特許第6156774号(P6156774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6156774ゼオライトを用いた大型有害動物忌避剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156774
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ゼオライトを用いた大型有害動物忌避剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/44 20060101AFI20170626BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20170626BHJP
   A01N 65/44 20090101ALI20170626BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A01N37/44
   A01P17/00
   A01N65/44
   A01N25/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-525269(P2016-525269)
(86)(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公表番号】特表2016-526569(P2016-526569A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】KR2014005095
(87)【国際公開番号】WO2015005590
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0081395
(32)【優先日】2013年7月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】316010425
【氏名又は名称】ジョン ジン バイオ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,テ−フン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン−シク
(72)【発明者】
【氏名】ソン,セ−ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ−ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン−ジュン
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−290104(JP,A)
【文献】 特開平04−288003(JP,A)
【文献】 特開平01−294601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
A01M 1/00−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト45〜75重量%、アントラニル酸メチル20〜45重量%、およびレモングラス1〜30重量%を含んでなり、
前記ゼオライトが1〜30mmの直径を有し、前記ゼオライトが1〜15%の水分含有量を有することを特徴とする、大型有害動物忌避剤組成物。
【請求項2】
前記レモングラスが液状抽出物またはエッセンシャルオイルであることを特徴とする、請求項1に記載の大型有害動物忌避剤組成物。
【請求項3】
前記忌避剤組成物が使用される対象有害動物はイノシシ、ヘラジカおよびシカのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の大型有害動物忌避剤組成物。
【請求項4】
前記アントラニル酸メチルと前記レモングラスの重量比が45:1から35:15である、請求項1に記載の大型有害動物忌避剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害動物忌避剤組成物に関する技術であって、特に、イノシシ、ノロなどの農作物に被害を与える比較的サイズの大きい動物(以下、「大型動物」という。)を対象にして忌避効果を発揮する忌避剤組成物に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、人体に無害で環境にやさしい特性を有する忌避剤組成物に関する技術であって、特に、農作物、果樹園、墳墓、都心などに出没して被害を誘発する大型動物、例えばイノシシ、ノロなどに効果的な忌避剤組成物に関するものである。
