されることが示された。
【0051】
実施例5:Allergin−1KOマウスにおけるがん免疫増強
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスにMC38を2.0x105細胞/マウスで皮下移植した。一群の例数は11例または12例とした。移植15日後に各マウスから腫瘍を摘出し、コラゲナーゼ処理後、腫瘍細胞を調製した。調製した細胞を抗体染色し、腫瘍に浸潤したCD8陽性T細胞数および腫瘍抗原(p15E)特異的CD8陽性T細胞数をFACSで測定した。図5は腫瘍1mgあたりの浸潤リンパ球数の平均値±標準誤差を示した。Allergin−1KOマウスでは、野生型マウスと比較して、腫瘍浸潤CD8細胞(図5中、CD8+T cell)の増加および腫瘍特異的CD8細胞(図5中、CD8+tetramer+)の増加が顕著であった。
【0052】
実施例6:Allergin−1KOマウスにおけるIFNα産生増強
各種CpGオリゴヌクレオチド(CpG−ODN)をリポフェクション試薬DOTAPと混合したものを、C57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KOマウスに各々52nmol/kgで尾静脈より投与した。投与2、6および24時間後に尾静脈より採血し、血中IFNα量をELISAにて測定した。図6は各群および各評価ポイントにおける血中IFNα量(pg/mL)の平均値±標準誤差を示した。Allergin−1KOマウスでは、野生型マウスと比較して、IFNα産生が顕著に増加していた。
【0053】
実施例5および実施例6の結果より、Allergin−1阻害が腫瘍免疫を増強することが示された。
【0054】
実施例7:Allergin−1KOマウスにおける抗PD−1抗体の効果
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスにMC38を2.0x105細胞/マウスで皮下移植した。移植当日を0日目とし、コントロール抗体mIgGおよび抗マウスPD−1抗体4H2を移植当日、6日目および12日目に腹腔内投与した。4H2の投与量は1または3mg/kgとした。一群の例数は10例とした。MC38の腫瘍体積を移植日から7日、11日、13日、18日、21日および24日に各々測定した。図7および8は各群の腫瘍体積の平均値±標準誤差の推移を示した。
【0055】
Alg1−KOマウスに1及び3mg/kgの4H2抗体を各々投与した群においても、実施例4で認められたのと同程度の抗腫瘍効果が認められた。ここで、各群における32日目における腫瘍消失例数を以下に示す。
【表1】
【0056】
実施例8:Allergin−1KOマウスにおける抗CD4抗体の効果
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスにMC38またはB16F10を2.0x105細胞/マウスで皮下移植した。移植当日を0日目とし、コントロール抗体ratIgG2bおよび抗マウスCD4抗体GK1.5(BioXcell)を5日目に腹腔内投与した。抗体の投与量は5mg/kgとした。一群の例数は10例とした。MC38及びB16F10の腫瘍体積は移植日から7日、11日、14日、18日、21日、25日目及び28日目に各々測定した。ただし、死亡又は安楽死処分とした個体が例数の半数を超えた群については、それを確認した次の測定を腫瘍測定最終日とした。図9および10は各群の腫瘍体積の平均値±標準誤差の推移を示した。Alg1−KOマウスにGK1.5を投与した群では、Alg1−KOマウスにコントロール抗体を投与した群と比較して腫瘍増殖がさらに抑制された。
【0057】
実施例9:Allergin−1KOマウスにおけるpolyuridine投与後のI型IFN産生
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg1−KOマウスに、polyuridineをリポソーム系トランスフェクション試薬であるDOTAPとともに静脈内投与した。投与用量は50μg/マウスとした。投与2時間後及び6時間後の血清中IFNα及びIFNβをELISA法にて定量した。図11は各群の血清中IFNα量及びIFNβ量を示した。Alg1−KOマウスにpolyuridineを投与した群では、WTと比較してIFNα及びIFNβの産生量の増加が認められた。
【0058】
実施例10:Allergin−1KOマウス由来腹腔マクロファージへのcGAMP刺激後のI型IFN産生
C57BL/6Nマウス及びAlg1−KOマウスに3%チオグリコレート培地を1mL/bodyで腹腔内投与し、3日後、5mM EDTA/PBS 5mLを注入して腹腔を洗浄し、腹腔洗浄液を回収した。溶血処理後、フローサイトメーターで腹腔浸潤細胞中のCD11b+F4/80+細胞の割合を算出した。
【0059】
CD11b+F4/80+細胞が2×105細胞/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種し、1時間後に培養上清を除去して、さらに培地で1回洗浄して、3、10および30μM cyclic GMP−AMP(cGAMP)含有培地を各々添加した。24および48時間後に培養上清を回収して、培養上清中のIFN−β量を定量した。図12は各群のIFNβ量を示した。Alg1−KOマウス由来マクロファージにcGAMPで刺激した群では、WTと比較してIFNβの産生量の増加が認められた。
【0060】
実施例11:Allergin−1KOマウスにおける抗PD−1抗体の効果