【0003】
現代社会では、有害動物、特に図体が大きく個体数が多いイノシシにより、有害動物の食べ物がある野外の場所、例えば農作物、果樹園、墳墓などが被害を受けている。特に、農作物や食べ物を植えておけば、農作物が大きく育つ前に、有害動物が地をほじくり返したり全てを食い荒らしたりして、農民が多大な被害を受けている。また、農作物の被害だけでなく、最近では、有害動物が山から都心まで出没して市民に脅威を与えたり被害を及ぼしたりしているのが現状である。
【0004】
このような有害動物に対処する方法としては、電気牧柵機や罠、遮断紐、銃砲(狩猟)などを用いて殺生、捕獲する方法や、本発明のように忌避剤を用いて、有害動物が対象の農作物や施設に近づかないように誘導する方法がある。
【0005】
前記殺生方法の代表的な例として、電気牧柵機を用いて、イノシシが近接したときに気絶させる方法や、罠または銃を用いて狩猟する方法が最も多く用いられているのが実情である。しかし、このような方法は、長期間使用した場合には有害動物がその方法に適応して持続的に効果を得ることができないという欠点があり、銃を用いて狩猟する場合には人間がイノシシを発見したときに迅速に狩猟しなければならず、射殺確率が低いだけでなく、イノシシの突然の攻撃に対しても安全ではないという欠点がある。そして、被害を防ごうとする場所の周縁に沿って金網や紐を用いて防ぐ場合もあるが、これもイノシシが飛び上がったり踏んだりして壊し易いため、イノシシ遮断用には適さない。
【0006】
牧柵機、罠、紐、狩猟などの有害動物の直接的な殺生および捕獲に対する代案方法として、有害動物の接近を遮断する臭いまたは味を用いた忌避剤が開発された。一般に、忌避剤は、容器に入れた状態で設置されるため、製品の性質上、一定の区間ごとに1つずつ容器に入れた状態で設置されるしかない。ところが、イノシシなどの大型動物に適用する場合、農作物、畑、山などのヘクタール単位の広い面積に設置されなければならないが、そのように広い面積をすべて容器に忌避剤を込めて設置することは、人件費、設置費、製品価格が設置面積に比例して増加するから、農民が採用するには適さない。また、忌避剤の設置から一定の時間が経過して忌避剤の効果が完全に消滅した後は、環境汚染および経済的な理由で容器を回収する過程が必要であるが、このような回収は事実上不可能である。したがって、広い面積に容易かつ迅速に設置するとともに、一度設置した製品は長時間再設置しなくても良いように、忌避成分が長い時間にわたってゆっくりと発散するようにする技術と、設置後に効能が消滅した製品(または製品入りの容器)を除去する過程が必要とされない忌避剤が求められている。
【0007】
本発明は、アントラニル酸メチルを有効成分として含む忌避剤組成物に関する技術であり、本発明者の特許文献1では、アントラニル酸メチル(methyl anthranilate)を含む液状の動物および鳥類忌避剤組成物を開示しており、また、本発明者の特許文献2では、アントラニル酸メチル(methyl anthranilate)を含むゲル状の鳥類退治組成物を開示している。
【0008】
本発明は、上述した特許のように液状またはゲル状であるから容器に込めて使用しなければならない従来技術の問題点を解決するために導出された技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1181454号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10−0798290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、イノシシやシカなどの大型動物を対象にする忌避剤組成物であって、特に、忌避効果が持続的であるうえ、使用済みの後も廃棄せずに有用な用途にリサイクルすることができる忌避剤組成物を提供することを目的とする。
【0011】
特に、本発明は、従来の液状やゲル状の忌避剤組成物とは異なり、設置が容易な剤形の忌避剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ゼオライト45〜75重量%、アントラニル酸メチル20〜45重量%、およびレモングラス1〜30重量%を含んでなることを特徴とする、大型有害動物忌避剤組成物を提供する。
【0013】
特に、前記レモングラスは、液状抽出物またはエッセンシャルオイルであることが好ましい。
【0014】
特に、前記ゼオライトは1〜30mmの直径を有することが好ましい。
【0015】
特に、前記ゼオライトは1〜15%の水分含有量を有することが好ましい。
【0016】
特に、前記忌避剤組成物が使用される対象有害動物は、イノシシ、ヘラジカおよびシカのいずれかのように比較的大きい大型動物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組成物は、ゼオライトに有効成分が吸着している固体形状であるので、別の容器なしに組成物自体を塗布、散布する形式でより容易且つ簡便に場所を問わずに適用することができる。
【0018】
また、本発明の組成物は、コンコードグレープ抽出物であるアントラニル酸メチル、食用可能な天然物質であるレモングラス、および鉱物であるゼオライトを利用するため、人間および自然に対する二次的な汚染問題が発生する余地がないうえ、ゼオライトを主材料として用いるため、忌避剤の効果が消滅した後はアルカリ性土壌改善材として再利用することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の忌避剤組成物を塗布して設置する前(左)と設置した2週間後(右)のイノシシ被害状況を対比して示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、使用嗜好度、環境調和性、経済性、使用後の製品回収処理問題などを考慮して、ゼオライトと天然物質を含んでなる有害動物忌避剤組成物を提供する。
【0021】
本発明は、ゼオライトを吸着剤とし、前記ゼオライト吸着剤に天然物質を吸着させて製造されることを特徴とする有害動物忌避剤組成物を提供するが、ゼオライト45〜75重量%、アントラニル酸メチル20〜45重量%およびレモングラス1〜30重量%を含んでなる。
【0022】
以下、本発明の各成分について説明する。
【0023】
ゼオライト
本発明の主成分の一つであるゼオライト(zeolite)は、アルカリおよびアルカリ土類金属のケイ酸アルミニウム水和物である鉱物を総称する言葉であって、無色透明或いは白色半透明である。また、ゼオライトは、シリコンとアルミニウムとが酸素原子を介して三次元的に連結されて生成される無機高分子物質であって、イオン交換能力と吸着能力があるため、周辺環境の浄化を誘導する。本発明は、ゼオライトを忌避剤の一成分、すなわち、後述する天然物質であるアントラニル酸メチルとレモングラスの吸着剤として使用されることにより、既に商品化された忌避剤または殺鼠剤とは剤形の違いが区別される。特に、従来の忌避剤組成物が通常ゲル状またはカプセル状の剤形に製造され、容器または不織布に込められたままで設置されなければならないが、本発明のゼオライトを用いた忌避剤組成物は、ゼオライトの特性上、固体なので、粒状に剤形化して、別途の容器に込めず、有害動物が出没する地域にまんべんなく振り撒くだけでよいので、散布/塗布が従来技術とは異なり非常に簡単であることを特徴とする。
【0024】
本発明において、ゼオライトは全体組成物の総重量の45〜75重量%であることが好ましい。ゼオライトを全体組成物の総重量の45重量%未満で使用すると、他の成分を十分に吸着できず、ゼオライトを75重量%超過で使用すると、残りの有効成分の含有量があまりにも少なくなって忌避効果が低下する。
【0025】
本発明に使用するゼオライトの直径は1〜30mmであることが好ましい。ゼオライトの直径が1mm未満である場合、粉末状のゼオライトになる。これは、製品に商品化したときに砂のような形状であって使用が難しく、表面積が広いため、本発明で使用する天然物質(アントラニル酸メチル、レモングラス)の発香がそれほど速いので、長期間持続的に発香することができない。また、風や雨などの環境による影響を多く受けるため、風に飛ばされたり雨や雪により地中に吸収されたりするという問題点がある。一方、ゼオライトの直径が30mmを超えると、ゼオライトのサイズがあまり大きいから、同じ重量でも少ない数のゼオライトを使用しなければならないため、面積対比忌避効果の効率低下問題が発生する。
【0026】
また、本発明において忌避剤組成物としてゼオライトを使用するためには、ゼオライトとして、使用前に前処理して最適の水分含有量を持つゼオライトを使用する必要がある。ゼオライトの水分含有量は1〜15%であることが好ましい。このとき、ゼオライトの水分含有量が1%未満であれば、組成物がゼオライトにあまりにも深く吸収され、外表面が乾いてしまうか発香が少なくて持続力が減少するという問題があり、ゼオライトの水分含有量が15%超過であれば、残りの天然成分がゼオライトにすべて含有されないため、組成物よりは水分がゼオライトに多く含まれてしまい、天然成分がゼオライトの表面に吸収されないままで残るか或いはゼオライトが湿った状態になるという問題がある。
【0027】
また、ゼオライトは、既にアルカリ性土壌改善剤として広く使用されているが、本発明のゼオライト型有害動物忌避剤の場合、使用済みの後は廃棄処分せず、回収して土壌改善材としてリサイクルが可能である。