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAlg−1KOマウスにB16F10を2.0x105細胞/マウスで皮下移植した。移植当日を0日目とし、mIgGおよび抗マウスPD−1抗体4H2を移植当日、6日目、12日目および18日目に腹腔内投与した。4H2の投与量は10mg/kg(移植0日目のみ20mg/kg)とした。一群の例数は10例とした。B16F10の腫瘍体積を移植日から7日、11日、14日、18日および21日目に各々測定した。図13は各群の腫瘍体積の中央値の推移を示した。Allergin−1KOマウスに4H2抗体を投与した群では、その他の群と比較して腫瘍増殖が顕著に抑制された。
【0061】
実施例12:リチャレンジ試験におけるAllergin−1欠損と抗PD−1抗体の併用効果
C57BL/6マウス(WTマウス)およびAllergin−1KO(Alg1−KO)マウスにMC38を2.0x105/マウスで皮下移植し、抗マウスPD−1抗体4H2を移植当日、6日目、12日目および18日目に腹腔内投与した。4H2の投与量はWTマウスに対しては10mg/kg(移植0日目のみ20mg/kg)、Alg1−KOマウスに対しては1mg/kg又は3mg/kg(移植0日目のみ2mg/kgまたは6mg/kg)とした。移植一群の例数は、WTマウスにおいては20例とし、Alg1−KOマウスでは各投与量で10例ずつとした。移植32日目において、WTマウスで20例中8例、Alg1−KOマウスでは20例中14例で腫瘍完全排除(CR)が認められた。
【0062】
CRとなったWTマウスおよびAlg1−KOマウスに、最初の移植から42日目にMC38を右側腹部に、B16F10を左側腹部に2.0x105/マウスで皮下移植した。MC38およびB16F10の腫瘍体積を移植日から7日、11日、14日、18日、21日、25日、28日、32日、35日、39日および42日目に各々測定した。図14は各群の腫瘍体積の平均値±標準誤差の推移を示した。MC38では、WTマウスで8例中7例、Alg1−KOマウスでは14例全例で腫瘍が排除された。一方、B16F10では、WTマウスで8例中1例、Alg1−KOマウスでは14例中11例で腫瘍が排除され、Alg1−KOマウスに4H2を投与してCRとなった群では、WTマウスに4H2を投与してCRとなった群と比較して、より多くのCR個体が認められた。
【0063】
これは、PD−1阻害のみでがん細胞MC38が完全排除されたマウスでは、そのマウスの免疫システムが既に出会ったことのあるがん細胞MC38に対して免疫記憶を成立させていたが、初めて出会うがん細胞B16F10に対してはメモリーCD8T細胞が十分機能していなかったことを示している。一方で、PD−1阻害とAllergin−1阻害が共存した中で、そのマウスの免疫システムが出会ったがん細胞MC38に対して成立したメモリーCD8T細胞は、初めて出会ったがん細胞B16F10に対しても十分に機能し、完全排除した。ここでB16F10は、再発したがん細胞と見做すことができる。すなわち、PD−1阻害のみの環境における免疫システムが記憶するがん抗原の種類に比較して、PD−1阻害とAllergin−1阻害が共存した環境における免疫システムが記憶するがん抗原はより多種に及ぶことを示している。PD−1阻害とAllergin−1阻害が共存した環境における免疫システムが記憶するがん抗原の範囲は、より抗原性が弱いがん抗原にまで及ぶ。したがって、それらの抗原性が弱い抗原については、通常の環境では免疫システムががん抗原とは認識せず、PD−1阻害のみの環境においてもがん抗原とは認識され難いものと考えられる。さらにAllergin−1阻害の環境を持続すると、免疫システムは通常の環境では到底抗原認識ができないがん細胞であって、PD−1阻害のみの環境でも抗原認識され難いがん細胞に対しても、抗原認識が可能となり、新たながん細胞、言い換えると再発したがん細胞に対しても抗腫瘍効果を発揮すると考えられる。
【0064】
実施例6、9および10の結果から、Allergin−1阻害は、STINGアゴニストやTLRリガンドに対する反応性を増強することが示された。Allergin−1阻害の環境で、がん細胞が有する抗原性の低いがん抗原に対して免疫システムが抗原認識することで、CD8T細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃すると、死滅するがん細胞由来のSTINGアゴニストやTLRリガンドが、さらにAllergin−1阻害の環境でがん免疫反応を増強するという相乗効果をもたらし、再発予防に繋がるものと考える。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るAllergin−1アンタゴニストは、がん免疫増強作用を有し、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療のために使用することができる。
【要約】
本発明の課題は、がん免疫増強作用を有する新規な有効成分からなるがんの進行抑制、再発抑制および/または治療を目的とする薬剤を提供することにある。本発明にかかるAllergin−1アンタゴニストは、がん免疫増強作用を有しており、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療のために使用することができる。特に、腫瘍免疫治療薬による治療効果が十分ではないがん患者を対象とする治療、あるいは抗がん剤との併用によるがん治療に有用である。
図1
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図5
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図10
図11
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