【0028】
アントラニル酸メチル
本発明の主成分の一つであるアントラニル酸メチルは、コンコード(Concord)グレープ抽出物であって、天然成分といえる。ブドウの香り、オレンジの香りおよびネロリ油の香りがある薄いか濃い黄色液体である。アントラニル酸メチルは、米国EPAに登録されている食品添加剤であって、有害動物が摂取したり香りを吸い込んだりした場合に目、鼻腔または粘膜を刺激することが知られている。
【0029】
既にアントラニル酸メチルを主成分とする退治剤が商品化されているが、刺激の強度が比較的弱く、効果の持続性が6〜7日と比較的短いという欠点がある。本発明では、アントラニル酸メチルの欠点を克服し、有害動物の目や鼻腔粘膜を刺激する効果を極大化するためにゼオライトに担持するが、レモングラスと一緒に担持して忌避剤として使用している。
【0030】
アントラニル酸メチルは全体組成物の総重量の20〜45重量%であるが好ましい。アントラニル酸メチルを全体組成物の総重量の20重量%未満で使用すると、アントラニル酸メチルの主要成分の効能が十分に発揮できなくて有害動物忌避剤効果が現れず、45重量%超過で使用すると、毒性の問題と含有量の過多によりゼオライトに十分に担持されないという問題点がある。
【0031】
レモングラス
レモングラスは、レモンの香りが出るためレモングラスといい、葉と根を蒸留して得たレモングラスオイルにはシートラルが含まれている。
【0032】
前記レモングラスは全体組成物の総重量の1〜30重量%であることが好ましい。レモングラスを全体組成物の総重量の1重量%未満で使用すると、レモングラス特有の香り、効能および機能を発揮することができず、30重量%超過で使用すると、レモングラスの香りがあまりにも強くなるため、一緒に使用されるアントラニル酸メチルの香りを減少させてむしろ忌避効果に劣るという欠点がある。
【0033】
特に、前記レモングラスは、液状抽出物、またはレモングラスの香りが含まれているエッセンシャルオイルなどの液状であることが好ましい。レモングラスは、通常の抽出方法である、エタノールなどのアルコール類を用いた抽出方法、熱水抽出方法などの様々な抽出方法を使用することができる。前記抽出方法は、公知の技術であるため、具体的な方法を省略する。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明の効果について説明する。
【実施例1】
【0035】
水分が3〜5重量%の含有量で含有されたゼオライト、アントラニル酸メチル及びレモングラス(エッセンシャルオイル)を混合器に入れて均一に混合させた後、ゼオライト型忌避剤を製造した。このとき、ゼオライト50重量%に対してアントラニル酸メチル35重量%、レモングラス15重量%を使用した。
【実施例2】
【0036】
ゼオライト50重量%、アントラニル酸メチル40重量%およびレモングラス10重量%を用いて前記実施例1と同様の方法で忌避剤組成物を製造した。
【0037】
[実験例1]野外での忌避効果の実験
有害動物忌避効果の実験のために、韓国におけるイノシシの被害が多いところ、例えばカチャンのセチョン里、ネンチョン里、コリョン地域などを渉外して野外でのテストを行った。イノシシなどの大型動物は、室内飼育が不可能でテスト環境が整っているところがないため、室内でのテストが難しくて最初から野外でのテストを行った。
【0038】
テストの前に、イノシシが出没するかについては農家をみれば容易に把握することができた。通常、イノシシが立ち寄ったことがある場合、足跡を残したり土をほじくり返したりする習性があるため、被害を受けたところ、或いは被害が徐々に減るのか増加するのかについて容易に分かることができた。
【0039】
図1の左の写真はイノシシの被害を受けた様子を撮影したものであり、図1の右の写真は本発明の実施例1に係る忌避剤の塗布後にイノシシの出入りが無くなり、イノシシが掘っておいた土に草が再び生えた様子を撮影したものである。
【0040】
本発明の忌避剤組成物の塗布方法では、忌避剤組成物が塗布される領域の囲いを、約1mの間隔で約20〜25gずつ被害を防ごうとするところに設置しておき、前記囲いの内部を約3〜4mの間隔あたり同じ容量の組成物で塗布した。図1の右の写真は、イノシシの被害を受けた地域に本発明の実施例1の忌避剤を設置し、設置2週後に草が完全に再び生えている様子を撮影した写真である。
【0041】
前記実験結果から明らかなように、本発明の忌避剤組成物は、容器を使用することなく塗布のみで対象の場所に適用可能であり、図1の結果と同様に非常に優れた忌避効果を発揮することが分かった。
図1